(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183737
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】X線CT装置、補正用データ収集方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
A61B6/03 373
A61B6/03 350F
A61B6/03 330A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097404
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津雪 昌快
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA01
4C093EA07
4C093FA34
4C093FA45
4C093FA55
4C093FC17
4C093FD09
(57)【要約】
【課題】補正用データの収集に要する時間を短縮すること。
【解決手段】実施形態のX線CT装置は、回転部と、切替部と、収集制御部とを持つ。回転部は、X線管とX線検出器とを回転可能に保持する。切替部は、X線検出器により検出される光子の弁別に関するエネルギービンセットを、回転部が一回転する間に、第1のエネルギービンセットと、第1のエネルギービンセットとエネルギービンの組み合わせの一部が少なくとも異なる第2のエネルギービンセットとを切り替える。収集制御部は、第1のエネルギービンセットと第2のエネルギービンセットとの切り替えに応じて、一回転の間に、第1のエネルギービンセットおよび第2のエネルギービンセットの各々の補正用データを収集させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管とX線検出器とを回転可能に保持する回転部と、
前記X線検出器により検出される光子の弁別に関するエネルギービンセットを、前記回転部が一回転する間に、第1のエネルギービンセットと、前記第1のエネルギービンセットとエネルギービンの組み合わせの一部が少なくとも異なる第2のエネルギービンセットとを切り替える切替部と、
前記第1のエネルギービンセットと前記第2のエネルギービンセットとの切り替えに応じて、前記一回転の間に、前記第1のエネルギービンセットおよび前記第2のエネルギービンセットの各々の補正用データを収集させる収集制御部と、
を備えるX線CT装置。
【請求項2】
前記切替部は、前記一回転の中で予め設定された角度ごとに異なる前記エネルギービンセットが割り当てられた収集条件に基づいて、前記第1のエネルギービンセットと、前記第2のエネルギービンセットとを切り替える、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記切替部は、前記一回転の中で予め設定された単位角度範囲ごとに異なる前記エネルギービンセットが割り当てられた収集条件に基づいて、前記回転部が一回転する間に、前記第1のエネルギービンセットと、前記第2のエネルギービンセットとを繰り返し切り替える、
請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記切替部は、前記エネルギービンセットと、前記X線CT装置の撮影パラメータとの組み合わせにより定義された収集条件を切り替え、
前記収集制御部は、前記収集条件の切り替えに応じて、前記回転部が一回転する間に、前記収集条件が互いに異なる前記補正用データを収集させる、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記切替部は、前記回転部が複数回転する間に、複数のエネルギービンセットを切り替え、
前記収集制御部は、前記複数のエネルギービンセットの切り替えに応じて、前記複数回転の間に、前記複数のエネルギービンセットの各々の前記補正用データを収集させる、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記収集制御部は、
収集された前記第1のエネルギービンセットおよび前記第2のエネルギービンセットの各々の前記補正用データを結合することで、第2の補正用データを生成し、
生成された前記第2の補正用データに基づいて、所定のエネルギービンの組み合わせを持つ第3の補正用データを生成する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記収集制御部は、前記第1のエネルギービンセットの前記補正用データから抽出された少なくとも1つのエネルギービンに対応する補正用データと、前記第2のエネルギービンセットの前記補正用データから抽出された少なくとも1つのエネルギービンに対応する補正用データと、を結合することで、前記第2の補正用データを生成する、
請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記収集制御部は、生成された前記第2の補正用データに含まれる、第1のエネルギービンに対応する補正用データと、第2のエネルギービンに対応する補正用データとを合成することで、前記第1のエネルギービンと前記第2のエネルギービンとの組み合わせに相当するエネルギービンに対応する補正用データを含む前記第3の補正用データを生成する、
請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項9】
X線管とX線検出器とを回転可能に保持する回転部を備えるX線CT装置のコンピュータが、
前記X線検出器により検出される光子の弁別に関するエネルギービンセットを、前記回転部が一回転する間に、第1のエネルギービンセットと、前記第1のエネルギービンセットとエネルギービンの組み合わせの一部が少なくとも異なる第2のエネルギービンセットとを切り替え、
前記第1のエネルギービンセットと前記第2のエネルギービンセットとの切り替えに応じて、前記一回転の間に、前記第1のエネルギービンセットおよび前記第2のエネルギービンセットの各々の補正用データを収集させる、
補正用データ収集方法。
【請求項10】
X線管とX線検出器とを回転可能に保持する回転部を備えるX線CT装置のコンピュータに、
前記X線検出器により検出される光子の弁別に関するエネルギービンセットを、前記回転部が一回転する間に、第1のエネルギービンセットと、前記第1のエネルギービンセットとエネルギービンの組み合わせの一部が少なくとも異なる第2のエネルギービンセットとを切り替えさせ、
前記第1のエネルギービンセットと前記第2のエネルギービンセットとの切り替えに応じて、前記一回転の間に、前記第1のエネルギービンセットおよび前記第2のエネルギービンセットの各々の補正用データを収集させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線CT装置、補正用データ収集方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトンカウンティングCT(Photon Counting Computed Tomography)装置は、エネルギー分解能に優れた半導体検出器等の直接型検出器を用いて、X線が透過した検査対象の物質を弁別することが可能な画像診断装置である。フォトンカウンティングCT装置では、本スキャンに先立って、エネルギー帯域(以下「エネルギービン」とも呼ぶ)の閾値を変更しながら、キャリブレーションのための補正用データを収集する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補正用データは、複数のエネルギービンの閾値の組み合わせ(閾値セット)をある値に設定した上で、X線管及びX線検出器を一回転させながらX線を照射することにより収集される。このため、対象とする閾値セットの数が多くなるにつれて、補正用データの収集に時間を要していた。
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、補正用データの収集時間を短縮することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のX線CT装置は、回転部と、切替部と、収集制御部とを持つ。回転部は、X線管とX線検出器とを回転可能に保持する。切替部は、X線検出器により検出される光子の弁別に関するエネルギービンセットを、回転部が一回転する間に、第1のエネルギービンセットと、第1のエネルギービンセットとエネルギービンの組み合わせの一部が少なくとも異なる第2のエネルギービンセットとを切り替える。収集制御部は、第1のエネルギービンセットと第2のエネルギービンセットとの切り替えに応じて、一回転の間に、第1のエネルギービンセットおよび第2のエネルギービンセットの各々の補正用データを収集させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係るX線CT装置1の一例を示す図。
【
図2】第1の実施形態に係るDAS16の構成の一例を示す図。
【
図3】第1の実施形態に係る再構成機能53の機能ブロックの一例を示す図。
【
図4】第1の実施形態に係る補正用データ収集機能57の機能ブロックの一例を示す図。
【
図5】第1の実施形態に係るX線CT装置1の補正用データの収集処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】第1の実施形態に係る補正用データの収集条件(閾値セット)の一例を示す図。
【
図7】第1の実施形態に係る補正用データの収集条件(角度ごとの閾値セットの割り当て)の一例を示す図。
【
図8】第2の実施形態に係るX線CT装置1の補正用データの収集処理の一例を示すフローチャート。
【
図9】第2の実施形態に係る補正用データの収集条件(閾値セット)および結合補正用データの一例を示す図。
【
図10A】第2の実施形態に係る結合補正用データに基づく合成補正用データの生成処理の一例を説明する図。
【
図10B】第2の実施形態に係る結合補正用データに基づく合成補正用データの生成処理の他の例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態のX線CT装置、補正用データ収集方法、およびプログラムについて説明する。実施形態のX線CT装置は、フォトンカウンティングCT装置である。フォトンカウンティングCT装置は、直接型検出器を用いて、X線が透過した検査対象の物質を弁別する。シンチレータ等の蛍光体と光検出器とが組み合わされた間接型変換器を用いる従来型のX線CT装置とは異なり、フォトンカウンティングCT装置では、物質弁別用ファントム(基準物質)のキャリブレーションデータ(以下「補正用データ」と呼ぶ)を収集する。本実施形態のX線CT装置では、このような補正用データの収集を行う際に、X線管及びX線検出器を一回転させる間に、角度ごとにエネルギービンの閾値を変えることで、補正用データの収集に要する時間を短縮する。
【0009】
<第1の実施形態>
[X線CT装置の構成]
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の一例を示す図である。X線CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。
図1では、説明の都合上、架台装置10をZ軸方向から見た図とX軸方向から見た図の双方を掲載しているが、実際には、架台装置10は一つである。第1の実施形態では、非チルト状態での回転フレーム17の回転軸または寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して垂直である方向をY軸方向とそれぞれ定義する。
【0010】
架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS:Data Acquisition System)16と、回転フレーム17と、制御装置18と、架台駆動装置19とを有する。回転フレーム17は、特許請求の範囲の「回転部」の一例である。すなわち、回転フレーム17は、X線管11とX線検出器15とを回転可能に保持する。
【0011】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生させる。X線管11は、真空管を含む。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0012】
ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量を調節するためのフィルタである。ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量の分布が予め定められた分布になるように、自身を透過するX線を減衰させる。ウェッジ12は、ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。ウェッジ12は、例えば、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したものである。
【0013】
コリメータ13は、ウェッジ12を透過したX線の照射範囲を絞り込むための機構である。コリメータ13は、例えば、複数の鉛板の組み合わせによってスリットを形成することで、X線の照射範囲を絞り込む。コリメータ13は、X線絞りと呼ばれる場合もある。コリメータ13の絞り込み範囲は、機械的に駆動可能であってよい。
【0014】
X線高電圧装置14は、例えば、図示しない高電圧発生装置と、図示しないX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器等を含む電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置は、X線管11に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置の出力電圧を制御する。高電圧発生装置は、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。X線高電圧装置14は、回転フレーム17に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(不図示)の側に設けられてもよい。
【0015】
X線検出器15は、X線管11が発生させ、被検体Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号等でもよい)をDAS16に出力する。X線検出器15は、例えば、複数のX線検出素子列を有する。複数のX線検出素子列のそれぞれは、X線管11の焦点を中心とした円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたものである。複数のX線検出素子列は、スライス方向(列方向、row方向)に配列される。
【0016】
X線検出器15は、例えば、直接検出型の検出器である。X線検出器15としては、例えば、半導体の両端に電極が取り付けられた半導体ダイオードが適用可能である。半導体に入射したX線光子は、電子・正孔対に変換される。1つのX線光子の入射により生成される電子・正孔対の数は、入射したX線光子のエネルギーに依存する。電子と正孔とは、半導体の両端に形成された一対の電極に各々引き寄せられる。一対の電極は、電子・正孔対の電荷に応じた波高値を有する電気パルスを発生する。一個の電気パルスは、入射したX線光子のエネルギーに応じた波高値を有する。
【0017】
DAS16は、例えば、制御装置18からの制御信号に従って、X線検出器15により検出されたX線光子のカウント数を示すカウントデータを複数のエネルギービンについて収集する。複数のエネルギービンに関するカウントデータは、X線検出器15の応答特性に応じて変形された、X線検出器15への入射X線に関するエネルギースペクトラムに対応する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データをコンソール装置40に出力する。検出データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、及び収集されたビューを示すビュー番号により識別されたカウントデータのデジタル値である。ビュー番号は、回転フレーム17の回転に応じて変化する番号であり、例えば、回転フレーム17の回転に応じてインクリメントされる番号である。従って、ビュー番号は、X線管11の回転角度を示す情報である。ビュー期間とは、あるビュー番号に対応する回転角度から、次のビュー番号に対応する回転角度に到達するまでの間に収まる期間である。DAS16は、ビューの切り替わりを、制御装置18から入力されるタイミング信号によって検知してもよいし、内部のタイマーによって検知してもよいし、図示しないセンサから取得される信号によって検知してもよい。フルスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、全周囲分(360度分)の検出データ群を収集する。ハーフスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、半周囲分(180度分)の検出データを収集する。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係るDAS16の構成の一例を示す図である。DAS16は、X線検出素子の個数に応じたチャンネル数分の読出しチャンネルを備える。これら複数の読出しチャンネルは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)等の集積回路に並列的に実装されている。
図2では、1読出しチャンネル分のDAS16-1の構成のみを示している。
【0019】
DAS16-1は、前置増幅回路61と、波形整形回路63と、複数の波高弁別回路65と、複数の計数回路67と、出力回路69とを有する。前置増幅回路61は、接続先のX線検出素子からの検出電気信号DS(電流信号)を増幅する。例えば、前置増幅回路61は、接続先のX線検出素子からの電流信号を、当該電流信号の電荷量に比例した電圧値(波高値)を有する電圧信号に変換する。前置増幅回路61には波形整形回路63が接続されている。波形整形回路63は、前置増幅回路61からの電圧信号の波形を成形する。例えば、波形整形回路63は、前置増幅回路61からの電圧信号のパルス幅を縮小する。
【0020】
波形整形回路63にはエネルギー帯域(エネルギービン)の数に対応する複数の計数チャネルが接続されている。n個のエネルギービンが設定されている場合、波形整形回路63には、n個の計数チャネルが設けられる。各計数チャネルは、波高弁別回路65-nと、計数回路67-nとを有する。
【0021】
波高弁別回路65-nの各々は、波形整形回路63からの電圧信号の波高値であるX線検出素子により検出されたX線フォトンのエネルギーを弁別する。例えば、波高弁別回路65-nは、比較回路653-nを有する。比較回路653-nの各々の一方の入力端子には、波形整形回路63からの電圧信号が入力される。比較回路653-nの各々の他方の入力端子には、異なる閾値に対応する参照信号TH(参照電圧値)が、制御装置18から供給される。例えば、エネルギービンbin1のための比較回路653-1には、参照信号TH-1が供給され、エネルギービンbin2のための比較回路653-2には、参照信号TH-2が供給され、エネルギービンbinnのための比較回路653-nには、参照信号TH-nが供給される。参照信号THの各々は、上限参照値と下限参照値とを有している。比較回路653-nの各々は、波形整形回路63からの電圧信号が、参照信号THの各々に対応するエネルギービンに対応する波高値を有している場合、電気パルス信号を出力する。例えば、比較回路653-1は、波形整形回路63からの電圧信号の波高値がエネルギービンbin1に対応する波高値である場合(参照信号TH-1とTH-2との間にある場合)、電気パルス信号を出力する。一方、エネルギービンbin1のための比較回路653-1は、波形整形回路63からの電圧信号の波高値がエネルギービンbin1に対応する波高値でない場合、電気パルス信号を出力しない。また、例えば、比較回路653-2は、波形整形回路63からの電圧信号の波高値がエネルギービンbin2に対応する波高値である場合(参照信号TH-2とTH-3との間にある場合)、電気パルス信号を出力する。
【0022】
計数回路67-nは、ビューの切替周期に一致する読出し周期で、波高弁別回路65-nからの電気パルス信号を計数する。例えば、計数回路67-nには、制御装置18から、各ビューの切替タイミングにトリガ信号TSが供給される。トリガ信号TSが供給されたことを契機として計数回路67-nは、波高弁別回路65-nから電気パルス信号が入力される毎に、内部メモリに記憶されているカウント数に1を加算する。次のトリガ信号が供給されたことを契機として計数回路67-nは、内部メモリに蓄積されたカウント数のデータ(すなわち、カウントデータ)を読み出し、出力回路69に供給する。また、計数回路67-nは、トリガ信号TSが供給される毎に内部メモリに蓄積されているカウント数を初期値に再設定する。このようにして計数回路67-nは、ビュー毎にカウント数を計数する。
【0023】
出力回路69は、X線検出器15に搭載されている複数の読出しチャンネル分の計数回路67-nに接続されている。出力回路69は、複数のエネルギービンの各々について、複数の読出しチャンネル分の計数回路67-nからのカウントデータを統合してビュー毎の複数の読出しチャンネル分のカウントデータを生成する。各エネルギービンのカウントデータは、チャンネルとセグメント(列)とエネルギービンとにより規定されるカウント数のデータの集合である。各エネルギービンのカウントデータは、ビュー単位でコンソール装置40に伝送される。ビュー単位のカウントデータをカウントデータセットCSと呼ぶ。
【0024】
回転フレーム17は、X線管11、ウェッジ12、およびコリメータ13と、X線検出器15とを対向支持する円環状の部材である。回転フレーム17は、固定フレームによって、内部に導入された被検体Pを中心として回転自在に支持される。回転フレーム17は、更にDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、回転フレーム17に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、受信機によってコンソール装置40に転送される。尚、回転フレーム17から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。回転フレーム17は、X線管11等を支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。
【0025】
X線CT装置1は、例えば、X線管11とX線検出器15の双方が回転フレーム17によって支持されて被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-TypeのX線CT装置(第3世代CT)であるが、これに限らず、円環状に配列された複数のX線検出素子が固定フレームに固定され、X線管11が被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-TypeのX線CT装置(第4世代CT)であってもよい。
【0026】
制御装置18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する処理回路を有する。制御装置18は、コンソール装置40または架台装置10に取り付けられた入力インターフェースからの入力信号を受け付けて、架台装置10、寝台装置30、およびDAS16の動作を制御する。例えば、制御装置18は、架台駆動装置19を制御して、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10をチルトさせたりする。架台装置10をチルトさせる場合、制御装置18は、入力インターフェースに入力された傾斜角度(チルト角度)に基づいて、架台駆動装置19を制御して、Z軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム17を回転させる。制御装置18は、図示しないセンサの出力等によって回転フレーム17の回転角度を把握している。また、制御装置18は、回転フレーム17の回転角度を随時、スキャン制御機能55や補正用データ収集機能57に提供する。また、制御装置18は、DAS16のエネルギービン(参照信号TH)を制御する。制御装置18は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0027】
架台駆動装置19は、例えば、モータやアクチュエータを含む。架台駆動装置19は、例えば、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10をチルトさせたりする。架台駆動装置19は、入力インターフェースに入力された傾斜角度(チルト角度)や、後述する補正用データ収集機能57からの回転指示に基づいて、架台装置10の回転フレーム17を回転させる。
【0028】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置して移動させ、架台装置10の回転フレーム17の内部に導入する装置である。寝台装置30は、例えば、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体を含む。寝台駆動装置32は、モータやアクチュエータを含む。寝台駆動装置32は、天板33を、支持フレーム34に沿って天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させる。また、寝台駆動装置32は、天板33を鉛直方向(Y軸方向)に移動させる。天板33は、被検体Pが載置される板状の部材である。
【0029】
寝台駆動装置32は、天板33だけでなく、支持フレーム34を天板33の長手方向に移動させてもよい。また、上記とは逆に、架台装置10がZ軸方向に移動可能であり、架台装置10の移動によって回転フレーム17が被検体Pの周囲に来るように制御されてもよい。また、架台装置10と天板33の双方が移動可能な構成であってもよい。また、X線CT装置1は、被検体Pが立位または座位でスキャンされる方式の装置であってもよい。この場合、X線CT装置1は、寝台装置30に代えて被検体支持機構を有し、架台装置10は、回転フレーム17を、床面に垂直な軸方向を中心に回転させる。
【0030】
コンソール装置40は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、ネットワーク接続回路44と、処理回路50とを有する。第1の実施形態では、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0031】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、検出データや投影データ、再構成画像データ、CT画像データ、被検体Pに関する情報、撮影条件、補正用データの収集条件等を記憶する。メモリ41は、例えば、架台装置10から伝送された複数のエネルギービンに関するカウントデータを記憶する。これらのデータは、メモリ41ではなく(或いはメモリ41に加えて)、X線CT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0032】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路によって生成された医用画像(CT画像)や、医師、技師等である操作者による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像等を表示する。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)であってもよい。
【0033】
入力インターフェース43は、操作者による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。例えば、入力インターフェース43は、検出データまたは投影データ(後述)を収集する際の収集条件、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件、補正用データの収集処理の開始指示、収集条件の設定等の入力操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)により実現されてもよい。尚、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0034】
ネットワーク接続回路44は、例えば、プリント回路基板を有するネットワークカード、或いは無線通信モジュール等を含む。ネットワーク接続回路44は、接続する対象のネットワークの形態に応じた情報通信用プロトコルを実装する。
【0035】
処理回路50は、X線CT装置1の全体の動作や、架台装置10の動作、寝台装置30の動作、および補正用データの収集のためのキャリブレーションの動作を制御する。処理回路50は、例えば、システム制御機能51、前処理機能52、再構成機能53、画像処理機能54、スキャン制御機能55、表示制御機能56、補正用データ収集機能57等を実行する。これらの構成要素は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ41に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。メモリ41にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0036】
コンソール装置40または処理回路50が有する各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置40が有する構成ではなく、コンソール装置40と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、或いは、複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えばクラウドサーバ)である。
【0037】
システム制御機能51は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。
【0038】
前処理機能52は、DAS16により出力された検出データに対してオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を行う。
【0039】
再構成機能53は、検出データ(カウントデータ)に基づいて被検体Pに関するフォトンカウンティングCT画像を再構成する。
図3は、第1の実施形態に係る再構成機能53の機能ブロックの一例を示す図である。再構成機能53は、例えば、応答関数生成機能531と、X線吸収量算出機能532と、再構成処理機能533とを有する。応答関数生成機能531は、検出器応答特性を表す応答関数のデータを生成する。例えば、応答関数生成機能531は、複数の入射X線エネルギーを有する複数の単色X線に対する標準検出系の応答(すなわち、検出エネルギーおよび検出強度)を予測計算、実験、及び予測計算と実験との組み合わせにより計測し、検出エネルギーおよび検出強度の計測値に基づいて応答関数を生成する。また、応答関数生成機能531は、キャリブレーション等において収集された実測の計測値に基づいて応答関数のデータを生成してもよい。応答関数は、入射X線ごとの検出エネルギーとシステムの出力応答との関係を規定する。例えば、応答関数は、入射X線ごとの検出エネルギーと検出強度との関係を規定する。生成された応答関数のデータは、メモリ41に記憶される。
【0040】
X線吸収量算出機能532は、複数のエネルギービンに関するカウントデータ、被検体Pへの入射X線のエネルギースペクトラム、およびメモリ41に記憶された応答関数に基づいて、複数の基底物質各々に関するX線吸収量を算出する。X線吸収量算出機能532は、応答関数を利用してカウントデータと被検体Pへの入射X線のエネルギースペクトラムとに基づいてX線吸収量を算出することにより、X線検出器15およびDAS16の応答特性の影響がないX線吸収量を算出することができる。このように基底物質毎にX線吸収量を得る処理は物質弁別とも呼ばれている。基底物質としては、カルシウム、石灰化、骨、脂肪、筋肉、空気、臓器、病変部、硬部組織、軟部組織、造影物質等のあらゆる物質に設定可能である。算出対象の基底物質の種類は、予め入力インターフェース43を介して操作者等により決定されてよい。X線吸収量は、基底物質により吸収されるX線量を示す。例えば、X線吸収量は、X線減弱係数とX線透過経路長との組み合わせにより規定される。
【0041】
再構成処理機能533は、X線吸収量算出機能532により算出された複数の基底物質各々に関するX線吸収量に基づいて、当該複数の基底物質のうちの画像化対象の基底物質の空間分布を表現するフォトンカウンティングCT画像を再構成し、生成したCT画像データをメモリ41に記憶させる。画像化対象の基底物質は、1種類でも良いし複数種類でもよい。画像化対象の基底物質の種類は、入力インターフェース43を介して操作者等により決定されてよい。
【0042】
図1に戻り、画像処理機能54は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを公知の方法により、三次元画像データや任意断面の断面像データに変換する。三次元画像データへの変換は、前処理機能52によって行われてもよい。
【0043】
スキャン制御機能55は、X線高電圧装置14、DAS16、制御装置18、架台駆動装置19、および寝台駆動装置32に指示することで、架台装置10における検出データの収集処理を制御する。スキャン制御機能55は、位置決め画像を収集する撮影、および診断に用いる画像を撮影する際の各部の動作をそれぞれ制御する。
【0044】
表示制御機能56は、各種画像(撮影画像、位置決め画像、入力インターフェース43の受け付けた入力操作結果等)をディスプレイ42に表示させる。
【0045】
補正用データ収集機能57は、補正用データを収集するためのキャリブレーションの動作を制御する。補正用データ収集機能57は、制御装置18を制御する。
図4は、第1の実施形態に係る補正用データ収集機能57の機能ブロックの一例を示す図である。補正用データ収集機能57は、例えば、収集条件設定機能571と、切替機能572と、収集制御機能573とを有する。
【0046】
収集条件設定機能571は、メモリ41に記憶された所定の収集条件または入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、補正用データの収集条件を設定する。収集条件設定機能571は、X線管及びX線検出器を一から数回転させる間に、角度(角度範囲)ごとに、エネルギービンの閾値の組み合わせ(閾値セット、エネルギービンセット)を設定する。収集条件設定機能571は、エネルギービンの閾値に加えて、焦点サイズ、焦点位置、管電圧、管電流、DASゲイン、スリット開口幅、およびDAS束ね単位等の撮影パラメータを収集条件として設定してもよい。また、収集条件設定機能571は、補正用データの収集時にX線を照射する物質(水ファントム、空気、その他の物質)を収集条件として設定してもよい。収集条件設定機能571の処理の詳細については後述する。
【0047】
切替機能572は、収集条件設定機能571により設定された収集条件(切替条件)に基づいて、X線管及びX線検出器を一回転させる間に、閾値セットを切り替える。切替機能572は、特許請求の範囲における「切替部」の一例である。すなわち、切替機能572は、X線検出器15により検出される光子の弁別に関するエネルギービンセットを、回転部(回転フレーム17)が一回転する間に、第1のエネルギービンセットと、第1のエネルギービンセットとエネルギービンの組み合わせの一部が少なくとも異なる第2のエネルギービンセットとを切り替える。切替機能572の処理の詳細については後述する。
【0048】
収集制御機能573は、切替機能572により切り替えられる閾値セットの条件下において、補正用データを収集するための制御を行う。収集制御機能573は、特許請求の範囲における「収集制御部」の一例である。すなわち、収集制御機能573は、第1のエネルギービンセットと第2のエネルギービンセットとの切り替えに応じて、回転部(回転フレーム17)の一回転の間に、第1のエネルギービンセットおよび第2のエネルギービンセットの各々の補正用データを収集させる。収集制御機能573の処理の詳細については後述する。
【0049】
上記構成により、X線CT装置1は、ヘリカルスキャン、コンベンショナルスキャン、ステップアンドシュート等のスキャン態様で被検体Pのスキャンを行う。ヘリカルスキャンとは、天板33を移動させながら回転フレーム17を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンする態様である。コンベンショナルスキャンとは、天板33を静止させた状態で回転フレーム17を回転させて被検体Pを円軌道でスキャンする態様である。ステップアンドシュートとは、天板33の位置を一定間隔で移動させて、コンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行う態様である。
【0050】
[処理フロー]
次に、X線CT装置1の補正用データの収集処理の一例を説明する。
図5は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の補正用データの収集処理の一例を示すフローチャートである。
図5に示す収集処理は、例えば、被検体Pの本スキャンに先立って、操作者がコンソール装置40または架台装置10に設けられた入力インターフェース操作を介して、キャリブレーションの開始の指示を行った場合に開始される。
【0051】
まず、コンソール装置40の補正用データ収集機能57の収集条件設定機能571は、メモリ41に予め記憶された収集条件または入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、補正用データの収集条件(閾値セット)の設定を行う(ステップS101)。
図6は、第1の実施形態に係る補正用データの収集条件の一例を示す図である。
図6では、補正用データの取得対象とする閾値セットとして、第1閾値セットS1、第2閾値セットS2、および第3閾値セットS3の3つが設定される例を示している。3つの閾値セットの各々には、4つのエネルギービンが設定される。4つのエネルギービンとしては、エネルギーが大きくなる順に、bin1、bin2、bin3、およびbin4が設定される。3つの閾値セットの各々に設定されるエネルギービンの組合せ(各エネルギービンの範囲)は、少なくとも一部が互いに異なる。
図6では、3つの閾値セットの各々に4つのエネルギービンが設定される例を示しているが、閾値セットの数およびエネルギービンの数は任意である。
【0052】
図7は、第1の実施形態に係る補正用データの収集条件(角度ごとの閾値セットの割り当て)の一例を示す図である。
図7では、回転フレーム17の一回転の動作に伴って、所定の単位角度範囲RAにおいて、3つの閾値セットを順番に切り替えながら補正用データを収集する例を示している。この例において、単位角度範囲RAは30度である。基準位置BPを始点として、第1閾値セットS1、第2閾値セットS2、第3閾値セットS3の順に切り替えるように収集条件が設定されている。尚、
図7では、回転フレーム17の一回転の間に3つの閾値セットを割り当てる例を説明しているが、2回転以上の間に閾値セットを割り当てるようにしてもよい。例えば、補正用データの取得対象となる閾値セットの数が多い場合には、複数回転にわたって、閾値セットを割り当てるようにしてもよい。
【0053】
収集条件設定機能571は、閾値セットに加えて、焦点サイズ、焦点位置、管電圧、管電流、DASゲイン、スリット開口幅、およびDAS束ね単位等の撮影パラメータを収集条件として設定してもよい。また、収集条件設定機能571は、閾値セットに加えて、補正用データの収集時にX線を照射する物質(水ファントム、空気、その他の物質)を収集条件として設定してもよい。
【0054】
図5に戻り、次に、収集制御機能573は、制御装置18および架台駆動装置19を制御し、補正用データの収集を開始する(ステップS103)。
図7に示す例では、回転フレーム17のX線管11が、第3閾値セットS3が割り当てられた角度範囲に含まれる位置P1(基準位置BPを0度とした場合のD1方向への回転角度θ)に位置している。このとき、補正用データの収集対象として第3閾値セットS3がDAS16に設定された条件下で、補正用データが収集される。
【0055】
収集制御機能573の制御下で補正用データの収集が行われている間、切替機能572は、回転フレーム17の回転角度が、閾値セットの切替条件を満たすか否かを判定する(ステップS105)。切替機能572は、回転フレーム17の回転角度が、閾値セットの切替条件を満たすと判定した場合(ステップS105;YES)、閾値セットの切り替えを行う(ステップS109)。例えば、
図7に示す例において、回転フレーム17がさらに回転して回転角度θが90度となった場合、切替機能572は、第3閾値セットS3から第1閾値セットS1への切替条件を満たすと判定し、閾値セットの切り替えを行う。
【0056】
すなわち、切替機能572は、回転部(回転フレーム17)の一回転の中で予め設定された角度ごとに異なるエネルギービンセットが割り当てられた収集条件に基づいて、第1のエネルギービンセットと、第2のエネルギービンセットとを切り替える。また、切替機能572は、回転部の一回転の中で予め設定された単位角度範囲ごとに異なるエネルギービンセットが割り当てられた収集条件に基づいて、回転部が一回転する間に、第1のエネルギービンセットと、第2のエネルギービンセットとを繰り返し切り替える。
【0057】
閾値セットに加えて、焦点サイズ、焦点位置、管電圧、管電流、DASゲイン、スリット開口幅、およびDAS束ね単位等の撮影パラメータが収集条件として設定されている場合、切替機能572は、このような閾値セットと撮影パラメータとの組み合わせにより定義された収集条件の切り替えを行う。収集制御機能573は、収集条件の切り替えに応じて、回転フレーム17の一回転の間に、収集条件が互いに異なる補正用データを収集させる。
【0058】
また、複数回転にわたって閾値セットを割り当てるようにして収集条件が設定されている場合、切替機能572は、回転フレーム17が複数回転する間に、複数のエネルギービンセットを切り替え、収集制御機能573は、複数のエネルギービンセットの切り替えに応じて、複数回転の間に、複数のエネルギービンセットの各々の補正用データを収集させる。
【0059】
一方、切替機能572が切替条件を満たさないと判定した場合(ステップS105;NO)、収集制御機能573は、補正用データの収集の終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS107)。収集制御機能573は、例えば、回転フレーム17が一回転したか否かに基づいて、終了条件の判定を行う。収集制御機能573は、補正用データの収集の終了条件を満たさないと判定した場合(ステップS107;NO)、補正用データの収集を継続し、ステップS103以降の処理が繰り返される。
【0060】
一方、収集制御機能573は、補正用データの収集の終了条件を満たすと判定した場合(ステップS107;YES)、補正用データの収集を停止する(ステップS111)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0061】
以上説明した第1の実施形態によれば、補正用データの収集に要する時間を短縮することができる。詳細には、X線管11およびX線検出器15を一回転させる間に、角度ごとに閾値セット(エネルギービンセット)を切り替えることで、一回転の間に複数の閾値セットに対応する補正用データの収集を完了することができる。
【0062】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、収集対象となる閾値セットを予め設定して、補正用データを収集する構成を説明したが、第2の実施形態では、収集した複数の補正用データを合成することで、所望のエネルギービンの組み合わせを持つ補正用データを生成する。以下の説明においては、第1の実施形態と共通する構成や機能については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0063】
[X線CT装置の構成]
補正用データ収集機能57の収集制御機能573は、第1の実施形態と同様に閾値セットごとに補正用データを収集した後、補正用データを結合して結合補正用データを生成し、さらに、結合補正用データに基づいて、所望のエネルギービンの組み合わせを持つ合成補正用データを生成する。この合成補正用データが、スキャン時に実際に使用される補正用データとなる。結合補正用データおよび合成補正用データは、特許請求の範囲における「第2の補正用データ」および「第3の補正用データ」の一例である。すなわち、収集制御機能573は、収集された第1のエネルギービンセットおよび第2のエネルギービンセットの各々の補正用データを結合することで、第2の補正用データを生成し、生成された第2の補正用データに基づいて、所定のエネルギービンの組み合わせを持つ第3の補正用データを生成する。収集制御機能573の処理の詳細については後述する。
【0064】
[処理フロー]
次に、X線CT装置1の補正用データの収集処理の一例を説明する。
図8は、第2の実施形態に係るX線CT装置1の補正用データの収集処理の一例を示すフローチャートである。
図8に示す収集処理は、例えば、被検体Pの本スキャンに先立って、操作者がコンソール装置40または架台装置10に設けられた入力インターフェース操作を介して、キャリブレーションの開始の指示を行った場合に開始される。ここでは、ハードウェアによる閾値が4段階である場合(すなわち、DAS16-1に4つの計数チャネルが設けられている場合)を例に挙げて説明する。
【0065】
まず、コンソール装置40の補正用データ収集機能57の収集条件設定機能571は、メモリ41に予め記憶された所定の収集条件または入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、補正用データの収集条件(閾値セット)の設定を行う(ステップS101)。
図9は、第2の実施形態に係る補正用データの収集条件の一例を示す図である。
図9では、第4閾値セットS4、第5閾値セットS5、および第6閾値セットS6の3つの閾値セットが設定される例を示している。3つの閾値セットの各々には、4つのエネルギービンが設定される。4つのエネルギービンとしては、エネルギーが大きくなる順に、bin1、bin2、bin3、およびbin4が設定される。3つの閾値セットの各々に設定されるエネルギービンの組合せ(各エネルギービンの範囲)は、少なくとも一部が互いに異なる。
【0066】
次に、収集制御機能573は、制御装置18および架台駆動装置19を制御し、補正用データの収集を開始する(ステップS103)。
【0067】
収集制御機能573の制御下で補正用データが収集される間、切替機能572は、回転フレーム17の回転角度が、閾値セットの切替条件を満たすか否かを判定する(ステップS105)。切替機能572は、回転フレーム17の回転角度が、閾値セットの切替条件を満たすと判定した場合(ステップS105;YES)、閾値セットの切り替えを行う(ステップS109)。
【0068】
一方、切替機能572が切替条件を満たさないと判定した場合(ステップS105;NO)、収集制御機能573は、補正用データの収集の終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS107)。収集制御機能573は、補正用データの収集の終了条件を満たさないと判定した場合(ステップS107;NO)、補正用データの収集を継続し、ステップS103以降の処理が繰り返される。一方、収集制御機能573は、補正用データの収集の終了条件を満たすと判定した場合(ステップS107;YES)、補正用データの収集を停止する(ステップS111)。
【0069】
次に、収集制御機能573は、収集された補正用データを結合して結合補正用データを生成する(ステップS213)。
図9に示す例では、3つの閾値セット(第4閾値セットS4、第5閾値セットS5、および第6閾値セットS6)の条件下で収集された補正用データの各々から、所定のエネルギービンに対応する補正用データ(カウントデータ)を抽出して結合し、結合補正用データCDが生成される。詳細には、第4閾値セットS4の条件下で収集された補正用データから、bin1、bin2、およびbin3の補正用データが抽出されて、結合補正用データCDのbin1、bin2、およびbin3の補正用データとして設定される。また、第5閾値セットS5の条件下で収集された補正用データから、bin2およびbin3の補正用データが抽出されて、結合補正用データCDのbin4およびbin5の補正用データとして設定される。また、第6閾値セットS6の条件下で収集された補正用データから、bin2、bin3、およびbin4の補正用データが抽出されて、結合補正用データCDのbin6、bin7、およびbin8の補正用データとして設定される。これにより、エネルギービンの閾値が細分化された結合補正用データを得ることができる。
【0070】
すなわち、収集制御機能573は、第1のエネルギービンセットの補正用データから抽出された少なくとも1つのエネルギービンに対応する補正用データと、第2のエネルギービンセットの補正用データから抽出された少なくとも1つのエネルギービンに対応する補正用データと、を結合することで、第2の補正用データを生成する。
【0071】
次に、収集制御機能573は、結合補正用データに基づいて、所望のエネルギービンの組み合わせを持つ合成補正用データを生成する(ステップS215)。
図10Aは、第2の実施形態に係る結合補正用データCDに基づく合成補正用データSD1の生成処理の一例を説明する図である。
図10Aに示す例では、結合補正用データCDに含まれるbin1の補正用データと、bin2の補正用データとが合成されて(カウントデータが足し合わされて)、合成補正用データSD1のbin1の補正用データとして設定される。また、結合補正用データCDに含まれるbin3の補正用データと、bin4の補正用データとが合成されて、合成補正用データSD1のbin2の補正用データとして設定される。また、結合補正用データCDに含まれるbin5の補正用データと、bin6の補正用データとが合成されて、合成補正用データSD1のbin3の補正用データとして設定される。また、結合補正用データCDに含まれるbin7の補正用データと、bin8の補正用データとが合成されて、合成補正用データSD1のbin4の補正用データとして設定される。
【0072】
図10Bは、第2の実施形態に係る結合補正用データCDに基づく合成補正用データSD2の生成処理の他の例を説明する図である。
図10Bに示す例では、結合補正用データCDに含まれるbin1からbin5の補正用データが合成されて、合成補正用データSD2のbin1の補正用データとして設定される。また、結合補正用データCDに含まれるbin6、bin7、およびbin8の補正用データが、合成補正用データSD2のbin2、bin3、およびbin4の補正用データとして設定される。
【0073】
すなわち、収集制御機能573は、生成された第2の補正用データに含まれる、第1のエネルギービンに対応する補正用データと、第2のエネルギービンに対応する補正用データとを合成することで、第1のエネルギービンと第2のエネルギービンとの組み合わせに相当するエネルギービンに対応する補正用データを含む第3の補正用データを生成する。
【0074】
このように、収集制御機能573は、結合補正用データに基づいて、所望のエネルギービンの組み合わせを持つ合成補正用データを生成することができる。合成補正用データの生成は、キャリブデータを本スキャンデータに適用するごとに行ってもよいし、予め行って生成した合成補正用データをメモリ41に記憶しておくようにしてもよい。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0075】
尚、上記の例では、閾値セットの各々のエネルギー範囲(bin1の下限値と、bin4の上限値)が、複数の閾値セットの間で同じである場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第4閾値セットS4のbin4の上限値が、第6閾値セットS6のbin1の下限値と揃うように、閾値セットを設定してもよい。これにより、第4閾値セットS4および第6閾値セットS6の2つの補正用データのみで、結合補正用データCDを生成することが可能である。
【0076】
以上説明した第2の実施形態によれば、補正用データの収集に要する時間を短縮することができる。詳細には、X線管11およびX線検出器15を一回転させる間に、角度ごとに閾値セット(エネルギービンセット)を切り替えることで、一回転の間に複数の閾値セットに対応する補正用データの収集を完了することができる。また、エネルギービンの閾値が細分化された結合補正用データに基づいて合成補正用データ(実際に使用する補正用データ)を生成するため、キャリブレーションの後に目的に応じて、所望のエネルギービンの組み合わせを持つ補正用データを生成することが可能となる。例えば、ハードウェアの制限により設定可能なエネルギービンの閾値の数が限られている場合であっても、短時間で補正用データを生成することが可能となる。
【0077】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1…X線CT装置,10…架台装置,11…X線管,12…ウェッジ,13…コリメータ,14…X線高電圧装置,15…X線検出器,16…データ収集システム,17…回転フレーム,18…制御装置,19…架台駆動装置,30…寝台装置,31…基台,32…寝台駆動装置,33…天板,34…支持フレーム,40…コンソール装置,41…メモリ,42…ディスプレイ,43…入力インターフェース,44…ネットワーク接続回路,50…処理回路,51…システム制御機能,52…前処理機能,53…再構成機能,54…画像処理機能,55…スキャン制御機能,56…表示制御機能,57…補正用データ収集機能,571…収集条件設定機能,572…切替機能,573…収集制御機能