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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183741
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】筐体構造及びこれを用いた物品
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/00 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B62B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097410
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】佐谷 真帆
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 隆大
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB04
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
(57)【要約】
【課題】底部に可動支持手段を有する筐体構造からなる物品を運搬するに当たり、可動支持手段では越えられない段差を越える場合に、筐体を持ち上げることなく、運搬者一人でも筐体を安全且つ簡単に傾けて段差を越える。
【解決手段】頂部1a及び底部1bを有し、少なくとも側部1cが平面で囲まれた筐体1と、筐体1の底部1bに複数設けられ、筐体1を移動可能な車輪2aを介して支持する可動支持手段2と、筐体1の頂部1a又は側部1c上半部に設けられ、筐体1を傾斜させるときに作業者の手で把持可能な把持手段3と、筐体1の底部1bのうち、筐体1の進行方向の反対側に位置する二つの可動支持手段2間に設けられ、筐体1を傾斜させるときに作業者の足が引っ掛け可能な足掛け手段4と、を備え、足掛け手段4が、二つの可動支持手段2の車輪2a径の中心位置Qを境として筐体1の進行方向側に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部及び底部を有し、少なくとも側部が平面で囲まれた筐体と、
前記筐体の底部に複数設けられ、前記筐体の予め決められた進行方向の反対側に当該進行方向に交差する幅方向に離れた二箇所を支持点とし、前記筐体を移動可能な車輪を介して支持する可動支持手段と、
前記筐体の頂部又は側部上半部に設けられ、前記筐体を傾斜させるときに作業者の手で把持可能な把持手段と、
前記筐体の底部のうち、前記筐体の進行方向の反対側に位置する二つの可動支持手段間に設けられ、前記筐体を傾斜させるときに作業者の足が引っ掛け可能な足掛け手段と、を備え、
前記足掛け手段は、前記二つの可動支持手段の車輪径の中心位置を境として前記筐体の進行方向側に配置されていることを特徴とする筐体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の筐体構造において、
前記足掛け手段は、前記筐体の底部より下方に設けられ、作業者の足の先端部が引っ掛け可能に載せられる足掛け部を有していることを特徴とする筐体構造。
【請求項3】
請求項2に記載の筐体構造において、
前記足掛け手段は、前記筐体の底部を構成する底部フレームに前記足掛け部を構成する部材を固定することを特徴とする筐体構造。
【請求項4】
請求項1に記載の筐体構造において、
前記足掛け手段は、未使用時に着脱可能な覆い手段で覆われ、使用時に前記覆い手段を取り外すことを特徴とする筐体構造。
【請求項5】
請求項4に記載の筐体構造において、
前記足掛け手段は、転倒防止用の支持部品が取り付けられる取付部を兼用することを特徴とする筐体構造。
【請求項6】
請求項1に記載の筐体構造において、
前記足掛け手段は、前記二つの可動支持手段の車輪径の中心位置を含んで前記筐体の進行方向側に配置されていることを特徴とする筐体構造。
【請求項7】
請求項6に記載の筐体構造において、
前記足掛け手段は、前記二つの可動支持手段の車輪径の中心位置と前記筐体の底部との間に設けられることを特徴とする筐体構造。
【請求項8】
請求項1に記載の筐体構造において、
前記把持手段は前記筐体の側部から外側方に張り出さないように設けられていることを特徴とする筐体構造。
【請求項9】
請求項8に記載の筐体構造において、
前記把持手段は前記筐体の頂部に設けられ、前記筐体の頂部に置かれた読取対象物を読み取る読取手段を支持する支持手段を兼用することを特徴とする筐体構造。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の筐体構造と、
前記筐体内に搭載される各種の物品要素と、
を備えたことを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体構造及びこれを用いた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の筐体構造としては例えば特許文献1,2が既に知られている。
特許文献1には、台車本体の後端壁のうち、その後端壁の側に位置する2つの車輪の間には、平面視で内側に向かって窪んだ凹部が形成されており、2つの車輪を回動軸にして台車本体の前端壁を上げる際に作業者の足を掛けるための足掛け部材が、凹部に対して着脱可能に備えられている台車が開示されている。
特許文献2には、作業者の身長に合わせて手押しハンドルの高さ位置を調整し、前方の車輪が段差にさしかかったとき、足掛け領域に足を掛けながら、手押しハンドルを手前に引いて台の前方を持ち上げ、前方の車輪を段差の上に乗せ、取手部を持って台の後方を上方へ持ち上げ、後方の車輪を段差の上に乗せる貨物運搬台車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-43465号公報(発明を実施するための形態,図3
【特許文献2】特開平11-278279号公報(発明の実施の形態,図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、底部に移動可能な可動支持手段を有する筐体構造からなる物品を運搬するに当たり、可動支持手段では越えられない段差を越える場合に、筐体を持ち上げることなく、運搬者一人でも筐体を安全且つ簡単に傾けて段差を越えることを可能とする筐体構造及びこれを用いた物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、頂部及び底部を有し、少なくとも側部が平面で囲まれた筐体と、前記筐体の底部に複数設けられ、前記筐体の予め決められた進行方向の反対側に当該進行方向に交差する幅方向に離れた二箇所を支持点とし、前記筐体を移動可能な車輪を介して支持する可動支持手段と、前記筐体の頂部又は側部上半部に設けられ、前記筐体を傾斜させるときに作業者の手で把持可能な把持手段と、前記筐体の底部のうち、前記筐体の進行方向の反対側に位置する二つの可動支持手段間に設けられ、前記筐体を傾斜させるときに作業者の足が引っ掛け可能な足掛け手段と、を備え、前記足掛け手段は、前記二つの可動支持手段の車輪径の中心位置を境として前記筐体の進行方向側に配置されていることを特徴とする筐体構造である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る筐体構造において、前記足掛け手段は、前記筐体の底部より下方に設けられ、作業者の足の先端部が引っ掛け可能に載せられる足掛け部を有していることを特徴とする筐体構造である。
請求項3に係る発明は、請求項2に係る筐体構造において、前記足掛け手段は、前記筐体の底部を構成する底部フレームに前記足掛け部を構成する部材を固定することを特徴とする筐体構造である。
請求項4に係る発明は、請求項1に係る筐体構造において、前記足掛け手段は、未使用時に着脱可能な覆い手段で覆われ、使用時に前記覆い手段を取り外すことを特徴とする筐体構造である。
請求項5に係る発明は、請求項4に係る筐体構造において、前記足掛け手段は、転倒防止用の支持部品が取り付けられる取付部を兼用することを特徴とする筐体構造である。
請求項6に係る発明は、請求項1に係る筐体構造において、前記足掛け手段は、前記二つの可動支持手段の車輪径の中心位置を含んで前記筐体の進行方向側に配置されていることを特徴とする筐体構造である。
請求項7に係る発明は、請求項6に係る筐体構造において、前記足掛け手段は、前記二つの可動支持手段の車輪径の中心位置と前記筐体の底部との間に設けられることを特徴とする筐体構造である。
請求項8に係る発明は、請求項1に係る筐体構造において、前記把持手段は前記筐体の側部から外側方に張り出さないように設けられていることを特徴とする筐体構造である。
請求項9に係る発明は、請求項8に係る筐体構造において、前記把持手段は前記筐体の頂部に設けられ、前記筐体の頂部に置かれた読取対象物を読み取る読取手段を支持する支持手段を兼用することを特徴とする筐体構造である。
【0007】
請求項10に係る発明は、請求項1乃至9のいずれかに係る筐体構造と、前記筐体内に搭載される各種の物品要素と、を備えたことを特徴とする物品である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、底部に移動可能な可動支持手段を有する筐体構造からなる物品を運搬するに当たり、可動支持手段では越えられない段差を越える場合に、筐体を持ち上げることなく、運搬者一人でも筐体を安全且つ簡単に傾けて段差を越えることができる。
請求項2に係る発明によれば、足掛け手段を簡単に構築することができる。
請求項3に係る発明によれば、足掛け手段の強度を高めることができる。
請求項4に係る発明によれば、未使用時に足掛け手段を目隠しすることができ、筐体構造の外観品質を向上させることができる。
請求項5に係る発明によれば、運搬性及び設置時の安定性を両立する筐体構造を提供することができる。
請求項6に係る発明によれば、足掛け手段が二つの可動支持手段の車輪径の中心位置よりも筐体の進行方向側に配置されている態様に比べて、筐体をより安定的に傾斜させることができる。
請求項7に係る発明によれば、物品の運搬時に足掛け手段が走行の邪魔にならず、走行性を良好に保つ筐体構造を提供することができる。
請求項8に係る発明によれば、把持手段が筐体の側部から外側方に張り出す場合に比べて、狭い設置面積で筐体構造の外観品質を良好に保つことができる。
請求項9に係る発明によれば、専用の把持手段を設けることなく、既存の要素を把持手段として兼用することで筐体を簡単に傾斜させることができる。
請求項10に係る発明によれば、底部に移動可能な可動支持手段を有する筐体構造からなる物品を運搬するに当たり、可動支持手段では越えられない段差を越える場合に、筐体を持ち上げることなく、運搬者一人でも筐体を安全且つ簡単に傾けて段差を越えることを可能とする筐体構造を含む物品を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は本発明が適用された筐体構造を備えた物品の実施の形態の概要を示す説明図、(b)は(a)に示す筐体構造の要部を示す説明図、(c)は(b)中C方向から見た矢視図である。
図2】(a)は実施の形態1に係る物品としての画像形成装置の外観を示す説明図、(b)は(a)に示す画像形成装置の全体構成の概要を示す説明図である。
図3】(a)は実施の形態1に係る画像形成装置の底部の筐体構造を示す説明図、(b)は(a)に示す底部の筐体構造からボトムカバーを取り外した状態を示す説明図である。
図4】(a)は実施の形態1に係る足掛け部品の取付構造を示す説明図、(b)は足掛け部品の構成例を示す説明図である。
図5】(a)は図4(a)中V方向から見た矢視図、(b)は(a)中B-B線断面説明図である。
図6】足掛け部品を目隠しするボトムカバーの一例を示す説明図である。
図7】(a)は実施の形態1に係る画像形成装置において、移動方向が固定されたキャスタと足掛け部との相対位置関係を示す説明図、(b)は同画像形成装置において、移動方向が変化するキャスタと足掛け部との相対位置関係を示す説明図である。
図8】(a)は実施の形態1に係る画像形成装置を運搬する際の足掛け部の使用例を示す説明図、(b)は(a)を斜め下方から見た矢視図である。
図9】(a)は実施の形態1に係る画像形成装置で用いられる足掛け部による作用を示す説明図、(b)は比較の形態1に係る画像形成装置で用いられる足掛け部による作用を示す説明図である。
図10】実施の形態1に係る画像形成装置の筐体構造の底部で用いられる転倒防止用の支持部品の一例を示す説明図である。
図11図10に示す支持部品の使用方法を示す説明図である。
図12図3(b)中XII方向から見た矢視図である。
図13】(a)は図12中XIII部分の詳細を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
図14】実施の形態2に係る物品としての画像形成装置の外観を示す説明図である。
図15】(a)は実施の形態2に係る画像形成装置の底部の筐体構造のうち足掛け部周辺を示す説明図、(b)は(a)に示す足掛け部に転倒防止用の支持部品を取り付けた状態を示す説明図である。
図16】実施の形態2で用いられる支持部品の全体構成を示す説明図である。
図17図16に示す支持部品の昇降操作部周りの詳細を示す説明図である。
図18】支持部品の昇降機構による昇降動作原理を示す説明図である。
図19】(a)は支持部品設置時の状態を示す説明図、(b)は(a)中B-B線断面説明図である。
図20】(a)は支持部品の上方退避時状態を示す説明図、(b)は(a)中B-B線断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明が適用された筐体構造を備えた物品の実施の形態の概要を示す。
同図において、物品6は、頂部1a及び底部1bを有し、少なくとも側部1cが平面で囲まれた筐体1と、筐体1の底部1bに複数設けられ、筐体1の予め決められた進行方向の反対側に当該進行方向に交差する幅方向に離れた二箇所を支持点とし、筐体1を移動可能な車輪2aを介して支持する可動支持手段2とを含む筐体構造を備え、この筐体1に各種の物品要素を搭載したものである。
ここでいう物品6とは、複写機、プリンタ、スキャナ、ファクシミリ等の機能を複合させた複合機や、家電、家具等の製品を広く含み、設置位置まで車輪2aで移動可能に運搬する態様のものを前提とする。
【0011】
特に、本実施の形態に係る筐体構造は、図1(a)~(c)に示すように、筐体1の頂部1a又は側部1c上半部に設けられ、筐体1を傾斜させるときに作業者の手で把持可能な把持手段3と、筐体1の底部1bのうち、筐体1の進行方向の反対側に位置する二つの可動支持手段2間に設けられ、筐体1を傾斜させるときに作業者の足が引っ掛け可能な足掛け手段4と、を備え、足掛け手段4が、二つの可動支持手段2の車輪2a径の中心位置Qを境として筐体1の進行方向側に配置されている。
このような構成を備えていれば、例えば物品6を移動させる際に、車輪2aが乗り越えにくい障害物(例えば配線ケーブルカバー等)の段差があるとしても、物品6を持ち上げることなく、作業者が一人でも立ったままで、把持手段3を把持すると共に、足掛け手段4に足掛けすることで、物品6を傾けた姿勢に保ち、段差のある障害物を乗り越えることが可能である。
【0012】
このような技術的手段において、筐体1としては、頂部1a及び底部1bを有し、少なくとも側部1cが平面で囲まれた箱型の態様であればよい。仮に、筐体1の一部に例えば用紙等の媒体排出部として確保した空洞部を有する態様であっても、空洞部以外の側部1cが平面で囲まれているものは広く含まれる。
また、筐体1を任意の方向に移動させるには、複数の可動支持手段2のうち、少なくとも一つは移動方向が変化する車輪2aを有するものであることが必要である。このため、筐体1の進行方向の反対側に位置する二つの可動支持手段2としては、移動方向が固定された車輪2aを有する態様、あるいは、移動方向が変化する車輪2aを有する態様がある。
【0013】
更に、把持手段3としては、専用の要素として設けるようにしてもよいが、既存の要素を兼用するようにしてもよい。また、把持手段3の設置箇所については、筐体1の頂部1aに設けられるものに限られず、側部1c上半部に設けられるものを広く含む。この場合、作業者が立ち姿勢のままで筐体1を傾斜させることきに把持することが可能である。尚、筐体1の側部1c下半部や底部1bに把持手段を設ける態様については、作業者が立ち姿勢のままで筐体1を傾斜させる上で把持し難く、また、筐体1の底部1b周辺に可動支持手段2の車輪2aが半分隠れる程度まで目隠し用のカバー等の覆い部材を設ける態様では、覆い部材が邪魔になって底部1bに手を掛けて持ち上げることが困難である。
【0014】
また、足掛け手段4としては、作業者の足が引っ掛け可能な足掛け部4aを有するものを広く含む。ここで、足掛け部4aとしては、足が引っ掛け可能な構成を有していれば凹所や踏み板等適宜選定して差し支えない。
また、足掛け手段4とこれを挟む二つの可動支持手段2との位置関係については、図1(c)に示すように、足掛け手段4は二つの可動支持手段2の車輪2a径の中心位置Qを境として筐体1の進行方向側に配置されていればよい。
本態様のような位置関係を有していれば、筐体1を傾斜させる際に、足掛け手段4に足掛けしたときの力点Fは車輪2aの接地点(支点Sに相当)よりも筐体1の進行方向に対して前方にあるため、力点Fに係る力により筐体1の進行方向に前進する力が生ずる。しかし、車輪2aの支点Sにも足掛けに伴う力が下方に押し付ける方向に作用するため、車輪2aの転がりは抑制される点で好ましい。
【0015】
特に、移動方向が変化する車輪2aを有する態様では、鉛直方向に延びる支軸を中心に移動方向が変化する車輪2aを有するが、車輪2aの移動方向の変化に伴って車輪2a径の中心位置Qが筐体1の進行方向に変化するものがある。このような態様にあっては、車輪2aの移動方向がどの位置にあるとしても、足掛け手段4は車輪2a径の中心位置Qを境に筐体1の進行方向側に配置されていることが必要である。
【0016】
次に、本実施の形態に係る筐体構造の代表的態様又は好ましい態様について説明する。
先ず、本実施の形態に係る筐体構造の好ましい態様としては、足掛け手段4は、筐体1の底部1bより下方に設けられ、作業者の足の先端部が引っ掛け可能に載せられる足掛け部4aを有している態様が挙げられる。ここで、足掛け部4aとしては、筐体1の底部1bに一体的に設けるようにしてもよいが、簡単に構築するという観点からすれば、足掛け手段4は、筐体1の底部1bを構成する底部フレームに足掛け部4aを構成する部材を固定する態様が好ましい。本例では、足掛け部4aには足掛けに伴う力が作用することになるが、足掛けに伴う力が作用しても、変形し難いように、曲げ剛性の高い断面形状の部材を取付部に対して溶接などで強固に固着するようにすればよい。
【0017】
また、足掛け手段4を使用しない場合の筐体構造の外観品質を良好に保つという観点からすれば、足掛け手段4は、未使用時に着脱可能な図示外の覆い手段で覆われ、使用時に覆い手段を取り外す態様が挙げられる。
更に、足掛け手段4は足掛けのために機能するものであるが、これ以外の機能を具備するようにしてもよく、例えば転倒防止用の図示外の支持部品が取り付けられる取付部を兼用するようにしてもよい。
【0018】
また、足掛け手段4の好ましい態様としては、足掛け手段4を挟む二つの可動支持手段2の車輪2a径の中心位置Qを含んで筐体1の進行方向側に配置されている態様が挙げられる。本例では、足掛け手段4は、力点Fと支点Sとが同一直線上になる態様(足掛け手段4の入口位置が車輪2a径の中心位置Qに一致する態様)になり、同一直線上に配置されない場合に比べて、車輪2aの転がりが更に抑制される。
更に、足掛け手段4の別の好ましい態様としては、足掛け手段4を挟む二つの可動支持手段2の車輪2a径の中心位置Qと筐体1の底部1bとの間に設けられる態様が挙げられる。本例は、足掛け手段4が車輪2a径の中心位置Qよりも下方に及んで配置される態様に比べて、物品6を運搬する際に、足掛け手段4と車輪2aの接地面との距離を確保し易く、その分、足掛け手段4が障害物に衝突し難く、可動支持手段2による走行性は良好に保たれる。
【0019】
また、把持手段3の好ましい態様としては、筐体1の側部1cから外側方に張り出さないように設けられている態様が挙げられる。本例は、接地面積の狭い筐体構造であるとしても、把持手段3が筐体1の側部1cから外側方に張り出す外部突起にはならず、筐体1の外観品質が保たれる。
特に、本例において、把持手段3の好ましい態様としては、筐体1の頂部1aに設けられ、筐体1の頂部1aに置かれた読取対象物を読み取る読取手段7を支持する支持手段8を兼用する態様が挙げられる。本例は、作業者が立ち姿勢のままで把持し易く、把持手段3として既存の要素を利用する点で好ましい。
【0020】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2(a)は実施の形態1に係る物品としての画像形成装置の全体構成を示す。
-画像形成装置の全体構成-
同図において、画像形成装置20は、装置筐体21と、この装置筐体21に搭載される各種の物品要素として画像形成に必要な要素と、を備えている。
【0021】
本例において、装置筐体21は、図2(a)に示すように、頂部21a及び底部21bを有し、側部21cが平面で囲まれた縦長の略直方体状に構成されており、ユーザ操作側を手前側とすると、手前側に隣接する一側面(図中右側面)のうち頂部21a寄りに空洞部21dを有する形状になっている。
また、本例において、画像形成に必要な要素としては、例えば図2(b)に示すように、装置筐体21内の上側領域に搭載され、用紙等の媒体41に画像を形成する作像エンジン30と、装置筐体21内の下側領域に搭載され、用紙等の媒体41を作像エンジン30に向けて供給する媒体供給装置40と、装置筐体21の空洞部21dを利用して設けられ、作像エンジン30で作像済みの媒体41を排出して収容する媒体排出受け50と、媒体供給装置40から供給された媒体41を作像エンジン30を経て媒体排出受け50に搬送する媒体搬送系60と、装置筐体21の頂部21aに置かれた読取対象物を読み取るように、頂部21aの上方に対向して配置される読取手段としての撮像器具(例えばカメラ)70と、を備えている。
【0022】
本例では、装置筐体21の頂部21aの一側には断面L字状の支持アーム71が設けられている。この支持アーム71は上方に向かって延びる縦アーム部71aと、縦アーム部71aの先端から頂部21aの上方に対向するように突出する横アーム部71bとを有しており、横アーム部71bの下面に撮像器具70が支持されている。
尚、本例では、支持アーム71の縦アーム部71aの途中には、作像エンジン30、媒体供給装置40及び媒体搬送系60を制御する図示外の制御装置に対して画像形成に必要な操作を行う図示外の操作パネルが着脱可能に保持される操作パネル取付部72が設けられている。
【0023】
本例では、作像エンジン30としては、例えば電子写真方式で複数の色成分画像を複数の感光体上に形成する複数の画像形成部31と、各画像形成部31の色成分画像を一次的に転写して搬送する例えばベルト状の中間転写体32と、中間転写体32上の一次転写画像を媒体41に転写する転写装置33と、媒体41上に転写された画像を定着する定着装置34と、を備えたものが採用されているが、これに限られないことは勿論である。
また、本例では、媒体供給装置40は三つの媒体供給部を備えているが、その数、レイアウト等については適宜設計変更して差し支えなく、必要に応じて、手差し型の媒体供給部を付加するようにしてもよい。
更に、媒体排出受け50についても媒体41の排出位置に応じて適宜設計変更して差し支えなく、媒体搬送系60についても、本例では媒体41の片面に画像を形成する搬送方式が採用されているが、例えば両面搬送モジュールを付加することで媒体41の両面に画像を形成するようにしてもよい。
【0024】
-装置筐体の底部支持構造-
本例において、装置筐体21の底部支持構造は、装置筐体21の底部21b下面の複数箇所(本例では四隅)に設けられ、装置筐体21を任意の移動可能に搬送する可動支持手段としてのキャスタ22と、画像形成装置20を設置する際に装置筐体21を安定的に支持する支持部品23と、を備えている。
【0025】
<キャスタ>
本例において、キャスタ22は、図3乃至図5に示すように、いずれも任意の方向に移動可能な構成を有しており、装置筐体21の底部21b下面の四隅に夫々取付板81を取付け、この取付板81には鉛直方向に垂下した支軸に対して図示外のベアリングを介して車輪ホルダ82を回転可能に設けると共に、車輪ホルダ82には対構成の車輪83の車軸84を回転可能に保持させるようにしたものである。尚、図中符号85はキャスタ22の車輪83の回転を停止させるストッパである。
また、本例では、キャスタ22は、いずれも移動方向の変化する態様を有しているが、装置筐体21を任意の方向に移動させるには、少なくとも一つのキャスタ22が移動方向の変化する態様であればよく、残りのキャスタ22は移動方向の固定された態様(車輪ホルダ82が非回転)のもので差し支えない。
【0026】
<支持部品>
本例において、支持部品23は、図3乃至図5に示すように、例えば装置筐体21の底部21b下面のうち、ユーザ操作側(U)を手前側とすると、手前側に隣接する一側(図中左側)及び奥側の略中央箇所に夫々設けられている。
本例では、装置筐体21の奥側に作像エンジン30の駆動系が搭載され、また、装置筐体21の手前側に隣接する他側(図中右側)に空洞部21dが設けられ、更に、装置筐体21の頂部21aの奥側に支持アーム71が設けられ、この支持アーム71に撮像器具70が支持されていることから、画像形成装置20の重心位置は、装置筐体21の手前側に隣接する一側(図中左側)で且つ奥側に片寄っていると推測される。このため、本例では、画像形成装置20の重心位置を考慮し、画像形成装置20が転倒し易い側の装置筐体21の底部21bに支持部品23を設置するようにしたものである。
尚、支持部品23の構成の詳細については後述する(図10図11参照)。
【0027】
-足掛け部品-
<足掛け部品の設置の必要性>
本例において、例えばオフィスの引越やレイアウト変更を実施する際、オフィス内で画像形成装置20を移動させることが必要になる。このとき、画像形成装置20は、支持部品23による固定状態を解除した後、キャスタ22で移動可能であるが、オフィス内の床面にキャスタ22では乗り越えられないケーブルカバー等の段差のある障害物が存在することがある。このような場合に、キャスタ22では乗り越えられない段差の障害物を通過するには、画像形成装置20を持ち上げる必要がある。
しかしながら、画像形成装置20はそもそも重量物で持ち上げるには相当の力が必要になるほか、図3(a)に示すように、装置筐体21の側部21cの下方には、キャスタ22が半分隠れる高さまで目隠し用のボトムカバー25が側部21cを構成するサイドカバー24の下縁に取り付けられていることがある。このような態様では、装置筐体21の底部21bを構成する底部フレームに手を掛けて持ち上げることは困難である。
【0028】
そこで、本実施の形態では、キャスタ22では乗り越えられない段差の障害物を通過するに当たり、画像形成装置20を持ち上げることなく、作業者一人でも立ったままの姿勢で画像形成装置20を傾けて、障害物の段差を越えることが可能になる手法を見出すに至った。
具体的には、図2(a)及び図3(b)に示すように、装置筐体21の底部21bに足掛け可能な足掛け部品100を最適な位置に組み込み、足掛け部品100に足掛けしながら、装置筐体21の支持アーム71を作業者が把持する把持部品として兼用することで、画像形成装置20を傾けた姿勢に安定的に保持し、キャスタ22が障害物の段差を容易に越えるようにしたものである。
【0029】
<装置筐体の底部構成例>
本例において、装置筐体21の底部21bは、図3乃至図5図12に示すように、底部フレーム90にて構成されている。この底部フレーム90は、略矩形状のボトムプレート91を有し、このボトムプレート91の手前側を除いて、左右両側及び奥側に左右フレーム枠材及び後フレーム枠材(以下必要に応じて単にフレーム枠材92(図12参照)という)を溶接等で固着し、左右両側及び奥側のフレーム枠材92でボトムプレート91の左右両側及び奥側の領域を補強し、四つのキャスタ22及び二つの支持部品23に対する支持強度を確保するようになっている。
【0030】
更に、ボトムプレート91には左右両側に位置するキャスタ22の間の領域内に、キャスタ22とは非接触で前後方向に延び且つ下側に凹む断面略U字状の凹所94を形成し、ボトムプレート91の手前側には、前フレーム枠材95を設置面18(図2(b)参照)に接触しない状態で溶接等により固着するようにしたものである。
ここで、各フレーム枠材92,95の形状、断面構造は適宜選定して差し支えないが、本例では、左右両側及び奥側のフレーム枠材92としては断面U字状、断面L字状、あるいは、閉断面状に形成されたものの中から適宜選定して使用される。
【0031】
<足掛け部品の取付箇所>
本例において、足掛け部品100は、図3乃至図5に示すように、装置筐体21の底部フレーム90のうち、装置筐体21の予め決められた進行方向(例えば図4(a)中H方向:装置筐体21の手前側から見て右側から左側に向かう方向に相当)側とは反対側に位置する二つのキャスタ22(例えば22a,22b)間に設けられている。
具体的には、底部フレーム90のうち、凹所94の両側には当該凹所94を区画する区画壁97と、この区画壁97から両側方に張り出す張り出し壁98とが形成され、区画壁97及び張り出し壁98で囲まれるL字領域の張り出し壁98の前後にキャスタ22が配置され、装置筐体21の進行方向H側とは反対側に位置するL字領域のキャスタ22(具体的には22a,22b)間に足掛け部品100が配置されている。
【0032】
<足掛け部品の構成例>
本例では、足掛け部品100は、図4(a)(b)に示すように、SUS等の金属材料にて一体成形された足掛けプレート101を備えている。この足掛けプレート101は、作業者の足の先端部が踏み置かれる細長い矩形状の踏み板部102と、この踏み板部102の両側に略直角に折り曲げられた一対の側板部103とを有し、踏み板部102及び一対の側板部103とで断面チャンネル状に形成されている。
更に、本例では、踏み板部102の短手方向の幅寸法w1は側板部103の幅寸法w2よりも少し長く設定されており、踏み板部102の奥側部分が側板部103に対して突出する突出部102aとして形成されている。
ここで、足掛けプレート101の踏み板部102及び一対の側板部103の寸法は、踏み板部102及び一対の側板部103で囲まれる空間領域が作業者の足の先端部を収容する上で必要充分なスペースを確保するように選定されている。更に、一対の側板部103の高さ寸法dは凹所94の区画壁97の高さ寸法に略等しくなるように選定されている。
【0033】
<足掛け部品の取付構造>
足掛け部品100の取付構造としては、図4及び図5に示すように、足掛けプレート101をU字形状が上方を向くように配置し、底部フレーム90の区画壁97及び張り出し壁98に足掛けプレート101の一対の側板部103の奥側縁部及び上端部を突き当てると共に、底部フレーム90の区画壁97の下縁に足掛けプレート101の踏み板部102の突出部102aを突き当て、区画壁97の下縁に対して踏み板部102の突出部102aを溶接Eにて固着すると共に、張り出し壁98の下面に対して一対の側板部103の上端部を溶接Eにて固着するようにすればよい。
これにより、足掛け部品100が底部フレーム90に強固に組み付けられ、画像形成装置20を傾斜させる際の足掛け部FTとして機能する。
尚、足掛け部品100の取付構造については、実施の形態以外の手法(止め具等による固着)を用いてもよいことは勿論である。
【0034】
-足掛け部の目隠し構造-
本例では、足掛け部FTは、図3(a)に示すように、未使用時には覆い手段としてのボトムカバー25で覆われ、外部から目隠しされている。また、足掛け部FTは、図3(b)に示すように、使用時には、ボトムカバー25を取り外すことで露呈するようになっている。
本例において、ボトムカバー25は、図6に示すように、装置筐体21の側部21cを構成するサイドカバー24の下縁に着脱機構110を介して着脱されるようになっている。尚、図6はサイドカバー24とボトムカバー25とを内側から見た状態を示す説明図である。
【0035】
ここで、着脱機構110としては、例えばサイドカバー24の下縁に設けられた案内部に沿ってボトムカバー25を水平方向に沿って移動可能に案内する案内要素111と、ボトムカバー25を予め決められた方向に水平移動させるときに、サイドカバー24の下縁部に設けられた引っ掛かり部にボトムカバー25の上縁に設けられた引っ掛け片を引っ掛けて両者を結合する結合要素112と、結合要素112による両者の結合時に例えば位置決めピンと位置決め孔との組み合わせによりサイドカバー24及びボトムカバー25の相対位置関係を位置決めする位置決め要素113とを備えたものが用いられている。
本例の着脱機構110によれば、ボトムカバー25を取り外す場合には、位置決め要素113による位置決めを解除しながら、サイドカバー24の下縁に沿ってボトムカバー25を結合要素112による結合を解除する方向Jに移動させ、結合要素112による結合が解除された時点でボトムカバー25をサイドカバー24から離れる下方に移動させるようにすればよい。また、ボトムカバー25を装着する場合には、取り外す作業と逆の動作を行うようにすればよい。尚、着脱機構110については、図6に示す態様に限定されないことは勿論である。
【0036】
-足掛け部とキャスタとの位置関係-
(1)移動方向が変化するキャスタ
本例では、図7(a)に示すように、キャスタ22は任意の方向に移動する態様である。車輪ホルダ82が支軸を中心に任意の方向に回転した場合、仮に、支軸が車輪83径の中心位置Qから偏倚して配置されると、車輪83径の中心位置Qは、図7(a)に仮想線で示す位置から図7(a)に実線で示す位置の範囲で変化することが起こり得る。
このため、本例では、車輪83の移動方向がどの位置にあるとしても、足掛け部FTは車輪83径の中心位置Qを境に装置筐体21の進行方向H側に配置されていることが必要である。
特に、本例では、車輪83径の中心位置Qが図7(a)の実線で示す位置にある場合に、足掛け部FTの入口位置が車輪83径の中心位置Qと一致するように選定されている。このため、本例では、車輪83の移動方向が他の位置に変化したとしても、足掛け部FTの入口位置は車輪83径の中心位置Qよりも装置筐体21の進行方向H側に配置されるようになっている。
【0037】
(2)移動方向が固定されたキャスタ
足掛け部FTの両側に位置するキャスタ22が移動方向の固定された態様である場合には、図7(b)に示すように、車輪ホルダ82が支軸を中心に回転しないため、車輪83径の中心位置Qは一義的に決まり、変化しない。このため、本例では、足掛け部FTは車輪83径の中心位置Qを境に装置筐体21の進行方向H側に配置されていればよい。特に、足掛け部FTの入口位置が車輪83径の中心位置Qと一致するように選定されていることが好ましい。
【0038】
-足掛け部の使用方法-
今、画像形成装置20を運搬するに当たって、キャスタ22で超えられない段差の障害物を通過するには、図3(a)(b)に示すように、足掛け部FTを覆うボトムカバー25を取り外すことで、足掛け部FTを露呈させる。
しかる後、作業者は、図2(a)及び図8(a)(b)に示すように、装置筐体21の頂部21aに設けられた支持アーム71の縦アーム部71aを把持しながら、足掛け部FTに足MFの先端部を引っ掛け可能に載せ、足掛け部FTの両側にあるキャスタ22(具体的には22a,22b)の車輪83の接地箇所を支点とし、画像形成装置20を傾斜させ、障害物を乗り越えるようにすればよい。
【0039】
-足掛け部の作用-
このような足掛け部FTにおいては、図9(a)に示すように、装置筐体21を傾斜させる際に、足掛け部FTに足掛けしたときの力点Fはキャスタ22の車輪83の接地点(支点Sに相当)よりも装置筐体21の進行方向に対して前方にあるため、力点Fに係る力により装置筐体21には進行方向に前進する力が生ずる。しかし、車輪83には進行方向と逆方向に回る回転モーメントMが作用すると共に、車輪83の支点Sにも足掛けに伴う力が下方に押し付ける方向に作用するため、車輪83の転がりは抑制される。このため、足掛け部FTに足掛けし、画像形成装置20を傾けたとしても、装置筐体21がキャスタ22を介して不必要に移動する懸念は少なく、画像形成装置20を傾斜させた姿勢に保ち、段差のある障害物を乗り越えることが可能である。
特に、本例では、足掛け部FTの入口位置が車輪83径の中心位置Qに一致する態様であれば、足掛け部FTは、力点Fと支点Sとが同一直線上になり、同一直線上に配置されない場合に比べて、車輪83の転がりが更に抑制される。
【0040】
また、本例では、足掛け部FTは、図4及び図5に示すように、底部フレーム90に対して足掛けプレート101の二箇所(踏み板部102の突出部102a、側板部103の上端部)の稜線を溶接Eにて固着し、更に、底部フレーム90の区画壁97に対して足掛けプレート101の側板部103の奥側縁部の稜線を溶接ではないが、突き当てて配置している。このように、足掛け部FTは足掛けプレート101の三箇所の稜線で三軸方向が固定される構造であるため、足掛け部FTの支持強度が充分に保たれる。
【0041】
特に、本例では、底部フレーム90の足掛け部FTの取付箇所にはボトムプレート91に凹所94を設けると共に、張り出し壁98がフレーム枠材92(図12参照)で補強されているため、足掛け部FTの取付箇所の底部フレーム90の支持剛性もより高いものになっており、その分、足掛け部FTの支持強度はより安定したものに保たれる。
【0042】
-足掛け部の上下幅の選定-
更に、本例では、足掛け部FTは、図7(a)(b)に示すように、キャスタ22の車輪83径の中心位置Qと底部フレーム90の張り出し壁98の下面との間に設けられている。
このとき、足掛け部FTが車輪83径の中心位置Qよりも下方に及んで配置される態様では、画像形成装置20を運搬する際に、足掛け部FTと車輪83の接地面との距離が狭くなるため、足掛け部FTが障害物に衝突し易くなり、キャスタ22による走行性が損なわれ易い。
この点、本例では、画像形成装置20を運搬する際に、足掛け部FTと車輪83の接地面との距離がある程度確保されるため、足掛け部FTが障害物に衝突し難く、キャスタ22による走行性が良好に保たれる。
【0043】
◎比較の形態1
図9(b)は比較の形態1に係る足掛け部FT’の構成例を示す。
同図において、足掛け部FT’は、足掛け部材120を装置筐体21の底部21bの外方に張り出すように配置し、キャスタ22の車輪83の支点Sよりも足掛けの力点Fが装置筐体21の進行方向に対して後方にあるものである。
本例にあっては、装置筐体21を傾斜させる際に、足掛け部材120に足掛けすると、足掛けに伴う力により車輪83に対し進行方向に回る方向に回転モーメントMがかかり、その分、車輪83が転がり易く、装置筐体21を安定的に傾斜させることが困難になる懸念がある。
【0044】
-支持部品の構成例-
本例では、支持部品23は二つ設けられているが、支持部品23の基本的構成は、図10及び図11に示すように、高さ調整用の脚部品としてのアジャスタフット130と、底部フレーム90に設けられ、アジャスタフット130を受け止めて支持する受け部品140とを備えたものである。
ここで、アジャスタフット130は、高さ方向に延びるロッド132の略全域に雄ねじ部133を形成し、ロッド132の下端部に当該ロッド132の雄ねじ部133よりも外径の大きい台座部135を設けるようにしたものである。
本例において、ロッド132は曲げ強度の高い金属でねじ加工性の優れた材料であれば適宜選定して差し支えなく、例えば鉄鋼材料よりもねじ加工性に優れたSUM材が用いられる。
【0045】
また、台座部135はPC樹脂やABS樹脂等を用いて例えば円板状の台座本体を形成し、この台座本体の中央にはロッド132の下端部を収容する凹部を形成し、この凹部内にロッド132の下端部を挿入して接着剤等で固着するようにしたものである。また、台座部135の外周部には回転操作時のときの滑り止め用の凹凸部136が形成されており、更に、台座部135の凹部の周囲には段付部137が形成されており、台座部135の凹部とロッド132の下端部との間の連結部面積を増大することで両者の連結強度を確保するようにしたものである。
尚、本例では、台座部135に段付部137を形成したものが示されているが、この段付部137は必ずしも必要ではなく、適宜選定して差し支えない。
【0046】
また、受け部品140は、底部フレーム90の構成要素であるフレーム枠材(具体的には左フレーム枠材又は後フレーム枠材)92のうち、上側に位置する板材92aに設けられ且つロッド132の雄ねじ部133がねじ込まれるバーリング加工部141と、フレーム枠材92の下側に位置する板材92bに設けられるロッド132が通過可能な通孔145と、を備えたものである。
【0047】
また、本例では、バーリング加工部141と通孔145との間の上下方向の距離gは、アジャスタフット130が接地位置まで下がった状態(高さ調整実施時)で、ロッド132がバーリング加工部141及び通孔145を挿通した状態を保つように選定されている。
ここで、アジャスタフット130が画像形成装置20の倒れ時の荷重を受けたときに、アジャスタフット130のロッド132は弾性変形することになるが、通孔145の孔径は、ロッド132の弾性変形域内に収まるように選定されていることが好ましい。
また、通孔145は、バーリング加工部141の孔径の公差に対し同等以上の公差で形
成されていることが好ましい。
【0048】
-支持部品の使用方法-
<高さ調整時>
画像形成装置20を設置するに当たって、図10及び図11に示すように、アジャスタフット130の台座部135を回転させると、アジャスタフット130のロッド132の雄ねじ部133がバーリング加工部141の雌ねじ部に沿って接地方向に移動し、例えば図11に二点鎖線で示すように、待避位置Bに待避していたアジャスタフット130を実線で示す接地位置Aまで引き下げることが可能である。
そして、アジャスタフット130が接地位置Aに達した段階では、アジャスタフット130は、ロッド132が受け部品140であるバーリング加工部141と通孔145とを挿通した状態を保つようになっている。
【0049】
<待避時>
画像形成装置20を設置するに当たって、画像形成装置20をキャスタ22で移動させ、所望の設置場所を選定する場合には、画像形成装置20の移動操作に支持部品23が邪魔にならないように、アジャスタフット130を図11の二点鎖線で示す待避位置Bに保持するようにすればよい。
本例では、アジャスタフット130が待避位置Bに位置するとき、アジャスタフット130の台座部135及び段付部137が通孔145を挿通しない位置に配置されることになり、アジャスタフット130のロッド132は、通孔145及びバーリング加工部141を挿通し、更に、フレーム枠材92の上側に位置する板材92aを突き抜けて配置される。
尚、本例では、受け部品140としてバーリング加工部141を採用しているが、これに変えて、ナット部材を用いるようにしてもよいことは勿論である。
【0050】
-キャスタ保護構造-
本実施の形態においては、画像形成装置20を運搬するに当たって、キャスタ22が障害物に衝突した際に、キャスタ22が破損することを抑制するために、図12及び図13に示すように、装置筐体21の底部フレーム90を構成するフレーム枠材、具体的には前フレーム枠材95を利用し、キャスタ22を保護する構造が採用されている。
つまり、本例においては、装置筐体21の底部フレーム90を構成する前フレーム枠材95がキャスタ22を保護するための保護部品として機能するようになっている。
本例において、前フレーム枠材95の基本的構成は、左右方向に延びる長尺な矩形状の平板部95aを有し、この平板部95aの上縁側には底部フレーム90を構成するボトムプレート91の凹所94を囲むU字状の切欠95bを形成し、一方、平板部95aの下縁側には、ボトムプレート91の凹所94の領域に対応した範囲において平板部95aに対し90度よりも小さい角度で折曲された略L字状の第1の折曲片部95cを形成し、平板部95aの下縁側のうちボトムプレート91の凹所94の領域以外の箇所には、第1の折曲片部95cに隣接する箇所から折曲量が徐々に減少して略三角形状に連なる第2の折曲片部95dを形成すると共に、第2の折曲片部95dに隣接して第2の折曲片部95dの最小折曲量と略等しい折曲量が短い略L字状に折曲された第3の折曲片部95eを形成したものである。
そして、前フレーム枠材95は、平板部95aがボトムプレート91の凹所94の前縁部に溶接され、また、第1の折曲片部95cの先端縁がボトムプレート91の凹所94の底部外面に溶接されている。
【0051】
(1)前フレーム枠材95の長手方向端部位置P1は、図13(a)(b)に示すように、キャスタ22の外方側端部位置以上の外方領域に配置されている。
ここで、キャスタ22の外方側端部位置とは、基本的にキャスタ22の構成要素(主としては車輪ホルダ82、車輪83)のいずれかで最も外方側端部に配置されているものの位置を指す。但し、構成要素であるストッパ85の場合には、もともと可動する要素であるため、解除時にキャスタ22の外方側端部位置に存在したとしても、拘束時の位置がキャスタ22の外方側端部位置にならない場合には除外される。
【0052】
◆条件1:前フレーム枠材95の長手方向端部位置P1がキャスタ22の外方側端部位置と同じ位置に配置されている場合。
この条件で、障害物150にキャスタ22が衝突するとき、前フレーム枠材95の先端部、具体的には平板部95aの先端部がキャスタ22と同時に障害物150に衝突する。これにより、衝突による衝撃力がキャスタ22、前フレーム枠材95に分散することから、その分、キャスタ22への衝撃力が低減し、キャスタ22の変形が抑制される。
本条件においては、前フレーム枠材95が障害物150に衝突する部分は平板部95aであるが、障害物150との衝突時の衝撃力を長手方向に沿って受け止めることから、キャスタ22に比べて、前フレーム枠材95の剛性は高く、キャスタ22へ作用する衝撃力を低減することが可能である。
【0053】
◆条件2:前フレーム枠材95の長手方向端部位置P1がキャスタ22の外方側端部位置に対して外方寄りに配置されている場合。
この条件で、障害物150にキャスタ22が衝突する状況では、前フレーム枠材95の先端部、具体的には平板部95aの先端部が先に障害物150に衝突する。このため、本例では、障害物150に対してキャスタ22が衝突する事態を回避することが可能になる。
本条件においては、画像形成装置20の運搬方向が前フレーム枠材95の長手方向に対して斜めになったり、装置筐体21やキャスタ22に組立公差があったとしても、障害物150に対してキャスタ22のみを衝突させる事態を回避することができ、キャスタ22の衝突に先んじて前フレーム枠材95を衝突させることができる。
【0054】
(2)前フレーム枠材95の長手方向端部は、キャスタ22が任意の方向に向けて自転したときに非接触な間隔を置いて配置されている。
本例において、前フレーム枠材95の平板部95aとキャスタ22との相対位置関係は両者が非接触に保たれる距離を置いており、また、前フレーム枠材95は、第2の折曲片部95d、第3の折曲片部95eがキャスタ22の近くに配置されているが、第2の折曲片部95d、第3の折曲片部95eは、第1の折曲片部95cと比べて、折曲量が十分に小さい。
このため、前フレーム枠材95とキャスタ22とが干渉する懸念はない。
【0055】
(3)前フレーム枠材95の長手方向端部の下端位置P2はキャスタ22の中心位置Q(具体的には車輪83の車軸84中心位置に相当)以下の下方領域に配置されている。
前フレーム枠材95の長手方向端部の下端位置P2をキャスタ22の中心位置Qよりも上方に配置する場合に比べて、障害物150を乗り越える妨げにならず、キャスタ22を有効に保護することができる。
特に、前フレーム枠材95の長手方向端部の下端位置P2をキャスタ22の中心位置Qより下方に配置するようにすれば、更に、キャスタ22を保護する上で有効である。
【0056】
(4)前フレーム枠材95は、ボトムプレート91の凹所94を囲むU字状の切欠95bを有しており、ボトムプレート91の前縁の剛性を保っている。
本例では、ボトムプレート91に予め凹所94が設けられ、かつ、ボトムプレート91は、図示外の左右フレーム枠材、後フレーム枠材と共に、前フレーム枠材95で周囲の剛性を確保するようになっている。
このため、ボトムプレート91の凹所94は、例えば媒体供給装置40の最下段の媒体供給部(図示せず)の収容部として有効に利用することが可能である。
【0057】
(5)前フレーム枠材95は、手前側のキャスタ22よりも更に手前側に配置されている。
本例では、前フレーム枠材95は、その長手方向端部側において障害物150に対するキャスタ22の衝突による破損を抑制するほか、平板部95aによって前側から隠すことで、例えばユーザが操作するときに、ユーザの足先がキャスタ22に触れるような事態を防止することが可能である。
(6)前フレーム枠材95は、長手方向両端部で、両側に位置するキャスタ22を夫々保護する構造を採用している。
本例では、複数のキャスタ22を一つの前フレーム枠材95で保護する上で有効である。
【0058】
(7)前フレーム枠材95は、平板部95aのみならず、第1~第3の折曲片部95c~95eを備えた構造であり、平板部95aのみの構造に比べて、ボトムプレート91の前縁の剛性を高めている。
つまり、平板部95aはボトムプレート91の前縁に固着され、また、第1の折曲片部95cはボトムプレート91の凹所94の底部下面に固着されており、ボトムプレート91の手前側に対してボトムプレート91との間で閉断面構造を構成している。このため、ボトムプレート91の手前側の支持剛性を高めることが可能である。
更に、本例では、前フレーム枠材95の長手方向端部が、平板部95aと第3の折曲片部95eとのL字状断面になっているため、第3の折曲片部95eがない場合に比べて、剛性が高くなり、その分、障害物150に対する衝撃を変形なく受け止めることが可能である。
【0059】
◎実施の形態2
図14は実施の形態2に係る画像形成装置としての要部を示す。
-画像形成装置の全体構成-
本例において、画像形成装置20の基本的構成は、実施の形態1と略同様に、装置筐体21と、この装置筐体21に画像を形成するために搭載された各種要素とを備えたものであるが、装置筐体21の底部支持構造が実施の形態1と異なる。
つまり、本例では、装置筐体21の底部支持構造は、装置筐体21の底部下面の複数箇所(本例では四隅)に設けられ、装置筐体21を任意の移動可能に搬送する可動支持手段としてのキャスタ22と、画像形成装置20を設置する際に装置筐体21を安定的に支持する支持部品23と、を備えているが、支持部品23は、図15(a)(b)に示すように、実施の形態1の足掛け部FTを利用して取り付けられている。
【0060】
-支持部品の全体構成-
本例において、画像形成装置20は、装置筐体21の平面視の略中央付近に重心位置があり、支持部品23は、図14乃至図16に示すように、装置筐体21の手前側(フロント側に相当)に隣接する側方側(サイド側に相当)の下部に対称的に設けられている。
また、本例では、底部フレーム90の左右方向の下部には足掛け部品100が対称的に組み込まれ、足掛け部FTが一対設けられている。
そして、支持部品23の基本的構成は、設置面18に接触して装置筐体21を支持する脚部品180と、装置筐体21の下部に設けられ、脚部品180を昇降する昇降手段としての昇降機構200と、昇降機構200の昇降動作を操作する操作手段としての操作ハンドル230とを備えている。
【0061】
-脚部品-
本例において、脚部品180は、図16及び図17に示すように、設置面18に接触可能に設けられ、装置筐体21の下部と設置面18との隙間から装置筐体21の外側面より外側に張り出すように延びる外側脚部181と、外側脚部181に対して上方に配置され装置筐体21の外側面の内側に延びる内側脚部190と、装置筐体21の外側面の内側で外側脚部181、内側脚部190の間を連結する連結部195とを有している。
本例では、脚部品180は、一枚の金属製の板材を折曲加工して外側脚部181、内側脚部190及び連結部195を形成したものである。
ここで、脚部品180として使用される金属製の板材としては、画像形成装置20を支持する上で必要な剛性を持つものであれば適宜選定して差し支えないが、本例では、脚部品180の厚みt1(図19(b)参照)は装置筐体21の枠組みを構成するフレーム枠材の厚みよりも厚いものが選定されている。一般に、フレーム枠材の厚みは2mm以下のSUS等の板材が使用されているものが多いが、本例では、脚部品180としては、フレーム枠材の厚みよりも厚い例えば厚みが4mmの金属製の板材が使用されている。
【0062】
<外側脚部>
本例において、外側脚部181は、図14図16乃至図18に示すように、装置筐体21の側方側(サイド側)の外側面に沿う方向に沿って延びる長尺な矩形状の板材からなり、その長さ寸法L1は、内側脚部190に比べて長く形成されており、しかも、装置筐体21の側方側の外側面の水平方向の長さ寸法L0以上(本例ではL0より大)に形成されている。
また、外側脚部181における装置筐体21の側方側の外側面からの外側への張り出す幅寸法w3は、装置筐体21の高さに対する脚部品180を含めた設置面積を考慮し、外側脚部181の長さ寸法L1との関係を踏まえて選定される。
更に、脚部品180は、設置面18を傷付けないように、外側脚部181の裏面には長尺な矩形状の弾性材182が外側脚部181の周縁に食み出さないように貼り付けられている。ここで、弾性材182としては、画像形成装置20の重量にもよるが、ある程度重い重量であることを想定すると硬度の硬い弾性ゴム(例えばポロンゴム等)が使用される。また、弾性材182の厚みについては厚すぎると、外側脚部181が通行の邪魔になる懸念があるため、2mm前後で選定されることが好ましい。
【0063】
<内側脚部>
本例において、内側脚部190は、図17及び図18に示すように、装置筐体21の側方側(サイド側)の外側面に沿う方向に延びる矩形状の板材からなり、装置筐体21の側方側の外側面の水平方向の長さ寸法L0の約1/3程度の長さ寸法L2を有しており、装置筐体21の側方側の外側面の前後方向中央付近に配置されている。そして、本例では、内側脚部190の装置筐体21の側方側の外側面から内側に延びる幅寸法w4は適宜選定して差し支えないが、本例では外側脚部181の幅寸法w3に比べて若干短くなっている。
ここで、内側脚部190には画像形成装置20にかかる荷重負荷が内側脚部190から脚部品180へと伝達されることになるため、内側脚部190の大きさが小さ過ぎると、内側脚部190、連結部195に大きな荷重応力が作用することになり、その分、内側脚部190、連結部195の剛性を十分に確保する必要がある。これに対し、周囲の部品配置を踏まえて、内側脚部190の大きさを適切に選定するようにすれば、内側脚部190、連結部195へ作用する荷重応力を低減することが可能になり、その分、内側脚部190、連結部195の強度設計を容易にすることが可能である。
【0064】
<連結部>
本例において、連結部195は、略鉛直方向に延びる矩形状の板材からなり、内側脚部190の長さ寸法L2と同様な長さ寸法を有し、外側脚部181と内側脚部190との上下方向寸法として、操作ハンドル230の厚み及び画像形成装置20の搬送時における脚部品180の上方への退避量を合算した値よりも大きい値に設定するようにすればよい。
そして、本例では、連結部195は、外側脚部181及び内側脚部190との境界部において湾曲状の折曲部で連なっている。
また、この連結部195には、操作ハンドル230の一部が露呈可能な矩形状の開口部196が形成されており、脚部品180の昇降動作時に脚部品180と操作ハンドル230とが干渉しないように配慮されている。
【0065】
-昇降機構、操作ハンドルの被取付部構造-
本例において、昇降機構200及び操作ハンドル230は、装置筐体21の底部21bを構成する底部フレーム90の下側に組み込むものであって、底部フレーム90の下面には、装置筐体21の側方側の外側面に沿う方向(装置筐体21の前後方向に相当)に対し略ハット断面状の固定ブラケット201の両端鍔部をねじ等の止め具204を介して固定し、昇降機構200及び操作ハンドル230を組み込むために用いるようにしたものである。
ここで、固定ブラケット201は、その内側の領域において脚部品180の内側脚部190を非接触な状態で収容可能な大きさに形成されており、矩形状の底壁202のうち装置筐体21の前後方向に交差する左右方向の両側縁に上方に向かって立ち上がる折曲フランジ203を形成し、固定ブラケット201の底壁202の面剛性を高めるようにしたものである。
尚、本例では、底部フレーム90の下面には固定ブラケット201を取り囲むように幅広の断面チャネル状の足掛け部品100である足掛けプレート101が溶接にて固定され、足掛けプレート101の踏み板部102内面に固定ブラケット201の底壁202外面が接触して配置されている。
【0066】
-操作ハンドル-
本例において、操作ハンドル230は、図16乃至図18に示すように、例えばPC樹脂やABS樹脂を用いて一体成形される円板状のハンドル本体231を有し、このハンドル本体231の外周部には回転操作のときの滑り止め用の凹凸部232を形成し、ハンドル本体231の一側面の中央にはハンドル本体231の厚さ方向に突出する円柱状の段付き部233を形成すると共に、ハンドル本体231の中央の段付き部233側には回転中心軸となる金属製の軸ピン235の一端が収容される有底のピン挿入孔234を形成し、このピン挿入孔234に軸ピン235を挿入し、ハンドル本体231の裏側にてピン挿入孔234の底部に軸ピン235の端部を止め具236にて固定するようにしたものである。尚、軸ピン235の先端寄り領域には雄ねじ部213が形成されている。
そして、本例では、固定ブラケット201及び足掛けプレート101の踏み板部102には操作ハンドル230の段付き部233が挿入可能な保持孔237が開設されており、操作ハンドル230は、固定ブラケット201の保持孔237に段付き部233を回転可能に保持させ、固定ブラケット201内に軸ピン235を配置させ、後述するように、軸ピン235を昇降機構200と係わらせることで、ハンドル本体231が足掛けプレート101の下面の定位置で回転可能になるように保持されている。
この状態において、操作ハンドル230のハンドル本体231は、脚部品180の連結部195に開設された開口部196から装置筐体21の外側に露呈するように配置されている。ここで、ハンドル本体231の連結部195の外側面からの突出量m(図19参照)は、操作ハンドル230に対する回転操作性が良好に保たれていればよく、5~10mm(図中では約7mm)程度の範囲で適宜選定するようにすればよい。
【0067】
-昇降機構-
本例において、昇降機構200は、図16乃至図18に示すように、操作ハンドル230の操作に連動して昇降する昇降要素としての昇降プレート205を有し、この昇降プレート205に追従して内側脚部190を昇降させるようになっている。
また、昇降機構200は、昇降プレート205の下面に内側脚部190を配置し、この内側脚部190を昇降プレート205側に付勢する付勢要素としての付勢バネ220(本例ではコイルバネを使用)を有している。
更に、昇降機構200は、昇降プレート205を回り止めした状態で昇降可能に案内する案内要素としての案内機構225を有している。
【0068】
<昇降プレート>
本例において、昇降プレート205は、図16乃至図18に示すように、SUS等の金属製の板材で、脚部品180の内側脚部190と略同程度の大きさの略矩形状のプレート本体206を有し、このプレート本体206のうち装置筐体21の前後方向及び左右方向の奥側の三辺の周縁には下方に向かって立ち下がる折曲フランジ207を形成し、プレート本体206の略中央には、操作ハンドル230の軸ピン235の先端側が挿入可能な孔径を有するバーリング加工部210を形成したものである。
ここでいうバーリング加工部210は、プレート本体206に孔加工を施した後に、当該孔の周囲にフランジ加工を施して立ち上がりフランジ211を上向きに突出させて形成し、更に、立ち上がりフランジ211の内周には、雌ねじ部212を形成するものである。尚、雌ねじ部212の形成に当たっては、フランジ加工と同時に行ってもよいし、あるいは、フランジ加工の後に行うようにしてもよい。
【0069】
また、操作ハンドル230の軸ピン235の先端寄り領域には雄ねじ部213が形成されており、この雄ねじ部213がバーリング加工部210の雌ねじ部212に対してねじ込まれた状態で配置されている。
本例では、昇降プレート205にバーリング加工部210が形成されているが、これに限られるものではなく、操作ハンドル230の軸ピン235の雄ねじ部213が通過する通孔を開設し、この通孔を囲むようにナット部品を固着し、ナット部品の雌ねじ部に軸ピン235の雄ねじ部213をねじ込ませるようにしても差し支えない。
また、本例では、脚部品180の内側脚部190は、昇降プレート205の下面に配置されており、昇降プレート205のバーリング加工部210に対応した箇所には、図18に示すように、軸ピン235の雄ねじ部213が通過可能な通孔191が開設されている。
尚、本例では、昇降機構200は昇降プレート205を用いるようにしているが、例えば、昇降プレート205を介さずに内側脚部190の通孔191に雌ねじ部を形成し、軸ピン235の雄ねじ部213をねじ込むようにすることも可能である。
【0070】
<付勢バネ、案内機構>
また、本例において、案内機構225は、図16乃至図18に示すように、固定ブラケット201の底壁202のうち、保持孔237を挟んで装置筐体21の前後方向に対して略対称的な位置に一対の案内ピン226を上方に向けてねじ等の止め具227にて固着し、更に、昇降プレート205及び脚部品180の内側脚部190には一対の案内ピン226が通過可能な一対の案内孔228,229を開設したものである。尚、固定ブラケット201の底壁202の外面には止め具227が露呈しているが、足掛けプレート101の踏み板部102には止め具227との干渉を回避するための逃げ孔(図示せず)が設けられている。
このため、本例では、昇降プレート205及び脚部品180の内側脚部190は、一対の案内孔228,229に一対の案内ピン226を挿入することで、回り止めされた状態で案内ピン226に沿って昇降可能に案内されるようになっている。
また、本例では、一対の案内ピン226には付勢バネ220が巻き付けられ、この付勢バネ220は、固定ブラケット201の底壁202内面と脚部品180の内側脚部190の下面との間に圧縮した状態で介在されている。このため、本例では、付勢バネ220は脚部品180の内側脚部190を昇降プレート205側に押し付けるように付勢する。よって、昇降プレート205が昇降すると、脚部品180の内側脚部190が昇降プレート205に追従して昇降する。
【0071】
-支持部品の使用方法-
<画像形成装置の設置時>
画像形成装置20を設置する場合には、図19(a)(b)に示すように、支持部品23の操作ハンドル230を適切な方向に回転させ、設置面18に脚部品180の外側脚部181を接触させるように脚部品180を降下するようにすればよい。
本例においては、操作ハンドル230を軸ピン235の雄ねじ部213のねじ巻き方向に沿って回転させると、操作ハンドル230のハンドル本体231は定位置で回転し、かつ、雄ねじ部213がバーリング加工部210の雌ねじ部212にねじ込まれる。この状態において、操作ハンドル230の軸ピン235のねじ込み動作の進行に伴って昇降プレート205が下方側に引き寄せられ、付勢バネ220の付勢力に抗して降下し、この昇降プレート205の降下に追従して内側脚部190が付勢バネ220の付勢力に抗して降下する。
【0072】
このとき、昇降プレート205には操作ハンドル230の回転操作に伴って回転モーメントMが作用することになるが、昇降プレート205は案内機構225(案内ピン226、案内孔228)によって回り止めされるため、案内ピン226に沿って安定的に降下する。また、脚部品180の内側脚部190には操作ハンドル230からの回転モーメントMは直接的には作用しないが、昇降プレート205との圧接により両者の接触部から間接的に回転モーメントMが作用する。しかしながら、脚部品180の内側脚部190は案内機構225(案内ピン226、案内孔229)によって回り止めされるため、案内ピン226に沿って安定的に降下する。
【0073】
更に、本例では、昇降プレート205は、プレート本体206の三辺に沿って折曲フランジ207を有しており、この折曲フランジ207が足掛けプレート101の側板部103及び装置筐体21の底部フレーム90の一部である縦壁に接近した状態で対向配置されている。このため、昇降プレート205の姿勢が降下時において傾斜する懸念はなく、略水平方向の姿勢を維持した状態で降下する。
また、脚部品180の内側脚部190は、昇降プレート205の三辺を囲む折曲フランジ207に周辺が取り囲まれ、内側脚部190の三辺は昇降プレート205の折曲フランジ207に接近した状態で対向配置される。このため、内側脚部190の姿勢も降下時において傾斜する懸念はなく、略水平方向の姿勢を維持した状態で降下する。
【0074】
また、脚部品180が設置面18に接触した状態では、図16及び図19(a)(b)に示すように、脚部品180の外側脚部181が装置筐体21の外側面より外側に張り出した状態で設置面18に接触して配置される。
このとき、外側脚部181の厚みtは金属製の板材部分の厚みt1と裏面側の弾性材182の厚みt2を合算したものになるが、大凡7~10mm程度に抑えられることから、外側脚部181が通行の邪魔になる懸念は少ない。
更に、本例では、外側脚部181は、図14に示すように、装置筐体21の左右方向両側に、装置筐体21の前後方向の長さ寸法L0よりも長い長さ寸法L1を有しているため、画像形成装置20に倒れ方向の荷重が作用したと仮定すると、この負荷荷重は内側脚部190、連結部195を介して外側脚部181に伝達されるが、外側脚部181の設置面積が画像形成装置20の重心位置を挟んで前後方向に広い範囲で延びているため、負荷荷重は効率的に分散する。
【0075】
-画像形成装置の搬送時-
支持部品23を取り外すことなく、画像形成装置20を搬送する場合には、図20(a)(b)に示すように、支持部品23の操作ハンドル230を適切な方向に回転させ、設置面18から脚部品180の外側脚部181を上方に向けて退避させるように脚部品180を上昇するようにすればよい。
本例においては、操作ハンドル230を軸ピン235の雄ねじ部213のねじ巻き方向の反対方向に沿って回転させると、操作ハンドル230のハンドル本体231は定位置で回転し、かつ、雄ねじ部213がバーリング加工部210の雌ねじ部212から抜ける方向にねじ込まれる。この状態において、操作ハンドル230の軸ピン235のねじ込み動作の進行に伴って昇降プレート205が上方側に引き上げられ、この昇降プレート205の上昇に追従して内側脚部190が付勢バネ220の付勢力によって昇降プレート205側に付勢され、上昇する。
【0076】
本例において、昇降機構200による脚部品180の昇降範囲は、昇降機構200、操作ハンドル230を収める場所(被取付部)の制約に依存するものであり、脚部品180の外側脚部181の最大浮き量hは昇降機構200による昇降範囲によって決まる。
画像形成装置20を搬送する場合には、キャスタ22による搬送性を最大限生かすという観点からすれば、脚部品180の最大浮き量hは設置面18からキャスタ22の車輪83の中心位置Qまでの高さを超えることが好ましい。仮に、脚部品180の最大浮き量hを十分に確保できない場合には、設置面18上に図示外の障害物があり、当該障害物の高さ寸法がキャスタ22径以下であればキャスタ22によって障害物を乗り越えることが可能であるものの、最大浮き量hの小さい脚部品180が障害物に突き当たり、キャスタ22による画像形成装置20の搬送性が損なわれる懸念がある。
尚、昇降プレート205及び脚部品180の内側脚部190の回り止め動作、並びに、姿勢の傾き抑制動作については、画像形成装置20の設置時と略同様である。
【0077】
また、支持部品23を取り外して画像形成装置20を運搬する際には、実施の形態1と同様に、作業者は、図14に示すように、装置筐体21の頂部21aに設けられた支持アーム71の縦アーム部71aを把持しながら、図15(a)に示すように、足掛け部FTに足MFの先端部を引っ掛け可能に載せ、足掛け部FTの両側にあるキャスタ22(具体的には22a,22b)の車輪83の接地箇所を支点とし、画像形成装置20を傾斜させ、障害物を乗り越えるようにすればよい。
【0078】
(付記)
(((1)))
頂部及び底部を有し、少なくとも側部が平面で囲まれた筐体と、
前記筐体の底部に複数設けられ、前記筐体の予め決められた進行方向の反対側に当該進行方向に交差する幅方向に離れた二箇所を支持点とし、前記筐体を移動可能な車輪を介して支持する可動支持手段と、
前記筐体の頂部又は側部上半部に設けられ、前記筐体を傾斜させるときに作業者の手で把持可能な把持手段と、
前記筐体の底部のうち、前記筐体の進行方向の反対側に位置する二つの可動支持手段間に設けられ、前記筐体を傾斜させるときに作業者の足が引っ掛け可能な足掛け手段と、を備え、
前記足掛け手段は、前記二つの可動支持手段の車輪径の中心位置を境として前記筐体の進行方向側に配置されていることを特徴とする筐体構造。
(((2)))
(((1)))に記載の筐体構造において、
前記足掛け手段は、前記筐体の底部より下方に設けられ、作業者の足の先端部が引っ掛け可能に載せられる足掛け部を有していることを特徴とする筐体構造。
(((3)))
(((1)))又は(((2)))に記載の筐体構造において、
前記足掛け手段は、前記筐体の底部を構成する底部フレームに前記足掛け部を構成する部材を固定することを特徴とする筐体構造。
(((4)))
(((1)))乃至(((3)))のいずれかに記載の筐体構造において、
前記足掛け手段は、未使用時に着脱可能な覆い手段で覆われ、使用時に前記覆い手段を取り外すことを特徴とする筐体構造。
(((5)))
(((1)))乃至(((4)))のいずれかに記載の筐体構造において、
前記足掛け手段は、転倒防止用の支持部品が取り付けられる取付部を兼用することを特徴とする筐体構造。
(((6))))
(((1)))乃至(((5)))のいずれかに記載の筐体構造において、
前記足掛け手段は、前記二つの可動支持手段の車輪径の中心位置を含んで前記筐体の進行方向側に配置されていることを特徴とする筐体構造。
(((7)))
(((1)))乃至(((6)))のいずれかに記載の筐体構造において、
前記足掛け手段は、前記二つの可動支持手段の車輪径の中心位置と前記筐体の底部との間に設けられることを特徴とする筐体構造。
(((8)))
(((1)))乃至(((7)))のいずれかに記載の筐体構造において、
前記把持手段は前記筐体の側部から外側方に張り出さないように設けられていることを特徴とする筐体構造。
(((9)))
(((8)))に記載の筐体構造において、
前記把持手段は前記筐体の頂部に設けられ、前記筐体の頂部に置かれた読取対象物を読み取る読取手段を支持する支持手段を兼用することを特徴とする筐体構造。
(((10)))
(((1)))乃至(((9)))のいずれかに記載の筐体構造と、
前記筐体内に搭載される各種の物品要素と、
を備えたことを特徴とする物品。
【0079】
(((1)))に係る筐体構造によれば、底部に移動可能な可動支持手段を有する筐体構造からなる物品を運搬するに当たり、可動支持手段では越えられない段差を越える場合に、筐体を持ち上げることなく、運搬者一人でも筐体を安全且つ簡単に傾けて段差を越えることができる。
(((2)))に係る筐体構造によれば、足掛け手段を簡単に構築することができる。
(((3)))に係る筐体構造によれば、足掛け手段の強度を高めることができる。
(((4)))に係る筐体構造によれば、未使用時に足掛け手段を目隠しすることができ、筐体構造の外観品質を向上させることができる。
(((5)))に係る筐体構造によれば、運搬性及び設置時の安定性を両立する筐体構造を提供することができる。
(((6)))に係る筐体構造によれば、足掛け手段が二つの可動支持手段の脚輪径の中心位置よりも筐体の進行方向側に配置されている態様に比べて、筐体をより安定的に傾斜させることができる。
(((7)))に係る筐体構造によれば、物品の運搬時に足掛け手段が走行の邪魔にならず、走行性を良好に保つ筐体構造を提供することができる。
(((8)))に係る筐体構造によれば、把持手段が筐体の側部から外側方に張り出す場合に比べて、狭い設置面積で筐体構造の外観品質を良好に保つことができる。
(((9)))に係る筐体構造によれば、専用の把持手段を設けることなく、既存の要素を把持手段として兼用することで筐体を簡単に傾斜させることができる。
(((10)))に係る物品によれば、底部に移動可能な可動支持手段を有する筐体構造からなる物品を運搬するに当たり、可動支持手段では越えられない段差を越える場合に、筐体を持ち上げることなく、運搬者一人でも筐体を安全且つ簡単に傾けて段差を越えることを可能とする筐体構造を含む物品を構築することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…筐体,1a…頂部,1b…底部,1c…側部,2…可動支持手段,2a…車輪,3…把持手段,4…足掛け手段,4a…足掛け部,6…物品,7…読取手段,8…支持手段,Q…車輪径の中心位置,F…力点,S…支点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15
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図18
図19
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