(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183742
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ノズル位置調整方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20231221BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097413
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】根本 脩平
(72)【発明者】
【氏名】中島 章宏
(72)【発明者】
【氏名】村元 僚
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043DD07
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE27
5F157AA12
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5F157AB64
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5F157AC01
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5F157CE28
5F157CE83
5F157CF02
5F157CF34
5F157CF40
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF72
5F157CF92
5F157DB02
5F157DC01
(57)【要約】
【課題】液供給位置を高精度に調整することができるノズル位置調整方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】この発明は、離間位置から係合面が治具板の端面に当接するまでにノズルが移動した第1距離と、係合面が治具板の端面に当接した姿勢のノズルを処理位置まで径方向に沿って移動させるのに要する第2距離とを合計した値をノズル移動距離として求める。そして、基板処理を実行する際には、ノズルを離間位置からノズル移動距離だけ移動させることで、ノズルを処理位置に位置決めする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる回転軸まわりに基板を保持して回転させる回転保持部と、基板処理のための処理液を前記基板に供給するノズルと、前記ノズルを前記基板の径方向に移動させるノズル移動部とを備える基板処理装置において、前記基板の端面から予め設定された位置に前記処理液を供給するために前記径方向において前記ノズルを処理位置に位置決めするノズル位置調整方法であって、
前記基板と同一形状の治具板を前記回転保持部で保持する第1工程と、
前記ノズルを前記回転保持部から離れた離間位置に位置させる第2工程と、
前記ノズルの係合面が前記回転保持部に保持された前記治具板の端面と対向する姿勢で、前記離間位置から前記治具板への前記ノズルの移動を開始する第3工程と、
前記第3工程の実行から前記係合面が前記治具板の端面に当接するまでに前記ノズルが移動した第1距離を計測する第4工程と、
前記係合面が前記治具板の端面に当接した姿勢の前記ノズルを前記処理位置まで前記径方向に沿って移動させるのに要する第2距離を前記第1距離に加算してノズル移動距離を求める第5工程と、を備え、
前記基板処理前に、前記第1工程ないし前記第5工程を実行する一方、
前記基板処理を実行する際には、前記第2工程を実行した後で、前記径方向において前記ノズルを前記ノズル移動距離だけ移動させることで、前記ノズルを前記処理位置に位置決めすることを特徴とするノズル位置調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載のノズル位置調整方法であって、
前記第5工程は、前記基板処理装置の記憶部に予め記憶された前記第2距離を前記記憶部から読み出して実行されるノズル位置調整方法。
【請求項3】
請求項1に記載のノズル位置調整方法であって、
前記係合面が前記治具板の端面に当接した姿勢の前記ノズルを前記治具板の上方に移動させた後で、前記ノズルを前記径方向に前記第2距離に移動させる第6工程を、さらに備え、
前記基板処理前に、前記第6工程を実行するノズル位置調整方法。
【請求項4】
鉛直方向に延びる回転軸まわりに基板を保持して回転させる回転保持部と、基板処理のための処理液を前記基板に供給するノズルと、前記ノズルを前記基板の径方向に移動させるノズル移動部とを備える基板処理装置において、前記基板の端面から予め設定された位置に前記処理液を供給するために前記径方向において前記ノズルを処理位置に位置決めするノズル位置調整方法であって、
前記基板と同一形状の治具板を前記回転保持部で保持する第7工程と、
前記ノズルを前記回転保持部から離れた離間位置に位置させる第8工程と、
前記第8工程の前後で、前記回転保持部に保持された前記治具板の端面と対向するように位置調整治具を前記ノズルに取り付ける第9工程と、
前記位置調整治具が前記治具板の端面と対向する姿勢で、前記離間位置から前記治具板への前記ノズルの移動を開始する第10工程と、
前記第10工程の実行から前記位置調整治具が前記治具板の端面に当接するまでに前記ノズルが移動した第3距離を計測する第11工程と、
前記位置調整治具が前記治具板の端面に当接した姿勢の前記ノズルを前記処理位置まで前記径方向に沿って移動させるのに要する第4距離を前記第3距離に加算してノズル移動距離を求める第12工程と、を備え、
前記基板処理前に、前記第7工程ないし前記第12工程を実行する一方、
前記基板処理を実行する際には、前記第8工程を実行した後で、前記径方向において前記ノズルを前記ノズル移動距離だけ移動させることで、前記ノズルを前記処理位置に位置決めすることを特徴とするノズル位置調整方法。
【請求項5】
請求項4に記載のノズル位置調整方法であって、
前記第12工程は、前記基板処理装置の記憶部に予め記憶された前記第4距離を前記記憶部から読み出して実行されるノズル位置調整方法。
【請求項6】
請求項4に記載のノズル位置調整方法であって、
前記治具板の端面に当接した前記位置調整治具を前記ノズルから取り外した後で、前記ノズルを前記径方向に前記第4距離に移動させる第13工程を、さらに備え、
前記第10工程での前記姿勢は、前記ノズルが前記治具板の上方に位置する一方で前記位置調整治具の下端部が前記鉛直方向において前記治具板と同一の高さに位置する姿勢であり、
前記第13工程は、前記基板処理前に実行されるノズル位置調整方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のノズル位置調整方法であって、
前記基板処理を実行する前に、前記回転保持部に保持された前記基板の中心の前記回転軸に対する偏心量を計測するとともに、前記偏心量に基づき前記ノズル移動距離を補正するノズル位置調整方法。
【請求項8】
請求項7に記載のノズル位置調整方法であって、
前記回転保持部による前記治具板の保持前に、前記治具板の中心を前記回転軸に一致させるセンタリング処理を実行し、
前記補正は、補正前の前記ノズル移動距離に前記偏心量を加えることであるノズル位置調整方法。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のノズル位置調整方法であって、
前記ノズル移動部が前記ノズルを移動させるための駆動源としてモータを有するとき、
前記治具板の端面への当接を前記モータに与えられる電流の変動または前記モータにかかる負荷の変動に基づいて検知するノズル位置調整方法。
【請求項10】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のノズル位置調整方法であって、
前記治具板の端面への当接を前記ノズルに取り付けられた光学部品により検知するノズル位置調整方法。
【請求項11】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のノズル位置調整方法であって、
前記ノズル移動部が、モータおよび前記モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構を有する直動アクチュエータを有するとき、
前記ノズルを前記離間位置に位置させるときには、前記運動変換機構に含まれるバックラッシが前記径方向の一方側に片寄って存在するように前記ノズルを位置決めするノズル位置調整方法。
【請求項12】
請求項11に記載のノズル位置調整方法であって、
前記離間位置に位置する前記ノズルに対し、前記回転軸に向かう付勢力は与えることで、前記バックラッシが前記径方向のうち前記回転軸に向かう方向に片寄らせるノズル位置調整方法。
【請求項13】
鉛直方向に延びる回転軸まわりに基板を保持して回転させる回転保持部と、
基板処理のための処理液を前記基板に供給するノズルと、
前記ノズルを前記基板の径方向に移動させるノズル移動部と、
前記基板の端面から予め設定された位置に前記処理液を供給するための処理位置に前記ノズルが位置するように、前記ノズル移動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記基板処理前に、前記基板と同一形状の治具板を用いて前記回転保持部から前記径方向に離れた離間位置に位置する前記ノズルを前記処理位置まで移動させるのに要するノズル移動距離を求めるキャリブレーション部と、
前記径方向において前記ノズルを前記離間位置から前記ノズル移動距離だけ移動させることで、前記ノズルを前記処理位置に位置決めするノズル位置決め部と、を有し、
前記キャリブレーション部が、
前記ノズルの係合面が前記回転保持部に保持された前記治具板の端面と対向する姿勢で前記離間位置から前記治具板への前記ノズルの移動を開始した後で、前記係合面が前記治具板の端面に当接するまでに前記ノズルが移動した第1距離を計測する計測部と、
前記係合面が前記治具板の端面に当接した姿勢の前記ノズルを前記処理位置まで前記径方向に沿って移動させるのに要する第2距離を前記第1距離に加算して前記ノズル移動距離を算出する移動距離算出部と、
を有する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項14】
請求項13に記載の基板処理装置であって、
前記ノズルは、前記処理液を吐出する吐出口を有するノズル本体部と、前記係合面を有し、前記ノズル本体部と一体化された係合部とを備え、
前記係合部の硬度は前記ノズル本体の硬度よりも高い基板処理装置。
【請求項15】
鉛直方向に延びる回転軸まわりに基板を保持して回転させる回転保持部と、
基板処理のための処理液を前記基板に供給するノズルと、
前記ノズルを前記基板の径方向に移動させるノズル移動部と、
前記基板の端面から予め設定された位置に前記処理液を供給するための処理位置に前記ノズルが位置するように、前記ノズル移動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記基板処理前に、前記基板と同一形状の治具板を用いて前記回転保持部から前記径方向に離れた離間位置に位置する前記ノズルを前記処理位置まで移動させるのに要するノズル移動距離を求めるキャリブレーション部と、
前記径方向において前記ノズルを前記離間位置から前記ノズル移動距離だけ移動させることで、前記ノズルを前記処理位置に位置決めするノズル位置決め部と、を有し、
前記キャリブレーション部が、
前記ノズルに取り付けられた位置調整治具が前記回転保持部に保持された前記治具板の端面と対向する姿勢で前記離間位置から前記治具板への前記ノズルの移動を開始した後で、前記位置調整治具が前記治具板の端面に当接するまでに前記ノズルが移動した第3距離を計測する計測部と、
前記位置調整治具が前記治具板の端面に当接した姿勢の前記ノズルを前記処理位置まで前記径方向に沿って移動させるのに要する第4距離を前記第3距離に加算して前記ノズル移動距離を算出する移動距離算出部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項16】
請求項15に記載の基板処理装置であって、
前記位置調整治具の硬度は前記ノズルの高度よりも高い基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の径方向におけるノズルの位置を調整するノズル位置調整方法および当該ノズル位置調整方法により位置調整されたノズルから処理液を基板に供給して処理する基板処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハなどの基板を回転させつつ当該基板にノズルから処理液を供給して薬液処理や洗浄処理などを施す基板処理装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板処理を行う際には、ノズルは基板の上方に位置決めされた後で、処理液がノズルの先端に設けられた吐出口から基板の上面に向けて吐出される。例えば特許文献1に記載の装置では、スピンチャックに保持されて回転する基板の周縁部に処理液としてエッチング液が供給される。これによって、基板の上面周縁部に形成された薄膜が帯状またはドーナツ状にエッチング除去される。これはベベル処理(あるいはベベルエッチング処理)と称されるものであり、本発明の「基板処理」の一例に相当する。ベベル処理においては、帯状領域の幅(以下、エッチング幅という)の寸法精度を厳格に管理しなければならない。そのためには、基板の径方向において処理液が基板に供給される位置(以下「液供給位置」という)を高精度に調整する必要がある。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、液供給位置を高精度に調整することができるノズル位置調整方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、鉛直方向に延びる回転軸まわりに基板を保持して回転させる回転保持部と、基板処理のための処理液を基板に供給するノズルと、ノズルを基板の径方向に移動させるノズル移動部とを備える基板処理装置において、基板の端面から予め設定された位置に処理液を供給するために径方向においてノズルを処理位置に位置決めするノズル位置調整方法であって、基板と同一形状の治具板を回転保持部で保持する第1工程と、ノズルを回転保持部から離れた離間位置に位置させる第2工程と、ノズルの係合面が回転保持部に保持された治具板の端面と対向する姿勢で、離間位置から治具板へのノズルの移動を開始する第3工程と、第3工程の実行から係合面が治具板の端面に当接するまでにノズルが移動した第1距離を計測する第4工程と、係合面が治具板の端面に当接した姿勢のノズルを処理位置まで径方向に沿って移動させるのに要する第2距離を第1距離に加算してノズル移動距離を求める第5工程と、を備え、基板処理前に、第1工程ないし第5工程を実行する一方、基板処理を実行する際には、第2工程を実行した後で、径方向においてノズルをノズル移動距離だけ移動させることで、ノズルを処理位置に位置決めすることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の第2の態様は、基板処理装置であって、鉛直方向に延びる回転軸まわりに基板を保持して回転させる回転保持部と、基板処理のための処理液を基板に供給するノズルと、ノズルを基板の径方向に移動させるノズル移動部と、基板の端面から予め設定された位置に処理液を供給するための処理位置にノズルが位置するように、ノズル移動部を制御する制御部と、を備え、制御部は、基板処理前に、基板と同一形状の治具板を用いて回転保持部から径方向に離れた離間位置に位置するノズルを処理位置まで移動させるのに要するノズル移動距離を求めるキャリブレーション部と、径方向においてノズルを離間位置からノズル移動距離だけ移動させることで、ノズルを処理位置に位置決めするノズル位置決め部と、を有し、キャリブレーション部が、ノズルの係合面が回転保持部に保持された治具板の端面と対向する姿勢で離間位置から治具板へのノズルの移動を開始した後で、係合面が治具板の端面に当接するまでにノズルが移動した第1距離を計測する計測部と、係合面が治具板の端面に当接した姿勢のノズルを処理位置まで径方向に沿って移動させるのに要する第2距離を第1距離に加算してノズル移動距離を算出する移動距離算出部と、を有することを特徴としている。
【0008】
従来では、離間位置から処理位置にノズルを移動させるのに必要なノズル移動距離はオペレータ作業により決定されていた。そのため、ノズル移動距離については、オペレータ間でバラツキが生じ、これが液供給位置の精度低下の主要因の一つであった。これに対し、これら第1態様および第2態様にかかる発明では、ノズル移動距離は上記した第1距離と第2距離との合計値で求められる。つまり、オペレータ作業を介在させることなく、ノズル移動距離が求められる。したがって、離間位置からノズル移動距離(=第1距離+第2距離)だけノズルを移動させることでノズルは高精度に処理位置に位置決めされる。
【0009】
また、本発明の第3の態様は、鉛直方向に延びる回転軸まわりに基板を保持して回転させる回転保持部と、基板処理のための処理液を基板に供給するノズルと、ノズルを基板の径方向に移動させるノズル移動部とを備える基板処理装置において、基板の端面から予め設定された位置に処理液を供給するために径方向においてノズルを処理位置に位置決めするノズル位置調整方法であって、基板と同一形状の治具板を回転保持部で保持する第7工程と、ノズルを回転保持部から離れた離間位置に位置させる第8工程と、第8工程の前後で、回転保持部に保持された治具板の端面と対向するように位置調整治具をノズルに取り付ける第9工程と、位置調整治具が治具板の端面と対向する姿勢で、離間位置から治具板へのノズルの移動を開始する第10工程と、第10工程の実行から位置調整治具が治具板の端面に当接するまでにノズルが移動した第3距離を計測する第11工程と、位置調整治具が治具板の端面に当接した姿勢のノズルを処理位置まで径方向に沿って移動させるのに要する第4距離を第3距離に加算してノズル移動距離を求める第12工程と、を備え、基板処理前に、第7工程ないし第12工程を実行する一方、基板処理を実行する際には、第8工程を実行した後で、径方向においてノズルをノズル移動距離だけ移動させることで、ノズルを処理位置に位置決めすることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の第4の態様は、基板処理装置であって、鉛直方向に延びる回転軸まわりに基板を保持して回転させる回転保持部と、基板処理のための処理液を基板に供給するノズルと、ノズルを基板の径方向に移動させるノズル移動部と、基板の端面から予め設定された位置に処理液を供給するための処理位置にノズルが位置するように、ノズル移動部を制御する制御部と、を備え、制御部は、基板処理前に、基板と同一形状の治具板を用いて回転保持部から径方向に離れた離間位置に位置するノズルを処理位置まで移動させるのに要するノズル移動距離を求めるキャリブレーション部と、径方向においてノズルを離間位置からノズル移動距離だけ移動させることで、ノズルを処理位置に位置決めするノズル位置決め部と、を有し、キャリブレーション部が、ノズルに取り付けられた位置調整治具が回転保持部に保持された治具板の端面と対向する姿勢で離間位置から治具板へのノズルの移動を開始した後で、位置調整治具が治具板の端面に当接するまでにノズルが移動した第3距離を計測する計測部と、位置調整治具が治具板の端面に当接した姿勢のノズルを処理位置まで径方向に沿って移動させるのに要する第4距離を第3距離に加算してノズル移動距離を算出する移動距離算出部と、を有することを特徴としている。
【0011】
これら第3態様および第4態様にかかる発明では、ノズル移動距離は上記した第3距離と第4距離との合計値で求められる。つまり、オペレータ作業を介在させることなく、ノズル移動距離が求められる。したがって、離間位置からノズル移動距離(=第3距離+第4距離)だけノズルを移動させることでノズルは高精度に処理位置に位置決めされる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された発明では、オペレータ作業を介在させることなく、ノズル移動距離を求め、当該ノズル移動距離に基づいてノズルの位置を調整しているため、液供給位置を高精度に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
【
図2】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の構成を示す図である。
【
図4】スピンチャックに保持された基板と回転カップ部との寸法関係を示す図である。
【
図5A】第1実施形態において処理機構に装備される上面側の処理液吐出ノズルを示す斜視図である。
【
図5B】第2実施形態において処理機構に装備される上面側の処理液吐出ノズルを示す斜視図である。
【
図6】
図2に示す基板処理装置の演算処理部で実行される機能を示すブロック図である。
【
図7】
図2に示す基板処理装置により実行されるベベル処理を示すフローチャートである。
【
図8】ベベル処理に含まれるキャリブレーション処理を示すフローチャートである。
【
図9】キャリブレーション処理中の装置各部を示す模式図である。
【
図10】ベベル処理中の装置各部を示す模式図である。
【
図11】第2実施形態におけるキャリブレーション処理を示すフローチャートである。
【
図12】第2実施形態におけるキャリブレーション処理中の装置各部を示す模式図である。
【
図13】センタリング処理後の治具ウェハの偏心例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。これは基板処理システム100の外観を示すものではなく、基板処理システム100の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理システム100は、例えばクリーンルーム内に設置され、一方主面のみに回路パターン等(以下「パターン」と称する)が形成された基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。そして、基板処理システム100に装備される処理ユニット1において本発明に係るノズル位置調整方法が実行される。本明細書では、基板の両主面のうちパターンが形成されているパターン形成面(一方主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた面を「下面」と称し、上方に向けられた面を「上面」と称する。また、本明細書において「パターン形成面」とは、基板において、任意の領域に凹凸パターン形成されている面を意味する。
【0015】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウェハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウェハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0016】
図1に示すように、基板処理システム100は、基板Wに対して処理を施す基板処理部110と、この基板処理部110に結合されたインデクサ部120とを備えている。インデクサ部120は、基板Wを収容するための容器C(複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部121を有している。また、インデクサ部120は、容器保持部121に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Wを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Wを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット122を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Wがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0017】
インデクサロボット122は、装置筐体に固定されたベース部122aと、ベース部122aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム122bと、多関節アーム122bの先端に取り付けられたハンド122cとを備える。ハンド122cはその上面に基板Wを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0018】
基板処理部110は、インデクサロボット122が基板Wを載置する載置台112と、平面視においてほぼ中央に配置された基板搬送ロボット111と、この基板搬送ロボット111を取り囲むように配置された複数の処理ユニット1とを備えている。具体的には、基板搬送ロボット111が配置された空間に面して複数の処理ユニット1が配置されている。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット111は載置台112にランダムにアクセスし、載置台112との間で基板Wを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Wに対して所定の処理を実行するものであり、本発明に係る基板処理装置に相当するものである。本実施形態では、これらの処理ユニット(基板処理装置)1は同一の機能を有している。このため、複数基板Wの並列処理が可能となっている。なお、基板搬送ロボット111はインデクサロボット122から基板Wを直接受け渡すことが可能であれば、必ずしも載置台112は必要ない。
【0019】
図2は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の構成を示す図である。また、
図3は
図2のA-A線矢視平面図である。
図2、
図3および以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。基板処理装置(処理ユニット)1は、回転機構2、飛散防止機構3、上面保護加熱機構4、処理機構5、雰囲気分離機構6、昇降機構7、センタリング機構8および基板観察機構9を備えている。これら各部2~9は、チャンバ11の内部空間12に収容された状態で、装置全体を制御する制御ユニット10と電気的に接続されている。そして、各部2~9は、制御ユニット10からの指示に応じて動作する。
【0020】
制御ユニット10としては、例えば、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。すなわち、制御ユニット10においては、プログラムに記述された手順に従って主制御部としてのCPUが演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を制御する。なお、制御ユニット10の詳しい構成および動作については、後で詳述する。また、本実施形態では、各基板処理装置1に対して制御ユニット10を設けているが、1台の制御ユニットにより複数の基板処理装置1を制御するように構成してもよい。また、基板処理システム100全体を制御する制御ユニット(図示省略)により基板処理装置1を制御するように構成してもよい。
【0021】
図2に示すように、チャンバ11の天井壁11aには、ファンフィルタユニット(FFU)13が取り付けられている。このファンフィルタユニット13は、基板処理装置1が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバ11内の処理空間に供給する。ファンフィルタユニット13は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバ11内に送り出すためのファンおよびフィルタ(例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ)を備えており、天井壁11aに設けられた開口11bを介して清浄空気を送り込む。これにより、チャンバ11内の処理空間に清浄空気のダウンフローが形成される。また、ファンフィルタユニット13から供給された清浄空気を均一に分散するために、多数の吹出し孔を穿設したパンチングプレート14が天井壁11aの直下に設けられている。
【0022】
図1および
図3に示すように、基板処理装置1では、チャンバ11の側面にシャッター15が設けられている。シャッター15にはシャッター開閉機構(図示省略)が接続されており、制御ユニット10からの開閉指令に応じてシャッター15を開閉させる。より具体的には、基板処理装置1では、未処理の基板Wをチャンバ11に搬入する際にシャッター開閉機構はシャッター15を開き、基板搬送ロボット111のハンド(図示省略)によって未処理の基板Wがフェースアップ姿勢で回転機構2のスピンチャック(本発明の「回転保持部」の一例に相当)21に搬入される。つまり、基板Wは上面Wfを上方に向けた状態でスピンチャック21上に載置される。そして、当該基板搬入後に基板搬送ロボット111のハンドがチャンバ11から退避すると、シャッター開閉機構はシャッター15を閉じる。そして、チャンバ11の処理空間(後で詳述する密閉空間SPsに相当)内で基板Wの周縁部Wsに対するベベル処理が実行される。また、ベベル処理の終了後においては、シャッター開閉機構がシャッター15を再び開き、基板搬送ロボット111のハンドが処理済の基板Wをスピンチャック21から搬出する。このように、本実施形態では、チャンバ11の内部空間12が常温環境に保たれる。なお、本明細書において「常温」とは、5℃~35℃の温度範囲にあることを意味する。
【0023】
回転機構2は、基板Wを、その表面を上方に向けた状態で、略水平姿勢に保持しつつ回転させるとともに、基板Wと同一方向に飛散防止機構3の一部を同期して回転させる機能を有している。回転機構2は、基板Wおよび飛散防止機構3の回転カップ部31を、主面中心を通る鉛直な回転軸AXまわりに回転させる。なお、回転機構2により一体的に回転する部材や部位などを明示するために、
図2では被回転部位にドットを付している。
【0024】
回転機構2は、基板Wより小さい円板状の部材であるスピンチャック21を備えている。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸AXに一致するように設けられている。スピンチャック21の下面には、円筒状の回転軸部22が連結されている。回転軸部22は、その軸線を回転軸AXと一致させた状態で、鉛直方向に延設されている。また、回転軸部22には、回転駆動部(例えば、モータ)23が接続されている。回転駆動部23は、制御ユニット10からの回転指令に応じて回転軸部22をその軸線周りに回転駆動する。したがって、スピンチャック21は、回転軸部22とともに回転軸AXまわりに回転可能である。回転駆動部23と回転軸部22とは、スピンチャック21を回転軸AX中心に回転させる機能を担っており、回転軸部22の下端部および回転駆動部23は筒状のケーシング24内に収容されている。
【0025】
スピンチャック21の中央部には、図示省略の貫通孔が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間には、バルブ(図示省略)が介装された配管25を介してポンプ26が接続されている。当該ポンプ26およびバルブは、制御ユニット10に電気的に接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて動作する。これによって、負圧と正圧とが選択的にスピンチャック21に付与される。例えば基板Wがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプ26が負圧をスピンチャック21に付与すると、スピンチャック21は基板Wを下方から吸着保持する。一方、ポンプ26が正圧をスピンチャック21に付与すると、基板Wはスピンチャック21の上面から取り外し可能となる。また、ポンプ26の吸引を停止すると、スピンチャック21の上面上で基板Wは水平移動可能となる。
【0026】
スピンチャック21には、回転軸部22の中央部に設けられた配管28を介して窒素ガス供給部29が接続されている。窒素ガス供給部29は、基板処理システム100が設置される工場のユティリティーなどから供給される常温の窒素ガスを制御ユニット10からの窒素ガス供給指令に応じた流量およびタイミングでスピンチャック21に送給し、基板Wの下面Wb側で窒素ガスを中央部から径方向外側に流通させる。なお、本実施形態では、窒素ガスを用いているが、その他の不活性ガスを用いてもよい。この点については、後で説明する中央ノズルから吐出される加熱ガスについても同様である。また、「流量」とは、窒素ガスなどの流体が単位時間当たりに移動する量を意味している。
【0027】
回転機構2は、基板Wと一体的にスピンチャック21を回転させるのみならず、当該回転に同期して回転カップ部31を回転させるために、動力伝達部27を有している。動力伝達部27は、非磁性材料または樹脂で構成される円環部材27aと、円環部材27aに内蔵される磁石27bと、回転カップ部31の一構成である下カップ32に内蔵される磁石27cとを有している。円環部材27aは回転軸部22に取り付けられ、回転軸部22とともに回転軸AXまわりに回転可能となっている。円環部材27aの外周縁部では、複数(本実施形態では36個)の磁石27bが回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔(本実施形態では10゜)で配置されている。本実施形態では、互いに隣り合う2つの磁石27bの一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置されている。
【0028】
これらの磁石27bと同様に、複数(本実施形態では36個)の磁石27cが回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔(本実施形態では10゜)で配置されている。これらの磁石27cは下カップ32に内蔵される。下カップ32は次に説明する飛散防止機構3の構成部品であり、円環形状を有している。つまり、下カップ32は、円環部材27aの外周面と対向可能な内周面を有している。この内周面の内径は円環部材27aの外径よりも大きい。そして、当該内周面を円環部材27aの外周面から所定間隔(=(上記内径-上記外径)/2)だけ離間対向させながら下カップ32が回転軸部22および円環部材27aと同心状に配置されている。この下カップ32の外周縁上面には、係合ピンおよび連結用マグネットが設けられており、これらにより上カップ33が下カップ32と連結され、この連結体が回転カップ部31として機能する。
【0029】
下カップ32は、図面への図示を省略したベアリングによって、上記配置状態のまま、回転軸AXまわりに回転可能に支持されている。この下カップ32の内周縁部において、複数(本実施形態では36個)の磁石27cが回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔(本実施形態では10゜)で配置されている。また、互いに隣り合う2つの磁石27cの配置についても磁石27bと同様である。つまり、一方では、外側および内側がそれぞれN極およびS極となるように配置され、他方では、外側および内側がそれぞれS極およびN極となるように配置されている。
【0030】
このように構成された動力伝達部27では、回転駆動部23により回転軸部22とともに円環部材27aが回転すると、磁石27b、27cの間での磁力作用によって、下カップ32がエアギャップ(円環部材27aと下カップ32との隙間)を維持しつつ円環部材27aと同じ方向に回転する。これにより、回転カップ部31が回転軸AXまわりに回転する。つまり、回転カップ部31は基板Wと同一方向でしかも同期して回転する。
【0031】
飛散防止機構3は、スピンチャック21に保持された基板Wの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能な回転カップ部31と、回転カップ部31を囲むように固定的に設けられる固定カップ部34と、を有している。回転カップ部31は、下カップ32に上カップ33が連結されることで、回転する基板Wの外周を囲みながら回転軸AXまわりに回転可能に設けられている。
【0032】
図4はスピンチャックに保持された基板と回転カップ部との寸法関係を示す図である。下カップ32は円環形状を有している。その外径は基板Wの外径よりも大きく、鉛直上方からの平面視においてスピンチャック21で保持された基板Wから径方向にはみ出た状態で下カップ32は回転軸AXまわりに回転自在に配置されている。当該はみ出た領域、つまり下カップ32の上面周縁部321では、周方向に沿って鉛直上方に立設する係合ピンと平板状の下マグネットとが交互に取り付けられており、係合ピンの合計本数は3本であり、下マグネットの合計個数は3個である。これら係合ピンおよび下マグネットは回転軸AXを中心として放射状で、しかも等角度間隔(本実施形態では60゜)で配置されている。
【0033】
一方、上カップ33は、
図2、
図3および
図4に示すように、下円環部位331と、上円環部位332と、これらを連結する傾斜部位333とを有している。下円環部位331の外径D331は下カップ32の外径D32と同一であり、下円環部位331は下カップ32の周縁部321の鉛直上方に位置している。
【0034】
上カップ33は、昇降機構7により鉛直方向において昇降可能となっている。上カップ33が昇降機構7により上方に移動されると、鉛直方向において上カップ33と下カップ32との間に基板Wの搬入出用の搬送空間が形成される。一方、昇降機構7により上カップ33が下方に移動されると、係合ピンと連結用マグネットとの作用により下カップ32に対して上カップ33が水平方向に位置決めされるとともに上カップ33および下カップ32が互いに結合される。これによって、
図3の部分拡大図に示すように、水平方向に延びる隙間GPcを形成した状態で、上カップ33および下カップ32が鉛直方向に一体化される。そして、回転カップ部31は隙間GPcを形成したまま回転軸AXまわりに回転自在となっている。
【0035】
回転カップ部31では、
図4に示すように、上円環部位332の外径D332は下円環部位331の外径D331よりも若干小さい。また、下円環部位331および上円環部位332の内周面の径d331、d332を比較すると、下円環部位331の方が上円環部位332よりも大きく、鉛直上方からの平面視で、上円環部位332の内周面が下円環部位331の内周面の内側に位置する。そして、上円環部位332の内周面と下円環部位331の内周面とが上カップ33の全周にわたって傾斜部位333により連結される。このため、傾斜部位333の内周面、つまり基板Wを取り囲む面は、傾斜面334となっている。すなわち、
図8に示すように、傾斜部位333は回転する基板Wの外周を囲んで基板Wから飛散する液滴を捕集可能となっており、上カップ33および下カップ32で囲まれた空間が捕集空間SPcとして機能する。
【0036】
しかも、捕集空間SPcを臨む傾斜部位333は、下円環部位331から基板Wの周縁部の上方に向かって傾斜している。このため、傾斜部位333に捕集された液滴は傾斜面334に沿って上カップ33の下端部、つまり下円環部位331に流動し、さらに隙間GPcを介して回転カップ部31の外側に排出可能となっている。
【0037】
固定カップ部34は、回転カップ部31を取り囲むように設けられ、排出空間SPeを形成する。固定カップ部34は、
図2に示すように、液受け部位341と、液受け部位341の内側に設けられた排気部位342とを有している。液受け部位341は、隙間GPcの反基板側開口(
図3における部分拡大図の右手側開口)を臨むように開口したカップ構造を有している。つまり、液受け部位341の内部空間が排出空間SPeとして機能しており、隙間GPcを介して捕集空間SPcと連通されている。したがって、回転カップ部31により捕集された液滴は気体成分とともに隙間GPcを介して排出空間SPeに案内される。そして、液滴は液受け部位341の底部に集められ、固定カップ部34から排液される。一方、気体成分は排気部位342に集められる。この排気部位342は排気機構38と接続されている。このため、制御ユニット10からの指令に応じて排気機構38が作動することで固定カップ部34の圧力が調整され、排気部位342内の気体成分が効率的に排気される。また、排気機構38の精密制御により、排出空間SPeの圧力や流量が調整される。例えば排出空間SPeの圧力が捕集空間SPcの圧力よりも下がる。その結果、捕集空間SPc内の液滴を効率的に排出空間SPeに引き込み、捕集空間SPcからの液滴の移動を促進することができる。
【0038】
上面保護加熱機構4は、
図2および
図3に示すように、スピンチャック21に保持されている基板Wの上面Wfの上方に配置された遮断板41を有している。この遮断板41は水平な姿勢で保持された円板部42を有している。円板部42はヒータ駆動部422により駆動制御されるヒータ421を内蔵している。この円板部42は基板Wよりも若干短い直径を有している。そして、円板部42の下面が基板Wの上面Wfのうち周縁部Wsを除く表面領域を上方から覆うように、円板部42は支持部材43により支持されている。円板部42の周縁部には、切欠部44が設けられている。切欠部44は径方向外側に向かって開口している。これによって、円板部42が処理機構5に含まれる処理液吐出ノズルと干渉するのを防止している。すなわち、処理液吐出ノズルが切欠部44により形成された径方向外側に延びる切欠空間内を径方向Xに往復移動可能となっている。
【0039】
支持部材43の下端部は円板部42の中央部に取り付けられている。支持部材43と円板部42とを上下に貫通するように、円筒状の貫通孔が形成されている。また、当該貫通孔に対し、中央ノズル45が上下に挿通している。この中央ノズル45には、
図2に示すように、配管46を介して窒素ガス供給部47と接続されている。窒素ガス供給部47は、基板処理システム100が設置される工場の用力などから供給される常温の窒素ガスを制御ユニット10からの窒素ガス供給指令に応じた流量およびタイミングで中央ノズル45に供給する。また、本実施形態では、配管46の一部にリボンヒータ48が取り付けられている。リボンヒータ48は制御ユニット10からの加熱指令に応じて発熱して配管46内を流れる窒素ガスを加熱する。
【0040】
こうして加熱された窒素ガス(以下「加熱ガス」という)が中央ノズル45に向けて圧送され、中央ノズル45から吐出される。円板部42がスピンチャック21に保持された基板Wに近接した処理位置に位置決めされた状態で加熱ガスが供給されることによって、加熱ガスは基板Wの上面Wfとヒータ内蔵の円板部42とに挟まれた空間の中央部から周縁部に向って流れる。これによって、基板Wの周囲の雰囲気が基板Wの上面Wfに入り込むのを抑制することができる。その結果、上記雰囲気に含まれる液滴が基板Wと円板部42とで挟まれた空間に巻き込まれるのを効果的に防止することができる。また、ヒータ421による加熱と加熱ガスによって上面Wfが全体的に加熱され、基板Wの面内温度を均一化することができる。これによって、基板Wが反るのを抑制し、処理液の着液位置を安定化させることができる。
【0041】
図2に示すように、支持部材43の上端部は、基板Wを搬入出する基板搬送方向(
図3の左右方向)と直交する水平方向に延びる梁部材49に固定されている。この梁部材49は昇降機構7と接続されており、制御ユニット10からの指令に応じて昇降機構7により昇降される。例えば
図2では梁部材49が下方に位置決めされることで、支持部材43を介して梁部材49に連結された円板部42が処理位置に位置している。一方、制御ユニット10からの上昇指令を受けて昇降機構7が梁部材49を上昇させると、梁部材49、支持部材43および円板部42が一体的に上昇するとともに、上カップ33も連動して下カップ32から分離して上昇する。これによって、スピンチャック21と、上カップ33および円板部42との間が広がり、スピンチャック21に対する基板Wの搬出入を行うことが可能となる。
【0042】
処理機構5は、
図2および
図3に示すように、基板Wの上面側に配置される処理液吐出ノズル51Fと、基板Wの下面側に配置される処理液吐出ノズル51Bと、処理液吐出ノズル51F、51Bに処理液を供給する処理液供給部52とを有している。以下においては、上面側の処理液吐出ノズル51Fと下面側の処理液吐出ノズル51Bとを区別するために、それぞれ「上面ノズル51F」および「下面ノズル51B」と称する。また、
図2において、処理液供給部52が2つ図示されているが、これらは同一である。
【0043】
図5Aは、処理機構に装備される上面側の処理液吐出ノズルを示す斜視図である。本実施形態では、3本の上面ノズル51Fが設けられるとともに、それらに対して処理液供給部52が接続されている。また、処理液供給部52はSC1、DHF、機能水(CO2水など)を処理液として供給可能に構成されており、3本の上面ノズル51FからSC1、DHFおよび機能水がそれぞれ独立して吐出可能となっている。
【0044】
各上面ノズル51Fでは、ノズル本体部51F1と、ノズル本体部51F1と一体化された係合部51F2とが一体化されている。係合部51F2は、ノズル本体部51F1よりも高い硬度を有する材料、例えばPBI(POLYBENZIMIDAZOLE:ポリベンゾイミダゾール)やアモルファスカーボンなどを用いることができる。
図3中の拡大図に示すように、係合部51F2のうち基板Wの中心に向けて露出した面が、後で説明するようにキャリブレーション処理時に係合面512として機能する。
【0045】
ノズル本体部51F1の先端下面には、処理液を吐出する吐出口511が設けられている。そして、
図3中の拡大図に示すように、各吐出口511を基板Wの上面Wfの周縁部を向けた姿勢で複数(本実施形態では3個)の上面ノズル51Fの下方部が円板部42の切欠部44に配置されるとともに、上面ノズル51Fの上方部がノズルホルダ53と一体的に基板Wの径方向Xに移動自在となっている。このノズルホルダ53はノズル移動部54に接続されている。このノズル移動部54は、上面ノズル51Fを一括して径方向Xに移動させる機能を有している。したがって、制御ユニット10からのノズル移動指令に応じてノズル移動部54は3本の上面ノズル51Fを一括して方向Xに駆動させる。このノズル移動指令には、後で詳述するノズル移動距離に関する情報が含まれている。この情報に基づき上面ノズル51Fが径方向Xに指定されたノズル移動距離だけ移動されると、上面ノズル51Fがベベル処理位置(
図9、
図10中の符号Pt参照)に位置決めされる。これによって、上面ノズル51Fから処理液が基板Wの端面から予め設定された位置に供給される。こうしてノズル51Fをベベル処理位置に高精度に位置決めするため、本実施形態では、基板Wに対するベベル処理に先立って、キャリブレーション処理が実行される。このキャリブレーション処理については、ノズル移動部54の構成・動作と一緒に、後で説明する。
【0046】
ベベル処理位置に位置決めた上面ノズル51Fの吐出口511は基板Wの上面Wfの周縁部に向いている。そして、制御ユニット10からの供給指令に応じて処理液供給部52が3種類の処理液のうち供給指令に対応する処理液を当該処理液用の上面ノズル51Fに供給すると、当該上面ノズル51Fの吐出口511から上記処理液が基板Wの上面Wfの周縁部に吐出される。
【0047】
また、ノズル移動部54の構成部品の一部に対し、雰囲気分離機構6の下密閉カップ部材61が着脱自在に固定されている。つまり、ベベル処理を実行する際には、上面ノズル51Fおよびノズルホルダ53は、ノズル移動部54を介して下密閉カップ部材61と一体化されており、昇降機構7によって下密閉カップ部材61とともに鉛直方向Zに昇降される。一方、キャリブレーション処理を実行する際には、下密閉カップ部材61は取り外され、上面ノズル51Fおよびノズルホルダ53はノズル移動部54により径方向Xに往復移動されるとともに昇降機構7により鉛直方向Zに昇降される。
【0048】
本実施形態では、基板Wの下面Wbの周縁部に向けて処理液を吐出するために、下面ノズル51Bおよびノズル支持部57がスピンチャック21に保持された基板Wの下方に設けられている。ノズル支持部57は、鉛直方向に延設された薄肉の円筒部位571と、円筒部位571の上端部において径方向外側に折り広げられた円環形状を有するフランジ部位572とを有している。円筒部位571は、円環部材27aと下カップ32との間に形成されたエアギャップに遊挿自在な形状を有している。そして、
図2に示すように、円筒部位571がエアギャップに遊挿されるとともにフランジ部位572がスピンチャック21に保持された基板Wと下カップ32との間に位置するように、ノズル支持部57は固定配置されている。フランジ部位572の上面周縁部に対し、3つの下面ノズル51Bが取り付けられている。各下面ノズル51Bは、基板Wの下面Wbの周縁部に向けて開口した吐出口(図示省略)を有しており、配管58を介して処理液供給部52から供給される処理液を吐出可能となっている。
【0049】
これら上面ノズル51Fおよび下面ノズル51Bから吐出される処理液により、基板Wの周縁部に対するベベル処理が実行される。また、基板Wの下面側では、周縁部Wsの近傍までフランジ部位572が延設される。このため、配管28を介して下面側に供給された窒素ガスが、フランジ部位572に沿って捕集空間SPcに流れる。その結果、捕集空間SPcから液滴が基板Wに逆流するのを効果的に抑制する。
【0050】
雰囲気分離機構6は、下密閉カップ部材61と、上密閉カップ部材62とを有している。下密閉カップ部材61および上密閉カップ部材62はともに上下に開口した筒形状を有している。そして、それらの内径は回転カップ部31の外径よりも大きく、雰囲気分離機構6は、スピンチャック21、スピンチャック21に保持された基板W、回転カップ部31および上面保護加熱機構4を上方からすっぽりと囲むように配置されている、より詳しくは、
図2に示すように、上密閉カップ部材62は、その上方開口が天井壁11aの開口11bを下方から覆うように、パンチングプレート14の直下位置に固定配置されている。このため、チャンバ11内に導入された清浄空気のダウンフローは、上密閉カップ部材62の内部を通過するものと、上密閉カップ部材62の外側を通過するものとに分けられる。
【0051】
また、上密閉カップ部材62の下端部は、内側に折り込まれた円環形状を有するフランジ部621を有している。このフランジ部621の上面にオーリング63が取り付けられている。上密閉カップ部材62の内側において、下密閉カップ部材61が鉛直方向に移動自在に配置されている。
【0052】
下密閉カップ部材61の上端部は、外側に折り広げられた円環形状を有するフランジ部611を有している。このフランジ部611は、鉛直上方からの平面視で、フランジ部621と重なり合っている。このため、下密閉カップ部材61が下降すると、
図3および
図14に示すように、下密閉カップ部材61のフランジ部611がオーリング63を介して上密閉カップ部材62のフランジ部621で係止される。これにより、下密閉カップ部材61は下限位置に位置決めされる。この下限位置では、鉛直方向において上密閉カップ部材62と下密閉カップ部材61とが繋がり、上密閉カップ部材62の内部に導入されたダウンフローがスピンチャック21に保持された基板Wに向けて案内される。
【0053】
下密閉カップ部材61の下端部は、外側に折り込まれた円環形状を有するフランジ部612を有している。このフランジ部612は、鉛直上方からの平面視で、固定カップ部34の上端部(液受け部位341の上端部)と重なり合っている。したがって、上記下限位置では、
図3中の拡大図に示すように、下密閉カップ部材61のフランジ部612がオーリング64を介して固定カップ部34で係止される。これにより、鉛直方向において下密閉カップ部材61と固定カップ部34が繋がり、上密閉カップ部材62、下密閉カップ部材61および固定カップ部34により密閉空間SPsが形成される。この密閉空間SPs内において、基板Wに対するベベル処理が実行可能となっている。つまり、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされることで、密閉空間SPsが密閉空間SPsの外側空間SPoから分離される(雰囲気分離)。したがって、外側雰囲気の影響を受けることなく、ベベル処理を安定して行うことができる。また、ベベル処理を行うために処理液を用いるが、処理液が密閉空間SPsから外側空間SPoに漏れるのを確実に防止することができる。よって、外側空間SPoに配置する部品の選定・設計の自由度が高くなる。
【0054】
下密閉カップ部材61は鉛直上方にも移動可能に構成されている。また、鉛直方向における下密閉カップ部材61の中間部には、上記したように、ノズル移動部54の一部を介してノズルヘッド56(=上面ノズル51F+ノズルホルダ53)が固定されている。また、これ以外にも、
図2および
図3に示すように、梁部材49を介して上面保護加熱機構4が下密閉カップ部材61の中間部に固定されている。つまり、
図3に示すように、下密閉カップ部材61は、周方向において互いに異なる3箇所で梁部材49の一方端部、梁部材49の他方端部およびノズル移動部54とそれぞれ接続されている。そして、昇降機構7が梁部材49の一方端部、梁部材49の他方端部およびノズル移動部54を昇降させることで、それに伴って下密閉カップ部材61も昇降する。
【0055】
この下密閉カップ部材61の内周面では、
図2、
図3および
図14に示すように、内側に向けて突起部613が上カップ33と係合可能な係合部位として複数本(4本)突設されている。各突起部613は上カップ33の上円環部位332の下方空間まで延設されている。また、各突起部613は、下密閉カップ部材61が下限位置に位置決めされた状態で上カップ33の上円環部位332から下方に離れるように取り付けられている。そして、下密閉カップ部材61の上昇によって各突起部613が下方から上円環部位332に係合可能となっている。この係合後においても、下密閉カップ部材61がさらに上昇することで上カップ33を下カップ32から離脱させることが可能となっている。
【0056】
本実施形態では、昇降機構7により下密閉カップ部材61が上面保護加熱機構4およびノズルヘッド56とともに上昇し始めた後で、上カップ33も一緒に上昇する。これによって、上カップ33、上面保護加熱機構4およびノズルヘッド56がスピンチャック21から上方に離れる。下密閉カップ部材61の退避位置への移動によって、基板搬送ロボット111のハンドがスピンチャック21にアクセスするための搬送空間が形成される。そして、当該搬送空間を介してスピンチャック21への基板Wのローディングおよびスピンチャック21からの基板Wのアンローディングが実行可能となっている。このように、本実施形態では、昇降機構7による下密閉カップ部材61の最小限の上昇によってスピンチャック21に対する基板Wのアクセスを行うことが可能となっている。
【0057】
昇降機構7は2つの昇降駆動部71、72を有している。昇降駆動部71では、
図3に示すように、第1昇降モータ711が設けられている。第1昇降モータ711は、制御ユニット10からの駆動指令に応じて作動して回転力を発生する。この第1昇降モータ711に対し、2つの昇降部712、713が連結されている。昇降部712、713は、第1昇降モータ711から上記回転力を同時に受ける。そして、昇降部712は、第1昇降モータ711の回転量に応じて梁部材49の一方端部を支持する支持部材491を鉛直方向Zに昇降させる。また、昇降部713は、第1昇降モータ711の回転量に応じてノズルヘッド56を支持しながら径方向Xに移動させるノズル移動部54を鉛直方向Zに昇降させる。
【0058】
昇降駆動部72は、
図3に示すように、第2昇降モータ721と昇降部722とを有している。第2昇降モータ721は、制御ユニット10からの駆動指令に応じて作動して回転力を発生し、昇降部722に与える。昇降部722は、第2昇降モータ721の回転量に応じて梁部材49の他方端部を支持する支持部材492を鉛直方向に昇降させる。
【0059】
昇降駆動部71、72は、下密閉カップ部材61の側面に対し、その周方向において互いに異なる3箇所にそれぞれ固定される支持部材491、492、54を同期して鉛直方向に移動させる。したがって、上面保護加熱機構4、ノズルヘッド56および下密閉カップ部材61の昇降を安定して行うことができる。また、下密閉カップ部材61の昇降に伴って上カップ33も安定して昇降させることができる。
【0060】
センタリング機構8は、スピンチャック21にローディングされた基板Wの端面に対して近接および離間可能な当接部材81と、当接部材81を水平方向に移動させるためのセンタリング駆動部82とを有している。本実施形態では、回転軸AXを中心として放射状の3つの当接部材81が等角度間隔で配置されており、そのうちの1つのみが
図2に図示されている。このセンタリング機構8は、ポンプ26による吸引を停止している間(つまりスピンチャック21の上面上で基板Wが水平移動可能となっている間)に、制御ユニット10からのセンタリング指令に応じてセンタリング駆動部82が当接部材81を基板Wに近接させる(センタリング処理)。このセンタリング処理によりスピンチャック21に対する基板Wの偏心が解消され、基板Wの中心がスピンチャック21の中心と一致する。
【0061】
基板観察機構9は、基板Wの周縁部を観察するための観察ヘッド91を有している。この観察ヘッド91は、基板Wの周縁部に対して近接および離間可能に構成されている。観察ヘッド91には、観察ヘッド駆動部92が接続されている。そして、観察ヘッド91により基板Wの周縁部を観察する際には、制御ユニット10から観察指令に応じて観察ヘッド駆動部92が観察ヘッド91を基板Wに近接させる(観察処理)。そして、観察ヘッド91を用いて基板Wの周縁部が撮像される。撮像された画像は制御ユニット10に送られる。この画像に基づいてベベル処理が良好に行われたか否かを制御ユニット10が検査する。
【0062】
制御ユニット10は、演算処理部10A、記憶部10B、読取部10C、画像処理部10D、駆動制御部10E、通信部10Fおよび排気制御部10Gを有している。記憶部10Bは、ハードディスクドライブなどで構成されており、上記基板処理装置1によりキャリブレーション処理およびベベル処理を実行するためのプログラムを記憶している。当該プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能な記録媒体RM(例えば、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等)に記憶されており、読取部10Cにより記録媒体RMから読み出され、記憶部10Bに保存される。また、当該プログラムの提供は、記録媒体RMに限定されるものではなく、例えば当該プログラムが電気通信回線を介して提供されるように構成してもよい。画像処理部10Dは、基板観察機構9により撮像された画像に種々の処理を施す。駆動制御部10Eは、基板処理装置1の各駆動部を制御する。通信部10Fは、基板処理システム100の各部を統合して制御する制御部などと通信を行う。排気制御部10Gは排気機構38を制御する。
【0063】
また、制御ユニット10には、各種情報を表示する表示部10H(例えばディスプレイなど)や操作者からの入力を受け付ける入力部10J(例えば、キーボードおよびマウスなど)が接続されている。
【0064】
演算処理部10Aは、CPU(= Central Processing Unit)やRAM(=Random Access Memory)等を有するコンピュータにより構成されており、記憶部10Bに記憶されているプログラムにしたがって基板処理装置1の各部を以下のように制御し、キャリブレーション処理およびベベル処理を実行する。これらの処理を実行するため、演算処理部10Aは、上記プログラムを実行することで、
図6に示す機能を果たす。
【0065】
図6は、
図2に示す基板処理装置の演算処理部で実行される機能を示すブロック図である。演算処理部10Aは、キャリブレーション部10Kと、ノズル位置決め部10Lと、を含んでいる。キャリブレーション部10Kは、基板Wと同一形状の治具ウェハ(本発明の「治具板」の一例に相当)を用いてスピンチャック21から径方向Xに離れたホーム位置(
図9中の符号Ph参照)に位置する上面ノズル51Fをベベル処理位置Ptまで移動させるのに要するノズル移動距離を求める。この機能を果たすために、キャリブレーション部10Kは、計測部10K1と、移動距離算出部10K2とを有している。計測部10K1は、上面ノズル51Fの係合面512がスピンチャック21に保持された治具ウェハ(
図9中の符号JW)の端面と対向する姿勢でホーム位置から治具ウェハへの上面ノズル51Fの移動を開始した後で、係合面512が治具ウェハの端面に当接するまでに上面ノズル51Fが移動した第1距離を計測する。また、移動距離算出部10K2は、係合面512が治具ウェハの端面に当接した姿勢の上面ノズル51Fをベベル処理位置まで径方向Xに沿って移動させるのに要する第2距離M2を記憶部10Bから読み出し、第1距離に加算してノズル移動距離を算出する。
【0066】
一方、ノズル位置決め部10Lは、キャリブレーション部10Kにより算出されたノズル移動距離に基づき上面ノズル51Fを位置決めする。より具体的には、ノズル位置決め部10Lは、径方向Xにおいて上面ノズル51Fを離間位置からノズル移動距離だけ移動させることで、上面ノズル51Fをベベル処理位置に位置決めする。
【0067】
図7は、
図2に示す基板処理装置により実行されるベベル処理を示すフローチャートである。
図8は、ベベル処理に含まれるキャリブレーション処理を示すフローチャートである。
図9は、キャリブレーション処理中の装置各部を示す模式図である。
図10は、ベベル処理中の装置各部を示す模式図である。ここでは、ノズル移動部54の構成について説明した後で、キャリブレーション処理およびベベル処理において実行されるノズル位置調整について詳述する。
【0068】
ノズル移動部54は、
図9および
図10に示すように、ノズルヘッド56(=上面ノズル51F+ノズルホルダ53)を保持したまま、昇降部713のリフター713aの上端部に取り付けられている。このため、制御ユニット10からの昇降指令に応じてリフター713aが鉛直方向に伸縮すると、それに応じてノズル移動部54およびノズルヘッド56が鉛直方向Zに移動する。
【0069】
また、ノズル移動部54では、ベース部材541がリフター713aの上端部に固着されている。このベース部材541には、直動アクチュエータ542が取り付けられている。直動アクチュエータ542は、径方向Xにおけるノズル移動の駆動源として機能するモータ(以下「ノズル駆動モータ」という)543と、ノズル駆動モータ543の回転軸に連結されたボールねじなどの回転体の回転運動を直線運動に変換してスライダー544を径方向Xに往復移動させる運動変換機構545とを有している。また、運動変換機構545では、スライダー544の径方向Xへの移動を安定化させるために、例えばLMガイド(登録商標)などのガイドが用いられている。
【0070】
こうして径方向Xに往復駆動されるスライダー544には、連結部材546を介してヘッド支持部材547が連結されている。このヘッド支持部材547は、径方向Xに延びる棒形状を有している。ヘッド支持部材547の(+X)方向端部はスライダー544に固着される。一方、ヘッド支持部材547の(-X)方向端部はスピンチャック21に向かって水平に延設され、その先端部にノズルヘッド56が取り付けられている。このため、制御ユニット10からのノズル移動指令に応じてノズル駆動モータ543が回転すると、その回転方向に対応して(+X)方向または(-X)方向に、しかも回転量に対応した距離だけ、スライダー544、ヘッド支持部材547およびノズルヘッド56が一体的に移動する。その結果、ノズルヘッド56に装着されている上面ノズル51Fが径方向Xに位置決めされる。例えば、
図7中の(a)欄に示すように、上面ノズル51Fが予め設定されたホーム位置(本発明の「離間位置」の一例に相当)Phに位置決めされたとき、運動変換機構545に設けられたバネ部材548がスライダー544により圧縮され、スライダー544に対して(-X)方向に付勢力を与える。これにより、運動変換機構545に含まれるバックラッシを制御することができる。つまり、運動変換機構545はガイドなどの機械部品を有しているため、径方向Xに沿ったバックラッシをゼロとすることは事実上困難であり、これについて十分な考慮を払わないと、径方向Xにおける上面ノズル51Fの位置決め精度が低下してしまう。そこで、本実施形態では、バネ部材548を設けたことで、上面ノズル51Fをホーム位置Phに静止させた際には、常時、バックラッシを(-X)方向に片寄らせている。これにより、次に
図7ないし
図10を参照しつつ説明するキャリブレーション処理を含むベベル処理を実行することでバックラッシの影響を抑えることができ、高精度なノズル位置決めが可能となる。
【0071】
本実施形態では、ベベル処理を行う際、演算処理部10Aは、上面ノズル51Fをベベル処理位置に移動させて位置決めするために必要なノズル移動距離(
図9および
図10中の符号M)を既に取得し、記憶部10Bに保存されているか否かを判定する(ステップS1)。ここで、ノズル移動距離Mが取得されていないとき(ステップS1で「NO」)のみ、演算処理部10Aはキャリブレーション処理(ステップS2)を実行する。一方、ノズル移動距離Mを取得済みであるとき(ステップS1で「YES」)、キャリブレーション処理をスキップしてステップS3に進む。
【0072】
キャリブレーション処理を実行する場合、オペレータが雰囲気分離機構6を取り外し、演算処理部10Aにより
図8および
図9に示す工程が実行された後に、雰囲気分離機構6を元に戻してステップS3に進む。このキャリブレーション処理では、上面ノズル51Fが径方向Xにおいてスピンチャック21から離間したホーム位置Phに位置するように、演算処理部10Aはノズル駆動モータ543を制御する(ステップS201)。この位置決め時には、上面ノズル51Fのホーム位置Phへの移動により、
図9中の(a)欄に示すように、スライダー544がバネ部材548を圧縮し、圧縮に伴う付勢力がスライダー544に与えられる。これによって、運動変換機構545において発生するバックラッシが(-X)方向に片寄らされている。また、本実施形態では、後の工程を考慮して、鉛直方向Zにおいて上面ノズル51Fがベベル処理を行う際の高さ位置(以下「処理高さ位置」という)Ztよりも低い高さ位置Zhに位置決めされている。この高さ位置Zhは、次のステップS202でスピンチャック21に載置される治具ウェハJWの高さに一致している。
【0073】
ステップS202では、治具ウェハJWがスピンチャック21に載置される。この載置作業、いわゆるローディング作業は、オペレータにより行われてもよいし、基板搬送ロボット111により行われてもよい。このローディング作業中は、スピンチャック21への負圧付与は停止されている。
【0074】
演算処理部10Aは、上記負圧付与の停止を維持したまま、センタリング駆動部82にセンタリング指令を与える。これに対応してセンタリング駆動部82が当接部材81を治具ウェハJWに近接させ、治具ウェハJWの中心をスピンチャック21の中心に一致させる(センタリング処理)。これに続いて、演算処理部10Aは、ポンプ26に負圧付与指令を与える。これによって、治具ウェハJWがスピンチャック21に吸着保持される(ステップS203)。この治具ウェハJWの端面は、
図9の(a)欄に示すように、上面ノズル51Fの係合面512と同一高さに位置しながら対向している。
【0075】
次のステップS204では、演算処理部10Aは、ノズル駆動モータ543に駆動指令を与え、上面ノズル51Fの治具ウェハJWへの移動を開始する。この移動開始と同時に、演算処理部10Aは治具ウェハJWの移動距離のカウントを開始するとともに、上面ノズル51Fの係合面512が治具ウェハJWの端面と当接するまで上記カウントを継続する(ステップS205)。本実施形態では、治具ウェハJWの端面への係合面512の当接は、ノズル駆動モータ543の駆動電流の値(以下「電流値」という)が急激に変動し、予め設定した設定値を超えたか否かに基づいて判定している(ステップS206)。これによって、治具ウェハJWの端面への係合面512の当接を精度良く検出することができる。なお、本実施形態では、当該当接判定が電流値により行われているが、判定方法はこれに限定されるものではない。例えばノズルヘッド56にカメラや光センサなどの光学部品を取り付け、光学部品による光学検出により上記当接判定を行うように構成してもよい。また、上面ノズル51Fが治具ウェハJWに近接するのに応じて治具ウェハJWの移動速度を減速するように、演算処理部10Aがノズル駆動モータ543を制御してもよい。これにより、上面ノズル51Fが治具ウェハJWに当接する際の衝撃を緩和することができる。
【0076】
治具ウェハJWの端面への係合面512の当接と同時に、演算処理部10Aは、ノズル駆動モータ543に移動停止指令を与え、径方向Xに沿った上面ノズル51Fの移動を停止させる。これにより、
図9の(b)欄に示すように、上面ノズル51Fの係合面512が治具ウェハJWの端面に当接した姿勢で上面ノズル51Fは当接位置Peに位置する。また、これと並行して、演算処理部10AはステップS205でカウントされた移動距離を記憶部10Bに保存する(ステップS207)。この移動距離は、ホーム位置Phから当接位置Peまでに上面ノズル51Fが移動した距離を意味しており、本発明の「第1距離」の一例に相当している。そこで、以下においては、当該移動距離を第1距離M1と称する。
【0077】
次に、演算処理部10Aは、上面ノズル51Fを当接位置Peに位置させたまま、昇降機構7に上昇指令を与える。これによって、
図9の(c)欄に示すように、上面ノズル51Fは処理高さ位置Ztまで上昇する(ステップS208)。これに続いて、演算処理部10Aは、第2距離M2を記憶部10Bから読み出し、ノズル駆動モータ543に駆動指令を与え、
図9の(d)欄に示すように、回転軸AXに向かう方向、つまり(-X)方向に第2距離M2だけ上面ノズル51Fをさらに移動させる(ステップS209)。この移動後の上面ノズル51Fは設計通りであれば、ベベル処理位置Ptに位置しているはずである。そこで、本実施形態では、ベベル処理位置Ptでの上面ノズル51Fの位置決めがオペレータに確認されるのを待って、演算処理部10Aはノズル移動距離Mを決定する。ここで、上面ノズル51Fのベベル処理位置Ptへの位置決めが確認されなかった場合(ステップS210で「NO」)には、キャリブレーション処理を中断し、エラー処理に進む。
【0078】
ステップS210でベベル処理位置Ptへの位置決めが確認されると、演算処理部10Aは、ステップS207で得られた第1距離M1に上記第2距離M2を加算してノズル移動距離Mを算出する(ステップS211)。このノズル移動距離Mは記憶部10Bに保存される。また、演算処理部10Aは、ノズル駆動モータ543にホーム復帰指令を与え、上面ノズル51Fをホーム位置Phに戻す(ステップS212)。より具体的には、上面ノズル51Fが(+X)方向にノズル移動距離Mだけ移動され、治具ウェハJWから離間する。さらに、演算処理部10Aは、ポンプ26に負圧停止指令を与え、スピンチャック21への負圧付与を停止する。
【0079】
ステップS213では、治具ウェハJWがスピンチャック21から搬出される。こうしてキャリブレーション処理が完了すると、オペレータにより雰囲気分離機構6が元に戻される。上記搬出作業、いわゆるアンローディング作業は、オペレータにより行われてもよいし、基板搬送ロボット111により行われてもよい。
【0080】
図7に戻って、ベベル処理の説明を続ける。ステップS3では、
図10の(a)欄に示すように、ベベル処理を受ける前の基板Wがスピンチャック21に載置される。このローディング作業中においては、上面ノズル51Fはホーム位置Phおよび処理高さ位置Ztに位置している。また、スピンチャック21への負圧付与は停止されている。そして、このような待機状態で、ローディング作業は基板搬送ロボット111により行われる。
【0081】
これに続いて、上記ステップS203と同様にして、基板Wに対するセンタリング処理および基板Wの吸着保持が実行される(ステップS4)。
【0082】
次に、演算処理部10Aは、記憶部10Bからノズル移動距離Mを読み出す。そして、し、演算処理部10Aは、ノズル駆動モータ543にノズル移動指令を与え、
図10の(b)欄に示すように、回転軸AXに向かう方向、つまり(-X)方向にノズル移動距離Mだけ上面ノズル51Fを移動させる(ステップS5)。
【0083】
こうして、基板Wの周縁部への処理液の供給準備が完了すると、演算処理部10Aは、回転駆動部23に回転指令を与えて基板Wを回転軸AX周りに回転させるとともに、処理液供給部52に供給指令を与えて上面ノズル51Fに処理液を供給する。これによって基板Wの周縁部に対してベベル処理が施される(ステップS6)。
【0084】
なお、本実施形態では、ベベル処理が完了した後、演算処理部10Aは、観察ヘッド駆動部92に観察指令に与え、観察ヘッド91を基板Wに近接させる(観察処理)。そして、観察ヘッド91を用いて撮像された基板Wの周縁部の画像に基づいてベベル処理が良好に行われたか否かを演算処理部10Aが検査する。そして、所望のエッチング幅が得られなかった場合(ステップS7で「NO」)には、ベベル処理を中断し、エラー処理が実行される。
【0085】
以上のように、第1実施形態によれば、従来技術よりも少ないオペレータ作業で、上面ノズル51Fの係合面512が治具ウェハJWの端面に当接するまでの上面ノズル51Fの移動距離(第1距離M1)と、係合面512が治具ウェハJWの端面に当接した姿勢の上面ノズル51Fをベベル処理位置Ptまで径方向Xに沿って移動させるのに要する距離(第2距離)とが取得される。そして、それらの合計値をノズル移動距離Mとして求めている。したがって、第1実施形態によって、オペレータ毎にノズル移動距離Mが相違するという従来の問題を解消し、液供給位置を高精度に調整することが可能となっている。また、オペレータ作業が少なくなることで、基板処理に要するトータルコストの削減、基板処理装置1間やチャンバ11間での位置決め精度誤差も少なくなる。その結果、ベベル処理を安定して実行することができる。
【0086】
また、第2距離M2は、ベベル処理位置Ptと基板Wの径方向サイズとにより設計的に決まっている値であることから、第1距離M1を計測した直後にノズル移動距離Mを算出することも可能である。つまり、
図8中のステップS207~S209を省略し、直ちにステップS211に進んでもよい。これにより、キャリブレーション処理に要する時間を短縮することができる。ただし、第1実施形態では、
図8および
図9の(d)欄に示すように、上面ノズル51Fをベベル処理位置Ptまで移動させ、治具ウェハJWに対する上面ノズル51Fの相対位置を確認した後でノズル移動距離Mが決定される。したがって、より高精度にノズル位置調整を行うことができる。
【0087】
また、ホーム位置Phでは、常にバネ部材548で発生する付勢力がスライダー544に与えられ、運動変換機構545において発生するバックラッシが(-X)方向に片寄っている。これによって、バックラッシによる第1距離M1の計測結果のバラツキを確実に抑制し、ノズル移動距離Mを正確に求めることができる。その結果、バックラッシの影響を受けることなく、上面ノズル51Fをベベル処理位置Ptに高精度で位置決めすることができる。バネ部材548の装着は任意であり、また次に説明する第2実施形態においてバネ部材548を装着してもよい。
【0088】
また、第1距離M1の計測に先立って、治具ウェハJWに対するセンタリング処理を実行しているので、第1距離M1を安定して求めることができる。
【0089】
さらに、第1実施形態では、上面ノズル51Fでは、互いに異なる硬度を有する2種類の部品が一体化されている。もちろん、単一材料で上面ノズル51Fを形成してもよいが、係合面512の治具ウェハJWとの当接による摩耗が問題となる場合がある。これに対し、第1実施形態では、係合部51F2の硬度がノズル本体部51F1のそれよりも高いため、上記摩耗を効果的に抑制することができる。つまり、係合面512での摩耗による装置稼働の低下を抑制することができる。
【0090】
上記したように、第1実施形態では、上面ノズル51Fの一部(係合面512)を治具ウェハJWに当接させているが、ノズル移動距離Mを求めるための専用の位置調整治具を用いてもよい(第2実施形態)。以下、
図5B、
図11および
図12を参照しつつ、本発明の第2実施形態について説明する。
【0091】
図5Bは、第2実施形態において処理機構に装備される上面側の処理液吐出ノズルを示す斜視図である。
図11は、第2実施形態におけるキャリブレーション処理を示すフローチャートである。
図12は、第2実施形態におけるキャリブレーション処理中の装置各部を示す模式図である。第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、係合面512の代わりに位置調整治具PJを上面ノズル51Fに着脱しながらノズル移動距離Mを求める点と、バネ部材548が設けられていない点とである。その他の点においては、第1実施形態と共通する。そこで、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0092】
第2実施形態におけるキャリブレーション処理では、
図12の(a)欄に示すように、上面ノズル51Fが径方向Xにおいてスピンチャック21から離間したホーム位置Phに位置するように、演算処理部10Aはノズル駆動モータ543を制御する(ステップS221)。また、ホーム位置Phでは、上面ノズル51Fは、鉛直方向Zにおいてベベル処理位置Ptと同じ高さ位置Ztに、位置決めされる。
【0093】
次に、第1実施形態と同様に、治具ウェハJWのローディング(ステップS222)と、治具ウェハJWのセンタリングおよび吸着保持(ステップS23)とが実行される。その後で、短冊状の位置調整治具PJの下端部を治具ウェハJWの端面と対向させながら位置調整治具PJの上端部がオペレータにより上面ノズル51Fの側面に着脱自在に取り付けた(ステップS224)ことを確認すると、演算処理部10Aは、ノズル駆動モータ543に駆動指令を与え、位置調整治具PJおよび上面ノズル51Fの治具ウェハJWへの移動を開始する。この移動開始と同時に、演算処理部10Aは治具ウェハJWの移動距離のカウントを開始するとともに、位置調整治具PJの下端部が治具ウェハJWの端面と当接するまで上記カウントを継続する(ステップS226)。そして、第1実施形態と同様に、ノズル駆動モータ543の電流値の変動に基づいて演算処理部10Aは治具ウェハJWへの位置調整治具PJの当接を検出する(ステップS227)。もちろん、上記した光学検出によって、治具ウェハJWへの位置調整治具PJの当接を検出するように構成してもよい。
【0094】
治具ウェハJWの端面への位置調整治具PJの当接と同時に、演算処理部10Aは、ノズル駆動モータ543に移動停止指令を与え、径方向Xに沿った上面ノズル51Fの移動を停止させる。これにより、
図12の(b)欄に示すように、位置調整治具PJが治具ウェハJWの端面に当接した姿勢で上面ノズル51Fは当接位置Peに位置する。また、これと並行して、演算処理部10AはステップS205でカウントされた移動距離を記憶部10Bに保存する(ステップS228)。この移動距離は、この移動距離は、ホーム位置Phから当接位置Peまでに上面ノズル51Fが移動した距離を意味しており、本発明の「第3距離」の一例に相当している。そこで、以下においては、当該移動距離を第3距離M3と称する。
【0095】
次に、演算処理部10Aは、
図12の(c)欄に示すように、位置調整治具PJがオペレータによって取り外された(ステップS229)後で、第4距離M4を記憶部10Bから読み出し、ノズル駆動モータ543に駆動指令を与え、
図12の(d)欄に示すように、回転軸AXに向かう方向、つまり(-X)方向に第4距離M4だけ上面ノズル51Fをさらに移動させる(ステップS230)。この移動後の上面ノズル51Fは設計通りであれば、ベベル処理位置Ptに位置しているはずである。ベベル処理位置Ptでの上面ノズル51Fの位置決めがオペレータに確認されるのを待って、演算処理部10Aはノズル移動距離Mを決定する。ここで、上面ノズル51Fのベベル処理位置Ptへの位置決めが確認されなかった場合(ステップS231で「NO」)には、キャリブレーション処理を中断し、エラー処理に進む。
【0096】
ステップS231でベベル処理位置Ptへの位置決めが確認されると、演算処理部10Aは、ステップS228で得られた第3距離M3に上記第4距離M4を加算してノズル移動距離Mを算出する(ステップS232)。このノズル移動距離Mは記憶部10Bに保存される。また、演算処理部10Aは、ノズル駆動モータ543にホーム復帰指令を与え、上面ノズル51Fをホーム位置Phに戻す(ステップS233)。より具体的には、上面ノズル51Fが(+X)方向にノズル移動距離Mだけ移動され、治具ウェハJWから離間する。さらに、演算処理部10Aは、ポンプ26に負圧停止指令を与え、スピンチャック21への負圧付与を停止する。
【0097】
ステップS234では、治具ウェハJWがスピンチャック21から搬出される。こうしてキャリブレーション処理が完了すると、オペレータにより雰囲気分離機構6が元に戻される。上記搬出作業、いわゆるアンローディング作業は、オペレータにより行われてもよいし、基板搬送ロボット111により行われてもよい。なお、キャリブレーション処理に続いて、第1実施形態と同様のベベル処理が実行される。
【0098】
以上のように、第2実施形態においても、従来技術よりも少ないオペレータ作業で、上面ノズル51Fに取り付けられた位置調整治具PJが治具ウェハJWの端面に当接するまでの上面ノズル51Fの移動距離(第3距離M3)と、位置調整治具PJが治具ウェハJWの端面に当接した姿勢の上面ノズル51Fをベベル処理位置Ptまで径方向Xに沿って移動させるのに要する距離(第4距離)とが取得される。そして、それらの合計値をノズル移動距離Mとして求めている。したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同等に、オペレータ毎にノズル移動距離Mが相違するという従来の問題を解消し、液供給位置を高精度に調整することが可能となっている。また、オペレータ作業が少なくなることで、基板処理に要するトータルコストの削減、基板処理装置1間やチャンバ11間での位置決め精度誤差も少なくなる。その結果、ベベル処理を安定して実行することができる。
【0099】
また、第4距離M4は、ベベル処理位置Ptと、位置調整治具PJおよび基板Wの径方向サイズとにより設計的に決まっている値であることから、第3距離M3を計測した直後にノズル移動距離Mを算出することも可能である。つまり、
図11中のステップS230~S232を省略し、直ちにステップS233に進んでもよい。これにより、キャリブレーション処理に要する時間を短縮することができる。ただし、第1実施形態と同様に、上面ノズル51Fをベベル処理位置Ptまで移動させ、治具ウェハJWに対する上面ノズル51Fの相対位置を確認した後でノズル移動距離Mが決定される。したがって、より高精度にノズル位置調整を行うことができる。
【0100】
また、第3距離M3の計測に先立って、治具ウェハJWに対するセンタリング処理を実行しているので、第3距離M3を安定して求めることができる。
【0101】
さらに、第2実施形態では、第3距離M3の計測の前後で上面ノズル51Fに対する位置調整治具PJの着脱を行っており、上面ノズル51Fの高さ位置を常時、ベベル処理位置Ptと同じ高さ位置に維持することができ、キャリブレーション処理およびベベル処理を安定して行うことができる。
【0102】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、治具ウェハJWをセンタリングしたことで、治具ウェハJWの中心が回転軸AXとほぼ一致している。ただし、回転軸AXに対する治具ウェハJWの中心のズレ量、つまり偏心量をゼロとすることは難しく、例えば
図13に示すように、径方向Xにおける治具ウェハJWの端面位置は周期的に変動し、偏心量Mdはゼロよりも大きくなる。そこで、第1実施形態において、ステップS203において治具ウェハJWの端面が最も(+X)方向に位置するときの回転角で治具ウェハJWを吸着保持するとともに、ステップS211において演算処理部10Aは次式、
ノズル移動距離M=M1+M2+Md
にしたがってノズル移動距離Mを算出するように構成してもよい(第3実施形態)。また、第2実施形態において、ステップS223において治具ウェハJWの端面が最も(+X)方向に位置するときの回転角で治具ウェハJWを吸着保持するとともに、ステップS232において演算処理部10Aは次式、
ノズル移動距離M=M3+M4+Md
にしたがってノズル移動距離Mを算出するように構成してもよい(第4実施形態)。これらの実施形態によれば、偏心の影響を抑制することができる。なお、治具ウェハJWの端面が最も(-X)方向に位置するときの回転角で治具ウェハJWを吸着保持してキャリブレーション処理を行う場合には、逆にMdだけ減算すればよい。このようにノズル移動距離Mを偏心量Mdだけ補正することで偏心の影響を最小化することができ、ノズル位置調整を高精度に実施可能となる。
【0103】
また、上記実施形態では、雰囲気分離機構6を有する基板処理装置1に本発明を適用しているが、雰囲気分離機構6を有さない基板処理装置に対しても本発明を適用することができる。また、回転カップ部31を有する基板処理装置に本発明を適用しているが、常時、静止したカップ部により基板Wから飛散する液滴を捕集する基板処理装置に対しても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
この発明は、基板の径方向Xにおけるノズルの位置を調整するノズル位置調整方法および当該ノズル位置調整方法により位置調整されたノズルから処理液を基板に供給して処理する基板処理技術全般に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1…基板処理装置(処理ユニット)
10…制御ユニット
10A…演算処理部
10B…記憶部
10K…キャリブレーション部
10L…ノズル位置決め部
10K1…計測部
10K2…移動距離算出部
512…(上面ノズルの)係合面
51B…処理液吐出ノズル(上面ノズル)
543…(ノズル駆動)モータ
545…運動変換機構
548…バネ部材
AX…回転軸
JW…治具ウェハ
M…ノズル移動距離
M1…第1距離
M2…第2距離
M3…第3距離
M4…第4距離
Md…偏心量
Pe…当接位置
Ph…ホーム位置(離間位置)
PJ…位置調整治具
Pt…(ベベル)処理位置
Z…鉛直方向