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特開2023-183749駆動装置、リソグラフィ装置、物品製造方法、および駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183749
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】駆動装置、リソグラフィ装置、物品製造方法、および駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20231221BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20231221BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H01L21/30 502D
H01L21/68 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097422
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂木 威史
【テーマコード(参考)】
2H197
5F131
5F146
【Fターム(参考)】
2H197CD12
2H197CD13
2H197CD41
2H197CD43
2H197DA02
2H197HA03
2H197HA05
2H197HA06
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA13
5F131CA01
5F131EA02
5F131FA17
5F131FA37
5F146AA31
5F146CC01
5F146CC18
(57)【要約】
【課題】駆動対象物を安定して駆動するため、および、駆動装置の故障を低減するために有利な技術を提供する。
【解決手段】駆動装置は、駆動対象物を駆動するモータを制御するための第1指令値を第2指令値に変換する変換部と、前記第2指令値に基づいて前記モータを駆動する電流を出力する電流制御器と、を備え、前記第2指令値は、前記第1指令値の時間的な変化を緩慢にした指令値である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象物を駆動するモータを制御するための第1指令値を第2指令値に変換する変換部と、
前記第2指令値に基づいて前記モータを駆動する電流を出力する電流制御器と、を備え、
前記第2指令値は、前記第1指令値の時間的な変化を緩慢にした指令値である、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記電流制御器は、出力ラインを通して電流を前記モータに供給し、
前記変換部は、前記出力ラインの電圧が所定電圧を超えないように前記第1指令値を前記第2指令値に変換する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記電流制御器は、出力ラインを通して電流を前記モータに供給し、
前記変換部は、前記電流制御器が前記出力ラインに出力する電圧と前記第1指令値の変化とに基づいて予測される前記出力ラインの電圧が所定電圧を超えないように前記第1指令値を前記第2指令値に変換する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記出力ラインの電圧を検出する電圧検出器を更に備え、
前記変換部は、前記電圧検出器によって検出される前記出力ラインの電圧と前記第1指令値の変化とに基づいて予測される前記出力ラインの電圧が所定電圧を超えないように前記第1指令値を前記第2指令値に変換する、
ことを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記出力ラインの電圧が前記所定電圧を超えない範囲で、前記モータの応答性が向上するように、前記変換部が発生する前記第2指令値を調整する調整部を更に備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記調整部は、機械学習によって生成された学習済モデルによって前記変換部が発生する前記第2指令値を調整する、
ことを特徴とする請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記第1指令値は、第1クロックに従って更新され、前記変換部は、前記第2指令値を前記第1クロックより早い第2クロックに従って更新し、
前記変換部は、前記第1指令値では前記第1クロックに従って一度に更新される量が、前記第2指令値では前記第2クロックに従って複数回に分けて更新されるように、前記第1指令値を前記第2指令値に変換する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記第1クロックの周期は、第2クロックの周期の整数倍である、
ことを特徴とする請求項7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記変換部および前記電流制御器は、前記モータを駆動するモータドライバを構成し、
前記第1指令値は、前記第1指令値を発生する制御部から前記モータドライバに供給される、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記電流制御器は、前記モータを駆動するモータドライバを構成し、
前記変換部は、前記第2指令値を前記モータドライバに供給する制御部に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項11】
基板に原版のパターンを転写するリソグラフィ装置であって、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の駆動装置を備えることを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のリソグラフィ装置を用いて基板に原版のパターンを転写する工程と、
前記パターンが転写された前記基板から物品が得られるように前記基板を処理する工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【請求項13】
モータを駆動する駆動方法であって、
前記モータを制御するための第1指令値を第2指令値に変換する工程と、
前記第2指令値に基づいて前記モータを駆動する工程と、を含み、
前記第2指令値は、前記第1指令値の時間的な変化を緩慢にした指令値である、
ことを特徴とする駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、リソグラフィ装置、物品製造方法、および駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流電圧を生成するためのDC電源部と、その直流電圧でモータを制御するアンプ部と、モータの端子電圧に連動した直流電圧をアンプ部に供給するための可変電圧電源部とを備えるモータドライバが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-189664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の駆動装置では、駆動装置の出力電圧がその定格を超えてしまった場合に、駆動対象物を安定して駆動できなかったり、駆動装置が故障したりしうる。
【0005】
本発明は、駆動対象物を安定して駆動するため、および、駆動装置の故障を低減するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの側面は、駆動装置に係り、前記駆動装置は、駆動対象物を駆動するモータを制御するための第1指令値を第2指令値に変換する変換部と、前記第2指令値に基づいて前記モータを駆動する電流を出力する電流制御器と、を備え、前記第2指令値は、前記第1指令値の時間的な変化を緩慢にした指令値である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、駆動対象物を安定して駆動するため、および、駆動装置の故障を低減するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の駆動装置の構成を示すブロック図。
図2】駆動プロファイルの一例としての加速度プロファイルを例示する図。
図3】比較例のモータドライバの構成を示す図。
図4】第1実施形態のモータドライバの構成を例示する図。
図5図3に示された比較例のモータドライバの動作を例示する図。
図6図3に示された比較例のモータドライバの動作を例示する図。
図7図4に示された第1実施形態のモータドライバの動作を例示する図。
図8】第2実施形態の駆動装置の構成を例示する図。
図9図8に示された第2実施形態のモータドライバの動作を例示する図。
図10図8に示された第2実施形態のモータドライバの動作を例示する図。
図11】第2実施形態の動作例あるいは駆動方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1は、第1実施形態の駆動装置DAの構成を示すブロック図である。駆動装置DAは、駆動対象物5を駆動する装置として構成されうる。駆動装置DAは、例えば、制御部1と、モータドライバ3と、モータ4と、電源部2とを備えうる。制御部1は、モータドライバ3を制御しうる。モータドライバ3は、モータ4を駆動しうる。モータ4を駆動することは、モータ4を動作させることによって駆動対象物5を駆動(例えば、移動および/または回転)させることを含みうる。モータ4は、例えば、リニアモータまたはロータリーモータでありうる。駆動対象物5は、例えば、ステージ等の物体でありうる。電源部2は、モータドライバ3に電力あるいは電圧を供給する。一例において、電源部2は、モータドライバ3に直流電圧を供給するように構成されうる。
【0011】
制御部1は、例えば、上位制御部(不図示)から与えられる駆動プロファイルに基づいて、モータ4を制御するための第1指令値を発生し、その第1指令値をモータドライバ3に供給しうる。駆動プロファイルは、例えば、所定期間内における駆動対象物5の位置、速度、加速度の少なくとも1つの変化を示す情報を含みうる。図2には、駆動プロファイルの一例としての加速度プロファイル6が例示的に示されている。加速度プロファイル6は、所定期間内における駆動対象物5の加速度の変化を示す情報を含みうる。なお、変化とは、時間経過に伴う変化を意味する。加速度プロファイル6は、例えば、台形形状を有する台形プロファイルでありうる。図2にはまた、駆動プロファイルとしての加速度プロファイル6に基づいて制御部1が発生する第1指令値7の変化が例示的に示されている。台形プロファイルである加速度プロファイル6に従って生成される第1指令値7の変化(波形)は、台形形状を有しうる。制御部1は、システムクロック(第1クロック)に同期して第1指令値7を変更あるいは更新しうる。
【0012】
モータドライバ3は、例えば、制御部1から供給される第1指令値に従って、モータ4に対して電流を供給しうる。駆動対象物5の応答(例えば、位置)は、不図示のセンサによって検出され、検出された応答を示す情報は、制御部1に供給あるいはフィードバックされうる。
【0013】
図3には、比較例のモータドライバ3の構成が示されている。比較例では、モータドライバ3は、減算器41、電流制御器8および電流検出器9を含む。電流検出器9は、モータドライバ3から出力ライン42を通してモータ4に供給される電流を検出しうる。減算器41は、制御部1から供給される第1指令値と電流検出器9によって検出される電流(電流値)との差分を偏差として出力しうる。電流制御器8は、PID補償器等の補償器であり、減算器41から出力された偏差に対する補償演算によって決定される電流を、出力ライン42を通してモータ4に供給しうる。
【0014】
図4には、第1実施形態のモータドライバ3の構成が例示されている。第1実施形態のモータドライバ3は、例えば、プロファイル変換部(変換部)11、減算器41、電流制御器8、電流検出器9および電圧検出器10を含みうる。電流検出器9は、モータドライバ3から出力ライン42を通してモータ4に供給される電流を検出しうる。電圧検出器10は、モータドライバ3から出力ライン42を通してモータ4に供給される電圧を検出しうる。減算器41は、制御部1から供給される第1指令値と電流検出器9によって検出される電流(電流値)との差分を偏差として出力しうる。電流制御器8は、PID補償器等の補償器であり、減算器41から出力された偏差に対する補償演算によって決定される電流を、出力ライン42を通してモータ4に供給しうる。
【0015】
プロファイル変換部11は、第1指令値を第2指令値に変換しうる。第2指令値は、第1指令値の時間的な変化を緩慢にした指令値でありうる。プロファイル変換部11は、制御部1に供給されるシステムクロック(第1クロック)よりも早い第2クロックに従って動作するように構成されうる。第2クロックは、プロファイル変換部11に対して供給されてもよいし、プロファイル変換部11にシステムクロックが提供され、プロファイル変換部11がシステムクロックを逓倍することによって第2クロックを生成してもよい。第1クロックの周期は、第2クロックの周期の整数倍でありうる。
【0016】
プロファイル変換部11は、電圧検出器10によって検出される出力ライン42の電圧と第1指令値の変化とに基づいて予測される出力ライン42の電圧Vが所定電圧を超えないように第1指令値を第2指令値に変換しうる。ここで、電圧Vは、式(1)で与えられうる。V0は、モータドライバ3が出力ライン42に出力している電圧、即ち電圧検出器10によって検出される電圧(値)である。Δtは、サンプリング時間である。ΔIは、第1指令値に応じて出力ライン42に出力される電流(値)のサンプリング時間Δt内における変化量である。Lは、モータ4のインダクタンスである。サンプリング時間Δtは、モータドライバ3の応答時間、換言すると、第1指令値の変化に応答して出力ライン42を流れる電流(値)が遷移する時間である。
【0017】
【数1】
・・・式(1)
【0018】
図5には、図3に示された比較例におけるシステムクロック30、第1指令値12、出力ライン42の電流(出力電流)13、出力ライン42の電圧(出力電圧)14の波形が例示的に示されている。モータドライバ3の応答性が向上することによって、即ち、Δtが小さくなることによって、モータドライバ3の出力電圧14がモータドライバ3の定格電圧を超える可能性がある。また、駆動対象物5への外乱などによって、制御部1が発生する第1指令値12が急激に変化することにより、出力ライン42の電圧(出力電圧)14が瞬間的に上昇する可能性がある。出力ライン42の電圧(出力電圧)14が定格電圧を超えると、図6に例示されるように、出力ライン42の電圧(出力電圧)14は、電源部2が出力する直流電圧で飽和しうる。このような場合、図6に例示されるように、モータドライバ3の出力電流13が低下しうる。モータドライバ3の出力電流13が低下することによって、モータ4に供給される電流が不足し、駆動対象物5の動作が不安定になりうる。
【0019】
そこで、第1実施形態では、プロファイル変換部11は、制御部1から供給される第1指令値を、該第1指令値の時間的な変化を緩慢にした指令値である第2指令値に変換するように構成されうる。ここで、プロファイル変換部11は、制御部1から供給される第1指令値に基づいて出力ライン42の電圧がどのように変化するかを予測するように構成されてもよい。また、プロファイル変換部11は、出力ライン42の電圧が所定電圧、例えばモータドライバ3の定格電圧を超える場合に、第1指令値と第2指令値に変換するように構成されてもよい。また、プロファイル変換部11は、出力ライン42の電圧が所定電圧、例えばモータドライバ3の定格電圧を超えない場合に、第1指令値と同一指令値を第2指令値として出力するように構成されてもよい。
【0020】
図7には、図4に示される第1実施形態におけるシステムクロック30、第2クロック43、第1指令値12、第2指令値31、出力ライン42の電流(出力電流)19、出力ライン42の電圧(出力電圧)20の波形が例示的に示されている。図7の例では、第2クロック43は、システムクロック(第1クロック)の周波数の4倍の周波数を有するが、これは例示に過ぎない。プロファイル変換部11は、制御部1から供給される第1指令値12を、第2クロックに従って、第1指令値12の時間的な変化を緩慢にした第2指令値31に変換するように構成されうる。プロファイル変換部11は、第1指令値ではシステムクロック(第1クロック)に従って一度に更新される量が、第2指令値では第2クロックに従って複数回(図7の例では、3回)に分けて更新されるように、第1指令値12を第2指令値31に変換しうる。これにより、式(1)に示されるサンプリング時間Δt当たりの電流変化量ΔI、即ち、ΔI/Δtを抑制し、モータドライバ3の出力ライン42の電圧(出力電圧)20の過渡的な上昇を低減することができる。モータドライバ3の出力ライン42の電圧(出力電圧)20を定格電圧等の所定電圧以下に制御することで、駆動対象物5の動作が不安定になることを防止することができる。
【0021】
以下、第2実施形態を説明する。第2実施形態の説明において言及しない事項については、矛盾しない限り、第1実施形態に従いうる。図8は、第2実施形態の駆動装置DAの構成を示すブロック図である。駆動装置DAは、駆動対象物5を駆動する装置として構成されうる。駆動装置DAは、例えば、制御部1と、モータドライバ3と、モータ4と、電源部2とを備えうる。制御部1は、モータドライバ3を制御しうる。モータドライバ3は、モータ4を駆動しうる。モータ4を駆動することは、モータ4を動作させることによって駆動対象物5を駆動(例えば、移動および/または回転)させることを含みうる。モータ4は、例えば、リニアモータまたはロータリーモータでありうる。駆動対象物5は、例えば、ステージ等の物体でありうる。電源部2は、モータドライバ3に電力あるいは電圧を供給する。電源部2は、例えば、直流電圧をモータドライバ3に供給しうる。
【0022】
第2実施形態では、制御部1は、モータ4を制御するための第1指令値を発生するプロファイル発生部101と、第1指令値を第2指令値に変換するプロファイル変換部(変換部)102とを含み、第2指令値をモータドライバ3に供給するように構成されうる。プロファイル変換部102は、第1実施形態のプロファイル変換部11に相当する。第2指令値は、第1指令値の時間的な変化を緩慢にした指令値でありうる。プロファイル発生部101は、駆動プロファイルに基づいて、システムクロック(第1クロック)に同期して第1指令値を更新しうる。プロファイル変換部102は、システムクロックよりも早い第2クロックに従って動作するように構成されうる。第2クロックは、プロファイル変換部102に対して供給されてもよいし、プロファイル変換部102にシステムクロックが提供され、プロファイル変換部102がシステムクロックを逓倍することによって第2クロックを生成してもよい。第1クロックの周期は、第2クロックの周期の整数倍でありうる。
【0023】
プロファイル変換部102は、電圧検出器10によって検出される出力ライン42の電圧と第1指令値の変化とに基づいて予測される出力ライン42の電圧Vが所定電圧を超えないように第1指令値を第2指令値に変換しうる。ここで、電圧Vは、式(1)で与えられうる。V0は、モータドライバ3が出力ライン42に出力している電圧、即ち電圧検出器10によって検出される電圧(値)である。Δtは、サンプリング時間である。ΔIは、第1指令値に応じて出力ライン42に出力される電流(値)のサンプリング時間Δt内における変化量である。Lは、モータ4のインダクタンスである。サンプリング時間Δtは、モータドライバ3の応答時間であり、第1指令値の変化に応答して出力ライン42を流れる電流(値)が遷移する時間である。
【0024】
モータドライバ3は、例えば、減算器41、電流制御器8、電流検出器9および電圧検出器10を含みうる。電流検出器9は、モータドライバ3から出力ライン42を通してモータ4に供給される電流を検出しうる。電圧検出器10は、モータドライバ3から出力ライン42を通してモータ4に供給される電圧を検出しうる。減算器41は、制御部1から供給される第1指令値と電流検出器9によって検出される電流との差分を偏差として出力しうる。電流制御器8は、PID補償器等の補償器であり、減算器41から出力された偏差に対する補償演算によって決定される電流を、出力ライン42を通してモータ4に供給しうる。図9には、第2実施形態におけるシステムクロック30、第2クロック43、第1指令値12、第2指令値31、出力ライン42の電流(出力電流)19、出力ライン42の電圧(出力電圧)20の波形が例示的に示されている。
【0025】
駆動装置DAは、調整部21を更に備えてもよい。調整部21は、出力ライン42の電圧がモータドライバ3の定格電圧等の所定電圧を超えない範囲で、第2指令値に対するモータ4の応答性が向上するように、プロファイル変換部102が発生する第2指令値列を調整するように構成されうる。
【0026】
調整部21は、出力ライン42の電圧がモータドライバ3の定格電圧等の所定電圧を超えないようにプロファイル変換部102によって生成された第2指令値に従ってモータドライバ3を動作させたときの余裕を確認しうる。ここで、余裕は、モータドライバ3の定格電圧等の所定電圧に対する出力ライン42の電圧の差を評価する指標で表現されうる。調整部21は、閾値以上の余裕がある場合には、第2指令値に対するモータ4の応答性が向上するように、第2指令値を調整しうる。
【0027】
以下、調整部21による第2指令値の調整について説明する。図9には、調整前の第2指令値31が例示され、図10には、調整部21によって調整された第2指令値(調整済第2指令値)32が例示されている。この例では、第2クロックの周期は、システムクロック(第1クロック)の周期をN(Nは2以上の整数)分割した周期である。つまり、システムクロック(第1クロック)の1つの周期は、第1フェーズから第Nフェーズまでを含む。調整は、例えば、式(2)および式(3)に従って、第nフェーズの電流Inを決定することを含みうる。nは、1~Nまでの整数である。Iは、モータ4の駆動に必要な電流である。Wnは、第nフェーズの重み係数である。なお、式(2)および式(3)は、一例に過ぎず、調整部21は、モータ4の応答性が向上する種々の方法から選択された方法に従って第2指令値を調整することができる。
【0028】
【数2】
・・・式(2)
【0029】
【数3】
・・・式(3)
【0030】
なお、上記の例では、モータ4の駆動に必要な電流Iに対して重み付け処理を行っているが、サンプリング時間に対して重み付け処理を行うことで、モータドライバ3の応答性を改善してもよい。
【0031】
調整部21は、第1実施形態に適用されてもよく、この場合、調整部21は、プロファイル変換部11が発生する第2指令値を調整するように構成されうる。調整部21は、機械学習によって生成された学習済モデルによってプロファイル変換部102が発生する第2指令値を調整してもよい。
【0032】
図11は、第2実施形態の動作例あるいは駆動方法を示すフローチャートである。Step1でモータドライバ3の出力電流制御が開始される。まず、Step2では、制御部1は、駆動対象物5の駆動を制御する駆動プロファイルを決定する。Step3では、制御部1は、プロファイル発生部101によって、駆動プロファイルに応じて第1指令値を生成する。Step4では、制御部1は、第1指令値に基づいて、式(1)に従って、出力ライン42の電圧を計算する。
【0033】
Step5では、制御部1は、Step4で計算した出力ライン42の電圧が所定電圧、例えば、モータドライバ3の定格電圧を超えるかどうかを判断する。そして、制御部1は、Step4で計算した出力ライン42の電圧が所定電圧を超えない場合には、Step6で、第1指令値を第2指令値としてモータドライバ3に供給する。一方、制御部1は、Step4で計算した出力ライン42の電圧が所定電圧を超える場合は、Step7において、第1指令値を第2指令値に変換する。
【0034】
Step8では、制御部1は、Step7で生成した第2指令値がモータドライバ3の定格電圧に対して余裕があるかどうかを判断し、余裕がなければ、Step6で、第2指令値をモータドライバ3に供給する。一方、制御部1は、Step7で生成した第2指令値がモータドライバ3の定格電圧に対して余裕があると判断した場合は、Step9で、上記のように第2指令値を調整し、調整された第2指令値をモータドライバ3に供給する。
【0035】
上記の駆動装置DAは、基板に原版のパターンを転写するリソグラフィ装置に組み込まれうる。リソグラフィ装置は、例えば、露光装置またはインプリント装置を含みうる。例えば、駆動装置DAは、露光装置またはインプリント装置の基板駆動機構に組み込まれ、駆動対象物としての基板あるいは基板ステージを駆動するように構成されうる。あるいは、駆動装置DAは、露光装置の原版駆動機構に組み込まれ、駆動対象物としての原版あるいは原版ステージを駆動するように構成されうる。
【0036】
次に、上記のリソグラフィ装置を用いてデイバス(半導体IC素子、液晶表示素子、MEMS等)等の物品を製造する物品製造方法を説明する。物品は、上記のリソグラフィ装置を使用して基板にパターンを形成する工程と、パターンが形成された基板に対してエッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等の少なくとも1つの処理を施して物品を得る工程と、を含みうる。
【0037】
本明細書の開示は、以下の駆動装置、リソグラフィ装置、物品製造方法、および駆動方法を含む。
(項目1)
駆動対象物を駆動するモータを制御するための第1指令値を第2指令値に変換する変換部と、
前記第2指令値に基づいて前記モータを駆動する電流を出力する電流制御器と、を備え、
前記第2指令値は、前記第1指令値の時間的な変化を緩慢にした指令値である、
ことを特徴とする駆動装置。
(項目2)
前記電流制御器は、出力ラインを通して電流を前記モータに供給し、
前記変換部は、前記出力ラインの電圧が所定電圧を超えないように前記第1指令値を前記第2指令値に変換する、
ことを特徴とする項目1に記載の駆動装置。
(項目3)
前記電流制御器は、出力ラインを通して電流を前記モータに供給し、
前記変換部は、前記電流制御器が前記出力ラインに出力する電圧と前記第1指令値の変化とに基づいて予測される前記出力ラインの電圧が所定電圧を超えないように前記第1指令値を前記第2指令値に変換する、
ことを特徴とする項目1に記載の駆動装置。
(項目4)
前記出力ラインの電圧を検出する電圧検出器を更に備え、
前記変換部は、前記電圧検出器によって検出される前記出力ラインの電圧と前記第1指令値の変化とに基づいて予測される前記出力ラインの電圧が所定電圧を超えないように前記第1指令値を前記第2指令値に変換する、
ことを特徴とする項目3に記載の駆動装置。
(項目5)
前記出力ラインの電圧が前記所定電圧を超えない範囲で、前記モータの応答性が向上するように、前記変換部が発生する前記第2指令値を調整する調整部を更に備える、
ことを特徴とする項目2乃至4のいずれか1項に記載の駆動装置。
(項目6)
前記調整部は、機械学習によって生成された学習済モデルによって前記変換部が発生する前記第2指令値を調整する、
ことを特徴とする項目5に記載の駆動装置。
(項目7)
前記第1指令値は、第1クロックに従って更新され、前記変換部は、前記第2指令値を前記第1クロックより早い第2クロックに従って更新し、
前記変換部は、前記第1指令値では前記第1クロックに従って一度に更新される量が、前記第2指令値では前記第2クロックに従って複数回に分けて更新されるように、前記第1指令値を前記第2指令値に変換する、
ことを特徴とする項目1乃至6のいずれか1項に記載の駆動装置。
(項目8)
前記第1クロックの周期は、第2クロックの周期の整数倍である、
ことを特徴とする項目7に記載の駆動装置。
(項目9)
前記変換部および前記電流制御器は、前記モータを駆動するモータドライバを構成し、
前記第1指令値は、前記第1指令値を発生する制御部から前記モータドライバに供給される、
ことを特徴とする項目1乃至8のいずれか1項に記載の駆動装置。
(項目10)
前記電流制御器は、前記モータを駆動するモータドライバを構成し、
前記変換部は、前記第2指令値を前記モータドライバに供給する制御部に設けられている、
ことを特徴とする項目1乃至8のいずれか1項に記載の駆動装置。
(項目11)
基板に原版のパターンを転写するリソグラフィ装置であって、
項目1乃至10のいずれか1項に記載の駆動装置を備えることを特徴とするリソグラフィ装置。
(項目12)
項目11に記載のリソグラフィ装置を用いて基板に原版のパターンを転写する工程と、
前記パターンが転写された前記基板から物品が得られるように前記基板を処理する工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
(項目13)
モータを駆動する駆動方法であって、
前記モータを制御するための第1指令値を第2指令値に変換する工程と、
前記第2指令値に基づいて前記モータを駆動する工程と、を含み、
前記第2指令値は、前記第1指令値の時間的な変化を緩慢にした指令値である、
ことを特徴とする駆動方法。
【0038】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0039】
5:駆動対象物、8:電流制御器、11:プロファイル変換部(変換部)、102:プロファイル変換部(変換部)、DA:駆動装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
図10
図11