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特開2023-183751バイアス情報表示装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183751
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】バイアス情報表示装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20231221BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097425
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山地 圭
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 清人
(72)【発明者】
【氏名】高木 真吾
(72)【発明者】
【氏名】室井 規雅
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医師と被検体との間で行われる合意形成をサポートするバイアス情報表示装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】バイアス情報表示装置と通信可能に接続される複数の被検体端末及び複数の医師端末を備える合意形成サポートシステムにおいて、バイアス情報表示装置10は、実行結果取得部132と、バイアス情報取得部133と、表示制御部134とを備える。実行結果取得部132は、予め定められたアクティビティに対して被検体が実行した実行結果を表す実行結果情報を取得する。バイアス情報取得部133は、取得された実行結果情報に基づいて、被検体が有するバイアスを表すバイアス情報を取得する。表示制御部134は、取得されたバイアス情報を表示する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められたアクティビティに対して被検体が実行した実行結果を表す実行結果情報を取得する実行結果取得部と、
取得された前記実行結果情報に基づいて、前記被検体が有するバイアスを表すバイアス情報を取得するバイアス情報取得部と、
取得された前記バイアス情報を表示する表示制御部と、を備える、
バイアス情報表示装置。
【請求項2】
前記被検体が有するバイアスは、当該バイアスの種類及び値を有し、
前記バイアス情報取得部は、前記実行結果情報に基づいて、前記バイアスの種類及び値を表すバイアス情報を取得する、
請求項1に記載のバイアス情報表示装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記バイアス情報をレーダーチャートの形式で表示する、
請求項2記載のバイアス情報表示装置。
【請求項4】
前記アクティビティは、前記被検体の病状に関する理解度を確認するコンテンツであって、
前記実行結果取得部は、前記コンテンツに対する前記被検体の実行結果を表す実行結果情報を取得する、
請求項1記載のバイアス情報表示装置。
【請求項5】
前記コンテンツは、eラーニングコンテンツである、
請求項4記載のバイアス情報表示装置。
【請求項6】
他の被検体が有するバイアスを表すバイアス情報と、当該被検体に対して決定された治療方針と、当該被検体の満足度とが対応づけられて記憶された記憶部と、
前記バイアス情報取得部によって取得された前記バイアス情報に対応する前記治療方針及び前記満足度を前記記憶部から読み出す読出部と、を更に備え、
前記表示制御部は、読み出された前記治療方針及び前記満足度を表す情報を表示する、
請求項1記載のバイアス情報表示装置。
【請求項7】
コンピュータを、
予め定められたアクティビティに対して被検体が実行した実行結果を表す実行結果情報を取得する実行結果取得機能、
取得された前記実行結果情報に基づいて、前記被検体が有するバイアスを表すバイアス情報を取得するバイアス情報取得機能、及び、
取得された前記バイアス情報を表示する表示制御機能、として機能させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、バイアス情報表示装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、医療においては、被検体(患者)の治療方針等を決定するために、医師と当該被検体との間で当該治療方針に関する合意形成を行う必要がある。
【0003】
しかしながら、被検体には様々な要因に基づくバイアス(考え方の偏り)が生じている場合があり、当該バイアスは合意形成の阻害要因となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-519303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、医師と被検体との間で行われる合意形成をサポートすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るバイアス情報表示装置は、実行結果取得部と、バイアス情報取得部と、表示制御部とを備える。前記実行結果取得部は、予め定められたアクティビティに対して被検体が実行した実行結果を表す実行結果情報を取得する。前記バイアス情報取得部は、取得された前記実行結果情報に基づいて、前記被検体が有するバイアスを表すバイアス情報を取得する。前記表示制御部は、取得された前記バイアス情報を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る合意形成サポートシステムの構成の一例を示す図。
図2図2は、バイアス情報表示装置の構成の一例を示す図。
図3図3は、合意形成サポートシステムの処理手順の一例を示すシーケンスチャート。
図4図4は、医師端末に表示される入力画面の一例を示す図。
図5図5は、アクティビティデータベースのデータ構造の一例を示す図。
図6図6は、質問リストにおける質問の一例を示す図。
図7図7は、医師端末に表示されるバイアス情報表示画面の一例を示す図。
図8図8は、第2実施形態におけるバイアス情報表示装置の構成の一例を示す図。
図9図9は、合意形成サポートシステムの処理手順の一例を示すシーケンスチャート。
図10図10は、満足度データベースのデータ構造の一例を示す図。
図11図11は、医師端末に表示される予測値表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、バイアス情報表示装置及びプログラムの実施形態について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る合意形成サポートシステム1の構成の一例を示す。本実施形態に係る合意形成サポートシステム1は、医師と被検体(患者)との間で行われる治療方針等に関する合意形成をサポートするために用いられる。
【0010】
図1に示すように、合意形成サポートシステム1は、バイアス情報表示装置10、被検体端末20及び医師端末30を備える。バイアス情報表示装置10は、被検体端末20及び医師端末30とインターネットのようなネットワーク40を介して通信可能に接続されている。
【0011】
バイアス情報表示装置10は、上記した医師と被検体との間で行われる合意形成をサポートする機能を有するサーバ装置として動作する情報処理装置である。バイアス情報表示装置10は、例えばクラウドコンピューティングサービスを提供するサーバ装置であってもよい。
【0012】
被検体端末20は、被検体によって使用される端末装置(電子機器)である。被検体端末20は、例えばパーソナルコンピュータであるが、スマートフォン及びタブレット端末等の携帯型の電子機器であってもよい。
【0013】
医師端末30は、医師によって使用される端末装置(電子機器)である。医師端末30は、上記した被検体端末20と同様に、例えばパーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォン及びタブレット端末等の携帯型の電子機器であってもよい。
【0014】
なお、図1においては便宜的に被検体端末20及び医師端末30が1つずつ示されているが、合意形成サポートシステム1は、バイアス情報表示装置10と通信可能に接続される複数の被検体端末20及び複数の医師端末30を備えていてもよい。
【0015】
ここで、医師と被検体との間で行われる合意形成においては医師による被検体への寄り添いが必要であるが、医師が被検体に対して時間をかけて治療方針等について説明をしたとしても、当該治療方針に対する当該被検体の合意を得ることが困難な場合がある。
【0016】
これに対して、例えば医師が被検体の特性を事前に把握しておくことによって、合意形成をより円滑に行うことができる可能性がある。被検体の特性の1つとしては既往歴が考えられるが、当該既往歴については、一般的に医療機関等で配布される問診票等から把握することができる。
【0017】
一方、被検体は様々な要因に基づくバイアスを有している場合があり、当該バイアスは合意形成の阻害要因となり得る。このため、被検体が有するバイアスを当該被検体の特性として医師が把握しておくことが有用である。しかしながら、被検体が有するバイアスを医師が把握することは困難である。
【0018】
そこで、本実施形態においては、被検体が有するバイアスを表すバイアス情報を取得し、当該バイアス情報を医師に提供することによって、当該医師と当該被検体との間の合意形成をサポートするものとする。
【0019】
図2は、バイアス情報表示装置10の構成の一例を示す。図2に示すように、バイアス情報表示装置10は、通信インタフェース11、記憶回路12及び処理回路13を備える。
【0020】
通信インタフェース11は、例えばNIC(Network Interface Card)のような通信装置から構成され、被検体端末20及び医師端末30との通信を実行する。
【0021】
記憶回路12は、例えばRAM(Random Access Memory)及びフラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、またはHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶装置から構成される。記憶回路12は、被検体に対して設定されるアクティビティが登録されたアクティビティデータベース(DB)121を有する。
【0022】
処理回路13は、バイアス情報表示装置10内の各コンポーネントの動作を制御するプロセッサから構成される。処理回路13は、アクティビティ設定部131、実行結果取得部132、バイアス情報取得部133及び表示制御部134を有する。アクティビティ設定部131、実行結果取得部132、バイアス情報取得部133及び表示制御部134は、例えば記憶回路12から読み出された所定のプログラムをプロセッサが実行することによって実現される機能部である。アクティビティ設定部131、実行結果取得部132、バイアス情報取得部133及び表示制御部134は、例えば単一のプロセッサによって実現されてもよいが、複数の独立したプロセッサによって実現される機能部であってもよい。
【0023】
本実施形態において「プロセッサ」という文言は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)及びプログラマブル論理デバイス等の回路を意味する。なお、プログラマブル論理デバイスには、例えば単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)等が含まれる。
【0024】
このようなプロセッサは記憶回路12に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現するが、記憶回路12にプログラムを記憶しておく代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むような構成とすることも可能である。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで各種機能を実現する。また、プロセッサは、単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせることによって構成されていてもよい。
【0025】
アクティビティ設定部131は、上記したアクティビティデータベース121を参照して、被検体端末20を使用する被検体に対してアクティビティを設定する。アクティビティ設定部131によって被検体に対して設定されたアクティビティは、例えば被検体端末20上で実行される。
【0026】
実行結果取得部132は、アクティビティ設定部131によって設定されたアクティビティ(予め定められたアクティビティ)に対して被検体が実行した実行結果を表す実行結果情報を取得する。
【0027】
バイアス情報取得部133は、実行結果取得部132によって取得された実行結果情報に基づいて、被検体が有するバイアスを表すバイアス情報を取得する。
【0028】
表示制御部134は、バイアス情報取得部133によって取得されたバイアス情報を例えば医師端末30に表示する。
【0029】
次に、図3のシーケンスチャートを参照して、本実施形態に係る合意形成サポートシステム1の処理手順の一例について説明する。なお、以下の説明においては、被検体端末20を使用する被検体を対象被検体、医師端末30を使用する医師(当該被検体の主治医等)を対象医師と称する。
【0030】
まず、医師端末30は、当該医師端末30に対する対象医師の操作に応じて、対象被検体を識別するための識別情報(以下、被検体IDと表記)及び当該対象被検体に関するキーワードを取得する(ステップS1)。
【0031】
なお、図4は、ステップS1の処理が実行される際に医師端末30(が備えるディスプレイ等)に表示される画面(以下、入力画面と表記)の一例を示す。図4に示すように、入力画面300には、被検体ID入力欄301及びキーワード入力欄302が設けられている。
【0032】
対象医師は、医師端末30が備える入力デバイス(キーボード及びマウス等)を用いて被検体ID入力欄301に被検体IDを入力し、キーワード入力欄302にキーワードを入力することができる。医師端末30は、このように入力画面300(被検体ID入力欄301及びキーワード入力欄302)に対して入力された被検体ID及びキーワードを取得する。図4に示す例では、医師端末30は、被検体ID「0003」及びキーワード「胃がん」を取得する。
【0033】
なお、被検体IDは、例えば対象被検体に割り当てられた識別番号等であればよいが、当該対象被検体の氏名等であってもよい。また、キーワードとしては例えば対象医師による対象被検体に対する診断結果に基づく病名等が想定されるが、当該キーワードは、後述する対象被検体に設定すべきアクティビティを特定することができるのであれば病名以外(例えば、疑わしい症状等)であってもよい。
【0034】
また、ここでは対象医師が被検体ID及びキーワードを入力するものとして説明したが、対象被検体に関する被検体情報を管理しているデータベースが構築されているような場合には、当該データベースから被検体ID及びキーワードが自動的に取得されるようにしてもよい。また、対象被検体に対する診断結果を含む診断レポート等が作成されているような場合には、被検体ID及びキーワードは、当該診断レポートから自動的に取得(抽出)されてもよい。
【0035】
以下の説明においては、ステップS1において取得された被検体ID及びキーワードを対象被検体ID及び対象キーワードと称する。
【0036】
ステップS1の処理が実行されると、医師端末30は、例えば対象医師からの指示に従って、対象被検体ID及び対象キーワードをバイアス情報表示装置10に送信する(ステップS2)。
【0037】
ステップS2において医師端末30から送信された対象被検体ID及び対象キーワードは、バイアス情報表示装置10において受信される。
【0038】
次に、バイアス情報表示装置10(処理回路13)のアクティビティ設定部131は、対象キーワードに基づいてアクティビティデータベース121を参照し、対象被検体IDによって識別される対象被検体に対してアクティビティを設定する(ステップS3)。
【0039】
ここで、図5は、アクティビティデータベース121のデータ構造の一例を示す。図5に示すように、アクティビティデータベース121には、キーワード及びアクティビティが対応づけて格納されている。なお、アクティビティデータベース121において、アクティビティは、キーワード(例えば、病名)毎に予め登録されている。
【0040】
本実施形態においてアクティビティとは、対象被検体が被検体端末20上で実行する作業に相当し、当該アクティビティに対応するキーワードに関する知識を得るための学習コンテンツ(例えば、動画及びテキスト等)に基づくeラーニング及び複数の質問(以下、質問リストと表記)に対する回答等を含む。なお、学習コンテンツ及び質問リストは、予め用意されているものとする。また、質問リストは、例えば選択式のアンケートのような形式のものを想定しているが、他の形式のものであってもよい。
【0041】
アクティビティ設定部131は、上記した図5に示すようなアクティビティデータベース121を参照することによって対象キーワードに対応づけられているアクティビティを特定し、当該アクティビティを対象被検体(対象被検体IDに対応する被検体端末20)に対して設定する。
【0042】
なお、ここではバイアス情報表示装置10においてアクティビティが自動的に設定されるものとして説明したが、当該アクティビティは対象医師(医師端末30に対する操作)によって設定されても構わない。具体的には、アクティビティ設定部131は、アクティビティデータベース121を参照することによって対象キーワードに対応づけられているアクティビティのリストを作成し、当該アクティビティのリストを医師端末30に送信する。この場合、対象医師はアクティビティ設定部131(バイアス情報表示装置10)から送信されたアクティビティのリストから所望のアクティビティを選択し、当該選択されたアクティビティが医師端末30からバイアス情報表示装置10に送信される。アクティビティ設定部131は、このように医師端末30から送信されたアクティビティを対象被検体IDに対応する被検体端末20に設定するように動作してもよい。
【0043】
以下、上記したステップS3において設定されたアクティビティを対象アクティビティと称する。
【0044】
ステップS3の処理が実行されると、対象被検体に対して対象アクティビティが設定されたことが対象被検体IDに対応する被検体端末20(つまり、対象被検体)に対して通知される(ステップS4)。なお、ステップS4においては対象アクティビティを実行するために必要な学習コンテンツ及び質問リストにアクセスするための情報(例えば、URL等)がバイアス情報表示装置10から被検体端末20に送信されることを想定しているが、当該学習コンテンツ及び当該質問リスト(を含むデータファイル等)がバイアス情報表示装置10から被検体端末20に送信されてもよい。すなわち、学習コンテンツ及び質問リスト(のデータ)は、対象アクティビティを実行する際に利用することができるように予め用意されていればよく、例えばバイアス情報表示装置10の外部装置において管理されていてもよいし、当該バイアス情報表示装置10の内部(例えば、記憶回路12)に記憶されていてもよい。
【0045】
この場合、対象被検体は、例えばステップS4における通知に基づいて、被検体端末20上で当該対象被検体に対して設定された対象アクティビティを実行する(ステップS5)。
【0046】
対象アクティビティとして学習コンテンツに基づくeラーニングが実行された場合には、対象被検体は、例えば自宅等にいながら対象キーワード(つまり、対象キーワードとして入力された病名に関する病状や治療方針等)に関する知識を得ることができる。
【0047】
一方、上記した対象アクティビティには質問リストに対する回答が更に含まれるが、当該質問リストについて説明する。図6は、質問リストにおける質問の一例を示している。図6においては、「ここで治療を変えたら、今までの努力が無駄になると思いますか?」という質問が一例として示されている。対象被検体は、このような質問に対して、「そう思う」、「ややそう思う」、「どちらともいえない」、「あまりそう思わない」及び「そう思わない」の5つの選択肢のうちの1つを選択する形式で回答することができる。
【0048】
なお、本実施形態おいて質問リストは対象被検体が有するバイアスを推測する(つまり、バイアス情報を取得する)ことができるような観点に基づいて作成されている。
【0049】
本実施形態においてはキーワードの各々に対応する複数のアクティビティがアクティビティデータベース121に予め登録されているが、質問リストは、当該複数のアクティビティに共通であってもよいし、当該アクティビティ毎に異なっていてもよい。
【0050】
被検体端末20上で質問リスト(複数の質問)に対して対象被検体回答した場合、当該対象被検体の回答は、被検体端末20からバイアス情報表示装置10に送信される(ステップS6)。
【0051】
ステップS6において被検体端末20から送信された対象被検体の回答は、バイアス情報表示装置10において受信される。これにより、バイアス情報表示装置10の実行結果取得部132は、アクティビティに対して対象被検体が実行した実行結果を表す実行結果情報として、対象被検体の回答を取得することができる。
【0052】
次に、バイアス情報表示装置10(処理回路13)のバイアス情報取得部133は、対象被検体の回答に基づいて、当該対象被検体が有するバイアスを表すバイアス情報(以下、対象被検体のバイアス情報と表記)を取得(計算)する(ステップS7)。
【0053】
以下、ステップS7の処理の一例について説明する。本実施形態においては、対象被検体が有している可能性があるバイアスが複数の種類及び値を有することを想定している。この複数の種類及び値を有するバイアスには、例えばサンクコストバイアス、現状維持バイアス及び現在バイアスが含まれるものとする。
【0054】
サンクコストバイアスは、過去に費やした回収できないコスト(サンクコスト)に引きずられて思考または行動が歪められるような心理作用のことをいう。具体的には、対象被検体がサンクコストバイアスを有する場合には、例えばこれまでの治療に費やした時間等に引きずられて、当該対象被検体は治療方針を変更するような意思決定をしづらい可能性がある。
【0055】
現状維持バイアスは、変化を受け入れず、可能な限り現状を維持することを望む心理作用のことをいう。対象被検体が現状維持バイアスを有する場合には、サンクコストバイアスと同様に、当該対象被検体は治療方針を変更するような意思決定をしづらい可能性がある。
【0056】
現在バイアスは、将来大きな利益を得ることができるにも関わらず、今すぐに得られる小さい利益を選択してしまう心理作用のことをいう。対象被検体が現在バイアスを有する場合には、対象被検体は、将来的な利益ではなく、現在の利益を優先して意思決定をしてしまう可能性がある。
【0057】
本実施形態においては、例えば質問リストにおける複数の質問に対する回答の各々に対して、当該回答をした被検体が有していると推測されるバイアスを表すバイアス値を予め設定しておき、対象被検体の回答に対して設定されているバイアス値を質問(に対する回答)毎に加算していくことによって、当該対象被検体のバイアス情報を取得する。
【0058】
具体的には、例えば上記した図6においてはサンクコストバイアスに関する質問を想定しており、当該質問に対して対象被検体が「そう思う」という選択肢を選択している場合には、他の選択肢が選択された場合と比較して高いサンクコストバイアスを表すバイアス値が加算される。一方、図6に示す質問に対して対象被検体が「そう思わない」という選択肢を選択している場合にはサンクコストバイアスを表すバイアス値は加算されない。
【0059】
ここではサンクコストバイアスに関する質問及び当該質問に対する回答に基づいて加算されるバイアス値について説明したが、バイアスの種類毎に質問を用意しておくことにより、バイアスの種類毎にバイアス情報を取得することができる。なお、1つの回答に対して複数の種類のバイアスの各々のバイアス値が設定されているような質問を用意しておいてもよい。
【0060】
これによれば、例えばサンクコストバイアスを表すバイアス情報(以下、サンクコストバイアス情報と表記)「4(点)」、現状維持バイアスを表すバイアス情報(以下、現状維持バイアス情報と表記)「2(点)」及び現在バイアスを表すバイアス情報(以下、現在バイアス情報と表記)「1(点)」のような対象被検体のバイアス情報が取得される。
【0061】
なお、ここでは質問リストに対する回答の各々に対して設定されているバイアス値を順次加算していくことによって対象被検体のバイアス情報を取得するものとして説明したが、当該バイアス情報は、種類毎に計算されるバイアス値の平均値等であってもよい。
【0062】
ステップS7の処理が実行されると、当該ステップS7において取得された対象被検体のバイアス情報(サンクコストバイアス情報、現状維持バイアス情報及び現在バイアス情報)は、アクティビティのフィードバックとして表示制御部134によって表示される。この場合、表示制御部134は、対象被検体のバイアス情報を医師端末30に表示するために医師端末30に送信する(ステップS8)。なお、本実施形態において「バイアス情報を表示する」とは、単にバイアス値を表示するのみではなく、当該バイアス値によって表されるバイアスの種類(つまり、バイアス名)を表示することを含む概念であってもよい。
【0063】
ステップS8においてバイアス情報表示装置10(表示制御部134)から送信された対象被検体のバイアス情報は、医師端末30において受信され、当該医師端末30(が備えるディスプレイ等)に表示される(ステップS9)。
【0064】
なお、図7は、ステップS9の処理が実行された場合に医師端末30に表示される画面(以下、バイアス情報表示画面と表記)の一例を示す。図7に示すように、バイアス情報表示画面310には、バイアス情報表示領域311が設けられている。バイアス情報表示領域311には、対象被検体のバイアス情報が表示される。
【0065】
図7に示す例では、サンクコストバイアス情報が「4」、現状維持バイアス情報が「2」、現在バイアス情報が「1」である対象被検体のバイアス情報がレーダーチャートの形式で表示されている。これによれば、医師端末30を使用する対象医師は、対象被検体が有している(と推測される)バイアスを容易に把握することができる。
【0066】
なお、ここでは対象被検体のバイアス情報(サンクコストバイアス情報、現状維持バイアス情報及び現在バイアス情報)がレーダーチャートの形式で表示されるものとして説明したが、当該対象被検体のバイアス情報は、テキスト形式または表形式等の他の形式で表示されてもよい。
【0067】
また、ここでは対象被検体のバイアス情報としてサンクコストバイアス情報、現状維持バイアス情報及び現在バイアス情報の全てが表示されるものとして説明したが、当該サンクコストバイアス情報、現状維持バイアス情報及び現在バイアス情報のうちの例えばバイアス値が最も高いバイアスの情報が表示されるようにしてもよい。
【0068】
また、対象被検体の治療期間が長いような場合には、例えば質問リストに対する回答(を含むアクティビティ)を所定の期間毎に実行するようにしてもよい。この場合には、現在のバイアス情報(ステップS7において取得された対象被検体のバイアス情報)と記憶回路12に記憶しておいた過去のバイアス情報(過去の回答に基づいて取得された対象被検体のバイアス情報)とを比較可能な態様で医師端末30に表示するようなことが可能となる。これによれば、対象医師は、対象被検体が有するバイアス(つまり、対象被検体の考え方)の変化等を把握することができる可能性がある。
【0069】
なお、図7に示すバイアス情報表示画面310においては省略されているが、当該バイアス情報表示画面310には、被検体ID等の対象被検体を特定するための情報等が更に表示されていてもよい。
【0070】
上記したように本実施形態においては、予め定められたアクティビティに対して被意見体が実行した実行結果を表す実行結果情報(例えば、質問に対する回答)を取得し、当該取得された実行結果情報に基づいて対象被検体が有するバイアスを表すバイアス情報を取得し、当該取得されたバイアス情報を表示する構成により、例えば対象医師は対象被検体に生じているバイアス(つまり、考え方の偏り)を考慮して治療方針等について説明をすることができるため、当該対象医師と対象被検体との間で行われる合意形成をサポートすることができる。
【0071】
なお、本実施形態においては予め用意された質問リストに対する対象被検体の回答に基づいて当該対象被検体のバイアス情報が取得されるが、例えば図6において説明したような質問であれば、当該対象被検体は複数の選択肢のうちの1つを選択することによって当該質問に対して回答することができるため、対象被検体が回答する負担を軽減することができると考えられる。
【0072】
一方、質問リストに対する回答の形式は複数の選択肢のうちの1つを選択する形式以外であってもよい。具体的には、例えば図6に示す質問「ここで治療を変えたら、今までの努力が無駄になると思いますか?」に対して自由に対象被検体の意見を記述させる形式で回答させてもよい。このような場合には、質問リストに対する回答(テキスト)を解析することによって予め定められたキーワードを抽出し、当該キーワードにして設定されているバイアス値を加算していくことによって対象被検体のバイアス情報を取得するようなことが可能である。
【0073】
更に、本実施形態においては対象被検体が使用する被検体端末20上で実行されるアクティビティとして質問リストに対する回答を行うことができるが、当該アクティビティには、学習コンテンツに基づくeラーニング(つまり、eラーニングコンテンツ)が含まれていることが好ましい。このような構成によれば、対象被検体はeラーニングを実行することによって当該対象被検体の病状及び治療方針等に関する知識を得ることができるため、例えば合意形成を行うために必要な知識を対象医師が説明する時間を省略し、当該対象医師の負担を軽減することに寄与することができる。更に、eラーニングによれば、対象医師が説明する場合と比較して対象被検体は病状及び治療方針等に関する知識を得るために十分な時間を比較的容易に確保することができるため、当該病状及び治療方針等に関する理解度を向上させる観点においてより高い効果を得ることができる可能性がある。また、eラーニングを実行するための学習コンテンツは同様の病状を有する被検体に対して再利用することができるため、アクティビティ(eラーニング)の実行に関する人力コストを低減することができる。
【0074】
なお、本実施形態においてはアクティビティとしてeラーニングが実行されるものとして説明したが、単にバイアス情報を取得する構成を実現するのであれば質問リストに対する回答を得ることができればよいため、eラーニングの実行は省略されてもよい。
【0075】
また、本実施形態においては質問リストに対する回答を被検体端末20上で実行することを想定しているが、質問リストをマークシートのような紙媒体で(つまり、紙のアンケートとして)対象被検体に配布し、当該マークシートに回答を記入させてもよい。この場合には、マークシートを読み取ることによって対象被検体の回答を取得すれば、当該回答に基づいて対象被検体のバイアス情報を取得することができる。
【0076】
更に、本実施形態においては効率的にバイアス情報を取得するために予め質問を用意しておくものとして説明したが、当該バイアス情報を取得するために、一般的に医療機関等で配布される問診票やその他のアンケート等を利用してもよい。この場合には、問診票やアンケートに記載された内容から抽出されたキーワード等に基づいてバイアス情報を取得することができる。更に、例えば対象医師による問診中の対象被検体の音声に対する解析結果に基づいて取得されるテキストから抽出されたキーワード等に基づいてバイアス情報を取得するような構成であってもよい。
【0077】
また、本実施形態においては、複数の種類及び値を有するバイアス情報を取得する構成により、例えば対象医師は対象被検体に生じているバイアスの傾向を容易に把握することができると考えられる。なお、本実施形態においては複数の種類及び値を有するバイアスとしてサンクコストバイアス、現状維持バイアス及び現在バイアスについて主に説明したが、当該バイアスには他の観点に基づくバイアスが含まれていてもよい。具体的には、本実施形態においては、上記したサンクコストバイアス情報、現状維持バイアス情報及び現在バイアス情報に加えて、例えば利用可能性ヒューリスティックを表すバイアス情報を取得してもよい。なお、利用可能性ヒューリスティックは、よく見るものや印象に残りやすいものを基準に選択を行う心理作用のことをいう。利用可能性ヒューリスティックを表すバイアス情報は、サンクコストバイアス情報、現状維持バイアス情報及び現在バイアス情報の少なくとも1つの代わりに取得されてもよい。
【0078】
更に、本実施形態においてはeラーニングを実行することによって対象被検体が当該対象被検体の病状及び治療方針等に関する知識を得ることができるものとして説明したが、当該知識が不足している場合には、対象被検体が誤った意思決定を行う可能性がある。この点を考慮すれば、eラーニングが実行された後の対象被検体の病状及び治療方針等に関する理解度は、一種のバイアス情報ということができる。このため、上記したアクティビティとしてeラーニングが実行されることによって得られた知識を確認するテストを実行(つまり、アクティビティとして対象被検体の病状に関する理解度を確認するコンテンツを用意)し、当該テストの結果(つまり、理解度)を対象被検体のバイアス情報として用いてもよい。また、テストを実行することに伴う対象被検体の負担を軽減するために、上記した理解度の代わりにeラーニングの進捗度(消化率)をバイアス情報として用いるような構成とすることも可能である。
【0079】
また、本実施形態においては対象被検体のバイアス情報を対象医師が把握するために当該対象被検体のバイアス情報が医師端末30に表示されるものとして説明したが、当該対象被検体が有するバイアスは対象被検体自身が気づいていない場合が多く、当該対象被検体が有するバイアスを対象被検体自身が把握しておくことは、当該対象被検体が自らバイアスを解消し、円滑な合意形成を行うために有用であると考えられる。このため、対象被検体のバイアス情報は、被検体端末20に送信され、当該被検体端末20(が備えるディスプレイ等)に表示されてもよい。
【0080】
なお、本実施形態においては対象被検体のバイアス情報が例えばレーダーチャートの形式で医師端末30に表示されるものとして説明したが、当該対象被検体のバイアス情報は、医師端末30と同じ形式で被検体端末20に表示されてもよいし、当該医師端末30とは異なる形式で被検体端末20に表示されてもよい。具体的には、医師端末30においては対象被検体のバイアス情報がレーダーチャートの形式で表示され、被検体端末20においては対象被検体のバイアス情報が当該バイアス情報を含むテキストのような形式で表示されてもよい。
【0081】
ここでは対象被検体のバイアス情報が被検体端末20及び医師端末30の両方において表示される場合を想定しているが、当該対象被検体のバイアス情報は被検体端末20にのみ表示される(つまり、医師端末30には表示されない)構成とすることも可能である。
【0082】
また、本実施形態においては対象被検体のバイアス情報が表示されるものとして説明したが、当該バイアス情報に基づくメッセージ等が表示されてもよい。具体的には、被検体端末20には、例えば対象被検体がサンクコストバイアスを有しているため、意思決定を行う際に注意した方がよい等の対象被検体に対するアドバイスに相当するメッセージが表示されてもよい。また、医師端末30には、例えばサンクコストバイアスが生じている対象被検体に対してどのように治療方針等を説明した方がよいか等の対象医師に対するアドバイスに相当するメッセージが表示されてもよい。なお、医師端末30及び被検体端末20に表示されるメッセージは、例えば対象被検体のバイアス情報(サンクコストバイアス情報、現状維持バイアス情報及び現在バイアス情報等)のパターン(傾向)に応じて予め用意されていればよい。
【0083】
本実施形態においては対象被検体のバイアス情報の複数の表示態様について説明したが、当該複数の表示態様は適宜組み合わせても構わない。
【0084】
また、本実施形態おいてはサンクコストバイアス情報、現状維持バイアス情報及び現在バイアス情報を対象被検体のバイアス情報として説明したが、対象被検体のバイアス情報は、他の数値であっても構わない。具体的には、対象被検体のバイアス情報は、当該対象被検体が有するバイアスを表すものであればよく、例えば対象被検体の回答自体を表す数値(つまり、質問リストに対して対象被検体が選択した選択肢の羅列)のようなものであってもよい。このような場合であっても、対象医師は、質問リストに対する回答として対象被検体が選択した選択肢を参照することによって、当該対象被検体に生じているバイアスの傾向を把握することができる。
【0085】
なお、本実施形態においてはバイアス情報取得部133から出力された対象被検体のバイアス情報が被検体端末20または医師端末30に表示されるものとして主に説明したが、当該対象被検体のバイアス情報は、例えば記憶回路12に記憶されてもよいし、医師端末30及び被検体端末20以外の外部装置に送信されてもよい。
【0086】
また、本実施形態においてはバイアス情報表示装置10、被検体端末20及び医師端末30を備える合意形成サポートシステム1について説明したが、例えばバイアス情報表示装置10が有する機能の一部は被検体端末20または医師端末30が有していてもよい。更に、本実施形態に係る合意形成サポートシステム1(バイアス情報表示システム)は、例えば単一の装置によって実現されても構わない。
【0087】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態においては、前述した第1実施形態と同様の部分についての詳しい説明を省略し、当該第1実施形態と異なる部分について主に説明する。なお、本実施形態係る合意形成サポートシステムの構成は前述した第1実施形態と同様であるため、適宜、図1を用いて説明する。
【0088】
本実施形態は、前述した第1実施形態において説明したバイアス情報を利用して治療方針に対する被検体の将来の満足度を予測する点で、当該第1実施形態とは異なる。
【0089】
図8は、本実施形態におけるバイアス情報表示装置10の構成の一例を示す。図8においては、前述した図2と同一の部分には同一参照符号を付して、その詳しい説明を省略する。ここでは前述した図2と異なる部分について主に述べる。
【0090】
本実施形態において、記憶回路12は、前述したアクティビティデータベース121に加えて、満足度データベース(DB)を有する。
【0091】
満足度データベース122には、他の被検体のバイアス情報(つまり、他の被検体が有するバイアスを表すバイアス情報)と、当該他の被検体に対して決定された治療方針と、当該治療方針に基づく治療が行われたことに対する当該他の被検体の満足度とが、過去に治療が行われた被検体毎に対応づけて格納されている。
【0092】
更に、本実施形態において、処理回路13は、前述したアクティビティ設定部131、実行結果取得部132、バイアス情報取得部133及び表示制御部134に加えて、読出部135を有する。なお、読出部135は、アクティビティ設定部131、実行結果取得部132及びバイアス情報取得部133と同様に、記憶回路12から読み出された所定のプログラムをプロセッサが実行することによって実現される機能部である。
【0093】
読出部135は、バイアス情報取得部133によって取得されたバイアス情報に対応する治療方針及び満足度を満足度データベース122から読み出す。このように読出部135によって読み出された治療方針及び満足度(を表す情報)は、表示制御部134によって表示される。
【0094】
次に、図9のシーケンスチャートを参照して、本実施形態に係る合意形成サポートシステム1の処理手順の一例について説明する。なお、以下の説明においては、被検体端末20を使用する被検体を対象被検体、医師端末30を使用する医師を対象医師と称する。
【0095】
まず、前述した図3に示すステップS1~S7の処理に相当するステップS11~S17の処理が実行される。
【0096】
次に、バイアス情報表示装置10(処理回路13)の読出部135は、ステップS17において取得された対象被検体のバイアス情報(つまり、バイアス情報取得部133から出力されたバイアス情報)に対応する治療方針及び満足度を満足度データベース122から読み出す(ステップS18)。
【0097】
ここで、図10は、満足度データベース122のデータ構造の一例を示す。図10に示すように、満足度データベース122には、被検体ID、バイアス情報、治療方針及び満足度が対応づけて格納されている。
【0098】
被検体IDは、他の被検体(過去に治療が行われた被検体)を識別するための識別情報である。バイアス情報は、対応付けられている被検体IDによって識別される被検体のバイアス情報である。治療方針は、対応づけられている被検体IDによって識別される被検体に対して決定された治療方針である。満足度は、対応づけられている治療方針に基づく治療が行われた被検体(被検体IDによって識別される被検体)の満足度である。
【0099】
図10に示す例では、満足度データベース122には、例えば被検体ID「0001」、バイアス情報「5,2,1」、治療方針「治療方針X」及び満足度「90」が対応づけて格納されている。これによれば、被検体ID「0001」によって識別される被検体のサンクコストバイアス情報が「5」、現状維持バイアス情報が「2」、現在バイアス情報が「1」であり、当該被検体に対して決定された治療方針が「治療方針X」であり、当該治療方針に基づく治療が行われたことに対する当該被検体の満足度が「90」であることが示されている。
【0100】
また、満足度データベース122には、例えば被検体ID「0002」、バイアス情報「1,1,4」、治療方針「治療方針Y」及び満足度「40」が対応づけて格納されている。これによれば、被検体ID「0002」によって識別される被検体のサンクコストバイアス情報が「1」、現状維持バイアス情報が「1」、現在バイアス情報が「4」であり、当該被検体に対して決定された治療方針が「治療方針Y」であり、当該治療方針に基づく治療が行われたことに対する当該被検体の満足度が「40」であることが示されている。
【0101】
ここでは被検体ID「0001」及び「0002」によって識別される被検体について説明したが、満足度データベース122には、過去に治療が行われた被検体毎に上記した被検体ID、バイアス情報、治療方針及び満足度が格納されている。
【0102】
なお、ここでは満足度データベース122に治療方針が格納されているものとして説明したが、本実施形態における「治療方針」は、単なる治療方針に限られず、例えば長期的な治療計画や具体的な治療方法等、合意形成を行う必要がある様々な事項を含む概念であるものとする。
【0103】
この場合、読出部135は、対象被検体のバイアス情報と満足度データベース122に格納されているバイアス情報とを比較し、当該満足度データベース122に格納されている被検体IDによって識別される被検体の中から当該バイアス情報(の傾向)が対象被検体と類似する被検体を特定する。
【0104】
例えば対象被検体のバイアス情報がサンクコストバイアス情報、現状維持バイアス情報及び現在バイアス情報を含むものとすると、当該サンクコストバイアス情報、現状維持バイアス情報及び現在バイアス情報の大小関係が同様である被検体が当該対象被検体と類似する被検体として特定される。
【0105】
具体的には、前述した第1実施形態において説明したようにサンクコストバイアス情報が「4」、現状維持バイアス情報が「2」、現在バイアス情報が「1」である対象被検体のバイアス情報の場合を想定すると、例えば図10に示す被検体ID「0001」に対応づけられているバイアス情報は、当該対象被検体のバイアス情報と同様に、サンクコストバイアス情報が最も高く、現在バイアス情報が最も低い。この場合には、被検体ID「0001」によって識別される被検体が対象被検体に類似する被検体として特定される。
【0106】
一方、例えば図10に示す被検体ID「0002」に対応づけられているバイアス情報は、現在バイアス情報が最も高く、対象被検体のバイアス情報とは傾向が異なる。この場合、被検体ID「0002」によって識別される被検体は、対象被検体に類似する被検体として特定されない。
【0107】
上記したように対象被検体に類似する被検体が特定された場合、読出部135は、当該被検体を識別するための被検体IDに対応づけられている治療方針及び満足度を満足度データベース122から読み出す。このように読み出された治療方針及び満足度は、例えば対象被検体に対して当該治療方針に基づく治療が行われた場合に当該対象被検体が感じる満足度(の予測値)であるといえる。
【0108】
以下、ステップS18の処理が実行されることによって満足度データベース122から読み出された治療方針及び満足度を当該治療方針に対する対象被検体の満足度の予測値と称する。なお、満足度データベース122には被検体毎に被検体ID、バイアス情報、治療方針及び満足度が格納されていることから、対象被検体に類似する被検体が複数特定される場合がある。このような場合には、複数の治療方針に対する対象被検体の満足度の予測値が取得されてもよい。更に、同一の治療方針に対する対象被検体の満足度の予測値が複数取得された場合には、当該満足度の平均値を当該治療方針に対する対象被検体の満足度の予測値としてもよい。
【0109】
ステップS18の処理が実行されると、上記した治療方針に対する対象被検体の満足度の予測値は、表示制御部134によって表示される。この場合、表示制御部134は、治療方針に対する対象被検体の満足度の予測値を医師端末30に表示するために医師端末30に送信する(ステップS19)。
【0110】
ステップS19においてバイアス情報表示装置10(表示制御部134)から送信された治療方針に対する対象被検体の満足度の予測値(つまり、治療方針及び満足度)は、医師端末30において受信され、当該医師端末30(が備えるディスプレイ等)に表示される(ステップS20)。
【0111】
ここで、図11は、ステップS20の処理が実行された場合に医師端末30に表示される画面(以下、予測値表示画面と表記)の一例を示す。図11に示すように、予測値表示画面320には、複数の治療方針X~Zの各々に対する対象被検体の満足度の予測値がグラフ形式で表示されている。
【0112】
なお、図11に示す例では、複数の治療方針X~Zの各々に対する対象被検体の満足度の予測値が医師端末30に表示されるものとして説明したが、例えば当該複数の予測値のうち、当該予測値が最も高い治療方針のみを表示するような構成であっても構わない。具体的には、図11に示すような治療方針X~Zに対する対象被検体の満足度の予測値の場合には、例えば対象被検体の満足度が高い(と予測される)治療方針として治療方針Xのみが表示されてもよい。
【0113】
また、ここでは治療方針に対する対象被検体の満足度の予測値のみが医師端末30に表示されるものとして説明したが、医師端末30には、当該治療方針に対する満足度の予測値に加えて、前述した第1実施形態において説明した対象被検体のバイアス情報が更に表示されてもよい。
【0114】
更に、上記した治療方針に対する対象被検体の満足度の予測値(及びバイアス情報)は、医師端末30ではなく被検体端末20に表示されてもよいし、当該被検体端末20及び医師端末30の両方に表示されてもよい。
【0115】
上記したように本実施形態においては、対象被検体のバイアス情報と満足度データベース122に格納されているバイアス被検体とに基づいて対象被検体と類似する他の被検体を特定し、当該特定された他の被検体に対して決定された治療方針と、当該治療方針に基づく治療が行われたことに対する当該他の被検体の満足度とを満足度データベース122から読み出し、当該読み出された治療方針及び満足度を当該治療方針に対する対象被検体の満足度の予測値として表示する。
【0116】
本実施形態においては、このような構成により、対象被検体の満足度が高いと予測される治療方針に基づいて円滑に合意形成を行うことができるため、対象医師と対象被検体との間で行われる合意形成をサポートすることができる。
【0117】
なお、本実施形態においてはバイアス情報(サンクコストバイアス情報、現状維持バイアス情報及び現在バイアス情報)に基づいて対象被検体と類似する他の被検体を特定するものとして説明したが、本実施形態は、当該バイアス情報の代わりに、前述した第1実施形態において説明した質問リストに対する回答に基づいて対象被検体と類似する他の被検体を特定する構成であってもよい。この場合には、例えば満足度データベース122に他の被検体(被検体IDによって識別される被検体)の回答を格納しておき、対象被検体の回答と他の被検体の回答とを比較することによって、回答の傾向が似ている(例えば、同じような選択肢を選択している)他の被検体を対象被検体と類似する被検体として特定することができる。
【0118】
更に、本実施形態においては満足度データベース122を参照して治療方針に対する対象被検体の満足度の予測値を取得するものとして説明したが、例えば過去の被検体のバイアス情報(または質問リストに対する回答)、当該被検体に対して決定された治療方針及び当該治療方針に基づく治療が行われたことに対する当該被検体の満足度を含む教師データを学習することによって生成された学習モデルを用意し、当該学習モデルを用いて本実施形態における治療方針に対する対象被検体の満足度を予測するような構成とすることも可能である。このような学習モデルは、既知の機械学習アルゴリズム等に基づいて生成することができ、例えば対象被検体のバイアス情報(または質問リストに対する回答)が入力された場合に各治療方針に対する対象被検体の満足度の予測値を出力するように構築されていればよい。
【0119】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、医師と被検体との間で行われる合意形成をサポートすることができる。
【0120】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0121】
1…合意形成サポートシステム、10…バイアス情報表示装置、20…被検体端末、30…医師端末、11…通信インタフェース、12…記憶回路、13…処理回路、121…アクティビティデータベース、122…満足度データベース、131…アクティビティ設定部、132…実行結果取得部、133…バイアス情報取得部、134…表示制御部、135…読出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11