(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183752
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】レーザーダイシング用粘着テープ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231221BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231221BHJP
C09J 7/24 20180101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 B
C09J7/38
C09J7/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097426
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 教一
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 淳
【テーマコード(参考)】
4J004
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA03
4J004CB03
4J004CC07
4J004DB02
4J004FA05
5F063AA18
5F063AA36
5F063DD26
5F063DD30
5F063EE03
5F063EE25
(57)【要約】
【課題】レーザーがウォータージェットでガイドされるレーザーダイシングにおいて、ダイシング時のウォータージェットの水透過性が良く、水流によるチップ飛びを抑制でき、さらに個片化したチップのピックアップ時にチップへの糊残りがないレーザーダイシング用粘着テープを提供する。
【解決手段】基材と、前記基材の一方の面の上に粘着剤層とセパレータフィルムとを順次積層した粘着テープであって、前記基材は、電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化樹脂フィルムであり、且つ厚さ方向に貫通孔を有しているものとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーがウォータージェットでガイドされるレーザーダイシングに用いる粘着テープであって、前記粘着テープは、基材と、前記基材の一方の面の上に粘着剤層とセパレータフィルムとを順次積層してなり、前記基材は、電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化樹脂フィルムであり、且つ厚さ方向に貫通孔を有していることを特徴とするレーザーダイシング用粘着テープ。
【請求項2】
前記硬化樹脂フィルムは、炭素-炭素二重結合を分子内に2個以上有する多官能重合性化合物と、多官能チオール化合物とを含む、電離放射線硬化性樹脂組成物をエン-チオール反応で付加硬化させてなる硬化物であり、前記多官能重合性化合物が多官能アリル化合物であることを特徴とする請求項1に記載のレーザーダイシング用粘着テープ。
【請求項3】
前記電離放射線硬化性樹脂組成物中に含まれる多官能重合性化合物が、トリアリルイソシアヌレートであることを特徴とする請求項2に記載のレーザーダイシング用粘着テープ。
【請求項4】
少なくとも、下記(a)~(e)の工程を含む製造方法によって得られる、請求項1~3に記載のレーザーダイシング用粘着テープ。
(a)仮支持体フィルム上に電離放射線硬化性樹脂層を積層した積層体を形成する工程、
(b)前記積層体の電離放射線硬化性樹脂層の仮支持体フィルムと接していない面に対し、前記電離放射線硬化性樹脂層の膜厚より高い突起を表面に規則的に有するモールド(型部材)を押し当てて、前記突起を前記電離放射線硬化性樹脂層の厚さ方向に貫通させる工程、
(c)前記突起が前記電離放射線硬化性樹脂層を貫通した状態で電離放射線を照射して、前記電離放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程、
(d)前記モールドおよび前記仮支持体フィルムを剥離除去して、厚さ方向に貫通孔を有する硬化樹脂フィルムを得る工程、
(e)前記硬化樹脂フィルムに粘着剤層およびセパレータフィルムを積層する工程、
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハをウォータージェットでガイドされるレーザーによってダイシングする際に、半導体ウェーハを固定するために用いるレーザーダイシング用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウェーハおよび半導体関連材料のダイシング方法として、高速回転させたダイシングブレードを用いて切断するブレードカット方式があるが、切断時のブレードによる切削抵抗によって個片化したチップが、固定している粘着テープから飛散してしまうチップ飛びや、チップの欠け、ひび割れ等の欠陥が生じて、半導体チップの生産性や品質が低下する問題があった。
【0003】
一方、レーザービームを使ったダイシング方法が種々検討されており、その中にウォータージェットによってガイドされるレーザービームを使用したレーザーダイシング方法がある。この方法ではブレードカット方式のようにブレードによる切削抵抗がウェーハに直接かからないため、チップの欠け、ひび割れ等の欠陥の発生を低減することができる。また、ウォータージェットでガイドされるため、ウェーハが効率よく冷却され、熱負荷を低減することができる。
【0004】
このレーザーがウォータージェットでガイドされるレーザーダイシングでは、ダイシング時にウェーハを固定している粘着テープの接着面に水流による圧力がかかり、個片化されたチップが粘着テープから剥離し易いという問題があるが、それに対しては特許文献1に、支持基材に水透過性がある穿孔を有する基材を用いて、水流による剥離を防ぐ水透過性粘着テープが提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のように水透過性がある基材として不織布や穿孔加工した基材を用いた場合、穿孔が不均一であったり、穿孔面積を大きくできないため、チップサイズ、ダイシング条件により水流が透過しにくくなり、チップ飛びが発生する場合があった。
【0006】
これに対して特許文献2では、水透過性のある基材にメッシュ基材を使用することで、孔の大きさ及びオープニングエリアを、不織布や穿孔加工した基材に対して比較的大きいサイズで確保でき、水透過性が安定して、チップ飛びやチップの欠陥をより低減できることが記載されている。
【0007】
しかしながら、メッシュ基材を使用したものは、パワー半導体として用いられるシリコンカーバイト(SiC)ウェーハなど、シリコンウェーハより切断しにくい材料をダイシングする場合、高出力でのレーザー加工となるため、レーザーによりメッシュ基材の繊維が損傷、切断してしまい、チップ飛びが発生してしまうものであった。また、メッシュ基材は繊維で形成された網目状の織物であり、基材と粘着剤層との接触面積が小さいため、基材と粘着剤層の密着性が十分でなく、ウォータージェットの水流により粘着剤層が基材から剥がれて、チップ飛びやチップの欠陥が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-316648号公報
【特許文献2】特開2008-117943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、レーザーがウォータージェットでガイドされるレーザーダイシングにおいて、ダイシング時のウォータージェットの水透過性が良く、水流によるチップ飛びを抑制でき、さらに個片化したチップのピックアップ時にチップへの糊残りがないレーザーダイシング用粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のレーザーダイシング用粘着テープは、レーザーがウォータージェットでガイドされるレーザーダイシングに用いる粘着テープであって、前記粘着テープは、基材と、前記基材の一方の面の上に粘着剤層とセパレータフィルムとを順次積層してなり、前記基材は、電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化樹脂フィルムであり、且つ厚さ方向に貫通孔を有していることを特徴とするレーザーダイシング用粘着テープとする。
【0011】
本発明のレーザーダイシング用粘着テープの一態様において、前記硬化樹脂フィルムは、炭素-炭素二重結合を分子内に2個以上有する多官能重合性化合物と、多官能チオール化合物とを含む、電離放射線硬化性樹脂組成物をエン-チオール反応で付加硬化させてなる硬化物であり、前記多官能重合性化合物が多官能アリル化合物とすることができる。
【0012】
本発明のレーザーダイシング用粘着テープの一態様において、前記電離放射線硬化性樹脂組成物中に含まれる多官能重合性化合物がトリアリルイソシアヌレートとすることができる。
【0013】
本発明のレーザーダイシング用粘着テープの一態様において、
(a)仮支持体フィルム上に電離放射線硬化性樹脂層を積層した積層体を形成する工程、
(b)前記積層体の電離放射線硬化性樹脂層の仮支持体フィルムと接していない面に対し、前記電離放射線硬化性樹脂層の膜厚より高い突起を表面に規則的に有するモールド(型部材)を押し当てて、前記突起を前記電離放射線硬化性樹脂層の厚さ方向に貫通させる工程、
(c)前記突起が前記電離放射線硬化性樹脂層を貫通した状態で電離放射線を照射して、前記電離放射線硬化性樹脂層を硬化させる工程、
(d)前記モールドおよび前記仮支持体フィルムを剥離除去して、厚さ方向に貫通孔を有する硬化樹脂フィルムを得る工程、
(e)前記硬化樹脂フィルムに粘着剤層およびセパレータフィルムを積層する工程、
を含む製造方法により得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレーザーダイシング用粘着テープの基材である硬化樹脂フィルムは、従来から用いられているオレフィン系の合成樹脂フィルムより透明性、柔軟性、密着性に優れるものであり、基材と粘着剤層との接着性およびレーザー光での基材の耐損傷性が良い粘着テープとすることができる。さらに、硬化樹脂フィルムでは、モールド(型部材)により、基材の厚さ方向の貫通孔を高密度で精度よく形成することができるため、レーザーがウォータージェットでガイドされるレーザーダイシングにおいて、ウェータージェットの水透過性が良く、ダイジング時のチップ飛びや、チップ欠けなどの欠陥を抑制し、ダイシング後のピックアップ時にチップへの糊残りがないレーザーダイシング用粘着テープを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のレーザーダイシング用粘着テープの一実施形態を示す断面概略図である。
【
図2】本発明のレーザーダイシング用粘着テープの製造工程の一実施形態を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
本発明のレーザーダイシング用粘着テープは、電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化樹脂フィルムからなる基材と、粘着剤層、セパレータフィルムが順次積層されたものであり、前記硬化樹脂フィルムの基材は、厚さ方向に貫通孔を有するものである。硬化樹脂フィルムは、仮支持体フィルム上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層し、その電離放射線硬化性樹脂層の表面側から、電離放射線硬化性樹脂層の膜厚より高い突起を表面に規則的に有するモールド(型部材)を押し当てて、前記モールドの突起が電離放射線硬化性樹脂層を貫通した状態で電離放射線を照射し、電離放射線硬化性樹脂層を硬化させてからモールドと仮支持体フィルムを剥離除去することで、微細な貫通孔を高密度で精度よく形成した硬化樹脂フィルムを得ることができる。この硬化樹脂フィルムに粘着剤層およびセパレータフィルムを積層することで、本発明の貫通孔を有する硬化樹脂フィルムを基材とした粘着テープを得ることができる。
【0018】
(基材)
本発明の粘着テープを構成する基材は、電離放射線硬化性樹脂層を硬化させてなる硬化樹脂フィルムである。電離放射線硬化性樹脂層に用いる電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線重合性の炭素-炭素二重結合を分子内に2個以上有する多官能重合性化合物を含む組成物とする。特に前記多官能重合性化合物と、多官能チオール化合物とを含む、エン-チオール反応の付加硬化物が得られる電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましい。エン-チオール反応は、硬化感度および硬化性が高く、ラジカル硬化での酸素阻害も受けにくいため、生産性に優れるものである。また、エン-チオール反応で得られる付加硬化物は、均質で透明性、柔軟性、密着性が高く、機械的強度にも優れたものとすることができる。この硬化物からなる硬化樹脂フィルムは、従来のダイシング用粘着テープ基材として用いられているポリオレフィンなどの合成樹脂フィルムと比べ、粘着剤層との接着性、レーザー光での耐損傷性、エキスパンド性に優れたものである。また、機械的強度にも優れるため、貫通孔の孔密度を上げることができ、本発明のレーザーダイシング用粘着テープの基材として好適である。なお、エン-チオール反応とは、電離放射線照射により、メルカプト基上にラジカルが発生し、該ラジカルによりメルカプト基が炭素-炭素二重結合に付加する反応を言う。
【0019】
多官能重合性化合物としては、具体的には、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アリル化合物、多官能ビニル化合物などが挙げられる。多官能(メタ)アクリレート化合物はとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類;トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類との反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
【0020】
多官能アリル化合物としては、例えば、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル等の多官能アリルエーテル類;シュウ酸ジアリル、マロン酸ジアリル、コハク酸ジアリル、グルタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、トリメシン酸トリアリル、トリメリット酸トリアリル、ピロメリット酸テトラアリル等の多官能アリルエステル類;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート類などが挙げられる。
【0021】
多官能ビニル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;シュウ酸ジビニル、マロン酸ジビニル、コハク酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、トリメシン酸トリビニル、トリメリット酸トリビニル、ピロメリット酸テトラビニル等の多官能ビニルエステル類などが挙げられる。
【0022】
これら多官能重合性化合物を単独または2種以上組み合わせて、電離放射線硬化性樹脂組成物を得ることができる。多官能重合性化合物の中でも、柔軟性のある硬化樹脂フィルムとするために、多官能ウレタン(メタ)アクリレート類を用いるのが好ましい。また、エン-チオール反応の付加硬化物の場合は、均質な硬化物が得られやすい点で、多官能アリル化合物を用いるのが好ましい。多官能アリル化合物の中では、機械的特性の向上の観点からトリアリルイソシアヌレートを用いるのがより好ましい。
【0023】
エン-チオール反応の硬化物とする場合に用いる多官能チオール化合物は、分子内にメルカプト基(SH基)を2個以上有する化合物であり、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナンー2,4,6-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)などが挙げられる。エン-チオール反応で得られる硬化物の密着性、柔軟性などの特性向上の点からは、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナンー2,4,6-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)などの多官能2級チオール化合物を用いるのがより好ましい。
【0024】
エン-チオール反応の硬化物とする場合、電離放射線硬化性樹脂組成物中の多官能重合性化合物と多官能チオール化合物の配合量は、硬化樹脂フィルムを均質な性状とするため、多官能重合性化合物の炭素-炭素二重結合基と、多官能チオール化合物のメルカプト基のモル比率が40:60~60:40の範囲になるように配合するのが好ましく、45:55~55:45の範囲がより好ましい。
【0025】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、通常は液状樹脂組成物であり、モールドで貫通孔を形成する場合にモールドの突起形状への追従性が良いものである。電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、10~5,000mPa・sの範囲が好ましく、50~1,000mPa・sの範囲がより好ましい。
【0026】
電離放射線硬化性樹脂組成物中には、効率よく硬化反応を進行させるために重合開始剤を配合するのが好ましい。重合開始剤としては、電離放射線重合開始剤を用いるのが好ましく、電離放射線として紫外線を使用する場合には、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、(2,4,6-トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート等の光重合開始剤を用いるのが好ましい。
【0027】
電離放射線硬化性樹脂組成物中における重合開始剤の含有量は、0.1~20質量%であるのが好ましく、0.5~10質量%であるのがより好ましい。
【0028】
電離放射線硬化性樹脂組成物中には、本発明の効果が得られる範囲で、単官能の(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物、アリル化合物などのラジカル重合性化合物や、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤、粘度調整剤などの各種添加剤を適宜配合することができる。
【0029】
電離放射線硬化性樹脂層の厚さは、貫通孔の形成性、硬化樹脂フィルムの取り扱い性や、ダイシング用粘着テープの使用時の耐破断性、耐損傷性の観点から、50~300μmの範囲が好ましく、60~200μmの範囲がより好ましく、70~150μmの範囲がさらに好ましい。
【0030】
電離放射線硬化性樹脂層の形成方法としては、電離放射線硬化性樹脂組成物をそのまま、又は溶剤などで粘度を調整した塗工液として、仮支持体フィルムの離型層上に、前記塗工液を所定の厚みとなるように均一に塗工し、溶剤などを乾燥させて電離放射線硬化性樹脂層を形成する。
【0031】
電離放射線硬化性樹脂層の塗工液の塗工法としては、例えば、グラビアコーター、バーコーター、コンマナイフコーター、ダイコーター、リバースコーターなどが挙げられる。
【0032】
硬化樹脂フィルムは、電離放射線硬化性樹脂層に電離放射線を照射し、電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させることで得られる。電離放射線としては、通常は紫外線を用いるが、可視光線、電子線、X線、イオン線等を用いても良い。紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。
【0033】
本発明の粘着テープの基材とする硬化樹脂フィルムには、その厚さ方向に貫通孔である孔を有するものである。この孔の形状は、水を逃がすことができるものであればよく、例えば、円形、正方形、三角形、ひし形などの形状が挙げられるが、穿孔加工しやすい点で円形の孔が好ましい。孔の配置は、水の透過性を安定させるために微細な孔を規則的に配列(例えば、正方格子、三角格子等の格子状)するのが好ましい。孔の大きさ(孔サイズ)は、0.0004mm2~0.1mm2が好ましく、0.001mm2~0.05mm2、がより好ましく、0.0013mm2~0.03mm2がさらに好ましい。孔が円形である場合、その直径は0.022mm~0.35mmが好ましく、0.035mm~0.25mmがより好ましく、0.040mm~0.20mmがさらに好ましい。孔が正方形、三角形またはひし形である場合、その一辺の長さは、0.01mm~0.30mmが好ましく、0.03mm~0.20mmがより好ましく、0.04mm~0.18mmがさらに好ましい。また、単位面積当たりの孔の個数(孔密度)は、1,000,000個/m2を超えることが好ましく、5,000,000個/m2以上がより好ましい。
【0034】
基材とする硬化樹脂フィルムの貫通孔による開孔率は、3%~90%程度が好ましく、8%~80%程度がより好ましく、10%~55%程度がさらに好ましく、15%~50%程度が一層好ましい。これにより、水透過性が良好となり、粘着テープからのチップの剥離を防止することができる。また、テープの機械的強度を確保し、基材と粘着剤層との接着性を確保することができる。この場合の開孔率は、孔サイズおよび孔密度から次式で算出することができる。開孔率(%)=(孔サイズ)×(孔密度)×100
【0035】
本実施形態では、硬化樹脂フィルムに貫通孔を穿孔する方法として、仮支持体フィルム上に形成した硬化前の電離放射線硬化性樹脂層に、前述の形状及びサイズの穿孔を形成するための突起を有するモールド(型部材)を押し当てて、前記モールドの突起が電離放射線硬化性樹脂層を貫通した状態で電離放射線を照射し、電離放射線硬化性樹脂層を硬化させてからモールドと仮支持体フィルムを除去することで、硬化樹脂フィルムに貫通孔を形成することができる。この方法を用いると従来公知の穿孔加工方法より、微細な貫通孔をより高密度で精度よく形成することができ、ウォータージェットの水透過性を向上することができる。
【0036】
上記穿孔方法で用いるモールドの材質は、特に限定されないが、例えば、樹脂材料、ガラス材料、その他無機材料などが挙げられる。樹脂材料としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びフッ素系樹脂などが挙げられる。ガラス材料としては、石英ガラス、高ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、アミノケイ酸ガラス、無アルカリガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、リン珪酸ガラス、フッ化物ガラス、ランタンガラス、透明結晶化ガラス、熱線吸収ガラス、及びスピンオンガラス等が挙げられる。その他無機材料としてはシリコン、炭化ケイ素、サファイア、窒化ガリウム、及びカーボンなどが挙げられる。
【0037】
モールドの電離放射線硬化性樹脂層に押し当てる側の表面には、硬化樹脂フィルムに穿孔するための微細な突起を規則的に有している。この突起の形状、サイズ、配列は、穿孔する硬化樹脂フィルムの孔の形状、サイズ、配列と同様とする。また、突起の高さは、貫通孔を確実に形成するために、貫通させる電離放射線硬化性樹脂層の膜厚に加えて5~40μm高いもの、より好ましくは10~30μm高いもの、さらに好ましくは10~20μm高いものとする。突起の形成方法としては、半導体分野などで公知技術である表面に微細凹凸を形成させるUVインプリント法で用いられるモールドの作製方法を好適に用いることができ、例えば、フォトリソグラフィー法、電子線描画法、干渉露光法、半導体レーザーを用いた直接描画法などを挙げることができる。
【0038】
モールドの突起を有する表面には、電離放射線硬化性樹脂層が硬化した硬化樹脂フィルムとの剥離性を向上させるため、離型処理を施すのが好ましい。離型処理としては、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤が好ましく、特にパーフルオロアルキル基を有するフッ素系離型剤がより好ましい。また、剥離剤は、モールド表面からの脱落を抑えるために、モールドの材質が有する表面官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基など)と化学結合しうる官能基(例えば、水酸基、シラノール基、エポキシ基など)を有するものが好ましい。
【0039】
硬化樹脂フィルムに貫通孔を穿孔する方法としては、従来の穿孔加工方法、例えば、プレス機または回転ロールによる打抜き、レーザー処理、水ジェット処理などを用いることができる。モールドを用いて穿孔した硬化樹脂フィルムに、追加で穿孔してもよく、モールドを用いないで穿孔していない硬化樹脂フィルムを作製して、従来方法で穿孔することもできる。
【0040】
(粘着剤層)
本発明のレーザーダイシング用粘着テープの粘着剤層に用いる粘着剤組成物としては、通常使用されるアクリル系粘着剤、または電離放射線硬化型粘着剤、加熱膨張型粘着剤などを適宜使用することができる。電離放射線硬化型粘着剤は、一般的にアクリル系粘着剤と電離放射線重合性化合物を含むもので、電離放射線照射により粘着力が低下するものである。また、加熱膨張型粘着剤は、一般的にアクリル系粘着剤と発泡剤(熱膨張剤)を含むものであり、加熱により粘着力が低下するものである。これらの粘着力が低下するタイプは、ダイシング後のチップの剥離を容易にすることができるため、好適に使用することができる。
【0041】
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系共重合体および硬化剤を必須成分とするものである。(メタ)アクリル系共重合体は、例えば、アルキル基の炭素数が4~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上と、他の共重合可能な炭素-炭素二重結合を有するモノマーの1種または2種以上とを常法により共重合させることによって得ることができる。
【0042】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0043】
前記共重合可能な炭素-炭素二重結合を有するモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、α―メチルスチレン、酢酸ビニル、N-ビニル-2-ピロリドン、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、フマル酸などが挙げられる。これらの中で、後述する硬化剤と反応しうる官能基を有するモノマーを必須成分として使用する。
【0044】
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万~100万であり、より好ましくは2万~80万である。重量平均分子量を前記範囲とすることで、本発明の粘着剤層として適正な粘着性能を得ることができる。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算値である。
【0045】
硬化剤は、(メタ)アクリル系共重合体が有する官能基と反応させて粘着力及び凝集力を調整するために用いられるものであり、例えば、エポキシ系硬化剤、イソシアネート系硬化剤が挙げられる。
【0046】
エポキシ系硬化剤としては、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N,N′-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が挙げられる。
【0047】
イソシアネート系硬化剤としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート、ポリイソシアネートの3量体、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、該ウレタンプレポリマーの3量体等の1分子中にイソシアネート基を2以上有するポリイソシアネート系化合物などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独で使用してもよいし、また2種以上を併用することもできる。
【0048】
硬化剤の添加量は、所要の粘着力に応じて適宜調整することができ、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、通常、0.01~30質量部、より好ましくは0.1~15.0質量部である。
【0049】
前記電離放射線硬化型粘着剤の電離放射線重合性化合物は、例えば、光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が広く用いられ、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オリゴエステルアクリレート等が広く適用可能である。
【0050】
また、上記の様なアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,4-キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4-ジイソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。
【0051】
電離放射線硬化型粘着剤中のアクリル系粘着剤と電離放射線重合性化合物との配合比としては、アクリル系粘着剤100質量部に対して、電離放射線重合性化合物を5~200質量部、より好ましくは10~120質量部、さらに好ましくは10~50質量部の範囲で配合する。前記範囲で配合することで適切に粘着力が低下し、ピックアップ時のチップの損傷や糊残りを抑制することができる。さらに、電離放射線硬化型粘着剤は、上記のようにアクリル系粘着剤に電離放射線重合性化合物を配合する替わりに、アクリル系粘着剤自体を電離放射線重合性アクリル酸エステル共重合体とすることも可能である。
【0052】
また、電離放射線硬化型粘着剤には、電離放射線重合性開始剤を配合するのが好ましい。電離放射線重合性開始剤として、例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシメチルフェニルプロパン等が挙げられる。これらのうち少なくとも1種類を粘着剤層に添加することにより、効率よく重合反応を進行させることができる。
【0053】
電離放射線重合開始剤の配合量は、電離放射線硬化型粘着剤100質量部に対して、通常、0.05~15質量部、好ましくは0.2~10質量部である。
【0054】
前記熱膨張型粘着剤の発泡剤は、例えば、公知の熱発泡剤を適宜選択して用いることができるが、中でもマイクロカプセル化されている発泡剤を好適に用いることができる。このようなマイクロカプセル化されている発泡剤としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱により容易にガス化して膨脹する物質を、弾性を有する殻内に内包させた熱膨張性微小球が挙げられる。
【0055】
熱膨張性微小球の殻は、通常、熱可塑性物質、熱溶融性物質、熱膨脹により破裂する物質などで形成される場合が多く、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。熱膨張性微小球は従来公知の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法などにより製造できる。
【0056】
熱膨張性微小球としては、市販品を利用することもできる。このような熱発泡剤の市販品としては、例えば、松本油脂製薬株式会社製の(商標)マツモトマイクロスフェアFシリーズ(例えばF-30、F-50、F80Sなど)等が挙げられる。
【0057】
熱膨張性微小球の平均粒径は、分散性や薄層形成性などの点から、通常1~80μm程度、好ましくは3~50μm程度である。
【0058】
また、熱膨張性微小球としては、加熱処理により粘着剤を含む粘着層の粘着力を効率よく低下させるため、体積膨脹率が5倍以上、特に10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有するものが好ましい。
【0059】
熱膨張型粘着剤に用いられるその他の熱発泡剤としては、例えば、無機系発泡剤や有機系発泡剤が挙げられる。無機系発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類などが挙げられる。また、有機系発泡剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジドやジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジン系化合物;ρ-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物;N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミドなどのN-ニトロソ系化合物などが挙げられる。これらの熱発泡剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。さらに、熱発泡剤含有粘着剤組成物には、必要に応じて発泡助剤が含まれていてもよい。
【0060】
熱膨張型粘着剤中の熱発泡剤の配合量は、その種類によっても異なるが、アクリル系粘着剤100質量部に対して、通常10~200質量部、好ましくは20~125質量部、さらに好ましくは25~100質量部程度である。10質量部以上とすることで、加熱処理後の効果的な粘着力低下が得られ、また、200質量部以下とすることで、粘着剤層の凝集破壊を抑えることができる。
【0061】
本発明の粘着剤層には、必要に応じて、酸化防止剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤などの各種添加剤を配合することができる。
【0062】
粘着剤層の塗工量は、被着体に対する接着力、保持力を確保するためには、5~50g/m2程度、より好ましくは10~30g/m2である。粘着剤層の塗工量が5g/m2以上とすることで接着力、保持力を確保でき、ウォータージェットの水流によるチップ剥がれを抑制することできる。また、粘着剤層の塗工量が50g/m2を以下とすることで、ウォータージェットの水流の貫通性を確保し、製造コストを抑えることができる。
【0063】
本発明の粘着剤層の形成方法としては、粘着剤組成物をそのまま、又は溶剤などで粘度を調整した塗工液として、フィルム基材または離型処理されたセパレータフィルムの上に、前記塗工液を所定の厚みとなるように均一に塗工し、溶剤を乾燥させて粘着剤層を形成する。
【0064】
本発明の粘着剤層の塗工液の塗工法としては、例えば、グラビアコーター、バーコーター、コンマナイフコーター、ダイコーター、リバースコーターなどが挙げられる。
【0065】
本発明の粘着テープの粘着力は、ダイシング時のチップ飛びを抑制するため、1N/25mm以上が好ましく、2N/25mm以上がより好ましい。また、電離放射線硬化型粘着剤または熱膨張型粘着剤を使用する場合には、電離放射線照射後または加熱後に低下した粘着力が、1N/25mm未満が好ましく、0.5N/25mm未満がより好ましい。ダイシング後のピックアップ時における粘着力が低いほうが、チップの欠け等の欠陥を低減することができる。なお、粘着力は、測定温度が23±3℃、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件でシリコンウェーハミラー面に対する剥離力を測定したときの値である。
【0066】
(仮支持体フィルム)
本発明の硬化樹脂フィルムは、離型層が形成された仮支持体フィルムの離型層上に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工して電離放射線硬化性樹脂層を形成し、電離放射線硬化性樹脂層に電離放射線を照射し硬化させてから、仮支持体フィルムを剥離して硬化樹脂フィルムを得るものである。
【0067】
仮支持体フィルムの材質は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリウレタンなどの合成樹脂が挙げられるが、耐熱性、強度などの観点からポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。仮支持体フィルムの厚みは、取り扱い性およびコスト面からは、6~200μm程度が好ましく、12~100μm程度がより好ましい。
【0068】
仮支持体フィルムの離型層に使用する剥離剤は、例えば、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、フッ素系剥離剤など従来公知のものや、シリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン変性ウレタン樹脂などのシリコーン変性樹脂を剥離剤として用いることもできる。これらの中では、比較的安価で安定した剥離性が得られるシリコーン系剥離剤を使用するのが好ましい。また、仮支持体フィルムの離型層の上に積層した電離放射線硬化性樹脂層にモールドを押し当てて、モールドの突起を貫通させる工程で、仮支持体フィルムの離型層表面とモールドの突起が密着しやすい点で、層として比較的柔軟なシリコーン変性ウレタン樹脂を離型層に用いるのがより好ましい。離型層表面とモールドの突起の接触面の密着がよいほど、その間にある電離放射線硬化性樹脂組成物が押し出され、貫通孔を確実に形成することができる。
【0069】
シリコーン系剥離剤としては、例えば、熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤を好適に使用することができる。熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤は、例えば、分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、架橋剤としてオルガノハイドロジェンポリシロキサンからなるシリコーン組成物を付加反応により硬化させるものを使用することがきる。また、熱硬化性付加型シリコーン系剥離剤には、必要に応じて、MQレジン等の剥離コントロール剤を適宜添加することもできる。
【0070】
熱硬化型シリコーン系剥離剤は、通常、硬化触媒として白金系触媒が用いられる。白金触媒としては、例えば、塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、塩化白金酸のオレフィン錯体などが挙げられる。
【0071】
シリコーン変性ウレタン樹脂としては、例えば、シリコーンモノマーおよび/またはポリシロキサンと、ウレタンモノマーおよび/またはウレタンオリゴマーとの共重合体が挙げられる。また、シリコーン変性ウレタン樹脂は、市販品を用いてもよい。市販品として、大日精化工業社製のダイアロマー(商標)SPシリーズ(例えば、SP-2105、SP-3035など)等が挙げられ、剥離性、柔軟性などにより適宜選定することができる。また、シリコーン変性ウレタン樹脂には、必要に応じて、塗膜の凝集力を上げるための硬化剤などを適宜配合してもよい。
【0072】
仮支持体フィルムの離型層の厚さは、離型性およびモールドの突起が密着して貫通孔を形成しやすくなる点、及び離型層の膜形成や製造コストの観点から、1~200μmの範囲が好ましく、5~100μmの範囲がより好ましく、10~50μmの範囲がさらに好ましい。
【0073】
(セパレータフィルム)
本発明の粘着テープは、片面に離型処理層を設けたセパレータフィルムが粘着剤層の上に積層された構成である。なお、セパレータフィルムは、粘着テープを使用する際には剥がすものである。
【0074】
セパレータフィルムの材質は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリウレタンなど、前述の仮支持体フィルムと同様の合成樹脂が使用できる。これらの中で、耐熱性、強度などの観点からポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。セパレータフィルムの厚みは、通常、6~200μm程度、取り扱い性およびコスト面からは、12~100μm程度がより好ましい。
【0075】
セパレータフィルムの離型処理層に使用する剥離剤は、例えば、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、フッ素系剥離剤など従来公知のものが使用できる。これらの中でも、シリコーン系剥離剤を使用するのが好ましく、粘着剤層との剥離特性により適宜選定することができる。
【0076】
離型処理層の厚さは、離型性および厚みの安定性の観点から0.01~10μmが好ましく、より好ましくは0.03~5μmであり、さらに好ましくは0.1~1μmである。
【0077】
本実施形態では、硬化前の電離放射線硬化性樹脂層に、貫通孔を形成するための突起を表面に規則的に有するモールド(型部材)を押し当てた状態で電離放射線硬化性樹脂層を硬化させ、硬化樹脂フィルムに貫通孔を穿孔して粘着テープとするのが好ましい。本実施形態のモールドを用いた粘着テープの製造工程としては、
図2に示すように、先ず(a)の電離放射線硬化性樹脂の積層工程で、仮支持体フィルム50の離型層60の表面上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工し、電離放射線硬化性樹脂層70を積層した積層体80を形成する。次に(b)のモールド貫通工程で、積層体80の電離放射線硬化性樹脂層70の仮支持体フィルム50に接していない面に対し、電離放射線硬化性樹脂層70の膜厚より高い突起91を表面に規則的に有するモールド90を押し当てて、突起91を電離放射線硬化性樹脂層70の厚さ方向に貫通させる。次いで(c)の硬化工程で、突起91が電離放射線硬化性樹脂層70を貫通した状態で電離放射線を照射し、電離放射線硬化性樹脂層70を硬化させる。さらに(d)の剥離除去工程により、モールド90および仮支持体フィルム50を剥離除去して、厚さ方向に貫通孔21を有する硬化樹脂フィルム20を得る。最後に(e)の粘着剤層の積層工程で、別途セパレータフィルム40に粘着剤組成物を塗工により積層した粘着剤層30に硬化樹脂フィルム20を貼り合わせて積層し、本発明の粘着テープ10を得ることができる。
【実施例0078】
以下に実施例と比較例を示して本発明のレーザーダイシング用粘着テープを詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0079】
<仮支持体フィルムの準備>
シリコーン変性ウレタン樹脂(大日精化工業社製ダイアロマーSP-2105、不揮発分20質量%)100質量部、イソシアネート系硬化剤(大日精化工業(株)製クロスネートD-70、不揮発分50質量%)15質量部を混合した離型層塗工液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、乾燥膜厚が15μmとなるように塗工して離型層を形成し、次いで45℃の恒温槽で96時間処理して仮支持体フィルムとした。
<セパレータフィルムの準備>
シリコーン剥離剤(信越化学工業社製KS-776A)95質量部、硬化触媒(信越化学工業社製CAT.PL-50T)5質量部、トルエン500質量部を混合した剥離剤塗工液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、乾燥重量が0.3g/m2となるよう塗工し、次いで140℃のギアオーブンで1分間乾燥硬化させてシリコーン離型処理層を形成し、セパレータフィルムとした。
【0080】
<モールド(型部材)の準備>
[モールド1];材質:石英ガラス、突起形状:円柱形(直径50μmの円形、高さ90μm)、突起配列:縦横100μm間隔の正方格子状配列、表面処理:フッ素系シランカップリング剤
[モールド2];材質:石英ガラス、突起形状:円柱形(直径40μmの円形、高さ90μm)、突起配列:縦横100μm間隔の正方格子状配列、表面処理:フッ素系シランカップリング剤
[モールド3];材質:石英ガラス、突起形状:円柱形(直径60μmの円形、高さ90μm)、突起配列:縦横100μm間隔の正方格子状配列、表面処理:フッ素系シランカップリング剤
【0081】
<電離放射線硬化性樹脂層塗工液の調製>
多官能重合性化合物としてトリアリルイソシアヌレート(分子量249、炭素-炭素二重結合基:3官能)を36質量部、多官能チオール化合物として1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(分子量294.4、メルカプト基:2官能)を64質量部、メチルエチルケトン20質量部を混合し、電離放射線硬化性樹脂層の塗工液とした。
【0082】
<粘着剤層塗工液の調製>
下記材料を使用して、下記の粘着剤層の塗工液配合で混合し、粘着剤層塗工液とした。
[(メタ)アクリル系共重合体];n-ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体(重量平均分子量60万、水酸基価20mgKOH/g)の酢酸エチル溶液(不揮発分50%)
[電離放射線重合性化合物];ウレタンアクリレートオリゴマー(アクリレート6官能、重量平均分子量2,000)
[電離放射線重合開始剤];1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
[イソシアネート系硬化剤];トリレンジイソシアネート-トリメチロールプロパン(TMP)アダクト体の酢酸エチル溶液(不揮発分75%)
(粘着剤層の塗工液配合)
(メタ)アクリル系共重合体 75質量部
電離放射線重合性化合物 6質量部
電離放射線重合開始剤 3質量部
イソシアネート系硬化剤 5質量部
酢酸エチル 11質量部
【0083】
(実施例1)
<硬化樹脂フィルムの作製>
仮支持体フィルムの離型層面の上に、乾燥後の膜厚が80μmになるように電離放射線硬化性樹脂層塗工液を塗工し、溶剤を乾燥させて、仮支持体フィルム/電離放射線硬化性樹脂層からなる積層体を作製した。次に、前記積層体の電離放射線硬化性樹脂層の仮支持体フィルムと接していない面に対し、モールド1の突起を有する面側を押し当てて、モールド1の突起が電離放射線硬化性樹脂層を貫通し、前記仮支持体フィルムの離型層に突起が密着したことを確認してから、仮支持体フィルム側より紫外線照射(高圧水銀ランプ、出力120W/cm、積算光量1000mJ/cm2)を行い、電離放射線硬化性樹脂層を硬化させた後、前記モールド1と前記仮支持体フィルムを剥離除去して、モールド1の貫通孔を有する硬化樹脂フィルムを作製した。(硬化樹脂フィルムの孔サイズ:0.0020mm2、開孔率:20%)
<粘着テープの作製>
セパレータフィルムの離型処理層面の上に、乾燥後の塗工量が15g/m2になるように粘着剤層塗工液を塗工し、溶剤を乾燥させて、粘着剤層を形成した。前記粘着剤層の表面に、前記モールド1の貫通孔を有する硬化樹脂フィルムを貼り合せて、45℃で48時間の粘着剤層の硬化熟成を行い、粘着テープを作製した。
【0084】
(実施例2)
実施例1において、モールド1をモールド2に変更した以外は、実施例1と同様に粘着テープを作製した。(硬化樹脂フィルムの孔サイズ:0.0013mm2、開孔率:13%)
【0085】
(実施例3)
実施例1において、モールド1をモールド3に変更した以外は、実施例1と同様に粘着テープを作製した。(硬化樹脂フィルムの孔サイズ:0.0028mm2、開孔率:28%)
【0086】
(比較例1)
実施例1において、硬化樹脂フィルム作製で、モールド1を使用せずに仮支持体フィルム/電離放射線硬化性樹脂層からなる積層体に、仮支持体フィルム側より紫外線照射(高圧水銀ランプ、出力120W/cm、積算光量1000mJ/cm2)を行い、電離放射線硬化性樹脂層を硬化させた後、前記仮支持体フィルムを剥離除去して、貫通孔のない硬化樹脂フィルムを作製し、実施例1と同様に粘着テープを作製した。(硬化樹脂フィルムの開孔率:0%)
【0087】
(比較例2)
実施例1において、硬化樹脂フィルムの代わりにレーザー処理により穿孔加工した厚さ80μmのポリプロピレンフィルム(基材フィルムの孔サイズ:0.50mm2、開孔率:20%)を用いて、実施例1と同様に粘着テープを作製した。
【0088】
<ダイシング時のチップ飛び評価>
実施例1~3、比較例1、2の各粘着テープを用いて、以下の加工条件でSiC(シリコンカーバイド)ウェーハをダイシングし、加工時のチップ飛びを以下の評価基準に従って評価した。評価結果を表1に各々示した。
(加工条件)
加工機:レーザーマイクロジェットダイシング装置
ダイシング速度:50mm/s
ウォータージェット径:50μm
ウェータージェット圧:40MPa
レーザー波長:532nm
ウェーハサイズ:8インチ
ウェーハ厚さ:100μm
チップサイズ:0.6mm×0.6mm
(評価基準)
◎:チップ飛び率が0%~0.1%未満
○:チップ飛び率が0.1%~3%未満
×:チップ飛び率が3%以上
【0089】
<基材の損傷、切断の確認>
前記条件でSiCウェーハをダイシングした後、ウェーハの切断部分をマイクロスコープ(50倍)で拡大して、基材フィルムの損傷、切断の有無を確認し、以下の基準に従って評価した。評価結果を表1に各々示した。
(評価基準)
○:基材フィルムの損傷および/または切断は見られない。
×:基材フィルムの損傷および/または切断が見られる。
【0090】
<チップへの糊残り評価>
前記条件でSiCウェーハをダイシングした後、粘着テープの基材面側からUV(紫外線)照射(高圧水銀ランプ、出力120W/cm、積算光量500mJ/cm2)を行い、個片化したチップ100個を粘着テープから剥がし、チップ裏面の糊残り(粘着剤層の転移)を目視確認し、以下の評価基準に従って評価した。評価結果を表2、表3に各々示した。
(評価基準)
◎:全てのチップで糊残りなし
○:糊残りのあるチップが1~2個
×:糊残りのあるチップが3個以上
【0091】