IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オルガノ株式会社の特許一覧

特開2023-183764凝集評価方法、凝集評価装置、凝集処理方法、および凝集処理システム
<>
  • 特開-凝集評価方法、凝集評価装置、凝集処理方法、および凝集処理システム 図1
  • 特開-凝集評価方法、凝集評価装置、凝集処理方法、および凝集処理システム 図2
  • 特開-凝集評価方法、凝集評価装置、凝集処理方法、および凝集処理システム 図3
  • 特開-凝集評価方法、凝集評価装置、凝集処理方法、および凝集処理システム 図4
  • 特開-凝集評価方法、凝集評価装置、凝集処理方法、および凝集処理システム 図5
  • 特開-凝集評価方法、凝集評価装置、凝集処理方法、および凝集処理システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183764
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】凝集評価方法、凝集評価装置、凝集処理方法、および凝集処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/32 20060101AFI20231221BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20231221BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20231221BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20231221BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20231221BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B01D21/32
B01D21/01 B
B01D21/24 F
B01D21/24 T
B01D21/30 A
C02F1/52 Z
G01N33/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097450
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 佳介
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA21
4D015CA14
4D015DB03
4D015DB07
4D015DB12
4D015DB15
4D015DB23
4D015DB30
4D015DB32
4D015EA03
4D015EA31
4D015EA32
4D015EA36
4D015EA37
(57)【要約】
【課題】凝集処理における凝集状態を適切に評価することができる凝集評価方法および凝集評価装置を提供する。
【解決手段】凝集処理で得られた凝集フロックを含む被評価水について清澄水と濃縮水とに分離を行う固液分離装置10の清澄水の水質および濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて凝集処理における凝集状態を評価する、凝集評価方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集処理で得られた凝集フロックを含む被評価水について清澄水と濃縮水とに分離を行う固液分離装置の前記清澄水の水質および前記濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて前記凝集処理における凝集状態を評価することを特徴とする凝集評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の凝集評価方法であって、
前記水質情報が、前記濃縮水の濁度と前記清澄水の濁度との濁度差であることを特徴とする凝集評価方法。
【請求項3】
請求項2に記載の凝集評価方法であって、
前記濁度差が小さくなったときに凝集悪化と判断し、前記濁度差が大きくなったときに凝集良好と判断することを特徴とする凝集評価方法。
【請求項4】
凝集処理で得られた凝集フロックを含む被評価水について清澄水と濃縮水とに分離を行う固液分離手段と、
前記清澄水の水質を測定する清澄水水質測定手段と、
前記濃縮水の水質を測定する濃縮水水質測定手段と、
を備え、
前記清澄水の水質および前記濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて前記凝集処理における凝集状態を評価することを特徴とする凝集評価装置。
【請求項5】
請求項4に記載の凝集評価装置であって、
前記水質情報が、前記濃縮水の濁度と前記清澄水の濁度との濁度差であることを特徴とする凝集評価装置。
【請求項6】
請求項5に記載の凝集評価装置であって、
前記濁度差が小さくなったときに凝集悪化と判断し、前記濁度差が大きくなったときに凝集良好と判断することを特徴とする凝集評価装置。
【請求項7】
被処理水に凝集剤を添加して凝集処理を行う凝集処理工程を含み、
前記凝集処理工程で得られた凝集フロックを含む被評価水について清澄水と濃縮水とに分離を行う固液分離装置の前記清澄水の水質および前記濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて前記凝集処理における凝集状態を評価することを特徴とする凝集処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の凝集処理方法であって、
前記清澄水の水質および前記濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて前記凝集処理工程における凝集処理の条件を制御することを特徴とする凝集処理方法。
【請求項9】
被処理水に凝集剤を添加して凝集処理を行う凝集処理装置と、
前記凝集処理装置で得られた凝集フロックを含む被評価水について清澄水と濃縮水とに分離を行う固液分離手段と、
前記清澄水の水質を測定する清澄水水質測定手段と、
前記濃縮水の水質を測定する濃縮水水質測定手段と、
を備え、
前記清澄水の水質および前記濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて前記凝集処理における凝集状態を評価することを特徴とする凝集処理システム。
【請求項10】
請求項9に記載の凝集処理システムであって、
前記清澄水の水質および前記濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて前記凝集処理装置における凝集処理の条件を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする凝集処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集評価方法、凝集評価装置、凝集処理方法、および凝集処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理において、被処理水中に無機凝集剤や高分子凝集剤等の凝集剤を添加して、懸濁物質等を凝集させてフロックを形成し、凝集フロックを固液分離装置で固液分離する凝集処理が行われる。
【0003】
このような凝集処理において、被処理水の一部または凝集剤添加後の被処理水の一部を分取し、メインの凝集固液分離装置とは別の固液分離装置に通水して、その処理水の水質を測定することによって判別できる凝集フロックの分離性から凝集の良否を評価したり、その評価結果に基づいてメインの凝集固液分離装置の凝集条件を制御することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
低濁度の被処理水を処理する場合、1段の固液分離装置では粒子を十分に分離できず、処理水の水質を測定しても凝集状態を適切に評価できない場合がある。また、固液分離装置における処理水の水質を測定し、凝集フロックの分離性から凝集状態を評価したり制御したりしようとした場合に、分離が不十分であるために、凝集状態の良否によらず処理水質が変わらない場合があり、凝集状態を適切に評価できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-181342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、凝集処理における凝集状態を適切に評価することができる凝集評価方法、凝集評価装置、およびそれらを用いる凝集処理方法、凝集処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、凝集処理で得られた凝集フロックを含む被評価水について清澄水と濃縮水とに分離を行う固液分離装置の前記清澄水の水質および前記濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて前記凝集処理における凝集状態を評価する、凝集評価方法である。
【0008】
前記凝集評価方法において、前記水質情報が、前記濃縮水の濁度と前記清澄水の濁度との濁度差であることが好ましい。
【0009】
前記凝集評価方法において、前記濁度差が小さくなったときに凝集悪化と判断し、前記濁度差が大きくなったときに凝集良好と判断することが好ましい。
【0010】
本発明は、凝集処理で得られた凝集フロックを含む被評価水について清澄水と濃縮水とに分離を行う固液分離手段と、前記清澄水の水質を測定する清澄水水質測定手段と、前記濃縮水の水質を測定する濃縮水水質測定手段と、を備え、前記清澄水の水質および前記濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて前記凝集処理における凝集状態を評価する、凝集評価装置である。
【0011】
前記凝集評価装置において、前記水質情報が、前記濃縮水の濁度と前記清澄水の濁度との濁度差であることが好ましい。
【0012】
前記凝集評価装置において、前記濁度差が小さくなったときに凝集悪化と判断し、前記濁度差が大きくなったときに凝集良好と判断することが好ましい。
【0013】
本発明は、被処理水に凝集剤を添加して凝集処理を行う凝集処理工程を含み、前記凝集処理工程で得られた凝集フロックを含む被評価水について清澄水と濃縮水とに分離を行う固液分離装置の前記清澄水の水質および前記濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて前記凝集処理における凝集状態を評価する、凝集処理方法である。
【0014】
前記凝集処理方法において、前記清澄水の水質および前記濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて前記凝集処理工程における凝集処理の条件を制御することが好ましい。
【0015】
前記凝集処理方法において、前記水質情報が、前記濃縮水の濁度と前記清澄水の濁度との濁度差であることが好ましい。
【0016】
前記凝集処理方法において、前記濁度差が小さくなったときに凝集悪化と判断し、前記濁度差が大きくなったときに凝集良好と判断することが好ましい。
【0017】
本発明は、被処理水に凝集剤を添加して凝集処理を行う凝集処理装置と、前記凝集処理装置で得られた凝集フロックを含む被評価水について清澄水と濃縮水とに分離を行う固液分離手段と、前記清澄水の水質を測定する清澄水水質測定手段と、前記濃縮水の水質を測定する濃縮水水質測定手段と、を備え、前記清澄水の水質および前記濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて前記凝集処理における凝集状態を評価する、凝集処理システムである。
【0018】
前記凝集処理システムにおいて、前記清澄水の水質および前記濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて前記凝集処理装置における凝集処理の条件を制御する制御手段をさらに備えることが好ましい。
【0019】
前記凝集処理システムにおいて、前記水質情報が、前記濃縮水の濁度と前記清澄水の濁度との濁度差であることが好ましい。
【0020】
前記凝集処理システムにおいて、前記濁度差が小さくなったときに凝集悪化と判断し、前記濁度差が大きくなったときに凝集良好と判断することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、凝集処理における凝集状態を適切に評価することができる凝集評価方法、凝集評価装置、およびそれらを用いる凝集処理方法、凝集処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る凝集評価装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る凝集評価装置における固液分離装置の一例である曲がりチャネルの流路断面の一例を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る凝集評価装置の他の例を示す概略構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る凝集評価装置を備える凝集処理システムの一例を示す概略構成図である。
図5】実施例1における濁度の経時変化を示すグラフである。
図6】比較例1における濁度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の実施形態に係る凝集評価装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0025】
図1の凝集評価装置1は、凝集処理で得られた凝集フロックを含む被評価水について清澄水と濃縮水とに分離を行う固液分離手段として、固液分離装置10と、清澄水の水質を測定する清澄水水質測定手段として、清澄水水質測定装置12と、濃縮水の水質を測定する濃縮水水質測定手段として、濃縮水水質測定装置14と、を備える。
【0026】
図1の凝集評価装置1において、固液分離装置10の入口には、被評価水配管16が接続されている。固液分離装置10の清澄水出口には、清澄水配管18が接続され、濃縮水出口には、濃縮水配管20が接続されている。清澄水配管18には、清澄水水質測定装置12が設置され、濃縮水配管20には、濃縮水水質測定装置14が設置されている。
【0027】
本実施形態に係る凝集評価方法および凝集評価装置1の動作について説明する。
【0028】
凝集処理で得られた凝集フロックを含む被評価水は、被評価水配管16を通して固液分離装置10に供給され、固液分離装置10において、清澄水と濃縮水とに分離される(固液分離工程)。清澄水は、清澄水配管18を通して排出され、濃縮水は、濃縮水配管20を通して排出される。
【0029】
清澄水配管18において、清澄水水質測定装置12によって清澄水の水質が測定され、清澄水の水質情報が取得される(清澄水水質測定工程)。濃縮水配管20において、濃縮水水質測定装置14によって濃縮水の水質が測定され、濃縮水の水質情報が取得される(濃縮水水質測定工程)。
【0030】
本実施形態に係る凝集評価方法および凝集評価装置では、固液分離装置10で清澄側と濃縮側とに分離を行い、清澄側と濃縮側の両方の水質情報に基づいて凝集状態を評価する。これによって、凝集処理における凝集状態を適切に評価することができる。また、低濁度(例えば、5度以下)の被評価水であっても、凝集処理における凝集状態を適切に評価することができる。固液分離装置10における分離が不十分であっても、凝集処理における凝集状態を適切に評価することができる。
【0031】
固液分離装置10は、例えば、曲がり配管を用いた曲がりチャネルによって発達したディーン渦を利用して分離するセルや、重力沈降、膜ろ過、砂ろ過等による固液分離装置が挙げられるが、分離速度やメンテナンス性等の観点から、ディーン渦を利用した曲がりチャネルが好ましい。
【0032】
曲がりチャネルは、被処理液(被評価水)を流入するための被処理液入口と、流体が流れるための例えば矩形状の1つの流路を有する配管が渦巻き状に形成された渦巻き状チャネルと、清澄水(チャネル処理水)を排出するための、流路の例えば外周側から分かれた清澄水出口と、濃縮水(チャネル濃縮水)を排出するための、流路の例えば内周側から分かれた濃縮水出口と、を有する。図2に曲がりチャネルの流路の断面を示すが、固体粒子(凝集物)を含む被処理液が被処理液入口から渦巻き状チャネルに導入されると、矩形状の流路の断面には二次流れ(ディーン渦)が生じる。これは遠心力による外向きの流れと、直進しようとする流れが外壁により強制的に曲げられることによる内向きへの圧力によるものである。
【0033】
固体粒子はこの二次流れ(ディーン渦)の中では内周側に集まるとされるが、固体粒子の密度、流路中を流れる流体の流束、流路の曲率等のバランスによっては、固体粒子が外周側に集まる場合もある。この場合には、曲がりチャネルは、流路の内周側から分かれた清澄水出口と、流路の外周側から分かれた濃縮水出口と、を有していてもよい。曲がりチャネルは、曲がりチャネルにおける固体粒子の密度、流路中を流れる流体の流束、流路の曲率等のバランスを調整することにより、固体粒子と液体との密度差と、重力と、流体力学的作用とによって、被処理液から固体粒子を分離することができる。
【0034】
曲がりチャネルは、曲率を有する壁面を含む流路を有するものであればよく、特に制限はない。曲がりチャネルは、例えば、曲率を有する壁面を含む1つの流路を有する配管が渦巻き状に形成されたものである。曲がりチャネルの流路の断面形状は、矩形状、円状、楕円状等が挙げられ、ディーン渦の形成のためには、流路の断面形状が矩形状であることが望ましい。すなわち、曲がりチャネルは、上壁面と下壁面と曲率を有する側壁面とを含む流路を有する。
【0035】
被処理液の流量に応じて曲がりチャネルの内側に固体粒子が濃縮されるのか、外側に濃縮されるのかが変わるため、チャネル処理水配管およびチャネル濃縮水配管は、被処理液の流量に応じて適宜変更してもよい。
【0036】
曲がりチャネルは、固体粒子の分離の目的に応じて決められた所定の曲率、長さ、および幅を有することが好ましい。
【0037】
固体粒子の分離に最適となる曲がりチャネルの仕様は、固体粒子の性状(密度、粒子径等)によって変化するため、流動解析ソフトを用いて決定することが望ましい。流動解析ソフトとしては、例えば、「ANSYS Fluent」(ANSYS社)等が挙げられる。
【0038】
清澄水および濃縮水の水質測定はバルブの切り替え等によって、1つの水質測定装置を使用して濃縮水と清澄水の両方の水質を測定してもよい。
【0039】
測定する水質としては、例えば、濁度、色度、有機物濃度(TOC)、pH、画像および画像解析により得られる数値(例えば、粒子数、粒子径、フロックの色、機械学習やディープラーニングを用いた画像解析およびフロックの状態評価)等が挙げられる。凝集状態を評価する場合には、水質測定装置の価格等を考慮して濁度を測定する濁度計が望ましい。
【0040】
水質情報は、例えば、濃縮水の濁度と清澄水の濁度との濁度差、濃縮水の濁度と清澄水の濁度との比率、または濃縮水の濁度と清澄水の濁度の合計値に対する清澄水濁度の比率等が挙げられる。例えば、水質情報として濃縮水の濁度と清澄水の濁度との濁度差を用いる場合、凝集が良好な状態では、固液分離装置10において濃縮水の濁度が上昇し、清澄水との濁度の差が大きくなる。一方で凝集状態が悪い場合には、濃縮水と清澄水の濁度の差が小さくなる。したがって、濃縮水の濁度と清澄水の濁度との濁度差が小さくなったときに凝集悪化と判断し、濁度差が大きくなったときに凝集良好と判断すればよい。
【0041】
被評価水の水質を測定する被評価水水質測定手段として、被評価水水質測定装置を例えば被評価水配管16に設置し、被評価水の水質を測定して、被評価水の水質、固液分離装置10の清澄水の水質および濃縮水の水質の水質情報に基づいて凝集処理における凝集状態を評価してもよい。これによって、凝集処理における凝集状態をより適切に評価することができる。
【0042】
凝集評価装置は、清澄水水質測定装置12により測定された清澄水の水質および濃縮水水質測定装置14により測定された濃縮水の水質に基づいて所定の出力を行う出力手段として、出力部を備えてもよい。清澄水水質測定装置12および濃縮水水質測定装置14には、出力部が設置されていてもよい。出力部は、清澄水水質測定装置12および濃縮水水質測定装置14のそれぞれに設置されていてもよいし、共通で1つ設置されていてもよい。清澄水水質測定装置12により測定された清澄水の水質および濃縮水水質測定装置14により測定された濃縮水の水質に基づいて、出力部において例えば凝集悪化を知らせる警報等の所定の出力が行われてもよい(出力工程)。
【0043】
出力部における出力としては、凝集悪化を知らせる表示や音等の視聴覚的に認知可能な警報の他に、凝集状態の変化に対応するための対応方法等が表示されてもよい。出力部は、例えば、情報を表示、出力することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示手段や、スピーカ等の音声出力手段等が挙げられる。例えば、警報の方法としては、制御盤のタッチパネル上に表示する、インターネット通信を介して運転員に通知する、監視室等に通知する等が挙げられる。
【0044】
出力部は、例えば濃縮水の濁度と清澄水の濁度との濁度差が所定の閾値を下回った場合に警報を出してもよい。警報の閾値は、1つに予め決めてもよいし、被処理水の濁度等の水質に応じて段階的、比例的に変化させてもよい。
【0045】
濃縮水と清澄水の濁度差をより明確にするために、固液分離を2段以上にしてもよい。固液分離を2段とした場合の凝集評価装置の一例を図3に示す。
【0046】
図3の凝集評価装置3は、凝集処理で得られた凝集フロックを含む被評価水について清澄水と濃縮水とに分離を行う固液分離手段として、第1固液分離装置30および第2固液分離装置32と、清澄水の水質を測定する清澄水水質測定手段として、清澄水水質測定装置36と、濃縮水の水質を測定する濃縮水水質測定手段として、濃縮水水質測定装置34と、を備える。
【0047】
図3の凝集評価装置3において、第1固液分離装置30の入口には、被評価水配管38が接続されている。第1固液分離装置30の第1清澄水出口と第2固液分離装置32の入口とは、第1清澄水配管40により接続され、第1固液分離装置30の第1濃縮水出口には、第1濃縮水配管42が接続されている。第2固液分離装置32の第2清澄水出口には、第2清澄水配管44が接続され、第2濃縮水出口には、第2濃縮水配管46が接続されている。第2清澄水配管44には、清澄水水質測定装置36が設置され、第1濃縮水配管42には、濃縮水水質測定装置34が設置されている。
【0048】
凝集処理で得られた凝集フロックを含む被評価水は、被評価水配管38を通して第1固液分離装置30に供給され、第1固液分離装置30において、第1清澄水と第1濃縮水とに分離される(第1固液分離工程)。第1濃縮水は、第1濃縮水配管42を通して排出される。
【0049】
第1固液分離装置30で得られた第1清澄水は、第1清澄水配管40を通して第2固液分離装置32に供給され、第2固液分離装置32において、第2清澄水と第2濃縮水とに分離される(第2固液分離工程)。第2清澄水は、第2清澄水配管44を通して排出され、第2濃縮水は、第2濃縮水配管46を通して排出される。
【0050】
第2清澄水配管44において、清澄水水質測定装置36によって第2清澄水の水質が測定され、第2清澄水の水質情報が取得される(清澄水水質測定工程)。第1濃縮水配管42において、濃縮水水質測定装置34によって第1濃縮水の水質が測定され、第1濃縮水の水質情報が取得される(濃縮水水質測定工程)。
【0051】
本実施形態に係る凝集評価方法および凝集評価装置では、第1固液分離装置30で清澄側と濃縮側とに分離を行い、第1固液分離装置30の清澄側について第2固液分離装置32で清澄側と濃縮側とに分離を行い、最終段の清澄側と第1段の濃縮側の両方の水質情報に基づいて凝集状態を評価する。これによって、凝集処理における凝集状態を適切に評価することができる。
【0052】
固液分離を2段以上にすることによって、清澄側と濃縮側との濁度差が明確になり、制御に利用しやすくなる。
【0053】
固液分離を2段以上とした場合、清澄水の水質測定は、最終段の固液分離装置の清澄水について行えばよく、濃縮水の水質測定は、第1段の固液分離装置の濃縮水について行えばよい。または、各段の濃縮水および最終段の清澄水について水質測定を行い、各段の濃縮側と最終段の清澄側の各水質情報に基づいて凝集状態を評価してもよい。
【0054】
濃縮水と清澄水の水質に応じて、メインフローとなる凝集処理装置における凝集処理の条件を制御してもよい。このような場合の凝集処理システムの一例を図4に示す。
【0055】
図4の凝集処理システム7は、被処理水に凝集剤を添加して凝集処理を行う凝集処理手段として、凝集処理装置5と、凝集処理における凝集状態を評価する凝集評価装置3と、を備える。凝集処理システム7における凝集評価装置3は、清澄水の水質および濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて凝集処理装置5における凝集処理の条件を制御する制御手段として、制御装置70を備えてもよい。
【0056】
凝集評価装置3は、凝集処理装置5における凝集処理で得られた凝集フロックを含む被評価水について清澄水と濃縮水とに分離を行う固液分離手段として、第1固液分離装置30および第2固液分離装置32と、清澄水の水質を測定する清澄水水質測定手段として、清澄水水質測定装置36と、濃縮水の水質を測定する濃縮水水質測定手段として、濃縮水水質測定装置34と、を備える。
【0057】
凝集処理装置5は、被処理水に凝集剤を添加して混和するための凝集混和手段として、凝集混和槽50と、形成されたフロックを含む凝集濃縮水と処理水とに分離するための分離手段として、分離装置52とを備える。凝集処理装置5は、凝集混和槽50と分離装置52との間に、混和された混和液中にフロックを形成するためのフロック形成手段として、フロック形成槽を設けてもよい。凝集処理装置5は、分離装置52の後段に、処理水についてろ過処理を行うろ過処理手段として、砂ろ過装置を備えてもよい。
【0058】
凝集処理装置5において、凝集混和槽50の入口には、被処理水配管54が接続されている。凝集混和槽50の出口と分離装置52の入口とは、凝集液配管56により接続されている。分離装置52の出口には、処理水配管58が接続されている。凝集混和槽50の薬剤入口には、凝集剤添加手段として、凝集剤添加配管60が接続されている。
【0059】
凝集混和槽50の被評価水出口と第1固液分離装置30の入口とは、被評価水配管38により接続されている。第1固液分離装置30の第1清澄水出口と第2固液分離装置32の入口とは、第1清澄水配管40により接続され、第1固液分離装置30の第1濃縮水出口には、第1濃縮水配管42が接続されている。第2固液分離装置32の第2清澄水出口には、第2清澄水配管44が接続され、第2濃縮水出口には、第2濃縮水配管46が接続されている。第2清澄水配管44には、清澄水水質測定装置36が設置され、第1濃縮水配管42には、濃縮水水質測定装置34が設置されている。
【0060】
制御装置70は、濃縮水水質測定装置34、清澄水水質測定装置36、凝集剤添加配管60に設置された凝集剤の添加量を調整する凝集剤添加量調整手段(図示せず)、例えば、バルブ、ポンプ等とは、有線または無線の電気的接続等によりそれぞれ接続されている。
【0061】
例えば、懸濁物質等を含む被処理水は、被処理水配管54を通して凝集混和槽50に送液される。凝集混和槽50において、凝集剤添加配管60を通して被処理水に凝集剤が添加され、急速撹拌されて凝集が行われ(凝集混和工程)、フロックが形成される(フロック形成工程)。凝集混和槽50の後段にフロック形成槽を設けてフロック形成槽においてフロックが形成されてもよい。凝集混和槽50において、被処理水にpH調整剤が添加されて、pH調整が行われてもよい(pH調整工程)。形成されたフロックを含む凝集液は、凝集液配管56を通して分離装置52へと送液されて、分離装置52において重力による沈降分離、ろ過等により固液分離が行われて、処理水が得られる(分離工程)(以上が、凝集処理工程)。処理水は、分離装置52の後段の砂ろ過装置へ送液され、砂ろ過装置においてろ過処理が行われてもよい(ろ過処理工程)。
【0062】
凝集処理装置5で得られた凝集フロックを含む凝集混和水は、凝集混和槽50から枝分かれして被評価水として被評価水配管38を通して第1固液分離装置30に供給され、第1固液分離装置30において、第1清澄水と第1濃縮水とに分離される(第1固液分離工程)。第1濃縮水は、第1濃縮水配管42を通して排出される。
【0063】
第1固液分離装置30で得られた第1清澄水は、第1清澄水配管40を通して第2固液分離装置32に供給され、第2固液分離装置32において、第2清澄水と第2濃縮水とに分離される(第2固液分離工程)。第2清澄水は、第2清澄水配管44を通して排出され、第2濃縮水は、第2濃縮水配管46を通して排出される。
【0064】
第2清澄水配管44において、清澄水水質測定装置36によって第2清澄水の水質が測定され、第2清澄水の水質情報が取得される(清澄水水質測定工程)。第1濃縮水配管42において、濃縮水水質測定装置34によって第1濃縮水の水質が測定され、第1濃縮水の水質情報が取得される(濃縮水水質測定工程)。
【0065】
本実施形態に係る凝集評価方法および凝集評価装置では、第1固液分離装置30および第2固液分離装置32で清澄側と濃縮側とに分離を行い、最終段の清澄側と第1段の濃縮側の両方の水質情報に基づいて凝集状態を評価する。これによって、凝集処理における凝集状態を適切に評価することができる。
【0066】
この水質測定結果に基づき、制御装置70により凝集処理装置5における凝集剤の注入率等の凝集条件が制御される(制御工程)。
【0067】
制御装置70は、例えば、プログラムを演算するCPU等の演算手段、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAM等の記憶手段等を含んで構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。制御装置70は、例えば、清澄水水質測定装置36、濃縮水水質測定装置34によって測定された清澄水の水質および濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて、凝集処理装置5における凝集処理の条件を制御する機能を有する。制御装置70は、例えば、清澄水水質測定装置36、濃縮水水質測定装置34によって測定された清澄水の水質および濃縮水の水質の両方の水質情報に基づいて、凝集処理装置5における凝集剤添加配管60に設置されたポンプの流量やバルブの開閉度等を調整して、被処理水への凝集剤の添加量を制御する機能を有する。
【0068】
本実施形態に係る凝集処理システムで用いられる凝集剤としては、無機凝集剤および高分子凝集剤のうちの少なくとも1つが用いられる。
【0069】
無機凝集剤としては、例えば、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の鉄系無機凝集剤、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム系無機凝集剤等が挙げられる。
【0070】
無機凝集剤の添加量は、例えば、1~100mg/Lの範囲である。
【0071】
高分子凝集剤としては、ノニオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤またはカチオン性高分子凝集剤等、特に制限されるものではないが、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミド・アクリル酸塩共重合体、アクリルアミドプロパンスルフォン酸ナトリウム、キトサン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびポリアミジン等が挙げられる。高分子凝集剤は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
高分子凝集剤の添加量は、例えば、0.1~2mg/Lの範囲である。
【0073】
pH調整剤としては、塩酸、硫酸等の酸や、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤である。pHは、例えば、4~11の範囲に調整すればよい。
【0074】
凝集処理(凝集混和工程、フロック形成工程、分離工程)における液温度は、特に制限はなく、例えば、15~35℃の範囲である。粘性等によって分離性が変わるため、液温度はできるだけ一定になるように調整することが望ましい。
【0075】
凝集処理システムにおける処理対象である被処理水は、例えば、懸濁物質等を含む水であり、例えば、河川水、工業用水、排水等が挙げられる。
【実施例0076】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
<実施例1>
図3の凝集評価装置を用いて、下記の条件で試験水の固液分離を行った。処理開始から80分~260分で純水を添加し、意図的に凝集を悪化させた。濁度の経時変化を図5に示す。
【0078】
(実験条件)
試験水:濁度2度、凝集剤:ポリ塩化アルミニウム(PAC)40ppm、pH:4.0
第1固液分離装置、第2固液分離装置:曲がりチャネル
清澄水水質測定装置、濃縮水水質測定装置:濁度計(OPTEX製、TC-100)
【0079】
<比較例1>
図1の凝集評価装置を用いて、実施例1と同じ試験水の固液分離を行った。比較例1では、清澄側の濁度を測定し、濃縮側の濁度は測定せずに処理を行った。濁度の経時変化を図6に示す。
【0080】
実施例1では、凝集が良好なときは、濃縮側と清澄側の濁度差が大きく、凝集が悪化したときに差が小さくなることが確認できる。
【0081】
実施例1では、凝集の悪化を検知したとして、260分には水酸化ナトリウム水溶液を添加して試験水のpHを7.0±0.1に調整した。濁度の差が所定値を下回り、所定の時間が経過した後に、凝集条件の見直しを行った(今回の実験では水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHの最適化を実施した)結果、濁度の差が再び大きくなった。
【0082】
比較例1の清澄側の濁度の結果を見ると、凝集の良否によらず濁度に変化が見られないことがわかる。変化がなければ、凝集処理装置の制御に利用することができない。
【0083】
各時間における凝集沈殿の処理水濁度を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例1では凝集悪化を検知して、凝集状態を回復することができ、沈殿処理水濁度の上昇は一時的であり、その後、回復した。比較例1では凝集悪化を検知することができないため、沈殿処理水濁度が上昇し続けた。
【0086】
このように、実施例の方法によって、凝集処理における凝集状態を適切に評価することができた。
【符号の説明】
【0087】
1,3 凝集評価装置、5 凝集処理装置、7 凝集処理システム、10 固液分離装置、12,36 清澄水水質測定装置、14,34 濃縮水水質測定装置、16,38 被評価水配管、18 清澄水配管、20 濃縮水配管、30 第1固液分離装置、32 第2固液分離装置、40 第1清澄水配管、42 第1濃縮水配管、44 第2清澄水配管、46 第2濃縮水配管、50 凝集混和槽、52 分離装置、54 被処理水配管、56 凝集液配管、58 処理水配管、60 凝集剤添加配管、70 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6