(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183768
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20231221BHJP
C08G 59/18 20060101ALI20231221BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20231221BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231221BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20231221BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08G59/18
C08K5/103
C08K3/013
H01L23/30 R
H01L23/12 501P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097464
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】室田 裕香
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J002CC072
4J002CC07X
4J002CD061
4J002CD06W
4J002CD071
4J002CD07W
4J002DJ016
4J002EH047
4J002FD016
4J002FD027
4J002GQ05
4J036AA05
4J036AE05
4J036AF05
4J036AJ14
4J036FB08
4J036GA04
4J036JA07
4M109AA01
4M109BA07
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB08
4M109EB09
4M109EB13
4M109EB19
4M109EC04
(57)【要約】
【課題】硬化物の低線膨張係数と低弾性率とが両立され、外観を好ましいものとする封止材を得る。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材、および(D)低応力材を含み、成分(D)が、成分(A)とのハンセン溶解度パラメータの距離が8.5MPa1/2以上9.9MPa1/2以下である第一低応力材を一種以上含む、封止用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、
(C)無機充填材、および
(D)低応力材
を含み、
前記成分(D)が、前記成分(A)とのハンセン溶解度パラメータの距離が8.5MPa1/2以上9.9MPa1/2以下である第一低応力材を一種以上含む、封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記第一低応力材がトリグリセリドを含む、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記トリグリセリド中の三つの脂肪酸残基がすべて同じである、請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
当該封止用樹脂組成物中の前記成分(D)の含有量が、当該封止用樹脂組成物全体に対して0.1質量%以上2.5質量%以下である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記成分(A)が、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1乃至3いずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
ウェーハレベルパッケージ(WLP)またはパネルレベルパッケージ(PLP)の封止に用いられる、請求項1乃至3いずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
顆粒状である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物である、硬化体。
【請求項9】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の封止用樹脂組成物により複数個の電子部品が一括して封止されているウェーハレベルパッケージ。
【請求項10】
請求項1乃至3いずれか一項に記載の封止用樹脂組成物により複数個の電子部品が一括して封止されているパネルレベルパッケージ。
【請求項11】
請求項9に記載のウェーハレベルパッケージが個片化された電子装置。
【請求項12】
請求項10に記載のパネルレベルパッケージが個片化された電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
封止用樹脂組成物に関する技術として、特許文献1(特開2002-146163号公報)に記載のものがある。同文献には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび無機質充填剤を必須成分とし、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよび無機質充填剤を樹脂組成物に対してそれぞれ特定の割合で含有してなる封止用樹脂組成物について記載されており(請求項1)、ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、具体的には、ペンタオレイン酸デカグリセリルが記載されている(段落0013、実施例1~3)。また、同文献には、同文献における封止用樹脂組成物は成形性に優れ、かつ電気特性にも優れ、充填性や作業性が良いため、この樹脂組成物を電子部品の封止に使用することにより、半導体封止装置の作業性、性能の両面で改善をはかることができると記載されている(段落0034)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載の技術について本発明者らが検討したところ、硬化物の低線膨張係数と低弾性率とを両立するとともに外観を好ましいものとするという点で改善の余地があることが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の封止用樹脂組成物、硬化体、ウェーハレベルパッケージ、パネルレベルパッケージおよび電子装置が提供される。
[1] (A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、
(C)無機充填材、および
(D)低応力材
を含み、
前記成分(D)が、前記成分(A)とのハンセン溶解度パラメータの距離が8.5MPa1/2以上9.9MPa1/2以下である第一低応力材を一種以上含む、封止用樹脂組成物。
[2] 前記第一低応力材がトリグリセリドを含む、[1]に記載の封止用樹脂組成物。
[3] 前記トリグリセリド中の三つの脂肪酸残基がすべて同じである、[2]に記載の封止用樹脂組成物。
[4] 当該封止用樹脂組成物中の前記成分(D)の含有量が、当該封止用樹脂組成物全体に対して0.1質量%以上2.5質量%以下である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の封止用樹脂組成物。
[5] 前記成分(A)が、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の封止用樹脂組成物。
[6] ウェーハレベルパッケージ(WLP)またはパネルレベルパッケージ(PLP)の封止に用いられる、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の封止用樹脂組成物。
[7] 顆粒状である、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の封止用樹脂組成物。
[8] [1]乃至[7]いずれか一つに記載の封止用樹脂組成物の硬化物である、硬化体。
[9] [1]乃至[7]いずれか一つに記載の封止用樹脂組成物により複数個の電子部品が一括して封止されているウェーハレベルパッケージ。
[10] [1]乃至[7]いずれか一つに記載の封止用樹脂組成物により複数個の電子部品が一括して封止されているパネルレベルパッケージ。
[11] [9]に記載のウェーハレベルパッケージが個片化された電子装置。
[12] [10]に記載のパネルレベルパッケージが個片化された電子装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、硬化物の低線膨張係数と低弾性率とが両立され、外観を好ましいものとする封止材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における電子装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】実施形態における電子装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは二種以上を組み合わせて含むことができる。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、以上、以下を表し、両端の数値をいずれも含む。
【0009】
(封止用樹脂組成物)
本実施形態において、封止用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも呼ぶ。)は、以下の成分(A)~(D)を含む。
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、
(C)無機充填材、および
(D)低応力材
そして、成分(D)は、成分(A)とのハンセン溶解度パラメータの距離が8.5MPa1/2以上9.9MPa1/2以下である第一低応力材を一種以上含む。
【0010】
本発明者は、硬化物の線膨張係数と弾性率をいずれも低下させることを検討した。その結果、樹脂組成物が成分(A)~(D)を組み合わせて含むとともに、成分(D)が、成分(A)とのハンセン溶解度パラメータの距離(以下、「ΔHSP」とも呼ぶ。)が特定の範囲にある第一低応力材を一種以上含む構成とすることにより、硬化物の線膨張係数と弾性率という、本来、トレードオフの関係にある特性を、いずれも好適に低下することができることを新たに見出した。
樹脂組成物を上記構成とすることにより、線膨張係数および弾性率が低下する理由は必ずしも明らかではないが、樹脂組成物における第一低応力材の分散の程度が好ましいものとなり、樹脂組成物の中に第一低応力材由来のドメインが好ましいサイズで生じることが考えられる。
すなわち、本発明者は、線膨張係数および弾性率を低下するための指標として、新たに、成分(A)と、第一低応力材とのΔHSPに着目した。そして、ΔHSPが特定の範囲にある第一低応力材とを組み合わせて用いるとともに、これらを成分(B)および(C)と組み合わせて用いることにより、硬化物の線膨張係数および弾性率が好ましく低下される樹脂組成物が得られることを見出した。
【0011】
本実施形態において、成分(A)と第一低応力材とのΔHSPは、線膨張係数低下の観点から、8.5MPa1/2以上であり、好ましくは8.7MPa1/2以上、より好ましくは8.9MPa1/2以上である。
また、硬化物の外観を好ましいものとする観点から、成分(A)と第一低応力材とのΔHSPは、9.9MPa1/2以下であり、好ましくは9.6MPa1/2以下、さらに好ましくは9.3MPa1/2以下である。
【0012】
ここで、ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は、ある物質が他のある物質にどのくらい溶けるのかという溶解性を表す指標である。HSPでは、溶解性を3次元のベクトルで表す。この3次元ベクトルは、代表的には、分散項(δd)、極性項(δp)、水素結合項(δh)で表すことができる。そしてベクトルが似ているもの同士は、溶解性が高いと判断できる。ベクトルの類似度をΔHSPで判断することが可能である。
【0013】
ハンセンとアボットが開発したコンピューターソフトウエアHSPiPには、ΔHSPを計算する機能と様々な樹脂と溶媒もしくは非溶媒のハンセンパラメーターを記載したデータベースが含まれている。そして、本明細書で用いている、HSP値は、HSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice)というソフトを用いて算出することができる。たとえば、HSPiP 3rd versionに含まれるSolvent listとPolymer listに記載されている値を25℃に補正したものを参照してもよい。ここで、Solvent listに記載されていない樹脂と溶媒もしくは非溶媒については、Y-MBと呼ばれるニューラルネットワーク法を用いた推算方法により算出できる。分子構造をHSPiPに付属のY-MB計算ソフトに入力することで、自動的に原子団に分解し、HSP値と分子体積が計算される。
【0014】
ΔHSPは、具体的には下記式(1)に示すR2で表される。
本実施形態において、ΔHSPは、たとえば、成分(A)のHSPを(d1,p1,h1)とし、第一低応力材のHSPを(d2,p2,h2)としたとき、下記の式(1)により算出することができる。
【0015】
【0016】
本実施形態においては、樹脂組成物が成分(A)~(D)を組み合わせて含み、成分(D)が、成分(A)とのΔHSPが特定の範囲にある第一低応力材を一種以上含むため、硬化物の線膨張係数と弾性率という、本来、トレードオフの関係にある特性を、いずれも好適に低下することができる。このため、WLP、PLP等の大面積の封止を伴う場合にも、基材の反りを効果的に抑制することができる。
以下、樹脂組成物に含まれる成分についてさらに具体的に説明する。
【0017】
(成分(A))
成分(A)は、エポキシ樹脂である。
エポキシ樹脂は、たとえば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等に例示されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;およびジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上である。
【0018】
樹脂組成物の硬化物の反り抑制や、充填性、耐熱性、耐湿性等の諸特性のバランスを向上する観点から、成分(A)は、好ましくはビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0019】
成分(A)において、HSPの極性項(P)、水素項(H)および分散項(D)は、具体的には第一低応力材とのΔHSPが上述の範囲となる数値とすることができる。
成分(A)のHSPの極性項(P)は、好ましくは3.0MPa1/2以上であり、より好ましくは4.0MPa1/2以上、さらに好ましくは5.0MPa1/2以上である。
また、成分(A)のHSPの極性項(P)は、7.5MPa1/2以下であり、より好ましくは6.5MPa1/2以下、さらに好ましくは5.5MPa1/2以下である。
【0020】
成分(A)のHSPの水素項(H)は、好ましくは2.0MPa1/2以上であり、より好ましくは3.0MPa1/2以上、さらに好ましくは4.0MPa1/2以上である。
また、成分(A)のHSPの水素項(H)は、6.5MPa1/2以下であり、より好ましくは5.5MPa1/2以下、さらに好ましくは4.5MPa1/2以下である。
【0021】
成分(A)のHSPの分散項(D)は、好ましくは18.0MPa1/2以上であり、より好ましくは19.0MPa1/2以上、さらに好ましくは20.3MPa1/2以上である。
また、成分(A)のHSPの分散項(D)は、22.5MPa1/2以下であり、より好ましくは21.5MPa1/2以下、さらに好ましくは20.5MPa1/2以下である。
これにより、低線膨張係数と低弾性率を両立することができる。
【0022】
ここで、成分(A)のHSPは前述の方法で算出される。
また、成分(A)が二種以上のエポキシ樹脂を含むとき、成分(A)のHSPの各項は、各成分のHSPの数値と質量分率との積の総和として求めることができる。
【0023】
樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、成形性向上の観点から、樹脂組成物全体に対して好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらにより好ましくは5質量%以上である。
また、成形時の収縮抑制の観点から、樹脂組成物中の成分(A)の含有量は、樹脂組成物全体に対して好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0024】
(成分(B))
成分(B)は、硬化剤である。
硬化剤としては、たとえば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2~20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等のアミン類;
アニリン変性レゾール樹脂やジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;
フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;
トリヒドロキシフェニルメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;
フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;
ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;
上記以外のフェノール樹脂;
ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;
ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等を含む酸無水物等;
ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;ならびに
カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
また、成分(B)は、好ましくはフェノールノボラック樹脂、トリスフェニルメタン混合型フェノール樹脂およびビフェニルアラルキル型フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含み、より好ましくはトリスフェニルメタン混合型フェノール樹脂およびビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を含む。
【0025】
樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、硬化特性向上の観点から、樹脂組成物全体に対し、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらにより好ましくは1.5質量%以上、さらにより好ましくは2質量%以上である。
また、成形時の流動性や充填性を向上する観点から、樹脂組成物中の成分(B)の含有量は、樹脂組成物全体に対し、好ましくは10.0質量%以下であり、より好ましくは7.0質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下、さらにより好ましくは3.0質量%以下である。
【0026】
(成分(C))
成分(C)は、無機充填材である。成分(C)として、たとえば、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ;アルミナ;タルク;酸化チタン;窒化珪素;窒化アルミニウムが挙げられる。
成分(C)は、汎用性に優れている観点から、好ましくはシリカを含み、より好ましくはシリカである。
シリカの形状の一例として、溶融球状シリカ等の球状シリカ、破砕シリカが挙げられる。
【0027】
成分(C)の平均粒径d50は、成形時の収縮抑制の観点から、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上である。
また、成形時の充填性を向上する観点から、成分(C)の平均粒径d50は、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、さらにより好ましくは5μm以下である。
【0028】
ここで、成分(C)の平均粒径d50は、市販のレーザー式粒度分布計(たとえば、島津製作所社製 SALD-7000)で測定したときの平均粒径である。
【0029】
樹脂組成物中の成分(C)の含有量は、反り抑制の観点から、樹脂組成物全体に対し、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
また、成形時の流動性や充填性向上の観点から、樹脂組成物中の成分(C)の含有量は、樹脂組成物全体に対し、好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、さらにより好ましくは88質量%以下である。
【0030】
(成分(D))
成分(D)は、低応力材である。前述のとおり、成分(D)は上記第一低応力材を一種以上含む。また、成分(D)は、他の低応力材をさらに含んでもよい。
【0031】
第一低応力材において、HSPの極性項(P)、水素項(H)および分散項(D)は、具体的には成分(A)とのΔHSPが上述の範囲となる数値とすることができる。
第一低応力材のHSPの極性項(P)は、たとえば0.5MPa1/2以上であり、好ましくは1.0MPa1/2以上であり、また、たとえば3.5MPa1/2以下であり、好ましくは2.0MPa1/2以下である。
第一低応力材のHSPの水素項(H)は、たとえば0.05MPa1/2以上であり、好ましくは1.2MPa1/2以上であり、また、たとえば3.6MPa1/2以下であり、好ましくは2.0MPa1/2以下である。
また、第一低応力材のHSPの分散項(D)は、たとえば12.0MPa1/2以上であり、好ましくは15.0MPa1/2以上であり、また、たとえば20.0MPa1/2以下であり、好ましくは18.0MPa1/2以下である。
【0032】
成分(D)が二種以上の第一低応力材を含むとき、第一低応力材のHSPの各項は、各成分のHPSの数値と質量分率との積として求めることができる。
【0033】
第一低応力材は、線膨張係数低下および弾性率低下の観点から、好ましくはトリグリセリドを含み、より好ましくはトリグリセリドである。
トリグリセリド一分子中の三つの脂肪酸残基は同種であっても異種であってもよく、線膨張係数低下および弾性率低下の観点から、好ましくは三つの脂肪酸残基がすべて同じである。
【0034】
トリグリセリドにおける三つの脂肪酸残基は、独立して、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸残基である。トリグリセリドは、三つの飽和脂肪酸残基を含むものであってもよいし、一つの不飽和脂肪酸残基と二つの飽和脂肪酸残基とを含むものであってもよいし、二つの不飽和脂肪酸残基と一つの飽和脂肪酸残基とを含むものであってもよいし、三つの不飽和脂肪酸残基とを含むものであってもよい。
【0035】
トリグリセリド中の脂肪酸残基における脂肪酸の炭素数は、たとえば8以上であり、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは14以上、さらにより好ましくは16以上であり、また、たとえば24以下であり、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
脂肪酸残基における脂肪酸の具体例として、パルミチン酸(炭素数:二重結合数=C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)が挙げられる。
また、脂肪酸は置換基を有してもよく、かかる脂肪酸残基として、たとえば、12-ヒドロキシステアリン酸、2-エチルヘキサン酸が挙げられる。
【0036】
樹脂組成物中での分散性向上の観点から、トリグリセリドは25℃で液状、すなわち25℃で流動性を有する。
同様の観点から、トリグリセリドのヨウ素価は、好ましくは100以上であり、より好ましくは105以上、さらに好ましくは110以上である。
また、耐熱性向上の観点から、トリグリセリドのヨウ素価は、好ましくは250以下であり、好ましくは230以下、より好ましくは210以下、さらに好ましくは180以下である。
【0037】
第一低応力材は二種以上のトリグリセリドの混合物を含んでもよい。
また、第一低応力材は、樹脂組成物中での分散性向上の観点から、植物油であることも好ましい。
植物油の具体例として、大豆油、亜麻仁油、菜種油、サンフラワー油、コーン油、オリーブ油、紅花油、コメ油、パーム油、ヤシ油、ゴマ油およびエゴマ油からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。組成物中での分散性向上の観点から、第一低応力材は、好ましくは大豆油、亜麻仁油、菜種油およびサンフラワー油からなる群から選択される一種または二種以上である。
【0038】
樹脂組成物中の第一低応力材の含有量は、反り抑制の観点から、樹脂組成物全体に対し、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、さらにより好ましくは1.5質量%以上である。
また、機械強度向上の観点から、樹脂組成物中の第一低応力材の含有量は、樹脂組成物全体に対し、好ましくは3.0質量%以下であり、より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは2.3質量%以下である。
【0039】
成分(D)のうち、第一低応力材以外のものとして、たとえば、シリコーンオイルが挙げられる。
シリコーンオイルとして、具体的には、オルガノポリシロキサンが挙げられる。ここで、オルガノポリシロキサンとしては、その構造中にエポキシ基、アミノ基、メトキシ基、フェニル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、ポリエーテル基などの官能基を導入したものを用いてもよい。オルガノポリシロキサンがその構造中に導入する官能基としては、たとえば、カルボキシ基、エポキシ基およびポリエーテル基からなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。また、シリコーンオイルを含む市販品としては、たとえば、ダウ・東レ社製のFZ-3730、BY-750などが挙げられる。
【0040】
第一低応力材を含む成分(D)の総含有量は、反り抑制の観点から、樹脂組成物全体に対して好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。
また、機械強度向上の観点から、第一低応力材を含む成分(D)の総含有量は、好ましくは3.0質量%以下であり、より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは2.3質量%以下である。
【0041】
樹脂組成物は、成分(A)~(D)以外の成分をさらに含んでもよい。たとえば、樹脂組成物は、硬化促進剤、カップリング剤、離型剤、イオンキャッチャー、着色剤およびその他の添加剤からなる群から選択される一種または二種以上をさらに含んでもよい。
【0042】
(硬化促進剤)
硬化促進剤として、たとえば、成分(A)のエポキシ樹脂と成分(B)の硬化剤との架橋反応を促進させるものを用いることができる。硬化促進剤の一例として、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、上記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される一種または二種以上を含むことができる。
【0043】
樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、硬化性を向上する観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。
また、硬化物の製造安定性を高める観点から、樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0044】
(カップリング剤)
カップリング剤は、たとえば、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシシラン、メルカプトシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランやフェニルアミノシラン等のアミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン系化合物;チタン系化合物;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤から選択される一種または二種以上を含むことができる。
硬化物の強度および靭性をバランス良く向上する観点から、カップリング剤は、好ましくはシランカップリング剤であり、アミノシランおよびエポキシシランの少なくとも一種であることがより好ましい。
【0045】
樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、硬化性を向上する観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。
また、硬化物の製造安定性を高める観点から、樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以下である。
【0046】
離型剤は、たとえば、カルナバワックス等の天然ワックス;酸化ポリエチレンワックス、モンタン酸エステルワックス、1-アルケン(C>10)・マレイン酸無水物の重縮合物とステアリルアルコールとの反応生成物等の合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類;ならびにパラフィンから選択される一種または二種以上を含むことができる。
樹脂組成物中の離型剤の含有量は、離型性および硬化特性をより好ましいものとする観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
【0047】
イオンキャッチャーは、たとえば、ハイドロキシタルサイトを含む。
樹脂組成物中のイオンキャッチャーの含有量は、硬化物の信頼性向上の観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0048】
着色剤は、たとえば、カーボンブラック、黒色酸化チタン、ベンガラおよび有機色素などからなる群から選択される一種以上を含む。
樹脂組成物中の着色剤の含有量は、硬化物の外観をより好ましいものとする観点から、樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0049】
また、その他の添加剤として、たとえば、難燃剤または酸化防止剤であって、成分(A)~(D)以外のものが挙げられる。
【0050】
次に、樹脂組成物の性状、物性等を説明する。
樹脂組成物の性状は、たとえば液状または固形状であり、大面積の基材上に封止材を形成する際にも成形時の製造安定性を好ましいものとする観点から、好ましくは固形状であり、より好ましくは顆粒状である。顆粒状の樹脂組成物は、例えば、樹脂組成物の粉末(粉粒状の混練物)同士を固めた凝集体または公知の造粒法で得られた造粒物にしてもよい。
【0051】
樹脂組成物が顆粒状であるとき、その平均粒径は、樹脂組成物の取扱性向上の観点から、好ましくは0.03mm以上であり、より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.1mm以上である。
また、充填性向上の観点から、樹脂組成物の平均粒径は、好ましくは3.0mm以下であり、より好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。
【0052】
ここで、樹脂組成物の粒径分布は、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、島津製作所社製、SALD-7000)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定することができる。
【0053】
(線膨張係数)
樹脂組成物のガラス転移温度未満の温度における線膨張係数CTE1は、反り抑制の観点から、好ましくは9.0ppm/℃以下であり、より好ましくは8.5ppm/℃以下、さらに好ましくは8.0ppm/℃以下である。
CTE1の下限は限定されないが、使用するシリコンウェーハの線膨張係数以上であることが好ましく、また、たとえば3.5ppm/℃以上であってもよい。
ここで、線膨張係数は、具体的には、以下の方法で測定される。
【0054】
(線膨張係数の測定方法)
トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間180秒で、樹脂組成物を注入成形し、長辺15mm×短辺4.5mm×厚さ3mmの試験片を得る。試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(日立ハイテクサイエンス製、TMA7100)を用いて、圧縮モードで、測定温度範囲-60℃~400℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定をおこなう。測定結果から、50℃から70℃までの平均線膨張係数を算出してCTE1とする。
【0055】
(曲げ弾性率)
樹脂組成物の硬化物の25℃における曲げ弾性率は、ハンドリング性向上の観点から、好ましくは10GPa以上であり、より好ましくは15GPa以上、さらに好ましくは20GPa以上である。
また、反り抑制の観点から、樹脂組成物の硬化物の25℃における曲げ弾性率は、好ましくは35GPa以下であり、より好ましくは30GPa以下、さらに好ましくは25GPa以下である。
硬化物の曲げ弾性率は、後述の方法で測定される。
【0056】
(曲げ強度)
樹脂組成物の硬化物の25℃における曲げ強度は、機械強度向上の観点から、たとえば100MPa以上であってよく、好ましくは130MPa以上であり、より好ましくは140MPa以上である。
また、硬化物が硬すぎることによる脆性破壊防止の観点から、樹脂組成物の硬化物の25℃における曲げ強度は、好ましくは250MPa以下であり、より好ましくは220MPa以下、さらに好ましくは180MPa以下である。
硬化物の曲げ弾性率および曲げ強度は、以下の方法で測定される。
【0057】
(曲げ弾性率および曲げ強度の測定方法)
トランスファー成形装置を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間180秒間で、樹脂組成物を注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの成形品を得る。得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して、試験片を得る。得られた試験片の25℃における曲げ弾性率および曲げ強度をJIS K 6911に準拠して測定する。
【0058】
樹脂組成物は、好ましくは、ウェーハレベルパッケージ(Wafer Level Package:WLP)またはパネルレベルパッケージ(Panel Level Package:PLP)の封止に用いられる。
WLPとは、典型的には、ウェーハプロセスにて再配線や電極形成、樹脂封止およびダイシングまでをすべて行い、最終的にウェーハを切断した半導体チップの大きさがそのままパッケージの大きさとなるものをいう。
また、PLPとは、具体的には、WLPに用いる通常のウェーハ(たとえば12インチウェーハ)よりも大きい、パネル状の基板を用いて、電子装置を一括製造する技術である。
WLPおよびPLPは、いずれも、比較的小さな半導体チップ1つ1つの封止ではない、大面積の基材の一括的な封止、を伴う。
【0059】
次に、樹脂組成物の製造方法を説明する。本実施形態において、樹脂組成物は、たとえば、上述した各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕する方法により得ることができる。また、必要に応じて、上記方法における粉砕後にタブレット状に打錠成形してもよい。また得られた樹脂組成物について、適宜分散度や流動性等を調整してもよい。
【0060】
(硬化体)
本硬化体は、本実施形態における樹脂組成物の硬化物である。硬化体は、たとえば封止材として好適に用いられる。
硬化体は、具体的には、成分(C)により構成される部分と、それ以外の有機成分により構成される部分とを含む。このうち、有機成分により構成される部分は、線膨張率および弾性率の低下の観点から、好ましくは、第一低応力材を含むドメインと成分(A)を含むドメインとを有する。第一低応力材を含むドメインのサイズは、たとえば数μm~数10μm程度であってよい。
【0061】
(WLP、PLP)
WLPおよびPLPでは、本実施形態における樹脂組成物により複数個の電子部品が一括して封止されている。
また、電子装置は、上記WLPまたはPLPが個片化されたものである。
【0062】
以下、電子装置の製造方法の一例を図面を参照しつつ説明する。
図1(a)~
図1(f)は、本実施形態における樹脂組成物により複数個の電子部品が一括して封止されたWLPまたはPLPを得、そして個片化により電子装置50(
図1(f))を得る工程を模式的に示すものである。
【0063】
図1(a)に示したように、まず、配設工程として、基材10上に、不図示の複数の電子部品を配設する。これにより回路面21を形成する。
基材10は、電子装置の分野で知られている各種の基材を用いることができる。なお、典型的には、回路面21にはSiNなどが露出している。
基材10の大きさおよび形状は、WLPの場合、たとえば、直径12インチの円形状であり、PLPの場合、たとえば、縦300~800mm、横300~800mmの略長方形状である。
【0064】
次に、回路面21の上に、後述の半田ボール96(
図1(e))と電子部品とを電気的に接続するために、メタルポストなどのバンプ22を形成する(
図1(b))。
次いで、封止工程として、本実施形態における樹脂組成物を用いて、回路面21を覆うように封止材層30を形成する(
図1(c))。
そして、封止材層30を削ることで、封止材層30からバンプ22を露出させる(
図1(d))。なお、封止材層30を形成する際に、
図1(d)のように、バンプ22が露出するように封止材層30を形成する場合、封止材層30は削らなくてもよい。
次に、配線工程として、バンプ22に半田ボール96を接続する(
図1(e))。
そして、個片化工程として、封止材層30および基材10を切断し、電子装置50を得る(
図1(f))。切断にはダイシングブレードやレーザなどを用いることができる。なお、個片化する電子装置50に接続されるバンプ22および半田ボール96の数は限定されず、電子装置50の種類に応じて設定することができる。
【0065】
図2(a)~
図2(g)は、
図1(f)に示した電子装置50とは別の電子装置52(
図2(g))を得る工程を模式的に示すものである。この工程は、いわゆるFaN-Out型パッケ-ジの電子装置の製造に好ましく適用されるものである。
【0066】
まず、基材10上に剥離層71が設けられた犠牲材70を準備する。そして、配設工程として、犠牲材70の剥離層71の上に、複数の電子部品20を、互いに離間するように配設する(
図2(a))。
剥離層71としては、たとえば、接着力の低い接着剤や、発泡剤を含む樹脂などを用いることができる。これにより、後述する剥離工程にて、剥離層71と、電子部品20および封止材層30とを容易に剥離することができる。
【0067】
次に、封止工程として、本実施形態における樹脂組成物を用いて、隣接する電子部品の間に存在する間隙を埋設し、さらに、剥離層71およびすべての電子部品20の表面を覆うように電子部品を封止する。これにより封止材層30を形成する(
図2(b))。
【0068】
続いて、剥離工程として、剥離層71を封止材層30から剥離する(
図2(c))。
剥離の方法は、たとえば、加熱処理、電子線照射、紫外線照射などにより、熱発泡性粘着剤からなる剥離層71を発泡させることで行うことができる。また、剥離層71が、接着力の低い接着剤からなる場合、発泡などを行わずに剥離工程を行うことができる。
【0069】
次いで、配線工程として、封止材層30の電子部品20の側の面に再配線用絶縁樹脂層80を形成する(
図2(d))。
再配線用絶縁樹脂層80は、たとえば、感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法などによりパターンを形成し、硬化処理を行うことで形成される。感光性樹脂組成物としては、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサイド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などを含むものを用いることができる。なお、再配線用絶縁樹脂層80には、ビアホール82を形成してもよい。
【0070】
さらに、配線工程として、たとえば
図2(e)のように、再配線用絶縁樹脂層80の全面に給電層をスパッタ等の方法で形成し、その後、給電層の上にレジスト層を形成し、所定のパタ-ンに露光、現像し、さらにその後、電解銅メッキにてビア92、再配線回路94を形成することができる。そして、レジスト層を剥離し、給電層をエッチングすることができる。
次に、たとえば
図2(f)のように、配線工程として、再配線回路94に半田ボール96を搭載することができる。次いで、再配線回路94および半田ボール96の一部を覆うようにソルダーレジスト層98を形成することができる。
【0071】
次いで、個片化工程として、封止材層30、再配線用絶縁樹脂層80およびソルダーレジスト層98を切断し、個片化された電子装置を得る個片化工程を行い、電子装置52を得る(
図2(g))。
電子装置52に含まれる電子部品20の数は限定されず、電子装置52の種類に応じて設定することができる。
【0072】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0073】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1~4および比較例1~3)
各例について、表1に示す各成分をミキサーにより混合した。次いで、得られた混合物を、ロール混練した後、混練物を冷却、粉砕して顆粒状の樹脂組成物を得た。
【0075】
各例で得られた樹脂組成物またはその硬化物について、線膨張係数(CTE1)、25℃における曲げ弾性率および曲げ強度を測定するとともに、硬化物の外観の評価をおこなった。
測定結果を表1にあわせて示す。
【0076】
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
(無機充填材)
(C)無機充填材1:シリカ、MUF-4、龍森社製、平均粒径3.8μm
(C)無機充填材2:シリカ、SC-2500-SQ、アドマテックス社製、平均粒径0.5μm
(C)無機充填材3:シリカ、SC-5500-SQ、アドマテックス社製、平均粒径1.5μm
(カップリング剤)
カップリング剤1:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、CF-4083、ダウ・東レ社製
カップリング剤2:γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物、KE-6137、九州住友ベークライト社製
(エポキシ樹脂)
(A)エポキシ樹脂1:下記一般式で表されるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、NC3000、日本化薬社製
【0077】
【0078】
(上記一般式中、n=1~10である。)
【0079】
(A)エポキシ樹脂2:トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂とビフェニル型エポキシ樹脂の混合物、YL6677、三菱ケミカル社製
(B)硬化剤1:トリスフェニルメタン混合型フェノール樹脂、HE910-20、エアー・ウェーター社製
(B)硬化剤2:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、MEH-7851SS、明和化成社製
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:テトラフェニルフォスフォニウム 4,4'-スルフォニルジフェノラート、住友ベークライト社製
硬化促進剤2:テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート、住友ベークライト社製
(着色剤)
着色剤1:カーボンブラック、三菱ケミカル社製、カーボン♯5
(イオンキャッチャー)
イオンキャッチャー1:ハイドロタルサイト、DHT-4H、協和化学工業社製
(低応力剤)
(D)トリグリセリド1:カプリル酸トリグリセライド、花王社製
(D)トリグリセリド2:2-エチルヘキサン酸トリグリセライド、花王社製
(D)トリグリセリド3:オレイン酸トリグリセライド、理研ビタミン社製
(D)トリグリセリド4:12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、理研ビタミン社製
(D)トリグリセリド5:ステアリン酸トリグリセライド、理研ビタミン社製
(D)トリグリセリド6:大豆油、日清オイリオグループ社製
【0080】
(ΔHSPの計算方法)
成分(A)あるいは低応力剤の各構成単位を、エディタソフト(Chem Draw)を用いて、HSP計算用構造式をSMILES表記に変換した。そのSMILES式をHSPiPに付属のY-MB計算ソフトに入力すると、各構成単位のHSP(δd、δp、δh)が計算された。ΔHSPは、上記式(1)に示すR2で表されるものである。表2に各成分のSMILES式、HSPを示す。
【0081】
ここで、トリグリセリド6(大豆油)のHSPについては、下記の手順で求めた。
1.大豆油に含まれる主要5種類の脂肪酸の組み合わせを列挙し、その存在確率を計算した。そして、存在確率の高い方から上位75.8%までのトリグリセリドについて、以降の計算を進めた。
2.列挙したそれぞれのトリグリセリドをSMILES式で表記し、HSPiPソフト用いてHSP(δd、δp、δh)を計算した。
3.列挙したトリグリセリドのHSP各成分に存在確率を乗じ、各成分を総和し、HSPとした。
以下、各手順をさらに具体的に説明する。
【0082】
上記手順1.における「主要5種類の脂肪酸」とは、大豆油を構成する主要5種類の脂肪酸、具体的には、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸である。大豆油における各脂肪酸の組成比を、パルミチン酸11.0%、ステアリン酸4.7%、オレイン酸23.7%、リノール酸53.5%、リノレン酸7.1%とした。大豆油は、1分子のグリセリンに対して上記脂肪酸のいずれか3分子が結合しているため、5種類の脂肪酸の全組み合わせを列挙した。列挙したトリグリセリドの存在確率の計算方法を具体例に基づき以下に示す。
(例)リノール酸3分子が結合したトリグリセリドの場合
0.53×0.53×0.53=0.149
同様に他のトリグリセリドについても存在確率を計算した。これらを存在確率の高い順に並べ、上位75.8%までのトリグリセリドについて、以後計算を進めた。
2.列挙したそれぞれのトリグリセリドのSMILES式で表記し、HSPiPソフト用いて計算した。
(例)リノール酸3分子が結合したトリグリセリドの場合
SMILES式:CCCCC/C=C/C/C=C/CCCCCCCC(OCC(COC(CCCCCCC/C=C/C/C=C/CCCCC)=O)OC(CCCCCCC/C=C/C/C=C/CCCCC)=O)=O
HSP(δd、δp、δh)=(16.6、1.7、4.1)
他のトリグリセリドについても同様の方法でHSPを計算した。
【0083】
3.上記手順2.で列挙したトリグリセリドのHSP各成分に存在確率を乗じ、各成分を総和し、HSPとした。
(例)リノール酸3分子が結合したトリグリセリドの場合
(δd、δp、δh)=(16.6×0.149、1.7×0.149、4.1×0.149)=(2.47、0.253、0.611)
【0084】
上記手順3.で算出したHSPの各成分を足し合わせて大豆油のHSPとした。
HSP(δd、δp、δh)=(15.77、1.61、3.45)
【0085】
(測定方法および評価方法)
(線膨張係数)
各例で得られた樹脂組成物を、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間180秒で、注入成形し、長辺15mm×短辺4.5mm×厚さ3mmの試験片を得た。
得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(日立ハイテクサイエンス製、TMA7100)を用いて、圧縮モードで、測定温度範囲-60℃~400℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定をおこなった。
測定結果から、50℃から70℃までの平均線膨張係数を算出してCTE1とした。
CTE1が9.3ppm/℃未満のものを合格とした。
【0086】
(曲げ弾性率および曲げ強度)
各例で得られた樹脂組成物を、トランスファー成形装置を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間180秒間で注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの成形品を得た。得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して、試験片を得た。
得られた試験片の25℃における曲げ弾性率および曲げ強度をJIS K 6911に準拠して測定した。
曲げ弾性率が22.5GPa未満のものを合格とした。
【0087】
(外観)
各例で得られた樹脂組成物を、トランスファー成形装置を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間180秒間で注入成形し、直径90mm、厚み5mmの円盤状の成形品を得た。得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して、試験片を得た。
得られた試験片の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:表面汚染なし、または、わずかな表面汚染あり
B:試験片全体にわたる表面汚染あり
【0088】
【0089】
【0090】
表1より、各実施例においては、エポキシ樹脂と低応力材とのΔHSPが好適な範囲にあり、CTE1の低減および弾性率の低減の各効果のバランスに優れていた。また、各実施例においては、外観の劣化も好適に抑制されていた。