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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183773
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】状態推定装置、状態推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/16 20060101AFI20231221BHJP
   G01C 21/20 20060101ALI20231221BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20231221BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231221BHJP
【FI】
G01C21/16
G01C21/20
G06T7/20 100
G06T7/00 650B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097471
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松平 宣明
(72)【発明者】
【氏名】徐 慧
【テーマコード(参考)】
2F129
5L096
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB20
2F129BB22
2F129BB26
2F129BB33
2F129BB38
2F129BB39
2F129BB40
2F129BB41
2F129BB42
2F129BB66
2F129CC33
2F129GG17
5L096BA04
5L096CA04
5L096FA09
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】移動体の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態の推定の精度向上を図る。
【解決手段】状態推定装置10は、車両の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定する。状態推定装置10は、撮像部2が出力する画像データおよび慣性計測装置3が出力する慣性データを読み込む入力部22と、画像データ中の特徴点の抽出およびトラッキングを行うとともに、慣性データから車両の状態を算出する前処理部24と、を備える。状態推定装置10は、画像データの特徴点、慣性データに基づく車両の位置、速度、姿勢に対してバンドル調整を実施して慣性計測装置3のバイアス誤差を求める演算部26と、慣性データからバイアス誤差を除去した補正データを求める補正部28と、を備える。状態推定装置10は、補正データに基づいて車両の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定する推定部30を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体(1)の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定する状態推定装置であって、
前記移動体の周囲を撮像する撮像部(2)が出力する画像データおよび前記移動体に設置された慣性計測装置(3)が出力する前記移動体の慣性データを読み込む入力部(22)と、
前記画像データに含まれる特徴点の抽出および前記特徴点のトラッキングを行うとともに、前記慣性データに基づいて前記移動体の位置、速度、姿勢を算出する前処理部(24)と、
前記画像データの特徴点、前記慣性データに基づく前記移動体の位置、速度、姿勢に対してバンドル調整を実施して前記慣性計測装置のバイアス誤差を求める演算部(26)と、
前記慣性データから前記バイアス誤差を除去した補正データを求める補正部(28)と、
前記補正データに基づいて前記移動体の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定する推定部(30)と、
を備える状態推定装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記補正データおよび前記移動体に設置された車輪速センサ(4)のセンサ出力に基づいて、前記移動体の速度を求め、求めた前記移動体の速度に基づいて前記移動体の位置を推定する、請求項1に記載の状態推定装置。
【請求項3】
前記慣性計測装置は、前記移動体の角速度を検出するジャイロセンサ(3a)および前記移動体の加速度を検出する加速度センサ(3b)を含み、
前記推定部は、
前記ジャイロセンサのセンサ出力を前記補正部で補正したものに基づいて前記移動体の姿勢を示す第1姿勢角を求め、
前記加速度センサのセンサ出力を前記補正部で補正したものおよび前記移動体の車輪速センサのセンサ出力から求めた重力加速度に基づいて前記移動体の姿勢を示す第2姿勢角を求め、
前記第1姿勢角を相補フィルタのハイパスフィルタを通し、前記第2姿勢角を前記相補フィルタのローパスフィルタを通した後に両者を合成することで、前記移動体の姿勢を推定する、請求項2に記載の状態推定装置。
【請求項4】
前記撮像部が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況であるか否かを判定する異常判定部(31)を備え、
前記補正部は、
前記異常な状況でない場合は前記慣性データから前記バイアス誤差を除去することで前記補正データを算出し、
前記異常な状況になると、前記演算部で求めた前記バイアス誤差に代えて、事前にメモリに記憶していたバイアス推定値を前記慣性データから除去することで前記補正データを算出する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の状態推定装置。
【請求項5】
前記異常判定部は、前記画像データに基づいて前記異常な状況であるか否かを判定する、請求項4に記載の状態推定装置。
【請求項6】
前記異常判定部は、前記移動体に設置された操舵角センサ(5)のセンサ出力および前記演算部で求めた前記移動体の姿勢に基づいて前記異常な状況であるか否かを判定する、請求項4に記載の状態推定装置。
【請求項7】
前記異常判定部は、前記移動体に設置された車輪速センサ(4)のセンサ出力および前記演算部で求めた前記移動体の速度に基づいて前記異常な状況であるか否かを判定する、請求項4に記載の状態推定装置。
【請求項8】
前記異常判定部は、前記演算部で求めた前記移動体の位置、速度、姿勢および前記推定部で推定した前記移動体の位置、速度、姿勢に基づいて前記異常な状況であるか否かを判定する、請求項4に記載の状態推定装置。
【請求項9】
前記補正部は、前記慣性計測装置の温度に応じて前記バイアス推定値を補正し、補正後の前記バイアス推定値を前記慣性データから除去することで前記補正データを算出する、請求項4に記載の状態推定装置。
【請求項10】
移動体(1)の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定する状態推定方法であって、
前記移動体の周囲を撮像する撮像部(2)が出力する画像データおよび前記移動体に設置された慣性計測装置(3)が出力する前記移動体の慣性データを読み込むことと、
前記画像データに含まれる特徴点の抽出および前記特徴点のトラッキングを行うとともに、前記慣性データに基づいて前記移動体の位置、速度、姿勢を算出することと、
前記画像データの特徴点、前記慣性データに基づく前記移動体の位置、速度、姿勢に対してバンドル調整を実施して前記慣性計測装置のバイアス誤差を求めることと、
前記慣性データから前記バイアス誤差を除去した補正データを求めることと、
前記補正データに基づいて前記移動体の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定することと、
を含む状態推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定する状態推定装置および状態推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラおよび慣性計測装置(所謂、IMU)を用いて、バンドル調整という非線形な最小二乗法によって、複数のパラメータを精度よく推定する視覚慣性オドメトリVIOといった技術が知られている。例えば、特許文献1には、視覚慣性オドメトリVIOによって、移動体の位置、姿勢、速度、慣性計測装置のバイアス誤差を推定する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。なお、“VIO”は、Visual Inertial Odometryの略称である。また、“IMU”は、Inertial Measurement Unitの略称である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9424647号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、視覚慣性オドメトリVIOによって、車両等の移動体の位置、姿勢、速度、慣性計測装置のバイアス誤差を推定することを検討しているが、これらの推定を開始してから所定時間以内での姿勢変化の推定誤差が大きいことが判った。この理由としては、カメラが出力する画像は、モーションブラーや周囲の物体の動きの影響を受け易く、画像データに基づいて求める姿勢の短時間での誤差が大きくなってしまうことが考えられる。なお、これらは、本発明者の鋭意検討の末に見い出された。
【0005】
本開示は、移動体の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態の推定の精度向上を図ることが可能な状態推定装置および状態推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
移動体(1)の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定する状態推定装置であって、
移動体の周囲を撮像する撮像部(2)が出力する画像データおよび移動体に設置された慣性計測装置(3)が出力する移動体の慣性データを読み込む入力部(22)と、
画像データに含まれる特徴点の抽出および特徴点のトラッキングを行うとともに、慣性データに基づいて移動体の位置、速度、姿勢を算出する前処理部(24)と、
画像データの特徴点、慣性データに基づく移動体の位置、速度、姿勢に対してバンドル調整を実施して慣性計測装置のバイアス誤差を求める演算部(26)と、
慣性データからバイアス誤差を除去した補正データを求める補正部(28)と、
補正データに基づいて移動体の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定する推定部(30)と、を備える。
【0007】
本発明者らの検討によると、視覚慣性オドメトリVIOによる姿勢変化の推定を開始してから或る程度時間が経過すると、姿勢変化の推定誤差が小さくなることが判っている。この理由としては、画像データの解析から得られる姿勢推定結果には、慣性計測装置のバイアス誤差が含まれないことが挙げられる。
【0008】
これらを考慮し、本開示の状態推定装置は、視覚慣性オドメトリVIOでバイアス誤差を求め、当該バイアス誤差を慣性データから除去した補正データに基づいて、移動体の状態を推定する。
【0009】
このように、視覚慣性オドメトリVIOによってバイアス誤差を推定し、当該バイアス誤差および慣性データに基づいて移動体の位置、速度、姿勢を推定すれば、モーションブラーや周囲の移動物体等に起因する誤差の影響を抑えることができる。したがって、本開示の状態推定装置によれば、移動体の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態の精度向上を図ることができる。
【0010】
請求項10に記載の発明は、
移動体(1)の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定する状態推定方法であって、
移動体の周囲を撮像する撮像部(2)が出力する画像データおよび移動体に設置された慣性計測装置(3)が出力する移動体の慣性データを読み込むことと、
画像データに含まれる特徴点の抽出および特徴点のトラッキングを行うとともに、慣性データに基づいて移動体の位置、速度、姿勢を算出することと、
画像データの特徴点、慣性データに基づく移動体の位置、速度、姿勢に対してバンドル調整を実施して慣性計測装置のバイアス誤差を求めることと、
慣性データからバイアス誤差を除去した補正データを求めることと、
補正データに基づいて移動体の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定することと、を含む。
【0011】
このように、視覚慣性オドメトリVIOによってバイアス誤差を推定し、当該バイアス誤差および慣性データに基づいて移動体の位置、速度、姿勢を推定すれば、モーションブラーや周囲の移動物体等に起因する誤差の影響を抑えることができる。したがって、本開示の状態推定状態によれば、移動体の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態の精度向上を図ることができる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る状態推定装置の概略構成図である。
図2】状態推定装置に用いられる撮像部を説明するための説明図である。
図3】状態推定装置に用いられる慣性計測装置を説明するための説明図である。
図4】視覚慣性オドメトリの概要を説明するための説明図である。
図5】画像に関する残差を説明するための説明図である。
図6】慣性計測装置に関する残差を説明するための説明図である。
図7】事前情報に関する残差を説明するための説明図である。
図8】ジャイロセンサで測定される角速度および視覚慣性オドメトリで求めた姿勢から推定される角速度を説明するための説明図である。
図9】慣性データに含まれるバイアス誤差の時間変化を説明するための説明図である。
図10】第1実施形態に係る状態推定装置を説明するための説明図である。
図11】視覚慣性オドメトリによって求めたバイアス誤差および慣性データから算出した補正データに基づく車両の姿勢の推定結果を説明するための説明図である。
図12】第2実施形態に係る状態推定装置を説明するための説明図である。
図13】第3実施形態に係る状態推定装置を説明するための説明図である。
図14】第3実施形態に係る状態推定装置における車両の姿勢の推定方法を説明するための説明図である。
図15】加速度センサのセンサ出力から車両の姿勢角を演算して求める方法を説明するための説明図である。
図16】異常な状況時の課題を説明するための説明図である。
図17】第4実施形態に係る状態推定装置を説明するための説明図である。
図18】異常な状況下での挙動を説明するための説明図である。
図19】第5実施形態に係る状態推定装置を説明するための説明図である。
図20】第6実施形態に係る状態推定装置を説明するための説明図である。
図21】第7実施形態に係る状態推定装置を説明するための説明図である。
図22】第8実施形態に係る状態推定装置を説明するための説明図である。
図23】第9実施形態に係る状態推定装置を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0015】
(第1実施形態)
本実施形態について、図1図11を参照して説明する。本実施形態では、図1に示す本開示の状態推定装置10を、車両1に適用し、車両1の位置p、速度v、姿勢φを推定して、外部へ出力する例について説明する。本実施形態では、車両1が“移動体”に対応している。
【0016】
車両1には、状態推定装置10が搭載されている。車両1には、状態推定装置10の他に、撮像部2および慣性計測装置3が搭載されている。なお、車両1には、状態推定装置10は、その一部が車外に設置されていてもよい。
【0017】
撮像部2は、図2に示すように、車両1の周囲を周期的に撮像する。撮像部2は、車両1の周辺領域を撮像した画像データを出力する。撮像部2は、例えば、CCD、CMOS等の光電変換素子を備えるカメラ等で構成される。なお、CCDは、Charge Coupled Deviceの略称である。CMOSは、Complementary Metal Oxide Semiconductorの略称である。本実施形態の撮像部2は、単眼カメラで構成されている。なお、撮像部2は、複眼カメラで構成されていてもよい。
【0018】
慣性計測装置3は、車両1における3次元の慣性運動を検出する装置である。慣性計測装置3は、車両1における直交三軸方向の並進運動および回転運動を慣性データとして出力する。慣性計測装置3は、車両1の回転運動として車両1の角速度ωx、ωy、ωzを検出するジャイロセンサ3aおよび車両1の並進運動として車両1の加速度fx、fy、fzを検出する加速度センサ3bを含んでいる。本実施形態の慣性計測装置3は、MEMSベースの小型なIMUとして構成されている。MEMSは、Micro Electro Mechanical Systemsの略称である。
【0019】
状態推定装置10は、図1に示すように、撮像部2が出力する画像データおよび慣性計測装置3が出力する慣性データに基づいて、車両1の位置p、速度v、姿勢φといった車両1の状態を推定し、その推定結果を外部へ出力する。
【0020】
状態推定装置10は、プロセッサを含む制御部20およびメモリ50等を有するコンピュータである。メモリ50は、各種の制御処理を実行するためのプログラム、データ等が格納されている。制御部20は、メモリ50に記憶された各種プログラムを実行する。
【0021】
状態推定装置10は、制御部20による各種プログラムの実行等によって各種の機能部として機能する。状態推定装置10は、入力部22、前処理部24、演算部26、補正部28、および推定部30を備える。
【0022】
入力部22には、撮像部2および慣性計測装置3それぞれが接続されている。入力部22は、撮像部2が出力する画像データおよび慣性計測装置3が出力する慣性データを読み込む。
【0023】
前処理部24は、入力部22で読み込んだ画像データの特徴点FPの抽出および当該特徴点FPのトラッキングを行うとともに、入力部22で読み込んだ慣性データに基づいて車両1の位置p、速度v、姿勢φを算出する。
【0024】
前処理部24は、画像データの特徴点FPの抽出および当該特徴点FPのトラッキングを行う画像処理部241を有する。画像処理部241は、例えば、SIFTやSURF等によって局所的な特徴量に基づいて特徴点FPを抽出し、最近傍探索等によって現在の画像フレームで抽出された特徴点FPと前回の画像フレームで抽出された特徴点FPとの対応付けを行う。なお、画像処理部241における特徴点FPの抽出や特徴点FPの対応付けは、上記したものとは異なる手段によって実現されていてもよい。
【0025】
また、前処理部24は、慣性データに基づいて車両1の位置p、速度v、姿勢φを算出する慣性処理部242を有する。慣性処理部242は、例えば、ジャイロセンサ3aのセンサ出力である角速度ωを積分して車両1の姿勢φおよび回転行列Cbを求める。また、慣性処理部242は、加速度センサ3bのセンサ出力である加速度fと回転行列Cbとを乗じたものを積分して車両1の速度vを求めるとともに、求めた車両1の速度vを積分して車両1の位置pを求める。慣性処理部242では、姿勢φとしてロール角、ピッチ角、ヨー角といった3つの姿勢角を計算によって求める。
【0026】
演算部26は、視覚慣性オドメトリVIOによって慣性計測装置3のバイアス誤差を含む各種パラメータを推定する。本実施形態の演算部26は、画像データの特徴点FP、慣性データに基づく車両1の位置p、速度v、姿勢φに対して、バンドル調整という非線形な最小二乗法を実施して車両1の位置p、姿勢φ、速度v、慣性計測装置3のバイアス誤差を推定する。演算部26は、ジャイロセンサ3aのバイアス誤差および加速度センサ3bのバイアス誤差それぞれを慣性計測装置3のバイアス誤差として推定する。
【0027】
具体的には、演算部26は、図4に示すように、画像に関する残差、IMUに関する残差、事前情報に関する残差をバンドル調整によって最適化することによって、車両1の位置p、姿勢φ、速度v、慣性計測装置3のバイアス誤差を推定する。
【0028】
演算部26は、画像座標系と世界座標系との間における再投影誤差を画像に関する残差としてバンドル調整によって最適化する。例えば、演算部26は、図5に示すように、i番目の画像フレームでの特徴点FPの位置を世界座標系に変換した後、j番目の画像フレームの画像座標系に再投影した位置とj番目の画像フレームでの特徴点FPの位置との差を画像に関する残差として最適化する。
【0029】
また、演算部26は、例えば、慣性計測装置3での位置p、姿勢φの測定結果と画像データから予測される位置p、姿勢φの予測結果との差をIMUに関する残差としてバンドル調整によって最適化する。慣性計測装置3における慣性データのサンプリング時間が撮像部2での画像データのサンプリング時間よりも短い。このため、例えば、演算部26は、図6に示すように、i番目とj番目の画像フレーム間での車両1の位置p、姿勢φの変化の予測と、各画像フレーム間で取得される慣性データを積分した位置p、姿勢φの測定結果との差をIMUに関する残差として最適化する。
【0030】
また、演算部26は、図7に示すように、画像データおよび慣性データの直近の情報だけでなく、事前の情報を含めてバンドル調整を実施する。演算部26は、例えば、直近の情報から推定される車両1の位置p、姿勢φと事前の情報から推定される車両1の位置p、姿勢φとの差を事前情報に関する残差として最適化する。
【0031】
演算部26では、新たな情報が追加されると、事前情報の一部を削除したり、周辺化処理したりすることで、演算処理等の負荷を抑えるようになっている。なお、視覚慣性オドメトリVIOでの位置、速度v、姿勢φの求め方は、例えば、以下の文献1等にも開示されている。
【0032】
[文献1]
T. Qin, P. Li and S. Shen, "VINS-Mono: A Robust and Versatile Monocular Visual-Inertial State Estimator," in IEEE Transactions on Robotics, vol. 34, no. 4, pp. 1004-1020, Aug. 2018, doi: 10.1109/TRO.2018.2853729。
【0033】
ここで、図8は、ジャイロセンサ3aで測定される角速度ωおよび視覚慣性オドメトリVIOで求めた姿勢φから推定される角速度ωをアラン分散で解析したものである。なお、図8では、ジャイロセンサ3aで測定される角速度ωの解析結果を二点鎖線で示し、視覚慣性オドメトリVIOで求めた姿勢φから推定される角速度ωの解析結果を一点鎖線で示している。
【0034】
図8に示すように、視覚慣性オドメトリVIOによる角速度ωの推定は、ジャイロセンサ3aでの測定結果に比べて、推定開始してから所定時間以内における誤差が大きいことが判った。この理由としては、撮像部2が出力する画像データは、モーションブラーや周囲の移動物体の影響を受け易く、画像データの解析から得られる姿勢φの短時間での誤差が大きくなってしまうことが考えられる。
【0035】
一方、視覚慣性オドメトリVIOによる角速度ωの推定は、時間経過とともに誤差が小さくなる。これは、視覚慣性オドメトリVIOによる角速度ωの推定には、ジャイロセンサ3aのバイアス誤差の影響がないことが要因と考えられる。
【0036】
これらに対して、ジャイロセンサ3aでの測定結果は、図8および図9に示すように、測定開始から或る程度時間が経過するまでは誤差が小さいが、時間経過とともに次第に誤差が大きくなる。これは、時間経過とともにバイアス誤差が累積することが要因と考えられる。
【0037】
これらの特徴を考慮し、状態推定装置10では、視覚慣性オドメトリVIOによってバイアス誤差を求め、当該バイアス誤差を慣性データから除去した補正データに基づいて、車両1の状態を推定する。本実施形態の状態推定装置10は、慣性データからバイアス誤差を除去した補正データを求める補正部28と、当該補正データに基づいて車両1の位置p、速度v、姿勢φの少なくとも1つを推定する推定部30とを備える。
【0038】
補正部28は、例えば、図10に示すように、慣性計測装置3が出力する慣性データから視覚慣性オドメトリVIOで得られた慣性計測装置3のバイアス誤差を減算したものを補正データとして出力する。
【0039】
推定部30は、補正データに基づいて車両1の位置p、速度v、姿勢φを計算し、その計算結果を出力する。推定部30は、補正部28で補正した角速度ωを積分して車両1の姿勢φおよび回転行列Cbを求める。また、推定部30は、補正部28で補正した加速度fと回転行列Cbとを乗じたものを積分して車両1の速度vを求めるとともに、求めた車両1の速度vを積分して車両1の位置pを求める。
【0040】
ここで、図11は、ジャイロセンサ3aで測定される角速度ω、視覚慣性オドメトリVIOで求めた姿勢φから推定される角速度ω、ジャイロセンサ3aで測定される角速度ωからバイアス誤差を除去して求めた角速度ωをアラン分散で解析したものである。なお、図11では、ジャイロセンサ3aで測定される角速度ωの解析結果を二点鎖線で示し、視覚慣性オドメトリVIOで求めた姿勢φから推定される角速度ωの解析結果を一点鎖線で示している。また、図11では、ジャイロセンサ3aで測定される角速度ωからバイアス誤差を除去して求めた角速度ωの解析結果を実線で示している。
【0041】
図11に示すように、ジャイロセンサ3aで測定される角速度ωからバイアス誤差を除去して求めた角速度ωは、視覚慣性オドメトリVIOで求めた姿勢φから推定される角速度ωと異なり、推定開始直後から誤差が小さい結果となった。また、ジャイロセンサ3aで測定される角速度ωからバイアス誤差を除去して求めた角速度ωは、ジャイロセンサ3aの測定結果と異なり、或る程度時間が経過した後も誤差が小さい結果となった。
【0042】
以上説明した状態推定装置10および状態推定方法は、視覚慣性オドメトリVIOでバイアス誤差を求め、当該バイアス誤差を慣性データから除去した補正データに基づいて、車両1の位置p、速度v、姿勢φを推定する。このように、視覚慣性オドメトリVIOによってバイアス誤差を推定し、当該バイアス誤差および慣性データに基づいて車両1の位置p、速度v、姿勢φを推定すれば、モーションブラーや周囲の移動物体等に起因する誤差の影響を抑えることができる。したがって、本開示の状態推定装置10および状態推定方法によれば、車両1の位置p、速度v、姿勢φの少なくとも1つを含む状態の推定の精度向上を図ることができる。
【0043】
ここで、視覚慣性オドメトリVIOは、カルマンフィルタのように過去の測定結果と現在の測定結果から逐次的に現在の状態を推定するものではなく、バンドル調整といった非線形な最小二乗法によって誤差の最小化を行うものである。バンドル調整は計算負荷が大きいものの、過去から現在に至る複数のデータを用いて、誤差が最小となる推定値を反復計算で求めるため、精度が高いことが特徴である。特に、外乱ノイズに対する耐性や非線形な関数を用いた状態推定において、バンドル調整は、カルマンフィルタより優れた性能を有する。本開示の状態推定装置10および状態推定方法は、視覚慣性オドメトリVIOによって高精度に推定されたバイアス誤差を用いているので、慣性データを適切に補正することができる。このことは、車両1の位置p、速度v、姿勢φの少なくとも1つを含む状態の推定の精度向上を図る上で有効である。
【0044】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図12を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0045】
第1実施形態の如く、撮像部2が単眼カメラで構成される場合は、複眼カメラを用いる場合に比較して、スケール推定の誤差が大きくなる。この誤差が大きいと、慣性データに含まれる加速度fのバイアス誤差の推定精度が低下することがあり、バイアス誤差を慣性データに含まれる加速度fから除去したものを積分して車両1の速度vや位置pを推定しても、充分な精度向上の効果が得られない虞がある。
【0046】
このことを考慮し、本実施形態の状態推定装置10は、図12に示すように、バイアス誤差を慣性データから除去したものだけでなく、車輪速センサ4のセンサ出力を用いて、車両1の位置pおよび速度vを求める構成になっている。車輪速センサ4は、例えば、ロータリエンコーダで構成される。車輪速センサ4は、車両1の車輪に回転数に応じた信号をセンサ出力として外部に出力する。
【0047】
推定部30は、車輪速センサ4のセンサ出力を読み込むことができるように、車輪速センサ4の直接的または間接的に接続されている。推定部30は、補正部28で求められた補正データおよび車輪速センサ4のセンサ出力にも基づいて、車両1の速度vおよび位置pを推定する。
【0048】
具体的には、推定部30は、補正部28で補正した角速度ωを積分して車両1の姿勢φおよび回転行列Cbを求める。そして、推定部30は、補正部28で補正した加速度fではなく、車輪速センサ4の出力から推定した車両1の加速度fと回転行列Cbとを乗じたものを積分して車両1の速度vを求めるとともに、求めた車両1の速度vを積分して車両1の位置pを求める。
【0049】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の状態推定装置10および状態推定方法は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0050】
また、本実施形態の状態推定装置10は、以下の特徴を備える。
【0051】
(1)状態推定装置10の推定部30は、補正データおよび車両1に設置された車輪速センサ4のセンサ出力に基づいて、車両1の速度vを求め、求めた車両1の速度vに基づいて車両1の位置pを推定する。これによれば、撮像部2が単眼カメラで構成される場合であっても、車両1の速度vおよび位置pを充分な精度で推定することができる。本案の構成は、撮像部2に単眼カメラを用いる構成やカメラのスケール推定の誤差が小さくすること難しい構成に好適である。
【0052】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図13図15を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0053】
慣性計測装置3では、MEMS等のセンサ構造が、ジャイロセンサ3aより加速度センサ3bの方が簡易な構造になっており、ジャイロセンサ3aのバイアス変化に比べると、加速度センサ3bのバイアス変化が小さくなる傾向がある。このような背景もあり、視覚慣性オドメトリVIOで推定するバイアス誤差は、ジャイロセンサ3aの方が加速度センサ3bよりも精度が低い傾向がある。
【0054】
これらを踏まえ、本実施形態の状態推定装置10では、図13に示すように、視覚慣性オドメトリVIOで求めたバイアス誤差を用いて慣性データを補正した補正データに加えて、車輪速センサ4のセンサ出力を用いて車両1の姿勢φを推定する。
【0055】
図14に示すように、推定部30は、視覚慣性オドメトリVIOでジャイロセンサ3aのバイアス誤差を求めるとともに、当該バイアス誤差を用いてジャイロセンサ3aのセンサ出力を補正したものに基づいて車両1の姿勢φを示す第1姿勢角φ1を求める。
【0056】
また、推定部30は、視覚慣性オドメトリVIOで加速度センサ3bのバイアス誤差を求める。そして、推定部30は、加速度センサ3bのバイアス誤差を用いて加速度センサ3bのセンサ出力を補正したものおよび車輪速センサ4のセンサ出力から求めた重力加速度に基づいて車両1の姿勢φを示す第2姿勢角φ2を求める。
【0057】
具体的には、推定部30は、車輪速センサ4のセンサ出力の微分値を用いて加速度センサ3bのセンサ出力から並進加速度を除去し、重力加速度のみを抽出してから図15に示す姿勢角の演算を行って、車両1の姿勢φを示す第2姿勢角φ2を求める。
【0058】
ここで、車輪速センサ4は量子化雑音が大きいため、ローパスフィルタで帯域を制限して用いることが好ましい。例えば、推定部30で求めた第2姿勢角φ2は、移動平均フィルタで平滑化して低周波成分のみを使用することが好ましい。この場合、高周波成分が不足することになるが、不足する高周波成分は、第1姿勢角φ1を用いればよい。
【0059】
これらを加味して、推定部30は、第1姿勢角φ1を相補フィルタのハイパスフィルタを通し、第2姿勢角φ2を相補フィルタのローパスフィルタを通した後に両者を合成することで、車両1の姿勢φを推定する。相補フィルタは、ローパスフィルタとハイパスフィルタのカットオフ周波数の次数が一致していることが望ましい。
【0060】
その他については、これまで説明した実施形態と同様である。本実施形態の状態推定装置10および状態推定方法は、これまで実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果をこれまでと同様に得ることができる。
【0061】
また、本実施形態の状態推定装置10は、以下の特徴を備える。
【0062】
(1)推定部30は、第1姿勢角φ1を相補フィルタのハイパスフィルタを通し、第2姿勢角φ2を相補フィルタのローパスフィルタを通した後に両者を合成することで、車両1の姿勢φを推定する。このように、ジャイロセンサ3aのセンサ出力から推定した第1姿勢角φ1に加えて、加速度センサ3bのセンサ出力から推定した第2姿勢角φ2を用いて車両1の姿勢φを推定する構成になっていれば、車両1の姿勢φの推定の充分な精度向上を図ることができる。
【0063】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図16図18を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0064】
車両1の周囲の環境変化(例えば、逆光、トンネル等)がある場合、撮像部2が所期の機能を発揮することが困難となる。このような異常な状況が生ずると、例えば、図16に示すように、視覚慣性オドメトリVIOによるバイアス誤差の推定が安定せず、車両1の位置p、速度v、姿勢φを高精度に推定することが難しくなる。
【0065】
このことを鑑み、状態推定装置10には、図17に示すように、撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況であるか否かを判定する異常判定部31が備えられている。
【0066】
異常判定部31は、例えば、撮像部2が出力する画像データに基づいて、撮像部2が特徴点FPの抽出等の所期の機能を発揮できるか否かを判定する。異常判定部31は、撮像部2が所期の機能を発揮できる場合は、異常な状況でないと判定する。異常判定部31は、撮像部2が所期の機能を発揮できない場合は、異常な状況と判定する。
【0067】
本実施形態の補正部28は、異常判定部31の判定結果を考慮して、慣性データの補正データを算出する。具体的には、補正部28は、撮像部2が所期の機能を発揮できる正常な状況である場合には、視覚慣性オドメトリVIOで求めたバイアス誤差を慣性データから除去することで補正データを算出する。
【0068】
一方、補正部28は、撮像部2が所期の機能を発揮できない異常な状況でない場合には、視覚慣性オドメトリVIOで求めたバイアス誤差に代えて、事前にメモリ50に記憶されていたバイアス推定値を慣性データから除去することで補正データを算出する。
【0069】
ここで、バイアス誤差は、応力、温度等に依存して変化するが、これらは短時間(例えば、10秒程度)であまり変化しない。このことから、例えば、補正部28は、撮像部2が所期の機能を発揮できない異常な状況になる直前に視覚慣性オドメトリVIOで求めたバイアス誤差を、バイアス推定値としてメモリ50に記憶するようになっていることが望ましい。
【0070】
その他については、これまで説明した実施形態と同様である。本実施形態の状態推定装置10および状態推定方法は、これまで実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果をこれまでと同様に得ることができる。
【0071】
また、本実施形態の状態推定装置10は、以下の特徴を備える。
【0072】
(1)状態推定装置10は、撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況であるか否かを判定する異常判定部31を備える。補正部28は、異常判定部31の判定が異常な状況でないことを示す場合は慣性データからバイアス誤差を除去することで補正データを算出する。また、補正部28は、異常判定部31の判定が異常な状況を示す場合は、演算部26で求めたバイアス誤差に代えて、事前にメモリ50に記憶していたバイアス推定値を慣性データから除去することで補正データを算出する。これによれば、撮像部2が所期の機能を発揮することができない異常な状況になったとしても、例えば、図18に示すように、車両1の状態の推定を適切に継続することができる。
【0073】
(2)異常判定部31は、撮像部2が出力する画像データに基づいて異常な状況であるか否かを判定する。これによると、撮像部2の異常判定専用のセンサ機器を追加する必要がないので、簡易な形態で車両1の状態の推定を継続することができる。
【0074】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、図19を参照して説明する。本実施形態では、第4実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0075】
撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況では、前処理部24での画像データの特徴点FPの抽出ができなくなったり、当該特徴点FPのトラッキングができなくなったりする可能性が高い。
【0076】
このことを鑑み、本実施形態の異常判定部31は、撮像部2から画像データを取得するのではなく、図19に示すように、前処理部24から画像データの解析結果を取得し、当該解析結果に基づいて異常な状況であるか否かを判定する。例えば、異常判定部31は、前処理部24での画像データの特徴点FPの抽出が全くできなくなったり、当該特徴点FPのトラッキングが突然できなくなったりした場合に、異常な状況と判定する。
【0077】
その他については、第4実施形態と同様である。本実施形態の状態推定装置10および状態推定方法は、第4実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果をこれまでと同様に得ることができる。
【0078】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、図20を参照して説明する。本実施形態では、第4実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0079】
撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況では、視覚慣性オドメトリVIOによる車両1の姿勢φの推定精度が低下し易い。逆に考えると、視覚慣性オドメトリVIOによる車両1の姿勢φの推定精度が低下している場合、撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況になっている可能性がある。
【0080】
このこと鑑み、異常判定部31は、図20に示すように、車両1に設置された操舵角センサ5のセンサ出力および演算部26で求めた車両1の姿勢φに基づいて、撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況であるか否かを判定する。例えば、異常判定部31は、操舵角センサ5のセンサ出力から求めた車両1の姿勢φと演算部26で求めた車両1の姿勢φとが基準値を超えて乖離している場合に、異常な状況であると判定する。
【0081】
その他については、第4実施形態と同様である。本実施形態の状態推定装置10および状態推定方法は、第4実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果をこれまでと同様に得ることができる。
【0082】
また、本実施形態の状態推定装置10は、以下の特徴を備える。
【0083】
(1)異常判定部31は、操舵角センサ5のセンサ出力および演算部26で求めた車両1の姿勢φに基づいて、撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況であるか否かを判定する。このように、車両1に既設の操舵角センサ5のセンサ出力を利用して異常な状況であるか否かを判定する構成とすれば、撮像部2の異常判定専用のセンサ機器を追加する必要がないので、簡易な形態で車両1の状態の推定を継続することができる。
【0084】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、図21を参照して説明する。本実施形態では、第4実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0085】
撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況では、視覚慣性オドメトリVIOによる速度vの推定精度が低下し易い。逆に考えると、視覚慣性オドメトリVIOによる車両1の速度vの推定精度が低下している場合、撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況になっている可能性がある。
【0086】
このこと鑑み、異常判定部31は、図21に示すように、車両1に設置された車輪速センサ4のセンサ出力および演算部26にて求めた車両1の速度vに基づいて、撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況であるか否かを判定する。例えば、異常判定部31は、車輪速センサ4のセンサ出力から求めた車両1の速度vと演算部26で求めた車両1の速度vとが基準値を超えて乖離している場合に、異常な状況であると判定する。
【0087】
その他については、第4実施形態と同様である。本実施形態の状態推定装置10および状態推定方法は、第4実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果をこれまでと同様に得ることができる。
【0088】
また、本実施形態の状態推定装置10は、以下の特徴を備える。
【0089】
(1)異常判定部31は、車輪速センサ4のセンサ出力および演算部26で求めた車両1の速度vに基づいて、撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況であるか否かを判定する。このように、車両1に既設の車輪速センサ4のセンサ出力を利用して異常な状況であるか否かを判定する構成とすれば、撮像部2の異常判定専用のセンサ機器を追加する必要がないので、簡易な形態で車両1の状態の推定を継続することができる。
【0090】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について、図22を参照して説明する。本実施形態では、第4実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0091】
撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況では、視覚慣性オドメトリVIOによる位置p、速度v、姿勢φの推定精度が低下し易い。このため、撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況では、演算部26で求める車両1の位置p、速度v、姿勢φと推定部30で推定する車両1の位置p、速度v、姿勢φとが乖離し易い。
【0092】
このこと鑑み、異常判定部31は、図22に示すように、演算部26で求めた車両1の位置p、速度v、姿勢φおよび推定部30で推定した位置p、速度v、姿勢φに基づいて、撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況であるか否かを判定する。例えば、異常判定部31は、演算部26にて求めた車両1の位置p、速度v、姿勢φの少なくとも1つが推定部30で推定した車両1の位置p、速度v、姿勢φに対して基準値を超えて乖離している場合に、異常な状況であると判定する。
【0093】
その他については、第4実施形態と同様である。本実施形態の状態推定装置10および状態推定方法は、第4実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果をこれまでと同様に得ることができる。
【0094】
また、本実施形態の状態推定装置10は、以下の特徴を備える。
【0095】
(1)異常判定部31は、演算部26で求めた車両1の位置p、速度v、姿勢φおよび推定部30で推定した車両1の位置p、速度v、姿勢φに基づいて、撮像部2が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況であるか否かを判定する。これによれば、撮像部2の異常判定専用のセンサ機器を追加する必要がないので、簡易な形態で車両1の状態の推定を継続することができる。
【0096】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について、図23を参照して説明する。本実施形態では、第4実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0097】
慣性計測装置3のバイアス誤差は、慣性計測装置3の温度に応じて変化する特性を有する。このため、補正部28にて補正データを算出する際に用いるバイアス推定値は、固定値ではなく、慣性計測装置3の温度に応じて変化する可変値であることが望ましい。
【0098】
このことを考慮し、補正部28は、図23に示すように、慣性計測装置3の温度の計測結果に応じてバイアス推定値を補正し、補正後のバイアス推定値を慣性データから除去することで補正データを算出する。例えば、慣性計測装置3の温度が上昇するとバイアス誤差が大きくなり易い場合は、補正部28は、慣性計測装置3の温度の上昇時に、メモリ50に記憶されたバイアス推定値に所定値を加算して補正する。
【0099】
ここで、慣性計測装置3の温度を計測する手段は、慣性計測装置3に付加した温度センサ6でもよいし、外気温および慣性計測装置3の使用状況からの推定でもよい。また、バイアス推定値の補正は、上記したものに限定されず、他の方法で実施されていてもよい。
【0100】
その他については、第4実施形態と同様である。本実施形態の状態推定装置10および状態推定方法は、第4実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果をこれまでと同様に得ることができる。
【0101】
また、本実施形態の状態推定装置10は、以下の特徴を備える。
【0102】
(1)補正部28は、慣性計測装置3の温度に応じてバイアス推定値を補正し、補正後のバイアス推定値を慣性データから除去することで補正データを算出する。これによると、撮像部2が所期の機能を発揮することができない異常な状況になったとしても、車両1の状態の推定を適切な形態で継続することができる。
【0103】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0104】
上述の実施形態の状態推定装置10は、車両1に適用した例について説明したが、これに限定されない。状態推定装置10は、車両1以外の移動体に適用可能である。
【0105】
上述の実施形態の状態推定装置10は、車両1の位置p、速度v、姿勢φそれぞれを推定するものを例示したが、これに限定されない。状態推定装置10は、車両1の位置p、速度v、姿勢φの一部を含む状態を推定するようになっていてもよい。
【0106】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0107】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0108】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0109】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0110】
(本開示の特徴)
[開示1]
移動体(1)の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定する状態推定装置であって、
前記移動体の周囲を撮像する撮像部(2)が出力する画像データおよび前記移動体に設置された慣性計測装置(3)が出力する前記移動体の慣性データを読み込む入力部(22)と、
前記画像データに含まれる特徴点の抽出および前記特徴点のトラッキングを行うとともに、前記慣性データに基づいて前記移動体の位置、速度、姿勢を算出する前処理部(24)と、
前記画像データの特徴点、前記慣性データに基づく前記移動体の位置、速度、姿勢に対してバンドル調整を実施して前記慣性計測装置のバイアス誤差を求める演算部(26)と、
前記慣性データから前記バイアス誤差を除去した補正データを求める補正部(28)と、
前記補正データに基づいて前記移動体の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定する推定部(30)と、
を備える状態推定装置。
【0111】
[開示2]
前記推定部は、前記補正データおよび前記移動体に設置された車輪速センサ(4)のセンサ出力に基づいて、前記移動体の速度を求め、求めた前記移動体の速度に基づいて前記移動体の位置を推定する、開示1に記載の状態推定装置。
【0112】
[開示3]
前記慣性計測装置は、前記移動体の角速度を検出するジャイロセンサ(3a)および前記移動体の加速度を検出する加速度センサ(3b)を含み、
前記推定部は、
前記ジャイロセンサのセンサ出力を前記補正部で補正したものに基づいて前記移動体の姿勢を示す第1姿勢角を求め、
前記加速度センサのセンサ出力を前記補正部で補正したものおよび前記移動体の車輪速センサのセンサ出力から求めた重力加速度に基づいて前記移動体の姿勢を示す第2姿勢角を求め、
前記第1姿勢角を相補フィルタのハイパスフィルタを通し、前記第2姿勢角を前記相補フィルタのローパスフィルタを通した後に両者を合成することで、前記移動体の姿勢を推定する、開示1または2に記載の状態推定装置。
【0113】
[開示4]
前記撮像部が所期の機能を発揮することが困難な異常な状況であるか否かを判定する異常判定部(31)を備え、
前記補正部は、
前記異常な状況でない場合は前記慣性データから前記バイアス誤差を除去することで前記補正データを算出し、
前記異常な状況になると、前記演算部で求めた前記バイアス誤差に代えて、事前にメモリに記憶していたバイアス推定値を前記慣性データから除去することで前記補正データを算出する、開示1ないし3のいずれか1つに記載の状態推定装置。
【0114】
[開示5]
前記異常判定部は、前記画像データに基づいて前記異常な状況であるか否かを判定する、開示4に記載の状態推定装置。
【0115】
[開示6]
前記異常判定部は、前記移動体に設置された操舵角センサ(5)のセンサ出力および前記演算部で求めた前記移動体の姿勢に基づいて前記異常な状況であるか否かを判定する、開示4または5に記載の状態推定装置。
【0116】
[開示7]
前記異常判定部は、前記移動体に設置された車輪速センサ(4)のセンサ出力および前記演算部で求めた前記移動体の速度に基づいて前記異常な状況であるか否かを判定する、開示4ないし6のいずれか1つに記載の状態推定装置。
【0117】
[開示8]
前記異常判定部は、前記演算部で求めた前記移動体の位置、速度、姿勢および前記推定部で推定した前記移動体の位置、速度、姿勢に基づいて前記異常な状況であるか否かを判定する、開示4ないし7のいずれか1つに記載の状態推定装置。
【0118】
[開示9]
前記補正部は、前記慣性計測装置の温度に応じて前記バイアス推定値を補正し、補正後の前記バイアス推定値を前記慣性データから除去することで前記補正データを算出する、開示4ないし8のいずれか1つに記載の状態推定装置。
【0119】
[開示10]
移動体(1)の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定する状態推定方法であって、
前記移動体の周囲を撮像する撮像部(2)が出力する画像データおよび前記移動体に設置された慣性計測装置(3)が出力する前記移動体の慣性データを読み込むことと、
前記画像データに含まれる特徴点の抽出および前記特徴点のトラッキングを行うとともに、前記慣性データに基づいて前記移動体の位置、速度、姿勢を算出することと、
前記画像データの特徴点、前記慣性データに基づく前記移動体の位置、速度、姿勢に対してバンドル調整を実施して前記慣性計測装置のバイアス誤差を求めることと、
前記慣性データから前記バイアス誤差を除去した補正データを求めることと、
前記補正データに基づいて前記移動体の位置、速度、姿勢の少なくとも1つを含む状態を推定することと、
を含む状態推定方法。
【符号の説明】
【0120】
1 車両(移動体)
2 撮像部
3 慣性計測装置
10 状態推定装置
22 入力部
24 前処理部
26 演算部
28 補正部
30 推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23