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特開2023-183784加熱調理器による調理方法および加熱調理器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183784
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】加熱調理器による調理方法および加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20231221BHJP
   F24C 7/02 20060101ALI20231221BHJP
   F24C 1/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A47J27/00 109L
F24C7/02 320Z
F24C1/00 370M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097485
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 智志
(72)【発明者】
【氏名】小林 博明
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一也
【テーマコード(参考)】
3L086
4B055
【Fターム(参考)】
3L086AA13
3L086CB05
3L086CC04
3L086DA26
4B055AA10
4B055BA61
4B055CD02
4B055DB13
4B055DB15
4B055GA04
4B055GB01
4B055GC01
4B055GD03
(57)【要約】
【課題】短時間で被調理物に調味液の味をしみ込ませることを促進し、かつ煮崩れなく風味を損なわない加熱調理器による調理方法を提供する。
【解決手段】本発明の加熱調理器による調理方法では、マイクロ波加熱手段としてのマグネトロン19と、オーブン加熱手段としての熱風ヒータユニット41とを備え、マグネトロン19により被調理物としての被調理物Sの食材をマイクロ波加熱する工程と、マイクロ波加熱された食材に調味液を加えたものとしての被調理物Sを熱風ヒータユニット41により熱風コンベクション加熱する工程と、を有する構成としている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波加熱手段とオーブン加熱手段とを備える加熱調理器による調理方法であって、
前記マイクロ波加熱手段により被調理物をマイクロ波加熱する工程と、
前記マイクロ波加熱された前記被調理物に調味液を加えたものを前記オーブン加熱手段により熱風コンベクション加熱する工程と、
を有することを特徴とする加熱調理器による調理方法。
【請求項2】
前記加熱調理器は、前記調味液の温度を検知する温度検知手段と、前記オーブン加熱手段を制御する制御手段とをさらに備え、
前記熱風コンベクション加熱する工程では、前記温度検知手段が検知した前記調味液の温度に基づいて前記調味液を沸騰しない温度に維持するように前記制御手段が前記オーブン加熱手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器による調理方法。
【請求項3】
マイクロ波加熱するマイクロ波加熱手段と、
熱風コンベクション加熱するオーブン加熱手段と、を備え、
前記マイクロ波加熱手段により被調理物をマイクロ波加熱し、前記マイクロ波加熱された前記被調理物に調味液を加えたものを前記オーブン加熱手段により熱風コンベクション加熱する自動加熱調理機能を有することを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味液に浸した被調理物に当該調味液の味をしみ込ませる加熱調理器による調理方法および加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱調理器の調理方法として、例えば特許文献1には、被調理物である食材と調味液を圧力調理用の鍋に入れ、先ず常圧の沸騰温度である100℃を超えて高圧状態の沸騰温度である130℃付近まで鍋の温度を上昇させて維持し、食材の各々に十分に火を通し、その後、火通りが良く味のしみ込みやすい煮込み温度の80℃付近まで鍋の温度を下降させて維持するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-261476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の加熱調理器の調理方法では、食材に調味液の味をしみ込ませるのに長い時間を必要としていた。例えば特許文献1の加熱調理器の調理方法は、鍋を加熱することで調味液の温度を上昇させ、当該調味液を熱媒体として調味液に浸した食材へ熱を伝えることにより、この調味液の味を食材にしみ込ませる方法を採用しているが、この方法では、先ず鍋により調味液を加熱して昇温させて沸騰させることで煮込む、または調味液の沸騰温度近傍で煮込むため、当該調味液を沸騰させる時間、または沸騰温度近傍まで昇温させる時間が必要であった。また調味液を高温にし、または沸騰させて煮込むことで、調味液の風味、香りやコクが抜けてしまうことが知られており、風味を損なわずに味をしみ込ませるために沸騰手前の高温で時間をかけて煮込む必要があった。
【0005】
また特許文献1の加熱調理器の調理方法など、調味液が高圧状態の高温であるほど味がしみ込みやすいことが知られている一方で、例えばダイコンやニンジンなどの根菜類は煮崩れを避けるために、調味液を沸騰させた後に80℃~100℃にして過剰に沸騰させることを避け、時間をかけて煮込んで味をしみ込ませる必要があった。
【0006】
そこで本発明は、短時間で被調理物に調味液の味をしみ込ませることを促進し、かつ煮崩れなく風味を損なわない加熱調理器による調理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加熱調理器による調理方法は、被調理物を収容した容器をマイクロ波加熱手段によりマイクロ波加熱する工程と、前記加熱された前記被調理物に加えて調味液を収容した前記容器をオーブン加熱手段により熱風コンベクション加熱する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加熱調理器の調理方法によれば、被調理物の軟化および被調理物に調味液の味をしみ込ませることを短時間で行うことができ、調理時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る加熱調理器の縦断面概略図である。
図2】同上、電気的構成を示すブロック図である。
図3】同上、表示部の平面図である。
図4】同上、料理メニューの設定が「おでん」、マイクロ波加熱の工程の設定が「味しみ」で調理コースが設定されたときの加熱調理工程および保温工程における、被調理物の温度の経時的な変化を示すグラフである。
図5】本発明の第2の実施形態に係る加熱調理器の表示部の平面図である。
図6】同上、料理メニューの設定が「おでん」、マイクロ波加熱の工程の設定が「味しみ」で調理コースが設定されたときの加熱調理工程および保温工程における、被調理物の温度の経時的な変化を示すグラフである。
図7】本発明の第2の実施形態の変形例に係る加熱調理器の、料理メニューの設定が「おでん」、マイクロ波加熱の工程の設定が「味しみ」で調理コースが設定されたときの加熱調理工程および保温工程における、被調理物の温度の経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明における好ましい加熱調理器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
【実施例0011】
図1および図2は、本発明をオーブンレンジに適用した第1の実施形態を示している。先ず、図1に基づいて、本実施形態におけるオーブンレンジの全体構成を説明すると、1は上面を開口した本体、2は本体1の開口上面を覆う開閉可能な蓋体であり、これらの本体1と蓋体2とによりオーブンレンジの外観が構成される。本体1は上面を開口した有底筒状の加熱庫3を有し、蓋体2を開けたときに、被調理物Sである食材や調味液などを収容する有底筒状の容器13aが着脱自在に収容される構成となっている。そして本体1に容器13aを入れて蓋体2を閉じると、蓋体2の下面部に装着された内蓋13bが容器13aの開口上面を塞ぐように構成される。
【0012】
加熱庫3は、例えばステンレス、アルミメッキ鋼板などの耐熱性および耐食性を有してマイクロ波を反射する金属製であり、容器13aに対向する内表面には、例えばシリコーン系、セラミックス系などの耐熱性塗装が施されている。そして加熱庫3は、加熱調理すべき被調理物Sを収容した容器13aを内部に収容する調理室12を形成する。調理室12の内面を形成する内壁は、底壁12bと、周壁12dとからなり、蓋体2下面部に内蓋13bの温度を検出する温度検出手段としての、サーミスタや湿度センサで構成される蓋温度センサ14が設けられる。調理室12の底壁12bにはマイクロ波透過部24が設けられており、このマイクロ波透過部24は、マイクロ波を透過するガラスやセラミックなどからなる。
【0013】
本実施形態のマイクロ波加熱手段は調理室12のマイクロ波透過部24の下方から調理室12の内部空間に向けてマイクロ波を放射する構成を採用しており、本体1の下部に、調理室12内に電波であるマイクロ波を供給するためのマイクロ波発生手段としてのマグネトロン19が設けられ、調理室12の底壁12bとマイクロ波透過部24との間に導波管21が設けられる。マイクロ波発生装置は、マグネトロン19やこのマグネトロン19を駆動するマグネトロン駆動装置37(図2参照)、導波管21の他に、マイクロ波透過部24の下方に設けられる回転アンテナ28と、この回転アンテナ28を回転させるアンテナ回転モータ29と、により主に構成される。また27は、導波管21の一部および金属板材で構成され、回転アンテナ28を収納している凹状のアンテナ収納部であり、このアンテナ収納部27の上面開口をマイクロ波透過部24で覆っている。
【0014】
回転アンテナ28は、マグネトロン19で発振されて導波管21により回転アンテナ28の直下に導かれたマイクロ波を撹拌し、このマイクロ波を、マイクロ波透過部24を透過させて容器13aに万遍なく照射するものであり、マイクロ波透過部24に対向して、回転アンテナ28の全体がマイクロ波透過部24と平行に配置される。
【0015】
30は、オーブン庫11の下部に設けられ、容器13aの下部の表面温度を検知する底温度センサである。この底温度センサ30は、容器13aに非接触の赤外線センサなどで構成され、容器13a内の温度を検出する容器温度検出手段として作用している。なお底温度センサ30をサーミスタなどの接触式の温度センサにして、容器13aに接触させる構成にしてもよい。
【0016】
41は、本体1の内部において、調理室12の室外側方に具備されるオーブン加熱用の熱風ヒータユニットである。この熱風ヒータユニット41は、被調理物Sを収容した容器13aの加熱手段として設けられており、周壁12dに取付けられる凸状のケーシング42と、空気を加熱する熱風ヒータ43と、調理室12内に加熱した空気を送り込んで循環させる熱風ファン44と、熱風ファン44を所定方向に回転させる電動の熱風モータ45と、により概ね構成される。周壁12dとケーシング42との間の内部空間として、調理室12の室外側方に形成された加熱室46には、熱風ヒータ43と熱風ファン44がそれぞれ配設される。
【0017】
熱風ファン44は、軸方向に取り入れた空気を、回転時の遠心力によって、軸方向と直角な放射方向に吐き出すいわゆる遠心ファンとして設けられており、管状の熱風ヒータ43は熱風ファン44の放射方向を取り囲んで配置される。本実施形態では発熱部でもある熱風ヒータ43は、例えばシーズヒータ、マイカヒータ、石英管ヒータやハロゲンヒータなどを用いているが、これは一例である。周壁12dは、その中央の高さ近傍に吸込み口47を備えており、吸込み口47の周囲には複数の熱風吹出し口48を備えている。これらの吸込み口47や熱風吹出し口48は、調理室12と加熱室46との間を連通する通風部として機能するものである。
【0018】
そして本実施形態では、熱風モータ45への通電に伴い熱風ファン44が回転駆動すると、調理室12の内部から吸込み口47を通して吸引された空気が、熱風ファン44の放射方向に吹出して、通電した熱風ヒータ43により加熱され、熱風が熱風吹出し口48を通過して、調理室12内に供給される。これにより、調理室12の内外で熱風を循環させる経路が形成され、調理室12内の被調理物Sや容器13aを熱風コンベクション加熱でオーブン加熱する構成となっている。
【0019】
その他、蓋体2には蓋ヒータとしての庫内天面ヒータ22が配設され、アンテナ収納部27内の回転アンテナ28と干渉しない外周付近に、シーズヒータなどで構成される下ヒータとしての庫内底面ヒータ23が配設される。庫内底面ヒータ23は。下方から輻射加熱することにより被調理物Sや容器13aをグリル加熱するものである。また庫内天面ヒータ22は、内蓋13bを加熱することにより、容器13a内から発生する蒸気が内蓋13b内面へ結露することを抑制するものである。
【0020】
容器13aは有底筒状を有しており、例えば合成樹脂材料であるLCP(Liquid Crystal Polymer:液晶ポリマー)樹脂やセラミックスなどの、マイクロ波を透過し耐熱性を有する素材で形成される。ここで、例えば熱伝導率2W/mKのセラミックスで形成された容器13aは、一般にオーブン加熱や炊飯器の容器としての鍋に用いられる、熱伝導率53W/mKの鋼材、熱伝導率372W/mKの銅、熱伝導率204W/mKのアルミニウム、熱伝導率16W/mKのステンレスで形成されたものと比較して熱伝導率が低い。そのためマイクロ波透過部24に容器13aを載置して庫内底面ヒータ23により容器13aの外底面を加熱し、また容器13aの熱伝導により容器13a全体を加熱する構成では局部加熱となってしまう。しかしながら本実施形態の容器13aは開口部上縁から外側に延びるフランジ部13cを有しており、このフランジ部13c下面を加熱庫3の開口部上縁に載置することにより、容器13aが調理室12内に吊設状態で収容される。そのため容器13a下面とマイクロ波透過部24との間に隙間が形成され、庫内底面ヒータ23により加熱する場合でも容器13aの外底面全体を輻射熱で均一に加熱でき、また熱風ヒータユニット41によりオーブン加熱する場合でも、調理室12内を熱風循環加熱する熱風が隙間を通り、容器13aの全面を加熱することができる。
【0021】
内蓋13bは容器13aの上方開口部と略同径の円盤状を有する金属材料からなり、略皿形状に形成されて、蓋体2を閉じた蓋閉時に、容器13aのフランジ部13cの上面に内蓋13bの周端部が当接して、この容器13aと内蓋13bとの間の隙間を塞いでいる。なお容器13aと内蓋13bとの間をシールするために、内蓋13bの外側全周に弾性部材としての蓋パッキンを設ける構成にしてもよい。
【0022】
蓋体2には蒸気通路62および蒸気口63が設けられており、内蓋13bには蒸気孔13dが設けられて、蒸気口63、蒸気通路62および蒸気孔13dを介して容器13a内とオーブンレンジの外の外気とが連通している。また65は、蒸気孔13dの上に設けられて蒸気通路62を開閉する加圧調整弁であり、容器13a内を加圧状態にする場合には、加圧調整弁65で蒸気孔13dを閉塞させることにより蒸気通路62を閉塞し、容器13aの開口部をすべて密閉する。ここでマグネトロン駆動装置37や熱風ヒータユニット41などにより容器13aや被調理物Sが加熱されることにより、被調理物Sから蒸気が発生して容器13aの内圧が上昇することにより容器13a内を加圧状態にする。そのため本実施形態では、例えば105℃~120℃の所定の加圧水蒸気状態に容器13a内を保持することができるように構成されている。また容器13a内の蒸気を外部へ放出する場合には、加圧調整弁65が塞いでいた蒸気孔13dを開放することで蒸気通路62を開放し、容器13aへの加熱に関係なく容器13a内部を大気圧に維持する。
【0023】
13eは、内蓋13bに設けられた減圧孔であり、66は、蓋体2を本体1に閉じた状態で、容器13aの内部を通常の大気圧よりも低くするための減圧ポンプである。そして67は、減圧孔13eの上に設けられ、減圧ポンプ66と容器13aの内部とを連通する図示しない減圧経路を開閉する減圧調整弁である。減圧ポンプ66は、容器13aを調理室12に収容し、蓋体2を閉じた後に加圧調整弁65が蒸気通路62を塞ぎ、減圧調整弁67が減圧経路を開いた状態で、密閉した容器13aの内部圧力を低下させる。また容器13a内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す場合には、減圧ポンプ66の動作を停止し、減圧調整弁67が閉じる一方で加圧調整弁65が開いて蒸気通路62を開放する。つまり脱気手段としての減圧ポンプ66、減圧調整弁67および加圧調整弁65は、容器13a内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す圧力戻し手段としての構成を兼用している。
【0024】
図2は、本実施形態のオーブンレンジの主な電気的構成を図示したものである。同図において、31はマイクロコンピュータにより構成される制御手段であり、この制御手段31は周知のように、演算処理手段としてのCPUや、記憶媒体としてのメモリなどの記憶手段32や、時刻や調理に関する時間など様々な時間を計時するタイマなどの計時手段33や、入出力デバイスなどを備えている。
【0025】
制御手段31の入力ポートには、前述した蓋温度センサ14や底温度センサ30の他に、操作手段7と、蓋体2の開閉状態を検出する蓋体開閉検出手段34と、熱風ファン44の回転速度を検出する熱風モータ回転検出手段35と、マイクロ波発生装置を構成する回転アンテナ28の原点位置を検出するアンテナ位置検出手段36とが、それぞれ電気的に接続される。また制御手段31の出力ポートには、前述したマグネトロン駆動装置37や減圧ポンプ66の他に、表示手段6と、調理室12内にマイクロ波を放射する回転アンテナ28を回転駆動させるアンテナ回転モータ29を動作させるための回転アンテナ駆動手段38と、オーブン加熱用の熱風ヒータ43や、グリル加熱用の庫内天面ヒータ22および庫内底面ヒータ23をそれぞれ通断電させるリレーなどのヒータ駆動手段39と、熱風モータ45を回転駆動させるための熱風モータ駆動手段40と、が、それぞれ電気的に接続される。
【0026】
表示手段6は、表示や報知や操作のために、調理の設定内容や進行状況などを表示するものであり、操作手段7としてのタッチセンサは、例えば表示手段6の後述するLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)16の表面に配設され、加熱調理に関する各種の操作入力を可能にするものである。表示手段6の裏側には、図示しないが、表示手段6や操作手段7などの制御を行なうために、操作パネルPC(印刷回路)板が配置される。
【0027】
タッチセンサで構成された操作手段7は、例えば、導電性ポリマーによる透明電極部と操作パネルPC板に接続する接点部との間をパターン配線で繋いだ構成要素が、タッチキーとして複数配設されるものであり、LCD16に表示される複数のボタン表示部の何れかに、操作手段7を介してタッチ操作を行なうことで、そのボタン表示部の上に配設され、当該ボタン表示部に対応したタッチキーがタッチ操作されて、このボタン表示部が選択される構成となっている。
【0028】
制御手段31は、操作手段7からの操作信号と、蓋温度センサ14や、蓋体開閉検出手段34や、熱風モータ回転検出手段35や、アンテナ位置検出手段36からの各検出信号を受けて、計時手段33からの計時に基づく所定のタイミングで、マグネトロン駆動装置37や、回転アンテナ駆動手段38や、ヒータ駆動手段39や、熱風モータ駆動手段40に駆動用の制御信号を出力し、また表示手段6に表示用の制御信号を出力する機能を有する。こうした機能は、記憶手段32に記憶したプログラムを制御手段31が読み取ることで実現するが、特に本実施形態では、制御手段31を加熱制御手段51と、表示制御部52として機能させるプログラムを備えている。
【0029】
加熱制御手段51は、主に被調理物の加熱調理に係る各部の動作を制御するもので、操作手段7の操作に伴う操作信号を受け取ると、蓋体開閉検出手段82からの検出信号により、蓋体2が閉じていると判断した場合に、その操作信号に応じて、マグネトロン駆動装置37や、回転アンテナ駆動手段38や、ヒータ駆動手段39や、熱風モータ駆動手段40に制御信号を送出して、被調理物に対する種々の加熱調理を制御する。またオーブンレンジで加熱調理を行なうことが可能な全ての料理メニューの調理情報が記憶手段32に記憶保持されており、加熱制御手段51は、記憶手段32に記憶された料理メニューの中から選択された一つの料理メニューについて、操作手段7から調理開始を指示する操作が行われると、その選択された料理メニューの調理情報に従う所定の手順である調理コースが設定され、その調理コースの加熱パターンで被調理物を加熱調理する構成となっている。
【0030】
なお料理メニューは、手動料理メニューと自動料理メニューとを有している。手動料理メニューは、オーブン加熱やマイクロ波加熱などの加熱調理の種類や出力、加熱調理時の調理室12の庫内温度や調理時間を手動で設定する料理メニューである。また自動料理メニューは、加熱調理の種類や出力、加熱調理時の調理室12の庫内温度や調理時間の設定が記憶手段32に予め記憶されており、選択されるとその設定に従って被調理物Sを加熱調理する料理メニューである。
【0031】
表示制御部52は、加熱制御手段51と連携して、表示手段6の表示に係る動作を制御するものである。表示制御部52の制御対象となる表示手段6は、液晶パネルや照明灯により構成されるが、それ以外の表示器を用いてもよい。
【0032】
図3は本実施形態の表示手段6の平面図である。同図を参照して説明すると、表示手段6は、調理に関わる様々な情報を表示するための、画面表示部としてのLCD16や状態表示部としてのLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)表示部17から構成される。LED表示部17は、実際のオーブンレンジの状態を表示するもので、本実施形態では、マイクロ波加熱が実施されていているときに「マイクロ波」のLED表示部17-1が点灯し、加熱が実施されて容器13aが昇温しているときに「昇温」の工程LED表示部17-2が点灯し、容器13aの内部が加圧されているときに「加圧」の工程LED表示部17-3が点灯し、容器13aの内部が加圧状態から大気圧に戻るときや、減圧ポンプ66により容器13aの内部が大気圧より低い減圧状態になると、「排圧」の工程LED表示部17-4が点灯し、後述する煮込み工程が実施されているときに、「煮込み」の工程LED表示部17-5が点灯し、保温工程に移行すると「保温」の工程LED表示部17-6が点灯するように表示制御部52がLED表示部17を制御する。そのため、LCD16のバックライトを減光させた減光状態のときでも、ユーザがLED表示部17を確認することで炊飯器の現在の状態を一目で理解することができる。ここでLED表示部17のそれぞれのLED表示部が点灯したときの光の色をそれぞれ異ならせてもよく、炊飯器が現在どのような状態であるかを一目で理解できる。なお本実施形態ではLED表示部17の位置について、LCD16の近傍に配置されているが、LCD16から離れた位置に配置されてもよい。またLED表示部17を除く構成にして、このLED表示部17の表示内容をLCD16で表示するように構成してもよい。
【0033】
ユーザが予め本体1に設けた電源プラグを家庭用のコンセントに差し込むと、表示手段6や制御手段31などの各部に必要な電力が投入される。このとき表示制御手段52は、所定時間経過後または所定の起動時表示画面の表示に、図3に示すようなメイン画面G1の配置を表示するようにLCD16を制御する。
【0034】
メイン画面G1の説明をすると、その上部には、「料理メニュー」のボタン表示部B1および料理メニュー選択表示部D2を左右に並べて表示したメニュー選択キー表示領域A1が形成されている。ここで「料理メニュー」のボタン表示部B1は、「料理メニュー」なるテキスト表示体D1を含む。また料理メニュー選択表示部D2は、現在選択されている料理メニューを表示するものであり、例えば図4では「おでん」が表示されている。
【0035】
「料理メニュー」のボタン表示部B1は、被調理物を自動料理メニューで加熱調理するために料理メニューの種類を選択するのに操作されるもので、「料理メニュー」のボタン表示部B1をタッチ操作すると、表示制御手段52が、選択可能な料理メニューが一覧表示された料理メニュー選択画面(図示せず)を表示するようにLCD16を制御し、この料理メニュー選択画面で料理メニューの種類、例えば「おでん」の料理メニューが選択されると、表示制御手段52が、選択された料理メニュー、例えば「おでん」を料理メニュー選択表示部D2に表示するようにLCD16を制御する。なお料理メニュー選択画面で選択可能な料理メニューは、おでんの他にも、例えば豚の角煮、煮豚、スペアリブ煮、チャーシュー、鶏の毛羽先煮など、柔らかく煮るのに時間がかかり、骨があって火が通り難い食材を用いた料理の料理メニューや、例えばカレー、シチュー、もつ煮、牛スジ肉の煮込みなどの煮込み料理の料理メニューや、例えば五目豆、ポークビーンズ、黒豆など、柔らかく煮るのに時間がかかる煮豆料理の料理メニューや、例えば豚汁、筑前煮、ブリ大根など、素材に大根、ごぼう、れんこん、にんじんなどの根菜類を用いた料理の料理メニューや、骨も食べられる魚の料理メニューや、食材として栗、さつまいも、とうもろこし、離乳食、生の小豆などから作成する赤飯の料理メニューや、例えば鶏肉ガラを煮だして鶏ガラスープ、豚骨を煮だして豚骨スープなどのスープ料理の料理メニューなどの料理メニューがある。なお、これらの料理メニューは一例であり、従来の電気圧力鍋と同様の各種メニューを料理メニュー選択画面で選択可能にしてもよい。
【0036】
メニュー選択表示領域A1の下には、「味しみ」選択のボタン表示部B3と、この「味しみ」選択のボタン表示部B3がマイクロ波を併用するか否かを選択するボタン表示部であることを連想させる「マイクロ波併用」なるテキスト表示体D4とが上下に並べて表示される味しみ選択表示領域A2と、調理完了までの残時間を表示する残時間表示部D5とが左右に並べて表示される。ここで「味しみ」選択のボタン表示部B3は、マイクロ波併用選択表示部D3を含み、図4では「味しみ」が表示されている。
【0037】
「味しみ」選択のボタン表示部B3は、現在、料理メニュー選択表示部D2に表示されている料理メニューで、マイクロ波加熱の工程を併用するかを選択するのに操作されるもので、「味しみ」選択のボタン表示部B3をタッチ操作すると、表示制御手段52が、選択可能なマイクロ波加熱の工程が一覧表示されたマイクロ波加熱選択画面(図示せず)を表示するようにLCD16を制御し、このマイクロ波加熱選択画面でマイクロ波加熱の工程の種類、例えば「味しみ」が選択されると、表示制御手段52が、選択されたマイクロ波加熱の工程、例えば「味しみ」をマイクロ波併用選択表示部D3に表示するようにLCD16を制御する。なおマイクロ波加熱選択画面で選択可能なマイクロ波加熱の工程は、「味しみ」の他にも、マイクロ波加熱の工程を行なわない「なし」などがあってもよく、これらのマイクロ波加熱の工程は一例である。
【0038】
味しみ選択表示領域A2および残時間表示部D5の下には、「調理開始」なるテキスト表示体D6を含む「調理開始」のボタン表示部B6と、「切」なるテキスト表示体D7を含む「切」のボタン表示部B7と、を左右に並べて配置している。
【0039】
「調理開始」のボタン表示部B6は調理を開始、再開する際に操作されるもので、「調理開始」のボタン表示部B6をタッチ操作すると、加熱制御手段51が、現在、メイン画面G1に表示された料理メニューの設定およびマイクロ波加熱の工程の設定を今回の調理コースの設定として記憶手段32に記憶し、また記憶手段32に記憶した今回の調理コースの設定で、調理室12に収容された容器13a内の被調理物に対する加熱調理開始の制御をする構成となっている。
【0040】
「切」のボタン表示部B7は加熱調理をやめる際に操作されるもので、「切」のボタン表示部B7をタッチ操作すると、加熱調理制御部34が、調理室12内に収容された容器13a内の被調理物に対する加熱を中止して切状態にする制御を行なう。
【0041】
次に、本実施形態のオーブンレンジについて、その作用を説明する。先ず味のしみ込みについて説明すると、物質の濃度が高い方から低い方へと移動し、同一の濃度になろうとする物理現象である「拡散」が関係している。例えばダイコンなどの野菜類には細胞膜が存在するため、通常は、調味液の中にこれらの野菜類を入れても、水分は調味液と野菜類との間で移動する一方で、食塩やうまみ成分など他の成分は野菜類の中には入っていかない。しかしながら、野菜類の温度が50℃~60℃になると、この細胞膜の機能が低下するため、食塩やうまみ成分など他の成分も水分と共に野菜類の細胞内へと「拡散」するようになる。そして「拡散」は温度が高い方が速やかに実施される。
【0042】
図4は、料理メニューの設定が「おでん」、マイクロ波加熱の工程の設定が「味しみ」で調理コースが設定されたときの加熱調理工程および保温工程における、底温度センサ30の検出温度から算出された被調理物Sの温度tの経時的な変化をグラフで示したものである。
【0043】
本実施形態の加熱調理における動作を説明すると、蓋体2を開けて容器13aを取出し、この容器13aに、例えば被調理物Sの下茹でを必要とする食材、例えばダイコンを収容した後に容器13aを調理室12内に配設して蓋体2を閉じる。それと前後して、オーブンレンジの電源プラグをコンセントに差し込んで通電すると、オーブンレンジは加熱が行われていない初期の切(待機)状態となり、表示制御手段52はトップ画面G1を表示させるようにLCD16を制御する。
【0044】
そしてメイン画面G1で料理メニューおよびマイクロ波加熱の工程の設定後に「調理開始」のボタン表示部B6をタッチ操作すると、加熱制御手段51が、現在、メイン画面G1に表示された料理メニューおよびマイクロ波加熱の工程の設定、例えば今回の場合は「おでん」の料理メニュー、「味しみ」のマイクロ波加熱の工程の設定であるため、この設定を今回の調理コースの設定として記憶手段32に記憶する。また表示制御手段52は、記憶手段32に記憶された情報から算出された、現在メイン画面G1に表示されている料理メニューおよびマイクロ波加熱の工程の調理コースの加熱パターンにおける加熱調理工程の時間を残時間表示部D5に表示する。例えば図4に示されるように、料理メニューが「おでん」でマイクロ波加熱の工程が「味しみ」の場合は、記憶手段32に記憶された、この加熱パターンにおける加熱調理工程の時間である「15分」を残時間表示部D5に表示する。そして加熱制御手段51が、設定した調理コースの加熱パターンに沿って調理室12内の容器13aに収容された下茹でを必要とする食材に対するマイクロ波加熱工程の加熱調理を行ない、その後の容器13aに収容された当該食材および調味液の被調理物Sに対する昇温行程、沸騰工程、煮込工程の順に加熱調理を行なう加熱調理工程を実施する。
【0045】
加熱調理工程が開始されると、被調理物Sの下茹でを必要とする食材、今回の場合はダイコンをマイクロ波で加熱するマイクロ波加熱工程に移行する。マイクロ波加熱工程が開始されると、加熱制御手段51はマグネトロン駆動装置37に加熱制御信号を出力して、例えば1000Wなどの所定の出力で、例えば5分などの所定時間、マイクロ波が照射されるようにマグネトロン19を制御し、併せて回転アンテナ駆動手段38に駆動制御信号を出力して、回転アンテナ28を回転させるようにアンテナ回転モータ29を制御する。調味液などがまだ投入されていないためダイコンのみがマイクロ波で加熱され、このダイコンの温度を、野菜に含まれる酵素としてのPME(Pectin Methylesterase:ペクチンメチルエステラーゼ)が活性化して、細胞間の結合物質であるペクチン質の主成分として野菜や植物に含まれる多糖類であるペクチンが硬化する50℃~70℃の範囲から速やかに昇温通過させることができ、またこのダイコンの温度を、ペクチンが軟化する80℃以上に速やかに到達させることができる。このためマイクロ波加熱により、下茹でを必要とする食材であるダイコンを予め速やかに軟化させ、脱水させることができる。また今回のように被調理物Sの下茹でを必要とする食材がダイコンである場合は、ダイコンの苦み成分であるイソチオシアネート(Isothiocyanate)を減少させることができる。なおメイン画面G1やマイクロ波加熱選択画面で、例えば「1.5cm~2cm厚のダイコン4個」など、下茹でを必要とする食材の種類や量を選択できるように構成してもよく、この選択された食材の種類や量に対応してマイクロ波の出力の設定やマイクロ波加熱工程の時間の設定を変更するように構成してもよい。
【0046】
また加熱調理工程が開始されると、表示制御手段52は「マイクロ波」のLED表示部17-1および「昇温」の工程LED表示部17-2を点灯させるように制御し、計時手段33からの計時に基づき、残時間表示部D5に表示された時間をカウントダウンして表示するようにLCD16を制御する。そのためユーザは、調理工程の進行に伴うおおよその調理時間を調理開始時に把握でき、また調理完了までの残時間が分単位で表示されるため、利便性が向上する。
【0047】
その後、加熱制御手段51は、計時手段33からマイクロ波加熱工程を開始してから所定時間経過した計時信号を受信すると、マイクロ波の照射を停止させるようにマグネトロン19を制御し、回転アンテナ28の回転を停止させるようにアンテナ回転モータ29を制御する。そして表示制御手段52は、残時間表示部D5に表示された時間のカウントダウンを停止させるようにLCD16を制御し、「昇温」の工程LED表示部17-2を消灯させ、「マイクロ波」のLED表示部17-1を点滅させるように制御し、そして図示しないブザーを動作させるように制御して、マイクロ波加熱工程が終了したことを報知する。なお本実施形態のオーブンレンジが通信手段を備えてインターネット回線と接続可能に構成してもよく、このインターネット回線を利用して、ユーザのスマートフォンなどの携帯端末にマイクロ波加熱工程が終了したことを連絡できるように構成してもよい。
【0048】
マイクロ波加熱工程の終了が報知されると、ユーザは蓋体2を開け、ダイコンが高温状態で収容されている容器13aに、例えば被調理物Sの常温もしくは冷たい状態の調味液、例えばおでんの調味液と、被調理物Sの下茹でを必要としない食材、例えばゆでタマゴ、結び昆布、ちくわぶ、つみれ、焼きちくわ、厚揚げなどのおでんの具材とを投入する。ここで高温状態のダイコンと冷たい状態の調味液とが同様の温度になるように熱移動し、両者の温度差が大きいことにより、食材としてのダイコン内への調味液の拡散浸透が促進される。
【0049】
なお容器13aに調味液13aを投入するタイミングが遅れてしまい、マイクロ波加熱工程が終了してから調味液が投入されるまでの時間が長時間になった場合は、ダイコンの温度が低下しておでんの調味液との温度差が少なくなり、前述したダイコン内への調味液の拡散浸透が促進されずに当該ダイコンへの味のしみ込みがあまくなることが想定される。そこで本実施形態では、加熱制御手段51が、底温度センサ30からの検知温度に基づいて、調味液の投入前後の容器13aの温度を検知しており、この調味液の投入前後の温度差が所定の値未満の場合、この値に対応して後述する煮込み工程の時間や加熱パターンを変更するように構成される。なお加熱制御手段51が、マイクロ波加熱工程の終了から蓋体2の開放までの時間を計時手段33で計時しており、当該時間が所定時間以上の場合、この時間に対応して後述する煮込み工程の時間を延長するように構成してもよい。
【0050】
容器13aに調味液および下茹でを必要としない食材を投入して蓋体2を閉じ、例えば「調理開始」のボタン表示部B6をタッチ操作すると、昇温行程に移行し、加熱制御手段51がヒータ駆動手段39に加熱制御信号を出力して熱風ヒータ43を連続通電させるように制御し、併せて熱風モータ駆動手段40に駆動制御信号を出力して熱風ファン44が回転するように熱風モータ45を制御し、容器13aを熱風コンベクション加熱でオーブン加熱する。そして表示制御手段52は、残時間表示部D5に表示された時間のカウントダウンを再開させるようにLCD16を制御し、「マイクロ波」のLED表示部17-1を消灯させ、「昇温」の工程LED表示部17-2を点灯させるように制御する。
【0051】
その後、加熱制御手段51は、底温度センサ30からの検知温度に基づいて被調理物Sの温度tが所定温度以上、例えば95℃以上に達したと判定し、および/または蓋温度センサ14からの検知信号により内蓋13bの温度が所定温度以上、例えば95℃以上に達したことを受信すると、被炊飯物Sの調味液が沸騰温度に達した、または沸騰温度近傍に達したと判定し、次の沸騰工程に移行する。
【0052】
沸騰工程に移行すると、加熱制御手段51は、底温度センサ30および/または蓋温度センサ14からの検知温度に基づいて、例えば7分などの所定の時間、被調理物Sの温度tが、調味液が沸騰しない所定の温度、例えば95℃~98℃に到達し、また当該所定の温度で維持されるように熱風ヒータ43および熱風ファン44を制御する。前述のように高温状態のダイコンに冷たい状態の調味液を投入して食材としてのダイコン内への調味液の拡散浸透を短時間で促進させており、調味液を沸騰させてダイコン内へ調味液の味をしみ込ませる必要がないため、このように調味液が沸騰しない所定の温度に維持することで、調味液を沸騰させることによる、例えば当該調味液の風味や香りが抜けてしまうような食味低下を抑制することができる。またダイコンを、100℃を超える高温で長時間加熱する必要がないため、ダイコンの煮崩れを抑制することができる。
【0053】
ここで前述した昇温行程前の調味液の投入前後の温度差が所定の値未満の場合は、この値に対応して所定の時間や加熱パターンが変更され、例えばダイコンの温度がおでんの調味液と同程度の温度にまで低下していた場合、加熱制御手段51は沸騰工程に移行直後に加圧調整弁65で蒸気孔13dを閉塞させて蒸気通路62を閉塞して容器13a内を加圧状態にし、例えば1分などの所定時間、被調理物Sの温度tが例えば110℃の加圧水蒸気状態に維持されるように熱風ヒータ43および熱風ファン44を制御する。その後、加熱制御手段51は、加圧調整弁65で蒸気孔13dを開放させて蒸気通路62を開放させ、また底温度センサ30および/または蓋温度センサ14からの検知温度に基づいて、例えば10分などの所定の時間、被調理物Sの温度tを例えば95℃~98℃で維持されるように熱風ヒータ43および熱風ファン44を制御する。
【0054】
その後、加熱制御手段51が、沸騰工程の所定の時間が経過した旨の信号を計時手段33より受信すると、次の煮込工程に移行する。
【0055】
煮込工程は被調理物Sの煮込みや食材の味の染み込みを行なう工程であり、加熱制御手段51が底温度センサ30および/または蓋温度センサ14からの検知温度に基づいて、被調理物Sの温度を例えば80~85℃の所定温度まで降下させ、それと共に、蓋温度センサ14の検知温度に基づいて蓋ヒータ16を制御して内蓋5への露付きを防止する。
【0056】
その後、残時間表示部D5に表示された時間が「0」になり、加熱制御手段51が、加熱調理工程の時間が経過した旨の信号を計時手段33より受信すると、熱風ヒータ43の通電を停止させるように制御し、併せて熱風ファン44の回転を停止させるように制御して、オーブン加熱を停止させて煮込工程を終了させる。そして表示制御手段52は、「昇温」の工程LED表示部17-2を消灯させ、「保温」のLED表示部17-6を点灯させるように制御し、そして図示しないブザーを動作させるように制御して、加熱調理工程が完了したことを報知する。なおマイクロ波加熱工程の終了時と同様に、オーブンレンジが通信手段を備えてインターネット回線と接続可能に構成している場合は、このインターネット回線を利用して、ユーザのスマートフォンなどの携帯端末に加熱調理工程が完了したことを連絡できるように構成してもよい。加熱調理工程が完了すると、被調理物Sの温度を例えば70℃の所定温度まで降下させて維持する保温工程に移行する。
【0057】
以上のように本実施形態の加熱調理器による調理方法では、マイクロ波加熱手段としてのマグネトロン19と、オーブン加熱手段としての熱風ヒータユニット41とを備える加熱調理器による調理方法であって、マグネトロン19により被調理物としての被調理物Sの食材をマイクロ波加熱する工程と、マイクロ波加熱された食材に調味液を加えたものとしての被調理物Sを熱風ヒータユニット41により熱風コンベクション加熱する工程と、を有する構成としている。
【0058】
このように構成することにより、マイクロ波加熱により下茹でを必要とする食材であるダイコンを予め速やかに軟化させ、脱水させることができる。また高温状態のダイコンと冷たい状態の調味液とが同様の温度になるように熱移動し、両者の温度差が大きいことにより、食材としてのダイコン内への調味液の拡散浸透を短時間で促進させることができる。したがって調理時間としての加熱調理工程の時間を短縮させることができる。
【0059】
また本実施形態による加熱調理器による調理方法では、加熱調理器が、容器13a内の温度を検出することにより調味液の温度を検知する温度検知手段としての底温度センサ30と、熱風ヒータユニット41を制御する制御手段としての加熱制御手段51とをさらに備え、熱風コンベクション加熱する工程では、底温度センサ30が検知した調味液の温度に基づいて調味液を沸騰しない温度である95℃~98℃に維持するように加熱制御手段51が熱風ヒータユニット41を制御する構成としている。
【0060】
このように構成することにより、調味液を沸騰させてダイコン内へ調味液の味をしみ込ませる必要がないため、調味液を沸騰させることによる、例えば当該調味液の風味や香りが抜けてしまうような食味低下を抑制することができる。またダイコンを、100℃を超える高温で長時間加熱する必要がないため、ダイコンの煮崩れを抑制することができる。
【0061】
また本実施形態による加熱調理器では、マイクロ波加熱するマグネトロン19と、熱風コンベクション加熱する熱風ヒータユニット41と、を備え、マイクロ波加熱手段により被調理物Sの食材をマイクロ波加熱し、マイクロ波加熱された食材に調味液を加えた被調理物Sを熱風ヒータユニット41により熱風コンベクション加熱するように自動料理メニューの加熱パターンに従って加熱制御手段51がマイクロ波加熱手段および熱風ヒータユニット41を制御する自動加熱調理機能を有する構成としている。
【0062】
このように構成することにより、加熱調理工程の時間を短縮させ、またユーザの負担を軽減させることのできる加熱調理器を提供することができる。
【実施例0063】
図5および図6は、本発明をオーブンレンジに適用した第2の実施形態を示している。本実施形態のオーブンレンジでは、電子レンジと併用して加熱調理を行なう方法を採用している。
【0064】
図5は本実施形態の表示手段6の平面図である。同図を参照して説明すると、本実施形態では、「マイクロ波」のLED表示部17-1に代えて「味しみ」のLED表示部17-11がLED表示部17’に設けられている点が第1の実施形態とは相違する。その他は第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0065】
「味しみ」のLED表示部17-11は、後述する味しみ工程が実施されているときに点灯するもので、味しみ工程に移行すると、表示制御手段52がLED表示部17-11を点灯させるように制御し、味しみ工程が終了すると、表示制御手段52がLED表示部17-11を消灯させるように制御する。
【0066】
図6は、料理メニューの設定が「おでん」、マイクロ波加熱の工程の設定が「味しみ」で調理コースが設定されたときの加熱調理工程および保温工程における、底温度センサ30の検出温度から算出された被調理物Sの温度tの経時的な変化をグラフで示したものである。図6を参照して、本実施形態の加熱調理における動作を説明すると、先ず、被調理物Sの下茹でを必要とする食材、例えばダイコンを、予め電子レンジで調味液や水を加えずにマイクロ波加熱しておく。ここで、例えばダイコンが1.5cm~2cm厚のものが4個の場合は、例えば600Wの出力で6分~8分、電子レンジによりマイクロ波加熱を行ない、下茹でを必要とする食材であるダイコンを予め軟化させ、脱水させる。
【0067】
その後、ユーザは容器13aに、例えばマイクロ波加熱が行なわれて高温状態のダイコンと、被調理物Sの常温もしくは冷たい状態の調味液、例えばおでんの調味液と、被調理物Sの下茹でを必要としない食材、例えばゆでタマゴ、結び昆布、ちくわぶ、つみれ、焼きちくわ、厚揚げなどのおでんの具材とを投入して容器13aを調理室12内に配設して蓋体2を閉じる。それと前後して、オーブンレンジの電源プラグをコンセントに差し込んで通電すると、オーブンレンジは加熱が行われていない初期の切(待機)状態となり、表示制御手段52はトップ画面G1を表示させるようにLCD16を制御する。
【0068】
そしてメイン画面G1で料理メニューおよびマイクロ波加熱の工程の設定後に「調理開始」のボタン表示部B6をタッチ操作すると、加熱制御手段51が、現在、メイン画面G1に表示された料理メニューおよびマイクロ波加熱の工程の設定を今回の調理コースの設定として記憶手段32に記憶し、表示制御手段52は、記憶手段32に記憶された情報から算出された、現在メイン画面G1に表示されている料理メニューの加熱パターンにおける加熱調理工程の時間を残時間表示部D5に表示する。
【0069】
加熱調理工程が開始されると、食材内への調味液の拡散浸透を促進させる味しみ工程に移行する。味しみ工程が開始されると、表示制御手段52は「味しみ」のLED表示部17-1を点灯させるように制御し、計時手段33からの計時に基づき、残時間表示部D5に表示された時間をカウントダウンして表示するようにLCD16を制御する。味しみ工程では高温状態のダイコンと冷たい状態の調味液とが同様の温度になるように熱移動し、両者の温度差が大きいことにより、食材としてのダイコン内への調味液の拡散浸透が促進される。なお加熱制御手段51は、味しみ工程において加圧調整弁65が蒸気通路62を塞ぎ、減圧調整弁67が減圧経路を開いた状態で減圧ポンプ66を駆動させるように制御して、密閉した容器13aの内部圧力を低下させて、より食材としてのダイコン内への調味液の拡散浸透を促進させてもよい。
【0070】
その後、加熱制御手段51が計時手段33から味しみ工程を開始してから、例えば5分などの所定時間経過した計時信号を受信すると、次の昇温工程に移行する。
【0071】
昇温行程では、加熱制御手段51がヒータ駆動手段39に加熱制御信号を出力して熱風ヒータ43を連続通電させるように制御し、併せて熱風モータ駆動手段40に駆動制御信号を出力して熱風ファン44が回転するように熱風モータ45を制御し、容器13aを熱風コンベクション加熱でオーブン加熱する。また加熱制御手段51は加圧調整弁65で蒸気孔13dを閉塞させて蒸気通路62を閉塞させる。そのため被調理物Sが昇温するに従って蒸気が発生し、容器13a内が加圧状態になる。そして表示制御手段52は、「味しみ」のLED表示部17-11を消灯させ、「昇温」の工程LED表示部17-2を点灯させるように制御する。
【0072】
その後、加熱制御手段51は、底温度センサ30からの検知温度に基づいて被調理物Sの温度tが所定温度以上、例えば110℃以上に達したと判定し、および/または蓋温度センサ14からの検知信号により内蓋13bの温度が所定温度以上、例えば110℃以上に達したことを受信すると、容器13a内が加圧水蒸気状態になったと判定し、次の加圧工程に移行する。
【0073】
加圧工程では、加熱制御手段51は、底温度センサ30および/または蓋温度センサ14からの検知温度に基づいて、例えば1分などの所定の時間、被調理物Sの温度tが、所定の加圧沸騰温度、例えば110℃で維持されるように熱風ヒータ43および熱風ファン44を制御する。そして表示制御手段52は、「昇温」のLED表示部17-2を消灯させ、「加圧」の工程LED表示部17-3を点灯させるように制御する。
【0074】
その後、加熱制御手段51が計時手段33から加圧工程を開始してから、所定の時間経過した計時信号を受信すると、次の排圧/煮込工程に移行する。
【0075】
排圧/煮込工程では、加熱制御手段51が加圧調整弁65で蒸気孔13dを開放させて蒸気通路62を開放させ、かつ例えば5分などの所定の時間、底温度センサ30および/または蓋温度センサ14からの検知温度に基づいて、被調理物Sの温度を例えば80~85℃の所定温度まで降下させ、それと共に、蓋温度センサ14の検知温度に基づいて蓋ヒータ16を制御して内蓋5への露付きを防止する。そして表示制御手段52は、「加圧」のLED表示部17-3を消灯させ、「排圧」の工程LED表示部17-4および「煮込」の工程LED表示部17-5を点灯させるように制御する。
【0076】
その後、残時間表示部D5に表示された時間が「0」になり、加熱制御手段51が、加熱調理工程の時間が経過した旨の信号を計時手段33より受信すると、熱風ヒータ43の通電を停止させるように制御し、併せて熱風ファン44の回転を停止させるように制御して、オーブン加熱を停止させて煮込工程を終了させる。そして表示制御手段52は、「昇温」の工程LED表示部17-2を消灯させ、「保温」のLED表示部17-6を点灯させるように制御し、そして図示しないブザーを動作させるように制御して、加熱調理工程が完了したことを報知する。加熱調理工程が完了すると、被調理物Sの温度を例えば70℃の所定温度まで降下させて維持する保温工程に移行する。
【0077】
以上のように本実施形態による加熱調理器による調理方法でも、加熱調理器が、容器13a内の温度を検出することにより調味液の温度を検知する温度検知手段としての底温度センサ30と、熱風ヒータユニット41を制御する制御手段としての加熱制御手段51とを備え、熱風コンベクション加熱する工程では、底温度センサ30が検知した調味液の温度に基づいて調味液を沸騰しない温度である95℃~98℃に維持するように加熱制御手段51が熱風ヒータユニット41を制御する構成としている。
【0078】
このように構成することでも、調味液を沸騰させてダイコン内へ調味液の味をしみ込ませる必要がないため、調味液を沸騰させることによる、例えば当該調味液の風味や香りが抜けてしまうような食味低下を抑制することができる。またダイコンを、100℃を超える高温で長時間加熱する必要がないため、ダイコンの煮崩れを抑制することができる。
【0079】
図7は、第2の実施形態の変形例を示している。本変形例では加圧工程を実施せず、第1の実施形態と同様に、被調理物Sの温度tを調味液が沸騰しない所定の温度で維持する沸騰工程を実施している。
【0080】
図7を参照して、本変形例の加熱調理における動作を説明すると、第2の実施形態と同様に、先ず、被調理物Sの下茹でを必要とする食材、例えばダイコンを、予め電子レンジで調味液や水を加えずにマイクロ波加熱しておく。その後、ユーザは容器13aに、例えばマイクロ波加熱が行なわれて高温状態のダイコンと、被調理物Sの常温もしくは冷たい状態の調味液、例えばおでんの調味液と、被調理物Sの下茹でを必要としない食材、例えばゆでタマゴ、結び昆布、ちくわぶ、つみれ、焼きちくわ、厚揚げなどのおでんの具材とを投入して容器13aを調理室12内に配設して蓋体2を閉じる。それと前後して、オーブンレンジの電源プラグをコンセントに差し込んで通電する。
【0081】
そしてメイン画面G1で料理メニューおよびマイクロ波加熱の工程の設定後に「調理開始」のボタン表示部B6をタッチ操作すると、加熱制御手段51が、現在、メイン画面G1に表示された料理メニューおよびマイクロ波加熱の工程の設定を今回の調理コースの設定として記憶手段32に記憶し、表示制御手段52は、記憶手段32に記憶された情報から算出された、現在メイン画面G1に表示されている料理メニューの加熱パターンにおける加熱調理工程の時間を残時間表示部D5に表示する。そして加熱制御手段51が、設定した調理コースの加熱パターンに沿って調理室12内の容器13aに収容された当該食材および調味液の被調理物Sに対する味しみ工程、昇温行程、沸騰工程、煮込工程の順に加熱調理を行なう加熱調理工程を実施する。このように構成することでも、高温状態のダイコンに冷たい状態の調味液を投入して食材としてのダイコン内への調味液の拡散浸透を短時間で促進させており、調味液を沸騰させてダイコン内へ調味液の味をしみ込ませる必要がないため、調味液が沸騰しない所定の温度に維持することで、調味液を沸騰させることによる、例えば当該調味液の風味や香りが抜けてしまうような食味低下を抑制することができる。またダイコンを、100℃を超える高温で長時間加熱する必要がないため、ダイコンの煮崩れを抑制することができる。
【0082】
以上、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、第1および第2の実施形態および変形例を組み合わせて構成してもよい。また上記で述べた容器13aの内部の圧力値や温度、各種の時間などは例示したものであり、上記したものに限定されない。
【符号の説明】
【0083】
19 マグネトロン(マイクロ波加熱手段)
30 底温度センサ(温度検知手段)
41 熱風ヒータユニット(オーブン加熱手段)
51 加熱制御手段(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7