(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018379
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】基板保持装置、及び膜付き基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20230201BHJP
B65G 49/02 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
C23C14/50
B65G49/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122459
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】北村 圭市
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隆義
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA04
4K029AA09
4K029AA11
4K029AA24
4K029CA05
4K029JA01
4K029JA05
4K029KA01
4K029KA02
(57)【要約】
【課題】複数の基板の取り付け作業又は取り外し作業を容易に行うことのできる基板保持装置、及び膜付き基板の製造方法を提供する。
【解決手段】基板保持装置11は、基台12と、基台12に設けられ、第1基板W1を保持する第1枠体13と、基台12に設けられ、第2基板W2を保持する第2枠体14とを備える。基板保持装置11は、第1枠体13及び第2枠体14のうち、少なくとも第1枠体13を移動させる移動機構15とを備える。移動機構15は、第1枠体13及び第2枠体14を第1相対位置と第2相対位置とに変位させることが可能である。第1相対位置及び第2相対位置では、縦姿勢の第1基板W1及び第2基板W2を保持可能である。第1相対位置では、第1枠体13の主面S1と第2枠体14の主面S1とが互いに対向した状態となる。第2相対位置では、第1枠体13の主面S1と第2枠体14の主面S1とが互いに非対向の状態となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を保持する基板保持装置であって、
基台と、
前記基台に設けられ、第1基板を保持する第1枠体と、
前記基台に設けられ、第2基板を保持する第2枠体と、
前記第1枠体及び前記第2枠体のうち、少なくとも前記第1枠体を移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記第1枠体及び前記第2枠体を第1相対位置と第2相対位置とに変位させることが可能であり、
前記第1相対位置及び前記第2相対位置では、縦姿勢の前記第1基板及び前記第2基板を保持可能であり、
前記第1相対位置では、前記第1枠体の主面と前記第2枠体の主面とが互いに対向した状態となり、
前記第2相対位置では、前記第1枠体の前記主面と前記第2枠体の前記主面とが互いに非対向の状態となる、基板保持装置。
【請求項2】
前記第1枠体は、第1枠部材及び第2枠部材を有し、
前記移動機構は、前記第1枠部材と前記第2枠部材とをそれぞれ移動させる、請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記第1枠体を回動させる回動機構、及び前記第1枠体をスライド移動させるスライド機構の少なくとも一方である、請求項1又は請求項2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記第1枠体は、第1枠部材と第2枠部材とを有し、
前記移動機構は、前記第1枠部材と前記第2枠部材とを回動させる回動機構を含む、請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項5】
前記第1枠部材と前記第2枠部材とは、左右に隣り合うように配置され、
前記回動機構は、前記第1枠部材と前記第2枠部材とを上下方向に延びる軸線回りで回動させる、請求項4に記載の基板保持装置。
【請求項6】
前記第1枠体は、前記第1基板の主面の外周縁部を覆う第1被覆部を有し、
前記第2枠体は、前記第2基板の主面の外周縁部を覆う第2被覆部を有し、
前記第1被覆部及び前記第2被覆部は、前記第1相対位置において前記第1基板と前記第2基板との対向する主面とは、反対側の主面を被覆する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項7】
前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方は、500mm以上の寸法の辺を有する基板を含む、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項8】
複数の基板を保持する基板保持装置を用いて膜付き基板を製造する膜付き基板の製造方法であって、
前記基板保持装置は、基台と、
前記基台に設けられ、第1基板を保持する第1枠体と、
前記基台に設けられ、第2基板を保持する第2枠体と、
前記第1枠体及び前記第2枠体のうち、少なくとも前記第1枠体を移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記第1枠体及び前記第2枠体を第1相対位置と第2相対位置とに変位させることが可能であり、
前記第1相対位置及び前記第2相対位置では、縦姿勢の前記第1基板及び前記第2基板を保持可能であり、
前記第1相対位置では、前記第1枠体の主面と前記第2枠体の主面とが互いに対向した状態となり、
前記第2相対位置では、前記第1枠体の前記主面と前記第2枠体の前記主面とが互いに非対向の状態となり、
前記製造方法は、前記第1基板及び前記第2基板を前記基板保持装置に取り付ける取り付け工程と、前記第1基板及び前記第2基板に膜を設けることで膜付き第1基板及び膜付き第2基板を得る成膜工程と、前記膜付き第1基板及び前記膜付き第2基板を前記基板保持装置から取り外す前記取り外し工程と、備え、
前記成膜工程は、前記第1相対位置で行われ、
前記取り付け工程及び前記取り外し工程の少なくとも一方の工程は、前記第2相対位置で行われる、膜付き基板の製造方法。
【請求項9】
前記取り付け工程及び前記取り外し工程は、前記第2相対位置で行われる、請求項8に記載の膜付き基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板保持装置、及び膜付き基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等の基板の主面に機能性を有する膜を成膜する場合、特許文献1,2に記載されるように、基板を縦姿勢で保持する基板保持装置が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-083997号公報
【特許文献2】国際公開第2012/140801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、基板を縦姿勢で保持する基板保持装置は、例えば、基台と、基台に設けられ、基板を保持する枠体とを備えている。一対の基板の主面が互いに対向した縦姿勢で各基板を保持するには、基台に一対の枠体を対向するように設けた基板保持装置が用いられる。このように一対の枠体を備える基板保持装置では、枠体に対して、基板を着脱する方向に制限がある場合がある。例えば、基板保持装置の一対の枠体が互いに対向する内側となる面に対して、一対の基板を縦姿勢で着脱する必要がある場合、基板の取り付け作業又は取り外し作業が煩雑となるおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、複数の基板の取り付け作業又は取り外し作業を容易に行うことのできる基板保持装置、及び膜付き基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する基板保持装置は、複数の基板を保持する基板保持装置であって、基台と、前記基台に設けられ、第1基板を保持する第1枠体と、前記基台に設けられ、第2基板を保持する第2枠体と、前記第1枠体及び前記第2枠体のうち、少なくとも前記第1枠体を移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記第1枠体及び前記第2枠体を第1相対位置と第2相対位置とに変位させることが可能であり、前記第1相対位置及び前記第2相対位置では、縦姿勢の前記第1基板及び前記第2基板を保持可能であり、前記第1相対位置では、前記第1枠体の主面と前記第2枠体の主面とが互いに対向した状態となり、前記第2相対位置では、前記第1枠体の前記主面と前記第2枠体の前記主面とが互いに非対向の状態となる。
【0007】
この構成によれば、例えば、上記第1相対位置では、第1基板及び第2基板を搬送したり、第1基板及び第2基板に膜を設けたりすることができる。上記第2相対位置では、上記第1相対位置において対向していた第1枠体の主面と第2枠体の主面とが非対向の状態となる。このため、第1枠体の上記主面に対して、縦姿勢の第1基板の取り付け作業又は取り外し作業を容易に行うことができる。また、第2枠体の上記主面に対して、縦姿勢の第2基板の取り付け作業又は取り外し作業を容易に行うことができる。
【0008】
上記基板保持装置において、前記第1枠体は、第1枠部材及び第2枠部材を有し、前記移動機構は、前記第1枠部材と前記第2枠部材とをそれぞれ移動させてもよい。この構成によれば、第1枠体を第1枠部材と第2枠部材とに分割して容易に移動させることができる。これにより、第1相対位置と第2相対位置との双方の移行を容易に行うことができる。
【0009】
上記基板保持装置において、前記移動機構は、前記第1枠体を回動させる回動機構、及び前記第1枠体をスライド移動させるスライド機構の少なくとも一方であってもよい。この構成によれば、第1枠体の回動動作及びスライド動作の少なくとも一方の動作により、第1枠体と第2枠体との相対位置を容易に変位させることができる。これにより、第1相対位置と第2相対位置との双方の移行を容易に行うことができる。また、移動機構が回動機構である場合、第1枠体及び第2枠体に対して、同じ方向からそれぞれ第1基板及び第2基板の取り付け作業又は取り外し作業を行うことが可能となる。このため、例えば、第1基板及び第2基板を基板保持装置に着脱するための作業スペースの確保が容易となる。
【0010】
上記基板保持装置において、前記第1枠体は、第1枠部材と第2枠部材とを有し、前記移動機構は、前記第1枠部材と前記第2枠部材とを回動させる回動機構を含んでもよい。この構成によれば、第1枠体を第1枠部材と第2枠部材とに分割して容易に移動させることができる。また、第1枠部材と第2枠部材との回動動作により、第1枠体と第2枠体との相対位置を容易に変位させることができる。これにより、第1相対位置と第2相対位置との双方の移行を容易に行うことができる。
【0011】
上記基板保持装置において、前記第1枠部材と前記第2枠部材とは、左右に隣り合うように配置され、前記回動機構は、前記第1枠部材と前記第2枠部材とを上下方向に延びる軸線回りで回動させてもよい。この構成によれば、比較的低い位置で第1枠体に複数の第1基板の取り付け作業又は取り外し作業を行うことが可能となる。このため、第1枠体に対する第1基板の取り付け作業又は取り外し作業が容易となる。
【0012】
上記基板保持装置において、前記第1枠体は、前記第1基板の主面の外周縁部を覆う第1被覆部を有し、前記第2枠体は、前記第2基板の主面の外周縁部を覆う第2被覆部を有し、前記第1被覆部及び前記第2被覆部は、前記第1相対位置において前記第1基板と前記第2基板との対向する主面とは、反対側の主面を被覆する、この構成によれば、例えば、第1基板と第2基板とが対向する主面とは反対側の主面に膜を設ける場合に、第1基板と第2基板とが対向する主面に膜材料が回り込むことを抑えることができる。このため、第1基板と第2基板とが対向する主面に選択的に膜を設ける場合の精度を高めることができる。
【0013】
上記基板保持装置において、前記第1基板及び前記第2基板の少なくとも一方は、500mm以上の寸法の辺を有する基板を含んでもよい。上記基板保持装置では、基板の取り付け作業及び取り外し作業を、基板を縦姿勢にした状態を行うことができるため、比較的大きい寸法の基板であっても、基板保持装置に基板を着脱するための作業スペースの確保が容易となる。
【0014】
膜付き基板の製造方法は、複数の基板を保持する基板保持装置を用いて膜付き基板を製造する膜付き基板の製造方法であって、前記基板保持装置は、基台と、前記基台に設けられ、第1基板を保持する第1枠体と、前記基台に設けられ、第2基板を保持する第2枠体と、前記第1枠体及び前記第2枠体のうち、少なくとも前記第1枠体を移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記第1枠体及び前記第2枠体を第1相対位置と第2相対位置とに変位させることが可能であり、前記第1相対位置及び前記第2相対位置では、縦姿勢の前記第1基板及び前記第2基板を保持可能であり、前記第1相対位置では、前記第1枠体の主面と前記第2枠体の主面とが互いに対向した状態となり、前記第2相対位置では、前記第1枠体の前記主面と前記第2枠体の前記主面とが互いに非対向の状態となり、前記製造方法は、前記第1基板及び前記第2基板を前記基板保持装置に取り付ける取り付け工程と、前記第1基板及び前記第2基板に膜を設けることで膜付き第1基板及び膜付き第2基板を得る成膜工程と、前記膜付き第1基板及び前記膜付き第2基板を前記基板保持装置から取り外す前記取り外し工程と、備え、前記成膜工程は、前記第1相対位置で行われ、前記取り付け工程及び前記取り外し工程の少なくとも一方の工程は、前記第2相対位置で行われる。
【0015】
上記膜付き基板の製造方法において、前記取り付け工程及び前記取り外し工程は、前記第2相対位置で行われてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の基板の取り付け作業又は取り外し作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態における基板保持装置の使用状態を説明する模式平面図である。
【
図2】基板保持装置の使用状態を説明する模式平面図である。
【
図3】第1相対位置の基板保持装置を示す斜視図である。
【
図4】第2相対位置の基板保持装置を示す斜視図である。
【
図6】第1の変更例の基板保持装置を示す斜視図である。
【
図7】第2の変更例の基板保持装置を示す斜視図である。
【
図8】第3の変更例の基板保持装置を示す斜視図である。
【
図9】第4の変更例の基板保持装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、基板保持装置、及び膜付き基板の製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0019】
<基板保持装置の概要>
図1~
図3に示すように、基板保持装置11は、基台12と第1枠体13と第2枠体14とを備えている。第1枠体13は、基台12に設けられ、複数の第1基板W1を保持する。第2枠体14は、基台12に設けられ、複数の第2基板W2を保持する。基板保持装置11は、第1枠体13を移動させる移動機構15を備えている。
【0020】
第1基板W1は、第1主面W1aと、第1主面W1aとは反対側の第2主面W1bとを有している。第2基板W2は、第1主面W2aと、第1主面W2aとは反対側の第2主面W2bとを有している。第1基板W1及び第2基板W2としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板、セラミックス基板等が挙げられる。第1基板W1及び第2基板W2の一例としては、平面視で長方形のガラス基板である。第1基板W1及び第2基板W2は、単層構造に限定されず、例えば、ガラス等からなる本体層と、印刷層等の外層とからなる多層構造を有していてもよい。第1基板W1及び第2基板W2の少なくとも一方は、500mm以上の寸法の辺を有する基板を含んでもよい。また、第1基板W1及び第2基板W2の少なくとも一方は、600mm以上、700mm以上、800mm以上、又は900mm以上の寸法の辺を有する基板を含んでもよい。
【0021】
図1及び
図2に示すように、基板保持装置11は、成膜設備Aの一部を構成している。成膜設備Aは、第1基板W1及び第2基板W2に膜を設ける成膜部A1と、基板保持装置11に第1基板W1及び第2基板W2を着脱する着脱部A2とを備えている。基板保持装置11は、成膜部A1と着脱部A2を移動可能に設けられている。成膜部A1には、成膜装置16が設置されている。成膜装置16の成膜法としては、例えば、スパッタリング法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スプレー、スピンコート等のコーティング法等が挙げられる。膜としては、例えば、所定の光学的特性を有する膜(誘電体膜等)、所定の機械的特性を有する膜、及び所定の化学的特性を有する膜、所定の色を有する膜が挙げられる。成膜材料は、無機材料であってもよいし、有機材料であってもよい。
【0022】
図1及び
図2に示すように、成膜装置16の一例であるスパッタリング装置は、真空容器17と、真空容器17内に配置される第1スパッタリング源18a及び第2スパッタリング源18bとを備えている。真空容器17は、図示を省略した開閉部を有し、この開閉部から基板保持装置11が搬入及び搬出される。第1スパッタリング源18aは、第1基板W1の第2主面W1bに対向するように配置されている。第2スパッタリング源18bは、第2基板W2の第2主面W2bに対向するように配置されている。
【0023】
成膜装置16は、第1基板W1の第2主面W1bに膜が設けられた膜付き第1基板W11を製造する。成膜装置16は、第2基板W2の第2主面W2bに膜が設けられた膜付き第2基板W21を製造する。
【0024】
<基台12>
図3に示すように、基板保持装置11の基台12は、本体部12aと、本体部12aに立設される一対の第1支柱部12bと、一対の第1支柱部12bの上端部を連結する第1梁部12cとを備えている。基台12は、本体部12aに立設される一対の第2支柱部12dと、一対の第2支柱部12dの上端部を連結する第2梁部12eとを備えている。
【0025】
基板保持装置11の基台12は、本体部12aに軸支される車輪12fを備えている。
図1及び
図2に示される成膜設備Aには、成膜部A1から着脱部A2にわたって図示を省略したレールが敷設されている。基台12の車輪12fは、成膜設備Aのレール上を走行可能である。基台12は、手動で走行するように構成してもよいし、電動で走行するように構成してもよい。
【0026】
<第1枠体13>
図3及び
図4に示すように、基板保持装置11の第1枠体13は、第1枠部材19と第2枠部材20とを有している。本実施形態の第1枠体13は、第1枠部材19及び第2枠部材20のそれぞれに第1基板W1を保持することができる。第1枠部材19と第2枠部材20とは、左右に隣り合うように配置されている。なお、図面において、X軸に沿った方向が左右方向であり、Z軸に沿った方向が上下方向である。
【0027】
図3及び
図5に示すように、第1枠体13における第1枠部材19及び第2枠部材20は、それぞれ第1基板W1の第2主面W1bの外周縁部を覆う第1被覆部21を有している。第1被覆部21は、第1基板W1の第2主面W1bの外周縁部を周方向において部分的に覆うように構成されてもよいし、第1基板W1の第2主面W1bの外周縁部を全周にわたって覆うように構成されてもよい。
【0028】
図5に示すように、第1枠体13は、第1基板W1の第1主面W1aの外周縁部を係止する第1係止部材22を備えている。第1係止部材22は、第1基板W1を係止する係止位置と第1基板W1の係止を解除する係止解除位置とに変位可能に設けられている。第1係止部材22は、第1枠部材19及び第2枠部材20に着脱可能に設けられてもよいし、第1枠部材19及び第2枠部材20に回動可能に支持させてもよい。なお、第1係止部材22は、
図5に示すような形状に限定されない。第1係止部材22の形状としては、例えば、トンボ形状、フック形状、ピン形状、クリップ形状の他、第1基板W1の第1主面W1aの全面を係止する板形状や前記第1主面W1aの外周縁部を係止する額縁形状であってもよい。また、第1係止部材22の材質は、例えば、金属、セラミックス、樹脂、ゴム等であってもよい。
【0029】
<第2枠体14>
図3及び
図4に示すように、基板保持装置11の第2枠体14は、図示を省略した固定部材により基台12に固定されている。第2枠体14は、一つの枠部材23を備えている。第2枠体14の枠部材23は、二枚の第2基板W2を保持することができる。
図3及び
図5に示すように、枠部材23は、第2基板W2の第2主面W2bの外周縁部を覆う第2被覆部24を有している。第2被覆部24は、第2基板W2の第2主面W2bの外周縁部を周方向において部分的に覆うように構成されてもよいし、第2基板W2の第2主面W2bの外周縁部を全周にわたって覆うように構成されてもよい。
【0030】
図3及び
図5に示すように、第2枠体14は、第2基板W2の第1主面W2aの外周縁部を係止する第2係止部材25を備えている。第2係止部材25は、第2基板W2を係止する係止位置と第2基板W2の係止を解除する係止解除位置とに変位可能に設けられている。第2係止部材25は、枠部材23に着脱可能に設けられてもよいし、枠部材23に回動可能に支持させてもよい。なお、第2係止部材25は、
図5に示すような形状に限定されない。第2係止部材25としては、例えば、トンボ形状、フック形状、ピン形状、クリップ形状の他、第2基板W2の第1主面W2aの全面を係止する板形状や前記第1主面W2aの外周縁部を係止する額縁形状であってもよい。また、第2係止部材25の材質は、例えば、金属、セラミックス、樹脂、ゴム等であってもよい。
【0031】
<移動機構15>
図1~
図4に示すように、基板保持装置11の移動機構15は、第1枠体13及び第2枠体14を第1相対位置と第2相対位置とに変位させることが可能である。第1相対位置及び第2相対位置では、縦姿勢の第1基板W1及び第2基板W2を保持可能である。
【0032】
図2及び
図3に示すように、第1枠体13及び第2枠体14の第1相対位置では、第1枠体13の主面S1と第2枠体14の主面S1とが互いに対向した状態となる。この第1相対位置では、第1基板W1の第1主面W1aと第2基板W2の第1主面W2aとが互いに対向する。第1相対位置において図面のY軸に沿った方向が第1基板W1及び第2基板W2の厚さ方向となる。
【0033】
図1及び
図4に示すように、第1枠体13及び第2枠体14の第2相対位置では、第1枠体13の主面S1と第2枠体14の主面S1とが互いに非対向の状態となる。この第2相対位置では、第1基板W1の第1主面W1aと第2基板W2の第1主面W2aとが互いに非対向となる。
【0034】
本実施形態の移動機構15は、第1枠体13の第1枠部材19と第2枠部材20とをそれぞれ回動させる回動機構である。回動機構は、第1枠部材19と第2枠部材20とを上下方向に延びる軸線回りで回動させる。詳述すると、第1枠部材19は、
図3等の左側に配置される第1支柱部12bにヒンジ部材を用いて取り付けられている。第2枠部材20は、
図3等の右側に配置される第1支柱部12bにヒンジ部材を用いて取り付けられている。第1枠部材19は、左端縁に沿った軸線回りで回動される。第2枠部材20は、右端縁に沿った軸線回りで回動される。
【0035】
<膜付き基板の製造方法>
次に、膜付き基板の製造方法を上記基板保持装置11の作用とともに説明する。
膜付き基板の製造方法は、取り付け工程と、成膜工程と、取り外し工程と備えている。膜付き基板の製造方法における取り付け工程は、第1基板W1及び第2基板W2を基板保持装置11に取り付ける。
【0036】
図1及び
図4に示すように、取り付け工程では、成膜設備Aの着脱部A2において、基板保持装置11の第1枠体13及び第2枠体14を第2相対位置とする。この第2相対位置の第1枠体13と第2枠体14とにそれぞれ第1基板W1と第2基板W2とを取り付ける。
【0037】
このとき、第2相対位置では、第1枠体13の主面S1と第2枠体14の主面S1とが互いに非対向の状態となる。このような第2相対位置の第1枠体13には、第1枠体13の上記主面S1に対して、縦姿勢の第1基板W1を容易に取り付けることができる。また、このような第2相対位置の第2枠体14には、第2枠体14の上記主面S1に対して、縦姿勢の第2基板W2を容易に取り付けることができる。
【0038】
膜付き基板の製造方法における成膜工程は、第1基板W1及び第2基板W2に膜を設けることで膜付き第1基板W11及び膜付き第2基板W21を得る。成膜工程は、
図2及び
図3に示される基板保持装置11の第1相対位置で行われる。成膜工程では、第1基板W1の第2主面W1bと第2基板W2の第2主面W2bとに膜を設けることができる。
【0039】
図5に示すように、膜付き基板の製造方法の取り外し工程では、膜付き第1基板W11及び膜付き第2基板W21を基板保持装置11から取り外す。取り外し工程では、成膜設備Aの着脱部A2において、基板保持装置11の第1枠体13と第2枠体14とを第2相対位置とする。
【0040】
このとき、第2相対位置では、第1枠体13の主面S1と第2枠体14の主面S1とが互いに非対向の状態となる。このような第2相対位置の第1枠体13では、第1枠体13の上記主面S1に対して、縦姿勢の膜付き第1基板W11を容易に取り外すことができる。また、このような第2相対位置の第2枠体14では、第2枠体14の上記主面S1に対して、縦姿勢の膜付き第2基板W21を容易に取り外すことができる。
【0041】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)複数の基板を保持する基板保持装置11は、基台12と、第1枠体13と、第2枠体14と、移動機構15とを備えている。基板保持装置11の移動機構15は、第1枠体13及び第2枠体14を第1相対位置と第2相対位置とに変位させることが可能である。第1相対位置及び第2相対位置では、縦姿勢の第1基板W1及び第2基板W2を保持可能である。第1相対位置では、第1枠体13の主面S1と第2枠体14の主面S1とが互いに対向した状態となる。第2相対位置では、第1枠体13の主面S1と第2枠体14の主面S1とが互いに非対向の状態となる。
【0042】
この構成によれば、例えば、上記第1相対位置では、第1基板W1及び第2基板W2を搬送したり、第1基板W1及び第2基板W2に膜を設けたりすることができる。上記第2相対位置では、上記第1相対位置において対向していた第1枠体13の主面S1と第2枠体14の主面S1とが非対向の状態となる。このため、第1枠体13の上記主面S1に対して、縦姿勢の第1基板W1の取り付け作業又は取り外し作業を容易に行うことができる。また、第2枠体14の上記主面S1に対して、縦姿勢の第2基板W2の取り付け作業又は取り外し作業を容易に行うことができる。従って、複数の基板の取り付け作業又は取り外し作業の効率を向上させることが可能となる。これにより、例えば、膜付き基板の生産性を向上させることが可能となる。
【0043】
(2)基板保持装置11の第1枠体13は、第1枠部材19と第2枠部材20とを有している。基板保持装置11の移動機構15は、第1枠部材19と第2枠部材20とをそれぞれ移動させている。この場合、第1枠体13を第1枠部材19と第2枠部材20とに分割して容易に移動させることができる。これにより、第1相対位置と第2相対位置との双方の移行を容易に行うことができる。
【0044】
(3)基板保持装置11の移動機構15は、第1枠体13を回動させる回動機構である。この場合、第1枠体13の回動動作により、第1枠体13と第2枠体14との相対位置を容易に変位させることができる。これにより、第1相対位置と第2相対位置との双方の移行を容易に行うことができる。また、
図5に示すように、第1枠体13及び第2枠体14に対して、同じ方向、すなわちY軸に沿った一方向側からそれぞれ第1基板W1及び第2基板W2の取り付け作業又は取り外し作業を行うことが可能となる。このため、例えば、第1基板W1及び第2基板W2を基板保持装置11に着脱するための作業スペースの確保が容易となる。
【0045】
(4)基板保持装置11の移動機構15は、第1枠部材19及び第2枠部材20を回動させる回動機構である。この場合、第1枠体13を第1枠部材19と第2枠部材20とに分割して容易に移動させることができる。また、第1枠部材19と第2枠部材20との回動動作により、第1枠体13と第2枠体14との相対位置を容易に変位させることができる。これにより、第1相対位置と第2相対位置との双方の移行を容易に行うことができる。
【0046】
(5)基板保持装置11の第1枠部材19と第2枠部材20とは、左右に隣り合うように配置されている。基板保持装置11の回動機構は、第1枠部材19と第2枠部材20とを上下方向に延びる軸線回りで回動させている。この場合、比較的低い位置で第1枠体13に複数の第1基板W1の取り付け作業又は取り外し作業を行うことが可能となる。このため、第1枠体13に対する第1基板W1の取り付け作業又は取り外し作業が容易となる。従って、複数の基板の取り付け作業又は取り外し作業の効率をより向上させることが可能となる。これにより、例えば、膜付き基板の生産性をより向上させることが可能となる。
【0047】
(6)基板保持装置11の第1枠体13は、第1基板W1の第2主面W1bの外周縁部を覆う第1被覆部21を有し、第2枠体14は、第2基板W2の第2主面W2bの外周縁部を覆う第2被覆部24を有している。
【0048】
この場合、例えば、第1基板W1の第2主面W1b及び第2基板W2の第2主面W2bに膜を設ける場合に、第1基板W1の第1主面W1a及び第2基板W2の第1主面W2aに膜材料が回り込むことを抑えることができる。このため、第1基板W1の第2主面W1b及び第2基板W2の第2主面W2bに選択的に膜を設ける場合の精度を高めることができる。
【0049】
なお、第1被覆部21を有する第1枠体13と、第2被覆部24を有する第2枠体14とは、第1枠体13と第2枠体14とが互いに対向する内側となる面に対して、第1基板W1と第2基板W2とを縦姿勢で着脱する必要がある。これに限らず、例えば、第1基板W1を取り扱う際に第2主面W1bの保護の観点から、第1枠体13の上記内側となる面に対して、第1主面W1aを保持して第1基板W1を着脱する必要がある場合もある。
【0050】
(7)第1基板W1及び前2基板の少なくとも一方は、500mm以上の寸法の辺を有する基板を含んでもよい。上記基板保持装置11では、基板の取り付け作業及び取り外し作業を、基板を縦姿勢にした状態を行うことができるため、比較的大きい寸法の基板であっても、基板保持装置11に基板を着脱するための作業スペースの確保が容易となる。また、基板の取り付け作業又は取り外し作業を容易に行うことができる。従って、複数の基板の取り付け作業又は取り外し作業の効率を向上させることが可能となる。これにより、例えば、膜付き基板の生産性を向上させることが可能となる。
【0051】
(8)膜付き基板の製造方法は、基板保持装置11を用いて膜付き基板を製造する。膜付き基板の製造方法は、取り付け工程と成膜工程と取り外し工程とを備えている。成膜工程は、基板保持装置11の第1相対位置で行われ、取り付け工程及び取り外し工程は、基板保持装置11の第2相対位置で行われる。
【0052】
この方法によれば、第1枠体13の上記主面S1に対して、縦姿勢の第1基板W1の取り付け作業及び取り外し作業を容易に行うことができる。また、第2枠体14の上記主面S1に対して、縦姿勢の第2基板W2の取り付け作業及び取り外し作業を容易に行うことができる。従って、複数の基板の取り付け作業又は取り外し作業の効率を高めることが可能となる。これにより、膜付き基板の生産性を向上させることが可能となる。
【0053】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・上記基板保持装置11において、第1枠体13の第1被覆部21及び第2枠体14の第2被覆部24の少なくとも一方を省略することもできる。
・上記実施形態の基板保持装置11の第1枠体13は、第1枠部材19と第2枠部材20とを有しているが、
図6に示すように、第1枠体13は、一つの枠部材26を有していてもよい。また、図示を省略するが、第1枠体は、三つ以上の枠部材を有していてもよい。
【0055】
・基板保持装置11の第1枠体13に保持する第1基板W1の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。基板保持装置11の第2枠体14に保持する第2基板W2の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0056】
・基板保持装置11は、第1枠体13を移動させる移動機構15に加えて、第2枠体14を移動させる移動機構15を備えていてもよい。この場合、第2枠体14は、複数の枠部材に分割されて移動されるように構成してもよい。
【0057】
・複数の第1基板W1の寸法は、同じであってもよいし、異なってもよい。複数の第2基板W2の寸法は、同じであってもよいし、異なってもよい。
・第1基板W1及び第2基板W2の平面形状は、四角形以外の多角形状であってもよいし、円形や楕円形であってもよい。
【0058】
・上記実施形態の基板保持装置11の移動機構15である回動機構は、上下方向に延びる軸線回りで回動させる回動機構であるが、上下方向以外の方向に延びる軸線回りで回動させる回動機構に変更することもできる。例えば、
図7に示すように、第1枠体13の移動機構15である回動機構は、水平方向に延びる軸線回りで回動させる回動機構であってもよい。詳述すると、第1枠体13は、基台12の第1梁部12cにヒンジ部材を用いて取り付けられている。第1相対位置の第1枠体13を上方に回動することで第2相対位置に変位させることができる。図示を省略するが、基台12は、第2枠体14を第2相対位置で一時的に保持する保持機構を備えている。
【0059】
・上記実施形態の基板保持装置11の第1枠部材19と第2枠部材20とは、左右に隣り合うように配置されているが、これに限定されない。第1枠部材19と第2枠部材20とは、例えば、上下に隣り合うように配置されてもよい。
【0060】
・基板保持装置11の移動機構15である回動機構は、金属製の軸周りに回動するヒンジ部材に限定されず、例えば、ゴム、樹脂等の弾性を利用したヒンジ部材であってもよい。
【0061】
・
図8に示すように、基板保持装置11の移動機構15は、第1枠体13を水平方向に沿ってスライド移動させるスライド機構であってもよい。スライド機構は、例えば、水平方向に沿って延びるレール部により構成することができる。詳述すると、基板保持装置11は、上下一対のレール部を有する基台12を備えている。基板保持装置11の第1枠体13は、基台12のレール部を左右に往復動するようにレール部に組み付けられている。第1枠体13は、基台12のレール部を走行する車輪を有していてもよい。
【0062】
・
図9に示すように、基板保持装置11の移動機構15であるスライド機構は、第1枠体13を上下方向に沿ってスライド移動させるスライド機構であってもよい。スライド機構は、例えば、上下方向に沿って延びるレール部により構成することができる。詳述すると、基板保持装置11は、左右一対のレール部を有する基台12を備えている。基板保持装置11の第1枠体13は、基台12のレール部を上下に往復動するようにレール部に組み付けられている。第1枠体13は、レール部を走行する車輪を有していてもよい。
【0063】
・基板保持装置11の移動機構15は、回動機構とスライド機構とを組み合わせた移動機構15であってもよい。
・基板保持装置11における基台12の本体部12aは、複数の本体部材に分割される構造を有していてもよい。この場合、基板保持装置11の移動機構15は、第1枠体13のみを移動させるのではなく、第1枠体13を基台12の本体部材と一体となった一体品として移動させる機構であってもよい。
【0064】
・基板保持装置11は、成膜設備A以外の設備で用いることもできる。基板保持装置11を、例えば、第1基板W1及び第2基板W2の搬送工程のみに用いたり、第1基板W1及び第2基板W2の洗浄工程、検査工程、加熱処理工程等に用いたりすることもできる。
【0065】
・膜付き基板の製造方法において、上記取り付け工程及び取り外し工程の一方の工程を上記第1相対位置で行うこともできる。
・膜付き基板の製造方法において、第1枠部材19に対する第1基板W1の着脱作業は、手作業で行ってもよいし、ロボットアームを用いて行ってもよい。また、手作業とロボットアームを用いた作業を組み合わせてもよい。第2枠部材20に対する第2基板W2の着脱作業についても同様である。
【符号の説明】
【0066】
11…基板保持装置
12…基台
13…第1枠体
14…第2枠体
15…移動機構
19…第1枠部材
20…第2枠部材
21…第1被覆部
24…第2被覆部
S1…主面
W1…第1基板
W1b…第2主面
W11…膜付き第1基板
W2…第2基板
W2b…第2主面
W21…膜付き第2基板