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特開2023-183791工作機械、ツールシャンク、ツールマガジンならびに加工ツール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183791
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】工作機械、ツールシャンク、ツールマガジンならびに加工ツール
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/20 20060101AFI20231221BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B23B31/20 F
B23Q3/155 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097518
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】523036340
【氏名又は名称】G.D株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 宏行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貞夫
(72)【発明者】
【氏名】高田 秀彦
【テーマコード(参考)】
3C002
3C032
【Fターム(参考)】
3C002DD11
3C002HH01
3C032BB12
3C032JJ14
(57)【要約】
【課題】ツールマガジンに密集して収納可能な複数の工具を交換して使用することができる工作機械、ツールシャンク、ツールマガジンならびに加工ツールを提供する。
【解決手段】工作機械は、開口に向かって広がるテーパ穴11aが形成され、テーパ穴11aとは反対側にツールシャンク移動機構15が設けられたスピンドル主軸11と、テーパ穴11aに配置されてツールシャンク移動機構15に接続され、テーパ穴11aの開口側に加工ツール(工具)が取り付けられるツール保持穴13aとツール保持穴13aから外周面まで貫通する複数のスリ割りが形成されたチャック部13dを有するツールシャンク13と、を備える。ツールシャンク移動機構15ツールシャンク13をテーパ穴11aの奥に移動させ(矢印a)、ツール保持穴13aの径を縮めて加工ツールを保持する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を軸として回転し、開口に向かって広がるテーパ穴が形成され、前記テーパ穴の開口とは反対側にツールシャンク移動機構が配置されたスピンドル主軸と、
前記テーパ穴に配置されて前記ツールシャンク移動機構に接続され、前記テーパ穴の開口側に先端に加工刃を有する加工ツールが取り付けられるツール保持穴と前記ツール保持穴から外周面まで貫通する複数のスリ割りが形成されたチャック部を有するツールシャンクと、を備え、
前記ツールシャンク移動機構が前記ツールシャンクを前記テーパ穴の奥に移動させて前記ツール保持穴の径を縮めることによって前記加工ツールを保持する、工作機械。
【請求項2】
前記ツールシャンクは、前記テーパ穴に挿入される側にプルスタッドを有し、
前記ツールシャンク移動機構は、前記テーパ穴の開口側に前記プルスタッドを保持するクランプ機構を、更に備え、
前記クランプ機構が、前記テーパ穴に挿入された前記ツールシャンクの前記プルスタッドを保持し、
前記ツールシャンク移動機構が前記プルスタッドを保持した前記クランプ機構を引いて前記ツールシャンクを前記テーパ穴の奥に移動させる、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記ツールシャンクの前記外周面には、凹状のキー溝が形成され、
前記テーパ穴のテーパ面には、前記テーパ穴に配置された前記ツールシャンクの前記キー溝に係合するキー溝係止部が形成された、請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記加工ツールの前記ツール保持穴に挿入される側の端部には、ツール保持穴の奥側に突出するタングが形成され、
前記ツールシャンクの前記ツール保持穴の奥面には、前記加工ツールの前記タングが係合するタング挿入穴が形成された、請求項1に記載の工作機械。
【請求項5】
前記加工ツールは、先端に前記加工刃を有する工具と、前記工具の基部側に外嵌された外嵌部材と、を備え、
前記ツールシャンクは、前記外嵌部材を保持する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項6】
前記外嵌部材の前記ツール保持穴に挿入される側の端部には、ツール保持穴の奥側に突出するタングが形成され、
前記ツールシャンクの前記ツール保持穴の奥面には、前記加工ツールの前記タングが係合するタング挿入穴が形成された、請求項5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記ツールシャンクには、前記テーパ穴に挿入される側に前記ツール保持穴まで貫通する貫通孔が形成されており、
前記ツールシャンク移動機構に接続された前記ツールシャンクの前記貫通孔に挿入される押し出し部材を前記ツール保持穴の中まで移動させて、前記ツール保持穴に装着された前記加工ツールを前記ツール保持穴から押し出す押し出し機構を、更に備えた、請求項1に記載の工作機械。
【請求項8】
マガジン本体と、
加工ツールが保持され、前記マガジン本体に対して没突可能に設けられた複数の加工ツールホルダと、を有するツールマガジンを、更に備え、
前記ツールシャンクに加工ツールを取り付ける際に、
前記複数の加工ツールホルダのうち前記ツールシャンクに取り付けられる加工ツールを保持する加工ツールホルダは、保持する加工ツールを前記ツール保持穴に押し付ける、請求項1に記載の工作機械。
【請求項9】
前記ツールシャンクに加工ツール工具を取り付ける際に、
前記複数の加工ツールホルダのうち保持する加工ツールが前記スピンドル主軸と干渉する加工ツールホルダは、保持する加工ツールが前記スピンドル主軸から遠ざかる方向に移動する、請求項8に記載の工作機械。
【請求項10】
加工ツールは、先端とは反対側に加工刃よりも直径が大きな筒状の外巻部を有し、
前記外巻部の加工刃側の縁部には、前記外巻部の一部が切り欠かれた切り欠き部が形成され、
前記加工ツールホルダは、保持する前記加工ツールの前記縁部が当接する当接部を有し、
前記当接部には、外側に突出して前記加工ツールの前記切り欠き部が係合する位置決め部が形成されている、請求項8に記載の工作機械。
【請求項11】
前記加工ツールホルダに挿入された前記加工ツールを把持する把持機構を、更に備える、請求項8に記載の工作機械。
【請求項12】
前記ツールマガジンの加工ツールホルダが保持する加工ツールに近づく方向、および、遠ざかる方向に前記スピンドル主軸を往復移動させる主軸移動機構を、更に備え、
前記主軸移動機構が前記スピンドル主軸を往復移動させることで、前記ツールシャンクの前記チャック部が保持する前記加工ツールを交換する、請求項8から11のいずれかに記載の工作機械。
【請求項13】
工作機械のスピンドル主軸に形成されたテーパ穴に装着されるツールシャンクであって、
先端に加工刃を有する加工ツールが取り付けられるツール保持穴と前記ツール保持穴から外周面まで貫通する複数のスリ割りが形成されたチャック部を有し、
前記テーパ穴の奥に移動することで前記ツール保持穴の径が縮まり前記加工ツールを保持する、ツールシャンク。
【請求項14】
工作機械のスピンドル主軸に形成されたテーパ穴に装着された請求項11に記載のツールシャンクのツール保持穴に取り付けられる複数の加工ツールを保持するツールマガジンであって、
マガジン本体と、
加工ツールが保持され、前記マガジン本体に対して没突可能に設けられた複数の加工ツールホルダと、を有し、
前記スピンドル主軸に加工ツール工具が取り付けられる際に、
前記複数の加工ツールホルダのうち前記ツールシャンクに取り付けられる加工ツールを保持する加工ツールホルダは、保持する加工ツールを前記ツール保持穴に押し付ける、ツールマガジン。
【請求項15】
前記加工ツールホルダに挿入された前記加工ツールを把持する把持機構を、更に備える、請求項14に記載のツールマガジン。
【請求項16】
工作機械のスピンドル主軸に形成されたテーパ穴に装着された請求項11に記載のツールシャンクのツール保持穴であって、奥面にタング挿入穴が形成された前記ツール保持穴に取り付けられる加工ツールであって、
先端に加工刃を有し、
前記先端とは反対側には、前記タング挿入穴に係合するタングが形成された、加工ツール。
【請求項17】
先端に前記加工刃を有する工具と、前記工具の基部側に外嵌された外嵌部材と、を備え、
前記タングは、前記外嵌部材の前記先端とは反対側に形成された、請求項16に記載の加工ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツールマガジンに収納される工具を保持するツールシャンクを有する工作機械、ツールシャンク、ツールマガジンならびに加工ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工具収納部に収納されるドリルなどの工具を自動で交換してワークを加工する工作機械が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の工作機械(マシニングセンタ)では、下部に工具を保持させた複数のツールホルダを作製して、予め工具収納部に収納している。そして、工具の交換の際は、自動工具交換装置によって所望の工具を保持するツールホルダを工具収納部から取り出して、工作機械のスピンドル主軸の下方に移動させる。そして、スピンドル主軸を下降させてツールホルダの上部をスピンドル主軸に形成されたテーパ穴に挿入し、ツールホルダをスピンドル主軸に装着させることで、工具を交換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-155343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来技術では、工具を自動で交換することはできるものの、工具収納部が収納可能な工具数は工具収納部が収納可能なツールホルダ数で制限されてしまう。さらに、工具を保持するツールホルダの外形寸法は工具単体よりも数倍も大きいことから、自動で交換可能な工具数を増やすと工具収納部や自動工具交換装置のサイズが大きく、かつ重くなってしまうという問題点があった。そのため、より多くの工具を密集させて工具収納部に収納し、自動で交換させるためには、さらなる改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、ツールマガジンに密集して収納可能な複数の工具を交換して使用することができる工作機械、ツールシャンク、ツールマガジンならびに加工ツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の工作機械は、回転軸を軸として回転し、開口に向かって広がるテーパ穴が形成され、前記テーパ穴の開口とは反対側にツールシャンク移動機構が配置されたスピンドル主軸と、前記テーパ穴に配置されて前記ツールシャンク移動機構に接続され、前記テーパ穴の開口側に先端に加工刃を有する加工ツールが取り付けられるツール保持穴と前記ツール保持穴から外周面まで貫通する複数のスリ割りが形成されたチャック部を有するツールシャンクと、を備え、前記ツールシャンク移動機構が前記ツールシャンクを前記テーパ穴の奥に移動させて前記ツール保持穴の径を縮めることによって前記加工ツールを保持する。
【0007】
本発明のツールシャンクは、工作機械のスピンドル主軸に形成されたテーパ穴に装着されるツールシャンクであって、先端に加工刃を有する加工ツールが取り付けられるツール保持穴と前記ツール保持穴から外周面まで貫通する複数のスリ割りが形成されたチャック部を有し、前記テーパ穴の奥に移動することで前記ツール保持穴の径が縮まり前記加工ツールを保持する。
【0008】
本発明のツールマガジンは、工作機械のスピンドル主軸に形成されたテーパ穴に装着された請求項11に記載のツールシャンクのツール保持穴に取り付けられる複数の加工ツールを保持するツールマガジンであって、マガジン本体と、加工ツールが保持され、前記マガジン本体に対して没突可能に設けられた複数の加工ツールホルダと、を有し、前記スピンドル主軸に加工ツール工具が取り付けられる際に、前記複数の加工ツールホルダのうち前記ツールシャンクに取り付けられる加工ツールを保持する加工ツールホルダは、保持する加工ツールを前記ツール保持穴に押し付ける。
【0009】
本発明の加工ツールは、工作機械のスピンドル主軸に形成されたテーパ穴に装着された請求項11に記載のツールシャンクのツール保持穴であって、奥面にタング挿入穴が形成された前記ツール保持穴に取り付けられる加工ツールであって、先端に加工刃を有し、前記先端とは反対側には、前記タング挿入穴に係合するタングが形成された。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ツールマガジンに密集して収納可能な複数の工具を交換して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態の工作機械の要部の構成を示す概略図
図2】本発明の一実施の形態の工作機械においてツールシャンクが取付けられるスピンドル主軸の要部の分解図
図3】本発明の一実施の形態の工作機械のスピンドル主軸に取り付けられたツールシャンクのツール保持穴を(a)開いた状態の側方断面図(b)縮めた状態の側方断面図
図4】本発明の一実施の形態の工作機械のスピンドル主軸に取り付けられたツールシャンクのツール保持穴を(a)開いた状態を下方から見た説明図(b)縮めた状態を下方から見た説明図
図5】本発明の一実施の形態の工作機械においてスピンドル主軸から工具を取り外す工程の説明図
図6】本発明の一実施の形態の工作機械においてスピンドル主軸から工具を取り外す工程の説明図
図7】本発明の一実施の形態の工作機械においてスピンドル主軸に工具を取り付ける工程の説明図
図8】本発明の一実施の形態の工作機械においてスピンドル主軸に工具を取り付ける工程の説明図
図9】本発明の一実施の形態の工作機械においてスピンドル主軸に工具を取り付ける工程の説明図
図10】本発明の一実施の形態の工作機械の変形例のスピンドル主軸に取り付けられるツールシャンクの(a)平面図(b)側面図(c)正面図
図11】本発明の一実施の形態の工作機械の変形例のスピンドル主軸の要部の(a)側方断面図(b)底面図
図12】本発明の一実施の形態の工作機械の変形例においてスピンドル主軸に取り付けられる加工ツールの(a)平面図(b)側面図(c)正面図
図13】本発明の一実施の形態の工作機械の変形例において使用されるツールマガジンの加工ツールホルダの(a)平面図(b)側方断面図(c)正面断面図
図14】本発明の一実施の形態の工作機械の変形例において加工ツールを取り付けたスピンドル主軸とツールマガジンの要部の断面図
図15】(a)(b)本発明の一実施の形態の工作機械の他の変形例においてスピンドル主軸から工具を取り外す工程の説明図
図16】(a)(b)本発明の一実施の形態の工作機械の他の変形例においてスピンドル主軸から工具を取り外す工程の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、工作機械、ツールシャンク、加工ツール、ツールマガジンの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
まず図1図5を参照して、工作機械1の構成について説明する。図1において、工作機械1は、主軸装置10、工具収納装置20、制御装置30を備えている。主軸装置10は、上下方向(Z軸方向)の回転軸CLを軸として回転するスピンドル主軸11を有する主軸ヘッド12を備えて構成されている。スピンドル主軸11の回転開始、回転停止、回転速度、回転停止位置などの回転に関する動作は、制御装置30によって制御される。主軸ヘッド12は、制御装置30によって制御されるヘッド移動機構31によって上下方向のみに、または上下方向と水平方向(X軸方向、Y軸方向)に移動する。
【0014】
図2において、スピンドル主軸11の下部には、下方に開口するテーパ穴11aが形成されている。テーパ穴11aは、回転軸CLに回転対称でテーパ穴11aの開口11b(図2参照)に向かって広がる形状をしている。テーパ穴11aには、略円錐形で下方に向かって広がる形状を有するツールシャンク13が配置されている。ツールシャンク13の上部には、プルスタッド14が装着されている。ツールシャンク13の下部には、下面に開口するツール保持穴13aが形成されている(図3図4参照)。
【0015】
図1において、スピンドル主軸11において、テーパ穴11aの開口11bとは反対側には、下部にクランプ機構15aを備えるツールシャンク移動機構15が配置されている。クランプ機構15aは制御装置30によって制御されており、テーパ穴11aに挿入されたツールシャンク13のプルスタッド14を保持し、または、保持するプルスタッド14を開放する機能を有している。すなわち、ツールシャンク移動機構15は、テーパ穴11aの開口11b側にプルスタッド14を保持するクランプ機構15aを備えている。
【0016】
ツールシャンク移動機構15は制御装置30によって制御されており、クランプ機構15aを上下に移動させる機能を有している。すなわち、クランプ機構15aがプルスタッド14を保持してツールシャンク移動機構15にツールシャンク13が接続された状態で、ツールシャンク移動機構15がクランプ機構15aを上下に移動せることでツールシャンク13がテーパ穴11a内を上下に移動する(図3参照)。
【0017】
図1図5において、ツール保持穴13aには、先端に加工刃を有するドリルなどの工具40が取り付けられる。工具40において、ツール保持穴13aに保持される根本(基部)付近には、工具40の加工刃の先端とは反対側の基部側の外周を囲うカラー41が装着されている。以下、工具40とカラー41が一体化した物を「加工ツール42」と称する。例えば、加工ツール42は、工具40の外径より内径が大きく、線膨張係数が大きな筒状の金属で形成されるカラー41(外嵌部材)を工具40の基部に外嵌(例えば、焼き嵌め)することで形成される。すなわち、加工ツール42は、先端に加工刃を有する工具40と、工具の基部側に外嵌された外嵌部材(カラー41)と、を備えて構成されている。
【0018】
図5において、本実施の形態の加工ツール42には、工具40の外径には依存せずに、外径が一定のカラー41が使用される。すなわち、カラー41は、工具40の外径に対応して内径が異なっていても、外径D3は一定(同一)である。これによって、工具40が異なる加工ツール42であっても、ツールシャンク13に保持される部分(外嵌部材)の外径D3は一定となる(例えば、図5の加工ツール42Pと、図8の加工ツール42Qを参照)。そのため、ツールシャンク13を交換することなく、スピンドル主軸11のテーパ穴11aに装着したツールシャンク13に工具40が異なる加工ツール42を保持させることができる。
【0019】
このように、加工ツール42は、先端に加工刃を有する工具40と、工具40における基部側に外嵌された外嵌部材(カラー41)と、を備えており、ツールシャンク13のツール保持穴13aは、加工ツール42の外嵌部材を保持する。そして、外嵌部材の外径D3は工具40の外径に関わらず一定である。これによって、工作機械1に取り付けた工具40を交換する際にツールシャンク13は交換する必要が無く、外径が異なる工具40であっても自在に交換することができる。また、工具40と一体化させたツールホルダを作製し、そのツールホルダを交換する従来の方式と比較して、交換対象となる加工ツール42を大幅に小型化、軽量化することができる。さらに、本実施の形態の工作機械1はツールシャンク13が工具40毎に交換する交換部品ではないため、工具40と一体化させたツールホルダを使用する従来の工作機械と比較して、交換部品を大幅に削減することができる。
【0020】
図1において、工具収納装置20は、加工ツール42(工具40)を保持する複数の加工ツールホルダ21をマガジン本体22に有するツールマガジン23を備えて構成されている。ツールマガジン23は、制御装置30によって制御されるマガジン移動機構32によって工作機械1の内部を移動する。ツールマガジン23は、マガジン移動機構32に着脱可能に構成されている。スピンドル主軸11に取付けられている加工ツール42Pは、後述する加工ツール取り外し動作によってスピンドル主軸11から取り外されて、ツールマガジン23の空の加工ツールホルダ21Pに回収される(図5図6参照)。また、ツールマガジン23の加工ツールホルダ21Qに保持されている加工ツール42Qは、後述する加工ツール取り付け動作によってスピンドル主軸11に取り付けられる(図7図9参照)。
【0021】
次に図2図4を参照して、スピンドル主軸11とツールシャンク13の詳細な構成について説明する。図2において、ツールシャンク13に装着されるプルスタッド14の下部には雄ねじ部14aが形成されている。ツールシャンク13は、弾性変形するスチール、超硬合金、サーメットなどで形成されている。ツールシャンク13の上部には、雄ねじ部14aに対応する雌ねじ部13bが形成されている。雄ねじ部14aを雌ねじ部13bにねじ合わせて取り付けることで、ツールシャンク13の上部にプルスタッド14が固定される。
【0022】
ツールシャンク13の下部には、ツールシャンク13の外周面からツール保持穴13aまで貫通する複数のスリ割り13cが形成されている。この例では、4本のスリ割り13cが形成されており、ツールシャンク13の下部は、4つに分割されている(図4参照)。なお、ツールシャンク13の分割数(スリ割り13cの数)は4つに限定されることはなく、3つでも、5つ以上でもよい。
【0023】
図2図3において、ツールシャンク13の外周面のテーパ角度は、スピンドル主軸11のテーパ穴11aのテーパ面のテーパ角度と同じ、または、やや大きく形成されている。プルスタッド14が装着されたツールシャンク13は、プルスタッド14側からスピンドル主軸11のテーパ穴11aに挿入される。さらに、ツールシャンク13は、プルスタッド14がクランプ機構15aに保持されるまで押し上げられてスピンドル主軸11に装着される。このように、ツールシャンク13は、テーパ穴11aに挿入される側にプルスタッド14を有している。
【0024】
図2図4において、スピンドル主軸11の下面におけるテーパ穴11aの開口11bの外側には、脱落防止取付け部16が配置されている。脱落防止取付け部16には、円板状の脱落防止板17がねじ18で係止されている。脱落防止板17の中央部には、ツールシャンク13のツール保持穴13aよりも径が大きな開口部17aが形成されている。脱落防止取付け部16に取り付けられた脱落防止板17は、テーパ穴11aに挿入されたツールシャンク13が落下(脱落)することを防止する。また、脱落防止板17は、ツールシャンク移動機構15によって昇降するツールシャンク13の下限の位置を規制する。
【0025】
このように、脱落防止取付け部16、脱落防止板17、ねじ18は、ツールシャンク13の落下を防止し、昇降するツールシャンク13の下限の位置を規制する脱落防止部19を形成する。すなわち、スピンドル主軸11には、ツール保持穴13aよりも大きな開口部17aを有し、ツールシャンク13がテーパ穴11aから外れることを防止する脱落防止部19が設けられている。なお、脱落防止部19は、脱落防止取付け部16、脱落防止板17、ねじ18で形成される構成に限定されることはない。例えば、脱落防止部19は、脱落防止取付け部16と脱落防止板17が一体的に形成された部材をねじ18でスピンドル主軸11の下面に固定する構成であってもよい。
【0026】
次に、図3図4を参照して、スピンドル主軸11とツールシャンク13によるツール保持穴13aの開閉動作について説明する。図3(a)と図4(a)は、ツールシャンク13が下限の位置にある状態を示している。すなわち、ツールシャンク移動機構15は下降した状態であり、ツールシャンク13の下面が脱落防止板17に当接している。この状態では、ツールシャンク13の外周面はテーパ穴11aのテーパ面から離れており、ツール保持穴13aの内径D1は、加工ツール42のカラー41の外径D3よりも大きい(D1>D3)。以下、このツール保持穴13aが開いた状態を「ツール解放状態」と称する。
【0027】
図3(b)と図4(b)は、ツールシャンク移動機構15がツールシャンク13を上方に引き上げ(矢印a)、ツールシャンク13の外周面がテーパ穴11aのテーパ面に当接している状態を示している。この状態では、ツールシャンク13のスリ割り13cの幅が狭まり、ツール保持穴13aの内径D2はツール解放状態での内径D1より小さくなって、加工ツール42のカラー41の外径D3と同じか、外径D3よりも小さくなる(D2≦D3)。このように、クランプ機構15aはテーパ穴11aに挿入されたツールシャンク13のプルスタッド14を保持し、ツールシャンク移動機構15はプルスタッド14を保持したクランプ機構15aを引いてツールシャンク13をテーパ穴11aの奥に移動させてツール保持穴13aの径を縮める。以下、このツール保持穴13aの径が縮んだ状態を「ツール保持状態」と称する。
【0028】
ツール保持穴13aに加工ツール42Q(工具40)のカラー41側が挿入された後に、ツールシャンク移動機構15がツールシャンク13を引き上げてツール保持状態となると、加工ツール42Qがツールシャンク13に保持される(図8参照)。また、ツール保持状態からツールシャンク移動機構15がツールシャンク13を押し下げられてツール解放状態となると、加工ツール42Pがツールシャンク13から解放される(図5参照)。
【0029】
このように、ツールシャンク13の下部において、中央に形成されたツール保持穴13aと、ツール保持穴13aからツールシャンク13の外周面まで貫通して形成された複数のスリ割り13cを含む部分は加工ツール42を掴むチャック部13dを構成する。すなわち、ツールシャンク13は、テーパ穴11aに挿入される側にプルスタッド14を有し、反対側に加工ツール42(工具40)が取り付けられるツール保持穴13aとツール保持穴13aから外周面まで貫通する複数のスリ割り13cが形成されたチャック部13dを有し、テーパ穴11aの奥に移動することでツール保持穴13aの径が縮まる。
【0030】
次に、図5を参照して、ツールマガジン23の詳細な構成について説明する。ツールマガジン23は、マガジン移動機構32によって移動して、保持する複数の加工ツール42(工具40)をスピンドル主軸11に供給する機能を備えている。また、ツールマガジン23は、スピンドル主軸11に取り付けられていた加工ツール42を回収する機能を備えている。加工ツールホルダ21は上方に開口した有底の筒状をしている。加工ツール42は、カラー41側を上に向けて、工具40の先端側から加工ツールホルダ21のツール載置穴21aに挿入される。
【0031】
ツール載置穴21aの内径は、加工ツール42のカラー41の外径D3より小さく、全ての工具40の外径より大きくなるように形成されている。そして、ツール載置穴21aの上部には、開口から所定の深さまでの内径がカラー41の外径D3よりもやや大きな穴が形成されている。これにより、ツール載置穴21aの内壁には段差が形成される。ツール載置穴21aにおいて、内壁に段差が形成された位置は、ツール載置穴21aに挿入された加工ツール42のカラー41の加工刃側の縁部が当接するツールホルダ当接部21b(当接部)となる。ツール載置穴21aに挿入された加工ツール42は、カラー41の加工刃側の縁部がツールホルダ当接部21bに当接する状態で加工ツールホルダ21に保持される。これにより、保持されている加工ツール42が加工ツールホルダ21の上方から突出する長さは、略同じになる。
【0032】
図5において、ツールマガジン23のマガジン本体22には、加工ツールホルダ21の外径よりもやや大きな複数のホルダ移動穴22aが上下に貫通して形成されている。マガジン本体22において、ホルダ移動穴22aの周囲には、弾性体であるばね24の下部を保持する弾性体保持穴22bが形成されている。加工ツールホルダ21は、弾性体保持穴22bにばね24を装着した状態で上方からホルダ移動穴22aに挿入される。加工ツールホルダ21の上部には、外周面から外側に延出する弾性体係止部21cが形成されている。弾性体保持穴22bに装着されたばね24の上端は、下方から弾性体係止部21cに当接する。ホルダ移動穴22aに取り付けられた加工ツールホルダ21は、ばね24によって上方に付勢される。
【0033】
加工ツールホルダ21の底部21dには、下方に延出する停止板固定棒21eが設けられている。ホルダ移動穴22aに挿入され、ホルダ移動穴22aの下部開口22cから突出した加工ツールホルダ21の停止板固定棒21eには、下部開口22cよりも外径が大きな円板状の停止板25が固定される。ばね24によって付勢される加工ツールホルダ21の上限位置は、停止板25が下部開口22cの周囲のマガジン本体22の下面に当接することで規制される。このように、ツールマガジン23は、マガジン本体22と、加工ツール42(工具40)が保持され、マガジン本体22に対して没突可能に設けられた複数の加工ツールホルダ21と、を有する。
【0034】
次に、図5~6を参照して、スピンドル主軸11から加工ツール42を取り外す加工ツール取り外し動作(加工ツール取り外し工程)について説明する。加工ツール取り外し動作は、制御装置30がヘッド移動機構31(主軸移動機構)、ツールシャンク移動機構15、マガジン移動機構32を制御することによって実現される。図5において、制御装置30はマガジン移動機構32を制御して、ツールマガジン23が有する複数の加工ツールホルダ21のうち、空の加工ツールホルダ21Pを交換対象の加工ツール42Pが取付けられているスピンドル主軸11の下方に移動させる(矢印b1)。
【0035】
次いで制御装置30はヘッド移動機構31(主軸移動機構)を制御して、スピンドル主軸11に取り付けられている加工ツール42Pのカラー41Pの加工刃側の縁部がツールホルダ当接部21bに当接するまで主軸ヘッド12を下降させる(矢印b2)。これにより、加工ツール42Pが工具40の先端側から加工ツールホルダ21Pに挿入される。この際、加工ツール42Pが挿入された加工ツールホルダ21Pに隣接する加工ツールホルダ21は、保持する加工ツール42の上面がスピンドル主軸11(または、脱落防止取付け部16、もしくは、ねじ18)や主軸ヘッド12の下面に押されて下方に移動する(矢印b3)。すなわち、保持する加工ツール42(工具40)がスピンドル主軸11と干渉する加工ツールホルダ21は、保持する加工ツール42がスピンドル主軸11から遠ざかる方向(下方)に移動する。
【0036】
隣接する加工ツールホルダ21が下方に移動することによって、隣接して保持されている加工ツール42が空の加工ツールホルダ21Pへの交換対象の加工ツール42Pの回収動作の障害となることが回避される。このように、ツールマガジン23には、スピンドル主軸11や主軸ヘッド12の下面と干渉する範囲にも、複数の加工ツール42が収納されている。すなわち、本実施の形態のツールマガジン23は、スピンドル主軸11に取り付けられる工具40(加工ツール42)を密集して収納することができる。これによって、ツールマガジン23が大幅に小型化、軽量化される。また、予め加工対象のワークに対応する加工ツール42を搭載した予備のツールマガジン23を用意し、工作機械1に装着されているツールマガジン23と交換することで、加工対象の変更に伴う工作機械1の構成の変更を容易に行うことができる。
【0037】
図5において、次いで制御装置30はツールシャンク移動機構15を制御して、ツールシャンク13を下降させてツール解放状態とする(矢印b4)。すなわち、ツールシャンク13のツール保持穴13aを広げて、加工ツール42Pをツールシャンク13のチャック部13dから解放させる。
【0038】
図6において、次いで制御装置30はヘッド移動機構31(主軸移動機構)を制御して、スピンドル主軸11に設けられた脱落防止部19などがツールマガジン23に保持されている加工ツール42,42Pと干渉しない高さまで主軸ヘッド12を上昇させる(矢印c1)。主軸ヘッド12の上昇に伴い、下方に移動していた加工ツールホルダ21は、ばね24の付勢力によって上限位置まで上昇する(矢印c2)。
【0039】
次に、図7~9を参照して、スピンドル主軸11に加工ツール42を取り付ける加工ツール取り付け動作(加工ツール取り付け工程)について説明する。加工ツール取り付け動作は、制御装置30がヘッド移動機構31、ツールシャンク移動機構15、マガジン移動機構32を制御することによって実現される。図7において、制御装置30はマガジン移動機構32を制御して、ツールマガジン23が保持している複数の加工ツール42のうち、取り付け対象の加工ツール42Qをツール解放状態のスピンドル主軸11の下方に移動させる(矢印d1)。
【0040】
次いで制御装置30はヘッド移動機構31(主軸移動機構)を制御して、加工ツール42Qがツールシャンク13のツール保持穴13aに挿入され、加工ツール42Qの上面がツール保持穴13aの天井部に当接するまで下降させる(矢印d2)。この際、制御装置30はヘッド移動機構31を制御して、加工ツール42Qを保持する加工ツールホルダ21Qが上限位置から所定量だけ下降する位置に移動するまで押し下げる(矢印d3)。これにより、ばね24によって加工ツール42Qを押し上げてツール保持穴13aの天井部に押し付ける付勢力Fが発生する。
【0041】
また、主軸ヘッド12の下降に伴い、加工ツール42Qを保持する加工ツールホルダ21Qに隣接する加工ツールホルダ21が保持している加工ツール42が押し下げられる(矢印d4)。これによって、隣接して保持されている加工ツール42が加工ツール42Qのスピンドル主軸11への取り付け動作の障害となることが回避される。
【0042】
図8において、次いで制御装置30はツールシャンク移動機構15を制御して、ツールシャンク13を上昇させてツール保持状態とする(矢印e1)。すなわち、ツールシャンク13のツール保持穴13aを縮めて、加工ツール42Qをツールシャンク13のチャック部13dに保持させる。ツールシャンク移動機構15がツールシャンク13を上昇させる間、ばね24の付勢力Fによって加工ツール42Qがツール保持穴13aの天井部に押し付けられることで(矢印e2)、加工ツール42Qがツール保持穴13aに確実に保持される。すなわち、工具収納装置20のツールマガジン23は、ツールシャンク13のチャック部13dが加工ツール42Qを保持する際に、加工ツール42Qを下方からツール保持穴13aの天井部に向けて上方に押し付ける機能を有している。
【0043】
図9において、次いで制御装置30はヘッド移動機構31(主軸移動機構)を制御して、スピンドル主軸11に取り付けられた加工ツール42Qがツールマガジン23に保持されている加工ツール42と干渉しない高さまで主軸ヘッド12を上昇させる(矢印f1)。主軸ヘッド12の上昇に伴い、下方に移動していた加工ツールホルダ21は、ばね24の付勢力によって上限位置まで上昇する(矢印f2)。次いで制御装置30はマガジン移動機構32を制御して、ツールマガジン23が主軸装置10の加工作業に干渉しない位置まで退避させる(矢印f3)。
【0044】
このように、ツールマガジン23では、スピンドル主軸11に加工ツール42Q(工具40)が取り付けられる際に、複数の加工ツールホルダ21のうち保持する加工ツール42がスピンドル主軸11と干渉する加工ツールホルダ21は、保持する加工ツール42がスピンドル主軸11から遠ざかる方向(下方)に移動する(図7の矢印d4)。また、ツールマガジン23では、スピンドル主軸11に加工ツール42Qが取り付けられる際に、複数の加工ツールホルダ21のうちスピンドル主軸11に取り付けられる加工ツール42Qを保持する加工ツールホルダ21Qは、保持する加工ツール42Qをツール保持穴13aに押し付ける(図8の矢印e2)。
【0045】
これによって、ツールマガジン23に複数の工具40を密集して収納することが可能となり、また、ツールマガジン23に収納している工具40(加工ツール42Q)を、確実にスピンドル主軸11に取り付けることができる。なお、上述したツールマガジン23は、ばね24の付勢力Fによって干渉する加工ツールホルダ21をスピンドル主軸11から遠ざかる方向に移動させ、スピンドル主軸11に取り付ける工具40をツール保持穴13aに押し付けているが、ツールマガジン23はこの構成に限定されることはない。例えば、ツールマガジン23は、制御装置30で制御され、加工ツールホルダ21を昇降させるシリンダを備え、シリンダによって加工ツールホルダ21を昇降させる構成であってもよい。
【0046】
このように、工作機械1は、ツールマガジン23の加工ツールホルダ21が保持する加工ツール42に近づく方向(下方)、および、遠ざかる方向(上方)にスピンドル主軸11を往復移動させる主軸移動機構(ヘッド移動機構31)を、備えている。そして、工作機械1は、主軸移動機構がスピンドル主軸11を往復移動(上下動)させ、ツールシャンク移動機構15がツールシャンク13を往復移動させることで、ツールシャンク13のチャック部13dが保持する加工ツール42を交換する。すなわち、本実施の形態の工作機械1は、ツールマガジン23から加工ツール42を取り出してチャック部13dに取り付ける自動工具交換装置などの追加の装置を必要とせず、主軸装置10のシンプルな交換動作のみで、工具40(加工ツール42)を自動で交換することができる。
【0047】
次に図10図14を参照して、工作機械1の変形例について説明する。以下、工作機械1の変形例を単に「工作機械1A」と称する。工作機械1Aは、スピンドル主軸が回転する際に工具に高い負荷が加わっても、テーパ穴とツールシャンク、ツール保持穴と加工ツールが滑って空転しないように、キー溝やタングが形成されているところが工作機械1とは異なる。また、ツールシャンクがツールシャンク移動機構に直接接続されているところが工作機械1とは異なる。以下、工作機械1と同じ部分には同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0048】
図10図11において、工作機械1Aのスピンドル主軸11Aに形成されたテーパ穴11Aaに配置されるツールシャンク13Aの下部には、ツール保持穴13Aaと複数のスリ割り13Acが形成されている。また、ツールシャンク13Aの上部には、上方に突出する雄ねじ部13Aeが形成されている。さらに、ツールシャンク13Aの外周面には、凹状のキー溝13Afが形成されている。この例では、ツールシャンク13Aには、対向する位置に2つのキー溝13Afが形成されている。なお、キー溝13Afの数は2つに限定されることはなく、1つでも、3つ以上でもよい。
【0049】
図11において、スピンドル主軸11Aに配置されたツールシャンク移動機構15Aはクランプ機構を備えておらず、下部にツールシャンク13Aの雄ねじ部13Aeに対応する雌ねじ部15Abが形成されている。また、スピンドル主軸11Aに形成されたテーパ穴11Aaのテーパ面には、テーパ面から突出し、テーパ穴11Aaに配置されたツールシャンク13Aのキー溝13Afに係合するキー溝係止部11Acが形成されている。
【0050】
ツールシャンク13Aをスピンドル主軸11Aに接続する際は、ツールシャンク移動機構15Aを下部がテーパ穴11Aaから突き出る程度に下降させ、キー溝係止部11Acがツールシャンク13Aに干渉しない状態でツールシャンク13Aの雄ねじ部13Aeをツールシャンク移動機構15Aの雌ねじ部15Abにねじ合わせて取り付ける。そして、ツールシャンク13Aのキー溝13Afがテーパ穴11Aaのキー溝係止部11Acに係合するようにツールシャンク13Aの回転位置を合わせた状態で、ツールシャンク移動機構15Aを上昇させる。これによって、ツールシャンク13Aのキー溝13Afがテーパ穴11Aaのキー溝係止部11Acに係合する。
【0051】
このように、ツールシャンク13Aは、テーパ穴11Aaに配置されてツールシャンク移動機構15Aに接続され、テーパ穴11Aaの開口側に先端に加工刃を有する加工ツール42Aが取り付けられるツール保持穴13Aaとツール保持穴13Aaから外周面まで貫通する複数のスリ割り13Acが形成されたチャック部13Adを有する。そして、キー溝13Afをキー溝係止部11Acに係合させることで、スピンドル主軸11Aが回転する際にテーパ穴11Aaとツールシャンク13Aが滑って空転することが防止される。なお、キー溝係止部11Acはテーパ穴11Aaに形成する構成に限定されることはない。例えば、図3図4に示す脱落防止部19の脱落防止取付け部16をキー溝係止部として兼用する構成であってもよい。
【0052】
図11において、ツールシャンク13Aは雄ねじ部13Aeと雌ねじ部15Abによってツールシャンク移動機構15Aに固定されるため、使用状態でツールシャンク13Aがテーパ穴11Aaから外れることがない。そのため、スピンドル主軸11Aには工作機械1のスピンドル主軸11が備える脱落防止部は配置されていない。なお、ツールシャンク13Aをツールシャンク移動機構15Aに固定する方法はねじ止めに限定されることはなく、例えば、ピンによって固定するようにしてもよい。
【0053】
図12において、ツール保持穴13Aaに取り付けられる加工ツール42Aは、先端に加工刃を有する工具40と、工具40の基部側に外嵌された外嵌部材であるカラー41Aを備えている。カラー41A(外嵌部材)のツール保持穴13Aaに挿入される側(加工刃の先端とは反対側)の端部には、ツール保持穴13Aaの奥側に突出するタング41Aaが形成されている。すなわち、加工ツール42Aのツール保持穴13Aaに挿入される側の端部には、ツール保持穴13Aa側に突出するタング41Aaが形成されている。この例では、加工ツール42Aには、対向する位置に2つのタング41Aaが形成されている。なお、タング41Aaの数は2つに限定されることはなく、1つでも、3つ以上でもよい。
【0054】
図11において、ツールシャンク13Aのツール保持穴13Aaの奥面(天井面)には、加工ツール42Aのタング41Aaが係合するタング挿入穴13Agが形成されている。加工ツール42Aは、タング41Aaがタング挿入穴13Agに係合するようにツール保持穴13Aaに取り付けられる(図14参照)。これによって、スピンドル主軸11Aが回転する際に、ツール保持穴13Aaと加工ツール42Aが滑って空転することが防止される。
【0055】
図12において、加工ツール42Aのカラー41A(外巻部)の加工刃側の縁部には、カラー41Aの一部が切り欠かれた切り欠き部41Abが形成されている。この例では、加工ツール42Aには、対向する位置に2つの切り欠き部41Abが形成されている。なお、切り欠き部41Abの数は2つに限定されることはなく、1つでも、3つ以上でもよい。
【0056】
図13図14において、ツールマガジン23Aが有する複数の加工ツールホルダ21Aは、保持する加工ツール42Aの加工刃側の縁部が当接する当接部21Abをそれぞれ有している。そして、当接部21Abには、外側に突出して加工ツール42Aの切り欠き部41Abが係合する位置決め部21Acが形成されている。
【0057】
図14において、複数の加工ツールホルダ21Aは、位置決め部21Acの位置が揃うようにツールマガジン23Aのマガジン本体22に取り付けられ、ばね24によって上方に付勢されている。位置決め部21Acの位置を揃えることにより、加工ツールホルダ21Aが保持する全ての加工ツール42Aは、タング41Aaの位置が一致する。制御装置30は、スピンドル主軸11Aを停止させる際、ツール保持穴13Aaのタング挿入穴13Agがツールマガジン23Aに保持される加工ツール42Aのタング41Aaの位置と一致するように回転位置を合わせて停止させる。これによって、加工ツール取り外し動作、および、加工ツール取り付けし動作において、加工ツール42Aのタング41Aaがツール保持穴13Aaのタング挿入穴13Agに係合し、加工ツール42Aの切り欠き部41Abが加工ツールホルダ21Aの位置決め部21Acに係合するように、加工ツール42Aの取り外し、取り付けを自動で実行することができる。
【0058】
次に図15を参照して、工作機械1の他の変形例について説明する。以下、工作機械1の他の変形例を単に「工作機械1B」と称する。工作機械1Bは、ツール保持穴13Baに装着されている加工ツール42Aをツール保持穴13Baから押し出す押し出し機構51を備えているところが工作機械1、工作機械1Aとは異なる。以下、工作機械1、工作機械1Aと同じ部分には同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0059】
図15(a)において、ツールシャンク13Bには、テーパ穴11Aaに挿入される側(上側)にツール保持穴13Baまで貫通する貫通孔13Bhが形成されている。スピンドル主軸11Aには、ツールシャンク移動機構15Bを貫通し、ツールシャンク13Bの貫通孔13Bhに挿入される押し出し部材50を有し、押し出し部材50を上下に移動させる押し出し機構51が配置されている。押し出し機構51は、制御装置30によって制御される。
【0060】
次に、図15(b)を参照して、工作機械1Bが押し出し機構51によって加工ツール42Aを押し出す工程について説明する。ツールシャンク13Bが加工ツール42Aを保持している状態(図15(a))から加工ツール42Aを取り出す際は、まず、制御装置30はツールシャンク移動機構15Bを下降させ(矢印g1)、接続されているツールシャンク13Bを下降させる。これにより、ツールシャンク13Bのツール保持穴13Baが広がる。次いで制御装置30は、押し出し機構51を制御して、押し出し部材50を下降させる(矢印g2)。これにより、加工ツール42Aが押し出し部材50によって押されてツール保持穴13Baから押し出される。
【0061】
このように、押し出し機構51は、ツールシャンク移動機構15Bに接続されたツールシャンク13Bの貫通孔13Bhに挿入される押し出し部材50をツール保持穴13Baの中まで移動させて、ツール保持穴13Baに装着された加工ツール42Aをツール保持穴13Baから押し出す。加工ツール42Aは、加工時に発生する摩擦熱によって膨張し、ツール保持穴13Baから抜けづらくなることがある。本実施の形態の工作機械1Bでは、押し出し部材50が加工ツール42Aを押し出すことで、確実にツール保持穴13Baから加工ツール42Aを取り出すことができる。
【0062】
次に図16を参照して、工作機械1の他の変形例について説明する。以下、工作機械1の他の変形例を単に「工作機械1C」と称する。工作機械1Cは、工具収納装置20Cがツールマガジン23の加工ツールホルダ21に挿入された加工ツール42を把持する把持機構52を備えているところが、工作機械1とは異なる。以下、工作機械1と同じ部分には同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0063】
図16(a)において、工具収納装置20Cは、ツールマガジン23が備える複数の加工ツールホルダ21の上部に、一対の把持部材53をそれぞれ備えている。一対の把持部材53は、制御装置30によって制御される把持機構52によって水平方向に開閉移動する。加工ツールホルダ21に加工ツール42が挿入されている状態で、把持部材53が加工ツール42に向かう閉方向に移動すると、加工ツール42は一対の把持部材53によって保持される。一対の把持部材53が加工ツール42を保持している状態で、把持部材53が加工ツール42から離れる開方向に移動すると、加工ツール42は一対の把持部材53から解放される。把持機構52は、工具収納装置20Cのマガジン移動機構32に配置する構成であっても、ツールマガジン23に配置する構成であってもよい。
【0064】
次に、図16(a)、図16(b)を参照して、工作機械1Cがスピンドル主軸11に取り付けられた加工ツール42をツールマガジン23の加工ツールホルダ21に保持させる工程について説明する。図16(a)において、まず、制御装置30はスピンドル主軸11を下降させて(矢印h1)、ツールシャンク13のツール保持穴13aに保持されている加工ツール42をツールマガジン23の加工ツールホルダ21に挿入させる。次いで制御装置30は把持機構52を制御し、把持部材53を閉方向に移動させて(矢印h2)、一対の把持部材53で加工ツール42を保持させる。
【0065】
図16(b)において、次いで制御装置30は、ツールシャンク移動機構15を下降させて(矢印h3)、接続されているツールシャンク13を下降させる。これにより、ツールシャンク13のツール保持穴13aが広がる。次いで制御装置30は、スピンドル主軸11を上昇させる(矢印h4)。これにより、加工ツール42がツール保持穴13aから取り外されて、ツールマガジン23の加工ツールホルダ21に保持される。加工ツール42は、加工時に発生する摩擦熱によって膨張し、ツール保持穴13aから抜けづらくなることがある。本実施の形態の工作機械1Cでは、把持機構52が加工ツール42を把持することで、確実に加工ツール42をツール保持穴13aから取り出すことができる。
【0066】
上記説明したように、本実施の形態の工作機械1は、回転軸CLを軸として回転し、開口11bに向かって広がるテーパ穴11aが形成され、テーパ穴11aの開口11bとは反対側にクランプ機構15aが設けられたスピンドル主軸11と、テーパ穴11aに挿入され、挿入される側にプルスタッド14を有し、反対側に先端に加工刃を有する加工ツール42(工具40)が取り付けられるツール保持穴13aとツール保持穴13aから外周面まで貫通する複数のスリ割り13cが形成されたチャック部13dを有するツールシャンク13と、を備えている。そして、クランプ機構15aが、テーパ穴11aに挿入されたツールシャンク13のプルスタッド14を保持し、保持するプルスタッド14を引いてツールシャンク13をテーパ穴11aの奥に移動させてツール保持穴13aの径を縮めることによって加工ツール42を保持する。これによって、工作機械1は、複数の工具40を交換自在に装着させることができる。
【0067】
また、本実施の形態のツールシャンク13は、工作機械1のスピンドル主軸11に形成されたテーパ穴11aに装着されるツールシャンク13であって、テーパ穴11aに挿入される側にプルスタッド14を有し、反対側に先端に加工刃を有する加工ツール42(工具40)が取り付けられるツール保持穴13aとツール保持穴13aから外周面まで貫通する複数のスリ割り13cが形成されたチャック部13dを有し、テーパ穴11aの奥に移動することでツール保持穴13aの径が縮まる。これによって、ツールシャンク13は、複数の工具40を交換自在に保持することができる。
【0068】
また、本実施の形態のツールマガジン23は、工作機械1のスピンドル主軸11が有するツール保持穴13aに取り付けられる先端に加工刃を有する複数の加工ツール42(工具40)を保持するツールマガジン23であって、マガジン本体22と、工具40が保持され、マガジン本体22に対して没突可能に設けられた複数の加工ツールホルダ21と、を有している。そして、ツールマガジン23は、スピンドル主軸11に工具40が取り付けられる際に、複数の加工ツールホルダ21のうち保持する工具40が主軸ヘッドと干渉する加工ツールホルダ21は、保持する工具40がスピンドル主軸11から遠ざかる方向に移動する。これによって、加工ツール取り付け動作の障害となることなく、小型軽量なツールマガジン23に複数の工具40を密集して収納することができる。
【0069】
また、本実施の形態の加工ツール42Aは、工作機械1Aのスピンドル主軸11Aに形成されたテーパ穴11Aaに装着されたツールシャンク13Aのツール保持穴13Aaであって、奥面にタング挿入穴13Agが形成されたツール保持穴13Aaに取り付けられる加工ツール42Aであって、先端に加工刃を有し、先端とは反対側には、タング挿入穴13Agに係合するタング41Aaが形成されている。これによって、スピンドル主軸11Aが回転する際に、工具40に高い負荷が加わってもツール保持穴13Aaと加工ツール42Aが滑って空転することが防止される。
【0070】
なお、上記ではスピンドル主軸11,11Aの回転軸CLの方向が上下方向(Z軸方向)の工作機械1,1Aを例に説明したが、工作機械1,1Aのスピンドル主軸11,11Aの回転軸CLの方向は上下方向に限定されることはない。例えば、工作機械1,1Aは、スピンドル主軸11,11Aの回転軸CLの方向が水平方向であってもよい。その場合、ツールマガジン23,23Aは複数の工具40(加工ツール42,42A)を回転軸CLの方向に沿う水平方向に出し入れ可能に保持する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
ツールマガジンに密集して収納可能な複数の工具を交換して使用することができる工作機械、工具を着脱可能に保持するツールシャンク、複数の工具を密集して収容することができるツールマガジンならびに工具を備える加工ツールを提供する。
【符号の説明】
【0072】
1、1A、1B、1C 工作機械
11、11A スピンドル主軸
11a、11Aa テーパ穴
11b 開口
11Ac キー溝係止部
13、13A、13B ツールシャンク
13a、13Aa、13Ba ツール保持穴
13c、13Ac スリ割り
13d、13Ad チャック部
13Af キー溝
13Ag タング挿入穴
13Bh 貫通孔
14 プルスタッド
15、15A、15B ツールシャンク移動機構
15a クランプ機構
17a 開口部
19 脱落防止部
21、21A、21P、21Q 加工ツールホルダ
21Ab 加工ツール当接部(当接部)
21Ac 位置決め部
22 マガジン本体
23、23A ツールマガジン
40 工具
41、41A、41P カラー(外嵌部材、外巻部)
41Aa タング
41Ab 切り欠き部
42、42A、42P、42Q 加工ツール
51 押し出し機構
52 把持機構
CL 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16