(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183796
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】水処理方法及び水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20231221BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20231221BHJP
B01D 61/16 20060101ALI20231221BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20231221BHJP
C02F 1/20 20230101ALI20231221BHJP
【FI】
C02F1/44 D
B01D61/04
B01D61/16
C02F1/44 A
B01D71/56
C02F1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097524
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】石橋 光
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 悠介
(72)【発明者】
【氏名】山東 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】日塔 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小寺 博也
【テーマコード(参考)】
4D006
4D037
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006KA01
4D006KA02
4D006KA03
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4D037BA23
4D037BA24
4D037BB01
4D037BB02
4D037CA03
(57)【要約】
【課題】ろ過膜のバイオファウリングを抑制できる、水処理方法及び水処理装置の提供。
【解決手段】本発明の水処理方法は、メタン濃度低減手段20を用いて、メタンを含有する被処理水(A)のメタン濃度を5000[μLメタン/L原水量]以下に低減して膜供給水(B)を得るメタン濃度低減工程と、膜供給水(B)をろ過膜で処理する膜ろ過工程とを有する。本発明の水処理装置1は、被処理水(A)のメタン濃度を5000[μLメタン/L原水量]以下に低減して膜供給水(B)を得るメタン濃度低減手段20と、膜供給水(B)をろ過膜で処理する膜ろ過手段30と、膜供給水(B)のメタン濃度を検知する検知手段40と、検知手段40より検知したメタン濃度の数値に基づき、メタン濃度低減手段20を制御する制御手段50とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンを含有する被処理水(A)を処理する水処理方法であって、
メタン濃度低減手段を用いて、前記被処理水(A)のメタン濃度を5000[μLメタン/L原水量]以下に低減して膜供給水(B)を得るメタン濃度低減工程と、
前記膜供給水(B)をろ過膜で処理する膜ろ過工程と、
を有する、水処理方法。
【請求項2】
前記メタン濃度低減手段が、ガス導入機構及びスプレー機構の少なくとも一方を備える、請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記ろ過膜が、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜及び逆浸透膜からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
前記ナノろ過膜及び前記逆浸透膜の少なくとも一方の材質が、ポリアミドである、請求項3に記載の水処理方法。
【請求項5】
前記被処理水(A)のメタン濃度が、8000[μLメタン/L原水量]以上である、請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項6】
前記膜供給水(B)の溶存酸素濃度が、0.2mg/L以上である、請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項7】
前記膜供給水(B)のpHが、5.0以上9.0以下である、請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項8】
前記被処理水(A)の全有機炭素濃度が、1.2mg/L以上である、請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項9】
メタンを含有する被処理水(A)を処理する水処理装置であって、
前記被処理水(A)のメタン濃度を5000[μLメタン/L原水量]以下に低減して膜供給水(B)を得るメタン濃度低減手段と、
前記膜供給水(B)をろ過膜で処理する膜ろ過手段と、
前記膜供給水(B)のメタン濃度を検知する検知手段と、
前記検知手段より検知したメタン濃度の数値に基づき、前記メタン濃度低減手段を制御する制御手段と、
を備える、水処理装置。
【請求項10】
前記メタン濃度低減手段が、ガス導入機構及びスプレー機構の少なくとも一方を備える、請求項9に記載の水処理装置。
【請求項11】
前記ろ過膜が、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜及び逆浸透膜からなる群より選ばれる1種以上である、請求項9又は10に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水等の原水(被処理水)は、水処理装置によって水処理された後、生活用水、工業用水、農業用水等に利用される。
例えば特許文献1には、地下水を脱炭酸処理した後に逆浸透膜に供給し、逆浸透膜の濃縮水のpHが7.0以下となるように地下水を水処理して透過水を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、地下水等の原水中のメタン濃度が高い場合、メタン酸化菌が繁殖し、増殖したメタン酸化菌及びメタン酸化菌の代謝物により、逆浸透膜等のろ過膜のバイオファウリングが引き起こされる場合がある。
特許文献1に記載の方法では、地下水を逆浸透膜に供給する前に脱炭酸処理することで地下水中のメタン濃度もある程度低減されるが、メタン濃度の低減が不十分であると、逆浸透膜のバイオファウリングが起こる。バイオファウリングが顕著な場合は、薬剤を用いたろ過膜の洗浄が必要となり、手間や運転コストがかかりやすい。
本発明は、ろ過膜のバイオファウリングを抑制できる、水処理方法及び水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] メタンを含有する被処理水(A)を処理する水処理方法であって、
メタン濃度低減手段を用いて、前記被処理水(A)のメタン濃度を5000[μLメタン/L原水量]以下に低減して膜供給水(B)を得るメタン濃度低減工程と、
前記膜供給水(B)をろ過膜で処理する膜ろ過工程と、
を有する、水処理方法。
[2] 前記メタン濃度低減手段が、ガス導入機構及びスプレー機構の少なくとも一方を備える、前記[1]の水処理方法。
[3] 前記ろ過膜が、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜及び逆浸透膜からなる群より選ばれる1種以上である、前記[1]又は[2]の水処理方法。
[4] 前記ナノろ過膜及び前記逆浸透膜の少なくとも一方の材質が、ポリアミドである、前記[3]の水処理方法。
[5] 前記被処理水(A)のメタン濃度が、8000[μLメタン/L原水量]以上である、前記[1]~[4]のいずれか1つの水処理方法。
[6] 前記膜供給水(B)の溶存酸素濃度が、0.2mg/L以上である、前記[1]~[5]のいずれか1つの水処理方法。
[7] 前記膜供給水(B)のpHが、5.0以上9.0以下である、前記[1]~[6]のいずれか1つの水処理方法。
[8] 前記被処理水(A)の全有機炭素濃度が、1.2mg/L以上である、前記[1]~[7]のいずれか1つの水処理方法。
【0006】
[9] メタンを含有する被処理水(A)を処理する水処理装置であって、
前記被処理水(A)のメタン濃度を5000[μLメタン/L原水量]以下に低減して膜供給水(B)を得るメタン濃度低減手段と、
前記膜供給水(B)をろ過膜で処理する膜ろ過手段と、
前記膜供給水(B)のメタン濃度を検知する検知手段と、
前記検知手段より検知したメタン濃度の数値に基づき、前記メタン濃度低減手段を制御する制御手段と、
を備える、水処理装置。
[10] 前記メタン濃度低減手段が、ガス導入機構及びスプレー機構の少なくとも一方を備える、前記[9]の水処理装置。
[11] 前記ろ過膜が、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜及び逆浸透膜からなる群より選ばれる1種以上である、前記[9]又は[10]の水処理装置。
[12] 前記ナノろ過膜及び前記逆浸透膜の少なくとも一方の材質が、ポリアミドである、前記[11]の水処理装置。
[13] 前記被処理水(A)のメタン濃度が、8000[μLメタン/L原水量]以上である、前記[9]~[12]のいずれか1つの水処理装置。
[14] 前記膜供給水(B)の溶存酸素濃度が、0.2mg/L以上である、前記[9]~[13]のいずれか1つの水処理装置。
[15] 前記膜供給水(B)のpHが、5.0以上9.0以下である、前記[9]~[14]のいずれか1つの水処理装置。
[16] 前記被処理水(A)の全有機炭素濃度が、1.2mg/L以上である、前記[9]~[15]のいずれか1つの水処理装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ろ過膜のバイオファウリングを抑制できる、水処理方法及び水処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の水処理装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【
図2】メタン濃度低減手段の他の例を示す概略構成図である。
【
図3】メタン濃度低減手段の他の例を示す概略構成図である。
【
図4】本発明の水処理装置の他の例を模式的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る水処理方法及び水処理装置の一実施形態を挙げ、
図1~4を適宜参照しながら詳述する。
なお、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
また、
図2~4において、
図1と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0010】
<水処理装置>
図1は、本発明の水処理装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
図1に示す水処理装置1は、メタンを含有する被処理水(A)を処理する装置であり、前処理手段10と、メタン濃度低減手段20と、膜ろ過手段30と、検知手段40と、制御手段50とを備える。
本実施形態のメタン濃度低減手段20は、被処理水供給ラインL1を介して前処理手段10に連結されている。膜ろ過手段30は、膜供給水供給ラインL2を介してメタン濃度低減手段20に連結されている。
【0011】
(前処理手段)
前処理手段10は、原水を処理して、被処理水(A)を得るものである。
前処理手段10としては、原水の水質や被処理水(A)に求められる水質に応じて適宜選択され、例えばpH調整手段、酸化剤添加手段、還元剤添加手段、凝集手段、砂ろ過手段(例えば砂ろ過塔)、活性炭手段(例えば活性炭塔)などが挙げられる。これらの手段は併用されてもよい。
原水については後述する。
【0012】
前処理手段10には、被処理水供給ラインL1の一端が接続されている。
被処理水供給ラインL1は、前処理手段10とメタン濃度低減手段20とを連結する連結管である。
被処理水供給ラインL1を介して、被処理水(A)が前処理手段10からメタン濃度低減手段20へ供給される。
被処理水供給ラインL1の途中には、ポンプP1が設けられている。
【0013】
(メタン濃度低減手段)
メタン濃度低減手段20は、被処理水(A)のメタン濃度を5000[μLメタン/L原水量]以下に低減して膜供給水(B)を得る手段である。
メタン濃度低減手段20では、メタン濃度低減手段20に供給される被処理水(A)1L当たり、メタン濃度が5000μL以下になるまで被処理水(A)中のメタン濃度を低減して膜供給水(B)を得る。すなわち、膜供給水(B)1L当たりのメタン濃度は、5000μL以下である。
なお、本明細書において、メタン濃度低減手段にて得られた膜供給水(B)を「第1の処理水(B)」ともいう。
【0014】
本実施形態のメタン濃度低減手段20は、処理槽21と、スプレー機構22と、ガス導入機構23とを備える。
処理槽21は、被処理水(A)を処理して膜供給水(B)を得るための水槽である。
処理槽21には、膜供給水供給ラインL2の一端が接続されている。
【0015】
膜供給水供給ラインL2は、メタン濃度低減手段20と膜ろ過手段30とを連結する連結管である。
膜供給水供給ラインL2を介して、膜供給水(B)がメタン濃度低減手段20から膜ろ過手段30へ供給される。
膜供給水供給ラインL2の途中には、ポンプP2が設けられている。
ポンプP2は、その動作を制御する制御部(図示略)に電気的に接続されている。
【0016】
スプレー機構22は、被処理水(A)を処理槽21に噴出する手段である。
本実施形態のスプレー機構22は、スプレーノズル22aを備える。
本実施形態のスプレーノズル22aは、長手方向に垂直な断面が円形の円管からなり、その周壁の下部には被処理水(A)を噴出するためのノズル口22bが複数、スプレーノズル22aの長手方向に沿って下向きに一列に形成されている。
スプレーノズル22aは、被処理水供給ラインL1の他端に接続されている。
ここで、「周壁の下部」とは、スプレーノズル22aをその長手方向が略水平となるように配置した際に、スプレーノズル22aの軸線よりも下側に位置する部分の周壁である。
【0017】
スプレー機構22は、処理槽21内の上部に設置されている。具体的には、処理槽21の開口部21aからスプレーノズル22aのノズル口22bまでの距離が、処理槽21の深さの20%以下となる位置にスプレー機構22が設置されていることが好ましく、より好ましくは15%以下となる位置である。
【0018】
ガス導入機構23は、処理槽21に噴出された被処理水(A)にガスを供給し、被処理水(A)を処理槽21内で曝気する手段である。
この例のガス導入機構23は、処理槽21内の底部近傍に略水平に配置され散気管23aと、散気管23aに気体を送気するブロワ23bと、ブロワ23bから送気されたガスを散気管23aへ供給する気体供給管23cとを備える。
気体供給管23cの一端はブロワ23bに接続され、他端は散気管23aに接続されている。
本実施形態の散気管23aは、長手方向に垂直な断面が円形の円管からなり、その周壁の上部には気体を噴出するための円形の散気孔23dが複数、散気管23aの長手方向に沿って一列に形成されている。
ここで「周壁の上部」とは、散気管23aをその長手方向が略水平となるように配置した際に、散気管23aの軸線よりも上側に位置する部分の周壁である。
【0019】
処理槽21に噴出された被処理水(A)に供給されるガスとしては空気が一般的であるが、空気以外のガス(例えば酸素、窒素、アルゴンなど)を用いてもよい。
ガスとして空気を用いれば、安価で容易に被処理水(A)を曝気できる。
ガスとして窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いれば、被処理水(A)中の鉄、マンガンの酸化などを抑制することができる。
【0020】
(膜ろ過手段)
膜ろ過手段30は、メタン濃度低減手段20で得られた膜供給水(B)を、ろ過膜を用いて処理し、膜ろ過処理水(C)を得る手段である。
なお、本明細書において、膜ろ過手段30にて得られた膜ろ過処理水(C)を「第2の処理水(C)」ともいう。
【0021】
本実施形態の膜ろ過手段30は、膜モジュール31を備える。
膜モジュール31はろ過膜を備える。
膜モジュール31には、膜供給水供給ラインL2の他端が接続され、かつ、膜ろ過処理水供給ラインL3の一端が接続されている。
膜モジュール31としては、膜供給水(B)を膜ろ過できるもの、すなわち、膜供給水(B)を、ろ過膜を透過する透過水と、ろ過膜を透過しない非透過水とに分離できるものであればよい。
なお、ろ過膜を透過した透過水が、膜ろ過処理水(C)である。
また、本明細書において、ろ過膜を透過しなかった非透過水を「濃縮水」ともいう。
【0022】
ろ過膜としては、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などが挙げられる。これらの中でも、水処理効率に優れる点で、ナノろ過膜、逆浸透膜が好ましく、逆浸透膜がより好ましい。
ろ過膜の形態としては、スパイラル膜、中空糸膜、管状膜、平膜などが挙げられる。
ろ過膜の材質としては、ポリアミド、ポリスルフォン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。
ろ過膜としては、水処理効率に優れ、低価格で入手しやすい点で、材質がポリアミドのナノろ過膜及び逆浸透膜の少なくとも一方が好ましく、ポリアミドの逆浸透膜がより好ましい。なお、膜供給水(B)に次亜塩素酸ナトリウム等の殺菌剤を添加すれば、ろ過膜のバイオファウリングをより抑制できる。殺菌剤を添加した膜供給水(B)をろ過膜で処理する場合、耐塩素性に優れ、阻止率を良好に維持できる点で、ろ過膜としては材質が酢酸セルロースのナノろ過膜及び逆浸透膜の少なくとも一方が好ましく、酢酸セルロースの逆浸透膜がより好ましい。
【0023】
例えば、膜モジュール31が逆浸透膜を備えた逆浸透膜モジュールである場合、逆浸透膜モジュールとしては、スパイラル型逆浸透膜エレメントの1個以上を、ベッセル等の耐圧容器に収納したものが挙げられる。スパイラル型逆浸透膜エレメントとしては、例えば集水管のまわりに逆浸透膜を巻き回したものを円筒状のケーシングに収納し、ケーシングの両端面にテレスコープ防止部材を取り付けたものが挙げられる。
【0024】
(検知手段)
検知手段40は、膜供給水(B)のメタン濃度を検知する手段である。
本実施形態の検知手段40は、膜供給水供給ラインL2の途中に設置されている。
検知手段40としては、メタン濃度を検知できるものであれば特に限定されないが、例えばメタン濃度計、接触燃焼式ガス検知器、ガスクロマトグラフィー、ガス検知管などが挙げられる。
【0025】
(制御手段)
制御手段50は、検知手段40より検知したメタン濃度の数値に基づき、メタン濃度低減手段20を制御する手段である。
ここで、「メタン濃度低減手段を制御する」とは、被処理水(A)のメタン濃度が5000[μLメタン/L原水量]以下になるようにメタン濃度低減手段20を制御することである。具体的には、本実施形態のメタン濃度低減手段20の場合、スプレー機構22から被処理水(A)を噴出する際の水量や圧力を制御したり、処理槽21に噴出された被処理水(A)へのガス導入機構23からのガスの供給量を制御したりすることである。
【0026】
本実施形態の制御手段50は、制御部51を備える。
制御部51は、検知手段40に電気的に接続されている。
被処理水供給ラインL1の途中に設けられたポンプP1、及びブロワ23bは、制御部51に電気的に接続されている。
制御部51からの信号に基づいて、被処理水供給ラインL1を通過してスプレーノズル22aへ供給され、スプレー機構22から噴出される被処理水(A)の水量や圧力を、ポンプP1にて制御することができる。また、制御部51からの信号に基づいて、気体供給管23cを通過して散気管23aへ送気され、処理槽21に噴出された被処理水(A)へ供給されるガスの供給量を、ブロワ23bにて制御することができる。
【0027】
<水処理方法>
水処理装置1を用いた水処理方法の一例について説明する。
本実施形態の水処理方法は、原水を前処理し、被処理水(A)を得る前処理工程と、メタン濃度低減手段を用いて、被処理水(A)のメタン濃度を5000[μLメタン/L原水量]以下に低減して膜供給水(B)を得るメタン濃度低減工程と、膜供給水(B)をろ過膜で処理する膜ろ過工程とを有する。
【0028】
(前処理工程)
前処理工程は、原水を前処理し、被処理水(A)を得る前処理工程である。
原水としては、メタンを含むものであれば特に限定されないが、例えば地下水、井戸水、湖沼水、河川水などが挙げられる。ただし、原水の種類はこれら例示に限定されない。また、これら各種の原水の水質は地域により異なることがあるが、本発明では、水質の差異は許容される。すなわち、本発明では地域によっても、国によっても制限なく採取した原水を使用できる。
原水としては、水源の確保の点から地下水が好ましい。地下水は、地中に存在する水であって、地層中の間隙に存在する水である。
原水のメタン濃度は特に限定されないが、例えば8000[μLメタン/L原水量]以上である。メタン濃度が上記範囲内であれば、本発明を適用した際の効果がさらに顕著に得られる。
【0029】
原水は、その採取地、種類に応じてメタン以外の種々の物質を含み得る。原水に含まれる物質としては、例えば鉱物等に由来する各種ミネラル(例えばカルシウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン等のミネラル)、塩化物イオン、硫酸イオン、鉄イオン、溶性ケイ酸、アンモニア性窒素などが挙げられる。
原水の溶性ケイ酸濃度は、10mg/L以上90mg/L以下が好ましい。
原水のナトリウム濃度は、6000mg/L以下が好ましく、500mg/L以下がより好ましく、300mg/L以下がさらに好ましい。
原水の塩化物イオン濃度は、6000mg/L以下が好ましく、500mg/L以下がより好ましく、300mg/L以下がさらに好ましい。
溶性ケイ酸濃度、ナトリウム濃度及び塩化物イオン濃度がそれぞれ上記範囲内であれば、本発明を適用した際の効果がさらに顕著に得られる。
【0030】
原水は、上述した以外にも、例えば有機物、微生物を含み得る。
有機物の主成分としてが、例えばフミン酸、フルボ酸などが挙げられる。ただし、原水は、これら例示した成分以外の有機物を含むことがある。
原水の全有機炭素(TOC)濃度は50mg/L以下が好ましく、30mg/L以下がより好ましく、10mg/L以下がさらに好ましく、5mg/L以下が特に好ましい。また、TOC濃度の下限値は特に限定されない。例えば原水のTOC濃度は、0.3mg/L以上であってもよく、0.5mg/L以上であってもよく、0.8mg/L以上であってもよく、1.0mg/L以上であってもよく、1.2mg/L以上であってもよい。TOC濃度が上記範囲内であれば、本発明を適用した際の効果がさらに顕著に得られる。
【0031】
微生物が増殖しやすい観点から、原水のpHは、5.0以上9.0以下が好ましい。
原水の溶存酸素濃度は0mg/Lであってもよいが、特に好気性の微生物が増殖しやすい観点では、原水の溶存酸素濃度は、0.2mg/L以上が好ましい。
【0032】
溶性ケイ酸濃度、ナトリウム濃度、塩化物イオン濃度、TOC濃度、pH及び溶存酸素濃度は、それぞれ上水試験法(日本水道協会)に準拠して測定される値である。
【0033】
前処理工程では、例えば原水の溶性ケイ酸濃度、ナトリウム濃度、塩化物イオン濃度、TOC濃度、pH及び溶存酸素濃度がそれぞれ上記範囲内となるように、原水の水質を調整して被処理水(A)を得ることが好ましい。
また、メタン酸化菌及びメタン酸化菌の代謝物以外のファウリングを引き起こす物質、例えば鉄、マンガン、有機物、懸濁物質が原水に含まれている場合は、前処理工程を行うことが好ましい。
原水を前処理する方法としては、原水の水質や被処理水(A)に求められる水質に応じて適宜選択されるが、例えば原水にpH調整剤を添加して原水のpHを調整する方法、原水に酸化剤を添加する方法、原水に還元剤を添加する方法、原水に凝集剤を添加する方法、原水を砂ろ過する方法、原水を活性炭処理する方法などが挙げられる。これらの方法は併用されてもよい。
【0034】
こうして得られる被処理水(A)のメタン濃度は8000[μLメタン/L原水量]以上が好ましい。
被処理水(A)の溶性ケイ酸濃度は、10mg/L以上90mg/L以下が好ましい。 被処理水(A)のナトリウム濃度は、6000mg/L以下が好ましく、500mg/L以下がより好ましく、300mg/L以下がさらに好ましい。
被処理水(A)の塩化物イオン濃度は、6000mg/L以下が好ましく、500mg/L以下がより好ましく、300mg/L以下がさらに好ましい。
被処理水(A)のTOC濃度は、30mg/L以下がより好ましく、10mg/L以下がさらに好ましく、5mg/L以下が特に好ましい。また、被処理水(A)のTOC濃度は、0.3mg/L以上であってもよく、0.5mg/L以上であってもよく、0.8mg/L以上であってもよく、1.0mg/L以上であってもよく、1.2mg/L以上であってもよい。
被処理水(A)のpHは、5.0以上9.0以下が好ましい。
被処理水(A)の溶存酸素濃度は、0.2mg/L以上が好ましい。
【0035】
(メタン濃度低減工程)
メタン濃度低減工程は、メタン濃度低減手段20を用いて、被処理水(A)のメタン濃度を5000[μLメタン/L原水量]以下に低減して膜供給水(B)を得る工程である。
メタン濃度低減工程では、まず、ポンプP1を駆動させて、前処理手段10からスプレー機構22へ供給された被処理水(A)をスプレーノズル22aのノズル口22bから処理槽21へ噴出する。被処理水(A)が噴出される勢いで、大気と接触した被処理水(A)からメタンを大気へ移し、被処理水(A)中のメタンが除去される。
スプレー機構22から噴出された被処理水(A)は処理槽21内に貯留される。
次いで、ブロワ23bを駆動させることで空気等のガスを、気体供給管23cを経て処理槽21内の散気管23aに供給する。これにより、処理槽21内に貯留された被処理水(A)中に散気管23aからガスが供給され、曝気が行われる。被処理水(A)を曝気することで被処理水(A)中のメタンが大気へ移動し、被処理水(A)中のメタンが除去される。
【0036】
こうして、メタン濃度が5000[μLメタン/L原水量]以下に低減された膜供給水(B)が得られる。膜供給水(B)のメタン濃度は、3000[μLメタン/L原水量]以下が好ましい。膜供給水(B)のメタン濃度が5000[μLメタン/L原水量]以下であれば、ろ過膜のバイオファウリングを抑制できる。
【0037】
また、微生物が増殖しやすい観点から、膜供給水(B)のpHは、5.0以上9.0以下が好ましい。
特に好気性の微生物が増殖しやすい観点から、膜供給水(B)溶存酸素濃度は、0.2mg/L以上が好ましい。
【0038】
膜供給水(B)は、ポンプP2を駆動させることで処理槽21から引き抜かれ、膜供給水供給ラインL2を通って膜ろ過手段30の膜モジュール31に供給される。
このとき、膜供給水供給ラインL2の途中に設置された検知手段40により膜供給水(B)のメタン濃度を検知し、検知したメタン濃度の数値に基づき、メタン濃度低減手段20を制御することが好ましい。具体的には、膜供給水(B)のメタン濃度が5000[μLメタン/L原水量]以下となるように、制御部51からの信号に基づいて、スプレー機構22から噴出される被処理水(A)の水量や圧力をポンプP1にて制御したり、処理槽21に噴出された被処理水(A)へ供給されるガスの供給量をブロワ23bにて制御したりすることが好ましい。
【0039】
(膜ろ過工程)
膜ろ過工程は、膜供給水(B)をろ過膜で処理する工程である。
膜ろ過工程では、処理槽21から引き抜かれた膜供給水(B)が膜モジュール31に供給され、ろ過膜で処理される。
膜モジュール31に供給された膜供給水(B)は、ろ過膜を透過する透過水(膜ろ過処理水(C))と、ろ過膜を透過しない非透過水(濃縮水)とに分離される。
【0040】
膜ろ過処理水(C)は、膜ろ過処理水供給ラインL3を通って、例えば受水槽(図示略)に貯留される。
一方、濃縮水は、濃縮水ライン(図示略)を通って、例えば下水などに放流されて処分される。
【0041】
<作用効果>
以上説明した本発明の水処理装置及び水処理方法は、被処理水(A)をろ過膜で処理する前に、被処理水(A)のメタン濃度を十分に低減しているので、具体的には被処理水(A)のメタン濃度を5000[μLメタン/L原水量]以下に低減して得られた膜供給水(B)をろ過膜で処理するので、ろ過膜のバイオファウリングを抑制できる。
よって、本発明の水処理装置及び水処理方法であれば、薬剤を用いたろ過膜の洗浄の頻度を低減でき、長時間にわたって連続運転が可能である。
【0042】
<他の実施態様>
本発明の水処理装置及び水処理方法は、上述した実施形態に限定されない。
上述した実施形態では、水処理装置1は前処理手段10を備えるが、前処理手段10は必須の構成要件ではない。例えば、原水の水質が良好である場合、具体的には、採取した原水の溶性ケイ酸濃度、ナトリウム濃度、塩化物イオン濃度、TOC濃度、pH及び溶存酸素濃度がそれぞれ上記範囲内であれば、前処理手段10は設置されなくてもよい。すなわち、前処理手段10及び前処理工程は原水の水質に応じて省略可能である。
前処理手段10を省略する場合、原水が被処理水(A)である。
【0043】
また、上述した実施形態では、ガス導入機構23は散気管23aを備えるが、散気管23aは設置されなくてもよい。すなわち、散気管23aは省略可能であり、気体供給管23cの他端から、処理槽21に噴出された被処理水(A)に直接ガスを供給してもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、メタン濃度低減手段20はスプレー機構22とガス導入機構23とを備えるが、スプレー機構22及びガス導入機構23のいずれか一方のみを備えていてもよい。すなわち、メタン濃度低減工程は、スプレー機構22及びガス導入機構23のいずれか一方のみを用いて行われてもよい。
また、メタン濃度低減手段20は、スプレー機構22やガス導入機構23に代えて、曝気塔機構及び脱気膜の少なくとも一方を備えていてもよいし、スプレー機構、ガス導入機構、曝気塔機構及び脱気膜からなる群より選ばれる1つ以上を備えていてもよい。
【0045】
曝気塔機構としては特に限定されず、市販品を用いることができる。曝気塔機構を備えたメタン濃度低減手段の一例を
図2に示す。
図2に示すメタン濃度低減手段20は、中空状の充填材24aを曝気塔24b内に充填した曝気塔機構24を備える。充填材24aが充填された曝気塔24b内に被処理水(A)を通過させることで、被処理水(A)中のメタンが除去され、膜供給水(B)が得られる。
このとき、膜供給水供給ラインL2の途中に設置された検知手段(図示略)より膜供給水(B)のメタン濃度を検知し、検知したメタン濃度の数値に基づき、膜供給水(B)のメタン濃度が5000[μLメタン/L原水量]以下となるように、被処理水(A)を曝気塔24b内に通過させる際の水量や圧力を、被処理水供給ラインL1の途中に設置されたポンプP1(図示略)にて制御することが好ましい。
【0046】
脱気膜としては水中のメタンを除去できるものであれば特に限定されず、市販品を用いることができ、例えば中空糸膜等が挙げられる。脱気膜を備えたメタン濃度低減手段の一例を
図3に示す。
図3に示すメタン濃度低減手段20は、処理槽21と、処理槽21内に設置された脱気膜25と、脱気膜25に接続されたガス排出ラインL4と、ガス排出ラインL4の途中に設けられたポンプP3とを備える。ポンプP3を駆動させて脱気膜25の二次側(すなわちガスの透過側)を減圧させることで、脱気膜25と接触した被処理液(A)中のメタンが脱気膜25の二次側から透過し、被処理液(A)から除去され、膜供給水(B)が得られる。
このとき、膜供給水供給ラインL2の途中に設置された検知手段(図示略)より膜供給水(B)のメタン濃度を検知し、検知したメタン濃度の数値に基づき、膜供給水(B)のメタン濃度が5000[μLメタン/L原水量]以下となるように、ポンプP3の圧力を制御することが好ましい。
【0047】
また、例えば
図4に示すように、被処理水供給ラインL1内に脱気膜25を設けてもよい。この場合、被処理水(A)は、被処理水供給ラインL1を通り、脱気膜25と接触する。被処理水(A)が脱気膜25と接触する際に、ポンプP3を駆動させて脱気膜25の二次側を減圧させることで、被処理液(A)中のメタンが脱気膜25の二次側から透過し、被処理液(A)から除去され、膜供給水(B)が得られる。
このとき、膜供給水供給ラインL2の途中に設置された検知手段(図示略)より膜供給水(B)のメタン濃度を検知し、検知したメタン濃度の数値に基づき、膜供給水(B)のメタン濃度が5000[μLメタン/L原水量]以下となるように、ポンプP3の圧力を制御することが好ましい。
図4に示す水処理装置2では、被処理水供給ラインL1が膜供給水供給ラインを兼ねており、脱気膜25を通過した被処理水(A)は膜供給水(B)となって、被処理水供給ラインL1から膜ろ過手段30に供給される。
【0048】
また、上述した実施形態では、検知手段40は、膜供給水供給ラインL2の途中に設置されているが、例えば処理槽21に噴出された被処理水(A)へ浸漬されていてもよい。
【実施例0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
[測定・評価]
<メタン濃度の測定>
環境省から発行された温泉法におけるメタン濃度測定手法マニュアルの測定方法3-2(ヘッドスペース法)に準拠し、メタン濃度計を用いてメタン濃度を測定した。メタン濃度計は、JIS M 7653:1996に定める携帯形可燃性ガス検知器(新コスモス電機株式会社製、「XP-3160」)を用いた。
具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、原水を密閉できる容器に採水した。容器を密閉した状態で容器を強く振とうした。その後、容器を開栓し、携帯形可燃性ガス検知器の吸引部分を迅速に測定容器内部に差し込み、気相のメタン濃度[ppm]を測定した。気相のメタン濃度のため、[ppm]は[μLメタン/L空気量]であり、容器の気相部の体積と原水量の体積の比より、原水のメタン濃度[μLメタン/L原水量]に換算した。被処理水(A)及び膜供給水(B)のメタン濃度についても同様に測定した。
【0051】
<原水の水質の測定>
原水の溶性ケイ酸濃度、ナトリウム濃度、塩化物イオン濃度、TOC濃度、pH及び溶存酸素濃度は、それぞれ上水試験法(日本水道協会)に準拠して測定した。被処理水(A)のTOC濃度と、膜供給水(B)のpH及び溶存酸素濃度についても同様に測定した。
【0052】
<バイオファウリング抑制の評価>
ろ過膜のファウリング抑制の評価は、膜供給水(B)の圧力と、膜ろ過処理水(C)の流量を測定して行った。水処理装置の運転停止直前における膜供給水(B)の圧力が初期の膜供給水(B)の圧力の1.5倍になった場合、又は、水処理装置の運転停止直前における膜ろ過処理水(C)の流量が初期の膜ろ過処理水(C)の流量に比べて20%低減した場合に、バイオファウリングが発生したと判断し、以下の評価基準でバイオファウリング抑制の効果を評価した。
〇:バイオファウリングが発生せず、バイオファウリング抑制の効果が認められる。
×:バイオファウリングが発生し、バイオファウリング抑制の効果が認められない。
【0053】
[実施例1]
水処理装置として、
図1に示す水処理装置1を用いた。
原水として、メタン濃度が22000[μLメタン/L原水量]であり、溶性ケイ酸濃度が52mg/Lであり、ナトリウム濃度が220mg/Lであり、塩化物イオン濃度が187mg/Lであり、TOC濃度が2.5mg/Lであり、pHが8.3であり、溶存酸素濃度が0mg/Lである水を用いた。
前処理手段10として、硫酸(pH調整剤)を原水に添加するpH調整手段を用いた。
膜モジュール31として、逆浸透膜を備えた逆浸透膜モジュールを用いた。逆浸透膜としては、日東電工株式会社製の「ESPA2-LD」を用いた。
水処理装置の運転期間は30日とした。
【0054】
まず、前処理手段10により原水に硫酸を添加し、pHが7.0の被処理水(A)を得た(前処理工程)。
なお、被処理水(A)のメタン濃度は、22000[μLメタン/L原水量]であり、TOC濃度は2.5mg/Lであった。
【0055】
次いで、ポンプP1を駆動させて、前処理手段10からスプレー機構22へ供給された被処理水(A)をスプレーノズル22aのノズル口22bから処理槽21へ噴出した。次いで、ブロワ23bを駆動させることで空気を気体供給管23c及び処理槽21内の散気管23aを介して、処理槽21内に貯留された被処理水(A)中に供給し、被処理水(A)を曝気し、膜供給水(B)を得た(メタン濃度低減工程)。
膜供給水(B)のメタン濃度は2000[μLメタン/L原水量]であり、pHは7.0であり、溶存酸素濃度は3.0mg/Lであった。結果を表1に示す。
なお、検知手段40により膜供給水(B)のメタン濃度を検知し、検知したメタン濃度の数値に基づき、メタン濃度低減手段20を制御した。具体的には、膜供給水(B)のメタン濃度が5000[μLメタン/L原水量]以下となるように、制御部51からの信号に基づいて、スプレー機構22から噴出される被処理水(A)の水量や圧力をポンプP1にて制御したり、処理槽21に噴出された被処理水(A)へ供給されるガスの供給量をブロワ23bにて制御したりした。
【0056】
次いで、ポンプP2を駆動させて、膜供給水(B)を処理槽21から引き抜き、膜ろ過手段30の膜モジュール31に供給し、透過水流量22.0m3/h、膜ろ過流束0.40m3/m2/day、水回収率70%の通水条件で膜供給水(B)をろ過膜に通水し、膜ろ過処理水(C)と濃縮水とに分離した。
水処理装置1の運転停止直前における膜供給水(B)の圧力及び膜ろ過処理水(C)の流量を測定し、初期値と比較してバイオファウリング抑制の評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
[比較例1]
水処理装置として、
図1に示す水処理装置1において、被処理水供給ラインL1の他端をスプレーノズル22aから処理槽21に付け替えたこと以外は、実施例1と同様の装置を用いた。
原水及び水処理装置の運転日数は、実施例1と同様とした。
【0058】
まず、前処理手段10により原水に硫酸を添加し、pHが7.0の被処理水(A)を得た(前処理工程)。
なお、被処理水(A)のメタン濃度は、22000[μLメタン/L原水量]であり、TOC濃度は2.5mg/Lであった。
【0059】
次いで、ポンプP1を駆動させて、スプレー機構22を介さずに、被処理水(A)を前処理手段10から処理槽21へ直接供給した。このとき、ブロワ23bは駆動させず、被処理水(A)の曝気は行わなかった。
次いで、ポンプP2を駆動させて、処理槽21に貯留された被処理水(A)を膜供給水(B)として処理槽21から引き抜き、膜ろ過手段30の膜モジュール31に供給し、透過水流量22.0m3/h、膜ろ過流束0.40m3/m2/day、水回収率70%の通水条件で膜供給水(B)をろ過膜に通水し、膜ろ過処理水(C)と濃縮水とに分離した。
膜供給水(B)のメタン濃度は、11000[μLメタン/L原水量]であり、pHは7.0であり、溶存酸素濃度は4.4mg/Lであった。結果を表1に示す。
水処理装置1の運転停止直前における膜供給水(B)の圧力及び膜ろ過処理水(C)の流量を測定し、初期値と比較してバイオファウリング抑制の評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
[比較例2]
水処理装置として、
図1に示す水処理装置1において、前処理手段10として上流側から砂ろ過塔、活性炭塔、精密ろ過膜(MF膜)を備えたものに変更し、かつ、被処理水供給ラインL1の他端をスプレーノズル22aから処理槽21に付け替えたこと以外は、実施例1と同様の装置を用いた。
原水として、メタン濃度が24200[μLメタン/L原水量]であり、溶性ケイ酸濃度が47mg/Lであり、ナトリウム濃度が22mg/Lであり、塩化物イオン濃度が5mg/Lであり、TOC濃度が2.1mg/Lであり、pHが7.9であり、溶存酸素濃度が0mg/Lである水を用いた。
水処理装置の運転日数は、実施例1と同様とした。
【0061】
まず、前処理手段10により原水を砂ろ過処理、活性炭処理、MF膜処理し、pHが7.9の被処理水(A)を得た(前処理工程)。
なお、被処理水(A)のメタン濃度は、14000[μLメタン/L原水量]であり、TOC濃度は2.1mg/Lであった。
【0062】
次いで、ポンプP1を駆動させて、スプレー機構22を介さずに、被処理水(A)を前処理手段10から処理槽21へ直接供給した。このとき、ブロワ23bは駆動させず、被処理水(A)の曝気は行わなかった。
次いで、ポンプP2を駆動させて、処理槽21に貯留された被処理水(A)を膜供給水(B)として処理槽21から引き抜き、膜ろ過手段30の膜モジュール31に供給し、透過水流量5.3m3/h、膜ろ過流束0.52m3/m2/day、水回収率70%の通水条件で膜供給水(B)をろ過膜に通水し、膜ろ過処理水(C)と濃縮水とに分離した。
膜供給水(B)のメタン濃度は、9600[μLメタン/L原水量]であり、pHは7.9であり、溶存酸素濃度は0.2mg/L以上であった。結果を表1に示す。
水処理装置1の運転停止直前における膜供給水(B)の圧力及び膜ろ過処理水(C)の流量を測定し、初期値と比較してバイオファウリング抑制の評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
[比較例3]
水処理装置として、
図1に示す水処理装置1において、前処理手段10として上流側から砂ろ過塔、活性炭塔、限外ろ過膜(UF膜)を備えたものに変更し、かつ、被処理水供給ラインL1の他端をスプレーノズル22aから処理槽21に付け替えたこと以外は、実施例1と同様の装置を用いた。
原水として、メタン濃度が24000[μLメタン/L原水量]であり、溶性ケイ酸濃度が33mg/Lであり、ナトリウム濃度が24mg/Lであり、塩化物イオン濃度が6mg/Lであり、TOC濃度が1.2mg/Lであり、pHが8.1であり、溶存酸素濃度が0mg/Lである水を用いた。
水処理装置の運転日数は、実施例1と同様とした。
【0064】
まず、前処理手段10により原水を砂ろ過処理、活性炭処理、UF膜処理し、pHが8.1の被処理水(A)を得た(前処理工程)。
なお、被処理水(A)のメタン濃度は、9600[μLメタン/L原水量]であり、TOC濃度は1.2mg/Lであった。
【0065】
次いで、ポンプP1を駆動させて、スプレー機構22を介さずに、被処理水(A)を前処理手段10から処理槽21へ直接供給した。このとき、ブロワ23bは駆動させず、被処理水(A)の曝気は行わなかった。
次いで、ポンプP2を駆動させて、処理槽21に貯留された被処理水(A)を膜供給水(B)として処理槽21から引き抜き、膜ろ過手段30の膜モジュール31に供給し、透過水流量5.8m3/h、膜ろ過流束0.57m3/m2/day、水回収率70%の通水条件で膜供給水(B)をろ過膜に通水し、膜ろ過処理水(C)と濃縮水とに分離した。
膜供給水(B)のメタン濃度は、8000[μLメタン/L原水量]であり、pHは8.1であり、溶存酸素濃度は0.2mg/L以上であった。結果を表1に示す。
水処理装置1の運転停止直前における膜供給水(B)の圧力及び膜ろ過処理水(C)の流量を測定し、初期値と比較してバイオファウリング抑制の評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
【0067】
表1から明らかなように、実施例1の場合、ろ過膜のバイオファウリングを抑制できた。
一方、メタン濃度が5000[μLメタン/L原水量]超の膜供給水(B)を膜ろ過手段で処理すると、ろ過膜のバイオファウリングが発生した。