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特開2023-183799非接触型の温度測定装置及びそれを備えた画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183799
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】非接触型の温度測定装置及びそれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20231221BHJP
   G03G 21/20 20060101ALI20231221BHJP
   B41J 29/387 20060101ALI20231221BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20231221BHJP
   G01J 5/00 20220101ALI20231221BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/20
B41J29/387
B41J29/46 Z
G01J5/00 101H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097531
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】山名 真司
【テーマコード(参考)】
2C061
2G066
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AP03
2C061AP04
2C061AP07
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AS02
2C061HV02
2C061HV23
2C061HV32
2C061HV44
2G066AC07
2G066BA09
2G066BC15
2G066CA04
2G066CA15
2H033AA18
2H033BA25
2H033BA30
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB01
2H033BE00
2H033BE03
2H033CA02
2H033CA11
2H270LA24
2H270LA25
2H270LA26
2H270LA29
2H270LD05
2H270LD09
2H270LD11
2H270MA35
2H270MB25
2H270MB28
2H270MB33
2H270MB39
2H270QB01
2H270QB07
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】所定のオフセット補正条件が成立し得る補正時期において測定対象物に対して短時間だけ加熱した場合などオフセット補正を行うべきでないときに、誤認識により誤ったオフセット補正を行うことを効果的に防止することができる非接触型の温度測定装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】非接触型の温度測定装置300は、オフセット補正を行うための所定のオフセット補正条件のときにオフセット補正を行うように構成されており、検知用温度検知素子75sを用いて検出した検知温度Tsをオフセット補正条件とし、検知用温度検知素子75sを用いて検出した検知温度Tsが所定の閾値Th以下であるときにオフセット補正を行う。
【選択図】図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の測定温度を非接触で検知する検知用温度検知素子と環境温度を検知する補償用温度検知素子とを含む非接触温度センサーと、
前記検知用温度検知素子の出力と前記補償用温度検知素子の出力との出力差を増幅するオペアンプとを備え、
前記オペアンプにて前記出力差を増幅した差動出力に含まれるオフセット値を測定し、測定した前記オフセット値に基づいて前記差動出力からオフセットを除去するためのオフセット補正を行う非接触型の温度測定装置であって、
前記オフセット補正を行うための所定のオフセット補正条件のときに前記オフセット補正を行うように構成されており、
前記検知用温度検知素子を用いて検出した検知温度を前記オフセット補正条件とし、前記検知用温度検知素子を用いて検出した前記検知温度が所定の閾値以下であるときに前記オフセット補正を行う、ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度測定装置であって、
前記オフセット補正を行うにあたり、前記差動出力が所定の異常出力閾値以上である場合、当該温度測定装置に異常がある可能性があることを示す警報を発する、ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の温度測定装置であって、
前記オフセット補正による前記オフセット補正値である初期オフセット補正値を記憶部に予め記憶しておき、
前記検知用温度検知素子を用いて検出した前記検知温度が前記初期オフセット補正値の前記記憶部への記憶以降に前記閾値を継続的に超える場合には、前記記憶部に記憶しておいた前記初期オフセット補正値を用いる、ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の温度測定装置であって、
前記オフセット補正を行うにあたり、前記差動出力が所定の異常出力閾値を下回る場合に、前記差動出力を測定オフセット補正値とし、記憶部において前記オフセット補正値を前記測定オフセット補正値に書き換える、ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の温度測定装置であって、
前記測定対象物を加熱する熱源が作動していない熱源非作動状態時毎に、前記検知用温度検知素子を用いて検出した前記検知温度が前記閾値以下であるときに前記オフセット補正を行う、ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の温度測定装置であって、
前記測定対象物を加熱する熱源が作動していない熱源非作動状態時毎に、前記差動出力の増加傾向を示す増加傾向値を算出し、前記増加傾向値が所定の異常傾向値以上である場合、当該温度測定装置の動作状態を確認する必要があることを示す警報を発する、ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載の温度測定装置と、
未定着トナー像をシートに加熱定着するための定着部材を有する定着装置と備え、
前記測定対象物は、前記定着部材である、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置であって、
前記オフセット補正を行うにあたり、前記差動出力が所定の異常出力閾値以上である場合、前記温度測定装置に異常がある可能性があることを示す警報を発し、画像形成動作を停止する、ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触で測定対象物の測定温度を測定する非接触型の温度測定装置及びそれを備えた複写機、複合機、プリンター及びファクシミリ装置等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物から離間させた状態で測定対象物の測定温度を測定する非接触型の温度測定装置としては、例えば、測定対象物の測定温度を非接触で検知する検知用温度検知素子(例えば検知用サーミスタ)と環境温度(測定対象物からの熱の影響を受けない周囲の雰囲気温度)を検知する補償用温度検知素子(例えば補償用サーミスタ)とを含む非接触温度センサーを有するものがある。
【0003】
このような非接触型の温度測定装置は、測定対象物の測定温度に応じた検知用温度検知素子の出力変化と、環境温度に応じた補償用温度検知素子の出力変化とから、測定対象物の測定温度を非接触で測定することができ、広く用いられている。
【0004】
図8Aは、検知用温度検知素子75sと補償用温度検知素子75cとを含む非接触温度センサー75の一例を示す3面図である。図8Bは、図8Aに示す非接触温度センサー75における検知用温度検知素子75s及び補償用温度検知素子75c部分を示す断面図である。
【0005】
図8A及び図8Bに示すように、非接触温度センサー75では、検知用温度検知素子75sで測定対象物400からの赤外線IRによる輻射熱を検知し、輻射熱を直接受けないように筐体75a内に設けられた補償用温度検知素子75cで環境温度(周囲の雰囲気温度)を検知する。
【0006】
測定対象物400の測定温度Tは、検知用温度検知素子75sを用いて検出した検知温度Tsを測定時の検知用温度検知素子75sの周囲の環境温度に応じて種々の温度補正を行う必要がある。詳しくは、測定温度Tは、検知用温度検知素子75sを用いて検出した検知温度Tsと補償用温度検知素子75cを用いて検出した環境温度(補償温度Tc)とから、輻射熱の物理法則や実測値に従う換算式及び/又は換算テーブル等の換算手段により換算することで求めることができる。例えば、非接触型の温度測定装置では、測定対象物400の測定温度Tの測定は、次のようにして行う。すなわち、先ず、測定対象物400の測定温度Tに応じた検知用温度検知素子75sからの検知出力(サーミスタの抵抗値から換算した検知電圧)と、測定対象物400の補償温度Tcに応じた補償用温度検知素子75cからの補償出力(サーミスの抵抗値から換算した補償電圧)とを取得し、これらの出力差(電圧差)を求める。次に、得られた出力差及び補償出力のアナログ信号をAD変換器(図示せず)によりデジタルデータに変換する。次に、デジタルデータに変換した出力差及び補償出力を用いて所定の演算処理を行うことにより、測定対象物400の測定温度Tを測定する。
【0007】
これについて、未定着トナー像をシートに加熱定着するための定着部材(例えば、定着ベルト、加熱ローラ、定着ローラ等の定着部材)を有する定着装置を備えた画像形成装置において、非接触型の温度測定装置により定着部材の測定温度Tを測定する場合を例にとってさらに説明する。
【0008】
近年の画像形成装置では、ウォームアップ時間の短縮化に伴う即熱対応により、定着部材の昇温速度が増し、非接触型の温度測定装置の高速な応答化が求められている。非接触型の温度測定装置の高速な応答化は、主に検知素子の小型化によってなされるが、検知素子の小型化によって、それだけ輻射熱を検知する検知用温度検知素子75sの検知面積(赤外線IRの受光量)が小さくなり、特に、出力差(電圧差)が小さくなる傾向にある。従って、小さい出力差から測定対象物400の測定温度Tを精度よく測定するために、通常は、AD変換のビット数を増やすと共に、出力差を増幅するオペアンプ(演算増幅器)が用いられる。
【0009】
ところで、オペアンプには固有のオフセット値(オフセット電圧)があり、オペアンプにて出力差を増幅した差動出力に対する誤差要因になっていた。
【0010】
<オペアンプの差動入力と出力との関係>
図9Aは、オペアンプの差動入力(入力電圧)と理想出力(理想電圧)及び実際の出力(出力電圧)との関係の一例を示すグラフである。図9Aにおいて、オペアンプのゲインは5(5倍の増幅)であり、オフセット電圧は100mV(ゲインが1のときのオフセット電圧は20mV)である。
【0011】
図9Aに示すように、オペアンプには固有のオフセット電圧がある。電圧差を例えばゲインが5(5倍)で増幅すると、オフセット電圧も5倍に増幅されてしまう。この例の場合、オフセット電圧20mVのとき、出力電圧=(入力電圧+オフセット電圧20mV)×5となり、出力電圧には100mVのオフセット電圧が足されてしまうことになる。
【0012】
ここで、設計者は、オペアンプのデータシート等によりオフセット値(オフセット電圧)の定格値(最大値)を確認することができるものの、オフセット値は個々のオペアンプで異なっている。また、オペアンプのオフセット値は、環境変化や経時変化の可能性があるため、オフセット補正を行うための所定のオフセット補正条件が成立し得る補正時期にオフセット補正を繰り返し行うことが好ましい。
【0013】
<オペアンプの差動入力と出力との関係>
図9Bは、補償温度Tcが25℃のときの補償出力(補償電圧)及び差動出力(差動電圧)と測定温度との関係の一例を示す図表である。図9Bにおいて、理想オペアンプ(オフセット電圧が0mV)の差動電圧と、オフセット電圧100mV(20mV×ゲイン=5)が足された実際のオペアンプ(増幅前のオフセット電圧が20mV)の差動電圧を示している。また、理想オペアンプを用いて測定した測定対象物400の測定温度と実際のオペアンプを用いて測定した測定対象物400の測定温度との温度誤差を示している。
【0014】
なお、図9Bでは、補償温度Tcが25℃のときの例を示しているが、補償温度Tcが変化しても、オフセット値(オフセット電圧)は変化しない。
【0015】
このように、オペアンプでは、測定対象物400の測定温度Tを測定するにあたり、オフセット値(オフセット電圧)がオフセット補正されている必要がある。
【0016】
この点に関し、測定対象物400を加熱する熱源(図示せず)が作動していない熱源非作動状態時での差動出力をオフセット補正値として、次のようにしてオフセット補正を行うことができる。
【0017】
すなわち、検知用温度検知素子75s及び補償用温度検知素子75cは、基板上の近傍位置に搭載されたり、また、素子特性が近いものが選別されたりして、同じ温度特性を持つように工夫されている。従って、本来、検知用温度検知素子75s及び補償用温度検知素子75cが測定対象物400に対して同じ温度を検知する場合、差動出力は0になる。
【0018】
一般的に、オフセット電圧は、入力電圧に関わらず、出力電圧に一定に足される。環境温度(補償温度Tc)と測定温度Tとが同じときの差動電圧(図9B中の*参照)は、オフセット電圧そのものを示す。
【0019】
かかる観点から、所定のオフセット補正条件が成立し得る補正時期として、測定対象物400に対して検知用温度検知素子75s及び補償用温度検知素子75cが同じ温度を検知することが可能な初期状態時、すなわち、熱源が作動していない熱源非作動状態時(具体的には電源スイッチがオンされて電力が供給されても熱源が作動していない時)に、差動出力を測定オフセット補正値として取得し、取得した測定オフセット補正値をオペアンプのオフセット補正値と考え、測定対象物400の測定時の差動出力から熱源非作動状態時のオフセット補正値を差し引いて、オフセット値の影響をキャンセルする(例えば特許文献1参照)。
【0020】
所定のオフセット補正条件、すなわちオフセット補正値の取得に必要な条件としては、測定対象物400(例えば定着ベルト、加熱ローラ、定着ローラ等の定着部材)及び非接触温度センサー75が同じ温度である必要があり、従って、熱源(例えばヒータランプ)が作動していない熱源非作動状態であることが必要である。
【0021】
従来は、熱源非作動状態において、例えば、測定対象物400の端部(定着ベルト、加熱ローラ、定着ローラ等の定着部材におけるシート非搬送領域)に設けられた端部温度センサー(シート非搬送領域検知用温度センサー)にて検知した端部温度をオフセット補正条件とし、端部温度センサー74にて検知した端部温度が所定の閾値(具体的には30℃)以下であるときにオフセット補正を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2015-4758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、熱源(ヒーターランプ)の発熱後(画像形成装置の電源スイッチがオンされて熱源を通電した後)、すぐに熱源の発熱を停止(画像形成装置の電源スイッチをオフ)した場合など測定対象物400に対して短時間だけ加熱した場合には、測定対象物400への加熱が短時間だけなされために、測定対象物400の加熱領域内の温度は上昇するが、加熱領域境界付近は加熱量が少ないこと、及び、測定対象物400の端部への熱移動のために温度が上がり難くなることにより、測定対象物400の端部の温度が上昇せず、その結果、端部温度センサー(シート非搬送領域検知用温度センサー)により検知した端部温度がオフセット補正条件の閾値(具体的には30℃)以下であり、補正時期である熱源非作動状態時において、オフセット補正が行われてしまう。すなわち、補償用温度検知素子75cを用いて検出される補償温度Tcは、加熱が短時間のために殆ど上昇しないが、短時間でありながら上昇した加熱領域内の温度は、検知用温度検知素子75sによって素早く検知され、補償用温度検知素子75cからの補償出力と検知用温度検知素子75sからの検知出力との間に加熱による出力差(電圧差)が生じる。非接触型の温度測定装置は、この出力差をオフセット値(オフセット電圧)だと誤って認識し、オフセット補正を行うべきでないにも拘わらず、誤ったオフセット補正を行ってしまうという課題があった。
【0024】
そこで、本開示は、所定のオフセット補正条件が成立し得る補正時期において測定対象物に対して短時間だけ加熱した場合などオフセット補正を行うべきでないときに、誤認識により誤ったオフセット補正を行うことを効果的に防止することができる非接触型の温度測定装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記課題を解決するために、本開示に係る温度測定装置は、測定対象物の測定温度を非接触で検知する検知用温度検知素子と環境温度を検知する補償用温度検知素子とを含む非接触温度センサーと、前記検知用温度検知素子の出力と前記補償用温度検知素子の出力との出力差を増幅するオペアンプとを備え、前記オペアンプにて前記出力差を増幅した差動出力に含まれるオフセット値を測定し、測定した前記オフセット値に基づいて前記差動出力からオフセットを除去するためのオフセット補正を行う非接触型の温度測定装置であって、前記オフセット補正を行うための所定のオフセット補正条件のときに前記オフセット補正を行うように構成されており、前記検知用温度検知素子を用いて検出した検知温度を前記オフセット補正条件とし、前記検知用温度検知素子を用いて検出した前記検知温度が所定の閾値以下であるときに前記オフセット補正を行う、ことを特徴とする。
【0026】
また、本開示に係る画像形成装置は、前記本開示に係る温度測定装置と、未定着トナー像をシートに加熱定着するための定着部材を有する定着装置と備え、前記測定対象物は、前記定着部材である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本開示によると、所定のオフセット補正条件が成立し得る補正時期において測定対象物に対して短時間だけ加熱した場合などオフセット補正を行うべきでないときに、誤認識により誤ってオフセット補正を行うことを効果的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本開示の実施の形態に係る非接触型の温度測定装置を備えた画像形成装置を正面から視た概略断面図である。
図2図1に示す画像形成装置における定着装置を示す概略断面図である。
図3】定着装置における加圧ローラ、定着ベルト、熱源、端部温度センサー、非接触温度センサーにおける第1の非接触温度センサー及び第2の非接触温度センサー、定着ローラ、加熱ローラを斜め上方から視た斜視図である。
図4】測定対象物を測定するための制御構成を示す概略ブロック図である。
図5】測定対象物に対する端部温度センサー、非接触温度センサーにおける第1の非接触温度センサー及び第2の非接触温度センサーの位置関係を示す模式図である。
図6】オペアンプに電気的に接続された非接触温度センサーを示す温度測定回路を示す回路図である。
図7A】本実施の形態に係るオフセット補正の制御動作例の前半部分を示すフローチャートである。
図7B】本実施の形態に係るオフセット補正の制御動作例の中間部分の一例を示すフローチャートである。
図7C】本実施の形態に係るオフセット補正の制御動作例の中間部分の他の例を示すフローチャートである。
図7D】本実施の形態に係るオフセット補正の制御動作例の後半部分を示すフローチャートである。
図8A】検知用温度検知素子と補償用温度検知素子とを含む非接触温度センサーの一例を示す3面図である。
図8B図8Aに示す非接触温度センサーにおける検知用温度検知素子及び補償用温度検知素子部分を示す断面図である。
図9A】オペアンプの差動入力と理想出力及び実際の出力との関係の一例を示すグラフである。
図9B】補償温度が25℃のときの補償出力及び差動出力と測定温度との関係の一例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0030】
図1は、本開示の実施の形態に係る非接触型の温度測定装置300を備えた画像形成装置100を正面から視た概略断面図である。なお、図において、符号Xは、幅方向(奥行き方向)を示しており、符号Yは、幅方向Xに直交する左右方向Yを示しており、符号Zは、上下方向を示している。
【0031】
図1に示す画像形成装置100は、画像読取装置10により読み取られた画像データ、又は、外部から伝達された画像データに応じて、記録用紙等のシートPに対して電子写真方式によりモノクロの画像を形成する画像形成装置である。なお、画像形成装置100は、多色及び単色の画像を形成するカラー画像形成装置であってもよい。
【0032】
画像形成装置100は、画像読取装置10と、画像形成装置本体110とを備えており、画像形成装置本体110には、画像形成部101とシート搬送系102とが設けられている。
【0033】
画像形成部101は、露光装置1(露光ユニット)、現像装置2(現像ユニット)、感光体ドラム3、感光体クリーニング装置4、帯電装置5、転写装置6(転写ユニット)及び定着装置7(定着ユニット)を備えている。また、シート搬送系102は、給紙トレイ8及び排出トレイ9を備えている。
【0034】
画像形成装置本体110の上部には、原稿載置ガラス11及び原稿読取ガラス12が設けられ、原稿載置ガラス11及び原稿読取ガラス12の下部には原稿(図示省略)の画像を読み取るための画像読取装置10が設けられている。原稿載置ガラス11は、原稿が載置される原稿載置台である。また、原稿載置ガラス11及び原稿読取ガラス12の上側には原稿搬送装置13が配置されている。原稿読取ガラス12は、原稿搬送装置13で搬送されてきた原稿を読み取る位置に設けられている。画像読取装置10で読み取られた原稿の画像は、画像データとして画像形成装置本体110に送られ、画像形成装置本体110において画像データに基づき形成された画像がシートPに画像形成(印刷)される。
【0035】
画像形成装置100では、画像形成(印刷)を行うにあたり、給紙トレイ8からシートPを供給し、シート搬送路Sに沿って設けられた搬送ローラ14aによってシートPをレジストローラ15まで搬送する。次に、シートPと感光体ドラム3上のトナー像とを整合するタイミングでシートPを搬送し、転写装置6によってシートP上に感光体ドラム3上のトナー像を転写する。その後、定着装置7によってシートP上の未定着トナーを熱で溶融、固着し、搬送ローラ14b~14b及び排出ローラ16aを経て排出トレイ9上に排出する。また、画像形成装置100において、シートPの表面だけでなく、裏面に画像形成(印刷)を行う場合は、シートPを排出ローラ16bから反転経路Srへ逆方向に搬送して、シートPの表裏を反転させてレジストローラ15へ再度導き、シートPの表面と同様にして、シートPの裏面にトナー像を定着させて排出トレイ9へ排出する。こうして、画像形成装置100は、一連の印刷動作を完了する。なお、シートPは、感光体ドラム3の回転軸線方向(幅方向X)において画像形成装置本体110の中央を基準(センター基準)にしてシート搬送路Sに沿って搬送される。
【0036】
<定着装置>
図2は、図1に示す画像形成装置100における定着装置7を示す概略断面図である。図3は、定着装置7における加圧ローラ71、定着ベルト72、熱源73、端部温度センサー74、非接触温度センサー75における第1の非接触温度センサー751及び第2の非接触温度センサー752、定着ローラ76、加熱ローラ77を斜め上方から視た斜視図である。図4は、測定対象物400(72)を測定するための制御構成を示す概略ブロック図である。図5は、測定対象物400(72)に対する端部温度センサー74、非接触温度センサー75における第1の非接触温度センサー751及び第2の非接触温度センサー752の位置関係を示す模式図である。また、図6は、オペアンプ310に電気的に接続された非接触温度センサー75(751,752)を示す温度測定回路を示す回路図である。
【0037】
次に、本実施の形態に係る非接触型の温度測定装置300をベルト定着方式の定着装置7に適用した例について以下に説明する。
【0038】
なお、表示部51は、図1に示す画像形成装置本体110の画像読取装置10の前面側(幅方向Xの前面側)の操作パネル50が設けられている。
【0039】
(第1実施形態)
定着装置7は、加圧ローラ71と、測定対象物400の一例である定着ベルト72と、熱源73と、端部温度センサー74と、非接触温度センサー75とを備えている。画像形成装置100は、制御部60(図2図4参照)をさらに備えている。加圧ローラ71は、定着装置7の本体フレーム70(図2参照)に回転軸線δ回りに回転可能に支持されている。定着ベルト72は、加圧ローラ71と対向して加圧ローラ71と共にシートPを挟持搬送する。
【0040】
この例では、定着装置7は、ベルト定着方式のものとされており、複数のローラ(この例では定着ローラ76及び加熱ローラ77)に定着ベルト72が巻き掛けられている。定着ベルト72は、加熱ローラ77から定着ローラ76へ熱伝達できるようになっている。定着ベルト72及び加圧ローラ71は、定着ローラ76が回転駆動されることにより回転される。定着装置7では、加圧ローラ71が定着ベルト72を介して定着ローラ76に押圧され、未定着のトナー像が形成されたシートPを定着ベルト72と加圧ローラ71との間に挟み込んで搬送するようになっている。
【0041】
図4に示すように、制御部60は、CPU(Central Processing Unit)等のコンピュータからなる処理部60aと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを含む記憶部60bとを有している。制御部60は、処理部60aが記憶部60bのROMに予め格納された制御プログラムを記憶部60bのRAM上にロードして実行することにより、各種構成要素の作動制御を行うようになっている。
【0042】
表示部51は、所定の表示情報を表示する。表示部51は、制御部60の出力系に電気的に接続されている。これにより、制御部60は、処理部60aにて処理した表示制御データを表示部51に送信することにより、後述するメッセージを表示部51に表示させることができる。
【0043】
非接触型の温度測定装置300は、非接触温度センサー75と、オペアンプ(310,320)と、制御部60とを備えており、オフセット補正を行う。
【0044】
画像形成装置100では、制御部60への電力は電源スイッチ80を介して電源Eから供給される。すなわち、電源スイッチ80がオンされた場合、制御部60が作動し、後述するオフセット補正条件が成立すると、オフセット補正が行われ、その後、熱源73が作動し、測定対象物400(この例では、定着ベルト72)が加熱され、測定対象物400(72)の測定温度Tが測定される。一方、オフセット補正条件が成立しない場合には、オフセット補正が行われることなく、熱源73が作動し、測定対象物400(72)が加熱され、測定対象物400(72)の測定温度Tが測定される。
【0045】
図5に示すように、端部温度センサー74は、測定対象物400(72)の幅方向Xにおける端部領域(この例ではシートPが搬送されないシート非搬送領域α2)に接触するように設けられており、測定対象物400(72)の幅方向Xにおける端部領域(α2)の端部温度を検知する。端部温度センサー74は、制御部60の入力系に電気的に接続されている(図4参照)。これにより、端部温度センサー74は、測定対象物400(72)の端部領域(α2)の端部温度に関する信号を制御部60に送信することができる。
【0046】
非接触温度センサー75(751,752)は、測定対象物400(72)の幅方向Xにおける中央部領域(この例ではシートPが搬送されるシート搬送領域α1)から離間して設けられており、測定対象物400(72)の幅方向Xにおける中央部領域(α1)の温度を検知する。非接触温度センサー75(751,752)は、制御部60の入力系に電気的に接続されている(図4参照)。これにより、非接触温度センサー75(751,752)は、測定対象物400(72)の中央部領域(α1)の温度に関する信号を制御部60に送信することができる。
【0047】
詳しくは、第1の非接触温度センサー751及び第2の非接触温度センサー752は、測定対象物400(72)のシート搬送領域α1における中央部及び一端部から離間して設けられており、測定対象物400(72)のシート搬送領域α1における中央部及び一端部の温度を検知する。
【0048】
非接触温度センサー75(751,752)は、検知用温度検知素子75s(検知用温度検知サーミスタ)と、補償用温度検知素子75c(補償用温度検知サーミスタ)とを含んでおり、制御部60の入力系に電気的に接続されている。検知用温度検知素子75sは、測定対象物400(72)の測定温度Tを非接触で検知する。補償用温度検知素子75cは、この例では、環境温度(補償温度Tc)を非接触で検知する。なお、補償用温度検知素子75cは、筐体等の環境温度を測定可能な部材に接触した状態で環境温度を検知するものであってもよい。また、非接触温度センサー75の構成は、前述した図8Bの構成と同様であり、ここでは、説明を省略する。
【0049】
オペアンプ310は、検知用温度検知素子75sの出力(検知電圧Vs)と補償用温度検知素子75cの出力(補償電圧Vc)との出力差(電圧差Vd)をゲインG1(5倍)で増幅して差動出力(差動電圧AVd)を出力する。オペアンプ320は、補償用温度検知素子75cの補償出力(補償電圧Vc)をゲインG2(1倍)で出力する。
【0050】
オフセット補正では、非接触型の温度測定装置300は、オペアンプ310にて電圧差Vdを増幅した差動電圧AVdに含まれるオフセット値F(図4参照)を測定し、測定したオフセット値Fに基づいて差動出力AVdからオフセットを除去するためのオフセット補正を行う。
【0051】
非接触型の温度測定装置300は、直流電源D、検知用抵抗器Rs及び補償用抵抗器Rcをさらに備えている。
【0052】
図6に示す温度測定回路では、直列に接続された検知用温度検知素子75s及び検知用抵抗器Rsが直流電源Dに接続され、同様に、直列に接続された補償用温度検知素子75c及び補償用抵抗器Rcが直流電源Dに接続されている。差動用のオペアンプ310のゲインG1は5(5倍の増幅)であり、補償用のオペアンプ320のゲインG2は1(1倍の増幅)である。検知用温度検知素子75sと検知用抵抗器Rsとの間の接続部C1は差動用のオペアンプ310の一方の入力端子311に接続され、補償用温度検知素子75cと補償用抵抗器Rcとの間の接続部C2は差動用のオペアンプ310の他方の入力端子312及び補償用のオペアンプ320の入力端子321に接続されている。
【0053】
本実施の形態に係る非接触型の温度測定装置300において、測定対象物400(72)の測定温度Tの測定は、先ず、測定対象物400(72)の測定温度Tに応じた検知用温度検知素子75sからの検知電圧Vs(サーミスタの抵抗値から換算した電圧)と、測定対象物400(72)の補償温度Tcに応じた補償用温度検知素子75cからの補償電圧Vc(サーミスの抵抗値から換算した電圧)とを取得し、これらの電圧差Vd(=Vc-Vs)を求める。詳しくは、検知用温度検知素子75s及び補償用温度検知素子75cは、温度変化に応じて抵抗値が変化する素子であるので、それぞれ、既知の検知用抵抗器Rsと既知の補償用抵抗器Rcとの分圧された検知電圧Vsと補償電圧Vcとを取得する。
【0054】
ここで、補償電圧Vcと検知電圧Vsとの電圧差Vdは、非接触温度センサー75の応答速度が速いほど小さくなる傾向がある(背景技術の記載参照)。
【0055】
従って、電圧差Vdを精度よく検出するために、差動用のオペアンプ310を用いて補償電圧Vcと検知電圧Vsとの電圧差Vdを増幅して差動電圧AVdを得る。また、補償電圧Vcを補償用のオペアンプ320に入力し、補償電圧Vcを得る。得られた差動電圧AVd及び補償電圧Vcは、制御部60に入力される。ここで、補償用のオペアンプ320もオフセット電圧が存在するが、補償用のオペアンプ320のゲインG2は1であるので、補償用のオペアンプ320のオフセット電圧は、無視してもよいレベルである。
【0056】
次に、制御部60は、補償電圧Vc及び差動電圧AVdをアナログ値として取り込み、補償電圧Vc及び差動電圧AVdのアナログ信号をAD変換器(図示せず)によりデジタルデータに変換する。なお、検知電圧Vsは、補償電圧Vcと電圧差Vdとから求めることができる(Vs=Vc-AVd/オペアンプ310のゲインG1)。
【0057】
次に、デジタルデータに変換した差動出力(差動電圧AVd)及び補償出力(補償電圧Vc)を用いて所定の演算処理を行うことにより、測定対象物400(72)の測定温度Tを測定する。詳しくは、温度と電圧の関係は、センサー特性が各非接触温度センサー75で固有であるので、個々のセンサー特性に応じて、検知電圧Vsから検知温度Ts、補償電圧Vcから補償温度Tcを求めることができる。そうして、検知温度Tsと補償温度Tcとから、記憶部60bに予め記憶しておいた所定の換算手段H(図4参照)を用いて、測定温度Tを求めることができる。例えば、補償電圧Vcと差動電圧AVdとから、近似式を使って測定温度Tを求めてもよい。また、所定の2次元テーブルを用いて、補償電圧Vcと差動電圧AVdとから測定温度Tを求めてもよい。
【0058】
ところで、オペアンプ310では、測定対象物400(72)の測定温度Tを測定するにあたり、オフセット電圧がオフセット補正されている必要がある。
【0059】
この点に関し、非接触型の温度測定装置300は、所定のオフセット補正条件が成立し得る補正時期に、測定対象物400(72)を加熱する熱源73が作動していない熱源非作動状態時での差動電圧AVdをオフセット補正値Fとして、オフセット補正を行う。ここで、補正時期は、測定対象物400(72)に対して検知用温度検知素子75s及び補償用温度検知素子75cが同じ温度を検知することが可能な初期状態時、すなわち、熱源73が作動していない熱源非作動状態時(具体的には電源スイッチ80がオンされて電力が供給されても熱源73が作動していない時)である。このときの差動電圧AVdを測定オフセット補正値Fmとして取得し、取得した測定オフセット補正値Fmをオペアンプ310のオフセット補正値Fと考え、測定対象物400(72)の測定時の差動電圧AVdから熱源非作動状態時のオフセット補正値Fを差し引いて、オフセット値の影響をキャンセルする。
【0060】
オフセット補正を行うための所定のオフセット補正条件、すなわちオフセット補正値Fの取得に必要な条件としては、測定対象物400(72)及び非接触温度センサー75が同じ温度である必要があり、従って、熱源73(この例ではヒータランプ)が作動していない熱源非作動状態であることが必要である。
【0061】
従来は、熱源非作動状態において、例えば、測定対象物400(72)の端部(定着ベルト72におけるシート非搬送領域α2)に設けられた端部温度センサー74(シート非搬送領域検知用温度センサー)にて検知した端部温度をオフセット補正条件とし、端部温度センサー74にて検知した端部温度が所定の閾値(具体的には30℃)以下であるときにオフセット補正を行っていた。
【0062】
しかしながら、補償用温度検知素子75cを用いて検出される補償温度Tcは、加熱が短時間のために殆ど上昇しないが、短時間でありながら上昇した加熱領域(シート搬送領域α1)内の温度は、検知用温度検知素子75sによって素早く検知され、補償用温度検知素子75cからの補償出力と検知用温度検知素子75sからの検知出力との間に加熱による電圧差Vdが生じる。非接触型の温度測定装置300は、この電圧差Vdをオフセット電圧だと誤って認識し、オフセット補正を行うべきでないにも拘わらず、誤ったオフセット補正を行ってしまうという課題があった。
【0063】
この点、本実施の形態では、制御部60は、温度検出制御部61と、第1判定制御部62と、オフセット補正制御部63とを有する。温度検出制御部61は、検知用温度検知素子75sから出力された検知温度Tsに関する信号を用いて測定対象物400(72)の検知温度Tsを検出する。第1判定制御部62は、温度検出制御部61にて検出した検知温度Tsをオフセット補正条件とし、温度検出制御部61にて検出した検知温度Tsが所定の閾値(例えば30℃)以下であるか否かを判定する。オフセット補正制御部63は、温度検出制御部61にて検出した検知温度Tsが第1判定制御部62にて閾値(例えば30℃)以下であることを判定したときにオフセット補正を行う。このときの差動出力(差動電圧AVd)をオフセット補正値Fとして記憶部60bに記憶しておく。その後、熱源73を作動させて熱源73にて加熱された測定対象物400(72)を測定するときの差動出力(AVd)から記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fを引けば、理想的な又は理想に近い差動出力(AVd)を得ることができる。こうして、オフセット値の影響を排除した正確な測定温度を得ることができる。
【0064】
本実施の形態によれば、制御部60は、検知用温度検知素子75sを用いて検出した検知温度Tsをオフセット補正条件とし、検知温度Tsが所定の閾値(具体的には30℃)以下であるときにオフセット補正を行うので、検知用温度検知素子75sを測定対象物400(72)の温度上昇に対して即応できる。例えば、短時間だけ加熱した測定対象物400(72)がオフセット補正条件の閾値(具体的には30℃)を超えて昇温した場合において、検知用温度検知素子75sを用いて測定対象物400(72)に対してオフセット補正条件の閾値を超える検知温度Tsを検出することにより、オフセット補正を行わないようにすることができる。
【0065】
従って、所定のオフセット補正条件が成立し得る補正時期において測定対象物400(72)に対して短時間だけ加熱した場合などオフセット補正を行うべきでないときに、誤認識により誤ったオフセット補正を行うことを効果的に防止することができる。
【0066】
本実施の形態において、第1判定制御部62は、第1の非接触温度センサー751における検知用温度検知素子75sを用いて検出した中央部の検知温度Ts及び第2の非接触温度センサー752における検知用温度検知素子75sを用いて検出した一端部の検知温度Tsのうち少なくとも一方が所定の閾値(例えば30℃)以下であるか否かを判定し、オフセット補正制御部63は、中央部の検知温度Ts及び一端部の検知温度Tsのうち少なくとも一方が第1判定制御部62にて所定の閾値以下であることを判定したときにオフセット補正を行うようにしてもよい。
【0067】
この場合、加熱領域(シート搬送領域α1)において温度ムラや温度傾斜があると、検知用温度検知素子75sを用いて検出した検知温度Tsによりオフセット補正条件を精度よく成立させることができないことがある。
【0068】
そこで、次のような構成にしてもよい。すなわち、温度検出制御部61は、シート搬送領域α1において、第1の非接触温度センサー751における検知用温度検知素子75sを用いて検出した中央部の検知温度Tsと、第2の非接触温度センサー752における検知用温度検知素子75sを用いて検出した一端部の検知温度Tsの温度差を算出する。第1判定制御部62は、中央部の検知温度Tsと一端部の検知温度Tsとの温度差が所定の温度差閾値(例えば5℃)よりも小さいか否かを判定する。オフセット補正制御部63は、中央部の検知温度Ts及び一端部の検知温度Tsのうち少なくとも一方が所定の閾値(例えば30℃)以下であり、且つ、温度検出制御部61にて算出した中央部の検知温度Tsと一端部の検知温度Tsとの温度差が第1判定制御部62にて温度差閾値より小さいことを判定したときにオフセット補正を行う。これにより、中央部の検知温度Ts及び一端部の検知温度Tsのうち少なくとも一方が所定の閾値以下であっても、中央部の検知温度Tsと一端部の検知温度Tsとの温度差が温度差閾値以上であると、オフセット補正を行わないようにすることができる。従って、検知用温度検知素子75s(第1の非接触温度センサー751及び第2の非接触温度センサー752における検知用温度検知素子75s,75s)を用いて検出した検知温度Ts(中央部及び一端部の検知温度Ts,Ts)によりオフセット補正条件を精度よく成立させることができる。
【0069】
或いは/さらに、制御部60は、電源スイッチ80が前回にオンされた時点から今回のオンされた時点までのオン時間間隔を検出し、検知温度Tsが閾値以下であり、且つ、オン時間間隔が所定の基準オン時間間隔よりも大きいことを判定したときにオフセット補正を行うようにしてもよい。
【0070】
或いは/さらに、周囲温度が急激に変化すると、オフセット補正を精度よく行うことができないことがあるという観点から、制御部60は、周囲温度(補償温度Tc)の単位時間あたりの温度変化率を検出し、検知温度Tsが閾値以下であり、且つ、温度変化率が所定の変化率以下であることを判定したときにオフセット補正を行ってもよい。
【0071】
本実施の形態において、好ましくは、オフセット補正条件の閾値を画像形成装置100の推奨上限温度(定格の使用可能上限温度、例えば30℃)以下とすることができる。ここで、オフセット補正条件の閾値が画像形成装置100の推奨上限温度を超えると、測定対象物400(72)に対して短時間だけ加熱した場合などオフセット補正を行うべきでないときの誤認識により誤ったオフセット補正を行うリスクが高まる恐れがある。一方、オフセット補正条件の閾値が画像形成装置100の推奨温度範囲(定格の使用可能温度範囲、例えば、10℃~30℃)内であっても、低過ぎると、オフセット補正を行うべきときに、検知用温度検知素子75sを用いて検出した検知温度Tsが閾値を継続的に超える或いは超える機会が増え、それだけ、オフセット補正がなされない恐れがある。
【0072】
(第2実施形態)
ところで、差動出力(差動電圧AVd)が所定の異常出力閾値(異常電圧閾値)以上である場合、温度測定装置300に何等かの異常が発生したことが考えられる。ここで、異常出力閾値としては、温度測定装置300に何等かの異常が発生し得る差動出力(AVd)の値を例示できる。例えば、温度測定装置300の温度測定回路内のリーク電流が大きくなり、電位が変化した場合などの異常状態では、正確な温度測定を行うことができない。
【0073】
この点、第2実施形態では、第1実施形態において、制御部60は、差動出力(AVd)が所定の異常出力閾値以上であるか否かを判定する第2判定制御部64と、オフセット補正を行うにあたり、第2判定制御部64にて差動出力(AVd)が所定の異常出力閾値以上であることを判定した場合、温度測定装置300に異常がある可能性があることを示す警報を発する警報制御部65とを有する。例えば、操作パネル50の表示部51に或いは/さらに音声発生部(図示せず)に「温度測定回路に異常がある可能性があります。サービスマンを呼んで下さい。」といった警告やエラー等のメッセージ表示及び/又は音声を発するようにしてもよい。
【0074】
こうすることで、異常状態で測定対象物400(72)の温度を測定することで正確な温度測定を行うことができないことをユーザーに認識させることができる。
【0075】
(第3実施形態)
ところで、測定対象物400(72)の設置環境の環境温度(例えば35℃)が常にオフセット補正条件の閾値(例えば30℃)を超えている場合など、オフセット補正が一度もなされない状況が生じる可能性がある。
【0076】
この点、第3実施形態では、第1実施形態又は第2実施形態において、例えば、最初(工場出荷前)のオフセット補正を工場の生産工程で行い、生産工程で行ったオフセット補正のオフセット補正値である初期オフセット補正値を記憶部60bに予め記憶しておく。オフセット補正制御部63は、検知用温度検知素子75sを用いて検出した検知温度Tsが初期オフセット補正値の記憶部60bへの記憶以降に閾値(例えば30℃)を継続的に超える場合には、記憶部60bに予め記憶しておいた初期オフセット補正値を用いる。
【0077】
こうすることで、工場の出荷後に測定対象物400(72)を設置する環境の環境温度(例えば35℃)がオフセット条件の閾値(例えば30℃)を継続的に超える場合でも、例えば工場の生産工程や工場出荷で行ったオフセット補正の差動出力(AVd)を用いてオフセット補正を行うことができる。
【0078】
ここで、検知用温度検知素子75sを用いて検出した検知温度Tsが一旦閾値以下になると、以降は、生産工程で記憶部60bに予め記憶した初期オフセット補正値を用いることなく、検知用温度検知素子75sを用いて検出した検知温度Tsが閾値以下になったときに行ったオフセット補正によるオフセット補正値Fを用いることができ、これにより検知温度Tsが一旦閾値以下となった後に検知温度Tsが閾値を超えても、検知温度Tsが閾値以下になったときのオフセット補正値Fを用いることができる。この場合、本実施の形態のように、生産工程で初期オフセット補正値を記憶する記憶部60bの記憶領域と、検知温度Tsが閾値以下になったときにオフセット補正値Fを記憶する記憶部60bの記憶領域とを同じにし、記憶部60bにおいて、生産工程で記憶した初期オフセット補正値を検知温度Tsが閾値以下になったときのオフセット補正値Fに書き換えることができる。こうすることで、検知温度Tsが一旦閾値以下になったか否かを判定するための制御部60の制御構成を省略することができる。
【0079】
(第4実施形態)
ところで、差動出力(AVd)は、通常はノイズを含んでいるが、差動出力(AVd)がノイズを含んでいても、0でないとみなせる程度の所定の下限閾値を下回る場合には、差動出力(AVd)が0とみなすことが好ましい。
【0080】
この点、第4実施形態では、第1実施形態から第3実施形態までの何れか1つにおいて、第2判定制御部64は、差動出力(AVd)が所定の下限閾値を下回るか否かを判定する。オフセット補正制御部63は、オフセット補正を行うにあたり、第2判定制御部64にて差動出力(AVd)が所定の下限閾値を下回ることを判定した場合に、測定オフセット補正値Fmを0にし、記憶部60bにおいてオフセット補正値Fを測定オフセット補正値Fm(0)に書き換える。ここで、下限閾値は、ノイズレベル程度の値とすることができる。
【0081】
こうすることで、下限閾値を下回る差動出力(AVd)をノイズとみなすことができ、これにより、オフセット値を0にしたオフセット補正を行うことができる。
【0082】
(第5実施形態)
第5実施形態では、第1実施形態から第4実施形態までの何れか1つにおいて、オフセット補正制御部63は、オフセット補正を行うにあたり、第2判定制御部64にて差動出力(AVd)が異常出力閾値を下回ることを判定した場合に、差動出力(AVd)を測定オフセット補正値Fmとし、記憶部60bにおいてオフセット補正値Fを測定オフセット補正値Fm〔差動出力(AVd)〕に書き換える。
【0083】
こうすることで、記憶部60bにおいてオフセット補正を行う毎にオフセット補正値Fを新たに取得した測定オフセット補正値Fmに確実に更新することができる。
【0084】
ところで、差動出力(AVd)が下限閾値以上である場合には、差動出力(AVd)がノイズを含んでいても0ではないとみなすことができる。
【0085】
この点、本実施の形態において、オフセット補正制御部63は、オフセット補正を行うにあたり、第2判定制御部64にて差動出力(AVd)が下限閾値以上であることを判定した場合に、差動出力(AVd)を測定オフセット補正値Fmとし、記憶部60bにおいてオフセット補正値Fを測定オフセット補正値Fm〔差動出力(AVd)〕に書き換える。
【0086】
この場合、オフセット補正値Fを単に測定オフセット補正値Fm〔差動出力(AVd)〕に書き換えてもよいが、下限閾値をノイズとみなし、測定オフセット補正値Fmを差動出力(AVd)から下限閾値を引いた値にしてもよい。こうすることで、記憶部60bにおいてオフセット補正を行う毎にオフセット補正値Fを差動出力(AVd)からノイズとみなした下限閾値を引いた測定オフセット補正値Fmに精度よく更新することができる。
【0087】
本実施の形態において、第2判定制御部64は、測定オフセット補正値Fmが記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fと異なっているか否かを判定する。オフセット補正制御部63は、オフセット補正を行うにあたり、第2判定制御部64にて測定オフセット補正値Fmが記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fと異なっていることを判定した場合に、記憶部60bにおいてオフセット補正値Fを測定オフセット補正値Fmに書き換えるようにしてもよい。
【0088】
こうすることで、測定オフセット補正値Fmが記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fと等しいときの記憶部60bへの書き換え動作を省略することができる。
【0089】
本実施の形態において、第2判定制御部64は、測定オフセット補正値Fmが記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fを下回っているか否かを判定する。オフセット補正制御部63は、オフセット補正を行うにあたり、第2判定制御部64にて測定オフセット補正値Fmが記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fを下回っていることを判定した場合に、測定オフセット補正値Fmを記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fにし、記憶部60bにおいてオフセット補正値Fを測定オフセット補正値Fm(記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値F)に書き換えるか、或いは、そのままにするようにしてもよい。
【0090】
こうすることで、測定オフセット補正値Fmが記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fを下回っても記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fに維持させることができる。このことは、特に、オフセット値にオペアンプ310に起因しない別のオフセット要因が加わる場合に有効である。
【0091】
本実施の形態において、オフセット補正制御部63は、オフセット補正を行うにあたり、第2判定制御部64にて測定オフセット補正値Fmが記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値F以上であることを判定した場合に、記憶部60bにおいてオフセット補正値Fを測定オフセット補正値Fmに書き換えるようにしてもよい。
【0092】
こうすることで、測定オフセット補正値Fmが記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値F以上になった場合に記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fを測定オフセット補正値Fmに更新することができる。
【0093】
本実施の形態において、第2判定制御部64は、差動出力(AVd)が下限閾値よりも大きい所定の上限閾値を下回っているか否かを判定する。オフセット補正制御部63は、オフセット補正を行うにあたり、第2判定制御部64にて差動出力(AVd)が所定の下限閾値以上、且つ、所定の上限閾値を下回っていることを判定した場合に、記憶部60bにおいてオフセット補正値Fを測定オフセット補正値Fmに書き換えるようにしてもよい。
【0094】
こうすることで、オフセット補正値Fを適正な測定オフセット補正値Fmに確実に更新することができる。
【0095】
本実施の形態において、オフセット補正制御部63は、オフセット補正を行うにあたり、第2判定制御部64にて差動出力(AVd)が所定の上限閾値以上であることを判定した場合に、測定オフセット補正値Fmを上限閾値にし、記憶部60bにおいてオフセット補正値Fを測定オフセット補正値Fm(上限閾値)に書き換えるようにしてもよい。ここで、上限閾値は、異常出力閾値を下回り、且つ、リーク等により突発的に生じ得る値よりも所定量だけ小さい値とすることができる。
【0096】
こうすることで、オフセット補正値Fを上限閾値よりも大きくすることなく、上限閾値に抑えた測定オフセット補正値Fmに確実に更新することができる。このことは、特に、差動出力(AVd)がリーク等により突発的に上限閾値よりも大きくなる場合に有効である。
【0097】
(第6実施形態)
ところで、オペアンプ310のオフセット値は、通常は、経時変化する。従って、オフセット補正した後にオフセット値が経時変化すると、測定対象物400(72)の測定温度を精度よく測定することができない。そのため、所定のオフセット補正条件が成立し得る補正時期にオフセット補正を繰り返し行うことが好ましい。
【0098】
この点、第6実施形態では、第1実施形態から第5実施形態までの何れか1つにおいて、オフセット補正制御部63は、測定対象物400(72)を加熱する熱源73が作動していない熱源非作動状態時毎に(この例では電源スイッチ80がオンされる毎に)、検知用温度検知素子75sを用いて検出した検知温度Tsが閾値以下であるときにオフセット補正を行う。
【0099】
こうすることで、熱源非作動状態時毎に、経時変化したオペアンプ310のオフセット値に対してオフセット補正を行うことができ、これにより、オフセット値が変化しても測定対象物400(72)の測定を精度よく行うことができる。
【0100】
(第7実施形態)
第7実施形態では、第1実施形態から第6実施形態までの何れか1つにおいて、制御部60は、熱源73が作動していない熱源非作動状態時毎に(この例では電源スイッチ80がオンされる毎に)、差動出力(AVd)の履歴を記憶部60bに記憶し、差動出力(AVd)の増加傾向を示す増加傾向値を算出する増加傾向値算出部66を有する。第2判定制御部64は、増加傾向値算出部66にて算出した増加傾向値が所定の異常傾向値以上であるか否かを判定する。
【0101】
ここで、異常傾向値としては、温度測定装置300に何等かの異常が発生する可能性が高い増加傾向値の値を例示できる。差動出力(AVd)の増加傾向を示す増加傾向値としては、例えば、熱源非作動状態時毎に(この例では電源スイッチ80がオンされる毎に)、差動出力(AVd)の履歴を記憶部60bにし、前回の差動出力(AVd)との差がプラス(正)で、且つ、差動出力割合が基準割合以上の差動出力(AVd)を挙げることができる。差動出力割合は、所定の異常出力閾値に対する差動出力(AVd)の割合とすることができる。基準割合としては、それには限定されないが、異常出力閾値に対して70%~80%程度以上の割合を例示できる。
【0102】
警報制御部65は、第2判定制御部64にて増加傾向値が所定の異常傾向値以上であることを判定した場合、温度測定装置300の動作状態を確認する必要があることを示す警報を発する。例えば、警報制御部65は、操作パネル50の表示部51に或いは/さらに音声発生部(図示せず)に「温度測定回路が異常になる可能性が高くなっています。」といった警告やエラー等のメッセージ表示及び/又は音声を発するようにしてもよい。
【0103】
こうすることで、第2判定制御部64は、差動出力(AVd)が異常出力閾値を超えないまでも、前回の差動出力(AVd)よりも増加し、且つ、異常出力閾値に近づいていることを認識し、警報制御部65にて温度測定装置300の動作状態を確認する必要があることを示す警報を発することで、事前に温度測定回路の確認(例えば出力電圧のチェック等の確認)をサービスマン等の作業者に行わせるなどの対策を施して、温度測定装置300の故障を未然に防ぐことができる。
【0104】
(第8実施形態)
ところで、差動出力(AVd)が異常出力閾値以上である場合、正確な温度測定を行うことができず、画像形成装置100において定着不良となる恐れがある。このため、画像形成動作を停止することが望ましい。
【0105】
この点、第8実施形態では、第1実施形態から第7実施形態までの何れか1つにおいて、制御部60は、オフセット補正を行うにあたり、第2判定制御部64にて差動出力(AVd)が所定の異常出力閾値以上であることを判定した場合、画像形成動作を停止する動作停止制御部67を有する。
【0106】
こうすることで、画像形成装置100において定着不良となることを回避することができる。そして、サービスマン等の作業者は、温度測定回路基板の修理又は交換などの対策を行い、正常であることが確認できた後、画像形成動作を開始させることができる。
【0107】
<オフセット補正の制御例>
図7Aから図7Dは、それぞれ、本実施の形態に係るオフセット補正の制御動作例の前半部分、中間部分の一例、中間部分の他の例及び後半部分を示すフローチャートである。
【0108】
図7Aから図7Dに示すオフセット補正の制御動作を行うに先立ち、最初の1回目のオフセット補正を工場の生産工程で行い、生産工程で行ったオフセット補正の初期オフセット補正値Fiを記憶部60bに予め記憶しておく。
【0109】
図7Aから図7Dに示すフローチャートでは、先ず、制御部60は、図7Aに示すように、電源スイッチ80がオンされると(S1)、端部温度センサー74を用いて検出した測定対象物400(72)におけるシート非搬送領域α2の端部温度Teと、第1の非接触温度センサー751を用いて検出した測定対象物400(72)におけるシート搬送領域α1の中央部の検知温度Tsと、第2の非接触温度センサー752を用いて検出した測定対象物400(72)におけるシート搬送領域α1の一端部の検知温度Tsが閾値Th(この例では30℃)以下か否かを判断する(S2)。次に、制御部60は、端部温度Te、中央部の検知温度Ts及び一端部の検知温度Tsのうち少なくとも1つの温度が閾値Thを超えると判断した場合には(S2:No)、オフセット補正値Fに対して生産工程で記憶部60bに予め記憶しておいた初期オフセット補正値Fiを代入し、図7Dに示すS19に移行する。一方、制御部60は、端部温度Te、中央部の検知温度Ts及び一端部の検知温度Tsの全ての温度が閾値Th以下である場合には(S2:Yes)、差動電圧AVdを取得し(S4)、差動電圧AVdが異常電圧閾値Va以上か否かを判断する(S5)。制御部60は、差動電圧AVdが異常電圧閾値Vaを下回ると判断した場合には(S5:No)、差動電圧AVdが下限閾値Vminを下回るか否かを判断する(S6)。制御部60は、差動電圧AVdが下限閾値Vminを下回ると判断した場合(S6:Yes)、測定オフセット補正値Fmに対して0を代入し(S7)、図7Bに示すS13又は図7Cに示すS13aに移行する。また、制御部60は、差動電圧AVdが下限閾値Vmin以上であると判断した場合(S6:No)、差動電圧AVdが上限閾値Vmaxを上回るか否かを判断する(S8)。制御部60は、差動電圧AVdが上限閾値Vmaxを上回ると判断した場合(S8:Yes)、測定オフセット補正値Fmに対して上限閾値Vmaxを代入し(S9)、図7Bに示すS13又は図7Cに示すS13aに移行する。また、制御部60は、差動電圧AVdが上限閾値Vmax以下であると判断した場合(S8:No)、測定オフセット補正値Fmに対して(差動電圧AVd-下限閾値Vmin)を代入し(S10)、図7Bに示すS13又は図7Cに示すS13aに移行する。なお、S10において、測定オフセット補正値Fmに対して差動電圧AVdを代入するようにしてもよい。
【0110】
一方、制御部60は、差動電圧AVdが異常電圧閾値Va以上であると判断した場合には(S5:Yes)、温度測定装置300に異常がある可能性があることを示すメッセージを表示部51に表示し(S11)、画像形成装置100の画像形成動作を停止し(S12)、処理を終了する。
【0111】
次に、制御部60は、図7Bに示す例の場合、測定オフセット補正値Fmが記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fと異なるか否かを判定し(S13)、異なると判断した場合(S13:Yes)、オフセット補正値Fに対して測定オフセット補正値Fmを代入し(S14)、図7Dに示すS15に移行する一方、等しいと判断した場合(S13:No)、そのまま図7Dに示すS15に移行する。
【0112】
また、制御部60は、図7Cに示す例の場合、測定オフセット補正値Fmが記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fを下回るか否かを判定し(S13a)、オフセット補正値Fを下回ると判断した場合(S13a:Yes)、オフセット補正値Fに対して記憶部60bに記憶しておいたオフセット補正値Fを代入し(S14a)、図7Dに示すS15に移行する一方、オフセット補正値F以上であると判断した場合(S13a:No)、オフセット補正値Fに対して測定オフセット補正値Fmを代入し(S14)、図7Dに示すS15に移行する。
【0113】
次に、制御部60は、図7Dに示すように、オフセット補正値Fを記憶部60bに記憶し(S15)(オフセット補正値Fを更新する)、差動電圧AVdの履歴を記憶部60bに記憶して増加傾向値Kを算出する(S16)。
【0114】
次に、制御部60は、増加傾向値Kが異常傾向値Ka以上か否かを判断し(S17)、異常傾向値Kaを下回ると判断した場合には(S17:No)、S19に移行する一方、異常傾向値Ka以上であると判断した場合には(S17:Yes)、温度測定装置300の動作状態を確認する必要があることを示すメッセージを表示部51に表示し(S18)、S19に移行する。
【0115】
次に、制御部60は、熱源73を作動させ(S19)、測定対象物400(72)の測定温度Tを測定して(S20)補償電圧Vc及び差動電圧AVdを取得する(S21,S22)。
【0116】
次に、制御部60は、適正な適正差動電圧RAVdに対して(取得した差動電圧Vc-オフセット補正値F)を代入し(S23)、取得した補償電圧Vcと適正差動電圧RAVdとから測定温度Tを求める(S24)。
【0117】
本開示は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、係る実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0118】
100 画像形成装置
300 温度測定装置
310 差動用のオペアンプ(オペアンプの一例)
320 補償用のオペアンプ
400 測定対象物
51 表示部
60 制御部
60a 処理部
60b 記憶部
61 温度検出制御部
62 第1判定制御部
63 オフセット補正制御部
64 第2判定制御部
65 警報制御部
66 増加傾向値算出部
67 動作停止制御部
7 定着装置
72 定着ベルト(測定対象物の一例)
73 熱源
74 端部温度センサー
75 非接触温度センサー
751 第1の非接触温度センサー
752 第2の非接触温度センサー
75c 補償用温度検知素子
75s 検知用温度検知素子
80 電源スイッチ
AVd 差動電圧
D 直流電源
E 電源
F オフセット補正値
Fi 初期オフセット補正値
Fm 測定オフセット補正値
H 換算手段
IR 赤外線
K 増加傾向値
Ka 異常傾向値
P シート
RAVd 適正差動電圧
Rc 補償用抵抗器
Rs 検知用抵抗器
T 測定温度
Tc 補償温度
Te 端部温度
Th 閾値
Ts 検知温度
Va 異常電圧閾値
Vc 補償電圧
Vd 電圧差
Vmax 上限閾値
Vmin 下限閾値
Vs 検知電圧
X 幅方向
α1 シート搬送領域
α2 シート非搬送領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A
図9B