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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183801
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】プラスチックの油化装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20231221BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C10G1/10
C08J11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097534
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】508115897
【氏名又は名称】株式会社湘南貿易
(71)【出願人】
【識別番号】521547404
【氏名又は名称】伊部 英紀
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【弁理士】
【氏名又は名称】重泉 達志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 則夫
(72)【発明者】
【氏名】伊部 英紀
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA27
4F401BA02
4F401CA70
4F401CB02
4F401CB06
4F401CB13
4F401CB33
4F401FA01Y
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB03
4H129BC35
4H129BC37
4H129NA21
4H129NA45
(57)【要約】
【課題】熱分解炉から分解ガスを循環路へ導出する導出配管を備えた油化装置において、循環路から導出配管側への循環油の浸入を抑制することのできる油化装置を提供する。
【解決手段】ブラスチックを熱分解する熱分解炉と、熱分解炉で生じた分解ガスを冷却して油化する循環油が循環する循環路と、熱分解炉から分解ガスを循環路へ導出する導出配管20と、を備え、循環路は、導出配管20と接続され循環油が下方へ向かって流通する接続配管34aを有し、導出配管20は、水平方向に対して熱分解炉側から接続配管34a側へ向かって下るよう傾斜して形成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラスチックを熱分解する熱分解炉と、
前記熱分解炉で生じた分解ガスを冷却して油化する循環油が循環する循環路と、
前記熱分解炉から前記分解ガスを前記循環路へ導出する導出配管と、を備え、
前記循環路は、前記導出配管と接続され前記循環油が下方へ向かって流通する接続配管を有し、
前記導出配管は、水平方向に対して前記熱分解炉側から前記接続配管側へ向かって下るよう傾斜して形成されるプラスチックの油化装置。
【請求項2】
前記導出配管は、直線状に形成される請求項1に記載のプラスチックの油化装置。
【請求項3】
前記接続配管における前記導出配管との接続部分は、鉛直方向に対して下方へ向かって前記導出配管と反対側に傾斜して形成される請求項1に記載のプラスチックの油化装置。
【請求項4】
前記導出配管の内面温度を制御する加熱部を備えた請求項1から3のいずれか1項に記載のプラスチックの油化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの油化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの油化装置として、廃プラスチックを熱分解する熱分解炉と、廃プラスチックの熱分解反応によって生成する分解ガス中のテレフタル酸及び安息香酸の各昇華性芳香族カルボン酸を析出させる析出槽と、分解ガスの油化により生じる循環油が循環ポンプの駆動により析出槽を循環する循環経路に介在する循環油槽及び循環油クーラとを備えたものが提案されている(特許文献1参照)。この油化装置では、熱分解炉から生じる分解ガスを析出槽に導入する導入管が循環油槽及び循環油クーラの下流側かつ析出槽の上流側の循環経路に接続されると共に、循環油クーラで冷却された循環油と循環油により急冷されて分解ガスから芳香族カルボン酸が析出した生成油との混合油を析出槽から沈降槽にオーバーフローさせる溢流手段が設けられている。この油化装置では、循環油クーラで冷却された循環油は、析出槽の蓋体を貫通する注入管により析出層に注入されている。注入管は、鉛直に形成され、上部が析出層の外部に延出し、延出部分に導入管が接続される。導入管における注入管との接続部分は、水平に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-256636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の油化装置では、導入管における注入管との接続部分が水平に形成されているため、循環油が導入管側へ浸入しやすいという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、熱分解炉から分解ガスを循環路へ導出する導出配管を備えた油化装置において、循環路から導出配管側への循環油の浸入を抑制することのできる油化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、
ブラスチックを熱分解する熱分解炉と、
前記熱分解炉で生じた分解ガスを冷却して油化する循環油が循環する循環路と、
前記熱分解炉から前記分解ガスを前記循環路へ導出する導出配管と、を備え、
前記循環路は、前記導出配管と接続され前記循環油が下方へ向かって流通する接続配管を有し、
前記導出配管は、水平方向に対して前記熱分解炉側から前記接続配管側へ向かって下るよう傾斜して形成されるプラスチックの油化装置が提供される。
【0007】
上記油化装置において、前記導出配管は、直線状に形成されることが好ましい。
【0008】
上記油化装置において、前記接続配管における前記導出配管との接続部分は、鉛直方向に対して下方へ向かって前記導出配管と反対側に傾斜して形成されることが好ましい。
【0009】
上記油化装置において、前記導出配管の内面温度を制御する加熱部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプラスチックの油化装置よれば、循環路から導出配管側への循環油の浸入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を示す油化装置の模式図である。
図2】熱分解炉の一部断面説明図である。
図3】導出配管及び接続配管の斜視説明図である。
図4】導出配管及び接続配管の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図4は本発明の一実施形態を示し、図1は油化装置の模式図、図2は熱分解炉の一部断面説明図、図3は導出配管及び接続配管の斜視説明図、導出配管及び接続配管の断面説明図である。
【0013】
図1に示すように、このプラスチックの油化装置1は、熱分解炉10と、第1導出配管20と、第1循環路30と、第2導出配管40と、第2循環路50と、第3導出配管60と、オフガス処理部70と、排出配管80と、残渣回収部90と、を有している。熱分解炉10で生じた分解ガスは、第1導出配管20を通じて第1循環路30へ案内される。第1循環路30で一部の分解ガスが凝縮回収され、残りの分解ガスが第2導出配管40を通じて、第2導出配管50へ案内される。第2循環路50でさらに一部の分解ガスが凝縮回収され、残りの分解ガスは第3導出配管60を通じて、オフガス処理部70へ案内される。熱分解炉10で生じた残渣は、排出配管80を通じて残渣回収部90へ案内される。
【0014】
図2に示すように、熱分解炉10は、円筒状の筒部11と、筒部11を駆動する駆動部12と、を有し、筒部は中心軸を中心として回転駆動される。筒部11は、例えば熱伝導性,耐熱性を考慮したステンレス鋼からなり、軸方向一端側(図2中左端側)の小径部11aと、軸方向他端側(図2中右端側)の大径部11bと、を有している。また、熱分解炉10は、小径部11aの軸方向一端側に設けられたプラスチック投入装置13と、大径部11bの径方向外側に設けられた円筒状の外殻部14と、を有している。外殻部14は、例えば耐熱性に優れた炭素鋼からなり、大径部11bと外殻部14の間は、大径部11bにより形成される内筒の内部加熱用ジャケット15として機能する。
【0015】
本実施形態においては、外殻部14には熱気導入口14a及び熱気導出口14bが形成され、図示しない大形バーナ等の燃焼装置等から加熱用ジャケット15に高温の加熱ガスが供給されるよう構成されている。筒部11内の温度は任意であるが、本実施形態においては、400℃以上550℃以下の範囲となるよう制御される。
【0016】
筒部11内には、多数のセラミックボール16が配置される。セラミックボール16は、投入されたプラスチックと混合接触し、加熱ジャケット15から筒部11に加えられた熱をプラスチックに効率よく伝達し、プラスチックの熱分解を促進する。これと同時に、各セラミックボール16が筒部11の内周面を常時叩くことにより、分解生成物の内周面への焦げ付き(コーキング)を防止し、安定した筒部11内部への入熱性能を確保することができる。筒部11の内周面には、周方向へ延び径方向内側へ突出する複数の仕切り部材17が設けられ、各仕切り部材17によりセラミックボール16の軸方向の移動が阻害される。本実施形態においては、セラミックボール16は、アルミナ製である。
【0017】
ブラスチック投入装置13は、円筒状の外筒13aと、外筒13a内に配置されたスクリューフィーダ13bと、を有する。ブラスチック投入装置13の外筒13aは、軸方向他端側が筒部11の小径部11aの内側に位置している。スクリューフィーダ13bは、2本のスクリューを互いに噛み合うように平行配置したもので、駆動部13cにより回転駆動される。スクリューフィーダ13bの軸方向他端側は、筒部11内で外筒13aから突出している。プラスチック投入装置13は、軸方向一端側に設けられた投入口13dを有する。投入口13dは、図示しない予め加熱溶融されたプラスチックの貯留槽と連結される。
【0018】
図2に示すように、熱分解炉10は、筒部11と軸方向に連続的に設けられた排出筐体18を有する。図3に示すように、本実施形態においては、排出筐体18は、軸方向他端側を閉塞した円筒状に形成される。排出筐体18の側部下側には、熱分解により生じた分解ガスを第1循環路30へ導出する第1導出配管20が接続される。また、排出筐体18の下部には、熱分解により生じた残渣を残渣回収部90へ排出する排出配管80が接続される。
【0019】
第1循環路30には、熱分解炉10で生じた分解ガスを冷却して油化するための第1循環油が循環している。図1に示すように、第1循環路30は、第1分解油タンク31と、第1循環ポンプ32と、第1冷却器33と、これらを接続して循環路をなす第1配管部34と、を有する。第1配管部34は、例えば炭素鋼からなり、第1導出配管20と接続され第1循環油が下方へ向かって流通する第1接続配管34aを有する。また、本実施形態においては、第1接続配管34aは、鉛直方向に対して下方へ向かって第1導出配管20と反対側に傾斜して形成される。第1導出配管20から第1接続配管34aへ流入した分解ガスは、第1循環油により冷却されて一部が凝縮する。第1分解油タンク31は、第1接続配管34aで凝縮した分解油を貯留する。本実施形態においては、分解油がそのまま第1循環油として用いられる。第1冷却器33は、第1接続配管34aを流通する第1循環油が第1の所定温度となるように第1循環油を冷却する。第1の所定温度は、任意に設定することができ、例えば100℃以上120℃以下とすることができる。本実施形態においては、第1の所定温度は110℃であり、第1分解油タンク31で重油等の重質油が回収される。第1循環路30で凝縮されなかった分解ガスは、第2導出配管40を通じて第2循環路50へ導出される。
【0020】
図4に示すように、第1導出配管20は、例えば炭素鋼からなり、水平方向に対して熱分解炉10側から第1接続配管34a側へ向かって下るよう傾斜して形成される。本実施形態においては、第1導出配管20は、直線状に形成される。油化装置1は、第1導出配管20の内面温度を制御する加熱ヒータ2を備えている。第1導出配管20の配管内面は、加熱ヒータ2により一定温度に制御される。加熱ヒータ2は、第1導出配管20の外面を覆うよう設けられる。加熱ヒータ2による第1導出配管20の内面温度は、320℃以上380以下に制御される。本実施形態においては、第1導出配管20の内面の温度設定値は350℃である。また、本実施形態においては、加熱ヒータ2は、第1導出配管20とともに加熱炉10の排出筐体18及び排出配管80の外面を覆い、第1導出配管20と同様に温度制御される。
【0021】
第2循環路50には、第1循環路30で凝縮されなかった分解ガスを冷却して油化するための第2循環油が循環している。図1に示すように、第2循環路50は、第2分解油タンク51と、第2循環ポンプ52と、第2冷却器53と、これらを接続して循環路をなす第2配管部54と、を有する。第2配管部54は、例えば炭素鋼からなり、第2導出配管40と接続され第2循環油が下方へ向かって流通する第2接続配管54aを有する。第2接続配管34aは、鉛直方向に延びて形成される。第2導出配管40から第2接続配管54aへ流入した分解ガスは、第2循環油により冷却されて一部が凝縮する。第2分解油タンク51は、第2接続配管54aで凝縮した分解油を貯留する。本実施形態においては、分解油がそのまま第2循環油として用いられる。第2冷却器53は、第2接続配管54aを流通する第2循環油が第2の所定温度となるように第2循環油を冷却する。第2の所定温度は、第1の所定温度より低い範囲で任意に設定することができ、例えば40℃以上60℃以下とすることができる。本実施形態においては、第2の所定温度は50℃であり、第2分解油タンク51で軽油、灯油等の軽質油が回収される。第2循環路50で凝縮されなかった分解ガスは、オフガスとして、第3導出配管60を通じてオフガス処理部70へ導出される。
【0022】
オフガス処理部70は、第3導出配管60により導出されたオフガスを処理する。本実施形態においては、図1に示すように、オフガスは、導出ファン61によりオフガス処理部70のバーナ62へ導出される。また、バーナ62へは、希釈ファン62により希釈用空気が送出される。
【0023】
以上のように構成された油化装置1では、溶融プラスチック貯留槽からプラスチック投入装置13へ投入されたプラスチックは、軸方向他端側へ移動しながら回転及び加熱される筒部11内で分解ガスと残渣に分解される。分解ガス及び残渣が排出筐体18へ進入した後、分解ガスは第1導出配管20から第1循環路30へ、残渣は排出配管80から残渣回収部90へ導出される。第1循環路30側へ進入した分解ガスは、第1循環路30と第2循環路50の二段階で凝縮され分解油として回収される。ポリエチレンテレフタレートのような有機酸を生成する物質を取り扱う場合、消石灰のようなアルカリ性材料を混合させることが好ましい。この場合、有機酸分がアルカリ性材料で中和されて固体の塩となり、ベンゼンガス等の熱分解ガスが得られる。固体の塩は、残渣として残渣回収部90で回収され、熱分解ガスは第2循環路50で冷却されて分解油として回収される。
【0024】
本実施形態の油化装置1では、第1導出配管20が水平方向に対して第1接続配管34a側へ向かって下るよう傾斜しているので、第1循環油の第1導出配管20側への流入を抑制することができる。また、第1接続配管34aにおける第1導出配管20との接続部分が、鉛直方向に対して下方へ向かって第1導出配管20と反対側に傾斜しているので、これによっても、第1循環油の第1導出配管20側への流入を抑制することができる。
【0025】
また、第1導出配管20を加熱する加熱ヒータ2を設け、第1導出配管20の内面温度を350℃に保つようにしたので、第1導出配管20の内面に焦げ付き(コーキング)が生じたり、液状物が付着することに起因する配管の詰まりを防止することができる。すなわち、熱分解ガス起因のプロセス配管の詰まりを防止することができる。具体的に、本実施形態の油化装置1により、重質系ガスによる詰まり対策が達成される。尚、軽質系ガスによる詰まりは一般には生じない。本実施形態においては、第1導出配管20が直線状に形成されているので、排出筐体18と第1接続配管34aを比較的短い距離で結ぶことができ、配管の詰まりを防止するための対策が必要とされる部分が比較的小さくなっている。第1導出配管20の内面温度が過剰に高い場合、内面に分解ガス中の成分の焦げ付きが生じる。具体的に、焦げ付きが生じる温度は、380℃を上回る温度である。配管の内面に焦げ付きが生じると、焦げ付き部分の内面の温度は、配管内面の温度よりも低いことから、焦げ付き部分の内面に分解ガス中の成分の液状物が付着する。焦げ付き部分の内面に液状物が付着すると、液状物の内面に分解ガス中の塵埃成分が付着し、配管の詰まりに至る。一方、第1導出配管20が比較的低い場合、内面に分解ガス中の成分の液状物が付着する。具体的に、液状物の付着が生じる温度は、320℃を下回る温度である。配管の内面に液状物が付着すると、液状物の内面に分解ガス中の塵埃成分が付着し、配管の詰まりに至る。本実施形態においては、排出筐体18及び排出配管80も加熱ヒータ2により350℃に保たれており、これらの内面に焦げ付きが生じたり、液状物が付着することも防止されている。
【0026】
尚、前記実施形態においては、第1接続配管34aを鉛直方向に対して傾斜させるものを示したが、鉛直方向に延びるよう形成されていても、第1導出配管20の第1接続配管34aとの接続部分40aが水平方向に対して第1接続配管34a側へ向かって下るよう傾斜していれば、第1循環油の第1導出配管20側への流入を抑制することができる。また、第1接続配管34aが全区間にわたって第1接続配管34a側へ向かって下るよう傾斜しているものを示したが、少なくとも第1接続配管34aとの接続部分が傾斜していればよい。
【0027】
また、前記実施形態においては、第1循環路30と第2循環路50の二段階で分解油を回収するものを示したが、三段階以上で分解油を回収するようにしてもよいし、一段階で回収するものであってもよい。さらに、前記実施形態においては、加熱ヒータ2を設けたものを示したが、加熱ヒータ2を省く構成とすることもできる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0029】
1 油化装置
2 加熱ヒータ
3 排出機構
10 熱分解炉
20 第1導出配管
30 第1循環路
34a 第1接続配管
図1
図2
図3
図4