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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183807
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】作業システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20231221BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20231221BHJP
   G06Q 10/083 20230101ALI20231221BHJP
【FI】
G05D1/02 P
B65G1/137 A
G06Q10/08 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097545
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】東條 惇
(72)【発明者】
【氏名】丸山 俊
(72)【発明者】
【氏名】野口 敬悟
【テーマコード(参考)】
3F522
5H301
5L049
【Fターム(参考)】
3F522AA02
3F522BB01
3F522BB24
3F522BB35
3F522CC05
3F522CC06
3F522FF05
3F522FF11
3F522GG03
3F522GG05
3F522GG22
3F522GG25
3F522GG46
3F522JJ02
3F522JJ04
3F522KK05
5H301AA02
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG16
5H301KK04
5H301KK19
5H301QQ04
5L049AA16
5L049CC51
(57)【要約】
【課題】 移動を伴う作業をバッテリに蓄えられた電気によって行う複数の移動作業機を含む作業システムの実用性を向上させる。
【解決手段】 一時期に行うべき複数の作業を、複数の移動作業機に割り当てるとともに、その割り当てる作業のうちのいくつかのものを、特定作業(入庫作業)と認定し、複数の移動作業機の各々のバッテリ残量EBATの総和である総バッテリ残量ESUMに応じて、その特定作業における移動作業機の移動の距離である移動距離(遠距離収容エリア,中距離収容エリア,近距離収容エリア)を設定する(S15)。複数の移動作業機の全体のバッテリ残量に基づくことにより、簡便に、複数の移動作業機全体の作業効率を落とすことなく、各移動作業機のバッテリ残量が0若しくは0に近い電欠状態となること回避することができる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、バッテリを有し、そのバッテリに蓄えられた電気によって、移動を伴う作業を行う複数の移動作業機と、
それら複数の移動作業機の各々のバッテリに残る電気量であるバッテリ残量を把握しつつ、それら各々のオペレーションを管理するコントローラと
を備えた作業システムであって、
前記コントローラが、
一時期に行うべき複数の作業を、前記複数の移動作業機に割り当てるとともに、その割り当てる作業のうちのいくつかのものを、特定作業と認定し、複数の移動作業機の各々のバッテリ残量の総和である総バッテリ残量に応じて、その特定作業における移動作業機の移動の距離である移動距離を設定するように構成された作業システム。
【請求項2】
前記コントローラが、
総バッテリ残量が設定残量未満である場合に、設定残量以上である場合に比較して、前記特定作業における移動距離を短く設定するように構成された請求項1に記載の作業システム。
【請求項3】
前記コントローラが、
総バッテリ残量が少ないほど、前記特定作業における移動距離をより短く設定するように構成された請求項2に記載の作業システム。
【請求項4】
前記コントローラが、
バッテリ残量のより少ない移動作業機に、優先して前記特定作業を割り当てるように構成された請求項2に記載の作業システム。
【請求項5】
前記コントローラが、
前記特定作業を割り当てる移動作業機が複数である場合には、バッテリ残量が少ない移動作業機ほど、その移動作業機に割り当てる前記特定作業における移動距離を短く設定する請求項2に記載の作業システム。
【請求項6】
前記コントローラが、
複数の移動作業機のうちのある移動作業機のバッテリ残量が設定個別残量未満である場合、総バッテリ残量の如何に拘わらず、その移動作業機に前記特定作業を割り当て、その特定作業における移動距離を短く設定するように構成された請求項2に記載の作業システム。
【請求項7】
前記コントローラが、
総バッテリ残量が前記設定残量以上であっても、その設定残量未満となることが予測される場合に、前記特定作業における移動距離を短く設定するように構成された請求項2に記載の作業システム。
【請求項8】
前記コントローラが、
前記複数の移動作業機のうちのある移動作業機のバッテリ残量が限界残量未満となっている場合には、総バッテリ残量の如何に拘わらず、その移動作業機には作業を割り当てないように構成された請求項1に記載の作業システム。
【請求項9】
前記複数の移動作業機の各々が、製品を搬送する搬送機であり、当該作業システムが、倉庫内において収容場所と入出荷場所との間を前記搬送機に製品を搬送させるための倉庫内製品搬送システムであり、前記搬送機が行う作業には、入出荷場所から収容場所まで製品を搬送する作業である入庫作業と、収容場所から入出荷場所まで製品を搬送する作業である出庫作業とが含まれる請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の作業システム。
【請求項10】
前記コントローラが、
入庫作業と出庫作業とのうちの入庫作業だけしか、前記特定作業として認定しないように構成され、かつ、前記特定作業と認定された入庫作業における収容場所を設定することで、その入庫作業における移動距離を設定するように構成された請求項9に記載の作業システム。
【請求項11】
前記コントローラが、
入庫作業と出庫作業とを一時期に行うべき場合には、出庫作業の量に応じた数以上の移動作業機を前記出庫作業に割り当てるように構成された請求項9に記載の作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動を伴う作業をバッテリに蓄えられた電気によって行う複数の移動作業機を含む作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両,ロボット等、移動を伴う作業を行う移動作業機は、さまざまな産業の分野において利用されている。バッテリに蓄えられた電気によって作業を行う移動作業機を複数備えた作業システムでは、各移動作業機のバッテリの状態を把握することが有意義である。例えば、下記特許文献に記載された技術では、それぞれが移動作業機である複数の車両の各々のバッテリの状態、詳しくは、バッテリの劣化状態に応じて、その各々が行う作業を割り当てている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-86570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載されているように、複数の移動作業機を含む作業システムにおいて、各移動作業機のバッテリの状態を把握して、それら移動作業機に割り当てる作業を決定することは、その作業システムの実用性を向上させるために有効である。一方で、バッテリの状態に応じた作業の決定に関しては、充分に改良の余地が残されており、何らかの改良を施すことで、作業システムの実用性をより高くすることが可能である。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、移動を伴う作業をバッテリに蓄えられた電気によって行う複数の移動作業機を含む作業システムにおいて、当該システムの実用性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の作業システムは、
それぞれが、バッテリを有し、そのバッテリに蓄えられた電気によって、移動を伴う作業を行う複数の移動作業機と、
それら複数の移動作業機の各々のバッテリに残る電気量であるバッテリ残量を把握しつつ、それら各々のオペレーションを管理するコントローラと
を備えた作業システムであって、
前記コントローラが、
一時期に行うべき複数の作業を、前記複数の移動作業機に割り当てるとともに、その割り当てる作業のうちのいくつかのものを、特定作業と認定し、複数の移動作業機の各々のバッテリ残量の総和である総バッテリ残量に応じて、その特定作業における移動作業機の移動の距離である移動距離を設定するように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の作業システムによれば、複数の移動作業機の各々のバッテリ残量ではなく、上記総バッテリ残量に基づいて、移動作業機に割り当てられる作業における当該移動作業機の移動距離が設定される。端的に言えば、複数の移動作業機全体のバッテリ残量に基づいて、簡便に、複数の移動作業機全体の電力消費量がコントロールされることになる。したがって、例えば、複数の移動作業機が行うべき作業が多い時間帯(以下、「繁忙時間帯」と呼ぶ場合がある)において、特定作業における移動作業機の移動距離を短く設定することによって、複数の移動作業機全体の作業効率を落とすことなく、各移動作業機のバッテリ残量が0若しくは0に近い状態となる事態(以下、「電欠」と呼ぶ場合がある)を回避することが可能となる。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0008】
(1)それぞれが、バッテリを有し、そのバッテリに蓄えられた電気によって、移動を伴う作業を行う複数の移動作業機と、
それら複数の移動作業機の各々のバッテリに残る電気量であるバッテリ残量を把握しつつ、それら各々のオペレーションを管理するコントローラと
を備えた作業システムであって、
前記コントローラが、
一時期に行うべき複数の作業を、前記複数の移動作業機に割り当てるとともに、その割り当てる作業のうちのいくつかのものを、特定作業と認定し、複数の移動作業機の各々のバッテリ残量の総和である総バッテリ残量に応じて、その特定作業における移動作業機の移動の距離である移動距離を設定するように構成された作業システム。
【0009】
本態様は、本発明の基本となる態様である。先に説明したように、本態様の作業システムによれば、複数の移動作業機の各々のバッテリ残量を合計した総バッテリ残量に基づいて、特定作業が割り当てられる移動作業機の移動距離が設定される。本態様における「特定作業」は、移動距離を変更可能に設定できる作業と考えることができる。例えば、総バッテリ残量が多い場合には、特定作業の移動距離を長く、逆に、総バッテリ残量が少ない場合には、特定作業の移動距離を短く設定することにより、簡便に、複数の移動作業機全体の作業効率を大きく落とすことなく、移動作業機の電欠を回避することが可能となる。
【0010】
本態様における「移動作業機」は、特に限定されるものではない。詳しく言えば、例えば、典型的には、物を移動,運搬等する車両、工事,検査等の種々の作業を行う車両等が該当する。また、車両と呼ぶことのできない移動体、例えば、ドローン等であってもよい。移動作業機は、人間が運転,操作するものであっても、自動で運転,操作するものであってもよい。つまり、ロボットのようなものであってもよいのである。また、移動作動機が移動する場所についても特に限定されず、屋内であっても、屋外であってもよい。
【0011】
一般に、作業システムは、移動作業機に充電するための充電設備を含んで構成される。本態様は、作業効率を落とすことなく各移動作業機の電欠を回避するという目的からすれば、充電のために移動作業機が接続される充電ポートの数が少ない等、複数の移動作業機のすべてが同時に充電することができない充電設備を備えた作業システムに対して特に有意義である。ちなみに、充電設備は、それぞれが1の充電ポートを有する複数の充電器によって構成されるものであってもよく、複数の充電ポートを有する1の充電器によって構成されるものであってもよい。
【0012】
「コントローラ」は、移動作業機のオペレーションを管理するものであるため、例えば、移動作業機が有する端末と各種情報,各種指示を通信可能な通信機を有するものであることが望ましい。また、コントローラは、移動作業機の作業計画を取得し、若しくは、作成する機能を有するものであってよく、具体的には、コンピュータを主体的な構成要素とするものであってもよい。
【0013】
(2)前記コントローラが、
総バッテリ残量が設定残量未満である場合に、設定残量以上である場合に比較して、前記特定作業における移動距離を短く設定するように構成された( 1)項に記載の作業システム。
【0014】
本態様は、総バッテリ残量に基づいて特定作業における移動距離を設定するための典型的な態様である。本態様によれば、総バッテリ残量が多いときには、複数の移動作業機全体として、比較的大きな電力消費の作業を実行させることができ、逆に、総バッテリ残量が少ないときには、複数の移動作業機全体の電力消費を抑えることが可能となる。ちなみに、「設定残量」は、1の作業によって消費される電力等に応じて、適切に設定すればよい。なお、本態様と類似する態様として、総バッテリ残量が設定残量以上である場合に、設定残量未満である場合に比較して、特定作業における移動距離を長く設定するような態様を採用することも可能である。
【0015】
(3)前記コントローラが、
総バッテリ残量が少ないほど、前記特定作業における移動距離をより短く設定するように構成された( 2)項に記載の作業システム。
【0016】
本態様には、総バッテリ残量に応じて、特定作業における移動距離を、連続的に増減する態様も、段階的に増減する態様も含まれる。後者は、例えば、上記設定残量として、複数の設定残量を設定することによって、特定作業における移動距離を段階的に設定するような態様である。なお、本態様は、逆の見方をすれば、総バッテリ残量が多いほど、特定作業における移動距離をより長く設定する態様と考えることができる。
【0017】
(4)前記コントローラが、
バッテリ残量のより少ない移動作業機に、優先して前記特定作業を割り当てるように構成された( 2)項または( 3)項に記載の作業システム。
【0018】
本態様は、特定作業を割り当てる移動作業機の決定に関する態様である。本態様によれば、移動作業機の電欠のリスクをより効果的に軽減できることになる。
【0019】
(5)前記コントローラが、
前記特定作業を割り当てる移動作業機が複数である場合には、バッテリ残量が少ない移動作業機ほど、その移動作業機に割り当てる前記特定作業における移動距離を短く設定する( 2)項ないし( 4)項のいずれか1つに記載の作業システム。
【0020】
本態様は、個々の特定作業における移動距離の設定に関する態様である。本態様によれば、移動作業機の電欠のリスクをより効果的に軽減できることになる。
【0021】
(6)前記コントローラが、
複数の移動作業機のうちのある移動作業機のバッテリ残量が設定個別残量未満である場合、総バッテリ残量の如何に拘わらず、その移動作業機に前記特定作業を割り当て、その特定作業における移動距離を短く設定するように構成された( 2)項ないし( 5)項のいずれか1つに記載の作業システム。
【0022】
本態様は、個々の移動作業機のバッテリ残量を考慮した特例に関する態様である。1の移動作業機のバッテリ残量が相当に少ない場合には、その移動作業機が電欠を起こす可能性が高い。そのことに鑑み、本態様では、例えば、総バッテリ残量が上記設定残量以上であっても、その移動作業機に特定作業を割り当ててその作業における移動距離を短く設定されることになる。
【0023】
(7)前記コントローラが、
総バッテリ残量が前記設定残量以上であっても、その設定残量未満となることが予測される場合に、前記特定作業における移動距離を短く設定するように構成された( 2)項ないし( 6)項のいずれか1つに記載の作業システム。
【0024】
先に説明したように、例えば、繁忙時間帯が存在し、その繁忙時間帯が比較的長く続くような場合では、移動作業機が電欠となる可能性が高くなる。本態様は、そのようなことに配慮した態様であり、本態様によれば、例えば、繁忙時間帯の前から特定作業における移動距離を短く設定することで、繁忙時間帯における電欠のリスクを防止若しくは軽減することが可能となる。
【0025】
(8)前記コントローラが、
前記複数の移動作業機のうちのある移動作業機のバッテリ残量が限界残量未満となっている場合には、総バッテリ残量の如何に拘わらず、その移動作業機には作業を割り当てないように構成された( 1)項ないし( 7)項のいずれか1つに記載の作業システム。
【0026】
本態様によれば、例えば、電欠の可能性が高まった移動作業機に対して、電欠をより確実に防止できることになる。
【0027】
(9)前記複数の移動作業機の各々が、製品を搬送する搬送機であり、当該作業システムが、倉庫内において収容場所と入出荷場所との間を前記搬送機に製品を搬送させるための倉庫内製品搬送システムであり、前記搬送機が行う作業には、入出荷場所から収容場所まで製品を搬送する作業である入庫作業と、収容場所から入出荷場所まで製品を搬送する作業である出庫作業とが含まれる( 1)項ないし( 8)項のいずれか1つに記載の作業システム。
【0028】
本態様は、本発明の作業システムの具体的な適用に関する態様である。本発明の作業システムは、上記倉庫内製品搬送システムにおいて好適に採用することが可能である。なお、本態様における「入出荷場所」は、倉庫に荷受けするための入荷場所と、倉庫から荷出しするための出荷場所とを総合した概念であり、入荷場所と出荷場所とが異なる場合等、入出荷場所が複数存在してもよい。本態様以下の態様における「製品」は、製造された物だけを意味する概念ではなく、売買される商品や、製造工場における仕掛品等をも含む概念である。したがって、「製品等」と呼ぶこともできる。
【0029】
(10)前記コントローラが、
入庫作業と出庫作業とのうちの入庫作業だけしか、前記特定作業として認定しないように構成され、かつ、前記特定作業と認定された入庫作業における収容場所を設定することで、その入庫作業における移動距離を設定するように構成された( 9)項に記載の作業システム。
【0030】
出庫作業が、既に収容場所が確定している製品を搬送するのに対して、入庫作業では、搬送する製品の収容場所に対する自由度は高い。本態様は、そのような実情に鑑みた態様であり、本態様によれば、例えば、入庫作業だけを特定作業に認定し、その特定作業とされた入庫作業における移動距離が、総バッテリ残量に応じて設定されることになる。
【0031】
(11)前記コントローラが、
入庫作業と出庫作業とを一時期に行うべき場合には、出庫作業の量に応じた数以上の移動作業機を前記出庫作業に割り当てるように構成された( 9)項または(10)項に記載の作業システム。
【0032】
出庫作業は、入庫作業に比較して、時間的な制約が大きい。具体的に言えば、トラック等の都合等で、製品を出荷する時刻がタイトに設定されている場合があり、その場合、出庫作業をある程度迅速に実行することが求められる。本態様は、そのような事情を考慮した態様である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施例の作業システムである物流倉庫内製品搬送システムが備える移動作業機としての搬送ロボットを示す斜視図である。
図2】搬送ロボットが稼働する物流倉庫を示す模式図である。
図3】物流倉庫内製品搬送システムにおいて搬送ロボットのバッテリ残量を管理するために実行される充電管理プログラムのフローチャートである。
図4】物流倉庫内製品搬送システムにおいて搬送ロボットの作業の管理に用いられる入出荷製品等リストおよび収容製品等リストである。
図5】物流倉庫内製品搬送システムにおける時間帯毎の作業の分布を示す作業分布グラフである。
図6】物流倉庫内製品搬送システムにおいて搬送ロボットへの作業の割り当てのために行われる割当処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、請求可能発明を実施するための形態として、請求可能発明の実施例である作業システムを、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【実施例0035】
[A]搬送ロボット
実施例の作業システムは、製品,商品,仕掛品,貯蔵品等(以下、「製品等」という場合がある)を運搬する移動作業機としての搬送ロボット(「搬送機」の一種である)を複数備えた物流倉庫内製品搬送システム(以下、「搬送システム」と略す場合がある)であり、図1は、その搬送ロボットを示している。搬送ロボット10は、短い円筒形状のベース12を有している。図の右下側が前、左上側が後ろであり、ベース12は、図では表されていないが、左右に1対の駆動輪と、前後に1対の転舵輪を有している。ベース12には、左右1対のポスト14が立設されており、1対のポスト14の間には、それらポスト14に沿って昇降可能なテーブル16が配設されている。テーブル16上には、前後に移動可能なスライドアーム18が配設されている。スライドアーム18の前端には、クランプベース20と1対の把持プレート22とを有するクランプ24が配設されている。クランプ24は、左右に移動可能とされており、1対の把持プレート22は、それらの間で、概して直方体の製品若しくは商品(以下、「製品等」という場合がある)を把持すべく、左右に開閉するようにされている。搬送ロボット10は、前後に移動可能とされるとともに、その場で旋回可能とされている。
【0036】
搬送ロボット10は、電動で作動するため、ベース12内にバッテリ26を有している。つまり、搬送ロボット10は、バッテリ26に蓄えられた電気エネルギによって移動して作業を行う。また、搬送ロボット10は、自動で、移動し、作業を行うため、クランプ24の上部に、前方を認識するためのカメラ28およびLiDAR(ライダ)30が配設されており、1対のポスト14の一方の上端に、後に説明するビーコンからの信号を受信するための受信機32が配置されている。さらに、後に説明する管制装置との通信を行うためのアンテナ34が、1対のポスト14の他方の上端に、設置されている。なお、搬送ロボット10は、自動で走行し、自動で作業を行うが、それらの手法については、既に公知の手法を任意に採用すればよく、本搬送システムにおいて採用されている手法については、ここでの説明を省略する。なお、搬送ロボット10は、自身の制御を行うために、コンピュータを主体とする制御端末36を有している。
【0037】
[B]搬送ロボットが稼働する物流倉庫
物流倉庫は、図2に模式的に示すように、内部に、棚50が複数列に並んでいる。なお、以下の説明では、図の右上端に示すように、図の上側を北側、下側を南側、左側を西側、右側を東側と呼ぶことにする。
【0038】
具体的に言えば、倉庫内には、最も北側に東西に延びる通路α(図では、通路の両端にαの符号が示されている。他の通路も同様とする。),南北の中央に東西に延びる通路β,最も南側に東西に延びる2つの通路である通路γおよび通路δが設けられており、また、通路αと通路βとを繋いで南北に延びる複数の通路である通路a~通路l,通路βと通路γとを繋いで南北に延びる4つの通路である通路m~通路p,通路βと通路δとを繋いで南北に延びる4つの通路である通路q~通路tが設けられている。
【0039】
棚50は、通路a~通路tの各々の両側に複数個並んでいる。詳しく言えば、通路a~通路lの各々の両側には、南北に13個並んでおり、通路m~通路tの各々の両側には、南北に14個並んでいる。見方を変えて言えば、通路a~通路tの互いに隣り合うものに挟まれた棚50は互いに背中合わせに配設されている。以下、棚50の列(以下、「棚列」という場合がある)を、通路a~通路tに関連付けて、通路の西側にあるものを(a~t)W、通路の東側にあるものを(a~t)Eと呼ぶこととし、各列の棚50については、図の左端の棚50に示すように、北側から順に、棚列(a~l)W,(a~l)Eに属するものは1~13と、棚列(m~t)W,(m~t)Eに属するものは1~14と、それぞれ番号付けることとする。したがって、例えば、図の☆で示す棚50は、棚番号で表せば、eW4である。また、各棚50は、図の右下端に示すように、4段とされており、4つの収納スペースを有している。各段、すなわち、各収納スペースは、上から順にA~Dの番号付けがされている。したがって、図の☆で示す棚番号eW4の棚50の上から2段目の収納スペースは、eW4Bと表すこととする。各収納スペースには、1若しくは複数種類の製品等が、1若しくは複数個ずつ収納される。なお、各棚50は、製品等が収容される収容場所と考えることができる。
【0040】
搬送ロボット10は、倉庫内において、複数、走行する。図では、10台の搬送ロボット10が示されており、それらには、ロボットNo.として、R1~R10の番号付けがされている。
【0041】
倉庫内の東西方向の中央の南側のヤードは、入出荷場所としての入出荷ヤード52であり、倉庫に出入りするトラック54に対して、製品等を荷受け,荷積みする。各搬送ロボット10は、入庫作業,出庫作業を行う。入庫作業では、搬送ロボット10は、トラック54から製品等を1個ずつ受け取って、その受け取った製品等を、指定された棚50まで搬送して、その棚50の指定された収納スペースに収納する。出庫作業では、搬送ロボット10は、指定された棚50の指定された収納スペースに収納されている製品等を、1個ずつ取り出してはトラック54まで搬送し、そのトラック54に渡す。
【0042】
本搬送システムでは、棚50の設置場所は3つに区分されている。詳しく言えば、当該倉庫内の棚50の設置場所は、入庫作業,出庫作業における入出荷ヤード52との間での搬送ロボット10の移動距離に基づいて、3つの収容エリアに区分けされている。その3つの収容エリアは、a)搬送ロボット10の移動距離の短い近距離収容エリア,b)搬送ロボット10の移動距離が長い遠距離収容エリア,c)搬送ロボット10の移動距離が、近距離収容エリアと遠距離収容エリアとの中間と考えることができる中距離収容エリアである。より具体的に言えば、近距離収容エリアに設置されている棚50は、棚列(e~h)W,(e~h)Eに属しており、図では、ハッチングが施されて示されている。中距離収容エリアに設置されている棚50は、棚列(c~d)W,(c~d)E,(i~j)W,(i~j)E,(o~p)W,(o~p)E,(q~r)W,(q~r)Eに属しており、図では、網掛けが施されて示されている。遠距離収容エリアに設置されている棚50は、棚列(a~b)W,(a~b)E,(k~l)W,(k~l)E,(m~n)W,(m~n)E,(s~t)W,(s~t)Eに属しており、図では、ハッチングも網掛けも施されずに示されている。
【0043】
入出荷ヤード52には、搬送ロボット10の待機スペース56が設けられている。待機スペース56の数は、搬送ロボット10の数だけ設けられており、各搬送ロボット10は、空いている待機スペース56にて、待機する。また、入出荷ヤード52には、充電設備58が設けられている。充電設備58は、1つの充電器60と、複数の充電ポート62とを有している。本搬送システムでは、図に示すように、充電設備58は、搬送ロボット10の数より少ない数の充電ポート62しか有していない。具体的には、3つの充電ポート62しか有しておらず、その3つの充電ポート62は、北側の3つの待機スペース56に対して設けられている。自身のバッテリ26に充電する際には、搬送ロボット10は、その3つの待機スペース56のいずれかに位置する必要がある。なお、充電ポート62は、a,b,cと符号付けられており、以下の説明において、それらを区別する場合には、充電ポート62a,62,62cと呼ぶ場合がある。
【0044】
倉庫の天井には、四隅の各々に、前述のビーコン64が設置されている。それらビーコン64からの信号を受信することで、搬送ロボット10は、自身の倉庫内の位置を、随時把握する。
【0045】
搬送ロボット10の作業の管理,バッテリ26の残量(以下、「バッテリ残量」という場合がある)およびバッテリ26への充電の管理は、コンピュータおよび通信機を主体として構成された管制装置70によって行われる。各搬送ロボット10は、管制装置70からの作業指示等を受信し、その作業指示に従って、作業等を行う。つまり、管制装置70は、倉庫外の管制棟に配置されており、搬送ロボット10のオペレーション(作業と充電との両方を含む概念である)の管理を行うコントローラとして機能する。
【0046】
[C]管制装置の機能
管制装置70は、各搬送ロボット10のバッテリ26への充電を管理するための充電管理機能、および、各搬送ロボット10の作業管理を行うための作業管理機能を備えている。以下に、それらの機能について詳しく説明する。
【0047】
i)充電管理機能
各搬送ロボット10は、自身が備えるバッテリ26に残る電気量であるバッテリ残量EBAT(以下、現時点で残る電気量の満充電量EFULLに対する百分率で表すこととする)を把握し、把握したバッテリ残量EBATについての情報を、管制装置70に送信する。管制装置70は、その送信された情報に基づいて、各搬送ロボット10のバッテリ残量EBATを把握する。
【0048】
先に説明したように、本搬送システムでは、搬送ロボット10が10台あるのに対して、充電ポート62は、3つしか設けられていない。そこで、管制装置70は、3つの充電ポート62をうまく活用しつつ、把握している各搬送ロボット10のバッテリ残量EBATに基づいて、各搬送ロボット10の電欠をできるだけ回避しつつ、各搬送ロボット10ができるだけ満遍なく充電されるように、各搬送ロボット10に対する充電の管理を行う。
【0049】
後に詳しく説明するが、管制装置70は、所定のタイミングで、搬送ロボット10に入庫作業,出庫作業を割り当てる。管制装置70は、入庫作業,出庫作業のいずれも割り当てられていない搬送ロボット10を、待機ロボットとして扱う。また、管制装置70は、充電を行っている最中の搬送ロボット10、および、充電を行っていない充電ポート62(以下、「空ポート」という場合がある)の存在を認識している。
【0050】
搬送ロボット10は、管制装置70からの充電指示によって、空ポートとなっている充電ポート62に移動し、その充電ポート62において充電を受ける。搬送ロボット10は、自身のバッテリ26が満充電状態となったときに、管制装置70からの指示を待たずに、充電を受けている充電ポート62から離脱する。また、自身のバッテリ26が満充電状態となっていなくても、管制装置70からの充電終了指示によって、充電を受けている充電ポート62から離脱する。
【0051】
管制装置70は、自身のコンピュータが、図3にフローチャートを示す充電管理プログラムを、所定の時間ピッチ(例えば、1分)で繰り返し実行することによって、充電管理を行う。このプログラムに従う処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様である。)において、全ての搬送ロボット10のバッテリ残量EBATが認識される。次のS2において、待機ロボットが存在するか否かが判定され、待機ロボットが存在しない場合には、当該プログラムの1回の実行が終了する。
【0052】
S2において待機ロボットが存在すると判定された場合、S3において、待機ロボットのうちの最もバッテリ残量EBATの少ない搬送ロボット10が、待機最少残量ロボットSとして特定され、その待機最少残量ロボットSのバッテリ残量EBATが、バッテリ残量EBAT-Sとして特定される。続くS4において、空ポートがあるか否かが判定され、空ポートがある場合には、S5において、待機最少残量ロボットSに対して、充電を行うべき旨の指示である充電指示が発せられる。
【0053】
S4において空ポートが存在しないと判定された場合には、S6において、充電中である搬送ロボット10のうちの最もバッテリ残量EBATの多いものが、充電中最多残量ロボットCとして特定され、その充電中最多残量ロボットCのバッテリ残量EBATが、バッテリ残量EBAT-Cとして特定される。次のS7,S8において、それぞれ、充電中最多残量ロボットCのバッテリ残量EBAT-Cが基準残量ER以上か否か、待機最少残量ロボットSのバッテリ残量EBAT-Sが基準残量ER未満か否かが判定される。充電中最多残量ロボットCのバッテリ残量EBAT-Cが基準残量ER以上であり、かつ、待機最少残量ロボットSのバッテリ残量EBAT-Sが基準残量ER未満であるときに、S9において、充電中最多残量ロボットCに対して、充電を終了する旨の指示である充電終了指示が発せられる。充電中最多残量ロボットCのバッテリ残量EBAT-Cが基準残量ER未満であるとき、若しくは、充電中最多残量ロボットCのバッテリ残量EBAT-Cが基準残量ER以上であっても待機最少残量ロボットSのバッテリ残量EBAT-Sが基準残量ER以上であるときには、当該プログラムの1回の実行が終了する。ちなみに、基準残量ERは、それを下回ると充電を行った方が望ましいと考えられる値、言い換えれば、それ以上であれば、敢えて充電を行う必要はないと考えられる値に設定されている。本搬送システムでは、基準残量ERは、例えば、70%に設定されている。
【0054】
本搬送システムでは、以上のような処理によって、搬送ロボット10の数よりも少ない数の充電ポート62しか有していない充電設備58であっても、全ての搬送ロボット10が満遍なく充電されることになる。
【0055】
ii)作業管理機能
搬送ロボット10による作業は、先に説明した入庫作業および出庫作業であり、入出荷ヤード52に入って来る予定のトラック54に関連して、そのトラック54から降ろす予定の製品等、若しくは、そのトラック54に積み込む予定の製品等について、図4に示すような入出荷製品等リストが作成されている。詳しく説明すれば、この入出荷製品等リストは、いわゆる作業計画であり、それには、入荷若しくは出荷する製品等名,その製品等の数、入荷若しくは出荷する時刻が記載されている。トラック54に対する製品等の入出荷の予定は、ある程度変化することが予想されるため、上記入出荷製品等リストについてのデータは、図示を省略する入出荷管理装置によって、所定の時間間隔(例えば、1時間)ごとに、所定の時間分(例えば、1日分)作成されて、管制装置70に送られる。
【0056】
管制装置70は、各搬送ロボット10による1つの入庫作業若しくは出庫作業が終了した都度、その終了した作業内容についてのデータを、入出荷管理装置に送る。入出荷管理装置は、そのデータに基づいて、入出荷製品等リストを更新し、その更新した入出荷製品等についてのデータを、上記所定のタイミングで、管制装置70に送る。管制装置70は、そのデータに基づく入出荷製品等リストを、最新の入出荷製品等リストとして、保持している。
【0057】
一方で、管制装置70は、当該倉庫内に収容されている収容製品等について、図4に示すような収容製品等リストを保持している。詳しく説明すれば、そのリストには、棚50の収容スペースごとに、その収容スペースに収容されている製品等の名称およびその製品等の数量が示されている。ちなみに、図4のリストにおいて、製品等の名称および数量が記載されてない収容スペースは、製品等が収容されていない空スペースであることを示している。管制装置70は、いずれかの収容スペースに製品等が収容されたとき若しくはいずれかの収容スペースから製品等が取り出されたときに、リストにおけるその収容スペースについての項目を更新する。
【0058】
本搬送システムでは、1日24時間を、1時間毎の時間帯に分けて、搬送ロボット10の作業を管理を行っている。そのため、管制装置70は、各時間帯の最初の時点で、上述の入出荷製品等リストに基づいて、その時点からの所定の時間(例えば、1日)内における各時間帯の作業負荷、詳しく言えば、全ての搬送ロボット10の作業量の合計(以下、「時間帯毎総作業量Q」という場合がある)を認定する。具体的に言えば、時間帯毎総作業量Qは、図5の作業量分布グラフに示すように認定される。グラフの横軸は、時刻、すなわち、現時点からの時間を示し、縦軸は、作業量を示している。図5のグラフは、00:00から翌日の00:00までの時間帯毎総作業量Qの推移を表している。
【0059】
一方で、搬送ロボット10は、入庫作業であれ出庫作業であれ、1つの作業を行う度に電力を消費し、その搬送ロボット10のバッテリ残量EBATは減少する。1の搬送ロボット10による1つの作業による消費電力は、入出荷ヤード52と、製品等が収容されている若しくは収容される収容スペースが属する棚50の場所(以下、「収容場所」という場合がある)との距離、すなわち、搬送ロボット10の移動距離によって異なるため、便宜的に、1の作業における標準的な移動距離(以下、「標準移動距離」という場合がある)が設定され、その標準移動距離に基づいて、1の作業による消費電力が設定されている。管制装置70は、1の作業による消費電力に、時間帯毎総作業量Qを乗ずることによって、時間帯毎の全搬送ロボット10の消費電力を推定する。
【0060】
図5のグラフにおける、07:00~11:00,14:00~18:00の時間帯は、時間帯毎総作業量Qが、基準作業量QRを超えている時間帯、すなわち、繁忙時間帯である。各搬送ロボット10のバッテリ残量の合計を総バッテリ残量ESUMと定義すれば、その繁忙時間帯では、総バッテリ残量の減少が大きく、また、搬送ロボット10が充電する時間を充分にはとれない。したがって、繁忙時間帯では、特に、繁忙時間帯が続く場合では、いずれかの搬送ロボット10が電欠状態となる可能性が高くなる。そこで、管制装置70は、時間帯毎総作業量Qに基づいて、繁忙時間帯を把握するようにされている。
【0061】
iii)割当処理
作業管理機能における中心的な機能は、搬送ロボット10に作業を割り当てるための割当処理を実行することにある。以下に、その割当処理について、図6に示す割当処理フローチャートを参照しつつ、詳しく説明する。なお、管制装置70は、1の時間帯が始まるときに、割当処理を実行し、その時間帯の作業を、一時期に行われる作業として、いくつかの搬送ロボット10に割り当てる。
【0062】
管制装置70は、まず、S11において、バッテリ残量関連処理を行う。このバッテリ残量関連処理では、管制装置70は、各搬送ロボット10のバッテリ残量EBATを把握する。そして、管制装置70は、バッテリ残量EBATが、限界残量ELIM(例えば、10%)未満となっている搬送ロボット10を、充電が必要な搬送ロボット10、つまり、待機ロボットと認定し、その搬送ロボット10には、作業の割り当てを行わないようにする。続いて、残りの搬送ロボット10を、稼働可能ロボットとして認定し、稼働可能ロボットに対して、バッテリ残量EBATに基づいて、順位付けを行う。その一方で、管制装置70は、全搬送ロボット10のバッテリ残量EBATを合計することで、総バッテリ残量ESUMを認定する。
【0063】
続いて、管制装置70は、S12において、作業・ロボット数決定処理を行う。この作業・ロボット決定処理では、管制装置70は、まず、当該時間帯において行うべき入庫作業,出庫作業(以下、「割当入庫作業」,「割当出庫作業」という場合がある)を、上述の入出荷製品等リストに基づいて決定する。ちなみに、後に説明するように、管制装置70は、入庫作業だけを、特定作業と認定する。
【0064】
出荷が入荷よりも時間厳守が求められるため、出庫作業に従事する搬送ロボット10を、作業の量に応じた数確保する必要がある。そこで、作業・ロボット数決定処理において、管制装置70は、出庫作業を割り当てる搬送ロボット10の数(以下、「出庫割当ロボット数」という場合がある)を、割当出庫作業の量に応じた数以上に決定する。詳しく言えば、原則として、稼働可能ロボットの総数に、割当出庫作業と割当入庫作業との合計に対する割当出庫作業の量,割当入庫作業の量の比率を乗ずることで、出庫割当ロボット数,入庫作業を割り当てる搬送ロボット10の数(以下、「入庫割当ロボット数」という場合がある)を決定する。もし、出庫割当ロボット数が、割当出庫作業の量に応じた数未満であるときには、その数となるまで、入庫割当ロボット数を減じ、その分、出庫割当ロボット数を増やす。入庫作業と出庫作業とを一時期に行うべき場合、管制装置70は、出庫作業の量に応じた数以上の搬送ロボット10を出庫作業に割り当てるようにされているのである。
【0065】
作業の割り当ては、原則的には、稼働可能ロボットに満遍なく行われる。言い換えれば、割当出庫作業は、出庫割当ロボット数の搬送ロボット10に概ね均等に割り当てられ、割当入庫作業は、入庫割当ロボット数の搬送ロボット10に、概ね均等に割り当てられる。言い換えれば、管制装置70は、出庫作業が割り当てられる搬送ロボット10が、どれも概ね同じ数の出庫作業を行い、入庫作業が割り当てられた搬送ロボット10が、どれも概ね同じ数の入庫作業を行うように、稼働可能ロボットに対する割り当てを行うようにされているのである。
【0066】
ここで、出庫作業,入庫作業それぞれの特性について説明する。出庫作業については、入出荷ヤード52に搬送する製品等が収容されている棚50が決まっているため、1つの作業における搬送ロボット10の移動距離は概ね決まっている。それに対し、入庫作業は、空きスペースのある棚50である限り、製品等を収容する棚50を任意に決定することが可能である。そこで、本搬送システムでは、入庫作業を特定作業として認定し、入庫作業の内容、すなわち、入庫作業における製品等の収容スペースを変更するようにされている。原則的には、本搬送システムを構成する搬送ロボット10全体の電力消費を考慮して、管制装置70は、総バッテリ残量ESUMに基づいて、総バッテリ残量ESUMが少ない場合には、入庫作業における搬送ロボット10の移動距離が短くなるように、製品等を収容する収容スペース、すなわち、棚50を決定し、総バッテリ残量ESUMが多い場合には、入庫作業における搬送ロボット10の移動距離が長くなるように、製品等を収容する収容スペース、すなわち、棚50を決定する。以下に、搬送ロボット10の移動距離の設定を含めた入庫作業の割り当て,出庫作業の割り当てについて、詳しく説明する。
【0067】
管制装置70は、作業・ロボット数決定処理の次に、S13において、個別バッテリ残量依拠割当処理を行う。この個別バッテリ残量依拠割当処理は、上記原則としての総バッテリ残量ESUMに基づく移動距離設定の例外的な処理である。この処理では、管制装置70は、バッテリ残量EBATが、設定個別残量である設定個別閾残量ETH(例えば、30%)未満である搬送ロボット10を、個別的に、電欠状態となる可能性の高い残量少ロボットとして認定する。そして、その認定した残量少ロボットに対して、優先的に、割当入庫作業を割り当てる。詳しく言えば、作業における移動距離を短くすべく、総バッテリ残量ESUMに拘わらず、製品等を収容する収容スペースを近距離収容エリアに属する棚50の空スペースに決定し、割当入庫作業において指定されている製品等を、決定した収容スペースに収容すべき旨の作業指示を、残量少ロボットに対して発令する。ちなみに、複数の残量少ロボットが存在する場合には、よりバッテリ残量EBATが少ない搬送ロボット10の入庫作業において、よりその搬送ロボット10の移動距離が短くなるように棚50が決定される。なお、割当入庫作業がない場合には、残量少ロボットであっても入庫作業が割り当てられず、また、残量少ロボットの数より割当入庫作業の数が小さい場合には、よりバッテリ残量EBATが少ない残量少ロボットから優先的に入庫作業が割当られる。
【0068】
管制装置70は、個別バッテリ残量依拠割当処理の次に、S14において、繁忙時間帯確認処理を行う。この繁忙時間帯確認処理では、管制装置70は、先に説明したように、入出荷製品等リストに基づいて、現時点から24時間の時間帯毎総作業量Qを、上述の作業量分布グラフの形式で認定する。その認定に基づき、管制装置70は、当該時間帯が、上述の繁忙時間帯の前の2時間帯以内であるか否かを判断し、繁忙時間帯の前の2時間帯以内である場合には、当該時間帯を繁忙前時間帯として認定する。
【0069】
続くS15において、管制装置70は、入庫収容エリア決定処理を行う。この処理では、管制装置70は、まず、総バッテリ残量ESUMが、どの程度であるかを判定する。具体的に説明すれば、本搬送システムでは、総バッテリ残量ESUMに関して、2つの設定残量として、第1閾残量ETH1(例えば、60%),第2閾残量ETH2(例えば、40%)が設定されており、総バッテリ残量ESUMが、第1閾残量ETH1以上であるときに、多残量状態と、第1閾残量ETH1未満第2閾残量ETH2以上であるときに、中残量状態と、第2閾残量ETH2未満であるときに、少残量状態と、それぞれ認定する。
【0070】
そして、管制装置70は、総バッテリ残量ESUMの程度と、上記繁忙前時間帯であるか否かとに基づいて、入庫作業において製品等が収容される棚50が属すべきエリアである収容エリアを、図2を参照しつつ先に説明した遠距離収容エリア,中距離収容エリア,近距離収容エリアのいずれかに決定する。具体的には、多残量状態であってかつ繁忙前時間帯ではない場合には、遠距離収容エリアに、多残量状態であっても繁忙前時間帯である場合には、中距離収容エリアに、中残量状態である場合には、中距離収容エリアに、少残量状態である場合には、近距離収容エリアに、それぞれ決定する。簡単に言えば、総バッテリ残量ESUMに応じて、段階的に、入庫作業を行う搬送ロボット10の移動距離を設定するのである。ちなみに、総バッテリ残量ESUMが第1閾残量ETH1以上であっても繁忙前時間帯である場合に、入庫作業における収容エリアを中距離収容エリアに決定するのは、後に訪れる繁忙時間帯において搬送ロボット10が電欠状態となる可能性をより低くするためである。
【0071】
入庫収容エリア決定処理の後、管制装置70は、S16において、個別バッテリ残量依拠割当処理において割り当てられていない割当入庫作業の割り当てのための処理である入庫作業割当処理を行う。詳しく説明すれば、管制装置70は、入庫割当ロボット数から既に入庫作業が割り当てられている搬送ロボット10の数を減じた数の稼働可能ロボットに対して、割り当てられていない割当入庫作業を割り当てる。このとき、先に行った順位付けに基づき、バッテリ残量EBATがより少ない稼働可能ロボットに対して、優先的に、入庫作業を割り当てる。つまり、入庫作業を行う入庫ロボットを決定するのである。
【0072】
入庫作業割当処理では、管制装置70は、各割当入庫作業に対して、製品等を収容する収容スペースとして、上記決定されている収容エリアの棚50の空スペースを決定する。詳しく言えば、上記順位付けに基づいて、バッテリ残量EBATがより少ない搬送ロボット10が行う入庫作業ほど、移動距離がより短くなるように、棚50が決定される。そして、管制装置70は、入庫ロボットに対して、割当入庫作業において指定されている製品等を、決定した収容スペースに収容する旨の作業指示を、発令する。
【0073】
入庫作業割当処理の後、管制装置70は、S17において、出庫作業割当処理を行う。この出庫作業割当処理では、管制装置70は、作業・ロボット数決定処理において決定した数の搬送ロボット10、すなわち、未だ作業が割り当てられていない稼働可能ロボットを、出庫作業を行う出庫ロボットに決定し、そのロボットに対して、割当出庫作業を割り当てる。具体的に言えば、管制装置70は、割当出庫作業において指定されている製品等が収容されている収容スペースを、上述の収容製品等リストに基づいて特定し、その製品等をその収容スペースから取り出して出庫する旨の作業指示を、出庫ロボットに発令する。
【0074】
端的には、上述の割当処理は、総バッテリ残量ESUMが少ない程、特定作業における搬送ロボット10の移動距離を短く設定する処理、逆に言えば、総バッテリ残量ESUMが多い程、特定作業における搬送ロボット10の移動距離を長く設定する処理であると考えることができる。本搬送システムは、そのような割当処理を行うことで、簡便に、搬送ロボット10全体の作業効率を落とすことなく、各搬送ロボット10が電欠状態となることを回避することが可能となる。
【符号の説明】
【0075】
10:搬送ロボット〔搬送機〕〔移動作業機〕 50:棚〔収容場所〕 52:入出荷ヤード〔入出荷場所〕 56:待機スペース 58:充電設備 62:充電ポート 70:管制装置〔コントローラ〕 EBAT:バッテリ残量 ELIM:限界残量 ETH:設定個別閾残量〔設定個別残量〕 ESUM:総バッテリ残量 ETH1:第1閾残量〔設定残量〕 ETH2:第2閾残量〔設定残量〕
図1
図2
図3
図4
図5
図6