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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183809
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】調理器用ガラストッププレート
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/10 20060101AFI20231221BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20231221BHJP
   C03C 17/23 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F24C15/10 B
H05B6/12 305
C03C17/23
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097547
(22)【出願日】2022-06-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000244305
【氏名又は名称】鳴海製陶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 祐作
【テーマコード(参考)】
3K151
4G059
【Fターム(参考)】
3K151AA11
3K151BA62
4G059AA01
4G059AC06
4G059EA02
4G059EA09
(57)【要約】
【課題】焦げ付きが抑制された調理器用ガラストッププレートを提供する。
【解決手段】調理器15の上部に配置するための調理器用ガラストッププレート10であって、ガラス基板11と、前記ガラス基板11の調理面12の少なくとも一部に形成された赤外線反射層13と、を備え、前記赤外線反射層13は、波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が20%以上である、調理器用ガラストッププレート10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器の上部に配置するための調理器用ガラストッププレートであって、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の調理面の少なくとも一部に形成された赤外線反射層と、を備え、
前記赤外線反射層は、波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が20%以上である、調理器用ガラストッププレート。
【請求項2】
前記赤外線反射層の可視光透過率が50%以上である、請求項1に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項3】
前記赤外線反射層はFTOからなる請求項1に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項4】
前記調理器が、ガスバーナを備えたガス調理器である、請求項1~3のいずれか一項に記載の調理器用ガラストッププレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器用ガラストッププレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1(特開2008-192455号公報)に記載されているように、電磁調理器やガス調理器等の調理器の上部に載置される、ガラス基板を備えた調理器用ガラストッププレートが知られている。この調理器用ガラストッププレートには、鍋等の被加熱物が載置される。被加熱物は、調理器内部の誘導加熱を行う誘導加熱コイル、またはガスバーナ等の加熱装置により加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-192455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調理中に、被加熱物から吹きこぼれた煮汁等が、調理器用ガラストッププレートの調理面の上に付着する場合がある。煮汁等が付着したまま調理器用ガラストッププレートが加熱され続けると、調理器用ガラストッププレートの調理面に、煮汁等に起因する焦げ付きが生じるおそれがある。調理器用ガラストッププレートの調理面に焦げ付きが生じた場合、容易に除去することが難しいという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、焦げ付きが抑制可能な調理器用ガラストッププレートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、
調理器の上部に配置するための調理器用ガラストッププレートであって、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の調理面の少なくとも一部に形成された赤外線反射層と、を備え、
前記赤外線反射層は、波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が20%以上である、調理器用ガラストッププレートにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、調理器の加熱装置から発せられる赤外線、および調理器の上に設置された鍋等の被加熱物から発せられた赤外線等を、赤外線反射層により反射することができる。これにより、調理器用ガラストッププレートの調理面の温度が上昇することを抑制することができる。この結果、調理面に吹きこぼれた煮汁等が液体で存在する時間が長くなるので、調理面に焦げ付きが形成されることを抑制することができる。
【0008】
以上のごとく、本発明によれば、調理器用ガラストッププレートに焦げ付きが形成されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る調理器用ガラストッププレートの断面図である。
図2図2は、実施形態1に係る調理器を示す模式的側面図である。
図3図3は、実施形態1に係る調理器により被加熱物が加熱されている状態を示す模式的側面図である。
図4図4は、実施形態1に係る調理器用ガラストッププレートの、赤外線の波長に対する赤外線反射率の変化を示すグラフである。
図5図5は、実施形態1に係る調理器用ガラストッププレートの調理面の、加熱時間に対する温度変化を示すグラフである。
図6図6は、焦げ付き実験において、焦げ付き残り面積を判定するためのひな形である。
図7図7は、実施形態1に係る調理器用ガラストッププレートの、加熱時間に対する焦げ付き残り面積の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
本発明の調理器用ガラストッププレート10について、図1~3を用いて説明する。図1に示すように、調理器用ガラストッププレート10は、ガラス基板11と、ガラス基板11の調理面12に形成された赤外線反射層13と、を備える。
【0011】
ガラス基板11は、ガラス製であって、調理面12と、この調理面12の反対側に位置する裏面14と、を備える。図2に示すように、調理器用ガラストッププレート10は、調理器15の上面に、調理面12を上方に向けて載置されている。ガラス基板11の裏面14は調理器15の上面と対向している。調理器15の上部にはガスバーナ、IHヒータ等の加熱装置16が配置されている。本実施形態では加熱装置16としてガスバーナが用いられている。
【0012】
図3に示すように、ガスバーナが配置された、いわゆるガス調理器(調理器15の一例)においては、鍋等の被加熱物17から発せられる赤外線に加えて、ガスの燃焼火炎から発せられる赤外線によって調理器用ガラストッププレート10の調理面12が加熱されるので、焦げ付きが生じやすい。本実施形態によれば、焦げ付きが生じやすいガス調理器において、効果的に焦げ付きを抑制することができる。ただし、加熱装置16としてIHヒータが用いられていてもよい。
【0013】
図3に示すように、調理器用ガラストッププレート10には、加熱装置16が挿通される貫通孔18が、調理器用ガラストッププレート10を貫通して形成されている。本実施形態においては、調理器用ガラストッププレート10の上部のうち、貫通孔18の孔縁部の近傍に、例えば金属等の、耐熱性を有する材料からなる五徳19が取り付けられている。五徳19の上には、被加熱物17が配置される。五徳19の上に載置された被加熱物17は、加熱装置16により加熱されるようになっている。これにより、被加熱物17の中に収容された内容物が調理されるようになっている。ただし、加熱装置16としてIHヒータが用いられる場合には、貫通孔18、および五徳19は省略してもよい。
【0014】
ガラス基板11は、β-石英固溶体及びβ-スポジューメンを主結晶とすることが好ましい。β-石英固溶体又はβ-スポジューメンを主結晶とする透明低膨張結晶化ガラス板は、特に調理器用ガラストッププレート10のガラス基板11として適している。
【0015】
ガラス基板11は、線熱膨張係数が-10~80×10-7/℃(30~500℃)であることが好ましい。ガラス基板11の線熱膨張係数が-10~80×10-7/℃(30~500℃)であることにより、加熱と冷却が繰り返される調理器用ガラストッププレート10において、寸法安定性が向上するので好ましい。
【0016】
赤外線反射層13は、ガラス基板11の調理面12に形成されている。赤外線反射層13は、ガラス基板11の調理面12に、全面に亘って形成されていてもよいし、ガラス基板11の調理面12の一部に形成されていてもよい。ガラス基板11の調理面12の一部に赤外線反射層13が形成される場合には、例えば、加熱装置16の近傍の領域、被加熱物17が配置される可能性がある領域等、比較的に赤外線が照射されやすい部分に、赤外線反射層13が形成されることが好ましい。
【0017】
赤外線反射層13は、赤外線を反射可能に構成されている。本実施形態において、赤外線とは、波長780nm-1mmの電磁波をいう。本実施形態に係る赤外線反射層13は、波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が20%以上であることが好ましい。これにより、調理器15の加熱装置16から発せられる赤外線、および調理器15の上に設置された鍋等の被加熱物17から発せられた赤外線等を、赤外線反射層13により反射することができる。これにより、調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度が上昇することを抑制することができる。この結果、調理面12に吹きこぼれた煮汁等が液体で存在する時間が長くなるので、調理面12に焦げ付きが形成されることを抑制することができる。
【0018】
波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が30%以上であると、調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度が上昇することをさらに抑制することができるので、調理面12に吹きこぼれた煮汁等が液体で存在する時間がさらに長くなる。この結果、調理面12に焦げ付きが形成されることをさらに抑制することができるので好ましい。波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が40%以上であればより好ましく、50%以上であればさらに好ましい。
【0019】
波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が60%以上であると、調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度が上昇することをさらに抑制することができるので、特に好ましい。
【0020】
赤外線反射層13を構成する材料としては、金属酸化物、焼結体等、任意の材料を選択することができる。
【0021】
金属酸化物としては、例えば、In系酸化物、SnO系酸化物、ZnO系酸化物、及びTiO系酸化物等、任意の金属酸化物を選択できる。金属酸化物は、1種からなる構成としてもよく、また、2種以上からなる構成としてもよい。
【0022】
In系酸化物半導体としては、例えば、ITO[In-Sn]、IZO[In-ZnO系アモルファス酸化物]等が挙げられる。また、SnO系酸化物半導体としては、例えば、SnO、FTO[SnO-F]、ATO[SnO-Sb]等が挙げられる。また、ZnO系酸化物半導体としては、ZnO、AZO[ZnO-Al]、GZO[ZnO-Ga]等が挙げられる。また、TiO系酸化物半導体としては、TNO[TiO-Nb、TiO-Ta]等が挙げられる。その中でも、耐熱性に優れることから、特にFTOが好ましい。
【0023】
金属酸化物からなる赤外線反射層13は、単層であってもよいし、複数積層したものであってもよい。金属酸化物からなる赤外線反射層13は、スパッタリング、CVD法等、公知の手法により形成される。
【0024】
焼結体は、金属または非金属を含むペーストが焼結されて形成される。焼結体に含まれる金属としては、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、アルミニウム(Al)等、またはそれらの合金が挙げられる。焼結体に含まれる非金属としては、カーボン等、が挙げられる。焼結体は、ガラス基板11の調理面12に塗布された金属粒子を含む金属レジネート、またはカーボン含有ペーストが、例えば300-900℃の温度で焼結されることにより形成される。
【0025】
焼結体は、ガラス基板11の調理面12に、1層形成されていてもよく、また、2層以上に積層して形成されていてもよい。複数層の焼結体は、例えば、ガラス基板11の調理面12に金属レジネート、またはカーボン含有ペーストを1層塗布して焼結した後、さらに金属レジネート、またはカーボン含有ペーストを1層塗布して焼結するという工程を所望の回数繰り返すことにより形成することができる。
【0026】
赤外線反射層13は、可視光透過率が50%以上であることが好ましい。これにより、意匠性に優れた装飾層が形成された場合において、赤外線反射層13、およびガラス基板11を通してガラス基板11の裏面14の装飾層を視認することができる。この結果、調理器用ガラストッププレート10の意匠性を向上させることができる。本実施形態においては、可視光の波長は380-780nmとされる。
【0027】
赤外線反射層13の上面に、赤外線反射層13を保護するためのコーティング層が形成されてもよい。
【0028】
ガラス基板11の裏面14に、板状をなす金属製の金属パネルが積層されていてもよい。金属はガラスに比べて熱伝導率が高いので、ガラス基板11の温度が上昇したときに、ガラス基板11から金属パネルに熱伝達され、その後、金属パネルに伝達された熱が金属パネル内に拡散される。これにより、ガラス基板11が局所的に高温になることが抑制されるので、ガラス基板11のうち局所的に高温になった部分において焦げ付きが発生することを抑制することができる。金属パネルを構成する金属としては、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等、任意の金属を適宜に選択することができる。
【0029】
続いて、本発明の実施例1-3、および比較例1-3について、下記の実験を行った。
【0030】
(実施例1)
本発明の調理器用ガラストッププレート10にかかる実施例1について説明する。実施例1の調理器用ガラストッププレート10は、低膨張結晶化ガラス板よりなるガラス基板11の調理面12に赤外線反射層13を積層することにより形成した。ガラス基板11としては、β-石英を主結晶とする透明低膨張結晶化ガラスを用いた。ガラス基板11の調理面12の全面に、公知のスパッタリングにより、FTO層を形成した。FTOの可視光透過率は70%以上であった。
【0031】
(実施例2)
実施例2に係る調理器用ガラストッププレート10については、ガラス基板11の調理面12に、金を含む金レジネートを、公知のスクリーン印刷により塗布した。その後、800℃で焼成を行い、1層の焼結体の層を形成した。形成された焼結体の層の上に、上記と同様の操作を2回繰り返すことにより、金レジネートを焼結してなる焼結体の層を2層積層した。本例においては、合計3層の焼結体の層により、赤外線反射層13を形成した。上記以外は実施例1と同様に行った。
【0032】
(実施例3)
実施例3に係る調理器用ガラストッププレート10については、赤外線反射層13を、金レジネートを用いて、2層の焼結体の層により形成した。上記以外は実施例2と同様に行った。
【0033】
(比較例1)
比較例1に係る調理器用ガラストッププレート10については、赤外線反射層13を、金レジネートを用いて、1層の焼結体の層により形成した。上記以外は実施例2と同様に行った。
【0034】
(比較例2)
比較例2に係る調理器用ガラストッププレート10については、ガラス基板11の裏面14にアルミニウム製の金属パネルを積層した。ガラス基板11の調理面12には、赤外線反射層13は形成されていない。上記以外は実施例1と同様に行った。
【0035】
(比較例3)
比較例3に係る調理器用ガラストッププレート10については、ガラス基板11の調理面12に赤外線反射層13は形成されておらず、また、ガラス基板11の裏面14に金属パネルは積層されていない。上記以外は実施例1と同様に行った。
【0036】
(赤外線反射率測定)
実施例1―3および比較例1-3に係る調理器用ガラストッププレート10を所定の大きさに切り出して試験片を作成した。この試験片を用いて、調理器用ガラストッププレート10の調理面12における、波長800-10000nmの赤外線反射率を測定した。波長800-2500nmの範囲では、日本分光株式会社製、紫外可視分光光度計 V-570を用い、波長2500-10000nmの範囲では、日本分光株式会社製、フーリエ変換赤外分光光度計 FT/IR-410を用いた。上記の実験結果から、波長800-10000nmの範囲について赤外線反射率の積分平均を算出した。なお、比較例2については赤外線反射率を測定しなかった。これは、ガラス基板11の裏面14に積層された金属パネルはガラス基板の熱を分散させることを目的したものであって、赤外線を反射させることを目的としたものではないからである。測定結果を表1および図4にまとめた。
【0037】
【表1】
【0038】
(加熱実験)
実施例1―3および比較例1-3について、下記のように加熱実験を行った。調理器用ガラストッププレート10を調理器15の上部に配置した。五徳19の上に被加熱物17として金属製の鍋を載置した。鍋の内部には空焚きを防止するために水等の内容物を収容した。ガスバーナを点火し最大火力に調節した。点火してから5分経過した後に、ガスバーナを消火し、鍋を五徳19から移動させ、調理器用ガラストッププレート10のうちガスバーナの近傍の領域を公知のサーモグラフィ装置で撮影し、調理器用ガラストッププレート10の表面温度を測定した。その後、鍋を五徳19の上に載置し、ガスバーナを点火して最大火力に調節した。その後、5分ごとに上記と同様の操作を実行し、30分後に加熱実験を終了した。実験結果を表1および図5にまとめた。
【0039】
(焦げ付き実験)
実施例1―3および比較例1-3について、下記のように焦げ付き実験を行った。調理器用ガラストッププレート10を調理器15の上部に配置した。調理器用ガラストッププレート10の調理面12であって、ガスバーナの近傍の領域に、砂糖:醤油:みりんを質量比で1:1:1に調製した溶液を、スポイトで滴下した。続いて、五徳19の上に被加熱物17として金属製の鍋を載置した。鍋の内部には空焚きを防止するために、水等の任意の内容物を収容した。ガスバーナを点火し最大火力に調節した。これにより、調理器用ガラストッププレート10の調理面12に焦げ付きを形成した。点火してから所定時間経過した後に、ガスバーナを消火し、鍋を五徳19から移動させ、その後、十分に冷却し、ぬれ布巾で擦り、焦げ付きを除去できるか否かを試験した。ぬれ布巾は、毎回、新しいものを使用した。ぬれ布巾で擦る前の面積に対する、ぬれ布巾で擦った後の面積の百分率を算出した。ぬれ布巾で擦った後の焦げ付きの面積は、予め作成されたひな形に基づいて判定した。図6にひな形を示した。
【0040】
実施例1については、ぬれ布巾で擦る前の面積に対する、ぬれ布巾で擦った後の面積の百分率が50%になった時点で、焦げ付き実験を終了した。また、実施例2-6については、ぬれ布巾で擦る前の面積に対する、ぬれ布巾で擦った後の面積の百分率が100%になった時点で焦げ付き実験を終了した。実験結果を表2および図7にまとめた。
【0041】
【表2】
【0042】
(赤外線反射率測定の結果)
表1および図4に示すように、実施例1の調理器用ガラストッププレート10の調理面12の赤外線反射率は、波長が800-2000nmの領域では20%以下であるが、波長が2000nmを超えると急激に上昇し、約3000nmを超えると赤外線反射率は50%以上となり、波長が8000nmを超える領域では、赤外線反射率は約80%と非常に高い値となった。実施例1について、波長が800-10000nmにおける赤外線反射率の積分平均は62%であった。
【0043】
実施例2の調理器用ガラストッププレート10の調理面12の赤外線反射率は、波長が800-6000nmの領域では30%を超える高い値を示した。波長が約8000nmの領域では赤外線反射率は20%以下となったが、波長が約9000nmを超える領域では赤外線反射率は20%以上となった。実施例2について、波長が800-10000nmにおける赤外線反射率の積分平均は33%であった。
【0044】
実施例3の調理器用ガラストッププレート10の調理面12の赤外線反射率は、波長が800-4000nmの領域では20%を超える高い値を示した。波長が5000-8000nmの領域では赤外線反射率は20%以下であったが、波長が約9000nmを超える領域では、赤外線反射率は20以上であった。実施例3について、波長が800-10000nmにおける赤外線反射率の積分平均は22%であった。
【0045】
比較例1の調理器用ガラストッププレート10の調理面12の赤外線反射率は、波長が800-2000nmの領域では20%を超える値を示した。波長が3000-8000nmの領域では赤外線反射率は20%以下であったが、波長が9000nm付近を超える領域では、赤外線反射率は20以上であった。実施例4について、波長が800-10000nmにおける赤外線反射率の積分平均は14%であった。
【0046】
比較例3の調理器用ガラストッププレート10の調理面12の赤外線反射率は、波長が800-7000nmの領域では10%以下と低い値であった。波長が8000nmを超える領域では赤外線反射率は10%以上となり上昇したが、波長が9000nm付近を超える領域では、赤外線反射率は30%以上であった。実施例4について、波長が800-10000nmにおける赤外線反射率の積分平均は10%であった。
【0047】
(加熱実験の結果)
表1および図5に示すように、実施例1の調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度は、30分間加熱しても、121.2℃以下であった。これは、実施例1の調理器用ガラストッププレート10の調理面12の波長800-10000nmにおける赤外線反射率の積分平均が62%であったため、加熱部材および被加熱物17から発せられる赤外線が反射されたことにより、調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度上昇が抑制されたためと考えられる。
【0048】
実施例1の調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度は、加熱してから5分後で55.9℃、10分後で84.5℃までしか上昇しなかった。このため、少なくとも加熱後10分間は、調理器用ガラストッププレート10の調理面12に付着した水分は、液体の状態で保持されると考えられる。加熱開始後10分経過すると、調理面12の温度は100.5℃と水の沸点である100℃を超えるので、調理面12に付着した水分が沸騰し始めると考えられる。加熱開始後30経過後であっても、調理面12の温度は121.2℃と、比較的に低かった。このため、調理面12に付着した水分は、沸騰はするものの、直ちに蒸発せず、液体の状態が比較的に長く維持されると考えられる。
【0049】
実施例2-3、および比較例1-2の調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度は、加熱開始後、5分で約100℃となり、加熱後30分経過したときには、約150℃まで上昇した。実施例2―4については、調理器用ガラストッププレート10の調理面12の波長800-10000nmにおける赤外線反射率の積分平均が14%以上であったため、加熱部材および被加熱物17から発せられる赤外線が反射されたことにより、調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度上昇が比較的に抑制されたためと考えられる。比較例2については、ガラス基板11の裏面14に積層された金属パネルによってガラス基板11の熱が拡散された結果、ガラス基板11の温度が局所的に高温になることが抑制されたためと考えられる。
【0050】
比較例3の調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度は、加熱してから5分で水の沸点である100℃を超えた。このため比較例3の調理器用ガラストッププレート10の調理面12に水分が付着した場合には、加熱開始後5分経過したときには既に水分が沸騰し始めていると考えられる。その後も調理面12の温度は上昇し、加熱後30分の時点で190.9℃となった。このように調理面12が非常に高温になったのは、比較例3の調理器用ガラストッププレート10の調理面12の波長800-10000nmにおける赤外線反射率の積分平均が10%と低い値であったため、加熱部材および被加熱物17から発せられる赤外線が十分に反射されなかったことによると考えられる。
【0051】
(焦げ付き実験の結果)
図7に示すように、実施例1の調理器用ガラストッププレート10については、加熱開始後150分経過しても、焦げ付き残り面積は0%であった。さらに加熱開始後180分経過しても焦げ付き残り面積は5%であり、加熱開始後300分が経過しても焦げ付き残り面積は50%であった。
【0052】
実施例1の調理器用ガラストッププレート10においては、赤外線反射層13はFTOからなる。この赤外線反射層13について、波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が60%以上(62%)であることから、調理器15の加熱装置16から発せられる赤外線、および調理器15の上に設置された鍋等の被加熱物17から発せられた赤外線等を、赤外線反射層13により反射することができると考えられる。これにより、調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度が上昇することを抑制することができる結果、調理面12に滴下された溶液が液体で存在する時間が長くなるので、調理面12に焦げ付きが形成されることを抑制することができると考えられる。
【0053】
実施例2の調理器用ガラストッププレート10については、加熱開始後30分経過しても、焦げ付き残り面積は0%であった。加熱開始後60分経過したときの焦げ付き残り面積は40%と、比較的に低い値が維持された。その後、加熱開始後150分が経過したとき、焦げ付き残り面積は100%となった。
【0054】
実施例2の調理器用ガラストッププレート10においては、赤外線反射層13が、波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が30%以上(33%)であることから、調理器15の加熱装置16から発せられる赤外線、および調理器15の上に設置された鍋等の被加熱物17から発せられた赤外線等を、赤外線反射層13により反射することができると考えられる。これにより、調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度が上昇することを抑制することができる結果、調理面12に滴下された溶液が液体で存在する時間が長くなるので、調理面12に焦げ付きが形成されることを抑制することができると考えられる。
【0055】
実施例3の調理器用ガラストッププレート10については、加熱開始30分後の焦げ付き残り面積が30%であり、加熱開始60分後の焦げ付き残り面積が60%であり、加熱開始90分後の焦げ付き残り面積が95%であり、加熱開始120分後の焦げ付き残り面積が100%であった。実施例3に係る調理器用ガラストッププレート10の焦げ付きを抑制する性能については、後述する比較例2とほぼ同等であった。
【0056】
実施例3は、加熱開始後60分で焦げ付き残り面積が60%であることから、後述する比較例3に比べて、焦げ付きが抑制されている。これは、実施例3の赤外線反射層13が、波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が20%以上(22%)である。ことから、調理器15の加熱装置16から発せられる赤外線、および調理器15の上に設置された鍋等の被加熱物17から発せられた赤外線等を、赤外線反射層13により反射することができると考えられる。これにより、調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度が上昇することを抑制することができる結果、調理面12に滴下された溶液が液体で存在する時間が長くなるので、調理面12に焦げ付きが形成されることを抑制することができると考えられる。
【0057】
比較例1の調理器用ガラストッププレート10については、加熱開始30分後の焦げ付き残り面積が45%であり、加熱開始60分後の焦げ付き残り面積が90%であり、加熱開始90分後の焦げ付き残り面積が100%であった。
【0058】
比較例1は、加熱開始後60分で焦げ付き残り面積が90%であることから、後述する比較例3に比べて、焦げ付きが十分に抑制されているとは言えない。これは、比較例1の赤外線反射層13が、波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が14%である。ことから、調理器15の加熱装置16から発せられる赤外線、および調理器15の上に設置された鍋等の被加熱物17から発せられた赤外線等を、赤外線反射層13により十分に反射することができないことによると考えられる。これにより、調理器用ガラストッププレート10の調理面12の温度が上昇することを十分に抑制することができない結果、調理面12に滴下された溶液が比較的早期に蒸発してしまい、調理面12に焦げ付きが形成されたと考えられる。
【0059】
比較例2の調理器用ガラストッププレート10については、加熱開始30分後の焦げ付き残り面積が5%であり、加熱開始60分後の焦げ付き残り面積が55%であり、加熱開始90分後の焦げ付き残り面積が80%であり、加熱開始120分後の焦げ付き残り面積が95%であり、加熱開始150分後の焦げ付き残り面積が100%であった。
【0060】
比較例2は、加熱開始後60分で焦げ付き残り面積が55%であることから、後述する比較例3に比べて、焦げ付きが抑制されている。これは、比較例2については、ガラス基板11の裏面14に積層された金属パネルによってガラス基板11の熱が拡散された結果、ガラス基板11の温度が局所的に高温になることが抑制されたためと考えられる。比較例2については、後述する比較例3に比べると、焦げ付きを抑制する効果は高い。
【0061】
比較例3の調理器用ガラストッププレート10については、加熱開始30分後の焦げ付き残り面積が60%であり、加熱開始60分後の焦げ付き残り面積が100%であった。比較例3の調理器用ガラストッププレート10については、ガラス基板11の調理面12に赤外線反射層13が形成されておらず、また、ガラス基板11の裏面14に金属パネルが積層されていない。このため、ガスバーナから発せられる赤外線、および鍋から発せられる赤外線によって調理器用ガラストッププレート10が短時間で高温になると考えられる。これにより、比較例3の調理面12に滴下された溶液は、短時間のうちに沸騰して蒸発してしまい、焦げ付きが形成されたと考えられる。
【0062】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 調理器用ガラストッププレート、11 ガラス基板、12 調理面、13 赤外線反射層、14 裏面、15 調理器、16 加熱装置、17 被加熱物、18 貫通孔、19 五徳
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器の上部に配置するための調理器用ガラストッププレートであって、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の調理面の少なくとも一部に形成された赤外線反射層と、を備え、
前記赤外線反射層は、波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が20%以上であり、
被加熱物を前記調理器に載置した状態で、前記調理器の最大火力で加熱したときに、加熱後30分経過したときの前記調理面の表面温度が150℃以下である、調理器用ガラストッププレート。
【請求項2】
前記赤外線反射層の可視光透過率が50%以上である、請求項1に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項3】
前記赤外線反射層はFTOからなる請求項1に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項4】
前記調理器が、ガスバーナを備えたガス調理器である、請求項1~3のいずれか一項に記載の調理器用ガラストッププレート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の態様は、
調理器の上部に配置するための調理器用ガラストッププレートであって、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の調理面の少なくとも一部に形成された赤外線反射層と、を備え、
前記赤外線反射層は、波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が20%以上であり、被加熱物を前記調理器に載置した状態で、前記調理器の最大火力で加熱したときに、加熱後30分経過したときの前記調理面の表面温度が150℃以下である、調理器用ガラストッププレートにある。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器の上部に配置するための調理器用ガラストッププレートであって、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の調理面の少なくとも一部に形成された赤外線反射層と、を備え、
前記赤外線反射層は、波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が20%以上であり、
被加熱物を前記調理器に載置した状態で、前記調理器の最大火力で加熱したときに、加熱後30分経過したときの前記調理面の表面温度が150℃以下であり、
前記調理器が、ガスバーナを備えたガス調理器である、調理器用ガラストッププレート。
【請求項2】
前記赤外線反射層の可視光透過率が50%以上である、請求項1に記載の調理器用ガラストッププレート。
【請求項3】
前記赤外線反射層はFTOからなる請求項1に記載の調理器用ガラストッププレート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の態様は、
調理器の上部に配置するための調理器用ガラストッププレートであって、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の調理面の少なくとも一部に形成された赤外線反射層と、を備え、
前記赤外線反射層は、波長800-10000nmの範囲における赤外線反射率の積分平均値が20%以上であり、被加熱物を前記調理器に載置した状態で、前記調理器の最大火力で加熱したときに、加熱後30分経過したときの前記調理面の表面温度が150℃以下であり、前記調理器が、ガスバーナを備えたガス調理器である、調理器用ガラストッププレートにある。