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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018381
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】センサおよび校正用装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/07 20060101AFI20230201BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20230201BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20230201BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20230201BHJP
   H10N 52/00 20230101ALI20230201BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20230201BHJP
【FI】
G01R33/07
G01R33/02 X
G01R35/00 M
G01R31/28 W
H01L43/06 A
H01L43/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122463
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】影山 雅人
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 裕毅
【テーマコード(参考)】
2G017
2G132
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AB09
2G017AD53
2G017BA05
2G017BA10
2G132AA12
2G132AK16
5F092AA20
5F092AB01
5F092AC02
5F092AC04
5F092DA03
(57)【要約】
【課題】高電圧を用いる回路と高電圧を印加したくない回路の電源を、簡単な構成で共通化することができるセンサおよび校正用装置を提供する。
【解決手段】センサは、電源端子と、前記電源端子を介して外部から供給された電源を共用する第1回路および第2回路と、スイッチング素子と、所定の電圧範囲内に制御されたセンサ信号を外部に出力するセンサ信号出力端子とを備え、前記第1回路へは、前記スイッチング素子を介して前記電源が供給され、前記第2回路は、前記第1回路の許容電源電圧よりも高電圧の電源電圧で動作する高電圧動作回路を含み、前記スイッチング素子は、前記センサ信号出力端子の電圧が前記電圧範囲内である場合にオンし、前記センサ信号出力端子の電圧が前記電圧範囲外に外部から制御された場合にオフする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源端子と、
前記電源端子を介して外部から供給された電源を共用する第1回路および第2回路と、
スイッチング素子と、
所定の電圧範囲内に制御されたセンサ信号を外部に出力するセンサ信号出力端子とを備え、
前記第1回路へは、前記スイッチング素子を介して前記電源が供給され、
前記第2回路は、前記第1回路の許容電源電圧よりも高電圧の電源電圧で動作する高電圧動作回路を含み、
前記スイッチング素子は、前記センサ信号出力端子の電圧が前記電圧範囲内である場合にオンし、前記センサ信号出力端子の電圧が前記電圧範囲外に外部から制御された場合にオフする
センサ。
【請求項2】
前記第1回路は、センサ素子を含み、
前記センサ素子の出力信号を前記電圧範囲内に制限して前記センサ信号出力端子へ出力する出力制限回路をさらに備える
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
第2センサ信号出力端子をさらに備え、
前記高電圧動作回路が、不揮発性メモリであり、
前記第2回路が、第2センサ素子を含み、前記不揮発性メモリの記憶内容に基づいて前記第2センサ素子の出力信号を処理して、前記第2センサ信号出力端子へ出力する
請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
電源端子と、
前記電源端子を介して外部から供給された電源を共用する第1回路および第2回路と、
スイッチング素子と、
所定の電圧範囲内に制御されたセンサ信号を外部に出力するセンサ信号出力端子とを備え、
前記第1回路へは、前記スイッチング素子を介して前記電源が供給され、
前記第2回路は、前記第1回路の許容電源電圧よりも高電圧の電源電圧で動作する高電圧動作回路を含み、
前記スイッチング素子は、前記センサ信号出力端子の電圧が前記電圧範囲内である場合にオンし、前記センサ信号出力端子の電圧が前記電圧範囲外に外部から制御された場合にオフする
センサに接続し、
前記センサ信号出力端子の電圧を前記電圧範囲外に制御するとともに、
前記電源端子に前記高電圧を供給して前記高電圧動作回路を動作させる
校正用装置。
【請求項5】
前記高電圧動作回路が、不揮発性メモリである
請求項4に記載の校正用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサおよび校正用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電源出力の異常時に電源出力を停止させるための保護回路の一例が記載されている。
【0003】
特許文献2には、ホールIC(Integrated Circuit)を用いた磁気センサの構成例が記載されている。特許文献2に記載されている磁気センサでは、次の構成によって、ホールICのプログラミングの際に電源に対して印加される高電圧が、共通の電源線に接続される他の回路に対して印加されることを防止する。すなわち、特許文献2に記載されている磁気センサは、ホールICに接続される電源線と他の回路に接続される電源線とが2個のパッドを用いて分離した状態で、組み立てられる。次に、ホールICのプログラミングの際に、プログラム端子を用いて、ホールICに対してのみ高電圧が印加される。そして、プログラミング後に、2個のパッドが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-117477号公報
【特許文献2】特開2014-85240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている回路保護の際に電源を停止してしまう保護回路は、特許文献2に記載されているプログラミング時に他の回路を保護するという用途には使用することができないという課題がある。一方、特許文献2に記載されている構成では、電源端子以外に高電圧を印加するための端子が必要であったり、高電圧印加後に半田付け等の工程が必要であったりするという課題がある。基板を樹脂モールドする場合には、はんだ付け等の工程はモールド前に行う必要がある。従って校正後に樹脂モールドを行うことになるが、樹脂モールドを硬化させる工程の前後で、基板やホールICの位置が変化する可能性があり、精度が低下する問題もある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高電圧を用いる回路と高電圧を印加したくない回路の電源を、簡単な構成で共通化することができるセンサおよび校正用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、電源端子と、前記電源端子を介して外部から供給された電源を共用する第1回路および第2回路と、スイッチング素子と、所定の電圧範囲内に制御されたセンサ信号を外部に出力するセンサ信号出力端子とを備え、前記第1回路へは、前記スイッチング素子を介して前記電源が供給され、前記第2回路は、前記第1回路の許容電源電圧よりも高電圧の電源電圧で動作する高電圧動作回路を含み、前記スイッチング素子は、前記センサ信号出力端子の電圧が前記電圧範囲内である場合にオンし、前記センサ信号出力端子の電圧が前記電圧範囲外に外部から制御された場合にオフするセンサである。
【0008】
本開示の他の一態様は、電源端子と、前記電源端子を介して外部から供給された電源を共用する第1回路および第2回路と、スイッチング素子と、所定の電圧範囲内に制御されたセンサ信号を外部に出力するセンサ信号出力端子とを備え、前記第1回路へは、前記スイッチング素子を介して前記電源が供給され、前記第2回路は、前記第1回路の許容電源電圧よりも高電圧の電源電圧で動作する高電圧動作回路を含み、前記スイッチング素子は、前記センサ信号出力端子の電圧が前記電圧範囲内である場合にオンし、前記センサ信号出力端子の電圧が前記電圧範囲外に外部から制御された場合にオフするセンサに接続し、前記センサ信号出力端子の電圧を前記電圧範囲外に制御するとともに、前記電源端子に前記高電圧を供給して前記高電圧動作回路を動作させる校正用装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の各態様によれば、高電圧を用いる回路と高電圧を印加したくない回路の電源を、簡単な構成で共通化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態に係るセンサおよび校正用装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本開示の第1実施形態に係るセンサの外観構成例を示す斜視図である。
図3】本開示の第1実施形態に係るセンサの断面構成例を示す模式図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る基板の平面構成例を示す模式図である。
図5】本開示の第1実施形態に係るコネクタの構成例を示す模式図である。
図6】本開示の第1実施形態に係るセンサの動作例を説明するための模式図である。
図7】本開示の第1実施形態に係るセンサの動作例を説明するための模式図である。
図8】本開示の第1実施形態に係るセンサの動作例を説明するための模式図である。
図9】本開示の第1実施形態に係るセンサの動作例を説明するための模式図である。
図10】本開示の第1実施形態に係るセンサの取り付け例を説明するための模式図である。
図11】本開示の第1実施形態に係るセンサの通常使用時の構成例を示すブロック図である。
図12】本開示の第1実施形態に係る校正用装置の動作例を示すフローチャートである。
図13】本開示の第1実施形態に係るセンサの他の動作例を説明するための模式図である。
図14】本開示の第2実施形態に係るセンサおよび校正用装置の構成例を示すブロック図である。
図15】本開示の第3実施形態に係るセンサおよび校正用装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号または同一の数字に末尾に英字を付加した符号を用いて説明を適宜省略する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、本開示の第1実施形態に係るセンサおよび校正用装置の構成例を示すブロック図である。図10は、本開示の第1実施形態に係るセンサの取り付け例を説明するための模式図である。図11は、本開示の第1実施形態に係るセンサの通常使用時の構成例を示すブロック図である。図2は、本開示の第1実施形態に係るセンサの外観構成例を示す斜視図である。図3は、本開示の第1実施形態に係るセンサの断面構成例を示す模式図である。図4は、本開示の第1実施形態に係る基板の平面構成例を示す模式図である。図5は、本開示の第1実施形態に係るコネクタの構成例を示す模式図である。図6図9は、本開示の第1実施形態に係るセンサの動作例を説明するための模式図である。図12は、本開示の第1実施形態に係る校正用装置の動作例を示すフローチャートである。図13は、本開示の第1実施形態に係るセンサの他の動作例を説明するための模式図である。
【0013】
(センサの機械的構成)
図1に示すセンサ10は、図10に示す油圧ポンプ61に取り付けられて、油圧ポンプ61の斜板の角度と、油圧ポンプ61で生じた振動を検知する検知装置として構成されている。ただし、センサ10は、油圧ポンプ61の斜板の角度と振動を検知する検知装置に限定されず、検知対象(検知する物理量)や検知対象の個数は任意である。
【0014】
図10に示す油圧ポンプ61は、図示していない斜板を有し、斜板の傾転角(以下、単に「角度」と呼ぶ)が変更されることにより吐出容量を変化させる可変容量型の油圧ポンプである。図示していない斜板には、サーボピストン62が連結されており、サーボピストン62が駆動されることによって斜板の角度が変更される。これにより、油圧ポンプ61の吐出容量が制御される。サーボピストン62を駆動するための油圧は、図示していないサーボバルブによって制御される。斜板の角度はセンサ10によって検知される。図10に示すように、サーボピストン62は、サーボバルブから供給される油圧によって、軸方向(矢印A1参照)に移動する。サーボピストン62には、ロッカカム63が連結されており、サーボピストン62が軸方向に移動することによって、ロッカカム63が回転する。ロッカカム63には斜板が連結されており、ロッカカム63が回転することによって斜板の角度が変更される。
【0015】
センサ10は、サーボピストン62の径方向(矢印A0参照)に移動可能に設けられた可動部材であるスプール42を有している。スプール42の先端にはボール42-1が回転可能に設けられている。サーボピストン62の外周面には軸方向に対して傾斜した傾斜面62aが設けられており、スプール42のボール42-1は傾斜面62aに接触するように配置されている。このため、サーボピストン62が軸方向に移動すると、スプール42がサーボピストン62の径方向に移動する。スプール42の位置は、サーボピストン62の位置すなわち斜板の角度に対応しており、センサ10は、スプール42の位置を検知することによって斜板の角度を検知する。図11に示すコントローラ70は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサP1、センサ10が検知した油圧ポンプ61の斜板の角度を表すアナログ信号や油圧ポンプ61で生じた振動を表すアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ(アナログ/デジタル変換器)AD1等を備え、それらのハードウェアとプロセッサP1が実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、振動を監視する振動監視部71を有する。センサ10が検知した斜板の角度は、コントローラ70に入力され、センサ10が検知した振動は、振動監視部71に入力される。振動監視部71は、センサ10が検知した振動を周波数解析し、油圧ポンプ61の故障検出を実施する。コントローラ70は、油圧ポンプ61を制御するポンプ制御部72を有していてもよい。
【0016】
センサ10は、図2および図3に示すように、電気的に外部と接続するためのコネクタ3と、スプール42とを備える。図3に示すように、スプール42は、上述したようにボール42-1を備えるとともに、バネ43を用いて矢印A0方向に移動する。また、スプール42は、磁石44を備える。また、センサ10は、図3および図4に示す基板41を備える。基板41は、図1に示す電子回路を搭載する。
【0017】
(センサの電気的構成)
図1に示すセンサ10は、電子回路の構成部品として、第1回路1と、第2回路2と、出力制限回路12と、コネクタ3と、スイッチング素子TR1と、ツェナーダイオードZD1およびZD2と、抵抗R1とを備える。第1回路は、センサ素子11を備える。第2回路は、ホールIC13を備える。コネクタ3は、図1および図5に示すように、4個の端子T1、T2、T3およびT4を備える。図5は、図2に示す矢印A10の方向からコネクタ3を見た模式図である。端子T1は、電源端子(正側の電源端子)である。端子T2は、センサ信号の第1の出力端子(センサ信号出力端子)である。端子T3は、電源端子(負側の電源端子(GND(グランド)端子))である。端子T4は、センサ信号の第2の出力端子(第2センサ信号出力端子)である。なお、端子T1の電圧または信号をVsup、端子T2の信号をSig1、端子T3の電圧または信号をGND、端子T4の信号をSig2と標記する。また、スイッチング素子TR1は、n型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)である。
【0018】
センサ素子11は、例えば、直流5Vの単電源で動作する加速度センサICである。センサ素子11は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)で構成された加速度センサを含み、例えば図6に示すように、電源電圧の1/2を0[G]として矢印A0方向の振動加速度[G]に応じた電圧の信号を端子Oから出力する。図6は、センサ素子11の電源電圧が5V(GND電圧:0V)の場合の特性例である。センサ素子11の正側電源端子Vは、端子T1に接続されている。センサ素子11のグランド端子(負側電源端子)Gは、スイッチング素子TR1のドレインとツェナーダイオードZD1のアノードに接続されている。センサ素子11の出力端子Oは、出力制限回路12の入力端子Iに接続されている。この構成では、スイッチング素子TR1がオンの場合にセンサ素子11の電源端子Vとグランド端子G間に電源電圧が印加され(センサ素子11に電源が供給され)、スイッチング素子TR1がオフの場合にセンサ素子11の電源端子Vとグランド端子G間に電源電圧が印加されなくなる(センサ素子11に電源が供給されなくなる)。なお、センサ素子11は、単体のICに限らず、複数のICや単体素子を組み合わせたディスクリート回路であってもよい。なお、本実施形態においてセンサ素子11の電源電圧の絶対最大定格は例えば5.5Vであるとする。また、本開示において第1回路1の許容電源電圧とは、センサ素子11の電源電圧の絶対最大定格、あるいは、センサ素子11の電源電圧の絶対最大定格に対して一定の余裕を持った値(電源電圧の絶対最大定格よりも所定値低い値)である。
【0019】
出力制限回路12は、例えば、直流5Vの単電源で動作するアナログICである。出力制限回路12は、アナログ絶対化処理を行う回路であり、図6に示すセンサ素子11の出力信号を入力し、図7に示すように、(入力電圧-電源電圧の1/2)の絶対値に、電源電圧の1/2を加算した値の電圧の信号を端子Oから出力する。図7は、センサ素子11の出力特性が図6である場合に、出力制限回路12の電源電圧が5V(GND電圧:0V)の場合の特性例である。この場合、出力制限回路12は、所定の電圧範囲内(電源電圧の1/2以上、電源電圧以下の範囲)に制御されたセンサ信号(センサ素子11の出力信号)を端子T2を介して外部に出力する。出力制限回路12の正側電源端子Vは、端子T1に接続されている。出力制限回路12のグランド端子(負側電源端子)Gは、端子T3に接続されている。出力制限回路12の出力端子Oは、抵抗R1を介して端子T2に接続されている(出力端子Oが抵抗R1の一方の端子に接続され、抵抗R1の他方の端子が端子T2に接続されている)。なお、出力制限回路12は、ICに限らず、複数のICや単体素子を組み合わせたディスクリート回路であってもよい。
【0020】
ホールIC13は、内部に、不揮発性メモリの一構成例であるEEPROM(electrically erasable and programmable read-only memory)14と、図示していない磁気センサとしてのホール素子(第2センサ素子)と、EEPROM14に記憶されている校正用データ(記憶内容)に基づいてホール素子の出力信号を処理する信号処理回路を有し、例えば図8に示すように、スプール42のストローク[mm](矢印A0方向の変位)に応じた電圧の信号を出力端子O(第2センサ信号出力端子)から出力する。図8に示す特性では、基準とするストロークを0[mm]とし、0[mm]での出力電圧を電源電圧の1/2とし、基準とするストロークからの正負の変位に応じて出力電圧の電源電圧の1/2から差の値が大きくなる。図8は、ホールIC13の電源電圧が5V(GND電圧:0V)の場合の特性例である。ホールIC13は、スプール42が備える磁石44に対向するように基板41上に搭載され、磁石44が発生した磁場を検知することで、スプール42のストローク(位置)に応じた信号を出力する。ホールIC13の正側電源端子Vは、端子T1に接続されている。ホールIC13のグランド端子(負側電源端子)Gは、端子T3に接続されている。ホールIC13の出力端子Oは、端子T4に接続されている。
【0021】
また、ホールIC13は、正側電源端子Vに外部から所定の信号を入力することで、EEPROM14に校正用データを書き込む機能を有している。ホールIC13は、所定のパターンの信号が正側電源端子Vに外部から入力された場合、入力されたデータを内部の揮発性メモリに一旦記憶し、正側電源端子Vにデータ書込用の高電圧(例えば12.5V)が印加された場合に、一旦記憶したデータをEEPROM14に書き込み、記憶する。
【0022】
なお、以下では、EEOROM14へ校正用データを書き込む動作状態をホールIC校正時、ホールIC校正時ではなく通常の電源電圧(直流5Vとする)が端子T1に供給されている動作状態を通常使用時という。
【0023】
スイッチング素子TR1は、ドレインが上述したようにセンサ素子11のグランド端子GとツェナーダイオードZD1のアノードに接続され、ソースが端子T3に接続され、ゲートが端子T2に接続されている。スイッチング素子TR1は、例えば図9に示すような動作特性を有し、ゲート電圧が2.5~5Vではドレイン-ソース間電流が流れ、ゲート電圧が0Vではドレイン-ソース間電流が流れない。図7に示すように、出力制限回路12は、通常使用時に電源電圧の1/2以上の値の電圧を出力する。この出力制限回路12の出力電圧は、抵抗R1を介してスイッチング素子TR1のゲートに印加される。したがって、スイッチング素子TR1は、通常使用時に常にオンとなる。一方、端子T2と端子T3が短絡(あるいは抵抗R1に対して十分低い抵抗値で接続)された場合、ゲート電圧は0V(あるいはほぼ0V)となり、スイッチング素子TR1はオフする。
【0024】
また、ツェナーダイオードZD1およびZD2は、保護回路として設けられ、通常動作時の電源電圧5Vよりも大きいツェナー電圧を有する。ツェナーダイオードZD1は、アノードをセンサ素子11のグランド端子Gに接続し、カソードを端子T1に接続している。ツェナーダイオードZD2は、アノードを端子T3に接続し、カソードを端子T2に接続している。
【0025】
(センサの動作例)
センサ10は、製造後、ホールIC校正時には、校正用装置50に接続され、スプール42を実際に移動させてホールIC13の出力信号が計測され、計測結果に基づいてEEPROM14への校正用データの書き込みが行われる。その際、所定の期間、端子T1と端子T3間にはデータ書込用の高電圧(例えば12.5V)が印加される。校正用装置50は、端子T1と端子T3間にデータ書込用の高電圧を印加する場合、端子T2と端子T3間を短絡する。端子T2と端子T3間が短絡された場合、スイッチング素子TR1はオフとなり、センサ素子11には電源が供給されなくなる。したがって、センサ素子11(第1回路1)に対して許容電源電圧を超える電圧は印加されない。
【0026】
一方、油圧ポンプ61に取り付けられて使用される際(通常使用時)には、センサ10は、所定の1または複数のコントローラに接続され、端子T1と端子T3間には通常使用時の電源電圧が印加される。この場合、スイッチング素子TR1は常にオンとなり、センサ素子11には電源が常に供給される。
【0027】
(校正用装置の構成)
図1に示す校正用装置50は、図示していない所定の治具を備え、治具に固定したセンサ10を、コネクタ3を介して電気的に接続し(端子T1~T4と接続し)、センサ10のEEPROM14への校正用データの書き込み等を行う装置である。校正用装置50は、制御部51と、電源部52と、スイッチ53と、駆動部54と、アクチュエータ55とを備える。
【0028】
制御部51は、マイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ等のコンピュータと周辺回路、周辺装置等から構成され、操作者による所定の指示操作に従って各部を制御する。制御部51は、例えば、端子T2の信号を入力して、出力制限回路12の出力信号を監視する。また、制御部51は、例えば、端子T4の信号を入力して、ホールIC13の出力信号を監視する。また、制御部51は、ホールIC校正時に端子T4の信号を入力して、ホールIC13からの応答信号を監視する。また、制御部51は、ホールIC校正時にスイッチ53をオンして、端子T2と端子T3(グランド)間を短絡する。また、制御部51は、駆動部54を介して、アクチュエータ55を制御し、スプール42のストロークを変化させる。また、制御部51は、電源部52の出力電圧を制御する。
【0029】
電源部52は、制御部51の指示に従って、通常使用時の電源電圧(例えば5V)とホールIC校正時に使用される高電圧(例えば12.5V)を切り換えて端子T1に出力したり、ホールIC13の通信仕様に基づく所定のパターンで電圧値を変化させて端子T1へ出力することでホールIC13へデータを送信したりする。
【0030】
スイッチ53は、半導体スイッチ、電磁リレー等のスイッチであり、一端を端子T2に接続し、他端を端子T3(グランド)に接続する。スイッチ53は、制御部51の指示に従って、端子T2と端子T3間を短絡したり、開放したりする。
【0031】
駆動部54は、制御部51の指示に従ってアクチュエータ55を駆動する。アクチュエータ55は、伸縮部56を有し、伸縮部56を矢印A0方向に伸縮させることでスプール42の位置を変化させる。
【0032】
なお、図1では、センサ10と校正用装置50との組み合わせが、校正用システム100を構成する。
【0033】
(校正用装置の動作例)
次に、図12を参照して、校正用装置50を用いた校正処理の流れについて説明する。図12に示す処理では、まず、操作者がセンサ10を校正用装置50に接続する(S11)。所定の開始操作がなされると、校正用装置50(制御部51)は、電源電圧Vsupを5V(規定値)とする(S12)。その際、校正用装置50は、Sig1とGND間を開放する(S13)。次に、校正用装置50は、センサ10のスプール42を位置A(伸び位置)に移動させる(S14)。次に、校正用装置50は、Sig2電圧を計測し、変数Vaに記憶する(S15)。次に、校正用装置50は、センサ10のスプール42を位置B(縮み位置)に移動させる(S16)。次に、校正用装置50は、Sig2電圧を計測し、変数Vbに記憶する(S17)。次に、校正用装置50は、位置A、Bでの予め与えられた目標電圧とVa、Vbにより校正用パラメータを計算する(S18)。次に、校正用装置50は、Sig1とGND間を短絡する(S19)。次に、校正用装置50は、Vsup、Sig2より、校正用パラメータを送信する(S20)。次に、校正用装置50は、VsupにEEPROM書込み用電圧12.5Vを印加する(S21)。次に、校正用装置50は、センサ10のスプール42の位置を変化させ、Sig2とストロークの関係を評価して(S22)、処理を終了する。
【0034】
(第1実施形態の作用・効果)
第1実施形態によれば、高電圧を用いる回路(第2回路2)と高電圧を印加したくない回路(第1回路1)の電源を、簡単な構成で共通化することができる。
【0035】
(第1実施形態の変形例)
図13は、出力制限回路12の出力特性の他の例を示す。図13は、出力制限回路12の入力信号(センサ素子11の出力信号)と、出力制限回路12の出力信号との関係の例を示す。横軸は、振動加速度、縦軸は電圧である。図13に示す例では、入力信号を所定値オフセットさせるとともに、出力信号の変化率を抑えることで、出力制限回路12の出力信号を電源電圧の1/2以上に制限している。この場合、振動加速度の正負の情報を維持することができる。
【0036】
[第2実施形態]
図14は、本開示の第2実施形態に係るセンサおよび校正用装置の構成例を示すブロック図である。第2実施形態は、第1実施形態のスイッチング素子TR1に対応する構成であるスイッチング素子TR1aを、p型MOSFETに変更するとともに、センサ素子11の正側電源端子Vと端子T1間に設けた点が主要な変更点である。第2実施形態では、校正用システム100aが、センサ10aと、校正用装置50aとを備える。
【0037】
センサ10aでは、スイッチング素子TR1aのドレインがセンサ素子11の正側電源端子Vに接続され、ソースが端子T1に接続され、ゲートが端子T2に接続されている。また、ツェナーダイオードZD1に対応するツェナーダイオードZD1aのアノードが端子T3に接続され、カソードがセンサ素子11の正側電源端子Vに接続されている。また、出力制限回路12に対応する出力制限回路12aは、アナログ絶対化処理を行う回路であり、(入力電圧-電源電圧の1/2)の絶対値を、電源電圧の1/2から減じた値の電圧の信号を端子Oから出力する。この場合、出力制限回路12aは、所定の電圧範囲内(電源電圧の1/2以下、グランド電圧以上の範囲)に制御されたセンサ信号(センサ素子11の出力信号)を端子T2を介して外部に出力する。
【0038】
出力制限回路12aは、通常使用時に電源電圧の1/2以下の値の電圧を出力する。この出力制限回路12aの出力電圧は、抵抗R1を介してスイッチング素子TR1aのゲートに印加される。したがって、スイッチング素子TR1aは、通常使用時に常にオンとなる。他方、端子T1と端子T2が短絡(あるいは抵抗R1に対して十分低い抵抗値で接続)された場合、ゲート電圧は0V(あるいはほぼ0V)となり、スイッチング素子TR1aはオフする。
【0039】
一方、校正用装置50aは、スイッチ53に対応するスイッチ53aが端子T1と端子T2の間を接続し、制御部51に対応する制御部51aによってオンまたはオフに制御される。
【0040】
以上の構成において、センサ10aは、製造後、ホールIC校正時には、校正用装置50aに接続され、スプール42を実際に移動させてホールIC13の出力信号が計測され、計測結果に基づいてEEPROM14への校正用データの書き込みが行われる。その際、所定の期間、端子T1と端子T3間にはデータ書込用の高電圧(例えば12.5V)が印加される。校正用装置50aは、端子T1と端子T3間にデータ書込用の高電圧を印加する場合、端子T1と端子T2間を短絡する。端子T1と端子T2間が短絡された場合、スイッチング素子TR1aはオフとなり、センサ素子11には電源が供給されなくなる。したがって、センサ素子11(第1回路1)に対して許容電源電圧を超える電圧は印加されない。
【0041】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、高電圧を用いる回路(第2回路2)と高電圧を印加したくない回路(第1回路1)の電源を、簡単な構成で共通化することができる。
【0042】
[第3実施形態]
図15は、本開示の第3実施形態に係るセンサおよび校正用装置の構成例を示すブロック図である。第3実施形態は、第1実施形態の第2回路2に対する第2回路2bを、ホールIC13ではなく、ヒューズF1~F3を用いて校正用のデータを記憶する回路に変更した点が第1実施形態と異なる。第2回路2bは、ヒューズF1~F3とツェナーダイオードZD3~ZD5(高電圧動作回路)を備える。また、コネクタ3に対応するコネクタ3bでは、端子T4が不使用である(または省略されている)。第1回路1に対応する第1回路1bは、センサ素子11に対応するセンサ素子11bを備える。センサ素子11bは、新たに複数の設定端子Sを備え、設定端子Sがグランドに短絡されているか否かの状態に応じて、出力特性等を校正する。
【0043】
ヒューズF1~F3とツェナーダイオードZD3~ZD5はそれぞれ直列接続され、ヒューズF1~F3の一方の各端子が端子T3に接続され、ツェナーダイオードZD3~ZD5の各カソードが端子T1に接続されている。ヒューズF1~F3の他方の各端子とツェナーダイオードZD3~ZD5のアノードが複数の端子Sの各1つに接続されている。ツェナーダイオードZD3~ZD5のツェナー電圧は、通常の電源電圧より高電圧であって、互いに異なる。
【0044】
第2回路2bは、端子T1と端子T3間にツェナーダイオードZD3~ZD5のツェナー電圧を超える電圧が印加された場合、ヒューズF1~F3を溶断する。
【0045】
一方、校正用装置50に対応する校正用装置50bは、制御部51に対応する構成である制御部51bと、電源部52に対応する構成である電源部52bと、スイッチ53とを備える。電源部52bは、通常の電圧と、ヒューズF1~F3を溶断させる各電圧を、切り換えて出力する。制御部51bは、例えば、所定の振動を印加する等して、センサ素子11bの出力信号Sig1を計測し、計測結果に基づいて溶断するヒューズF1~F3を決定し、スイッチ53をオンさせた状態で、電源部52から溶断に必要な高電圧を出力させる。
【0046】
第3実施形態によれば、第1実施形態および第2実施形態と同様に、高電圧を用いる回路(第2回路2b)と高電圧を印加したくない回路(第1回路1b)の電源を、簡単な構成で共通化することができる。
【0047】
[各実施形態の態様]
第1の態様は、電源端子(T1、T3)と、前記電源端子を介して外部から供給された電源を共用する第1回路(1、1b)および第2回路(2、2b)と、スイッチング素子(TR1、TR1a)と、所定の電圧範囲内(電源電圧の1/2以上または電源電圧の1/2以下)に制御されたセンサ信号を外部に出力するセンサ信号出力端子(T2)とを備え、前記第1回路へは、前記スイッチング素子を介して前記電源が供給され、前記第2回路は、前記第1回路の許容電源電圧よりも高電圧の電源電圧で動作する高電圧動作回路(EEPROM14、ツェナーダイオードZD4~ZD6およびヒューズF1~F3)を含み、前記スイッチング素子は、前記センサ信号出力端子の電圧が前記電圧範囲内である場合にオンし、前記センサ信号出力端子の電圧が前記電圧範囲外に外部から制御された場合にオフするセンサである。
【0048】
第2の態様は、前記第1回路は、センサ素子(11、11b)を含み、前記センサ素子の出力信号を前記電圧範囲内に制限して前記センサ信号出力端子へ出力する出力制限回路(12)をさらに備えるセンサである。
【0049】
第3の態様は、第2センサ信号出力端子(T4)をさらに備え、前記高電圧動作回路が、不揮発性メモリ(EEPROM13)であり、前記第2回路が、第2センサ素子(ホールIC13内の不図示のホール素子)を含み、前記不揮発性メモリの記憶内容に基づいて前記第2センサ素子の出力信号を処理して、前記第2センサ信号出力端子へ出力するセンサである。
【0050】
第4の態様は、第1の態様のセンサに接続し、前記センサ信号出力端子の電圧を前記電圧範囲外に制御するとともに、前記電源端子に前記高電圧を供給して前記高電圧動作回路を動作させる校正用装置(50、50a、50b)である。
【0051】
第5の態様は、前記高電圧動作回路が、不揮発性メモリである校正用装置である。
【0052】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0053】
例えば、負側電源端子(グランド端子)は、センサ10の金属筐体をグランド電位とする場合に、コネクタ3の端子T3を省略して、筐体グランドとしてもよい。また、図1に示す構成において、例えば、第1回路1にセンサ素子11と出力制限回路を設け、スイッチング素子TR1で電源をオンまたはオフできるようにするとともに、端子T2と端子T3間が短絡されていない場合に、端子T1の電圧を用いてスイッチング素子TR1のゲートにオン電圧を印加する回路を追加してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1、1b…第1回路、2、2b…第2回路、10、10a、10b…センサ、11、11b…センサ素子、13…ホールIC、14…EEPROM、50、50a、50b…計測用装置、TR1、TR1a…スイッチング素子、T1…端子(電源端子)、T2…端子(センサ信号出力端子)、T3…端子(電源端子)、T4…端子(第2センサ信号出力端子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15