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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183810
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】エンコーダ配線の障害検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/54 20200101AFI20231221BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01R31/54
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097552
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】向井 公久
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 元
【テーマコード(参考)】
2G014
3C707
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AA03
2G014AB34
3C707AS01
3C707BS09
3C707HS27
3C707JS05
3C707KV01
3C707KX05
3C707LV23
3C707MS21
(57)【要約】
【課題】エンコーダを備える被制御機器と被制御機器を制御するコントローラとを備えるシステムにおいて、エンコーダ配線に障害が起きたときに障害の発生を検出できるとともに障害の発生箇所を容易に特定できるようにする。
【解決手段】エンコーダ60からコントローラ10に送られる信号を第1の信号とし、コントローラ10からエンコーダ60に送られる信号を第2の信号として、第1の信号を送るエンコーダ配線における障害を検出する第1の検出回路42と、第2の信号を送るエンコーダ配線における障害を検出する第2の検出回路45と、を設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンコーダを備える被制御機器と前記被制御機器を制御するコントローラとを備えて前記エンコーダと前記コントローラとがエンコーダ配線を介して接続するシステムにおいて前記エンコーダ配線に発生した障害を検出する障害検出装置であって、
前記エンコーダから前記コントローラに送られる信号を第1の信号とし、前記コントローラから前記エンコーダに送られる信号を第2の信号として、
前記第1の信号を送る前記エンコーダ配線における障害を検出する第1の検出回路と、
前記第2の信号を送る前記エンコーダ配線における障害を検出する第2の検出回路と、
を有する、障害検出装置。
【請求項2】
少なくとも第2の検出回路が前記被制御機器に設けられている、請求項1に記載の障害検出装置。
【請求項3】
前記被制御機器に設けられたインタフェース部を有し、
前記エンコーダ配線は、前記コントローラと前記インタフェース部との間のインタフェース配線と、前記インタフェース部と前記エンコーダとの間の機器内配線とに分割され、
前記インタフェース部は、前記機器内配線を介して前記第1の信号を受信する第1のレシーバと、前記第1のレシーバでの受信結果に基づいて前記インタフェース配線を介して前記第1の信号を送信する第1のドライバと、前記インタフェース配線を介して前記第2の信号を受信する第2のレシーバと、前記第2のレシーバでの受信結果に基づいて前記機器内配線を介して前記第2の信号を送信する第2のドライバと、を有し、
前記第1の検出回路は前記インタフェース部において前記第1のレシーバの入力側に設けられ、前記第2の検出回路は前記インタフェース部において前記第2のレシーバの入力側に設けられている、請求項2に記載の障害検出装置。
【請求項4】
前記インタフェース部に設けられて前記コントローラに対して接続するプロセッサをさらに有し、
前記第1の検出回路及び前記第2の検出回路での検出結果が前記プロセッサに入力する、請求項3に記載の障害検出装置。
【請求項5】
前記被制御機器は複数の前記エンコーダを備え、前記エンコーダごとに前記エンコーダ配線と前記第1の検出回路と前記第2の検出回路が設けられ、前記プロセッサは前記複数のエンコーダに対して共通に設けられている、請求項4に記載の障害検出装置。
【請求項6】
前記コントローラの内部に設けられて前記第1の信号を送る前記インタフェース配線での障害を検出する第3の検出回路をさらに備える、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の障害検出装置。
【請求項7】
前記第1の信号及び前記第2の信号は差動出力信号の形態で伝送され、前記第1の検出回路及び前記第2の検出回路はいずれも排他的論理和ゲートを備える、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の障害検出装置。
【請求項8】
前記被制御機器がマニピュレータである、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の障害検出装置。
【請求項9】
前記第1の検出回路及び前記第2の検出回路が前記コントローラの内部に設けられている、請求項1に記載の障害検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダを備える被制御機器とエンコーダからの信号に基づいて被制御機器の制御を行なうコントローラとを備えるシステムにおいて、エンコーダ配線における障害を検出する障害検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダを備える被制御機器と、エンコーダからの信号に基づいてその被制御機器を制御するコントローラとからなるシステムがある。例えば、軸ごとにモータを備えるマニピュレータと、マニピュレータ内のモータをサーボ制御するコントローラとから構成されるロボットシステムでは、各軸のモータに対してそのモータの回転位置を検出するエンコーダが取り付けられており、エンコーダで検出されたモータ位置はサーボ制御のためにコントローラ側にフィードバックされる。近年ではデジタル化されたエンコーダが普及してきており、デジタルエンコーダに対してはコントローラ側からエンコーダに対してコマンドが送信される。したがって、コントローラとマニピュレータ内のエンコーダとの間には、信号の伝達のためにエンコーダ配線が設けられる。エンコーダ配線の形式としては、単純にエンコーダパルスあるいは“0”及び“1”の二値論理値を送信するように構成されたもののほか、論理信号とその反転信号とからなる1対の差動出力信号を伝送するように構成された差動信号配線などが知られている。
【0003】
エンコーダ配線に断線や短絡などの障害が発生するとシステムは正常に動作しなくなる。そのため、エンコーダ配線における障害を検出する各種の方法が提案されている。特許文献1及び特許文献2は、エンコーダ配線が差動信号配線で構成されているときに、差動信号配線を構成する1対の信号線からの信号を排他的論理和(ExOR)ゲートに入力し、排他的論理和ゲートの出力が“0”となったときにエンコーダ配線に断線があると判定する断線検出回路を開示している。特許文献3は、オープンコレクタ出力型のエンコーダからのエンコーダ配線の断線を検出するために、エンコーダ電源と、エンコーダ電源よりも高い電圧の断線検出用電源と、エンコーダ側の過電圧防止用ダイオードとを使用してすることを開示している。
【0004】
エンコーダとの通信に異常が発生したときに異常箇所の特定を容易にするものとして特許文献4は、エンコーダのインタフェースと同一のインタフェースを有する通信部と、予め決められたエンコーダデータを作成するエンコーダデータ作成部とを有するエンコーダ通信回路を開示している。エンコーダとの通信に異常が発生したときに当該エンコーダに代えてエンコーダ通信回路を接続することにより、異常の原因が配線にあるのか、エンコーダそのものにあるのか、あるいはコントローラ側の通信回路にあるのかの切り分けを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62-91267号公報
【特許文献2】特開平4-355322号公報
【特許文献3】特許第4058431号公報
【特許文献4】特開2008-92620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エンコーダ配線に障害が発生した場合、障害箇所の特定のためにすべてのエンコーダ配線を目視で確認したり、あるいは配線を交換して障害箇所を確認する必要があり、障害箇所の特定に時間を要する。例えば搬送用のロボットを含むシステムの場合、コントローラからマニピュレータまでの配線長が10mを超えることがあり、マニピュレータの内部においても個々のエンコーダまでの配線長が10mを超えることがあり、全体としてエンコーダ配線の延長が数十mに及ぶこともある。ロボットシステムにおいてエンコーダ配線における障害が発生したときは、障害箇所の特定のためのダウンタイムが長大なものとなる。特許文献1~3に示される検出回路を用いることによりエンコーダ配線の断線を検出できても、断線箇所の特定にはエンコーダ配線の全体を目視で確認するなどの作業を行う必要がある。特許文献4に示されるエンコーダ通信回路を使用したとしても、エンコーダ配線のどこで障害が発生したかを検出することができない。コントローラによって制御される被制御機器がマニピュレータ以外の機器であっても、その機器がエンコーダを備えてエンコーダからの出力に応じてコントローラが制御を行なうときは、同様の課題が生ずる。
【0007】
本発明の目的は、エンコーダ配線に障害が起きたときに障害の発生を検出できるとともに障害の発生箇所を容易に特定できる障害検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の障害検出装置は、エンコーダを備える被制御機器と被制御機器を制御するコントローラとを備えてエンコーダとコントローラとがエンコーダ配線を介して接続するシステムにおいて、エンコーダ配線に発生した障害を検出するものである。エンコーダからコントローラに送られる信号を第1の信号とし、コントローラからエンコーダに送られる信号を第2の信号として、障害検出装置は、第1の信号を送る前記エンコーダ配線における障害を検出する第1の検出回路と、第2の信号を送る前記エンコーダ配線における障害を検出する第2の検出回路と、を有する。
【0009】
これまではエンコーダ配線での障害の発生を検出する検出回路は、コントローラにおいてエンコーダ側からの信号を受信する位置にのみ設けられていた。これだけではエンコーダ配線において発生する障害の検出に十分ではないとともに、障害発生箇所の特定を行うことが難しかった。一態様の障害検出装置では、エンコーダからコントローラに送られる信号(すなわち第1の信号)のエンコーダ配線と、コントローラからエンコーダに送られる信号(すなわち第2の信号)のエンコーダ配線との両方に検出回路を設けることより、エンコーダ配線における障害の発生をより確実に検出でき、障害発生箇所の特定も容易に行える。この場合、第2の検出回路を被制御機器に設けることにより、コントローラから被制御機器までの区間での第2の信号のエンコーダ配線における障害の発生をさらに確実に検出できるようになる。
【0010】
一態様では、被制御機器に例えば回路基板としてインタフェース部を設けた上で、コントローラとインタフェース部との間のインタフェース配線と、インタフェース部とエンコーダとの間の機器内配線とにエンコーダ配線を分割し、インタフェース部には、機器内配線を介して第1の信号を受信する第1のレシーバと、第1のレシーバでの受信結果に基づいてインタフェース配線を介して第1の信号を送信する第1のドライバと、インタフェース配線を介して第2の信号を受信する第2のレシーバと、第2のレシーバでの受信結果に基づいて機器内配線を介して第2の信号を送信する第2のドライバと、を設け、第1の検出回路をインタフェース部において第1のレシーバの入力側に設け、第2の検出回路をインタフェース部において第2のレシーバの入力側に設けることが好ましい。レシーバを設けてエンコーダ配線から信号を受信し、レシーバでの受信結果に基づいてドライバから別のエンコーダ配線に信号を送出するときは、レシーバに接続するエンコーダ配線に障害があってもレシーバは“0”または“1”の論理信号を出力し、ドライバはこの論理信号に基づいてエンコーダ配線に信号を送出する。すなわち、ドライバから信号が送出される方のエンコーダ配線では正常な信号が観察される。このことは、レシーバの出力がドライバの入力に接続するようにレシーバとドライバとを組み合わせたものをエンコーダ配線に挿入することによって、その挿入位置においてエンコーダ配線での障害を切り分けできることを意味する。したがって、インタフェース部にレシーバとドライバとを配置することよって、エンコーダ配線における障害箇所の特定が容易になる。
【0011】
第1の検出回路と第2の検出回路を被制御機器のインタフェース部に設けたときは、コントローラに対して接続するマイクロプロセッサなどのプロセッサを設け、第1の検出回路及び第2の検出回路での検出結果がプロセッサに入力するようにすることが好ましい。このように構成することにより、第1の検出回路及び第2の検出回路での検出結果をコントローラ側で知ることができて、コントローラにおいて、エンコーダ配線での障害発生箇所を容易に特定することができる。また、被制御機器が複数のエンコーダを備えるときは、エンコーダごとにエンコーダ配線と第1の検出回路と第2の検出回路とが設けられるが、これらの複数のエンコーダに対してプロセッサが共通に設けられるようにすることが好ましい。この構成では、エンコーダが複数あってもインタフェース部には1つのプロセッサしか設けられないので、インタフェース部の構成を簡素なものにできるとともに、インタフェース部とコントローラとの間の配線数を削減することができる。
【0012】
第1の検出回路をインタフェース部に設ける場合において、第1の信号を送るインタフェース配線での障害を検出する第3の検出回路をコントローラの内部に設けてもよい。第3の検出回路を設けることによって、エンコーダ配線における障害箇所の特定をさらに容易に行えるようになる。
【0013】
別の態様での障害検出装置では、第1の検出回路及び第2の検出回路がコントローラの内部に設けられる。被制御機器に第1の検出回路や第2の検出回路を設けることができない場合であっても、第1の検出回路及び第2の検出回路がコントローラの内部に設けることにより、エンコーダ配線における障害箇所の特定が容易になる。
【0014】
第1の信号及び第2の信号の伝送形態は任意であるが、第1の信号と第2の信号は、例えば、差動出力信号の形態で伝送される。この場合、排他的論理和ゲートを用いて第1の検出回路及び第2の検出回路を構成することにより、さまざまな障害モードの障害を簡素な回路構成で検出できる。
【0015】
本発明に基づく障害検出装置が対象とする被制御機器は、例えばロボットシステムにおけるマニピュレータである。マニピュレータの場合、そこに設けられるエンコーダ数が多くなり、また、エンコーダ配線も長大となりがちであるが、本発明に基づく障害検出装置を適用することによって、エンコーダ配線に障害が発生したときに障害箇所を特定するために必要となる時間を大幅に削減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エンコーダ配線に障害が起きたときに障害の発生を検出できるとともに障害の発生箇所を容易に特定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一般的なロボットシステムにおけるエンコーダ配線を示す図である。
図2】本発明の実施の一形態のロボットシステムを示すブロック図である。
図3】エンコーダとの通信を差動出力信号で行う場合の図2に示すロボットシステムの構成を示す図である。
図4】別の実施形態のロボットシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明に基づく障害検出装置は、エンコーダを備える被制御機器と被制御機器を制御するコントローラとを備えてエンコーダとコントローラとがエンコーダ配線を介して接続するシステムにおいて、エンコーダ配線に発生した障害を検出するものである。以下では、システムがコントローラとマニピュレータからなるロボットシステムであって、被制御機器がマニピュレータであるものとして説明を行う。この場合、コントローラは、マニピュレータの各軸のモータに設けられたエンコーダからの出力に基づき、それらのモータのサーボ制御を行なう。もちろん、本発明が適用されるシステムはロボットコントローラに限定されるものではなく、被制御機器もマニピュレータに限定されるものではない。
【0019】
最初に、一般的なロボットシステムにおけるエンコーダ配線について、図1を用いて説明する。図1に示すロボットシステムは、コントローラ10とマニピュレータ40とから構成されている。マニピュレータ40は複数の軸を備えており、エンコーダ60も複数設けられている。図では2個のエンコーダ60が描かれている。図において太線はエンコーダ配線を示している。エンコーダ60ごとに、エンコーダ60からコントローラ10に信号を送るエンコーダ配線pと、コントローラ10からエンコーダ60に信号を送るエンコーダ配線qが設けられている。コントローラ10とマニピュレータ40の間は、複数のエンコーダ60の各々に対応するエンコーダ配線p,qを束ねたインタフェースケーブル30で接続されている。そして、マニピュレータ40にはインタフェースケーブル30の接続箇所となる分配部49が設けられており、分配部49において、インタフェースケーブル30に束ねられているエンコーダ配線p,qが、個々のエンコーダ60へのエンコーダ配線p,qに分けられている。分配部49と個々のエンコーダ60の間では、エンコーダ配線p,qは、エンコーダ60ごとの機器内ケーブル50に収容されている。
【0020】
コントローラ10には、エンコーダ60から信号により通知されたモータ位置に基づいてサーボ制御のための演算を行い、また、エンコーダ60に対するコマンドを生成して信号として送出する上位制御回路11と、上位制御回路11に接続するとともにエンコーダ配線p,qが接続する接続部12とが設けられている。接続部12には、各エンコーダ60に対応して、エンコーダ60から信号が送られてくるエンコーダ配線pにおける断線などの障害を検出する検出回路13と、このエンコーダ配線pにより送られてきた信号を受信して上位制御回路11に出力するレシーバ14と、上位制御回路11に接続して信号を受け取り、この信号をエンコーダ配線qによりエンコーダ60に送信するドライバ15と、が設けられている。検出回路13には、例えば特許文献1~3などに示される断線検出回路が使用されており、検出回路13での検出結果は上位制御回路11に入力する。またエンコーダ60には、エンコーダ配線pに対して信号を送出するドライバ61と、エンコーダ配線qを介して信号を受信するレシーバ62とが設けられている。
【0021】
図1に示すロボットシステムでは、エンコーダ60からコントローラ10に信号を送るエンコーダ配線pにおける断線などの障害が発生したときに、その障害の発生を検出回路13により検出することができる。しかしながら障害の発生箇所がインタフェースケーブル30なのか機器内ケーブル50なのかを特定することはできない。またコントローラ10からエンコーダ60に信号を送るエンコーダ配線qにおける障害を直接検出することはできない。エンコーダ配線qに障害が発生するとコマンドがエンコーダ60に到達しなくなるので、コマンドを送信したにもかかわらずコマンドに対応する信号をエンコーダ60が送ってこないことを検出することにより、エンコーダ配線qにおける障害の発生を間接的に推定することはできる。しかしながらこの場合、エンコーダ配線qにおける障害なのかエンコーダ60そのものの故障なのかを切り分けることができず、また、エンコーダ配線qにおける障害の発生箇所がインタフェースケーブル30なのか機器内ケーブル50なのかを特定することもできない。
【0022】
本発明に基づく障害検出装置は、図1に示すような一般的なロボットシステムではエンコーダ配線における障害の発生の検出と障害箇所の特定に不十分な点がある、という課題を解決しようとするものである。図2は、本発明の実施の一形態のロボットシステムを示している。このロボットシステムは、本発明に基づく障害検出装置を備えて構成されたものである。
【0023】
図2に示すロボットシステムは、図1に示したロボットシステムのマニピュレータ40において、分配部49の代わりにインタフェース部41を設け、コントローラ10の接続部12にマイクロプロセッサ18を設けたものである。コントローラ10内に設けられる検出回路13からの検出結果は、上位制御回路11に直接入力するのではなく、マイクロプロセッサ18に入力する。そして、エンコーダ60からコントローラ10に信号を送るエンコーダ配線pは、エンコーダ60からインタフェース部41までのエンコーダ配線である機器内配線aと、インタフェース部41からコントローラ10までのインタフェース配線bとに分割されている。同様にコントローラ10からエンコーダ60に信号を送るエンコーダ配線qは、コントローラ10からインタフェース部41までのインタフェース配線cと、インタフェース部41からエンコーダ60までの機器内配線dとに分割されている。インタフェースケーブル30では、複数のエンコーダ60に対応したインタフェース配線b.cが束ねられている。エンコーダ60ごとにマニピュレータ40で設けられる機器内ケーブル50では、対応するエンコーダへの機器内配線a,dが束ねられている。
【0024】
インタフェース部41には、エンコーダ60から信号が送られてくる機器内配線aに関して、エンコーダ60ごとに、機器内配線aにおける断線や短絡などの障害を検出する検出回路42と、機器内配線aにより送られてきた信号を受信するレシーバ43と、レシーバ43での受信結果に基づいてインタフェース配線bを介してコントローラ10に向けて信号を送信するドライバ44とが設けられている。またインタフェース部41には、コントローラ10から信号が送られてくるインタフェース配線cに関して、エンコーダ60ごとに、インタフェース配線cにおける障害を検出する検出回路45と、インタフェース配線cにより送られてきた信号を受信するレシーバ46と、レシーバ46での受信結果に基づいて機器内配線dを介して対応するエンコーダ60に向けて信号を送信するドライバ47とが設けられている。この構成では、インタフェース部41において、検出回路42はレシーバ43の入力側に設けられ、検出回路45はレシーバ46の入力側に設けられている。検出回路42,45としては、コントローラ10に設けられる検出回路13と同様の構成のものを使用することができる。
【0025】
インタフェース部41には、さらにマイクロプロセッサ48が設けられている。マニピュレータ40に複数のエンコーダ60が設けられ、エンコーダ60の個数に対応した数の検出回路42,45、レシーバ43,46及びドライバ44,47がインタフェース部41に設けられる場合であっても、インタフェース部41に設けられるマイクロプロセッサ48の数は原則として1個であり、このマイクロプロセッサ48は複数のエンコーダ60に対して共通に設けられている。マイクロプロセッサ48は、コントローラ10内に設けられたマイクロプロセッサ18に対し、インタフェースケーブル30内に設定されたシリアル通信ライン31を介して接続している。インタフェース部41内に設けられる検出回路42,47からの検出結果は、マイクロプロセッサ48に入力する。マイクロプロセッサ48は、受信した検出結果をコントローラ10内のマイクロプロセッサ18を介し上位制御回路11に送る。マイクロプロセッサ48として、マニピュレータ40内に設けられる温度センサ(不図示)や加速度センサ(不図示)での測定結果をコントローラ10に送信するために用いられる既設のマイクロプロセッサを用いることもできる。
【0026】
図2に示したロボットシステムにおいてエンコーダ配線に障害が発生した場合を考える。エンコーダ60からコントローラ10に信号を送るエンコーダ配線のうち機器内配線aで障害が起きたときは、その障害は、インタフェース部41内の検出回路42によって検出され、障害が発生したことはマイクロプロセッサ48を介してコントローラ10側に伝えられる。機器内配線aで障害が発生したとしても、機器内配線aからの信号を受信するレシーバ43は、ドライバ44に対して例えば“0”または“1”の二値論理信号を出力し、ドライバ44はレシーバ43からの信号に基づいてインタフェース配線bに対して信号を出力する。このときインタフェース配線bに出力される信号は、通常時の信号と同じ特徴を有し、正常な信号とみなされるものである。そしてこのときインタフェース配線bが正常であれば、コントローラ10内の検出回路13は障害を検出しない。すなわち、図1に示すロボットシステムであれば、検出回路13によってエンコーダ配線pのどこかでの障害として検出されたものが、図2に示すシステムでは、マニピュレータ40内でのエンコーダ配線である機器内配線aでの障害として検出されたことになり、障害箇所が詳しく特定されたことになる。同様にインタフェース配線bにおいて障害が発生したときはコントローラ10内の検出回路13によって検出されるが、このとき、インタフェース部41に設けられた検出回路42,47は障害を検出せず、この場合も障害箇所を詳しく特定できたことになる。インタフェース配線cでの障害は、インタフェース部41に設けられた検出回路45によって検出される。
【0027】
図2に示したロボットシステムでは、検出回路42,47での検出結果はマイクロプロセッサ48とマイクロプロセッサ18を介して上位制御回路11に伝えられ、検出回路13での検出結果はマイクロプロセッサ18を介して上位制御回路11に伝えられる。上位制御回路11は、これらの検出結果に基づき、エンコーダ配線における障害の発生を認識して障害発生箇所の特定を行う。障害発生箇所を特定できれば上位制御回路は、例えば、エンコーダ回線のどの部分に障害が発生したかを表示装置(不図示)上に図示することができる。
【0028】
図3は、図2に示すロボットシステムにおいて、エンコーダ配線での信号の伝送に差動出力信号が用いられる場合の構成の詳細を示している。図3では、図面を見やすくするため、マニピュレータ40に接続されるエンコーダ60は1つしか描かれていない。差動出力信号の伝送を行うので、ドライバ15,44,47,62は、非反転論理信号と反転論理信号を同時に出力するラインドライバとして構成され、レシーバ4,43,46,61は、非反転論理信号と反転論理信号を同時に受信するラインレシーバとして構成されている。機器内配線aは、非反転論理信号の信号線Aと反転論理信号の信号線/Aからなる1対の信号線によって構成される。同様に、インタフェース配線bは信号線B,/Bからなり、インタフェース配線cは信号線C,/Cからなり、機器内配線dは信号線D,/Dからなる。
【0029】
検出回路13,42,45は同一の構成である。例えば検出回路42は、一方の入力端子に信号線Aが接続し他方の入力端子に信号線/Aが接続する排他的論理和(ExOR)ゲート21と、信号線Aと信号線/Aの間に挿入された抵抗22と、信号線Aと信号線/Aをそれぞれ電源電圧にプルアップする抵抗23,24とからなっている。ExORゲート21を使用するこの検出回路42では、機器内配線aが正常であれば信号線Aと信号線/Aとは相互に反転しているので、ExORゲート21の出力は“1”である。これに対し、機器内ケーブル50内で信号線Aと信号線/Aの一方が断線したときは、抵抗22があることにより、ExORゲート21の2つの入力端子が同じレベルとなるのでExORゲート21の出力は“0”となり、障害発生を検出できる。信号線Aと信号線/Aの両方が断線したときもプルアップ用の抵抗23,24があって2つの入力端子のレベルが同じとなるので、障害発生を検出できる。信号線Aが“1”を出力しているときに信号線Aが地絡となれば、ExORゲート21の2つの入力端子が“0”となるので、同様に障害発生を検出できる。同様に信号線Aが“1”を出力しているときに信号線/Aが天絡となれば、ExORゲート21の2つの入力端子が“1”となるので、同様に障害発生を検出できる。信号線Aと信号線/Aが短絡したときは、ExORゲート21の2つの入力端子が同じレベルとなるので、障害発生を検出できる。検出回路13,45も同様にして障害発生を検出することができる。このように、検出回路13,42,45によれば、エンコーダ配線におけるさまざまな障害モードの障害を簡素な回路構成で検出できる。
【0030】
以上説明した実施形態では、マニピュレータ40にインタフェース部41を設けてエンコーダ配線をコントローラ10側のインタフェース配線b,cとエンコーダ60側の機器内配線a,dに分割し、インタフェース部41においてインタフェース配線b,cと機器内配線a.dとをレシーバ43,46とドライバ44,47との組み合わせを介して接続し、さらにレシーバ43,46の入力側に検出回路42,45を設けることによって、障害発生箇所を特定しつつ障害の発生を検出することができる。
【0031】
図4は、他の実施形態のロボットシステムを示している。図2図3を用いたロボットシステムは、図1に示したロボットシステムにおいてマニピュレータ40側にも検出回路42,45を設けようとするものである。しかしながら、マニピュレータ40側に検出回路を設けることが困難な場合もある。そのような場合には、図4に示すように、エンコーダ60からコントローラ10に信号を送るエンコーダ配線pにおける障害を検出する検出回路13のほかに、コントローラ10からエンコーダ60に信号を送るエンコーダ配線qにおける障害を検出する検出回路16をコントローラ10内に設ければよい。図1に示すロボットシステムではエンコーダ配線qにおける障害の発生を直接的に検出することはできなかったが、図4に示すロボットシステムでは、エンコーダ配線qにおける障害の発生を直接的に検出することができる。エンコーダ配線において信号が差動出力信号の形態で送信され、また、検出回路16として図3を用いて説明した検出回路13と同じ回路構成のものが使用されるとして、図4に示すロボットシステムでは、エンコーダ配線qに関し、非反転論理信号の信号線と反転論理信号の信号線との間の短絡や、これらの信号線における天絡、地絡などの障害の発生を検出できる。
【0032】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
【0033】
(1) エンコーダを備える被制御機器と前記被制御機器を制御するコントローラとを備えて前記エンコーダと前記コントローラとがエンコーダ配線を介して接続するシステムにおいて前記エンコーダ配線に発生した障害を検出する障害検出装置であって、
前記エンコーダから前記コントローラに送られる信号を第1の信号とし、前記コントローラから前記エンコーダに送られる信号を第2の信号として、
前記第1の信号を送る前記エンコーダ配線における障害を検出する第1の検出回路と、
前記第2の信号を送る前記エンコーダ配線における障害を検出する第2の検出回路と、
を有する、障害検出装置。
【0034】
(2) 少なくとも第2の検出回路が前記被制御機器に設けられている、(1)に記載の障害検出装置。
【0035】
(3) 前記被制御機器に設けられたインタフェース部を有し、
前記エンコーダ配線は、前記コントローラと前記インタフェース部との間のインタフェース配線と、前記インタフェース部と前記エンコーダとの間の機器内配線とに分割され、
前記インタフェース部は、前記機器内配線を介して前記第1の信号を受信する第1のレシーバと、前記第1のレシーバでの受信結果に基づいて前記インタフェース配線を介して前記第1の信号を送信する第1のドライバと、前記インタフェース配線を介して前記第2の信号を受信する第2のレシーバと、前記第2のレシーバでの受信結果に基づいて前記機器内配線を介して前記第2の信号を送信する第2のドライバと、を有し、
前記第1の検出回路は前記インタフェース部において前記第1のレシーバの入力側に設けられ、前記第2の検出回路は前記インタフェース部において前記第2のレシーバの入力側に設けられている、(2)に記載の障害検出装置。
【0036】
(4) 前記インタフェース部に設けられて前記コントローラに対して接続するプロセッサをさらに有し、
前記第1の検出回路及び前記第2の検出回路での検出結果が前記プロセッサに入力する、(3)に記載の障害検出装置。
【0037】
(5) 前記被制御機器は複数の前記エンコーダを備え、前記エンコーダごとに前記エンコーダ配線と前記第1の検出回路と前記第2の検出回路が設けられ、前記プロセッサは前記複数のエンコーダに対して共通に設けられている、(4)に記載の障害検出装置。
【0038】
(6) 前記コントローラの内部に設けられて前記第1の信号を送る前記インタフェース配線での障害を検出する第3の検出回路をさらに備える、(3)から(5)のいずれかに記載の障害検出装置。
【0039】
(7) 前記第1の検出回路及び前記第2の検出回路が前記コントローラの内部に設けられている、(1)に記載の障害検出装置。
【0040】
(8) 前記第1の信号及び前記第2の信号は差動出力信号の形態で伝送され、前記第1の検出回路及び前記第2の検出回路はいずれも排他的論理和ゲートを備える、(1)から(7)のいずれかに記載の障害検出装置。
【0041】
(9) 前記被制御機器がマニピュレータである、(1)から(8)のいずれかに記載の障害検出装置。
【符号の説明】
【0042】
10…コントローラ;11…上位制御回路;12…接続部;13,16,42,45…検出回路;14,43,46,62…レシーバ;15,44,47,61…ドライバ;18,48…マイクロプロセッサ;21…排他的論理和(ExOR)ゲート;22~24…抵抗;30…インタフェースケーブル;31…シリアル通信ライン;40…マニピュレータ;41…インタフェース部;49…分配部;50…機器内ケーブル;60…エンコーダ。
図1
図2
図3
図4