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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183811
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】張弦梁構造体
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/292 20060101AFI20231221BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E04C3/292
E04B1/94 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097555
(22)【出願日】2022-06-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)提出日 令和3年10月29日 提出先 国土交通大臣 (2)ウェブサイトの掲載日 令和4年3月11日 ウェブサイトのアドレス http://www.sendo-shien.jp/03/comment/
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】山田 徹
(72)【発明者】
【氏名】ライサミ ベン
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 正幸
(72)【発明者】
【氏名】菅原 和正
(72)【発明者】
【氏名】貞広 修
(72)【発明者】
【氏名】谷口 尚範
(72)【発明者】
【氏名】森田 武
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智紀
(72)【発明者】
【氏名】山下 平祐
【テーマコード(参考)】
2E001
2E163
【Fターム(参考)】
2E001DE03
2E001FA11
2E001FA16
2E001HA01
2E001HB02
2E001HC01
2E163FA16
2E163FF03
(57)【要約】
【課題】木材と鋼材との接合部で耐火性能を向上させることができる張弦梁構造体を提供する。
【解決手段】張弦梁構造体は、支持部材に設けられた鋼製の接合材に支持された木製の上弦材1と、鋼製の下弦材と、上弦材1及び下弦材の長さ方向に間隔をあけて配置され、上弦材1と下弦材とを連結する鋼製の複数の束材3と、上弦材1と束材3、下弦材及び接合材の少なくとも一つとを接合する木鋼接合部10と、を備え、木鋼接合部10には、鋼製の部材から上弦材1への熱伝達を阻害する熱吸収部41が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に設けられた鋼製の接合材に支持された木製の上弦材と、
鋼製の下弦材と、
前記上弦材及び前記下弦材の長さ方向に間隔をあけて配置され、前記上弦材と前記下弦材とを連結する鋼製の複数の束材と、
前記上弦材と前記束材、前記下弦材及び前記接合材の少なくとも一つとを接合する木鋼接合部と、を備え、
前記木鋼接合部には、鋼製の部材から前記上弦材への熱伝達を阻害する熱吸収部が設けられている張弦梁構造体。
【請求項2】
前記木鋼接合部は、前記上弦材と前記束材とを接合する第1接合部を有し、
前記第1接合部は、
前記上弦材の下部から上方に形成された凹部にセメント系充填材が充填された第1熱吸収部と、
前記第1熱吸収部に埋設された前記束材の上端部と、
前記第1熱吸収部を前記上弦材に固定する第1固定部と、を有する請求項1に記載の張弦梁構造体。
【請求項3】
前記第1固定部は、構造ビスである請求項2に記載の張弦梁構造体。
【請求項4】
前記木鋼接合部は、前記上弦材と前記下弦材とを接合する第2接合部を有し、
前記第2接合部は、
前記上弦材の下部から上方に形成された凹部にセメント系充填材が充填された第2熱吸収部と、
前記第2熱吸収部を貫通する前記下弦材の中間部と、
前記第2熱吸収部を前記上弦材に固定する第2固定部と、を有する請求項1または2に記載の張弦梁構造体。
【請求項5】
前記木鋼接合部は、前記上弦材を支持する支持部材の上端部と前記上弦材とを接合する第3接合部を有し、
前記第3接合部は、
前記上弦材の下部から上方に形成された凹部にセメント系充填材が充填された第3熱吸収部と、
前記支持部材の上端部に連結され、前記第3熱吸収部に埋設された前記接合材と、
前記第3熱吸収部を前記上弦材に固定する第3固定部と、を有する請求項1または2に記載の張弦梁構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張弦梁構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、曲げ圧縮材である上弦材(梁)と、引張材である下弦材と、上弦材と下弦材とを繋ぐ圧縮材である束材と、を備えた張弦梁構造体が知られている。下記の特許文献1では、束材の上端部と木製の上弦材とを、張力を有した鉄筋の斜材で連結した構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-37382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、木材と鋼材とを組み合わせたハイブリッド構造では、木材と鋼材との接合部の耐火性が劣るという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、木材と鋼材との接合部で耐火性能を向上させることができる張弦梁構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る張弦梁構造体は、支持部材に設けられた鋼製の接合材に支持された木製の上弦材と、鋼製の下弦材と、前記上弦材及び前記下弦材の長さ方向に間隔をあけて配置され、前記上弦材と前記下弦材とを連結する鋼製の複数の束材と、前記上弦材と前記束材、前記下弦材及び前記接合材の少なくとも一つとを接合する木鋼接合部と、を備え、前記木鋼接合部には、鋼製の部材から前記上弦材への熱伝達を阻害する熱吸収部が設けられている。
【0007】
このように構成された張弦梁構造体では、火災の際に鋼製の部材の温度が上昇する。熱吸収部は、鋼製の束材、下弦材及び接合材の少なくとも一つから上弦材への熱伝達を阻害して、耐火性能を向上させることができる。
【0008】
また、本発明に係る張弦梁構造体では、前記木鋼接合部は、前記上弦材と前記束材とを接合する第1接合部を有し、前記第1接合部は、前記上弦材の下部から上方に形成された凹部にセメント系充填材が充填された第1熱吸収部と、前記第1熱吸収部に埋設された前記束材の上端部と、前記第1熱吸収部を前記上弦材に固定する第1固定部と、を有する。
【0009】
このように構成された張弦梁構造体では、火災の際に鋼製の束材の温度が上昇する。第1接合部では、束材の上端部が埋設された第1熱吸収部において、セメント系充填材に含まれる水分が束材の熱を吸収し、束材の温度上昇を木製の上弦材に直接伝達することがない。この際に、第1熱吸収部は第1固定部によって上弦材に固定されているため、第1熱吸収部が落下せずに、束材の熱を吸収し続けることができる。よって、木製の上弦材と鋼製の束材との接合部である第1接合部において、耐火性能を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る張弦梁構造体では、前記第1固定部は、構造ビスであってもよい。
【0011】
このように構成された張弦梁構造体では、第1熱吸収部を上弦材に向かって構造ビスを打ち付ければよいため、第1固定部の施工性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る張弦梁構造体では、前記木鋼接合部は、前記上弦材と前記下弦材とを接合する第2接合部を有し、前記第2接合部は、前記上弦材の下部から上方に形成された凹部にセメント系充填材が充填された第2熱吸収部と、前記第2熱吸収部を貫通する前記下弦材の中間部と、前記第2熱吸収部を前記上弦材に固定する第2固定部と、を有していてもよい。
【0013】
このように構成された張弦梁構造体では、火災の際に鋼製の下弦材の温度が上昇する。第2接合部では、下弦材の中間部が埋設された第2熱吸収部において、セメント系充填材に含まれる水分が下弦材の熱を吸収し、下弦材の温度上昇を木製の上弦材に直接伝達することがない。この際に、第2熱吸収部は第2固定部によって上弦材に固定されているため、第2熱吸収部が落下せずに、下弦材の熱を吸収し続けることができる。よって、木製の上弦材と鋼製の下弦材との接合部である第2接合部において、耐火性能を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係る張弦梁構造体では、前記木鋼接合部は、前記上弦材を支持する支持部材の上端部と前記上弦材とを接合する第3接合部を有し、前記第3接合部は、前記上弦材の下部から上方に形成された凹部にセメント系充填材が充填された第3熱吸収部と、前記支持部材の上端部に連結され、前記第3熱吸収部に埋設された鋼製の接合材と、前記第3熱吸収部を前記上弦材に固定する第3固定部と、を有していてもよい。
【0015】
このように構成された張弦梁構造体では、火災の際に鋼製の接合材の温度が上昇する。第3接合部では、接合材が埋設された第3熱吸収部において、セメント系充填材に含まれる水分が接合材の熱を吸収し、接合材の温度上昇を木製の上弦材に直接伝達することがない。この際に、第3熱吸収部は第3固定部によって上弦材に固定されているため、第3熱吸収部が落下せずに、接合材の熱を吸収し続けることができる。よって、木製の上弦材と鋼製の接合材との接合部である第3接合部において、耐火性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る張弦梁構造体よれば、木材と鋼材との接合部で耐火性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る張弦梁構造体を示す模式的な斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る張弦梁構造体を示す模式的な正面図である。
図3図2のIII部拡大図である。
図4図2のIV部拡大図である。
図5図2のV部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る張弦梁構造体について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る張弦梁構造体を示す模式的な斜視図である。
図1に示す本実施形態に係る張弦梁構造体100は、建築物の屋根架構や床架構に適用される。張弦梁構造体100は、水平方向に沿う第1方向(図1等に示す矢印Xの方向)に延びている。屋根架構または床架構には、複数の張弦梁構造体100が、水平方向に沿い一方向と直交する第2方向(図1等に示す矢印Yの方向)に間隔をあけて複数設置されている。張弦梁構造体100の長さ方向(第1方向)の両端部は、上下方向(図1等に示す矢印Zの方向)に延びる柱91(図2参照)や壁等の支持部材に支持されている。各構成部材において、第1方向及び第2方向で中心から離れる側を外側と称し、中心に向かう側を内側という場合がある。
【0019】
図2は、張弦梁構造体100を示す模式的な正面図である。
図2に示すように、張弦梁構造体100は、上弦材1と、下弦材2と、束材3と、木鋼接合部10と、を備えている。木鋼接合部10は、第1接合部4と、第2接合部5と、第3接合部6と、を備えている。
【0020】
上弦材1は、第1方向に延びている。本実施形態の上弦材1は、一対の上弦構成部材11,11が上弦接合具11aによって接合されている。上弦構成部材11は、第1方向の中央に向かうにしたがって次第に上方に向かうように水平面に対して傾斜している。
【0021】
図3は、図2のIII部拡大図である。
図3に示すように、上弦構成部材11は、芯材12と、耐火被覆部13と、化粧木材14と、を有している。上弦構成部材11の主要部分である芯材12は、木製であり、角柱状をしている。耐火被覆部13は、芯材12の外面を覆っている。耐火被覆部13は、芯材12の外面に沿う強化石膏ボード13aと、強化石膏ボード13aの外面を覆う耐火シート13bと、を有している。化粧木材14は、耐火被覆部13の外面を覆っている。
【0022】
図2に示すように、下弦材2は、鋼製の部材である。下弦材2は、第1下弦構成部材21と、一対の第2下弦構成部材22,22と、を有している。第1下弦構成部材21及び第2下弦構成部材22として、例えば鋼製ロッドを採用することができる。
【0023】
第1下弦構成部材21は、第1方向に延びている。第2下弦構成部材22は、第1下弦構成部材21の端部から第1方向の外側に向かうにしたがって次第に上方に向かうように傾斜している。
【0024】
束材3は、第1方向に間隔をあけて2箇所に設置されている。束材3は、鋼製の部材である。束材3は、上下方向に延びている。束材3は、上弦材1と下弦材2とを連結している。束材3の下端部、第1下弦構成部材21の端部及び第2下弦構成部材22の端部は、接合部21aによって接合されている。
【0025】
第1接合部4は、上弦材1と束材3とを接合している。図3に示すように、第1接合部4は、第1熱吸収部(熱吸収部)41と、接合束材32と、第1固定部42と、を有する。束材3上のナット(不図示)を回転させることで、束材3を伸ばし下弦材2に張力を導入することもできる。張力を導入することで、上弦材1の応力を制御することができる。
【0026】
芯材12の下面には、上方に凹む凹部12aが形成されている。第1熱吸収部41は、凹部12aに充填されたモルタル(セメント系充填材)で構成されている。
【0027】
束材3は、筒状に形成された束材本体31を有している。束材本体31の上端部には、雄螺子が形成された接合束材32が螺合されている。接合束材32は、上弦構成部材11の化粧木材14及び耐火被覆部13を貫通して、上端部32uが第1熱吸収部41に埋設している。第1熱吸収部41は、鋼製の束材3から上弦材1への熱伝達を阻害する。
【0028】
第1固定部42は、第1熱吸収部41を芯材12に固定する木質構造用ビス(例えばパネリード(登録商標)等)である。第1固定部42を芯材12に螺子込むことによって、第1熱吸収部41は芯材12に固定されるとともに、束材3の上端部は第1熱吸収部41を介して芯材12に固定される。
【0029】
図4は、図2のIV部拡大図である。
図2に示すように、第2接合部5は、上弦材1と下弦材2とを接合している。図4に示すように、第2接合部5は、第2熱吸収部(熱吸収部)51と、第2下弦構成部材22の中間部22aと、第2固定部52と、を有する。
【0030】
芯材12の下面には、上方に凹む凹部12bが形成されている。第2熱吸収部51は、凹部12bに充填されたモルタル(セメント系充填材)で構成されている。
【0031】
第2下弦構成部材22の上部は、上弦構成部材11を貫通している。第2下弦構成部材22の上端部22uは、上弦構成部材11の上面から突出している。第2下弦構成部材22の上端部22u及び上弦構成部材11の上面における第2下弦構成部材22が貫通する箇所には、耐火被覆部15が設けられている。第2下弦構成部材22の中間部22aは、第2熱吸収部51に埋設している。第2熱吸収部51は、鋼製の第2下弦構成部材22から上弦材1への熱伝達を阻害する。
【0032】
第2下弦構成部材22は、複数のロッド材22bの端部が接続部材22cを介して接続される構成である。ロッド材22bの端部の外周面に雄螺子が形成され、接続部材22cの内周面に形成された雌螺子に螺合されている。さらに、接続部材22cを回転させることで、下弦材2への張力の導入が可能である。張力を導入することで、上弦材1の応力を制御することができる。
【0033】
第2固定部52は、第2熱吸収部51を芯材12に固定する木質構造用ビスである。第2固定部52を芯材12に螺子込むことによって、第2熱吸収部51は芯材12に固定されるとともに、第2下弦構成部材22の中間部22aは第2熱吸収部51を介して芯材12に固定される。
【0034】
図5は、図2のV部拡大図である。
図2に示すように、第3接合部6は、柱91の上端部91uと上弦材1とを接合している。図5に示すように、第3接合部6は、第3熱吸収部(熱吸収部)61と、第2接合部材(接合材)94と、第3固定部62と、を有する。
【0035】
芯材12の下面には、上方に凹む凹部12cが形成されている。第3熱吸収部61は、凹部12cに充填されたモルタル(セメント系充填材)で構成されている。
【0036】
柱91の上端部91uには、第1接合部材92が不図示のボルト等の接合具で接合されている。第1接合部材92は、接合用ピンの接合具93によって第2接合部材94に接合されている。
【0037】
第2接合部材94には、芯材12の下面に沿うプレート部94aが設けられている。プレート部94aには、上方に突出するボルト等の突出部94bが設けられている。第2接合部材94は、鋼製の部材である。第2接合部材94のプレート部94a及び突出部94bは、第3熱吸収部61に埋設している。第3熱吸収部61は、鋼製の第2接合部材94から上弦材1への熱伝達を阻害する。
【0038】
第3固定部62は、第3熱吸収部61を芯材12に固定する木質構造用ビスである。第3固定部62を芯材12に螺子込むことによって、第3熱吸収部61は芯材12に固定されるとともに、柱91の第2接合部材94は第3熱吸収部61を介して芯材12に固定される。
【0039】
このように構成された張弦梁構造体100では、火災の際に鋼製の束材3の温度が上昇する。第1接合部4では、束材3の上端部32uが埋設された第1熱吸収部41において、セメント系充填材に含まれる水分が束材3の熱を吸収し、束材3の温度上昇を木製の上弦材1に直接伝達することがない。この際に、第1熱吸収部41は第1固定部42によって上弦材1に固定されているため、第1熱吸収部41が落下せずに、束材3の熱を吸収し続けることができる。よって、木製の上弦材1と鋼製の束材3との接合部である第1接合部4において、耐火性能を向上させることができる。
【0040】
また、第1熱吸収部41を上弦材1に向かって構造ビスを打ち付ければよいため、第1固定部42の施工性を向上させることができる。
【0041】
また、火災の際に鋼製の下弦材2の温度が上昇する。第2接合部5では、下弦材2の中間部22aが埋設された第2熱吸収部51において、セメント系充填材に含まれる水分が下弦材2の熱を吸収し、下弦材2の温度上昇を木製の上弦材1に直接伝達することがない。この際に、第2熱吸収部51は第2固定部52によって上弦材1に固定されているため、第2熱吸収部51が落下せずに、下弦材2の熱を吸収し続けることができる。よって、木製の上弦材1と鋼製の下弦材2との接合部である第2接合部5において、耐火性能を向上させることができる。
【0042】
また、火災の際に鋼製の第2接合部材94の温度が上昇する。第3接合部6では、第2接合部材94のプレート部94a及び突出部94bが埋設された第3熱吸収部61において、セメント系充填材に含まれる水分がプレート部94a及び突出部94bの熱を吸収し、プレート部94a及び突出部94bの温度上昇を木製の上弦材1に直接伝達することがない。この際に、第3熱吸収部61は第3固定部62によって上弦材1に固定されているため、第3熱吸収部61が落下せずに、第2接合部材94のプレート部94a及び突出部94bの熱を吸収し続けることができる。よって、木製の上弦材1と鋼製の第2接合部材94との接合部である第3接合部6において、耐火性能を向上させることができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0044】
例えば、上記に示す実施形態では、張弦梁構造体100は第2接合部5及び第3接合部6を備えているが、本発明はこれに限られない。張弦梁構造体100は、少なくとも上弦材1と束材3とを接合する第1接合部4を備えていればよい。
【0045】
また、上記に示す実施形態では、第1固定部42として、木質構造用ビスを例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限られない。例えば、凹部12aを芯材12の下端部から上方に向かうにしたがって広がるような形状として、第1熱吸収部41を凹部12aから落下しにくいようにすることで、第1熱吸収部41を上弦材1に固定する構成であってもよい。第2熱吸収部51及び第3熱吸収部61についても、第1熱吸収部41と同様である。
【0046】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施形態に係る張弦梁構造体100は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「15.陸の豊かさを守ろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【符号の説明】
【0047】
1 上弦材
2 下弦材
3 束材
4 第1接合部(木鋼接合部)
5 第2接合部(木鋼接合部)
6 第3接合部(木鋼接合部)
10 木鋼接合部
32u 束材の上端部
41 第1熱吸収部(熱吸収部)
42 第1固定部
51 第2熱吸収部(熱吸収部)
52 第2固定部
61 第3熱吸収部(熱吸収部)
94 第2接合部材(接合材)
100 張弦梁構造体
図1
図2
図3
図4
図5