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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183822
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】コネクタホルダ及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
H01R13/52 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097568
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 歩
(72)【発明者】
【氏名】野本 剛志
(72)【発明者】
【氏名】小越 友理菜
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087JJ09
5E087LL17
5E087MM09
5E087MM11
5E087QQ04
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】周囲へ水が飛散することを防止可能なコネクタホルダ及びワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】コネクタホルダ1は、電線に取り付けられた端子がキャビティ内に装着されたコネクタを保持するホルダ本体20と、ホルダ本体20を覆うカバー10と、を備える。カバー10は、外部空間と、ホルダ本体20とカバー10との間に形成される内部空間とを連通する開口部40を有する。開口部40は、カバー10のうち、電線を収容する収容部を覆う部分に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に取り付けられた端子がキャビティ内に装着されたコネクタを保持するホルダ本体と、
前記ホルダ本体を覆うカバーと、を備え、
前記カバーは、外部空間と、前記ホルダ本体と前記カバーとの間に形成される内部空間とを連通する第1開口部を有する、
コネクタホルダ。
【請求項2】
前記ホルダ本体及び前記カバーの少なくともいずれか一方は、
当該コネクタホルダが取付対象に取り付けられた状態において鉛直方向の上方から下方に向けて傾斜した傾斜面と、
前記傾斜面の下方側端部近傍に設けられた第2開口部と、を有する、
請求項1に記載のコネクタホルダ。
【請求項3】
前記カバー及び前記ホルダ本体の少なくともいずれか一方は、前記内部空間から前記外部空間へ排水するための水抜き孔を有する、
請求項1に記載のコネクタホルダ。
【請求項4】
前記ホルダ本体は、前記電線を収容する収容部と、前記コネクタを保持する保持部と、を有し、
前記カバーは、前記保持部を覆う第1部分と、前記第1部分から前記外部空間に突出し前記収容部を覆う膨出部と、を有し、
前記第1開口部は、前記膨出部に設けられる、
請求項1に記載のコネクタホルダ。
【請求項5】
当該コネクタホルダが取付対象に取り付けられた状態において、
前記第1開口部は、前記膨出部の上方に設けられる、
請求項4に記載のコネクタホルダ。
【請求項6】
当該コネクタホルダが取付対象に取り付けられた状態において、
前記水抜き孔は、前記カバー及び前記ホルダ本体の少なくともいずれか一方の下方に設けられる、
請求項3に記載のコネクタホルダ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のコネクタホルダと、
前記電線と、
前記コネクタと、を備えたワイヤハーネス。
【請求項8】
前記電線は、前記コネクタホルダの前記内部空間に収容され、前記コネクタホルダが取付対象に取り付けられた状態において、前記端子よりも下方に位置する箇所で屈曲されて上方に延びるように配置される、
請求項7に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタホルダ及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、種々の電子機器への電力や信号を供給するため、電線及びコネクタを含むワイヤハーネスが配索されている。ワイヤハーネスを車体に固定するために、コネクタホルダが用いられる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のコネクタホルダは、電線の長手方向に貫通し、コネクタを収容する収容空間を有するホルダ本体を備える。また、このコネクタホルダは、車両に対して取り付けた取付状態において、コネクタを覆うようにホルダ本体の上面を構成する上面カバーをホルダ本体に設け、上面カバーに、長手方向に向けて突出する突出部を備える。このコネクタホルダは、上方から滴下した水滴を突出部が受け止めることで、収容空間への水滴の侵入防止を図っている。収容空間への水滴浸入を防止することにより、コネクタのキャビティに装着した端子と電線との接続部分に水滴が付着して、ショートしたり、接続部分が腐食したりすることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-091733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記コネクタホルダにおいては、上方から滴下した水滴は、突出部にあたって弾かれ、周囲へ飛散する。このため、上面カバーで弾かれた水が周辺部品へ飛散してしまい、周辺部品に不具合を生じさせるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、周囲へ水が飛散することを防止可能なコネクタホルダ及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタホルダは、下記を特徴としている。
電線に取り付けられた端子がキャビティ内に装着されたコネクタを保持するホルダ本体と、
前記ホルダ本体を覆うカバーと、を備え、
前記カバーは、外部空間と、前記ホルダ本体と前記カバーとの間に形成される内部空間とを連通する第1開口部を有する、
コネクタホルダ。
【0007】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、下記を特徴としている。
上記コネクタホルダと、
前記電線と、
前記コネクタと、を備えたワイヤハーネス。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るコネクタホルダ及びワイヤハーネスによれば、周囲へ水が飛散することを防止できる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタホルダを備えたワイヤハーネスの斜視図である。
図2図2は、図1に示したホルダ本体の斜視図である。
図3図3は、図1に示したカバーの斜視図である。
図4図4は、開口部近傍を示す拡大図である。
図5図5は、上側カバー部近傍を示す拡大図である。
図6図6は、車両搭載状態における電線端末近傍を示す拡大図である。
図7図7は、参考例に係るカバーの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタホルダ1を備えたワイヤハーネスの斜視図である。図2は、図1に示したホルダ本体20の斜視図である。図3は、図1に示したカバー10の斜視図である。図4は、第1開口部の一例である開口部40近傍を示す拡大図である。図5は、傾斜面の一例である上側カバー部45の近傍を示す拡大図である。図6は、車両搭載状態における電線束W1の端末近傍を示す拡大図である。図7は、参考例に係るカバー100の部分拡大図である。以下、説明の便宜上、図1から図7に示すように、「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、「右」、「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交する。尚、本実施形態では、図1から図6に示す上下方向は、ワイヤハーネスを取付対象である車両に配索し、コネクタホルダ1を車体に取り付けた状態、すなわち車両搭載状態における上下方向に一致する。
【0013】
<ワイヤハーネス>
図1に示すワイヤハーネスは、複数の電線束W1を束ねた電線束Wと、各電線束W1の端末に取り付けられたコネクタCと、複数のコネクタCを保持するコネクタホルダ1と、を備える。電線束W1は、複数の電線を束ねて構成され、各電線は、導電性の芯線と、芯線の外周を覆う絶縁性の被覆と、を有する。
【0014】
コネクタCは、電線束W1を構成する各電線の端末に取り付けられた端子と、端子をキャビティ内に収容するコネクタハウジングとを備える。端子は、導電性の金属板で構成され、圧着等により芯線と電気的に接続される。このコネクタハウジングは、絶縁性樹脂により、略直方体状に形成され、キャビティが左右方向に延びる。
【0015】
<コネクタホルダ1>
コネクタホルダ1は、絶縁性樹脂で形成され、車両の車体に取り付けられて、車両に配索されるワイヤハーネスのコネクタCを固定する。コネクタホルダ1は、図2に示すホルダ本体20と、図3に示すカバー10とを備える。コネクタホルダ1は、複数の電線束W1の各端末に装着されたコネクタCがホルダ本体20の各コネクタ収容空間に収容された状態で、カバー10がホルダ本体20の前面を覆ってホルダ本体20に嵌合する。コネクタホルダ1は、一例として、インストルメントパネルの下方位置、すなわち運転席及び助手席の足元に配置されるので、例えば乗員がお茶をこぼした場合などに、カバー10に水がかかるおそれがある。本実施形態のコネクタホルダ1は、後述するように、カバー10に開口部40が設けられることにより、カバー10に水がかかった場合であっても、カバー10ではじかれた水が周囲へ飛散することを防止できる。
【0016】
<ホルダ本体20>
ホルダ本体20は、第1ベース21と第2ベース31とを有し、電線に取り付けられた端子がキャビティ内に装着されたコネクタCを保持する。ホルダ本体20は、第1ベース21と第2ベース31とが左右方向に配置され、互いに係止されることで結合される。ホルダ本体20は、前面において複数のコネクタCを保持する。
【0017】
第1ベース21は、図2に示すように、平板部22、上壁23、下壁24、右側壁25A、2つの左側壁25B、複数の隔壁26、複数の隔壁27、及び隔壁28を有する。平板部22は、上下方向及び左右方向に延びて略長方形状をなす。上壁23及び下壁24は、平板部22の上縁及び下縁からそれぞれ前方に延びる略長方形平板である。上壁23の右側上面には、後述するカバー10の係止部11aが係止する被係止部23aが設けられる。上壁23の左側には、前方か開放された電線挿入開口231が設けられる。下壁24の下面には、コネクタホルダ1を車体に固定するための取付部241、及び、カバー10の係止部11cが係止する被係止部242が設けられる。右側壁25Aは、平板部22の右側縁から前方に延びる略長方形平板である。左側壁25Bは、平板部22の左側縁の上下端部近傍において前方に延びる長方形小片である。
【0018】
隔壁26は、左右方向及び前後方向に延び、右側壁25Aの左側面と平板部22の前面とに亘って設けられる。隔壁27は、平板部22の前面において上下方向に延在し、2つの隔壁26の左端部を互いに接続するように設けられる。隔壁27は、左右方向に視て略U字状を有する。隔壁28は、下側の隔壁27の下端に連続して上下方向に延在する。平板部22、複数の隔壁26、複数の隔壁27及び隔壁28によって、第1ベース21の右側領域に、複数のコネクタ収容空間が画成される。上から1番目及び2番目の隔壁26は、それぞれ、上側及び下側のそれぞれに突出した、コネクタCを係止するための係止爪26a、26bを有する。隔壁28には、右側に突出した、コネクタCを係止するための係止爪28aを有する。言い換えれば、第1ベース21の右側領域において複数のコネクタCを保持する複数の隔壁26、複数の27、及び隔壁28は、コネクタを保持する保持部の一例である。
【0019】
第1ベース21における隔壁27、28よりも左側の領域には、端末に各コネクタCが接続された電線束Wが配置される。第1ベース21の左側領域、すなわち、隔壁27、28よりも左側の領域は、電線束Wを収容する収容部の一例である。第1ベース21に配置された電線束Wは、電線挿入開口231から上方に引き出される。
【0020】
第2ベース31は、互いに離間して配置された平板状の後壁32及び前壁35と、後壁32と前壁35とを上縁及び下縁において互いに接続する上壁33及び下壁34と、を有する。後壁32は、上縁及び下縁が左側に突出した突出部を有する。上壁33及び下壁34は、各突出部の左端まで延びるように形成される。上壁33の上面には、カバー10の係止部11bが係止する被係止部33aが設けられる。下壁34の下面には、カバー10の係止部11dが係止する被係止部34aが設けられる。第2ベース31は、後壁32と前壁35との間に、コネクタを収容可能に構成される。
【0021】
前壁35の前面には、それぞれにコネクタCが装着される2つのコネクタ装着部36、37が、上下方向に離間して設けられる。コネクタ装着部36、37は、中空角筒状を有してコネクタCを収容可能に構成され、係止爪によってコネクタCを係止する。コネクタ装着部36の上方には、前壁35から前方に立設された上側カバー部45が設けられる。上側カバー部45は、コネクタホルダ1が取付対象である車体に取り付けられた状態において鉛直方向の上方から下方に向けて傾斜した傾斜面を有する長方形平板である。上側カバー部45の前端縁には上方に延びる立壁451が設けられる。上側カバー部45の左端は、コネクタ装着部36に装着されたコネクタCの左側端面よりも左側まで延び、このコネクタC及び下方のコネクタ装着部37に装着されたコネクタCに、上方から水がかかるのを防止する。また、上側カバー部45は、コネクタ装着部36を補強するリブとして機能する。
【0022】
第2ベース31は、後壁32の右側縁が、第1ベース21の平板部22の左側縁に当接するように、第1ベース21と結合される。
【0023】
<カバー10>
カバー10は、図3に示すように、上下方向及び左右方向に延び、前後方向に視た平面視で略C字状を有する平板部11と、平板部11から前方に突出する膨出部12とを有する。カバー10は、ホルダ本体20の一部を覆う。カバー10がホルダ本体20に嵌合することで、カバー10とホルダ本体20との間に内部空間Sが形成され、内部空間Sに、電線束W及び複数のコネクタCが収容される。
【0024】
カバー10は、外部空間と内部空間Sとを連通する複数の開口部40を有する。外部空間は、コネクタホルダ1の外部において、カバー10に対してホルダ本体20と反対側に位置する空間を意味する。開口部40は、第1開口部の一例である。開口部40は、膨出部12の上方に設けられる。
【0025】
平板部11は、上下方向及び左右方向に延びる略長方形状を有する第1部分111、第1部分111の上端において左方向に延びる第2部分112、及び、第1部分111の下端において左方向に延びる第3部分113を有する。第2部分112は、左右方向の中間部分から左端に向けて斜め上方に延びる斜辺を有する。第3部分113は、左右方向の中間部分から左端に向けて斜め下方に延びる斜辺を有する。平板部11は、上下両縁及び右側縁が直線状に延びる。平板部11の上縁における左右両端部には、係止部11b、11aが設けられ、平板部11の下縁における左右両端部には、係止部11d、11cが設けられる。
【0026】
膨出部12は、平板部11における第1部分111左側縁から左側前方に延びる平板状の本体部12Aと、本体部12Aの下端縁から平板部11の第3部分113の上縁に接続する底部14、及び、複数の接続片13を有する。複数の接続片13は、本体部12Aの上端部後面から第2部分112の下端部前面にそれぞれ延び、左右方向に互いに離間して配置される。
【0027】
平板部11の第2部分112と膨出部12の本体部12Aとの間に形成され、複数の接続片13によって区画された各窓部が開口部40とされ、開口部40を介して、内部空間Sと外部空間とが連通する。このため、カバー10の前面に上方から水がかかった場合には、開口部40を介してカバー10内の内部空間Sに水が取り込まれる。よって、カバー10に水がかかった場合に、カバー10ではじかれた水が周囲へ飛散することを防止できる。
【0028】
カバー10の下端には、図1に示すように、ホルダ本体20との間に、水抜き孔の一例である下孔42、43が形成される。下孔42は、カバー10下端の係止部11c周囲に設けられた開口部である。下孔43は、カバー10下端の一部を上方に窪ませた長方形状の開口部である。下孔43は、第1ベース21の下壁24から下方に延びる、コネクタホルダ1を取付対象に固定するための固定部の位置に設けられる。下孔42、43がカバー10の下端に設けられることにより、内部空間S内の水を下孔42、43を介して外部に排出できる。よって、コネクタホルダ1の内部空間Sに水が溜まることを防止できる。
【0029】
平板部11の各係止部11a、11b、11c、11dが、ホルダ本体20に設けられた各被係止部23a、33a、242、34aにそれぞれ係止することで、カバー10がホルダ本体20に嵌合して一体化される。カバー10がホルダ本体20に取り付けられた状態において、膨出部12は、内部空間Sに収容された電線束Wのうち分岐部、即ち幹線から支線に枝分かれする部分、及び、各端末にコネクタCが取り付けられた複数の支線、を収容する収容部を覆う電線カバー部として機能する。また、この状態において、平板部11の第1部分111は、複数のコネクタCを保持する保持部を覆うコネクタカバー部として機能する。
【0030】
<ワイヤハーネスの製造工程>
上記のように構成されたコネクタホルダ1を備えたワイヤハーネスは、一例として、下記のように製造される。まず、電線に取り付けられた端子がキャビティ内に装着されたコネクタC及び他のコネクタ等を有する電線束Wを用意する。次に、電線束Wの各端部に取り付けられた各コネクタCを、第1ベース21右側領域の各コネクタ収容空間に配置し、隔壁26、28の係止爪26a、26b、28aに係止して、第1ベース21に保持させる。また、電線束Wの他のコネクタ等を、第2ベース31のコネクタ装着部36、37等に配置し、第2ベース31に保持させる。次に、第1ベース21と第2ベース31とを、左右方向に並べ、互いに近接させ、係止させて、ホルダ本体20として一体化する。続いて、電線束Wを、分岐部が第1ベース21の左側領域に配置され、幹線が電線挿入開口231から上方に延び、かつ、電線が端子よりも下方に位置する箇所で屈曲されて上方に延びる(図6参照)ように、ホルダ本体20の前面に配置する。このように電線束Wが配置されたホルダ本体20の前側にカバー10を配置し、平板部11の各係止部11a、11b、11c、11dを、ホルダ本体20に設けられた各被係止部23a、33a、242、34aにそれぞれ係止することで、カバー10をホルダ本体20に組み付けて、ワイヤハーネスを製造する(図1参照)。
【0031】
製造されたワイヤハーネスは、車両に配索され、図1に示すように、コネクタホルダ1が車体に固定される。図1に示す車両搭載状態において、カバー10の前面に上方から水がかかると、水は、図4の矢印Y1で示す方向に落下して、開口部40からカバー10内の内部空間Sに取り込まれる。また、上方からの水は、図5の矢印Y2で示す方向に落下して、上側カバー部45の上面に当たり、上側カバー部45の上面を図5に示す矢印Y3で示す方向に流れ、開口部41からカバー10の内部空間Sに取り込まれる。そして、内部空間Sに取り込まれた水は、下孔42、43から外部空間に排出される。車両搭載状態においては、図6に示すように、電線とコネクタCとの接続箇所近傍において、電線が端子よりも下方に位置する箇所で屈曲されて上方に延びるため、上方から矢印Y4で示す方向に電線束W1を伝って下降した水は、屈曲部から上方に移動しない。このため、端子に水がかかることを防止できる。したがって、端子と電線との導通性を損なわない。
【0032】
<実施形態の利点>
以上説明したように、本実施形態のコネクタホルダ1は、カバー10が開口部40を有することにより、開口部40からカバー10内の内部空間Sへ水を取り込むことができる。よって、カバー10ではじかれた水が周囲へ飛散することを防止できる。また、開口部40が電線カバー部(膨出部12)に設けられ、コネクタカバー部(第1部分111)に設けられないので、コネクタのキャビティに装着した端子と電線との接続部分に水滴が付着して、ショートしたり、接続部分が腐食したりすることを防止できる。
【0033】
ここで、本実施形態のカバー10に代えて、図7に示す参考例のカバー100を有するコネクタホルダを想定する。参考例のカバー100は、膨出部12の上方がカバー壁101に覆われ、開口部を有しない。このため、上方から矢印Y5で示す方向に落下した水は、カバー壁101に当たって周囲へ、すなわち各矢印Y6、Y7、Y8で示す方向へ飛び散ってしまい、周辺の電子部品等の機能を損なう等の恐れがある。これに対し、本実施形態のコネクタホルダ1は、上述したようにカバー10ではじかれた水が周囲へ飛散することを防止できるので、周辺部品に不具合を生じさせることがない。
【0034】
また、本実施形態のコネクタホルダ1は、上側カバー部45及び開口部41を有することにより、上側カバー部45の傾斜面によって水を開口部41へ誘導できるので、水の飛散を効果的に防止できる。さらに、本実施形態のコネクタホルダ1は、下孔42、43を有することにより、外部空間から内部空間Sに取り込まれた水が、下孔42、43を介して排出されるので、コネクタホルダ1内の内部空間Sに水が溜まることを防止できる。
【0035】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、上記実施形態では、車両取付状態において鉛直方向の上方から下方に向けて傾斜した傾斜面がホルダ本体20に上側カバー部45として設けられていたが、この傾斜面をカバーに設けてもよいし、カバーとホルダ本体の双方に設けてもよい。また、上記実施形態では、内部空間から前記外部空間へ排水するための水抜き孔が、下孔42、43としてカバー10に設けられていたが、ホルダ本体に設けられてもよいし、カバーとホルダ本体の双方に設けられてもよい。
【0036】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るコネクタホルダ及びワイヤハーネスの特徴をそれぞれ以下[1]~[8]に簡潔に纏めて列記する。
【0037】
[1] 電線に取り付けられた端子がキャビティ内に装着されたコネクタを保持するホルダ本体(20、第1ベース21、第2ベース31)と、
前記ホルダ本体を覆うカバー(10)と、を備え、
前記カバーは、外部空間と、前記ホルダ本体と前記カバーとの間に形成される内部空間(S)とを連通する第1開口部(開口部40)を有する、
コネクタホルダ(1)。
【0038】
上記[1]の構成のコネクタホルダによれば、カバーが第1開口部を有することにより、第1開口部からカバー内の内部空間へ水を取り込むことができる。よって、カバーではじかれた水が周囲へ飛散することを防止できる。
【0039】
[2] 前記ホルダ本体(第2ベース31)及び前記カバー(10)の少なくともいずれか一方は、
当該コネクタホルダ(1)が取付対象に取り付けられた状態において鉛直方向の上方から下方に向けて傾斜した傾斜面(上側カバー部45)と、
前記傾斜面の下方側端部近傍に設けられた第2開口部(開口部41)と、を有する、
上記[1]に記載のコネクタホルダ(1)。
【0040】
上記[2]の構成のコネクタホルダによれば、傾斜面によって水を第2開口部へ誘導できるので、水の飛散を効果的に防止できる。
【0041】
[3] 前記カバー及び前記ホルダ本体の少なくともいずれか一方は、前記内部空間から前記外部空間へ排水するための水抜き孔(下孔42、43)を有する、
上記[1]に記載のコネクタホルダ(1)。
【0042】
上記[3]の構成のコネクタホルダによれば、外部空間から内部空間に取り込まれた水が、水抜き孔を介して排出されるので、コネクタホルダ内の内部空間に水が溜まることを防止できる。
【0043】
[4] 前記ホルダ本体(20)は、前記電線を収容する収容部(第1ベース21の左側領域)と、前記コネクタを保持する保持部(複数の隔壁26、複数の27、及び隔壁28)と、を有し、
前記カバー(10)は、前記保持部を覆う第1部分(111)と、前記第1部分から前記外部空間に突出し前記収容部を覆う膨出部(12)と、を有し、
前記第1開口部は、前記膨出部に設けられる、
上記[1]に記載のコネクタホルダ(1)。
【0044】
上記[4]の構成のコネクタホルダによれば、膨出部に第1開口部を設けることで、カバーにかかった水を内部空間に取り込みやすくなる。また、水は、コネクタではなく電線を収容する収容部に浸入するので、コネクタのキャビティ内に装着された端子に水がかかることを防止でき、端子と電線との導通性を損なわない。
【0045】
[5] 当該コネクタホルダが取付対象に取り付けられた状態において、
前記第1開口部(開口部40)は、前記膨出部の上方に設けられる、
上記[4]に記載のコネクタホルダ。
【0046】
上記[5]の構成のコネクタホルダによれば、上方からカバーにかかった水が第1開口部から内部空間に取り込まれやすくなる。
【0047】
[6] 当該コネクタホルダが取付対象に取り付けられた状態において、
前記水抜き孔(下孔42、43)は、前記カバー及び前記ホルダ本体の少なくともいずれか一方の下方に設けられる、
上記[3]に記載のコネクタホルダ。
【0048】
上記[6]の構成のコネクタホルダによれば、水抜き孔が下方に設けられるので、内部空間に取り込まれた水が、重力により排出されやすくなる。
【0049】
[7]上記コネクタホルダ(1)と、
前記電線(電線束W)と、
前記コネクタ(C)と、を備えたワイヤハーネス。
【0050】
上記[7]の構成のワイヤハーネスによれば、カバーが第1開口部を有することにより、第1開口部からカバー内の内部空間へ水を取り込むことができる。よって、カバーではじかれた水が周囲へ飛散することを防止できる。
【0051】
[8] 前記電線は、前記コネクタホルダの前記内部空間に収容され、前記コネクタホルダが取付対象に取り付けられた状態において、前記端子よりも下方に位置する箇所で屈曲されて上方に延びるように配置される、
上記[7]に記載のワイヤハーネス。
【0052】
上記[8]の構成のワイヤハーネスによれば、電線が、端子よりも下方に位置する箇所で屈曲されて上方に延びるように配置されるので、上方から電線を伝って下降した水が端子に到達しないため、端子に水がかかることを防止できる。よって、端子と電線との接続部分に水滴が付着して、ショートしたり、接続部分が腐食したりすることを確実に防止できる。
【符号の説明】
【0053】
1 コネクタホルダ
10 カバー
11、22 平板部
12 膨出部
12A 本体部
13 接続片
14 底部
20 ホルダ本体
21 第1ベース
23 上壁
26、27、28 隔壁
31 第2ベース
40 開口部(第1開口部)
41 開口部(第2開口部)
42、43 下孔(水抜き孔)
111 第1部分
112 第2部分
113 第3部分
W、W1 電線束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7