(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183824
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】オゾン発生装置
(51)【国際特許分類】
C01B 13/11 20060101AFI20231221BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C01B13/11 A
A61L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097578
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 達矢
(72)【発明者】
【氏名】横井 瑛
(72)【発明者】
【氏名】石田 進二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 恭幸
【テーマコード(参考)】
4C180
4G042
【Fターム(参考)】
4C180AA16
4C180CA06
4C180DD17
4C180EA17X
4C180HH01
4C180HH05
4G042CA01
4G042CB23
4G042CE02
(57)【要約】
【課題】従来にない新たなオゾン発生装置を実現する。
【解決手段】
オゾン発生装置は、オゾンの酸化力により空気中のガス成分を除去するガス処理装置で用いられる。このオゾン発生装置は、高電位側電極と低電位側電極間に印加される印加平均電界が2kV/mm以上50kV/mm以下であり、印加平均電界の半値幅が0.01μ秒以上100μ秒以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンの酸化力により空気中のガス成分を除去するガス処理装置で用いられるオゾン発生装置であって、
高電位側電極と低電位側電極間に印加される印加平均電界が2kV/mm以上50kV/mm以下であり、
印加平均電界の半値幅が0.01μ秒以上100μ秒以下であるオゾン発生装置。
【請求項2】
オゾンの酸化力により空気中のガス成分を除去するガス処理装置で用いられるオゾン発生装置であって、
高電位側電極と低電位側電極間に印加する印加平均電界の傾きが0.001×1010V/mm秒以上100×1010V/mm秒以下であるオゾン発生装置。
【請求項3】
オゾンの酸化力により空気中のガス成分を除去するガス処理装置で用いられるオゾン発生装置であって、
高電位側電極と低電位側電極間に印加される印加平均電界が2kV/mm以上50kV/mm以下であり、
印加平均電界の半値幅が0.01μ秒以上100μ秒であり、
印加平均電界の傾きが0.001×1010V/mm秒以上100×1010V/mm秒以下であるオゾン発生装置。
【請求項4】
高電位側電極と低電位側電極の間に、1mm/分以上1×106mm/分以下の流速でガスを流通させる請求項1から3のいずれか一項に記載のオゾン発生装置。
【請求項5】
高電位側電極と低電位側電極の間に、10μ秒以上10000μ秒以下の間隔で電界を印加する請求項1から3のいずれか一項に記載のオゾン発生装置。
【請求項6】
高電位側電極と低電位側電極間に最初に印加する初期電界に対し、初期電界とは逆極性の逆極性電界の比率が0.05以上である請求項1から3のいずれか一項に記載のオゾン発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、オゾン発生装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、空気中の有害ガスを分解するためのオゾン発生装置が開示されている。一般的に、オゾン発生装置では、空気中に存在する窒素成分等に起因する析出物(例えば、硝酸アンモニウム塩)が付着し、堆積する。具体的には、オゾンを発生させるための電極部(典型的に、低電位側電極)に堆積する。電極部に析出物が堆積すると、電界が弱くなり、オゾン発生量が減少する。その結果、オゾン発生装置の性能(有害ガスの分解)が低下する。特許文献1では、オゾン発生装置(コロナ放電素子)の下流にヒータを配置し、ヒータの熱を利用してオゾン発生装置に析出物が堆積することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、ヒータを用いて生成された析出物を蒸発、あるいは、析出物が生成すること自体を抑制している。しかしながら、析出物の堆積を抑制するためにヒータを用いると、オゾン発生装置のコストが上昇する。また、低温倉庫内(例えば、食品倉庫内)でオゾン発生装置を使用する場合、ヒータの熱により倉庫内の温度が上昇し、倉庫内の商品が劣化するおそれがある。あるいは、ヒータの熱により倉庫内の温度上昇を抑制するために、倉庫内の空調設備の出力を上昇させてしまい、消費電力が増加する可能性がある。そのため、ヒータを用いることなく、オゾン発生装置(電極部)に析出物が堆積することを抑制する新たな技術が必要とされている。本明細書は、従来にない新たなオゾン発生装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する第1技術は、オゾンの酸化力により空気中のガス成分を除去するガス処理装置で用いられるオゾン発生装置である。このオゾン発生装置は、高電位側電極と低電位側電極間に印加される印加平均電界が2kV/mm以上50kV/mm以下であり、印加平均電界の半値幅が0.01μ秒以上100μ秒以下であってよい。
【0006】
本明細書で開示する第2技術は、オゾンの酸化力により空気中のガス成分を除去するガス処理装置で用いられるオゾン発生装置である。このオゾン発生装置は、高電位側電極と低電位側電極間に印加する印加平均電界の傾きが0.001×1010V/mm秒以上100×1010V/mm秒以下であってよい。
【0007】
本明細書で開示する第3技術は、オゾンの酸化力により空気中のガス成分を除去するガス処理装置で用いられるオゾン発生装置である。このオゾン発生装置は、高電位側電極と低電位側電極間に印加される印加平均電界が2kV/mm以上50kV/mm以下であり、印加平均電界の半値幅が0.01μ秒以上100μ秒であり、印加平均電界の傾きが0.001×1010V/mm秒以上100×1010V/mm秒以下であってよい。
【0008】
本明細書で開示する第4技術は、上記第1~第3技術のいずれかのオゾン発生装置であり、高電位側電極と低電位側電極の間に、1mm/分以上1×106mm/分以下の流速でガスを流通させてよい。
【0009】
本明細書で開示する第5技術は、上記第1~第3技術のいずれかのオゾン発生装置であり、高電位側電極と低電位側電極の間に、10μ秒以上10000μ秒以下の間隔で電界を印加してよい。
【0010】
本明細書で開示する第5技術は、上記第1~第3技術のいずれかのオゾン発生装置であり、高電位側電極と低電位側電極間に最初に印加する初期電界に対し、初期電界とは逆極性の逆極性電界の比率が0.05以上であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】リアクタ(電極)に印加する電界波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ガス処理装置)
図1を参照し、ガス処理装置10について説明する。ガス処理装置10は、空気中の有害成分を分解し、空気から有害成分を除去することができる。例えば、ガス処理装置100は、揮発性有機化合物(VOC),菌類,野菜等から生じるエチレンガス等の空気中に含まれる有害成分を分解・除去するために用いられる。
【0013】
ガス処理装置10は、縦置型の装置であり、筐体4と、筐体4の下部に設けられているベース部6と、筐体4の上部に設けられている吸気部2と、筐体4の下方側面に設けられている排気部60と、筐体4の内壁12に取り付けられているリアクタ20、触媒部40及び排気ファン50を備えている。リアクタ20は、オゾン発生装置の一例である。筐体4内において、筐体4の上方から下方に向けて、リアクタ20、触媒部40及び排気ファン50の順に配置されている。
【0014】
ベース部6の水平方向のサイズは、筐体4のサイズより大きい。ベース部6は、筐体4(ガス処理装置10)が転倒することを防止する転倒防止ベースとして機能する。吸気部2には複数の開口8が設けられている。開口8は、ガス処理装置10の外部の空気を筐体4内に流入させるための吸気口として機能する。また、排気部60にも複数の開口(図示省略)が設けられている。排気部60の開口は、筐体4内の空気をガス処理装置10の外部に排出させるための排気口として機能する。ガス処理装置10は、ガス処理装置10の外部の空気(有害成分を含む空気)を吸気部2から筐体4内に導入し、筐体4内を通過させ、ガス処理装置10の外部に排出する。空気中の有害成分は、筐体4内をする際に除去され、清浄な空気がガス処理装置10の外部に排出される。
【0015】
排気ファン50を駆動すると、ガス処理装置10の外部の空気が、吸気部2からガス処理装置10内に流入する。ガス処理装置10内に流入した空気は、矢印に示すように下方に向けて移動し、リアクタ20に到達する。リアクタ20は。プラズマを発生させ、空気中の酸素をオゾンに変化させる。そして、オゾンの酸化力により、空気中の有害成分が分解される。リアクタ20の詳細な構造は後述するが、リアクタ20は、複数の電極が間隔を有して配置された構造を有している。そのため、吸気部2からリアクタ20に到達した空気は、リアクタ20を通過し、触媒部40に到達する。触媒部40に到達した空気は、触媒部40を通過し、排気ファン50に到達する。
【0016】
触媒部40には、ハニカム状のオゾン分解触媒が、直列に(上下方向に)複数個並んで配置されている。ガス処理装置10では、20個のオゾン分解触媒が直列に配置されている。配置するオゾン分解触媒の数は、適宜調整可能である。オゾン分解触媒を配置することにより、リアクタ20で生成したオゾンは、触媒部40を通過する間に分解(還元)される。これにより、触媒部40を通過して排気ファン50に到達した空気は、オゾンを含んでいない空気であるか、オゾン濃度が極めて低減している空気となっている。排気ファン50は、オゾンが除去された(オゾン濃度が極めて低減した)空気を、排気部60を通じてガス処理装置10の外部に排出する。
【0017】
(リアクタ)
図2から
図4を参照し、リアクタ20,20a及び20bについて説明する。まず、
図2を参照し、リアクタ20について説明する。なお、リアクタ20a及び20bは、リアクタ20の変形例である(
図3,4を参照)。そのため、リアクタ20a及び20bについて、リアクタ20と同一の部品については、リアクタ20に付した参照番号と同一の参照番号を付すことにより説明を省略することがある。
【0018】
図2に示すように、リアクタ20は電源(図示省略)の高電位側に接続されている高電位側電極28と、電源の低電位側に接続されている低電位側電極26と、高電位側電極28と低電位側電極26を支持しているホルダ22を備えている。電極26,28はステンレス鋼製であり、ホルダ22は絶縁性を有する樹脂製である。高電位側電極28は配線32を通じて電源に接続されており、低電位側電極26は配線34を通じて電源に接続されている。低電位側電極26は、両端がホルダ22に支持されている。一方、高電位側電極28の外部は、アルミナ管24で被覆されている。そして、アルミナ管24の両端がホルダ22に支持されている。高電位側電極28の長さは、アルミナ管24の長さより短い。そのため、高電位側電極28の端部28eは、ホルダ22まで伸びていない。
【0019】
高電位側電極28(アルミナ管24)と低電位側電極26の間には、隙間30が設けられている。そのため、リアクタ20に到達した空気は、隙間30を通過して、触媒部40に移動する(
図1も参照)。リアクタ20に電界を印加すると、電極26,28間にプラズマが発生し、リアクタ20の内部(典型的に電極26,28間の隙間30)にオゾンが生成する。そして、空気中に含まれている有害成分(例えばエチレンガス)がオゾンによって分解される。なお、リアクタ20では、高電位側電極28の端部28eと、低電位側電極26のうちの端部28eに対向する部分との間に電界が集中する。そのため、従来のリアクタの場合、低電位側電極26の電界が集中する部分(破線36で囲った部分)に空気中に存在する窒素成分等に起因する析出物(例えば、硝酸アンモニウム塩)が堆積する。低電位側電極26に析出物が堆積すると、プラズマ放電が阻害されてしまい、オゾン生成量が減少してしまうことがある。しかしながら、リアクタ20では、電極26,28間に印加する電界を調整することにより、低電位側電極26に析出物が堆積することを抑制している。低電位側電極26への析出物の堆積を抑制することにより、オゾン生成量の減少が抑制され、長期間に亘ってリアクタ20の性能を維持することができる(リアクタ20の性能低下を抑制することができる)。電極26,28間に印加する電界条件については後述する。
【0020】
図3に示すように、リアクタ20aでは、低電位側電極26の外周がアルミナ管25で被覆されている。アルミナ管25は、低電位側電極26の外周全体を被覆している。そのため、アルミナ管25の両端がホルダ22に支持されている。上述したように、従来のリアクタの場合、低電位側電極26の電界が集中する部分に析出物が堆積する。リアクタ20aは、低電位側電極26の外周をアルミナ管25で被覆することにより、低電位側電極26に析出物が堆積することを抑制している。
【0021】
図4に示すように、リアクタ20bでは、低電位側電極26の外周の一部がアルミナ管27で被覆されている。具体的には、低電位側電極26のうちの高電位側電極28の端部28eに対向する部分をアルミナ管27が被覆している。リアクタ20bは、析出物が堆積しやすい部分(電界が集中する部分)をアルミナ管27で被覆することにより、低電位側電極26に析出物が堆積することを効率的に抑制している。また、リアクタ20bは、析出物が堆積しにくい部分では低電位側電極26が露出している。そのため、電極26,28間に高密度のプラズマが発生し、空気中の有害成分を効率的に分解することができる。
【0022】
(電界印加条件)
上述したように、リアクタ20では、電極26,28間に印加する電界を調整し、低電位側電極26に析出物が堆積することを抑制している。以下、電極26,28間に印加する電界条件について説明する。なお、低電位側電極26に析出物が堆積することを抑制するだけであれば、電極26,28間に印加する電界を急峻に立ち上げ、電極26,28間に発生するプラズマ量を急激に増加させる制御方法を採り得る。しかしながら、電極26,28間に印加する電界を急峻に立ち上げると、電極間26,28に発生する電界が目標電界を超えてしまい、NOx等の有害ガスが発生することが起こり得る。以下に説明する電界印加条件は、有害ガスの発生を抑制することもできる。
【0023】
リアクタ20では、(1)電極26,28間に印加される印加平均電界、(2)印加平均電界の半値幅、(3)印加平均電界の傾き、(4)電極26,28間を通過するガス流速、(5)印加平均電界を印加する間隔、(6)初期電界(正極性の電界)に対する逆極性電界(負極性の電界)の比率、等を制御する。まず、
図5を参照し、(1)~(3),(5)及び(6)の用語について説明する。
【0024】
図5は、電極26,28間に印加される電界波形を示している。縦軸は電界(kV/mm)を示し、横軸は時間(μm)を示している。印加平均電界とは、電極26,28間に印加される正極性の電界の最大値(Ei)を意味する。印加平均電界の半値幅とは、電界が最大値の半分(1/2Ei)まで上昇したときから、電界の最大値(Ei)を経て最大値の半分(1/2Ei)まで下降するまでの時間72を意味する。印加平均電界の傾きとは、電界が上昇するときの波形の接線70(dE/dt)を意味する。印加平均電界を印加する間隔とは、特定の電界印加開始から、次の電界印加開始までの時間74を意味する。初期電界に対する逆極性電界の比率とは、正極性の電界の最大値(Ei)に対する逆極性電界の最大値(Eo)、すなわち、「Eo/Ei」を意味する。
【0025】
リアクタ20では、(a)印加平均電界Eiを2kV/mm以上50kV/mm以下に制御するとともに、半値幅(時間72)を0.01μ秒以上100μ秒以下に制御する。あるいは、(b)印加平均電界の傾き(接線70)が0.001×1010V/mm秒以上100×1010V/mm秒以下になるように印加電界を制御する。あるいは、(c)印加平均電界Eiを2kV/mm以上50kV/mm以下に制御するとともに、半値幅(時間72)を0.01μ秒以上100μ秒以下に制御し、印加平均電界の傾き(接線70)が0.001×1010V/mm秒以上100×1010V/mm秒以下になるように印加電界を制御する。リアクタ20を(a),(b)又は(c)の条件で制御することにより、低電位側電極26に析出物が堆積することを抑制することができる。
【0026】
(第1実験例)
常温(約25℃)の室内空気をガス処理装置10に流通させ、低電位側電極26に堆積する析出物の状態を確認した。具体的には、室内空気を流速3m/秒で、720時間流通させた後、低電位側電極26に堆積した析出物の厚みを測定した。電界印加条件として、初期電界に対する逆極性電界の比率(Eo/Ei)が「1」,「0.05」,「0」の条件において、電極26,28間に印加する印加平均電界(Ei)を0~100kV/mmの範囲で変化させ、印加平均電界の半値幅を0.001~1000μ秒の範囲で変化させた。なお、全ての条件において、平均電界印加時間の間隔は、投入エネルギーが30Wとなるように調整した。析出物が確認されなかった結果を「AA」評価とし、析出物の厚みが0.03mm未満の結果を「A」評価とし、析出物の厚みが0.03以上0.06mm未満の結果を「B」評価とし、析出物の厚みが0.06以上0.1mm未満の結果を「C」評価とし、析出物の厚みが0.1mm以上の結果を「D」評価とした。「AA」,「A」,「B」及び「C」評価が合格レベルである。すなわち、「AA」,「A」,「B」又は「C」評価が得られた電界印加条件は、オゾン生成量の減少が抑制され、長期間に亘ってリアクタ20の性能を維持することができる。結果を
図6に示す。
【0027】
図6に示すように、「Eo/Ei」の値に係わらず、電極26,28間に印加する印加平均電界を2kV/mm以上50kV/mm以下、印加平均電界の半値幅を0.01μ秒以上100μ秒に調整することにより、析出物の堆積が抑制されることが確認された(「AA」~「C」の結果が得られた)。また、「Eo/Ei」が「1」,「0.05」,「0」の何れの条件においても、印加平均電界を2kV/mm以上30kV/mm以下、印加平均電界の半値幅を0.1μ秒以上10μ秒に調整することにより、析出物の堆積が顕著に抑制されることが確認された。
【0028】
「Eo/Ei」=「1」又は「0.05」と、「Eo/Ei」=「0」とを比較すると、全体的に「Eo/Ei」=「1」又は「0.05」の条件の方が、「Eo/Ei」=「0」の条件よりも良好な結果となった。この結果より、初期電界に対する逆極性電界の比率(Eo/Ei)は、0.05以上であることが好ましいことが確認された。なお、「Eo/Ei」=1の場合については、30kV/mm以下、印加平均電界の半値幅0.1μ秒以上10μ秒の条件(評価「AA」又は「A」が得られた条件)において、さらに条件を細かくして評価を行った。結果を
図7に示す。
【0029】
図7に示すように、「Eo/Ei」=1の場合、印加平均電界2kV/mm以上10kV/mm以下、印加平均電界の半値幅0.5μ秒以上5μ秒であれば、評価「AA」が得られることが確認された。この結果より、「Eo/Ei」=1の場合、平均電界2kV/mm以上10kV/mm以下、印加平均電界の半値幅0.5μ秒以上5μ秒に調整することにより、消費電力を抑制しつつ、確実に析出物の堆積を抑制できることが確認された。
【0030】
(第2実験例)
印加平均電界の傾き(dE/dt)と、NOx発生量の関係について評価した。具体的には、室内空気を流速3m/秒でガス処理装置10に流通させ、生成したNOx濃度(ppm)を測定した。また、本実験例では、初期電界に対する逆極性電界の比率(Eo/Ei)を「1」とし、平均電界印加時間の間隔を投入エネルギーが30Wとなるように調整した。NOxが検出されなかった結果を「A」評価とし、検出されたNOx濃度が0.2ppm未満の結果を「B」評価とし、検出されたNOx濃度が0.2ppm以上の結果を「C」評価とした。「A」及び「B」評価であれば、NOxの生成が十分に抑制されていると評価することができる。結果を
図8に示す。
【0031】
図8に示すように、印加平均電界の傾きを0.001×10
10V/mm秒以上100×10
10V/mm秒以下に調整することにより、NOxの生成が十分に抑制されることが確認された。この結果は、印加平均電界の傾きを0.001×10
10V/mm秒以上100×10
10V/mm秒以下に調整することにより、電極26,28に析出物が堆積することを抑制できるとともに、NOxの発生も抑制できることを示している。なお、印加平均電界の傾きを0.01×10
10V/mm秒以上10×10
10V/mm秒以下に調整することにより、特に良好な結果が得られた。また、消費電力の抑制、オゾンを早期に発生させるという観点より、印加平均電界の傾きは、0.5×10
10V/mm秒以上5×10
10V/mm秒以下に調整することが好ましい。
【0032】
(第3実験例)
ガス処理装置10(電極26,28間)に流通させるガス流速と、NOx発生量の関係について評価した。具体的には、ガス処理装置10に導入する室内空気の流速を0.1~10
6mm/秒の範囲で変化させ、生成したNOx濃度(ppm)を測定した。なお、使用したファンを最大出力で運転したときの流速が、10
6mm/秒である。本実験例では、印加平均電界10kV/mm、印加平均電界の半値幅1μ秒、印加平均電界の傾き1×10
10V/mm秒、初期電界に対する逆極性電界の比率(Eo/Ei)を「1」とし、平均電界印加時間の間隔を投入エネルギーが30Wとなるように調整した。NOxが検出されなかった結果を「A」評価とし、検出されたNOx濃度が0.2ppm未満の結果を「B」評価とし、検出されたNOx濃度が0.2ppm以上の結果を「C」評価とした。結果を
図9に示す。
【0033】
図9に示すように、流速1mm/分以上に調整することにより、NOxの生成が十分に抑制されることが確認された。この結果は、ガス処理装置10(電極26,28間)に流通させるガス流速を流速1mm/分以上に調整することにより、電極26,28に析出物が堆積することを抑制できるとともに、NOxの発生も抑制できることを示している。なお、流速10mm/分以上に調整することにより、特に良好な結果が得られた。また、消費電力の抑制という観点より、流速10
2mm/分以上10
4mm/分に調整することが好ましい。
【0034】
(第4実験例)
次に、平均電界印加時間の間隔(μ秒)を変化させ、生成するオゾン濃度(ppm)と、オゾン発生効率(g/kWh)について評価した。具体的には、ガス処理装置10に室内空気を流速3m/秒で流通させ、生成したオゾン濃度、及び投入エネルギーに対するオゾン濃度の割合(オゾン発生効率)を測定した。また、本実験例では、印加平均電界(Ei)10kV/mm、印加平均電界の半値幅1μ秒、初期電界に対する逆極性電界の比率(Eo/Ei)を「1」とし、平均電界傾度を1×10
10V/mm秒とした。なお、オゾン発生効率は、下記式1によって算出した。オゾン濃度10ppm以上、オゾン発生効率1000g/kWh以上の双方を満足する結果を「A」評価とした。オゾン濃度10ppm以上、オゾン発生効率1000g/kWh以上の一方を満足する結果を「B」評価とした。オゾン濃度10ppm以上、オゾン発生効率1000g/kWh以上のいずれも満足しなかった結果を「C」評価とした。結果を
図10に示す。
式1:オゾン発生効率=ガス流量(L/h)×オゾン濃度(ppm)×オゾン分子量(48g/mol)/(22.4×投入エネルギー(W))
【0035】
図10に示すように、平均電界印加時間の間隔が大きくなるに従い、生成するオゾン濃度は低下し、オゾン発生効率は改善している。平均電界印加時間の間隔を10μ秒以上10000μ秒以下に調整することにより、オゾン濃度10ppm以上、オゾン発生効率1000g/kWh以上の少なくとも1つを満足する結果が得られること確認された。特に、平均電界印加時間の間隔を50μ秒以上1000μ秒以下に調整することにより、十分なオゾン濃度(10ppm以上)が得られるとともに、高いオゾン発生効率(1000g/kWh以上)が得られることが確認された。また、エチレンガスをより確実に分解する(オゾン濃度を十分に濃くする)という観点より、平均電界印加時間の間隔は、50μ秒以上500μ秒以下に調整するが好ましい。
【0036】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0037】
10:ガス処理装置
20:オゾン発生装置
26:低電位側電極
28:高電位側電極