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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183828
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】空域監視システム、センサ制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/00 20060101AFI20231221BHJP
   G01S 13/87 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G08G5/00 A
G01S13/87
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097583
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 亮介
(72)【発明者】
【氏名】中田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】谷本 尚生
(72)【発明者】
【氏名】藤井 啓太
【テーマコード(参考)】
5H181
5J070
【Fターム(参考)】
5H181AA26
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5J070AB24
5J070AC01
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC13
5J070AD06
5J070AD08
5J070AE04
5J070AF01
5J070AK40
5J070BB01
5J070BD01
(57)【要約】
【課題】システム稼働のための消費電力を低減可能な空域監視システム、センサ制御装置を提供する。
【解決手段】管理サーバは各監視局から、飛行体の検出結果を示すデータを取得する。また、管理サーバは事前登録されている飛行体である登録機からは、現在位置等を示す現況データを随時受信する。管理サーバは、登録機から受信する現況データ及び各監視局での検出結果の少なくとも何れか一方に基づき、所定時間の間は飛行体が通過する恐れがない区域を特定し、対応するレーダシステムを節電モードに移行させる。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体を検出するためのセンサであって、所定の監視エリアを形成するよう、地上に分散配置されている複数の飛行体センサ(21)と、
所定の外部装置からの入力データ、又は、複数の前記飛行体センサの検出結果に基づいて、前記監視エリア内に存在する前記飛行体の情報を取得する飛行体情報取得部(F1)と、
前記飛行体情報取得部が取得した前記飛行体の情報に基づき、複数の前記飛行体センサのそれぞれの動作を制御する制御部(F5)と、を備える空域監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の空域監視システムであって、
前記監視エリア内を飛行予定の前記飛行体として登録されている登録機と無線通信を実施するための無線通信部(13)を備え、
前記飛行体情報取得部は、前記無線通信部を介して前記登録機の位置を取得し、
前記制御部は、前記登録機の位置をもとに、前記飛行体センサごとの動作態様を調整する空域監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の空域監視システムであって、
前記制御部は、前記登録機から所定距離以内に存在する前記飛行体センサは所定の基本態様で動作させる一方、前記登録機からの距離が前記所定距離よりも大きくなる位置に存在する前記飛行体センサは、前記基本態様よりも消費電力が少ない節電態様で動作させる空域監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載の空域監視システムであって、
前記監視エリア内を飛行予定の前記飛行体の飛行計画が保存される飛行計画記憶部(15)を備え、
前記飛行体情報取得部は、前記外部装置から入力された前記飛行計画を前記飛行計画記憶部に保存し、
前記制御部は、前記飛行計画記憶部に保存されている前記飛行計画をもとに、前記飛行体センサごとの動作態様を調整する空域監視システム。
【請求項5】
請求項4に記載の空域監視システムであって、
前記飛行計画は、飛行予定の経路に関するデータを含み、
前記制御部は、前記経路から所定距離以内に存在する前記飛行体センサは所定の基本態様で動作させる一方、前記経路からの距離が前記所定距離よりも大きくなる位置に存在する前記飛行体センサは前記基本態様よりも消費電力が少ない節電態様で動作させる空域監視システム。
【請求項6】
請求項1に記載の空域監視システムであって、
前記飛行体情報取得部は、複数の前記飛行体センサのそれぞれから、検出されている前記飛行体の位置及び移動方向を含む検出結果データを取得し、
前記制御部は、検出されている前記飛行体の位置及び移動方向に基づいて、前記飛行体センサごとの動作態様を調整する空域監視システム。
【請求項7】
請求項1に記載の空域監視システムであって、
前記飛行体情報取得部が取得している情報に基づいて、前記監視エリア内に存在する前記飛行体の進行方向を予測する進路予測部(F3)を備え、
前記制御部は、前記進路予測部で予測されている前記進行方向に基づいて、前記飛行体センサごとの動作態様を調整する空域監視システム。
【請求項8】
請求項7に記載の空域監視システムであって、
前記飛行体情報取得部は、前記飛行体の現在位置と目的地情報を取得し、
前記進路予測部は、地図データと現在位置と前記目的地情報をもとに前記進行方向を予測する空域監視システム。
【請求項9】
請求項1に記載の空域監視システムであって、
前記監視エリア内の気象情報を取得する気象情報取得部(F2)を備え、
前記制御部は、前記気象情報をもとに前記飛行体センサごとの動作態様を調整するように構成されている空域監視システム。
【請求項10】
請求項1に記載の空域監視システムであって、
前記制御部は、各前記飛行体センサごとの動作態様を、当該飛行体センサに隣接する他の前記飛行体センサにおける前記飛行体の検出結果に基づき決定する空域監視システム。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
前記制御部は、前記飛行体が存在しない区域の前記飛行体センサの動作を停止させる空域監視システム。
【請求項12】
請求項1から10の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
前記制御部は、前記飛行体が存在しない区域の前記飛行体センサの送信電力を基本値よりも小さい値に設定する空域監視システム。
【請求項13】
請求項1から10の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
前記制御部は、前記飛行体が存在しない区域の前記飛行体センサのスキャン周期を基本値よりも大きい値に設定する空域監視システム。
【請求項14】
請求項1から10の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
複数の前記飛行体センサのそれぞれには、前記飛行体センサの作動を制御する個別制御部(23)が接続されており、
前記個別制御部は、
自身が制御対象とする前記飛行体センサである対象センサ(21α)での前記飛行体の検出状況を示すデータを取得することと、
前記対象センサに隣接する他の前記飛行体センサである隣接センサ(21β)での前記飛行体の検出状況を示す隣接エリアデータを、当該隣接センサに対応する前記個別制御部又は前記制御部から受信することと、
前記隣接エリアデータに基づき、現在から所定時間以内に前記対象センサの検知エリア内に進入見込みの前記飛行体が存在するか否かを判定することと、
前記対象センサにて前記飛行体が検出されていない場合であっても、現在から所定時間以内に前記対象センサの検知エリア内に進入見込みの前記飛行体が存在すると判定されている場合には前記飛行体センサの動作態様を所定の基本態様に設定する一方、
前記飛行体センサにて前記飛行体が現在検出されておらず、かつ、現在から所定時間以内に前記対象センサの検知エリア内に進入見込みの前記飛行体が存在するとは判定されている場合には、前記対象センサの動作態様を、前記基本態様よりも消費電力が小さい所定の節電態様に設定する空域監視システム。
【請求項15】
飛行体を検出するための少なくとも1つの飛行体センサ(21)と接続されて使用されるセンサ制御装置であって、
所定の外部装置からの入力データ、又は、複数の前記飛行体センサの検出結果に基づいて、前記飛行体センサの検知エリア(Ad)内に存在する前記飛行体の情報を取得する飛行体情報取得部(F1)と、
前記飛行体情報取得部が取得した前記飛行体の情報に基づき、複数の前記飛行体センサのそれぞれの動作を制御する制御部(F5)と、を備えるセンサ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視エリア内を飛行する飛行体を検出し、追跡する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のレーダを分散配置することにより所望の監視エリアを形成するとともに、各レーダでの検出結果をもとに、監視エリア内の飛行体の位置、移動方向、速度などを統括管理するコンピュータを含む空域監視システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-519768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
個々の飛行体センサ(例えばレーダ)の検出レンジは有限である。故に、監視エリアが大きいほど、多数の飛行体センサを配備する必要がある。システムが具備する飛行体センサの数が増大するほど、システム維持のための消費電力が増大してしまう。
【0005】
本開示は、上記の検討又は着眼点に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、システム稼働のための消費電力を低減可能な空域監視システム、センサ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される空域監視システムは、飛行体を検出するためのセンサであって、所定の監視エリアを形成するよう、地上に分散配置されている複数の飛行体センサ(21)と、所定の外部装置からの入力データ、又は、複数の飛行体センサの検出結果に基づいて、監視エリア内に存在する飛行体の情報を取得する飛行体情報取得部(F1)と、飛行体情報取得部が取得した飛行体の情報に基づき、複数の飛行体センサのそれぞれの動作を制御する制御部(F5)と、を備える。
【0007】
上記の構成によれば、飛行体情報取得部が取得する飛行体の情報に基づいて複数の飛行体センサの動作態様が個別に制御可能となるため、動作が不要な飛行体センサを休止させるなどの処置も実施可能となる。故に、システム稼働のための消費電力を低減可能となる。
【0008】
また、ここに開示されるセンサ制御装置は、飛行体を検出するための少なくとも1つの飛行体センサ(21)と接続されて使用されるセンサ制御装置であって、所定の外部装置からの入力データ、又は、複数の飛行体センサの検出結果に基づいて、飛行体センサの検知エリア(Ad)内に存在する飛行体の情報を取得する飛行体情報取得部(F1)と、飛行体情報取得部が取得した飛行体の情報に基づき、複数の飛行体センサのそれぞれの動作を制御する制御部(F5)と、を備えるセンサ制御装置。
【0009】
上記構成によっても、飛行体情報取得部が取得する飛行体の情報に基づいて制御部が飛行体センサの動作を動的に制御するため、システム稼働のための消費電力を低減可能となる。
【0010】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】空域監視システムの全体像を説明するための図である。
図2】監視局の配置態様の一例を示す図である。
図3】各監視局が形成する検知エリアの形状を説明するための図である。
図4】登録機の構成を説明するための図である。
図5】監視局の構成を説明するための図である。
図6】レーダシステムの構成の一例を示す図である。
図7】管理サーバの構成を説明するための図である。
図8】管理サーバの機能ブロック図である。
図9】空域監視システムの作動を説明するためのシーケンス図である。
図10】管理サーバの作動の一例を示すフローチャートである。
図11】管理サーバの作動の他の例を示すフローチャートである。
図12】降雨量に応じた周波数ごとの降雨減衰量を示すグラフである。
図13】電力制御処理の一例を示すフローチャートである。
図14】電力制御処理の他の例を示すフローチャートである。
図15】飛行体との距離に応じて送信電力を抑制した場合の検知エリアへの影響を説明するための図である。
図16】電力制御処理の他の例を示すフローチャートである。
図17】飛行体の検出状況に応じて送信電力を動的に制御する構成の作動を説明するための図である。
図18】各監視局がレーダシステム21を自律的に制御するシステム構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。なお、以下に開示する構成は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。また、以降の説明において同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については上記説明を適用することができる。
【0013】
図1は、1つの実施形態としての空域監視システムSysの構成を示している。当該空域監視システムSysは、所定の監視エリアZm内を飛行する飛行体をレーダを用いて検出し、追跡するシステムである。監視エリアZmとは監視対象とする空域を指す。
【0014】
検出対象とする飛行体には、人工飛行体3の他、鳥4なども含まれる。人工飛行体3とは、例えば電動垂直離着陸機(eVTOL:electrical Vertical Take Off and Landing)である。人工飛行体3の概念には、有人小型航空機や、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)、AAC(Advanced Air Mobility)や、UAM(Urban Air Mobility)などを含めることができる。UAVには、撮影や小型荷物運搬などに供される小型ドローンも含まれる。
【0015】
空域監視システムSysは、管理サーバ1と、複数の監視局2と、少なくとも1つの登録機3aと、を含む。登録機3aとは、監視エリアZm内を飛行予定である機体として、管理サーバ1に事前登録されている人工飛行体3である。登録機3aは、例えば空域監視システムSysを運営するサービス事業者あるいは当該サービス事業者と提携している組織が保有する人工飛行体3を指す。本開示では、監視エリアZm内を飛行予定の機体として登録されていない(つまり未登録の)人工飛行体3を未登録機3bとも記載する。
【0016】
管理サーバ1と複数の監視局2は、それぞれ通信ネットワークNwで相互通信可能に接続されている。通信ネットワークNwは、有線/無線LAN(Local Area Network)であってもよいし、通信事業者が提供するWAN(Wide Area Network)であってもよい。本実施形態では通信ネットワークNwは、有線形式のLANとして構成されており、モデム/ルータを介して外部のインターネットとも接続されている。インターネットには、入力用端末5aや気象情報配信サーバ5bなどが接続している。入力用端末5aは、オペレータ等が飛行予定の機体の事前登録や、飛行計画の登録などを行うための操作デバイスである。インターネットに接続しているラップトップやデスクトップ型のコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどが入力用端末5aとして機能しうる。入力用端末5aは通信ネットワークNwに直接接続していても良い。入力用端末5aが外部装置に相当する。気象情報配信サーバ5bは気象情報を配信するサーバである。
【0017】
また、管理サーバ1は、登録機3aと無線通信可能に構成されている。管理サーバ1と登録機3aとの無線通信は、例えば4Gや5Gなどのセルラー回線を利用するものであってもよい。また、管理サーバ1と登録機3aとの無線通信は、衛星回線を用いて実現されても良い。さらに、管理サーバ1と登録機3aとの通信方式は、Wi-Fi(登録商標)などであってもよい。
【0018】
監視エリアZmの水平方向のサイズは、例えば50km四方、或いは、100km四方などに設定されている。また、本実施形態では一例として、例えば所定の地上から3kmまでの空域が監視エリアZmに設定されている。監視エリアZmの下限高度は、0m(地上)ではなく、50mや100m、150mなどであっても良い。監視エリアZmの上限高度は、500mや1km、2kmなどであってもよい。
【0019】
個々の監視局2は、図2及び図3に示すように略半球状の検知エリアAdを形成する。各監視局2は、隣接する他の監視局2と、検知エリアAdが重複するように配置されている。複数の監視局2の検知エリアAdが組み合わさることにより、システム全体としての監視エリアZmが形成される。なお、図2及び図3では、各監視局2が形成する検知エリアAdを破線で示している。
【0020】
検知エリアAdの半径であるエリア半径は、監視局2が備えるレーダシステム21の検知距離に対応する。検知エリアAdの半径は5kmなどに設定されている。監視局2の配置間隔は、例えば6kmなどに設定されている。もちろん監視局2の配置間隔は、監視局2の最大検知距離に応じて、1kmや2km、5kmなど、適宜変更可能である。
【0021】
本実施形態では複数の監視局2は所定間隔で千鳥配置されている。ここでの千鳥配置とは、各行内の要素の配置間隔は一定としつつ、行ごとに要素の横位置をずらした配置パターン、換言すれば、次の行の構成要素の横位置が1つ前の行を構成する要素の中間に位置する配置パターンである。もちろん、複数の監視局2は格子状に配置されていても良い。また、複数の監視局2は必ずしも所定の規則性を有するように等間隔で配置されている必要はない。監視局2は不規則に配置されていても良い。複数の監視局2は所望の監視エリアZmを形成するように分散配置されていればよい。
【0022】
複数の監視局2はそれぞれ同じ構成を有している。他の態様として、構成や機能が異なる監視局2が混在していても良い。例えば空域監視システムSysは最大検知距離が異なる複数種類の監視局2を備えていても良い。
【0023】
<登録機の構成について>
まずは、登録機3aの構成について説明する。登録機3aは、図4に示すように、GNSS受信機31、慣性センサユニット32、無線機33、推進システム34、及び機体制御部35を備える。GNSS受信機31、慣性センサユニット32、無線機33、推進システム34はそれぞれ機体制御部35と相互通信可能に接続されている。
【0024】
GNSS受信機31は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星から送信される航法信号を受信することで、当該GNSS受信機31の現在位置を逐次検出するデバイスである。例えばGNSS受信機31は4機以上の測位衛星からの航法信号を受信できている場合には、100ミリ秒ごとに測位結果を機体制御部35に出力する。GNSSとしては、GPS、Galileo、IRNSS、QZSS、BeiDou等を採用可能である。
【0025】
慣性センサユニット32は、3次元の慣性運動、具体的には互いに直交する3軸方向の並進運動および回転運動を検出する装置である。慣性センサユニット32は、3軸加速度センサ及びジャイロセンサを含む。慣性センサユニット32は、検出軸方向ごとの加速度及び回転角速度を示すデータを機体制御部35に逐次出力する。なお、慣性センサユニット32は、IMU(Inertial Measurement Unit)とも呼ばれうる。
【0026】
無線機33は、管理サーバ1と無線通信を実施するための通信モジュールである。無線機33は、アンテナ、増幅回路、変調回路、及び復調回路などを含む。無線機33は、受信データを機体制御部35に出力するとともに、機体制御部35から入力されたベースバンド信号を変調して管理サーバ1に送信する。
【0027】
推進システム34は、登録機3aを飛行させるための推進力を発生させるシステムである。推進システム34は、1つ以上のプロペラ又はロータと、それ/それらを回転させるためのモータを含みうる。推進システム34の具体的な構成としては多様な構成を採用可能である。推進システム34の作動は機体制御部35によって制御される。
【0028】
機体制御部35は、GNSS受信機31及び慣性センサユニット32からの入力信号に基づき自機の現在位置を算出し、目的地に向かって飛行するよう、より好ましくは事前に設定されている飛行経路に沿って飛行するよう、推進システム34を制御する。飛行経路は、目的地としての着陸ポイントの位置座標を含みうる。飛行経路は、操縦者によって離陸前にプリセットされていてもよい。飛行経路は、飛行中においても無線通信によって随時変更されてもよい。
【0029】
なお、登録機3aは、地上の操縦者によって遠隔制御されるものであってもよい。機体制御部35は、操縦者が所持する操作端末又は管理サーバ1から受信する遠隔制御信号に従って飛行するように構成されていても良い。それに伴い、飛行経路を示すデータは、機体制御部35のメモリに保存されていなくとも良い。
【0030】
また、登録機3aは、上記以外にも、ミリ波レーダや、カメラ、LiDARなどといった周辺監視センサを備えていてもよい。周辺監視センサは外界センサとも呼ばれうる。登録機3aは、周辺監視センサを用いて自律的に他の飛行体を検知して回避したり、ローカライズを実施したりするように構成されていても良い。ローカライズは、周辺監視センサで検出された地形/地物の情報を、地図データに示される地形/地物情報と照らし合わせることにより、地図上の自己位置を推定する処理を指す。
【0031】
<監視装置について>
監視局2は、図5に示すように、レーダシステム21、通信装置22、及びレーダ制御部23を備える。レーダシステム21及び通信装置22はそれぞれ、レーダ制御部23と通信可能に接続されている。
【0032】
レーダシステム21は、探査波を送信することにより、検知エリアAd内の飛行体を検出するシステムである。レーダシステム21が飛行体センサに相当する。レーダシステム21は、探査波が物体で反射されて返ってきた反射波の受信信号を解析することにより、探査波の送信方向に存在する飛行体までの距離や移動速度を検出する。本開示では、探査波を送信するとともに、探査波を送信してから所定時間以内に受信した信号を解析する一連の処理を送受信処理と称する。送受信処理は、探査波の送信方向に存在する物体の位置等を検出するための処理に相当する。
【0033】
レーダシステム21は、1つ又は複数のミリ波レーダ211を用いて、45°以上、好ましくは略90°の垂直視野角を有するように構成されている。ミリ波レーダ211は、探査波を送信するための少なくとも1つの送信アンテナと、反射波を受信するための複数の受信アンテナを備える。複数の受信アンテナはアレイ状に配置されている。送信アンテナもアレイ状に複数配置されていても良い。当該ミリ波レーダ211は、航空路監視レーダ(ARSR:Air Route Surveillance Radar)や、空港面探知レーダ(ASDE:Airport Surface Detection Equipment)、2次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)などといった設備を援用して実現されうる。ミリ波レーダ211の水平方向における物体を検出可能な角度範囲である水平視野角は、0.5°又は1.0°に設定されている。また、ミリ波レーダ211の垂直方向における物体を検出可能な角度範囲である垂直視野角は、0.3°や1.0°、2.5°、5.0°などに設定されている。
【0034】
検知距離を伸ばすほど視野角は鋭角となる傾向があるため、要求されるエリア半径によっては、1つのミリ波レーダ211にて45°以上の垂直視野角を形成することが難しい場合もありうる。故に、監視局2は図6に示すように、複数のミリ波レーダを用いて90°などの所望の垂直視野角を実現するように構成されていてもよい。複数のミリ波レーダ211は、地面に対して回転可能に構成された台座部RPに対し、それぞれ異なる仰角で配置されている。もちろん、最大検知距離やミリ波レーダの仕様によっては、レーダシステム21を構成するミリ波レーダ211は1つだけであってもよい。
【0035】
探査波の周波数は、例えば12GHzから18GHzまでの周波数帯(いわゆるKuバンド)や、8GHzから12GHzまでの周波数帯(いわゆるXバンド)の電波を採用可能である。探査波の周波数は、9.4GHzや24.5GHzなど、任意の値に設定されうる。
【0036】
当該レーダシステム21は、探査波の送信電力を50kWから250kWの範囲で動的に変更可能に構成されている。探査波の送信電力は、レーダ制御部23によって制御される。またレーダシステム21は、例えば送信電力が250kWの場合、検知距離が5kmとなるように構成されている。
【0037】
レーダシステム21は、レーダシステム21の向き(ヨー角)、換言すれば検出方向を変更するためのモータ212を備える。当該モータ212の回転軸は、直接的に又はギアを介して台座部RPと接続されている。当該モータ212は、レーダ制御部23からの制御信号に基づき駆動し、台座部RPひいてはミリ波レーダ211を所定の速度で回動させる。例えばモータ212はレーダシステム21を回動させることにより、半球状の検知エリアAdを形成する。
【0038】
なお、レーダシステム21は、ミリ波レーダ211の仰角を変更するための仰角調整モータを備えていても良い。レーダシステム21は、1つのミリ波レーダ211を複数の仰角で水平走査させることによって擬似的に半球状の検知エリアAdを形成するように構成されていても良い。水平走査とは、水平方向に所定の角度単位で回転しながら探査波の送受信を順次行う処理を指す。本開示では、半球状の検知エリアAdを形成するための一連の送受信処理をエリアスキャン処理と称する。エリアスキャン処理は、それぞれ異なる方向に対する送受信処理を含む。
【0039】
通信装置22は、管理サーバ1とデータ通信するための設備である。通信装置22は、通信ネットワークNwの規格に準拠した変調及び復調を行う回路を含む。通信装置22は、受信データをレーダ制御部23に出力するとともに、レーダ制御部23から入力されたベースバンド信号を変調して管理サーバ1に送信する。
【0040】
レーダ制御部23は、レーダシステム21にて検出された飛行体である検出体の位置に関連する位置関連情報を取得する。位置関連情報とは、レーダシステム21から検出体までの距離の他、飛行体の位置座標や、飛行体の移動速度、移動方向を含みうる。位置座標は例えば、緯度、経度、高度で表現されうる。レーダ制御部23は、検出体ごとの位置関連情報をタイムスタンプとともにメモリに保存する。
【0041】
また、レーダ制御部23は、検出体ごとの位置関連情報を、飛行体IDを用いて管理する。飛行体IDは、検出された飛行体を区別するための識別番号であり、新規の飛行体が検出されるたびに発行される。レーダ制御部23は、検出体の位置関連情報に基づいて、前時刻に検出された物体と、次の時刻に検出された物体との対応付けを行う。すなわちレーダ制御部23は、一旦検出した飛行体を追跡(換言すればトラッキング)する機能を有する。物体の追跡方法としては多様な方法を援用可能である。例えばレーダ制御部23は、検出体ごとに、前時刻での位置と移動速度に基づいて現時刻での位置を推定し、最新の観測データにおいて、当該推定位置に最も近いものを同一物と見なすことができる。飛行体の追跡は、位置や移動方向、移動速度、大きさ、反射強度などの類似性を用いて実施することができる。
【0042】
レーダ制御部23は、検出体ごとの位置関連情報を示す検出結果データを、通信ネットワークNwを介して管理サーバ1へ送信する。また、レーダ制御部23は、管理サーバ1からの指示に基づきレーダシステム21の動作態様を制御する。レーダシステム21の動作態様を構成するパラメータとしては、探査波の送信電力や、スキャン周期(頻度)などが挙げられる。なお、スキャン周期は、エリアスキャン処理の実行間隔である。
【0043】
例えばレーダ制御部23は、管理サーバ1からの指示に基づき、送信電力を基本レベルから抑制レベルに変更する。基本レベルは、所望のエリア半径を実現する送信電力である。抑制レベルは、基本レベルよりも低い値に設定されている。抑制レベルは、管理サーバ1からの指示、又は、観測飛行高度に応じて動的に決定されても良い。観測飛行高度は、検出済みの飛行体が存在しうる高度であって、過去の検出結果に基づいて導出される。観測飛行高度の算出は、レーダ制御部23が実施しても良いし、管理サーバ1が実施しても良い。送信電力は、探査波の送信方位ごとに個別に変更されても良い。
【0044】
また、レーダ制御部23は、管理サーバ1からの指示又は飛行体の検出状況に基づき、スキャン周期を基本となる基本周期から抑制周期に変更してもよい。基本周期は1秒に設定されている一方、抑制周期は2秒や3秒に設定されている。抑制周期は基本周期よりも長く設定されていれば良い。基本周期や抑制周期の具体的な値は適宜変更可能である。
【0045】
その他、レーダ制御部23は、管理サーバ1からの指示に基づき、実態的な検知エリアAdを縮小させても良い。検知エリアAdを絞ることは、送受信処理を実施させる方位や仰角の範囲を縮小することに対応する。例えばレーダ制御部23は、通常時の検知エリアAdは360°とする一方、一時的に検知エリアAdを0°から180°まで、すなわち通常時の半分などに絞っても良い。
【0046】
なお、各監視局2は、降雨を検出するレインセンサなどを備えていても良い。監視局2がレインセンサを具備する場合、レーダ制御部23は降雨に関するデータを管理サーバ1に送信しうる。
【0047】
<管理サーバについて>
管理サーバ1は各監視局2での検出結果データを集約し、監視エリアZm内の飛行体の情報を統括管理するとともに、監視エリアZm内の飛行体の情報に基づき、各レーダシステム21の動作態様を制御する設備である。管理サーバ1は、図7に示すように中央処理部11、第1通信装置12、第2通信装置13、地図DB14、及び、飛行体DB15を備える。部材名称中のDBはデータベースの略である。
【0048】
中央処理部11はプロセッサ111、メモリ112、ストレージ113等を備えた、コンピュータとして構成されている。プロセッサ111はCPU(Central Processing Unit)などの演算コアである。メモリ112は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリである。ストレージ113は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ113には、プロセッサ111によって実行される制御プログラムが格納されている。制御プログラムは、監視エリアZm内における飛行体の位置に応じて各レーダシステム21の動作態様を制御するプログラムであるレーダ制御プログラムを含む。プロセッサ111がレーダ制御プログラムを実行することは、レーダ制御プログラムに対応するレーダ制御方法が実行されることに相当する。中央処理部11の機能については別途後述する。
【0049】
第1通信装置12は、中央処理部11が通信ネットワークNwを介して監視局2と通信するための装置である。第1通信装置12は、受信データを中央処理部11に出力するとともに、中央処理部11から入力されたデータに対応する通信フレームを通信ネットワークNwに送出する。また、中央処理部11は、第1通信装置12を介して、入力用端末5aや気象情報配信サーバ5bなどともデータ通信を実施しうる。
【0050】
第2通信装置13は、登録機3aと無線通信を実施するための装置である。第2通信装置13が無線通信部に相当する。第2通信装置13は、受信データを中央処理部11に出力するとともに、中央処理部11から入力されたデータに対応する無線信号を送信する。なお、登録機3aとの通信方式と監視局2との通信方式は同一であってもよい。第1通信装置12は第2通信装置13と統合されていても良い。
【0051】
図DB14は、地表面の3次元形状を示す地図データが格納されているデータベースである。当該地図データには、タワー型のマンションや鉄塔など、地上に構築されている設備の頂点位置や、種別などが登録されていてもよい。また、地図DB14には、飛行禁止空域を示す禁止区域データが保存されていても良い。飛行禁止空域は、飛行が禁止されている空域である。さらに、地図DB14には、強風箇所を示す強風箇所データや、電波環境が悪い箇所を示す通信困難箇所データ、鳥4が頻繁に観測される箇所/経路を示す鳥類飛行経路データなどが登録されていても良い。地図DB14は、中央処理部11によるデータの書き込み、読出、削除等が実施可能に構成されている。
【0052】
飛行体DB15は、監視エリアZm内を飛行中の飛行体に関する種々の情報が保存されるデータベースである。飛行体DB15は、中央処理部11によるデータの書き込み、読出、削除等が実施可能に構成されている。飛行体DB15には、現在飛行中の飛行体の情報が保存される。飛行体の情報とは、飛行体ごとの位置関連情報を指す。飛行体DB15には、登録機3aの飛行計画などの情報も保存されうる。
【0053】
<中央処理部の機能について>
プロセッサ111は、ストレージ113に保存されている制御プログラムを実行することにより、図8に示す種々の機能ブロックに対応する機能を提供する。すなわち、中央処理部11は機能部として、飛行体情報取得部F1、気象情報取得部F2、進路予測部F3、支援部F4、及び動作制御部F5を備える。
【0054】
飛行体情報取得部F1は、各監視局2から検出結果データを取得して、飛行体DB15に保存する構成である。飛行体ごとの情報は、飛行体IDに基づいて区別して保存される。また、飛行体情報取得部F1は、入力用端末5aからの入力データに基づき、登録機3aの情報を取得し、飛行体DB15に保存する。登録機3aの情報とは、機体番号や、飛行計画データ、運行管理者/操縦者の情報などを含む。飛行計画データは、飛行経路データと飛行時間帯データを含みうる。飛行経路データは、出発地情報、目的地情報、及び、出発地から目的地までの移動経路データを含む。飛行時間帯データは、離陸予定時間と着陸予定時刻を含みうる。飛行体DB15が飛行計画記憶部に相当する。
【0055】
気象情報取得部F2は、気象情報配信サーバ5bと通信することにより、監視エリアZmの気象情報を取得する構成である。気象情報は、地点ごとの降雨量や風速、気温などの情報を含む。なお、気象情報の取得元は、気象情報配信サーバ5bに限らない。気象情報取得部F2は、各監視局2から設置箇所での降雨の有無などを示す情報を取得しても良い。また、気象情報取得部F2は、登録機3aから周囲の気象情報を取得しても良い。
【0056】
進路予測部F3は、飛行体ごとの進路(進行方向)を予測する構成である。ここでの進路とは、5秒後や10秒後など、所定時間後の移動方向、或いは、大局的な移動方向を指す。飛行体の進路予測は、当該飛行体の直近所定時間以内に取得された位置関連情報に基づいて実施される。例えば進路予測部F3は、未登録機3bや鳥4の進路に関しては、予測対象とする飛行体に関する位置関連情報の時系列データ(履歴)に基づいて算出する。具体的には、直近所定時間以内の検出位置を母集団として定まる回帰曲線が伸びる方向を進路として採用する。
【0057】
また、進路予測部F3は、登録機3aの進路に関しては、事前に取得して飛行体DB15に保存されている飛行計画や目的地に基づいて予測してもよい。例えば、進路予測部F3は、直近所定時間以内の検出位置座標に加えて目的地を母集団として求まる回帰曲線をもとに登録機3aの進路を予測してもよい。進路予測部F3は、飛行体DB15に保存されている飛行計画と、実際に観測されている直近所定時間以内の位置関連情報を組み合わせて登録機3aの進路を予測しても良い。
【0058】
さらに、進路予測部F3は、地図DB14に登録されている地図データや禁止区域データを用いて、飛行体ごとの進路を予測しても良い。例えば人工飛行体3に関しては、直近所定時間以内の検出位置座標を母集団として定まる回帰曲線の延長線上に飛行機禁止空域が存在する場合には、当該飛行禁止空域を避ける方向を進路として採用する。一方、鳥4に関しては飛行禁止空域を考慮せずに、例えば直近所定時間以内の検出位置座標を母集団として定まる回帰曲線が伸びる方向をそのまま進路として採用してもよい。また、検出されている鳥4の進路は、鳥類飛行経路データに基づいて推定されても良い。
【0059】
支援部F4は、無線通信により登録機3aの飛行制御を支援する構成である。例えば支援部F4は、登録機3aに対し、制御支援データを配信する。制御支援データは、当該登録機3aの現在位置座標、周辺の地図データ、及び、周囲に存在する他の飛行体の位置関連情報の少なくとも何れか1つを含むデータセットである。支援部F4は、登録機3aを所定の地点まで誘導する遠隔制御処理を実施してもよい。
【0060】
動作制御部F5は、監視エリアZm内の飛行体の飛行状態に応じて複数のレーダシステム21のそれぞれの動作態様を制御する構成である。動作制御部F5は、例えばサブ機能部として、選択部F51、電力調整部F52、及び周期調整部F53を備える。選択部F51は、複数のレーダシステム21のなかで動作/停止させるレーダシステム21を取捨選択する構成である。電力調整部F52は、レーダシステム21ごとの送信電力を決定する構成である。例えば電力調整部F52は、特定条件を充足するレーダシステム21の送信電力を基本レベルから抑制レベルに変更する。周期調整部F53は、レーダシステム21ごとのスキャン周期を調整する構成である。例えば周期調整部F53は、特定条件を充足するレーダシステム21のスキャン周期を基本周期から抑制周期に変更する。動作制御部F5の作動例については以下で説明する。なお、以降で述べる種々の制御例や変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。
【0061】
<制御例(1)>
ここでは管理サーバ1が登録機3aから報告される位置情報に基づいてレーダ制御を行う際の各構成の作動について図9を用いて説明する。登録機3aから報告される位置情報に基づくレーダ制御処理は、ステップS10~S1Aを含む。下記ステップの実行主体としての登録機3aとの記載は機体制御部35に置き換える事ができる。また、下記ステップの実行主体としての管理サーバ1との記載は、中央処理部11/飛行体情報取得部F1/気象情報取得部F2/進路予測部F3/支援部F4/動作制御部F5に置き換え可能である。さらに、ステップの実行主体としての監視局2との記載は、レーダ制御部23に置き換え可能である。
【0062】
ステップS10は、登録機3aがGNSS受信機31の出力信号と慣性センサユニット32の出力信号に基づいて自己位置座標を推定するステップである。ステップS10は、登録機3aごとに、所定の自己位置推定周期で実行される。自己位置推定周期は、例えば100ミリ秒や200ミリ秒、500ミリ秒などに設定されている。自己位置推定周期は1秒以下に設定されていることが好ましい。
【0063】
ステップS11は、登録機3aがステップS10で算出した自己位置座標を含む現況データを管理サーバ1に向けて送信するステップである。現況データは、自己位置座標だけでなく、移動方向や、移動速度を含んでいても良い。また、現況データは目的地の座標や、飛行経路データを含んでいても良い。
【0064】
ステップS12は、管理サーバ1が、登録機3aから送信されてきた自己位置座標に基づいて、動作させるレーダシステム21である稼働レーダを選択するステップである。例えば管理サーバ1は、登録機3aの現在位置から稼働距離以内に存在するレーダシステム21を稼働レーダに設定する。ここでの稼働距離は、登録機3aの周辺とみなすことができる値に設定されている。稼働距離は、3kmや5kmなどエリア半径に応じた値に設定されうる。
【0065】
稼働距離の具体的な値は、注目している登録機3aの移動速度に応じて調整されても良い。注目している登録機3aとは、処理対象とする登録機3aであって、現況データの送信元に相当する。例えば管理サーバ1は、注目している登録機3aの移動速度が所定値未満である場合には稼働距離として第1稼働距離を適用する。一方、管理サーバ1は、移動速度が所定値以上である場合には稼働距離として第2稼働距離を適用する。第2稼働距離は、第1稼働距離よりも長く設定されている。例えば第1稼働距離は3kmである一方、第2稼働距離は6kmなどに設定されている。このように速度が大きいほど稼働距離を伸ばす構成によれば、登録機3aをロストする恐れを低減できる。換言すれば、登録機3aが所定時間以内に到達可能なエリアを監視するために必要十分な数/位置のレーダシステム21を稼働対象に設定可能となる。
【0066】
なお、稼働レーダを選択することは、逆説的に、休止(動作停止)させるレーダシステム21や休止状態を維持させるレーダシステム21を選択することに対応する。管理サーバ1は、ステップS12を登録機3aから現況データを受信するたびに実施しても良いし、所定の更新周期で実施しても良い。更新周期は200ミリ秒や、400ミリ秒、1秒などに設定されうる。更新周期は10秒や1分、10分単位であってもよい。
【0067】
ステップS13は、管理サーバ1が、稼働レーダを保有する監視局2に向けて稼働指示信号を送信するステップである。ステップS13は、登録機3aから稼働距離以内に存在する監視局2である周辺監視局2aに向けて稼働指示信号を送信するステップと解することができる。ステップS13で送信する稼働指示信号は、レーダシステム21を所定の基本態様で動作させるように指示する信号である。ここでの基本態様は、送信電力が基本レベルであって、かつ、スキャン周期が基本周期である態様を指す。
【0068】
ステップS14は、稼働レーダを保有しない監視局2に向けて管理サーバ1が停止指示信号を送信するステップである。ステップS14は、登録機3aからの距離が稼働距離よりも大きくなる位置に存在する監視局2である遠方監視局2bに向けて休止指示信号を送信するステップと解することができる。休止指示信号は、レーダシステム21を休止させるように指示する信号である。なお、休止指示信号は、既にレーダシステム21を休止中の監視局2においては、休止状態を継続する指示信号として作用する。ステップS13、S14は、稼働レーダの選択処理が完了次第、実施されてもよいし、定期的に実施されても良い。
【0069】
ステップS15は、稼働指示信号を受信した監視局2が、自局のレーダシステム21を基本態様で動作させ始めるステップである。ステップS16は、休止指示信号を受信した監視局2がレーダシステム21を休止させる/休止状態を維持するステップである。ステップS15、S16は、管理サーバ1からの駆動/休止指示号を受信したことに基づいて実行される。
【0070】
ステップS17は、監視局2が検出結果データを管理サーバ1に向けて送信するステップである。ステップS17は、エリアスキャン処理が実施されるたびに、換言すれば定期的に実施されうる。
【0071】
ステップS18は管理サーバ1が監視エリアZm内における飛行体の飛行状態に係る管理データを更新するステップである。管理サーバ1はステップS18として、各監視局2から受信した検出結果データを統合することにより、監視エリアZmにおける飛行体ごとの位置や、移動速度、移動方向などを特定する。管理サーバ1は、ステップS18を定期的に実施しても良いし、少なくとも1つの監視局2から検出結果データを受信するたびに実行しても良い。
【0072】
なお、複数の検知エリアAdが重なる空域(以降、重複エリア)に存在する飛行体に関する情報は、当該重複エリアに関連する複数の監視局2から報告される。管理サーバ1は、重複エリアに検出されている飛行体に関しては、位置や速度、移動方向、その他特徴量を用いて、他の監視局2で検出されている飛行体と同一物であるか否かを判定し、互いに対応付けてもよい。管理サーバ1は、複数の監視局2で検出されている同一の検出体に対しては共通の飛行体IDを付与してもよい。複数の監視局2で検出されている同一の検出体の位置関連情報は、各監視局2での検出結果を平均化することで決定されても良い。
【0073】
ステップS19は、管理サーバ1が制御支援データを登録機3aに送信するステップである。制御支援データは、例えば、宛先とする登録機3aの現在位置座標と、周囲に存在する他の飛行体の位置関連情報の少なくとも何れか1つを含むデータセットとすることができる。現在位置座標は、レーダシステム21での検出結果をもとに算出されたものであって、状況(例えば飛行速度)によっては、登録機3aが自己位置推定した結果よりも高精度であることが期待できる。制御支援データの送信は、登録機3aごとに、定期的に実施される。
【0074】
ステップS1Aは、登録機3aが管理サーバ1から受信する制御支援データに基づいて、自機が保持している現在位置座標を補正するステップである。なお、登録機3aは、受信した制御支援データに示される位置座標と、自分自身で推定している位置座標との差を測位誤差として算出してもよい。また、登録機3aは測位誤差が所定値以上である場合、機体制御部35は、測位誤差が所定値未満に収束するまで移動速度を所定の基本速度から所定の抑制速度まで低下させても良い。測位誤差が大きい場合には制御の安定性が劣化しうる。上記構成によれば、登録機3aがより安全に飛行可能となりうる。なお、基本速度は、測位誤差が所定値未満である場合に適用される値であって、100km/hなど、任意の値が設定されうる。また、抑制速度は、基本値よりも小さい値であればよく、例えば60km/hや80km/hなどに設定されうる。
【0075】
ステップS1Aは、登録機3aが制御支援データに示される他の飛行体の情報に基づいて自機の飛行計画を修正するステップであってもよい。飛行計画の修正とは、例えば飛行経路自体の変更や、移動速度の変更を指す。例えば登録機3aは、自機周辺に存在する他の飛行体との距離が所定値以上保たれるように飛行経路を変更しても良い。飛行経路を変更することには、高度を所定量上昇/下降させることも含まれる。
【0076】
上記の制御態様によれば、登録機3aから所定距離以上離れた位置にあるレーダシステム21は休止されるため、節電効果が期待できる。また、上記構成によれば、登録機3a周辺に存在する他の飛行体の情報が制御支援データとして登録機3aに通知されるため、登録機3aは障害物を避けて飛行しやすくなる。
【0077】
なお、上記の制御例は、登録機3aから受信する現況データに基づいて、飛行体が存在しない区域を特定し、当該区域に対応するレーダシステム21を休止させる構成に相当する。
【0078】
また、管理サーバ1は、登録機3aから受信する現況データに基づいて、現在から所定時間の間は飛行体が通過する恐れがない区域を特定するように作動しても良い。そして、管理サーバ1は、飛行体が通過する恐れがないと判定されている区域に対応するレーダシステム21を休止させてもよい。
【0079】
<制御例(2)>
管理サーバ1は、離陸基地から所定距離以内となるレーダシステム21に関しては、当該離陸基地から離陸した飛行体を検出可能なように、空域監視システムSysの稼働時間において常に基本態様で動作させてもよい。そして、管理サーバ1は、離陸基地から離陸した飛行体を追跡する事により、当該飛行体の移動に伴って稼働させるレーダシステム21を動的に変更するように構成されていても良い。
【0080】
例えば管理サーバ1は、図10に示すフローに従って、複数のレーダシステム21のそれぞれの動作態様を制御してもよい。図10に各ステップは図中の矢印の方向に従い、管理サーバ1にて順に実行される。なお、図10に示すステップS21は、離陸基地の周辺に存在するレーダシステム21である離陸基地監視レーダにて、離陸した飛行体が検出されたか否かを判定するステップである。例えば離陸基地から稼働距離以内に存在するレーダシステム21が離陸基地監視レーダに該当しうる。ステップS22は、ステップS21で検出された飛行体の追跡を開始するステップである。
【0081】
ステップS23は、管理サーバ1がステップS21で検出された飛行体の移動方向に存在するレーダシステム21を稼働させるステップである。移動方向は、追跡対象とする飛行体を捕捉しているレーダシステム21にて検出されうる。また、管理サーバ1は、追跡対象とする飛行体が登録機3aである場合には、当該登録機3aとの通信により、移動方向を取得しても良い。
【0082】
ステップS24は、離陸基地監視レーダを除く、追跡対象が離脱済みの検知エリアAdを形成するレーダシステム21を休止させるステップである。追跡対象が離脱済みの検知エリアAdを形成するレーダシステム21とは、例えば追跡対象の後方又は側方に存在し、かつ、追跡対象から稼働距離以上離れた位置に存在するレーダシステム21を指す。追跡対象の後方とは移動方向の逆側を指す。
【0083】
ステップS25は、追跡対象が着陸したか否かを判定するステップである。例えば管理サーバ1は、追跡対象の高度が所定値(例えば150m)以下となったことに基づいて、追跡対象は着陸したと判定しても良い。ステップS23~S25は、例えば一定時間間隔で繰り返される。ステップS23~S25が繰り返されることにより、追跡対象の移動に伴って、稼働させるレーダシステム21もスライド式に移り変わっていく。
【0084】
ステップS26は、追跡対象の着陸を検知したことに基づいて、当該追跡対象のために起動したレーダシステム21を休止させるステップである。なお、前述の通り、離陸基地監視レーダに設定されているレーダシステム21に関しては動作を継続させる。また、他の制御例の適用によって、一部のレーダシステム21は動作を継続させても良い。
【0085】
なお、上記の離陸基地は、例えば登録機3aの離陸(出発)に使用される地点である。また、管理サーバ1には、未登録機3bが出現しやすい地点が離陸基地として登録されていても良い。離陸基地とする位置座標は事前に設計者/管理者によりストレージ113又は地図DB14に登録されている。離陸基地は着陸にも供されうるため、離発着基地と呼ぶこともできる。
【0086】
上記の制御例では、管理サーバ1は、レーダシステム21で検出された移動方向、又は、追跡対象から報告された移動方向に存在するレーダシステム21を順次稼働させる態様を述べたが、これに限らない。管理サーバ1は、進路予測部F3にて予測された進路に沿って、レーダシステム21を順次稼働させても良い。例えば管理サーバ1は、予測されている進路上にあるレーダシステム21のうち、追跡対象から所定距離以内となるレーダシステム21を順に稼働させても良い。
【0087】
上記の制御態様によれば、飛行体を捕捉中ではなく、かつ、登録機3aが接近中でもないレーダシステム21は休止される。つまり、飛行体の追跡に寄与しないレーダシステム21は休止されるため、節電効果が期待できる。
【0088】
なお、上記の制御例は、各監視局2での検出結果データに基づいて、飛行体が存在しない区域/今後所定時間の間は飛行体が通過する恐れがない区域を特定し、該当区域に対応するレーダシステム21を休止させる構成に相当する。
【0089】
<制御例(3)>
管理サーバ1は、事前に登録されている飛行計画に基づいて各レーダシステム21の動作態様を決定しても良い。本開示では、飛行計画に基づくレーダシステム21の制御を計画対応制御と称する。例えば計画対応制御は図11に示すようにステップS31~S32を含む。
【0090】
ステップS31は、管理サーバ1が第1通信装置12を介して登録機3aの飛行計画を受信するステップである。ステップS32は、管理サーバ1が飛行計画に示される経路沿いのレーダシステム21を稼働候補として抽出するステップである。なお、経路沿いのレーダシステム21とは、経路から所定距離(例えば5km)以内に配置されているレーダシステム21を指す。
【0091】
ステップS33は、管理サーバ1が稼働候補に設定されているレーダシステム21のうち、実際に登録機3aから所定距離以内に存在するレーダシステム21を稼働させるステップである。ステップS34は、ステップS33で稼働させたレーダシステム21のうち、既に登録機3aが検知エリアAdの外側に移動しているレーダシステム21を休止させるステップである。
【0092】
なお、ステップS33に関し、他の制御例の適用によって、一部のレーダシステム21は動作を継続させても良い。例えば他の登録機3aから所定距離以内に存在するレーダシステム21や、離陸基地監視レーダなどは動作を継続させても良い。
【0093】
上記の制御態様によっても、動作させる必要性がないレーダシステム21は休止されるため、節電効果が期待できる。なお、上記の制御例は、飛行体DB15に保存されている飛行計画データに基づいて、飛行体が存在しない区域/今後所定時間の間は飛行体が通過する恐れがない区域を特定し、該当区域に対応するレーダシステム21を休止させる構成に相当する。
【0094】
<制御例(4)>
レーダシステム21による物体検出能力は、霧や降雨、降雪といった天候の影響を受けうる。例えば図12に示すように、降雨量が多いほど、また探査波の周波数が高いほど、探査波は減衰されやすく、それに伴い検出距離は縮退しうる。つまり、気象状態によっては所望の検知エリアAd、ひいては監視エリアZmを形成できなくなってしまう恐れがある。
【0095】
当該課題に対する1つの想定構成としては、降雨時でも所望の大きさの検知エリアAdが形成されるよう、予め基本レベルを大きめに設定しておく構成も考えられる。しかしながら、当該構成では、晴天時には余分に電力を消費してしまうこととなる。
【0096】
そのような事情から、管理サーバ1は、気象状態に応じて各レーダシステム21の送信電力を動的に調整する電力制御処理を実施しても良い。例えば電力制御処理は、図13に示すようにステップS41~S43を含む。以下の電力制御処理は、監視局2ごと、換言すればレーダシステム21ごとに実施される。
【0097】
ステップS41は、処理対象とする監視局2が設置されている地点での降雨量を取得するステップである。ステップS42は、降雨量に応じた必要な送信電力を算出するステップである。例えば晴天時を想定した基本レベルに対し、降雨量に応じた減衰量を加算した値を、実際の送信電力として算出する。
【0098】
ステップS43は、ステップS42で算出した電力値を監視局2に通知するステップである。当該通知に基づき、レーダ制御部23は、探査波の送信電力を調整しうる。当該制御例によれば、各レーダシステム21は気象状態に応じた必要十分な電力で探査波を送信するため、適正な検知エリアAdを維持しつつ、電力消費を抑制可能となる。
【0099】
なお、図12の横軸は探査波の周波数を、縦軸は10km当りでの降雨減衰量をそれぞれ示している。また、図12中の1点鎖線は降雨量が5mm/hである場合の周波数ごとの降雨減衰量を、2点鎖線は降雨量が15mm/hである場合の周波数ごとの降雨減衰量を、実線は降雨量が25mm/hである場合の周波数ごとの降雨減衰量をそれぞれ示している。
【0100】
<制御例(5)>
管理サーバ1は、レーダシステム21での飛行体の検知結果に基づいて、当該レーダシステム21の送信電力を調整しても良い。例えば管理サーバ1は、図14に示すようにレーダシステム21から検出体までの距離を随時取得し(S51)、当該距離に基づいて送信電力を縮退させてもよい(S52)。送信電力は、検知エリアAd内に存在する飛行体のうち、最も遠方に位置する飛行体である最遠飛行体までの距離に応じて決定してもよい。送信電力は、最遠飛行体までの距離に所定の正の値である余裕度を加えた距離に対応する値に設定される。例えば管理サーバ1は、最遠飛行体までの距離が2kmであり、余裕度が500mに設定されている場合には、送信電力を2.5kmまでの物体を検知可能なレベルに設定する。距離ごとの送信電力値は、テーブルやマップ、関数、プログラムなどの形式でストレージ113に保存されていても良い。
【0101】
上記構成においては、管理サーバ1は、飛行体とレーダシステム21との位置関係に基づいて、送信電力が飛行体を追跡する上で必要十分な値に動的に設定する。これに伴い、検知エリアAdは、図15に示すように飛行体とレーダシステム21との距離に応じて基本エリアAaから抑制エリアAbへと縮退される。基本エリアAaは本来の検知エリアAdに相当する。このような構成によれば、より一層の節電効果が得られうる。なお、図15においてドットパターンのハッチングを施している領域が、送信電力に応じた検知範囲を示している。
【0102】
また、上記の制御例から派生する他の制御例を図16に示す。以降における第1レーダシステム21αとは任意の1つのレーダシステム21を指し、第2レーダシステム21βとは第1レーダシステム21αに隣接する他のレーダシステム21を指す。隣接しているレーダシステム21とは基本エリアAaが重複する関係にあるレーダシステム21を指す。1つのレーダシステム21に対して、隣接する他のレーダシステム21すなわち第2レーダシステム21βは複数存在しうる。以降における第1エリアAd1とは第1レーダシステム21αの検知エリアAdを指し、第2エリアAd2とは第2レーダシステム21βの検知エリアAdを指す。
【0103】
管理サーバ1は、図16に示すように、第1レーダシステム21αから検出結果データを取得すると(S61)、第1エリアAd1を存在空域/不在空域に区分する(S62)。存在空域とは飛行体が検出されている空域であり、不在空域とは飛行体が検出されていない空域である。例えば存在空域/不在空域は高度で区分されうる。管理サーバ1は、飛行体が検出されている高度に、所定の余裕度(例えば500m)を加えた値を存在高度として算出し、存在高度以下の空域を存在空域、存在高度よりも上側を不在空域とみなす。
【0104】
そして、管理サーバ1はステップS63として、第1レーダシステム21αにおける探査波の送信電力を、存在空域をカバーするために必要十分な電力に設定する。管理サーバ1は、第1レーダシステム21αの送信電力設定を、不在空域までは探索しないレベルに設定する。不在空域を探索対象外とする電力制御は、仰角ごと/ミリ波レーダ211ごとの送信電力制御により実現されうる。例えば管理サーバ1は、レーダシステム21の仰角が所定値以下である場合には基本レベルを適用する一方、仰角が所定値以上である場合には仰角が大きいほど送信電力を縮退させる。
【0105】
なお、管理サーバ1は、第1レーダシステム21αの不在空域内に飛行体が存在することが検知された場合には、縮退させていた送信電力を復帰させる。また、管理サーバ1は、第2レーダシステム21βにて、第1レーダシステム21αの不在空域内に向かって移動している飛行体が検出された場合にも、第1レーダシステム21αの仰角ごとの送信電力を基本レベルに復帰させてもよい。不在空域内に向かっている飛行体とは、具体的には、所定時間以内に不在空域に進入予定の飛行体であって、進路や移動速度、現在位置から特定されうる。
【0106】
このように不在空域/存在空域の設定は、現在の状態に加えて、所定時間以内における状況の予測結果を踏まえて実施されても良い。例えば不在空域は、現在飛行体が存在せず、かつ、所定時間以内に進入予定の飛行体も検出されていない領域、すなわち現在から所定時間の間は飛行体が不在となる空域とすることができる。
【0107】
図17は上記の制御例の流れを概念的に示したものである。管理サーバ1は、図17の(A)に示すように、第1エリアAd1において高度が所定値以上の上空には飛行体が存在しない場合、当該上空部分を第1レーダシステム21αにとっての不在空域と見なす。そして、(B)に示すように第1レーダシステム21αの仰角ごとの送信電力を調整し、不在空域に向かう探査波の送信電力を低減させる。図17においてもドットパターンのハッチングを施している領域が、送信電力に応じた有効検知エリアを示している。図17中の1点鎖線は、不在空域と存在空域の境界を示している。
【0108】
その後、管理サーバ1は、(C)に示すように、第2レーダシステム21βにて、所定時間以内に第1レーダシステム21αの不在空域に進入予定の飛行体3xが検知された場合には、第1レーダシステム21αの送信電力を基本レベルに戻す。もちろん、第1レーダシステム21αの不在空域に所定時間以内に進入予定の飛行体は、第1レーダシステム21αで検出されても良い。
【0109】
<制御例(6)>
管理サーバ1は、検知エリアAd内に飛行体が存在しないことが確認されているレーダシステム21に関してはスキャン周期を基本周期から抑制周期に変更しても良い。飛行体が存在しないことの確認は、実際の検出結果データに基づいて実施される。例えば第1エリアAd1全体が不在空域に該当する場合、管理サーバ1は、第1レーダシステム21αのスキャン周期を基本周期から抑制周期に変更しても良い。また、管理サーバ1は、第1レーダシステム21αを抑制周期で動作させている状態において、第2レーダシステム21βにて第1エリアAd1に進入予定の飛行体3xが検知された場合には、第1レーダシステム21αのスキャン周期を基本周期に戻してもよい。
【0110】
上記のように飛行体の飛行状態に応じてエリアスキャン間隔を疎にする構成によれば、探査波の送信頻度が減るため、システム全体としての消費電力を低減できる。
【0111】
<補足>
管理サーバ1は、登録機3aが飛行していない/飛行予定がない空域に対応するレーダシステム21は、未登録機3bや鳥4の飛行状態に関わらずに休止させてもよい。具体的には、第1レーダシステム21αにて未登録機3bや鳥4が検出されている場合であっても、第1エリアAd1内に、登録機3aが飛行していない/飛行予定がない場合には第1レーダシステム21αを休止させても良い。
【0112】
また、上述した種々の制御例(1)~(6)は適宜組み合わせて実施することができる。例えば管理サーバ1は、制御例(1)~(6)がすべて組み合わさった態様で動作するように構成されていても良い。
【0113】
さらに、上記の制御例(1)~(3)では、飛行体が通っていない/通りそうにない箇所のレーダシステム21を休止させる態様について述べたが、これに限らない。制御例(1)~(3)における「レーダシステム21を休止させる」との表現に類する記載は、「基本態様から節電態様に切り替える」と置き換えて実施することができる。つまりステップS16、S24、S34などの処理内容は、レーダシステム21の動作態様を節電態様に切り替えることであってもよい。
【0114】
例えば管理サーバ1は、登録機3aから所定距離以上離れた位置にあるレーダシステム21の探査波送信電力を基本電力から抑制レベルに設定するように、制御例(1)を変更して実施することができる。また、管理サーバ1は、登録機3aから稼働距離以上離れた位置にあるレーダシステム21でのスキャン周期を抑制周期に設定するように、制御例(1)を変更して実施することができる。
【0115】
他の制御例においても同様に、特定条件を充足するレーダシステム21の動作態様を節電態様に切り替える制御内容に変更可能である。ここでの特定条件とは、通知/検出されている飛行体の現在位置から所定距離以上離れていることや、所定時間以内に通過見込みがないこと、飛行計画に示される経路から所定距離以上離れていることなどが挙げられる。
【0116】
節電態様とは、探査波を抑制レベルで送信するモードや、抑制周期でエリアスキャン処理を実施するモードなどを指す。基本態様/節電態様は、基本モード/節電モードと言い換えることができる。なお、節電態様には、探査波の送信を完全に停止させた、休止状態を含めることができる。
【0117】
<変形例(1)>
以上では、中央処理部11が各監視局2/レーダシステム21の動作を集中制御する態様について述べたが、これに限らない。各監視局2が自律的にレーダシステム21を制御しても良い。中央処理部11と各レーダ制御部23の役割分担/機能配置は適宜変更可能であって、中央処理部11の機能の一部は、各レーダ制御部23が備えていても良い。飛行体情報取得部F1や気象情報取得部F2、進路予測部F3、支援部F4、動作制御部F5等の構成は各レーダ制御部23も備えうる。
【0118】
例えば図18に示すように第1レーダ制御部23αは、第2レーダ制御部23βから第2レーダシステム21βでの検出結果データを隣接エリアデータとして取得する。そして、第1レーダ制御部23αは、隣接エリアデータに基づき、現在から所定時間以内に第1エリアAd1内に進入見込みの飛行体が存在するか否かを判定してもよい。第1レーダ制御部23αは、第1レーダシステム21αにて飛行体が検出されていない場合であっても、第1エリアAd1内に進入見込みの飛行体が検出されている場合には、第1レーダシステム21αを基本態様で動作させる。一方、第1レーダ制御部23αは、第1レーダシステム21αにて飛行体が検出されておらず、かつ、第1エリアAd1内に進入見込みの飛行体が検出されていない場合、第1レーダシステム21αの動作態様を節電態様に切り替える。
【0119】
このように各レーダ制御部23が、隣接する他のレーダシステム21での検出結果を用いて、自身が制御対象とするレーダシステム21の動作態様を変更しても良い。なお、第1レーダ制御部23αとは、第1レーダシステム21αに接続するレーダ制御部23である。第2レーダ制御部23βとは、第2レーダシステム21βに接続するレーダ制御部23である。図18に示す第1監視局2αとは、第1レーダシステム21αを具備する監視局2であり、第2監視局2βとは第2レーダシステム21βを具備する監視局2である。
【0120】
監視局2同士/レーダ制御部23間のデータ通信、例えば検出結果データの共有は、直接的に実施されても良いし、管理サーバ1経由で実施されても良い。レーダ制御部23が個別制御部に、第1レーダシステム21αが対象センサに、第2レーダシステム21βが隣接センサに、それぞれ相当する。また、管理サーバ1又はレーダ制御部23がセンサ制御装置に相当する。
【0121】
<変形例(2)>
登録機3aは、監視局2とも無線通信可能に構成されていてもよい。各レーダ制御部23は、制御例(1)と同様に、登録機3aから受信する現況データに基づいて、自局のレーダシステム21の動作態様を制御しても良い。
【0122】
<変形例(3)>
レーダシステム21を実現するセンサは、ミリ波レーダに限らず、ソナーやLiDAR、ToF(Time of Flight)カメラなどであってもよい。換言すれば、探査波は、超音波やレーザ光、赤外線などであってもよい。また、レーダシステム21は、検出原理が異なる複数種類のセンサを用いて実現されていても良い。例えばレーダシステム21は、近距離用のセンサと、遠距離用のセンサとが組み合わさって実現されていても良い。
【0123】
各レーダシステム21が形成する検知エリアAdは必ずしも半球状でなくとも良い。特許文献1に開示されるような、下向きの円錐状であってもよいし、四角錐状などであっても良い。
【0124】
<付言(1)>
本開示には以下、技術的思想も含まれる。また、以下の空域監視システムに対応するセンサ制御装置や、方法、プログラムも本開示に含まれる。
【0125】
[技術的思想1]
飛行体を検出するためのセンサであって、所定の監視エリアを形成するよう、地上に分散配置されている複数の飛行体センサ(21)と、
所定の外部装置からの入力データ、又は、複数の前記飛行体センサの検出結果に基づいて、前記監視エリア内に存在する前記飛行体の情報を取得する飛行体情報取得部(F1)と、
前記飛行体情報取得部が取得した前記飛行体の情報に基づき、複数の前記飛行体センサのそれぞれの動作を制御する制御部(F5)と、を備える空域監視システム。
【0126】
[技術的思想2]
技術的思想1に記載の空域監視システムであって、
前記監視エリア内を飛行予定の前記飛行体として登録されている登録機と無線通信を実施するための無線通信部(13)を備え、
前記飛行体情報取得部は、前記無線通信部を介して前記登録機の位置を取得し、
前記制御部は、前記登録機の位置をもとに、前記飛行体センサごとの動作態様を調整する空域監視システム。
【0127】
[技術的思想3]
技術的思想2に記載の空域監視システムであって、
前記制御部は、前記登録機から所定距離以内に存在する前記飛行体センサは所定の基本態様で動作させる一方、前記登録機からの距離が前記所定距離よりも大きくなる位置に存在する前記飛行体センサは、前記基本態様よりも消費電力が少ない節電態様で動作させる空域監視システム。
【0128】
[技術的思想4]
技術的思想1から3の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
前記監視エリア内を飛行予定の前記飛行体の飛行計画が保存される飛行計画記憶部(15)を備え、
前記飛行体情報取得部は、前記外部装置から入力された前記飛行計画を前記飛行計画記憶部に保存し、
前記制御部は、前記飛行計画記憶部に保存されている前記飛行計画をもとに、前記飛行体センサごとの動作態様を調整する空域監視システム。
【0129】
[技術的思想5]
技術的思想4に記載の空域監視システムであって、
前記飛行計画は、飛行予定の経路に関するデータを含み、
前記制御部は、前記経路から所定距離以内に存在する前記飛行体センサは所定の基本態様で動作させる一方、前記経路からの距離が前記所定距離よりも大きくなる位置に存在する前記飛行体センサは前記基本態様よりも消費電力が少ない節電態様で動作させる空域監視システム。
【0130】
[技術的思想6]
技術的思想1から5の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
前記飛行体情報取得部は、複数の前記飛行体センサのそれぞれから、検出されている前記飛行体の位置及び移動方向を含む検出結果データを取得し、
前記制御部は、検出されている前記飛行体の位置及び移動方向に基づいて、前記飛行体センサごとの動作態様を調整する空域監視システム。
【0131】
[技術的思想7]
技術的思想1から6の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
前記飛行体情報取得部が取得している情報に基づいて、前記監視エリア内に存在する前記飛行体の進行方向を予測する進路予測部(F3)を備え、
前記制御部は、前記進路予測部で予測されている前記進行方向に基づいて、前記飛行体センサごとの動作態様を調整する空域監視システム。
【0132】
[技術的思想8]
技術的思想7に記載の空域監視システムであって、
前記飛行体情報取得部は、前記飛行体の現在位置と目的地情報を取得し、
前記進路予測部は、地図データと現在位置と前記目的地情報をもとに前記進行方向を予測する空域監視システム。
【0133】
[技術的思想9]
技術的思想1から8の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
前記監視エリア内の気象情報を取得する気象情報取得部(F2)を備え、
前記制御部は、前記気象情報をもとに前記飛行体センサごとの動作態様を調整するように構成されている空域監視システム。
【0134】
[技術的思想10]
技術的思想1から9の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
前記制御部は、各前記飛行体センサごとの動作態様を、当該飛行体センサに隣接する他の前記飛行体センサにおける前記飛行体の検出結果に基づき決定する空域監視システム。
【0135】
[技術的思想11]
技術的思想1から10の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
前記制御部は、前記飛行体が存在しない区域の前記飛行体センサの動作を停止させる空域監視システム。
【0136】
[技術的思想12]
技術的思想1から11の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
前記制御部は、前記飛行体が存在しない区域の前記飛行体センサの送信電力を基本値よりも小さい値に設定する空域監視システム。
【0137】
[技術的思想13]
技術的思想1から12の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
前記制御部は、前記飛行体が存在しない区域の前記飛行体センサのスキャン周期を基本値よりも大きい値に設定する空域監視システム。
【0138】
[技術的思想14]
技術的思想1から13の何れか1項に記載の空域監視システムであって、
複数の前記飛行体センサのそれぞれには、前記飛行体センサの作動を制御する個別制御部(23)が接続されており、
前記個別制御部は、
自身が制御対象とする前記飛行体センサである対象センサ(21α)での前記飛行体の検出状況を示すデータを取得することと、
前記対象センサに隣接する他の前記飛行体センサである隣接センサ(21β)での前記飛行体の検出状況を示す隣接エリアデータを、当該隣接センサに対応する前記個別制御部又は前記制御部から受信することと、
前記隣接エリアデータに基づき、現在から所定時間以内に前記対象センサの検知エリア内に進入見込みの前記飛行体が存在するか否かを判定することと、
前記対象センサにて前記飛行体が検出されていない場合であっても、現在から所定時間以内に前記対象センサの検知エリア内に進入見込みの前記飛行体が存在すると判定されている場合には前記飛行体センサの動作態様を所定の基本態様に設定する一方、
前記飛行体センサにて前記飛行体が現在検出されておらず、かつ、現在から所定時間以内に前記対象センサの検知エリア内に進入見込みの前記飛行体が存在するとは判定されている場合には、前記対象センサの動作態様を、前記基本態様よりも消費電力が小さい所定の節電態様に設定する空域監視システム。
【0139】
<付言(2)>
本開示に示す種々のフローチャートは何れも一例であって、フローチャートを構成するステップの数や、処理の実行順は適宜変更可能である。また、種々のフローチャートは、他のフローチャートと適宜組み合わせて/並列的に実施可能である。
【0140】
本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。プロセッサ(演算コア)としては、CPUや、MPU、GPU、DFP(Data Flow Processor)などを採用可能である。本開示の構成が備える機能の一部は、SoC(System-on-Chip)、IC(Integrated Circuit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を用いて実現されていてもよい。
【0141】
また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に記憶されていればよい。プログラムの記録媒体としては、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等を採用可能である。コンピュータを中央処理部11/レーダ制御部23として機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体等の形態も本開示の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0142】
1 管理サーバ、2 監視局、3a 登録機、5a 入力用端末(外部装置)、5b 気象情報配信サーバ、Ad 検知エリア、Zm 監視エリア、21 レーダシステム(飛行体センサ)、21α 第1レーダシステム(対象センサ)、21β 第2レーダシステム(隣接センサ)、23 レーダ制御部(個別制御部)、11 中央処理部、12 第1通信装置、13 第2通信装置(無線通信部)、14 地図DB、15 飛行体DB(飛行計画記憶部)、F1 飛行体情報取得部、F2 気象情報取得部、F3 進路予測部、F4 支援部、F5 動作制御部(制御部)、F51 選択部、F52 電力調整部、F53 周期調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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