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特開2023-183834車両、電力供給装置及び電力供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183834
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両、電力供給装置及び電力供給方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 50/53 20190101AFI20231221BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20231221BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20231221BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20231221BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20231221BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20231221BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231221BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20231221BHJP
   B60L 58/12 20190101ALN20231221BHJP
【FI】
B60L50/53
B60L53/12
B60L58/10
B60L50/60
B60M7/00 X
B60L5/00 B
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/12
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097601
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】木村 和峰
(72)【発明者】
【氏名】橋本 眞
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】谷 恵亮
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】大林 和良
(72)【発明者】
【氏名】竹村 優一
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC04
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC04
5H125AC12
5H125EE01
5H125EE27
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】道路に設けられた送電コイルから非接触で給電されるように構成された車両において、モータへの電力供給源を適切に選択する。
【解決手段】車両1は、電力を蓄えるバッテリ3と、道路に設けられた送電コイル44から電力を受電する受電コイル22を有する受電装置2と、車両の駆動力を出力するモータ4と、バッテリ及び受電装置の少なくとも一方からモータに電力を供給するように構成された電力供給回路5と、モータへの電力供給を制御する制御装置10とを備える。制御装置は、送電コイルが設けられた給電エリアを車両が走行しているか否かに応じて、モータへの電力供給源をバッテリ及び受電装置から選択する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
電力を蓄えるバッテリと、
道路に設けられた送電コイルから電力を受電する受電コイルを有する受電装置と、
当該車両の駆動力を出力するモータと、
前記バッテリ及び前記受電装置の少なくとも一方から前記モータに電力を供給するように構成された電力供給回路と、
前記モータへの電力供給を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記送電コイルが設けられた給電エリアを当該車両が走行しているか否かに応じて、前記モータへの電力供給源を前記バッテリ及び前記受電装置から選択する、車両。
【請求項2】
前記制御装置は、当該車両が前記給電エリアを走行しているときには、前記電力供給源として前記受電装置のみを選択する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、当該車両が前記給電エリアを走行しているときに、前記モータの消費電力が所定値以下である場合には前記電力供給源として前記受電装置のみを選択し、前記消費電力が前記所定値よりも大きい場合には前記電力供給源として前記バッテリ及び前記受電装置を選択する、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、当該車両が前記給電エリアを走行しているときであっても、当該車両への給電に不具合が生じている場合には、前記電力供給源として前記バッテリのみを選択する、請求項2又は3に記載の車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記電力供給源として前記受電装置のみを選択しているときに当該車両への給電量が前記モータの消費電力よりも多い場合には、前記受電装置から前記モータ及び前記バッテリに電力を供給する、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
車両の駆動力を出力するモータへの電力供給方法であって、
前記車両は、
電力を蓄えるバッテリと、
道路に設けられた送電コイルから電力を受電する受電コイルを有する受電装置と、
前記バッテリ及び前記受電装置の少なくとも一方から前記モータに電力を供給するように構成された電力供給回路と
を備え、
当該電力供給方法は、前記送電コイルが設けられた給電エリアを前記車両が走行しているか否かに応じて、前記モータへの電力供給源を前記バッテリ及び前記受電装置から選択することを含む、電力供給方法。
【請求項7】
車両に搭載される電力供給装置であって、
前記車両は、
電力を蓄えるバッテリと、
道路に設けられた送電コイルから電力を受電する受電コイルを有する受電装置と、
該車両の駆動力を出力するモータと、
前記バッテリ及び前記受電装置の少なくとも一方から前記モータに電力を供給するように構成された電力供給回路と
を備え、
当該電力供給装置は、前記送電コイルが設けられた給電エリアを前記車両が走行しているか否かに応じて、前記モータへの電力供給源を前記バッテリ及び前記受電装置から選択する、電力供給装置。
【請求項8】
当該車両が前記給電エリアを走行しているときには、前記電力供給源として前記受電装置のみを選択する、請求項7に記載の電力供給装置。
【請求項9】
当該車両が前記給電エリアを走行しているときに、前記モータの消費電力が所定値以下である場合には前記電力供給源として前記受電装置のみを選択し、前記消費電力が前記所定値よりも大きい場合には前記電力供給源として前記バッテリ及び前記受電装置を選択する、請求項7に記載の電力供給装置。
【請求項10】
当該車両が前記給電エリアを走行しているときであっても、当該車両への給電に不具合が生じている場合には、前記電力供給源として前記バッテリのみを選択する、請求項8又は9に記載の電力供給装置。
【請求項11】
前記電力供給源として前記受電装置のみを選択しているときに当該車両への給電量が前記モータの消費電力よりも多い場合には、前記受電装置から前記モータ及び前記バッテリに電力を供給する、請求項7から9のいずれか1項に記載の電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、電力供給装置及び電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁界共鳴方式のような伝送方式を用いて非接触で電力を伝送する技術が知られている。例えば、特許文献1には、路面に設けられた送電コイルから車両に設けられた受電コイルに電力を送電し、この電力を用いて車両の走行中に車両のバッテリを充電することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-129432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリの許容充電電力が小さいようなときには、車両に伝送された電力をバッテリに供給することができない。そこで、車両の受電装置が受電した電力をバッテリを介さずに車両の駆動用モータに直接供給することが考えられる。しかしながら、モータへの電力供給源としてバッテリ及び受電装置の二つの選択肢が存在する場合には、車両の走行環境等に応じてこれらを適切に使い分ける必要がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑みて、本発明の目的は、道路に設けられた送電コイルから非接触で給電されるように構成された車両において、モータへの電力供給源を適切に選択することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)車両であって、電力を蓄えるバッテリと、道路に設けられた送電コイルから電力を受電する受電コイルを有する受電装置と、当該車両の駆動力を出力するモータと、前記バッテリ及び前記受電装置の少なくとも一方から前記モータに電力を供給するように構成された電力供給回路と、前記モータへの電力供給を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記送電コイルが設けられた給電エリアを当該車両が走行しているか否かに応じて、前記モータへの電力供給源を前記バッテリ及び前記受電装置から選択する、車両。
【0008】
(2)前記制御装置は、当該車両が前記給電エリアを走行しているときには、前記電力供給源として前記受電装置のみを選択する、上記(1)に記載の車両。
【0009】
(3)前記制御装置は、当該車両が前記給電エリアを走行しているときに、前記モータの消費電力が所定値以下である場合には前記電力供給源として前記受電装置のみを選択し、前記消費電力が前記所定値よりも大きい場合には前記電力供給源として前記バッテリ及び前記受電装置を選択する、上記(1)に記載の車両。
【0010】
(4)前記制御装置は、当該車両が前記給電エリアを走行しているときであっても、当該車両への給電に不具合が生じている場合には、前記電力供給源として前記バッテリのみを選択する、上記(2)又は(3)に記載の車両。
【0011】
(5)前記制御装置は、前記電力供給源として前記受電装置のみを選択しているときに当該車両への給電量が前記モータの消費電力よりも多い場合には、前記受電装置から前記モータ及び前記バッテリに電力を供給する、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の車両。
【0012】
(6)車両の駆動力を出力するモータへの電力供給方法であって、前記車両は、電力を蓄えるバッテリと、道路に設けられた送電コイルから電力を受電する受電コイルを有する受電装置と、前記バッテリ及び前記受電装置の少なくとも一方から前記モータに電力を供給するように構成された電力供給回路とを備え、当該電力供給方法は、前記送電コイルが設けられた給電エリアを前記車両が走行しているか否かに応じて、前記モータへの電力供給源を前記バッテリ及び前記受電装置から選択することを含む、電力供給方法。
【0013】
(7)車両に搭載される電力供給装置であって、前記車両は、電力を蓄えるバッテリと、道路に設けられた送電コイルから電力を受電する受電コイルを有する受電装置と、該車両の駆動力を出力するモータと、前記バッテリ及び前記受電装置の少なくとも一方から前記モータに電力を供給するように構成された電力供給回路とを備え、当該電力供給装置は、前記送電コイルが設けられた給電エリアを前記車両が走行しているか否かに応じて、前記モータへの電力供給源を前記バッテリ及び前記受電装置から選択する、電力供給装置。
【0014】
(8)当該車両が前記給電エリアを走行しているときには、前記電力供給源として前記受電装置のみを選択する、上記(7)に記載の電力供給装置。
【0015】
(9)当該車両が前記給電エリアを走行しているときに、前記モータの消費電力が所定値以下である場合には前記電力供給源として前記受電装置のみを選択し、前記消費電力が前記所定値よりも大きい場合には前記電力供給源として前記バッテリ及び前記受電装置を選択する、上記(7)に記載の電力供給装置。
【0016】
(10)当該車両が前記給電エリアを走行しているときであっても、当該車両への給電に不具合が生じている場合には、前記電力供給源として前記バッテリのみを選択する、上記(8)又は(9)に記載の電力供給装置。
【0017】
(11)前記電力供給源として前記受電装置のみを選択しているときに当該車両への給電量が前記モータの消費電力よりも多い場合には、前記受電装置から前記モータ及び前記バッテリに電力を供給する、上記(7)から(10)のいずれか1つに記載の電力供給装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、道路に設けられた送電コイルから非接触で給電されるように構成された車両において、モータへの電力供給源を適切に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、非接触給電システムの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、車両における電力の供給経路を示す回路図である。
図3図3は、車両のECU及びECUに接続された機器の概略的な構成図である。
図4図4は、給電装置の送電コイルが設置された給電エリアの一例を示す図である。
図5図5は、第一実施形態においてECUによって設定されるスイッチング素子の複数の状態を示す図である。
図6図6は、第一実施形態における電力供給処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図7図7は、第二実施形態においてECUによって設定されるスイッチング素子の複数の状態を示す図である。
図8図8は、第二実施形態における電力供給処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図9図9は、第三実施形態においてECUによって設定されるスイッチング素子の複数の状態を示す図である。
図10図10は、第三実施形態における電力供給処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0021】
最初に、給電装置を用いて車両に非接触で電力を供給するための構成について説明する。図1は、非接触給電システム100の構成を概略的に示す図である。非接触給電システム100は、給電装置30及び車両1を備え、給電装置30と車両1との間の非接触給電を行う。特に、本実施形態では、非接触給電システム100は、車両1が走行しているときに、磁界共振結合(磁界共鳴)によって給電装置30から車両1への非接触給電を行う。すなわち、非接触給電システム100は磁界を媒体として給電装置30から車両1へ電力を伝送する。なお、非接触給電は、非接触電力伝送、ワイヤレス電力伝送又はワイヤレス給電とも称される。
【0022】
給電装置30は車両1への非接触給電を行うように構成される。具体的には、図1に示されるように、給電装置30は、電源31、コントローラ32、通信装置33及び送電装置40を備える。本実施形態では、給電装置30は、車両1が走行する道路(車線)に設けられ、例えば地中(路面の下)に埋め込まれる。なお、給電装置30の少なくとも一部(例えば、電源31、コントローラ32及び通信装置33)は路面の上に配置されてもよい。
【0023】
電源31は、送電装置40の電力源であり、送電装置40に電力を供給する。電源31は、例えば、単相交流電力を供給する商用交流電源である。なお、電源31は、三相交流電力を供給する交流電源等であってもよい。
【0024】
送電装置40は、車両1に電力を送電するための交流磁界を発生させるように構成される。本実施形態では、送電装置40は、送電側整流回路41、インバータ42及び送電側共振回路43を備える。送電装置40では、送電側整流回路41及びインバータ42を介して送電側共振回路43に適切な交流電力(高周波電力)が供給される。
【0025】
送電側整流回路41は電源31及びインバータ42に電気的に接続される。送電側整流回路41は、電源31から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、直流電力をインバータ42に供給する。送電側整流回路41は例えばAC/DCコンバータである。
【0026】
インバータ42は送電側整流回路41及び送電側共振回路43に電気的に接続される。インバータ42は、送電側整流回路41から供給された直流電力を、電源31の交流電力よりも高い周波数の交流電力(高周波電力)に変換し、高周波電力を送電側共振回路43に供給する。
【0027】
送電側共振回路43は、送電コイル44及び送電側コンデンサ45から構成される共振器を有する。送電コイル44及び送電側コンデンサ45の各種パラメータ(送電コイル44の外径及び内径、送電コイル44の巻数、送電側コンデンサ45の静電容量等)は、送電側共振回路43の共振周波数が所定の設定値になるように定められる。所定の設定値は、例えば10kHz~100GHzであり、好ましくは、車両の非接触給電用の周波数帯域としてSAE TIR J2954規格によって定められた85kHzである。
【0028】
送電側共振回路43は、送電コイル44の中心が車線の中央に位置するように、車両1が走行する車線の中央に配置される。インバータ42から供給された高周波電力が送電側共振回路43に印加されると、送電側共振回路43は、車両1に電力を送電するための交流磁界を発生させる。なお、電源31は燃料電池又は太陽電池のような直流電源であってもよく、この場合に送電側整流回路41が省略されてもよい。また、インバータ42と送電側共振回路43との間に、インバータ42から発生する高調波ノイズを抑制するフィルタ回路が設けられてもよい。
【0029】
コントローラ32は、例えば汎用コンピュータであり、給電装置30の各種制御を行う。例えば、コントローラ32は、送電装置40のインバータ42に電気的に接続され、送電装置40による送電を制御すべくインバータ42を制御する。
【0030】
通信装置33は、給電装置30と給電装置30の外部との通信を可能とする機器である。例えば、通信装置33は、近距離無線通信を行うための近距離無線通信モジュール(例えば、DSRC(Dedicated Short Range Communication)アンテナ、Bluetooth(登録商標)モジュール等)と、広域無線通信を行うための広域無線通信モジュールとを含む。通信装置33はコントローラ32に電気的に接続され、コントローラ32は通信装置33を用いて車両1と通信する。
【0031】
一方、車両1は、受電装置2を備え、給電装置30によって非接触で給電されるように構成される。本実施形態では、受電装置2は、受電側共振回路21、受電側整流回路24及びDC/DCコンバータ25を有する。
【0032】
受電側共振回路21は、路面との距離が小さくなるように車両1の底部に配置される。本実施形態では、受電側共振回路21は、車幅方向において車両1の中央に配置され、車両1の前後方向において前輪と後輪との間に配置される。
【0033】
受電側共振回路21は、送電側共振回路43と同様の構成を有し、受電コイル22及び受電側コンデンサ23から構成される共振器を有する。受電コイル22及び受電側コンデンサ23の各種パラメータ(受電コイル22の外径及び内径、受電コイル22の巻数、受電側コンデンサ23の静電容量等)は、受電側共振回路21の共振周波数が送電側共振回路43の共振周波数と一致するように定められる。なお、受電側共振回路21の共振周波数と送電側共振回路43の共振周波数とのずれ量が小さければ、例えば受電側共振回路21の共振周波数が送電側共振回路43の共振周波数の±20%の範囲内であれば、受電側共振回路21の共振周波数は送電側共振回路43の共振周波数と必ずしも一致している必要はない。
【0034】
図1に示されるように受電側共振回路21の受電コイル22が送電側共振回路43の送電コイル44と対向しているときに、送電コイル44から交流磁界が放射されると、交流磁界の振動が、送電側共振回路43と同一の共振周波数で共鳴する受電側共振回路21に伝達する。この結果、電磁誘導によって受電側共振回路21の受電コイル22に誘導電流が流れ、誘導電流によって電力が発生する。すなわち、受電コイル22は、道路に設けられた送電コイル44から電力を受電する。
【0035】
受電側整流回路24は受電側共振回路21及びDC/DCコンバータ25に電気的に接続される。受電側整流回路24は、受電側共振回路21から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、直流電力をDC/DCコンバータ25に供給する。受電側整流回路24は例えばAC/DCコンバータである。なお、受電側共振回路21と受電側整流回路24との間に、交流電力のノイズを除去するフィルタ回路が設けられてもよい。
【0036】
DC/DCコンバータ25は受電側整流回路24に電気的に接続される。DC/DCコンバータ25は、受電側整流回路24から出力される直流電力の電圧値を変換する。DC/DCコンバータ25は、降圧DC/DCコンバータ(バックコンバータ)、昇圧DC/DCコンバータ(ブーストコンバータ)又は昇降圧DC/DCコンバータ(バックブーストコンバータ)である。
【0037】
図2は、車両1における電力の供給経路を示す回路図である。図2に示されるように、車両1は、受電装置2に加えて、バッテリ3、モータ4及び電力供給回路5を備える。
【0038】
バッテリ3は電力を蓄え、バッテリ3に蓄えられた電力は車両1において消費される。バッテリ3は、充電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等である。受電装置2からバッテリ3に電力が供給されると、バッテリ3が充電され、バッテリ3の充電率(SOC:State Of Charge)が回復する。また、バッテリ3は、車両1に設けられた充電ポートを介して給電装置30以外の外部電源によっても充電可能である。
【0039】
モータ4は、電気モータ(例えば交流同期モータ)であり、電力を動力源として駆動される。モータ4の出力は減速機及び車軸を介して車輪に伝達される。すなわち、モータ4は車両1の駆動力を出力する。本実施形態では、モータ4は、電動機及び発電機として機能するモータジェネレータである。したがって、車両1の減速時には車両1の回転によってモータ4が駆動され、モータ4は車両1の減速エネルギーを用いて回生電力を発電する。また、本実施形態では、車両1は、内燃機関を搭載していない電気自動車(BEV)であり、モータ4のみが車両1の駆動源として機能する。
【0040】
電力供給回路5は、バッテリ3及び受電装置2の少なくとも一方からモータ4に電力を供給するように構成されている。本実施形態では、受電装置2の電圧はバッテリ3の電圧よりも高い。図2に示されるように、電力供給回路5は、インバータ51、スイッチング素子S1~S4、ダイオードD1~D4、コイルL1、L2、及びコンデンサC1~C3を有する。なお、電力供給回路5は、同様の機能を有していれば、図2とは異なる構成を有していてもよい。
【0041】
インバータ51はバッテリ3及び受電装置2とモータ4とに電気的に接続される。インバータ51にはバッテリ3及び受電装置2の少なくとも一方から電力が供給される。インバータ51は、インバータ51に供給された直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ4に供給する。したがって、バッテリ3及び受電装置2の少なくとも一方からインバータ51を介してモータ4に電力が供給される。
【0042】
電力供給回路5は、車両1における電力の供給経路(特に、モータ4への電力供給経路)を切り替えるための複数のスイッチング素子を有し、本実施形態では四つのスイッチング素子S1~S4を有する。スイッチング素子S1~S4は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ、バイポーラトランジスタ等として構成される。図2に示されるように、スイッチング素子S1~S4はインバータ51及びモータ4に対して直列に接続され、ダイオードD1~D4はそれぞれスイッチング素子S1~S4に逆並列に接続される。
【0043】
スイッチング素子S1とスイッチング素子S2との間にはコイルL2を介して受電装置2の正極端子が接続される。スイッチング素子S2とスイッチング素子S3との間にはコイルL1を介してバッテリ3の正極端子が接続される。スイッチング素子S3とスイッチング素子S4との間には受電装置2の負極端子が接続される。
【0044】
コンデンサC1はバッテリ3に対して並列に接続される。コンデンサC2は受電装置2に対して並列に接続される。コンデンサC3は、インバータ51に対して並列に接続され、平滑コンデンサとして機能する。
【0045】
また、車両1は車両1の制御装置として電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)を備える。図3は、車両1のECU10及びECU10に接続された機器の概略的な構成図である。ECU10は車両1の各種制御を実行する。ECU10は、車両1に搭載される電力供給装置の一例である。
【0046】
図3に示されるように、ECU10は、通信インターフェース11、メモリ12及びプロセッサ13を有する。通信インターフェース11、メモリ12及びプロセッサ13は信号線を介して互いに接続されている。
【0047】
通信インターフェース11は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワークにECU10を接続するためのインターフェース回路を有する。
【0048】
メモリ12は、例えば、揮発性の半導体メモリ(例えばRAM)及び不揮発性の半導体メモリ(例えばROM)を有する。メモリ12は、プロセッサ13において実行されるプログラム、プロセッサ13によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を記憶する。
【0049】
プロセッサ13は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有し、各種処理を実行する。なお、プロセッサ13は、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。
【0050】
図3に示されるように、上述したDC/DCコンバータ25、インバータ51及びスイッチング素子S1~S4はECU10に電気的に接続されている。ECU10は、DC/DCコンバータ25、インバータ51及びスイッチング素子S1~S4の各々を制御し、車両1における電力供給、特にモータ4への電力供給を制御する。
【0051】
また、車両1は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機14、地図データベース15、センサ16及び通信装置17を備え、これらはECU10に電気的に接続される。
【0052】
GNSS受信機14は、複数(例えば3つ以上)の測位衛星から得られる測位情報に基づいて、車両1の現在位置(例えば車両1の緯度及び経度)を検出する。具体的には、GNSS受信機14は、複数の測位衛星を捕捉し、測位衛星から発信された電波を受信する。そして、GNSS受信機14は、電波の発信時刻と受信時刻との差に基づいて測位衛星までの距離を算出し、測位衛星までの距離及び測位衛星の位置(軌道情報)に基づいて車両1の現在位置を検出する。GNSS受信機14の出力、すなわちGNSS受信機14によって検出された車両1の現在位置はECU10に送信される。
【0053】
地図データベース15は地図情報を記憶している。地図情報には、後述する給電エリアの位置情報等が含まれる。ECU10は地図データベース15から地図情報を取得する。なお、地図データベースが車両1の外部(例えばサーバ等)に設けられ、ECU10は車両1の外部から地図情報を取得してもよい。
【0054】
センサ16は車両1の状態量を検出する。例えば、センサ16は、バッテリ3の入出力電流を検出するバッテリ電流センサ等を含む。センサ16の出力、すなわちセンサ16によって検出された車両1の状態量はECU10に送信される。
【0055】
通信装置17は、車両1と車両1の外部との通信を可能とする機器である。例えば、通信装置17は、近距離無線通信を行うための近距離無線通信モジュール(例えば、DSRC(Dedicated Short Range Communication)車載器、Bluetooth(登録商標)モジュール等)と、広域無線通信を行うための広域無線通信モジュール(例えばデータ通信モジュール(DCM:Data communication module))とを含む。ECU10は通信装置17を用いて給電装置30と通信する。
【0056】
図4は、給電装置30の送電コイル44が設置された給電エリアの一例を示す図である。図4の例では、3つの送電コイル44が道路の同一車線上に車両1の進行方向に沿って離間して配置されている。複数の送電コイル44が連続的に設置された車線上の範囲が給電エリアに相当する。なお、一つの給電エリアに設置される送電コイル44の数は他の数(例えば一つ)であってもよい。
【0057】
例えば、ECU10は、車両1が給電エリアに接近したときに、通信装置17を用いて、車両1への給電を要求する給電要求信号を給電装置30に対して発信する。給電装置30のコントローラ32は、車両1から給電要求信号を受信すると、送電装置40によって送電用の交流磁界を発生させる。すなわち、コントローラ32は、車両1から給電要求信号を受信すると、給電装置30から車両1への非接触給電を開始する。
【0058】
非接触給電によって車両1に伝送された電力をバッテリ3に供給することによって、車両1の走行中にバッテリ3を充電することができる。しかしながら、バッテリ3の許容充電電力が小さいようなときには、車両1に伝送された電力をバッテリ3に供給することができない。そこで、受電装置2が受電した電力をバッテリ3を介さずにモータ4に直接供給することが考えられる。しかしながら、モータ4への電力供給源としてバッテリ3及び受電装置2の二つの選択肢が存在する場合には、車両1の走行環境等に応じてこれらを適切に使い分ける必要がある。
【0059】
そこで、本実施形態では、ECU10は、送電コイル44が設けられた給電エリアを車両1が走行しているか否かに応じて、モータ4への電力供給源をバッテリ3及び受電装置2から選択する。このことによって、道路に設けられた送電コイル44から非接触で給電されるように構成された車両1において、モータ4への電力供給源を適切に選択することができる。
【0060】
例えば、車両1における電力損失を低減するためには、バッテリ3を介すことなく受電装置2からモータ4に直接電力を供給することが望ましい。このため、本実施形態では、ECU10は、車両1が給電エリアを走行しているときにはモータ4への電力供給源として受電装置2のみを選択し、車両1が給電エリアを走行していないときにはモータ4への電力供給源としてバッテリ3のみを選択する。
【0061】
本実施形態では、ECU10はスイッチング素子S1~S4のオンオフを制御することによってモータ4への電力供給源をバッテリ3及び受電装置2から選択する。図5は、第一実施形態においてECU10によって設定されるスイッチング素子S1~S4の複数の状態を示す図である。
【0062】
本実施形態では、ECU10はスイッチング素子S1~S4の状態を第1状態と第2状態との間で切り替える。第1状態では、車両1への給電が行われているときにスイッチング素子S2及びS3がオフにされる。この結果、受電装置2からインバータ51及びモータ4へ電力が供給され、バッテリ3からインバータ51及びモータ4への電力供給が遮断される。すなわち、第1状態では、モータ4への電力供給源として受電装置2のみが用いられる。なお、第1状態において、スイッチング素子S1及びS4は任意の状態(オン又はオフ)に設定される。
【0063】
第2状態では、車両1への給電が行われていないときに、スイッチング素子S1、S2がオンにされ、スイッチング素子S3、S4がオフにされる。この結果、バッテリ3からインバータ51及びモータ4へ電力が供給され、受電装置2からインバータ51及びモータ4への電力供給が遮断される。すなわち、第2状態では、モータ4への電力供給源としてバッテリ3のみが用いられる。
【0064】
また、車両1が給電エリア上に位置していたとしても、車両1への給電が正常に行われない場合がある。このため、ECU10は、車両1が給電エリアを走行しているときであっても、車両1への給電に不具合が生じている場合には、モータ4への電力供給源としてバッテリ3のみを選択する。このことによって、給電の不具合によりモータ4への供給電力が不足することを回避することができる。
【0065】
以下、図6のフローチャートを参照して、上述した制御のフローについて説明する。図6は、第一実施形態における電力供給処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU10によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。
【0066】
最初に、ステップS101において、ECU10は、車両1が給電エリアを走行しているか否かを判定する。例えば、ECU10は、GNSS受信機14の出力に基づいて取得された車両1の現在位置と、地図データベース15の地図情報に記憶された給電エリアの位置情報とを照合することによってこの判定を行う。なお、ECU10は、車両1の受電装置2が電力を受電しているときに、車両1が給電エリアを走行していると判定してもよい。
【0067】
ステップS101において車両1が給電エリアを走行していると判定された場合、本制御ルーチンはステップS101に進む。ステップS102では、ECU10は、車両1への給電に不具合が生じているか否かを判定する。例えば、ECU10は、以下の異常条件の少なくとも一つが成立している場合に、車両1への給電に不具合が生じていると判定する。異常条件が成立している場合には、給電装置30から車両1への給電が中止される。
【0068】
一つ目の異常条件は、受電装置2に異常(例えば受電コイル22の切断等)が生じていることである。例えば、ECU10は、送電コイル44から交流磁界が放射されているにも拘わらず、受電側共振回路21において電力が生成されない場合には、受電装置2に異常が生じていると判定する。この場合、車両1から給電装置30に給電異常が通知され、給電装置30は車両1への給電を中止する。
【0069】
二つ目の異常条件は、受電コイル22と送電コイル44との間の車幅方向の位置ずれ(横ずれ)が生じていることである。例えば、車両1において、受電コイル22と送電コイル44との間の車幅方向の位置ずれを検出するトラッキングコイルが車幅方向において受電側共振回路21の両側に設けられる。この場合、トラッキングコイルは、送電装置40から発せられる電波信号又は微弱な交流電力を検出信号として出力し、ECU10は、二つのトラッキングコイルの検出信号の強度の差に基づいて位置ずれを検出する。位置ずれの検出結果は車両1から給電装置30に送信される。なお、給電装置30が受電コイル22と送電コイル44との間の車幅方向の位置ずれを検出し、その検出結果を車両1に送信してもよい。
【0070】
三つ目の異常条件は、給電エリアの道路上に異物が存在していることである。例えば、給電装置30が、送電コイル44上の異物を検出する異物検出センサ(例えば、光電センサ、カメラ、金属探知機等)を備え、異物の検出結果を車両1に送信する。
【0071】
四つ目の異常条件は、給電装置30と車両1との通信が途絶えていることである。例えば、ECU10は、給電装置30から車両1へ所定の通知が送信されない場合に、給電装置30と車両1との通信が途絶えていると判定する。
【0072】
なお、異常条件として上記以外の条件が用いられてもよい。また、異常条件として上記の一部の条件のみが用いられてもよい。
【0073】
ステップS102において車両1への給電に不具合が生じていないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS103に進む。ステップS103では、ECU10は、電力供給回路5のスイッチング素子S1~S4の状態を第1状態に設定する。すなわち、ECU10はモータ4への電力供給源として受電装置2のみを選択する。ステップS103の後、本制御ルーチンは終了する。
【0074】
一方、ステップS101において車両1が給電エリアを走行していないと判定された場合、又はステップS102において車両1への給電に不具合が生じていると判定された場合、本制御ルーチンはステップS104に進む。ステップS104では、ECU10は、電力供給回路5のスイッチング素子S1~S4の状態を第2状態に設定する。すなわち、ECU10はモータ4への電力供給源としてバッテリ3のみを選択する。ステップS104の後、本制御ルーチンは終了する。
【0075】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る車両の構成及び制御は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る車両の構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0076】
上述したように、ECU10は、車両1が給電エリアを走行しているときには、受電装置2からモータ4に直接電力を供給する。しかしながら、車両1の要求トルクが大きく、モータ4の消費電力が大きい場合には、受電装置2が受電した電力だけでは、モータ4への供給電力が不足するおそれがある。
【0077】
そこで、第二実施形態では、ECU10は、車両1が給電エリアを走行しているときに、モータ4の消費電力が所定値以下である場合にはモータ4への電力供給源として受電装置2のみを選択し、モータ4の消費電力が所定値よりも大きい場合にはモータ4への電力供給源としてバッテリ3及び受電装置2を選択する。このことによって、給電エリアにおいてモータ4への供給電力が不足することを抑制することができる。
【0078】
図7は、第二実施形態においてECU10によって設定されるスイッチング素子S1~S4の複数の状態を示す図である。第二実施形態では、ECU10はスイッチング素子S1~S4の状態を第1状態~第3状態の間で切り替える。上述したように、第1状態ではモータ4への電力供給源として受電装置2のみが用いられ、第2状態ではモータ4への電力供給源としてバッテリ3のみが用いられる。
【0079】
第3状態では、車両1への給電が行われているときに、スイッチング素子S1~S4がそれぞれオンとオフとに交互に切り替えられる。スイッチング素子S1、S2がオンに設定されるときには、スイッチング素子S3、S4はオフに設定される。この結果、コイルL1及びコンデンサC1によりバッテリ3の電圧が受電装置2の電圧まで昇圧され、バッテリ3及び受電装置2の両方からモータ4に電力が供給される。すなわち、第3状態では、モータ4への電力供給源としてバッテリ3及び受電装置2が用いられる。
【0080】
図8は、第二実施形態における電力供給処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU10によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。
【0081】
最初に、ステップS201において、図6のステップS101と同様に、ECU10は、車両1が給電エリアを走行しているか否かを判定する。車両1が給電エリアを走行していると判定された場合、本制御ルーチンはステップS202に進む。
【0082】
ステップS202では、図6のステップS102と同様に、ECU10は、車両1への給電に不具合が生じているか否かを判定する。車両1への給電に不具合が生じていないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS203に進む。
【0083】
ステップS203では、ECU10は、モータ4の消費電力が所定値以下であるか否かを判定する。モータ4の消費電力は、例えば、車両1の要求トルク、モータ4への供給電力等に基づいて算出される。所定値は、予め定められた固定値、又は車両1への給電量以下の値(例えば車両1への給電量)に設定される。車両1への給電量は、給電装置30から車両1へ通知され、又は車両1の受電装置2に設けられた電流センサ、電圧センサ等の出力に基づいて算出される。
【0084】
ステップS203においてモータ4の消費電力が所定値以下であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS204に進む。ステップS204では、ECU10は、電力供給回路5のスイッチング素子S1~S4の状態を第1状態に設定する。すなわち、ECU10はモータ4への電力供給源として受電装置2のみを選択する。ステップS204の後、本制御ルーチンは終了する。
【0085】
一方、ステップS203においてモータ4の消費電力が所定値よりも大きいと判定された場合、本制御ルーチンはステップS205に進む。ステップS205では、ECU10は、電力供給回路5のスイッチング素子S1~S4の状態を第3状態に設定する。すなわち、ECU10はモータ4への電力供給源としてバッテリ3及び受電装置2を選択する。ステップS205の後、本制御ルーチンは終了する。
【0086】
一方、ステップS201において車両1が給電エリアを走行していないと判定された場合、又はステップS202において車両1への給電に不具合が生じていると判定された場合、本制御ルーチンはステップS206に進む。ステップS206では、ECU10は、電力供給回路5のスイッチング素子S1~S4の状態を第2状態に設定する。すなわち、ECU10はモータ4への電力供給源としてバッテリ3のみを選択する。ステップS206の後、本制御ルーチンは終了する。
【0087】
<第三実施形態>
第三実施形態に係る車両の構成及び制御は、以下に説明する点を除いて、基本的に第二実施形態に係る車両の構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第三実施形態について、第二実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0088】
上述したように、モータ4にはバッテリ3及び受電装置2の少なくとも一方から電力が供給される。しかしながら、モータ4の要求電圧が高い場合には、モータ4に供給される電圧が要求電圧に達しないおそれがある。
【0089】
そこで、第三実施形態では、ECU10は、モータ4の要求電圧が所定値以上であるときには、インバータ51及びモータ4に供給される電力の電圧を昇圧する。このことによって、モータ4の電圧が不足することを抑制することができる。
【0090】
図9は、第三実施形態においてECU10によって設定されるスイッチング素子S1~S4の複数の状態を示す図である。第三実施形態では、ECU10はスイッチング素子S1~S4の状態を第1状態~第6状態の間で切り替える。上述したように、第1状態ではモータ4への電力供給源として受電装置2のみが用いられ、第2状態ではモータ4への電力供給源としてバッテリ3のみが用いられる。また、第3状態では、バッテリ3の電圧が受電装置2の電圧まで昇圧され、モータ4への電力供給源としてバッテリ3及び受電装置2が用いられる。
【0091】
第4状態では、車両1への給電が行われているときに、スイッチング素子S1~S4がそれぞれオンとオフとに交互に切り替えられる。スイッチング素子S1、S4がオンに設定されるときには、スイッチング素子S2、S3はオフに設定される。この結果、コイルL2及びコンデンサC2により受電装置2の電圧が昇圧され、昇圧された電力が受電装置2からモータ4に供給される。すなわち、第4状態では、受電装置2の電圧が昇圧され、モータ4への電力供給源として受電装置2のみが用いられる。
【0092】
第5状態では、車両1への給電が行われていないときに、スイッチング素子S1~S4がそれぞれオンとオフとに交互に切り替えられる。スイッチング素子S1、S2がオンに設定されるときには、スイッチング素子S3、S4はオフに設定される。この結果、コイルL1及びコンデンサC1によりバッテリ3の電圧が昇圧され、昇圧された電力がバッテリ3からモータ4に供給される。すなわち、第5状態では、バッテリ3の電圧が昇圧され、モータ4への電力供給源としてバッテリ3のみが用いられる。
【0093】
第6状態では、車両1への給電が行われているときに、スイッチング素子S1、S3がオンにされ、スイッチング素子S2、S4がオフにされる。この結果、バッテリ3及び受電装置2が直列に接続され、バッテリ3及び受電装置2から高電圧の電力がモータ4に供給される。すなわち、第6状態では、モータ4への電力供給源として、直列に接続されたバッテリ3及び受電装置2が用いられる。第6状態では、昇圧による電力損失が生じる第4状態と比べて、高電圧の電力をより効率的にモータ4に供給することができる。
【0094】
図10は、第三実施形態における電力供給処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU10によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。
【0095】
最初に、ステップS301において、図6のステップS101と同様に、ECU10は、車両1が給電エリアを走行しているか否かを判定する。車両1が給電エリアを走行していると判定された場合、本制御ルーチンはステップS302に進む。
【0096】
ステップS302では、図6のステップS102と同様に、ECU10は、車両1への給電に不具合が生じているか否かを判定する。車両1への給電に不具合が生じていないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS303に進む。
【0097】
ステップS303では、ECU10は、モータ4の要求電圧が所定値以上であるか否かを判定する。モータ4の要求電圧は例えばモータ4の回転数及びトルクに基づいて算出される。モータ4の要求電圧が所定値以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS304に進む。
【0098】
ステップS304では、ECU10は、バッテリ3のSOCが所定値以上であるか否かを判定する。バッテリ3のSOCは、例えば、バッテリ電流センサによって検出されたバッテリ3の入出力電流を積算することによって算出され又はカルマンフィルタのような状態推定法を用いて算出される。所定値は例えば30%~80%に設定される。
【0099】
ステップS304においてバッテリ3のSOCが所定値未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS305に進む。ステップS305では、ECU10は、バッテリ3の電力を消費することなく高電圧の電力をモータ4に供給すべく、電力供給回路5のスイッチング素子S1~S4の状態を第4状態に設定する。すなわち、ECU10は、モータ4への電力供給源として受電装置2のみを選択し、受電装置2の電圧を昇圧する。ステップS305の後、本制御ルーチンは終了する。
【0100】
一方、ステップS304においてバッテリ3のSOCが所定値以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS306に進む。ステップS306では、ECU10は、電力供給回路5のスイッチング素子S1~S4の状態を第6状態に設定する。すなわち、ECU10は、モータ4への電力供給源として、直列に接続された受電装置2及びバッテリ3を選択する。ステップS306の後、本制御ルーチンは終了する。
【0101】
また、ステップS303においてモータ4の要求電圧が所定値未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS307に進む。ステップS307では、図8のステップS203と同様に、ECU10は、モータ4の消費電力が所定値以下であるか否かを判定する。
【0102】
ステップS307においてモータ4の消費電力が所定値以下であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS308に進む。ステップS308では、ECU10は、電力供給回路5のスイッチング素子S1~S4の状態を第1状態に設定する。すなわち、ECU10はモータ4への電力供給源として受電装置2のみを選択する。ステップS308の後、本制御ルーチンは終了する。
【0103】
一方、ステップS307においてモータ4の消費電力が所定値よりも大きいと判定された場合、本制御ルーチンはステップS309に進む。ステップS309では、ECU10は、電力供給回路5のスイッチング素子S1~S4の状態を第3状態に設定する。すなわち、ECU10はモータ4への電力供給源としてバッテリ3及び受電装置2を選択する。ステップS309の後、本制御ルーチンは終了する。
【0104】
また、ステップS301において車両1が給電エリアを走行していないと判定された場合、又はステップS302において車両1への給電に不具合が生じていると判定された場合、本制御ルーチンはステップS310に進む。ステップS310では、ステップS303と同様に、ECU10は、モータ4の要求電圧が所定値以上であるか否かを判定する。モータ4の要求電圧が所定値未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS311に進む。ステップS311では、ECU10は、電力供給回路5のスイッチング素子S1~S4の状態を第2状態に設定する。すなわち、ECU10はモータ4への電力供給源としてバッテリ3のみを選択する。ステップS311の後、本制御ルーチンは終了する。
【0105】
一方、ステップS310においてモータ4の要求電圧が所定値以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS312に進む。ステップS312では、ECU10は、電力供給回路5のスイッチング素子S1~S4の状態を第5状態に設定する。すなわち、ECU10は、モータ4への電力供給源としてバッテリ3のみを選択し、バッテリ3の電圧を昇圧する。ステップS312の後、本制御ルーチンは終了する。
【0106】
<その他の実施形態>
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、車両1は、車両1の駆動源として内燃機関及びモータを備えたハイブリッド車両(HEV)又はプラグインハイブリッド車両(PHEV)であってもよい。
【0107】
また、スイッチング素子S1~S4の状態が第1状態に設定されているとき、すなわちモータ4への電力供給源として受電装置2のみが選択されているときに車両1への給電量がモータ4の消費電力よりも多い場合には、ECU10は受電装置2からモータ4及びバッテリ3に電力を供給してもよい。このことによって、余剰電力をバッテリ3の充電に用いることができ、車両1に給電された電力の浪費を抑制することができる。この場合、ECU10は、スイッチング素子S1~S4の状態が第1状態に設定されているときに、スイッチング素子S2を一時的にオンにすることによって受電装置2からバッテリ3に電力を供給する。
【符号の説明】
【0108】
1 車両
2 受電装置
22 受電コイル
3 バッテリ
4 モータ
5 電力供給回路
10 電子制御ユニット(ECU)
30 給電装置
40 送電装置
44 送電コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10