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特開2023-183844筋損傷時の筋再生を促進するための治療用インターロイキン13(IL-13)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183844
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】筋損傷時の筋再生を促進するための治療用インターロイキン13(IL-13)
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/20 20060101AFI20231221BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231221BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20231221BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20231221BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20231221BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
A61K38/20 ZNA
A61P21/00
C07K14/54
C12Q1/02
G01N33/15 Z
C12N15/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097615
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108280
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】山川 大史
(72)【発明者】
【氏名】西村 有平
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS33
4B063QX01
4C084AA02
4C084BA44
4C084DA13
4C084MA66
4C084ZA94
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】 筋損傷時の筋再生を促進するための治療用剤等を提供すること。
【解決手段】 筋損傷時の筋再生を促進するための治療用インターロイキン13(IL-13)によって達成される。このとき、前記IL-13は、損傷筋肉周辺への筋肉内投与、腹腔内投与または点滴投与の少なくとも一つの投与形態で投与されることが好ましい。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋損傷時の筋再生を促進するための治療用インターロイキン13(IL-13)。
【請求項2】
前記IL-13は、損傷筋肉周辺への筋肉内投与、腹腔内投与または点滴投与の少なくとも一つの投与形態で投与される請求項1に記載の治療用IL-13。
【請求項3】
トリコプレインノックアウト(Tchp-/-)マウス由来の間葉系前駆細胞を用い、当該細胞からのIL-13発現量を増加させるか否かを指標として筋再生促進剤の候補物質をスクリーニングする試験方法。
【請求項4】
前記試験方法において、IL-13の発現が、インターロイキン33(IL-33)-レセプターST2-c-Jun N末端キナーゼ1/2(JNK1/2)シグナルに関与する請求項3に記載の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋損傷時の筋再生を促進するための治療用インターロイキン13(IL-13)などに関する。
【背景技術】
【0002】
骨格筋は、多核収縮性筋線維で構成されており、単核筋細胞の増殖と融合によって発生時に形成される。出生後の成長中には、筋線維数は一定であり、骨格筋は損傷後に再生する能力を持っている。骨格筋の再生能力は、主として衛星細胞と言われる筋原性幹細胞に依存している。多くの衛星細胞は、恒常性条件下で静止期にある。しかし、骨格筋が損傷すると、衛星細胞が活性化して細胞周期に入り、衛星細胞を自己再生するか、筋芽細胞に分化して新しい機能的な筋線維を形成する娘細胞を生成する(非特許文献11:Dumont et al.,2015。非特許文献については、明細書の末尾にまとめて示す。)。
筋原性プログラムは、衛星細胞/筋芽細胞と、免疫細胞、内皮細胞、間葉系前駆細胞(線維/脂肪生成前駆細胞:fibro/adipogenic progenitor:FAP)などの骨格筋に適した常在細胞との間の機能的クロストークを必要とする(非特許文献1:Arnold et al., 2007。非特許文献3:Bentzinger et al., 2013。非特許文献37:Panci and Chazaud., 2021。)。この事象が発見されてから、FAPは筋再生の主要なメディエーターとして関心を集めてきた。FAPは、線維芽細胞、脂肪細胞、破骨細胞に分化できるものの、筋芽細胞には分化できない多能性前駆細胞として定義されている(非特許文献19:Joe et al., 2010。非特許文献45:Uezumi et al., 2010。)。静止状態では、FAPは筋線維間の間質腔にあるが、筋肉が損傷すると、FAPは活性化されて増殖し、筋原性分化を促進するIL-6、IL-10、フォリスタチンなどのサイトカインの分泌を増加させる(非特許文献19:Joe et al., 2010。非特許文献26:Lemos et al., 2012。非特許文献33:Mozzetta et al., 2013。)。更に骨格筋では、主としてFAPがIL-33を分泌する。
【0003】
IL-33は、IL-1ファミリーのメンバーである(非特許文献25:Kuswanto et al., 2016。)。IL-33は核クロマチン関連サイトカインであるため、機械的ストレスを受けている細胞から放出されると考えられている(非特許文献6:Cayrol and Girard, 2018。)。放出されたIL-33は、FOXP3+制御性T細胞(regulatory T-cell:Treg)を誘引し、細胞表面のレセプターST2(IL1RL1とも言う)を介して損傷した筋肉に作用する。次いでTregは、上皮成長因子受容体(EGFR)のリガンドであるアンフィレグリンを分泌して、筋肉の再生を促進する(非特許文献5:Burzyn et al., 2013。)。筋肉の恒常性と修復におけるFAPの重要な役割は、遺伝的にFAPを欠失させたマウスが、筋線維の維持と再生に深刻な欠陥を示すという研究によっても確認された(非特許文献42:Roberts et al., 2013。非特許文献49:Wosczyna et al., 2019。)。
骨格筋において、傷害やサルコペニア、ミオパチーなど病的状態を発症すると、過剰なFAP由来脂肪細胞が異所性に沈着する(非特許文献15:Grounds et al., 2014。非特許文献29:Marcus et al., 2010。非特許文献44:Tyler, 2003。)。FAPの大部分が動的に一次繊毛(筋再生中に細胞表面から突出する孤立した非運動性構造)を形成し(非特許文献34:Nigg and Raff, 2009。)、この繊毛がヘッジホッグ(Hh)シグナルを伝達することによって筋肉内脂肪生成を制限することが明らかにされた。FAPから繊毛を遺伝的に除去すると、脂肪生成から筋肉が保護され、損傷時の筋肉の再生が促進される(非特許文献23:Kopinke et al., 2017。)。しかしながら、一次繊毛のダイナミクスが損傷後の脂肪生成と筋線維修復にどのように寄与するかを理解するには、更に研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、本発明者は、トリコプレイン・ケラチンフィラメント結合(Tchp)ノックアウトマウス(Tchp-/-マウス)を使用して、脂肪生成前駆細胞(adipogenic progenitor cell:AP)の繊毛ダイナミクスが破壊されると、内臓及び皮下脂肪組織における脂肪細胞への分化がダウンレギュレーションされることを示した(非特許文献35:Nishimura et al., 2021。非特許文献51:Yamakawaetal., 2021。)。Tchpは、一次繊毛軸糸伸長の段階で一次繊毛形成を抑制する中心小体タンパク質をコードしており(非特許文献17:Inaba et al., 2016。非特許文献18:Inoko et al., 2012。非特許文献20:Kasahara and Inagaki, 2021。非特許文献21:Kasahara et al., 2014。)、この遺伝子を欠失させるとAPで一次繊毛伸長を引き起こす。伸長した繊毛は、インスリン様成長因子1受容体(IGF1R)が局在する繊毛基部周辺のカベオリン1(CAV1)+及びGM3+脂質ラフトの蓄積を損なうことにより、脂肪生成に必須のシグナル伝達経路であるインスリン/Aktシグナル伝達を抑制する。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、筋損傷時の筋再生を促進するための治療用剤等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための発明に係る治療用インターロイキン13(IL-13)は、筋損傷時の筋再生を促進することを特徴とする。
上記発明において、前記IL-13は、損傷筋肉周辺への筋肉内投与、腹腔内投与または点滴投与の少なくとも一つの投与形態で投与されることが好ましい。
また、別の発明にかかわる試験方法は、トリコプレインノックアウト(Tchp-/-)マウス由来の間葉系前駆細胞を用い、当該細胞からのIL-13発現量を増加させるか否かを指標として筋再生促進剤の候補物質をスクリーニングすることを特徴とする。
上記発明において、IL-13の発現が、インターロイキン33(IL-33)-レセプターST2-c-Jun N末端キナーゼ1/2(JNK1/2)シグナルに関与することが好ましい。
IL-13は、ヒト染色体5q31に位置する1.4kbの長さのIL-13遺伝子によってコードされるタンパク質である。質量は13kDaで、4つのαヘリックスバンドルに折りたたまれる。IL-13の二次構造は、インターロイキン4(IL-4)と類似している。但し、IL-13とIL-4のアミノ酸の配列同一性は25%のみであり、IL-4に依存しないシグナル伝達が可能である。IL-13は、Th2細胞、CD4細胞、ナチュラルキラーT細胞、マスト細胞、好塩基球、好酸球などから分泌されるサイトカインである。IgE合成、杯細胞過形成、粘液分泌過多、気道過敏性、線維症、キチナーゼのアップレギュレーションにおける中心的な調節因子であり、アレルギー性炎症・喘息などの種々の疾患のメディエーターとして知られている。
【0006】
本発明者は、Tchp-/-マウスを利用して骨格筋再生中のFAPにおける繊毛の役割を調べた。その結果、Tchp-/-マウスは、WTマウスと比較して、FAPでより長い繊毛を示し、損傷後の筋肉内脂肪生成が低いことを確認した。更に、一次繊毛の伸長は、APで観察されるように、脂質ラフトのダイナミクスを介したAktの活性化とFAPの脂肪生成分化を有意に制限した。同時にTchp-/-マウスは、筋線維再生の重要なイベントである抗炎症性M2マクロファージの浸潤の増強し、筋線維再生を促進した。最も重要なことは、骨格筋のFAPがIL-13産生細胞であることを確認し、一次繊毛がIL-33/ST2/c-Jun N末端キナーゼ1/2(JNK1/2)軸を介してIL-13発現を制御することを見出した。IL-13のみを注射すると筋線維の再生を促進し、損傷後の脂肪生成を阻害しなかった。また、in vitroで筋芽細胞の増殖を直接加速する新しいIL-13機能を発見した。こうして、我々は、FAPが2つの異なる繊毛依存性シグナル伝達経路を介して骨格筋損傷後の脂肪生成と筋線維再生を調整することを明らかにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、筋損傷時の筋再生を促進し、治療に有効に活かすことができる。また、本発明の試験方法によれば、筋再生を促進できる薬剤をスクリーニングできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】TCHP欠損は、脂肪生成を損ない、骨格筋損傷時の筋線維再生を促進することを示すデータ図である。(A)野生型(WT)マウス及びTchp-/-マウスの前脛骨筋(TA)にグリセロール注射による損傷後の再生を評価するためのタイムスケジュール、(B)グリセロール損傷後3日目、7日目及び21日目のTA筋断面のヘマトキシリン・エオジン染色を行ったときの筋線維断面の顕微鏡写真図(図中のスケールバーは100μm)、(C)グリセロール損傷後21日目のペリリピン染色領域を定量化したときの棒グラフ(WT及びTchp-/-の各群についてn=3。)、(D)グリセロール損傷後7日目のTA筋断面のヘマトキシリン・エオジン染色を行ったときの筋線維断面を定量化したときの棒グラフ(WT及びTchp-/-の各群についてn=3。)、(E)グリセロール損傷後3日目のラミニン(緑)、Ki67(赤)及び核(Hoechst33342:青)の蛍光抗体法による筋線維断面積の顕微鏡写真図(図中のスケールバーは50μm)、(F)グリセロール損傷後3日目(E)のラミニン陽性筋繊維断面を定量化したときの棒グラフ(WT及びTchp-/-の各群についてn=5。)、(G)グリセロール損傷後3日目、7日目及び21日目の一次繊毛(Arl13b:緑)、FAP(PDGFRα:赤)及び核(Hoechst33342:青)の蛍光抗体法による筋繊維の顕微鏡写真図(図中のスケールバーは20μm)、(H)グリセロール損傷後3日目の繊毛の長さを比較した棒グラフ(WT及びTchp-/-の各群についてn>100細胞。)、(I)グリセロール損傷後7日目の繊毛の長さを比較した棒グラフ(WT及びTchp-/-の各群についてn>50細胞。)、(J)グリセロール損傷後3日目、7日目及び21日目のPDGFRα染色領域を定量化したときの棒グラフ(各群についてn=4~6例)である。 図中の「***」、「**」、「*」は、対応のないt検定により統計処理した結果、それぞれp<0.001、p<0.01、p<0.05で有意差が認められたことを示し、「N.S.」は有意差が認められなかったことを示す(以下の図においても同じ)。
図2】繊毛伸長は、Aktのダウンレギュレーションを介してFAPの脂肪細胞分化を抑制することを示すデータ図である。PDGFRα+FAPは、WTマウスまたはTchp-/-マウスの後肢から分離され、in vitroで培養し、脂肪生成分化が示された期間誘導された。(A)脂肪生成誘導前の一次繊毛(Arl13b:緑)、(ac-チューブリン:赤)及び核(Hoechst33342:青)の免疫蛍光写真図(図中のスケールバーは20μm)、(B)脂肪生成誘導5日目の脂肪細胞(BODIPY:緑)、繊毛(Arl13b:緑)及び核(Hoechst33342:青)の免疫蛍光写真図(図中のスケールバーは20μm)、(C)繊毛の長さを比較した棒グラフ(WT及びTchp-/-の各群についてn>100細胞)、(D)脂肪生成誘導5日目のBODIPY+ 細胞の割合を比較した棒グラフ(WT及びTchp-/-の各群についてn>100細胞)、(E)脂肪生成誘導から0min及び10min後の免疫蛍光写真図(CAV-1:緑、ac-チューブリン:赤及び核(Hoechst33342:青))、(F)脂肪生成誘導から0min及び10min後の免疫蛍光写真図(cavin1:緑、ac-チューブリン:赤及び核(Hoechst33342:青)、(G)脂肪生成誘導から0min(白棒)または10min(黒棒)においてCAV-1とac-チューブリンで標識された繊毛基部との関連を示した細胞の割合を示す棒グラフ(各群についてn>50細胞)、(H)脂肪生成誘導から0min(白棒)または10min(黒棒)においてcavin1とac-チューブリンで標識された繊毛基部との関連を示した細胞の割合を示す棒グラフ(各群についてn>50細胞)、(I)上記(E)~(H)で分析した全細胞溶解物のイムノブロッティング(ホスホ-Aktの正規化された平均強度を示す。アスタリスクは余分なバンドを示す。全てのデータは、3つの独立した複製物の平均±S.D.で示した)である。
図3】FAPにおけるIL-13発現は、Tchp-/-マウスでアップレギュレートされることを示すデータ図である。(A)グリセロール損傷後3日目のWTマウス及びTchp-/-マウスのTA筋断面におけるM1マクロファージ(M1MΦ:CD68+M1(赤))またはM2マクロファージ(M2MΦ:CD206+ M2(赤))の免疫蛍光写真図(ラミニン:緑、核(Hoechst33342:青。図中のスケールバーは50μm)、(B)グリセロール損傷後3日目のWTマウス及びTchp-/-マウスのM1マクロファージの領域(%)を比較する棒グラフ、(C)グリセロール損傷後3日目のWTマウス及びTchp-/-マウスのM2マクロファージの領域(%)を比較する棒グラフ、(D)グリセロール損傷後3日目のWTマウス(n=3)及びTchp-/-マウス(n=4)の全TA筋から抽出されたRNAについての定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)の結果を示す棒グラフ、(E)グリセロール損傷後3日目のWTマウス及びTchp-/-マウスのTA筋断面における造血細胞(CD45(緑))及び核(Hoechst33342(青))についてのIL-4(赤)、IL-13(赤)またはIL-33(赤)の免疫蛍光写真図(図中のスケールバーは10μm)、(F)グリセロール損傷後3日目のWTマウス(n=6)及びTchp-/-マウス(n=7)のIL-4染色領域、IL-13染色領域またはIL-33染色領域(%)を比較する棒グラフ、(G)グリセロール損傷後3日目のWTマウス(n=7領域)及びTchp-/-マウス(n=7領域)のCD45染色領域を除くIL-13染色領域を比較する棒グラフである。全てのデータは、3匹~5匹のマウスから得られたデータの平均±SDで示した。
図4】繊毛は、in vitroでFAPのIL-13産生を制御することを示すデータ図である。WTマウスまたはTchp-/-マウスの後肢から単離されたPDGFRα+FAPに、コントロール(WT、Tchp-/-)またはTchp-/-細胞にIft88 siRNAをトランスフェクション(Tchp-/-+siIft88)し、2日間培養した後に各試験を実施した。(A)FAP(PDGFRα(緑))、繊毛(Arl13b(赤))、核(Hoechst33342(青))についての免疫蛍光写真図(図中のスケールバーは20μm)、(B)WT、Tchp-/-、Tchp-/-+siIft88の繊毛長(各群について100以上の細胞を計測)を調べた結果を示す棒グラフ、(C)FAP(PDGFRα(緑))、IL-13(赤)、核(Hoechst33342(青))についての免疫蛍光写真図(図中のスケールバーは20μm)、(D)(B)の3種類の各FAPの全細胞溶解物のイムノブロッティング、(E)WTマウスまたはTchp-/-マウスのFAPをPSB(コントロール)、IL-13(20ng/ml)またはIL-33(20ng/ml)で30分間処理したときの全細胞溶解物のイムノブロッティング、(F)(B)の3種類の各FAPをIL-33(20ng/ml)で30分間処理したときの全細胞溶解物のイムノブロッティングである。なお、イムノブロッティングでは、ホスホ-p54/p46 JNKの正規化された平均強度を示し、アスタリスク「*」は余分なバンドを示す。
図5】ST2/JNKシグナル伝達は、in vitroでFAPによるIL-13産生を制御することを示すデータ図である。Tchp-/-マウスの後肢から単離されたPDGFRα+FAPにコントロール、ST2(siST2)またはJNK1とJNK2(siJNK1/2)をターゲットとしてsiRNAをトランスフェクションし、2日間培養した後に各試験を実施した。(A)FAP(PDGFRα(緑))、IL-13(赤)、核(Hoechst33342(青))についてのコントロール、siST2、siJNK1/2の免疫蛍光写真図(図中のスケールバーは20μm)、(B)IL-13 mRNAのqRT-PCR(n=3)の結果を示す棒グラフ(データは平均値±SD)、(C)コントロール、siST2、siJNK1/2をトランスフェクションしたTchp-/-FAPをIL33(20ng/ml)で30分間処理したときの全細胞溶解物のイムノブロッティングである(ホスホ-p54/p46 JNKの正規化された平均強度を示す)。
図6】IL-13は、筋芽細胞数の拡大とM2マクロファージの極性化を促進することを示すデータ図である。(A)グリセロール投与によるWTマウスのTA筋損傷の再生に対するIL-13の効果を評価するためのタイムスケジュール、(B)損傷後3日目のPBS(n=5)またはIL-13(n=8)投与によるTA筋線維断面の平均領域を比べた棒グラフ、(C)(B)の細胞をラミニン(緑)及び核(Hoechst33342(青))で調べたときの代表的な免疫染色写真図(スケールバーは左側が400μm、右側が20μm)、(D)損傷後3日目のPBS(n=5)またはIL-13(n=6)投与後のTA筋断面図のM1マクロファージ(CD68染色)染色領域を比較した棒グラフ、(E)損傷後3日目のPBS(n=8)またはIL-13(n=8)投与後のTA筋断面図のM2マクロファージ(CD206染色)染色領域を比較した棒グラフ、(F)(D)及び(E)の細胞をCD68またはCD206 (赤)、ラミニン(緑)及び核(Hoechst33342(青))で調べたときの代表的な免疫染色写真図(スケールバーは40μm)、(G)PBS(コントロール)、IL-13(20ng/ml)、IL-33(20ng/ml)で処理したときの培養3日目及び7日目の初代培養筋芽細胞数の定量化結果を示す棒グラフ、(H)PBS(コントロール)、IL-13(20ng/ml)、IL-33(20ng/ml)で処理したときの培養7日目にvimentin(赤)及び核(青)で調べたときの代表的な免疫染色写真図(スケールバーは100μm)、(I)初代培養筋芽細胞をPBS、IL-13、IL-33で30分間処理したときの全細胞溶解物のイムノブロッティングである(データは平均値±SD)。
図7】繊毛が制御する筋再生について本発明者によって提案されたモデル図である。
図8図1に関連する筋損傷に対する再生反応におけるTCHP欠損の影響を調べた結果を示す写真図である。グリセロール損傷から0、3、7、14及び21日後において、(A)WTマウス及びTchp-/-マウスのTA筋断面の代表的顕微鏡写真図(スケールバーは100μm)、(B)ペリリピン(緑)及び核(Hoechst33342(青))で染色した免疫染色顕微鏡写真図(スケールバーは100μm)、(C)ラミニン(緑)、Ki67(赤)及び核(Hoechst33342(青))で染色した免疫染色顕微鏡写真図(スケールバーは50μm)、(D)繊毛(Arl13b(緑))、FAP(PDGFRα(赤))及び核(Hoechst33342(青))で染色した免疫染色顕微鏡写真図(スケールバーは20μm)である。
図9図2に関連するFAP内のフロチリン2とGM3の分布を調べた結果を示すデータ図である。WTマウスまたはTchp-/-マウスの後肢から分離したPDGFRα+ FAPをin vitroで培養し、0分間または10分間の脂肪生成分化を誘導したときに、(A)フロチリン2(緑)、繊毛(Arl13b(赤))及び核(Hoechst33342(青))で染色した免疫蛍光顕微鏡写真図(スケールバーは20μm)、(B)脂肪生成誘導後0分(白棒)または10分(黒棒)でのac-チューブリンで標識された繊毛基部とフロチリン2の会合を定量化した棒グラフ(各群について50細胞以上計測のデータ)、(C)GM3(緑)、繊毛(Arl13b(赤))及び核(Hoechst33342(青))で染色した免疫蛍光顕微鏡写真図(スケールバーは20μm)、(D)脂肪生成誘導後0分(白棒)または10分(黒棒)でのac-チューブリンで標識された繊毛基部とGM3の会合を定量化した棒グラフ(各群について50細胞以上計測のデータ)である。
図10図1に関連する衛星細胞または筋芽細胞のTCHP欠損による影響を調べた結果を示すデータ図である。(A)WTマウスおよびTchp-/-マウスから長指伸筋(extensor digitorum longus:EDL)を分離し、培養液中で0日または3日間培養した単繊維をデスミン(緑)、PAX7(赤)、Ki67(白)および核(Hoechst33342(青))で染色した免疫蛍光顕微鏡写真図(スケールバーは20μm)、(B)WTマウス及びTchp-/-マウスの後肢から分離した初代培養筋芽細胞をPAX7(白)及びKi67(マゼンダ)で染色した免疫蛍光顕微鏡写真図(スケールバーは20μm)、(C)(B)で分析したPAX7+ Ki67+ 筋芽細胞のパーセンテージを示す棒グラフ(各群について50細胞以上計測のデータ)、(D)WTマウス及びTchp-/-マウスから単離された筋芽細胞を3日間(白棒)または7日間(黒棒)培養した後に細胞数を比較した棒グラフ(各群について5視野)、(E)WTマウス及びTchp-/-マウスから単離した筋芽細胞を培養液中で0日間または2日間培養した後に位相差顕微鏡で観察した顕微鏡写真図(スケールバーは100μm)、(F)WTマウス及びTchp-/-マウスから分離した筋芽細胞を筋原性分化培地で0日間または2日間培養した後、デスミン(緑)、ビメンチン(赤)及び核(Hoechst33342(青))で染色した免疫蛍光顕微鏡写真図(スケールバーは20μm)、(G)(F)で解析した細胞のデスミン+筋芽細胞のパーセンテージ(各群について100細胞以上)を調べた結果を示す棒グラフである(各データは3個の独立した実験の平均±SD)。
図11図3に関連するPDGFRα+ FAPにおけるIL-13発現を調べた結果を示す免疫蛍光顕微鏡写真図である。WTマウス及びTchp-/-マウスの後肢から単離したPDGFRα+ FAPを「左側:IL-4(赤)」、「中央:IL-13(赤)」及び「右側:IL-33(赤)」で染色し、同時にPDGFRα+(緑)及び核(Hoechst33342(青))で染色した。
図12図3に関連するTreg蓄積に対するTCHP欠損の影響を調べた結果を示すデータ図である。(A)WTマウスおよびTchp-/-マウスのTA筋に50%グリセロール(左側)または蛇毒であるカルジオトキシン(Cardiotoxin)(右側)で損傷し、3日後のFOXP3(緑)、CD45(赤)および核(Hoechst33342(青))の免疫蛍光顕微鏡写真図(図中の矢印はFOXP3+CD45+Tregを示す。スケールバーは100μm)、(B)TA筋を50%グリセロールで損傷し、3日後のCD45+造血細胞におけるFOXP3+細胞のパーセンテージ(各群について100細胞以上)を比較した棒グラフ、(C)TA筋をカルジオトキシンで損傷し、3日後のCD45+造血細胞におけるFOXP3+細胞のパーセンテージ(各群について100細胞以上)を比較した棒グラフである(データは全て3個の独立した実験の平均±SD)。
図13図6に関連する筋損傷に対する再生反応におけるIL-13の効果を調べた結果を示すデータ図である。(A)WTマウスおよびTchp-/-マウスのTA筋へのグリセロール注射による損傷への再生反応に対するIL-13の効果を評価するためのタイムスケジュール、(B)PBS(コントロール)またはIL-13を投与したマウスについて、3日後または7日後のPDGFRα(赤)及び核(Hoechst33342(青))の免疫蛍光顕微鏡写真図(スケールバーは40μm)、(C)PDGFRα染色領域を定量化した棒グラフ(各データはn=6の平均値)、(D)WTマウスおよびTchp-/-マウスの後肢から単離し、in vitroで3日間または5日間培養したPDGFRα+FAPの細胞数を計測した結果を示す棒グラフ(各群について200細胞以上)、(E)マウスTA筋にPBS(コントロール)またはIL-13を投与し、3日後または7日後にペリリピン(緑)及び核(Hoechst33342(青))で染色した免疫蛍光顕微鏡写真図(スケールバーは40μm)、(F)ペリリピンで染色された領域を定量化した結果を示す棒グラフ(各群について6領域)、(G)WTマウス及びTchp-/-マウスの後肢から単離し、脂肪生成分化培地で5日間培養したPDGFRα+FAPから単離されたFAP中のBODIPY+細胞を定量化した結果を示す棒グラフ(各群について200細胞以上。全データは3匹の独立したマウスのデータの平均値±SD)、(H)(G)で分析したBODIPY(緑)及び核(Hoechst33342(青))の代表的な免疫蛍光顕微鏡写真図である(スケールバーは20μm)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
<試験方法>
・マウス骨格筋障害
C57Bl6バックグラウンドのWTマウスとTchp-/-マウスのTA筋に50μl/ 50%グリセロール、10μM カルジオトキシンあるいはコントロールとして生理食塩水を注射し、0、3、7、14、21日後にTA筋を回収し、各種実験に使用した。IL-13投与実験は、WTマウスのTA筋に50μl/ 50%グリセロールを注射後、1日目あるいは4日目にマウス1匹あたり2μgのリコンビナントマウスIL-13あるいはコントロールとして生理食塩水を腹腔投与し、障害後3あるいは7日目にTA筋を回収し、組織解析に使用した。
【0010】
・マウス下肢筋由来FAPあるいは筋芽細胞の初代培養
4-5週齢のWTマウスあるいはTchp-/-マウス下肢筋を回収し、ハサミで細切する。ディスパーゼIIを37℃5分間恒温槽で反応させ、振盪器に移し、引き続き37℃15分間250rpmで反応させる。1500rpm3分遠心し、上清を破棄、コラゲナーゼIIを37℃3分間恒温槽で反応させ、振盪器に移し、引き続き37℃10分間250rpmで反応させる。その後、70μmフィルターを通し、通過した細胞液を回収、1500rpm、3分遠心し、上清を破棄、1xRBClysisバッファーを加え、5分間室温にて溶血させる。洗浄後、1500rpm、3分遠心し、細胞ペレットを4%FBS/PBSにて懸濁し、35μmフィルターを通し、通過した細胞を10%FBSとペニシリン・ストレプトマイシン含有DMEM培地で培養する。90分後、接着した細胞をFAP細胞、未接着の培養上清中の細胞を筋芽細胞として別々のディッシュで培養。FAP細胞はヒトリコンビナントbFGF 10ng/ml、10%FBSとペニシリン・ストレプトマイシン含有DMEM培地で培養する。筋芽細胞はヒトリコンビナントbFGF 5ng/ml、20%horse serumとペニシリン・ストレプトマイシン含有F-10培地で培養する。また、FAP細胞はポリスチレン10cmディッシュで、筋芽細胞は0.67%ゼラチンコートしたポリスチレン6ウェルディッシュで培養した。培地は2日に一回交換した。また、FAP細胞は2継代、筋芽細胞は5継代までに実験に使用した。
【0011】
・EDL筋からの単一筋繊維の分離と培養
6-8週齢のWTマウスあるいはTchp-/-マウスのEDL筋を回収し、0.2%コラゲナーゼI/ピルビン酸ナトリウム含有DMEMにて37℃60分から120分恒温槽で反応させ、1mlピペットにてチップ先端をハサミでカットしたもので、ピペッティングして単一筋繊維にバラバラにする。これを1mlピペットにて単一筋繊維を回収し、新しい培地のディッシュに移す。これを2回繰り返し、37℃60分以上培養する。その後、20%FBS、1%chicken embryo extract、1%ペニシリン・ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム含有DMEM培地にて増殖・培養する。2日目に新しい培地に交換する。0日目と3日目に回収し、染色に使用した。
【0012】
・FAP細胞の脂肪細胞分化誘導
FAP細胞がコンフルエントになるまで培養し、誘導培地で3日、分化培地で2日培養して脂肪細胞に分化させる。誘導培地は200μMインドメタシン、0.5mM 3-Isobutyl-1-methylxanthine、1μMデキサメタゾン、10μg/mlヒトインスリンを添加した10%FBS・ペニシリンストレプトマイシン含有DMEMを使用。分化培地は、10μg/mlヒトインスリンを添加した10%FBS・ペニシリンストレプトマイシン含有DMEMを使用した。
・筋芽細胞の筋繊維分化誘導
筋芽細胞をサブコンフルエント状態にし、分化誘導培地で0、1、2日培養して筋繊維に分化させる。分化誘導培地は2%horse serum、ペニシリンストレプトマイシン含有F-10培地を使用した。
【0013】
・ノックダウン操作
FAP細胞を播種する際、Lipofectamine RNAiMAXを使用して、siRNAを遺伝子導入した。siRNA(QIAGEN社製)は以下の配列を使用した。Control siRNA(AATTCTCCGAACGTGTCACGT:配列番号1)、mouse Il1rl1 siRNA(AAGGCATTAGATACTTATAAA:配列番号2)、mouse Mapk8 siRNA(CAGGCCTAAATACGCTGGATA:配列番号3)、mouse Mapk9 siRNA(CAGATCCTGATCTGTAAATTA:配列番号4)。
・免疫組織染色、細胞染色
回収したマウスTA筋は4%PFA/PBSにて固定し、その後30%スクロースまで置換した。これをOCTコンパウンドを用いて、凍結ブロックを作製した。クライオスタットを用いて、10μm厚の組織切片を作製した。一次抗体は以下の抗体を使用した。
Acetylated tubulin (1:200) (SIGMA Aldrich)、 Arl13b (1:200)、PTRF (1:100) (Proteintech)、Caveolin 1 (1:300)、Perilipin (Cell Signaling Technology)、CD45 and CD45-biotin (1:100) (Biolegend)、CD68 (1:100)、CD206 (1:100) (Bio-Rad)、Desmin (1:200) (Cell Signaling Technology)、Flotillin 2 (1:20) (Santa Cruz Biotechnology)、FOXP3 (1:100) (Invitrogen)、GM3 (1:500) (Tokyo Chemical Industry)、IL4 (1:100) (Novus Biogicals)、IL13 (1:100)、IL33 (1:100)、PAX7 (1:100)、PDGFRα (1:200)、Vimentin (1:200) (R&D Systems)、Ki67 (1:200) 、Laminin (1:200) (Sigma Aldrich)。
また、二次抗体はJackson Laboratories社製のAlexa Fluor 488, 555, 647 or Cy3-conjugated IgG (1:200)を使用した。一次抗体によって、ロバあるいはヤギ由来を使い分けた。PDGFRαの染色は、抗原賦活化処理として、ペプシンにて37℃30分処理後に、ブロッキングと抗体反応を実施した。Flotillin 2抗体使用時は、メタノール・アセトンにて固定操作を行った。
【0014】
・タンパク質検出(SDS-PAGE、ウエスタンブロッティング)
RIPA lysisバッファーにて細胞を溶解し、氷上で30分間静置した。その後、15,000rpm、5分、4℃にて遠心し、上清を回収し、SDSサンプルバッファー添加後、95℃、5分加熱してサンプルを作製した。SDS-PAGE、ウエスタンブロッティングは標準的なプロトコールで実施した。HRP標識二次抗体を使用し、ECL検出液にて化学発光させ、タンパク質を検出した。一次抗体抗体反応に用いた抗体を以下に記載する。
JNK (BD Transduction Laboratories)、IFT88 (Proteintech)、Akt, phospho-Akt、ERK1/2、phospho-ERK1/2、phospho-JNK、GAPDH-HRP、STAT6、phospho-STAT6 (Cell Signaling Technology)、ST2 (Abcam)、IL4R (Bioss)、IL13Ralpha1 (Santa Cruz Biotechnology)、Trichoplein (home-made)。
【0015】
・RNA回収とcDNA合成、リアルタイムPCR
RNeasy Plus Mini Kit (Qiagen)あるいはMonarch Total RNA Miniprep Kit (New England BioLabs)を用いて細胞からRNAを回収した。また、マウスTA筋からのRNA回収には、TRIzol Reagent (Ambion)を使用した。筋は約50mgに合わせて実施した。RNAからcDNAの逆転写反応は、PrimeScript RT reagent Kit (TaKaRa)を使用した。リアルタイムPCRは、TB Green Premix Ex Taq II (Tli RNaseH Plus) (TaKaRa)と表4のプライマーを使用し、QuantStudio 3 (Applied Biosystems, Waltham, MA)にて定量解析した。
表1~表3には、本試験に使用した試薬(抗体、IL、酵素などを含む)の入手先とIDを示した。また、表4には、リアルタイムPCR法に用いたプライマーを示した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
表4中のプライマーの塩基配列については、配列番号5~配列番号26とした。
【0020】
・筋再生促進剤の候補物質をスクリーニングする試験方法
Tchp-/-マウスの後肢から間葉系前駆細胞(FAP)を採取し、一般的な細胞培養プレート(6ウエル、12ウエル、24ウエル、48ウエル、96ウエルなど)に播き、培養する。そこで、筋再生促進剤の候補物質を適当に希釈し、2ウエル(duplicate)または3ウエル(tripricate)ずつに同じ希釈の候補物質を添加し、24時間~48時間の培養を続ける。その後、培養上清中のIL-13濃度を検出する。コントロール(候補物質なし)に比べ、有意にIL-13濃度が高いウエルを抽出することにより、標的となる候補物質をスクリーニングできる。
またこのとき、ST2(siST2)またはJNK1とJNK2(siJNK1/2)をターゲットとしてsiRNAをトランスフェクションすることにより、IL-13の発現が、インターロイキン33(IL-33)-レセプターST2-c-Jun N末端キナーゼ1/2(JNK1/2)シグナルに関与するか否かを判断できる。こうして、筋再生促進剤の候補物質をスクリーニングできる。
【0021】
<試験結果>
1.TCHP欠損は、脂肪生成を損ない、骨格筋損傷時の筋線維再生を促進する
最近、TCHPの欠損がAPの繊毛の伸長を引き起こし、それによって脂肪細胞への分化を損なうことを示した。その結果、高脂肪食下のTchp-/-マウスは、内臓及び皮下脂肪組織での脂肪形成に欠陥が認められた(非特許文献51:Yamakawaetal., 2021。)。殆どのFAPが筋再生中に動的に繊毛形成することを考慮に入れ(非特許文献23:Kopinke et al., 2017。)、TCHP欠損が骨格筋損傷時のFAPの繊毛動態及び脂肪生成能力に影響を与えるかどうかを調べた。
これまで複数の筋損傷モデルが提示されてきている。これらのうち、グリセロール投与法は、筋線維の一過性壊死を伴う脂肪生成を効率的に誘導することから、マウス前脛骨筋(TA)への50%グリセロールの筋肉注射を用いた(非特許文献23:Kopinke et al., 2017。 Pisani et al。、2010)(図1A)。ヘマトキシリン・エオジン染色(H&E染色)によれば、筋損傷後14日及び21日にWTマウスで明確な筋肉内脂肪生成が確認された。しかし、Tchp-/-マウスでは、脂肪生成は極端に抑制された(図1B及び図8A)。
【0022】
ペリリピン染色によれば、WTマウスでは、脂肪細胞は筋損傷後7日で出現し始め、14日及び21日には豊富になることが明らかとなった。対照的にTchp-/-マウスでは、どの時点でも脂肪細胞集団の顕著な減少を示した(図1C及び図8B)。これらの結果より、Tchp-/-マウスが骨格筋損傷後の脂肪生成に著しく欠陥があることを示している。
特にH&E染色組織の筋線維断面積を定量化することにより、Tchp-/-マウスの筋線維サイズは、損傷後7日でWTマウスの筋線維サイズよりも有意に大きいことが明らかになった(図1B、1D及び図8A)。更に、細胞外マトリックスタンパク質であるラミニンを免疫染色したところ、損傷後3日で拡大していることが分かった(図1E、1F及び図8C)。更に、中心核の周辺への移動は、WTマウスに比べ、Tchp-/-マウスでより早く起こり(図8C:21日後(21 dpi)を参照)、筋線維再生がTchp-/-マウスで加速されることを示している。
【0023】
2.繊毛伸長は、Aktのダウンレギュレーションを介してFAPの脂肪細胞への分化を抑制する
繊毛が損傷に対するこれらの再生反応を制御するかどうか、またどのようなメカニズムで制御するかを確認するために、最初にグリセロール筋肉投与後のTA筋におけるFAPの繊毛動態を評価した。PDGFRαを発現するWT FAP(PDGFRα+ FAP)は一過性に繊毛を形成し、繊毛マーカーArl13bにより筋損傷後3日~14日で染色されたとの報告がある(非特許文献23:Kopinke et al., 2017。)。これらの繊毛は21日後に再吸収された(図1G~1I及び図8D)。Tchp-/-マウスでは、PDGFRα+ FAPは3日後~14日後に繊毛を形成したが、WTマウスよりも繊毛は長く、21日後も存在していた。PDGFRα+FAPの割合は、筋肉の再生中に変動し(非特許文献19:Joe et al., 2010。非特許文献23:Kopinke et al., 2017。)、傷害時には急速に増加し、その後に傷害前のレベルに戻ることが観察された。但し、WTマウスとTchp-/-マウスと間には統計的に有意なデータは認められなかった(図1J)。このように、TCHPの欠損は、FAP数に影響を与えることなく、筋肉の再生中にFAP繊毛を伸長させることが分かった。
【0024】
FAP脂肪生成分化への影響を確認するために、WTマウス及びTchp-/-マウスの後肢からPDGFRα+ FAPを単離し、in vitroで培養した。培養を開始するとWT FAPは急速に拡大し、損傷した筋肉で認められたように、2つの異なる繊毛マーカーであるArl13bとac-チューブリンで染色される繊毛を形成した。WT FAPの約50%は、インスリンを含む脂肪生成刺激による処理後にBODIPY+ 脂肪細胞に分化する能力を持っていた(図2A~2D)。培養を開始後、Tchp-/-FAPも急速に増殖して繊毛を形成したが、WT FAPに比べて、より長い繊毛を示した(図2A及び2C)。更に、20%未満のTchp-/-FAPでは、脂肪生成分化を起こした(図2B及び2D)。これはTchp欠損がPDGFRα+ FAPの繊毛伸長を引き起こし、in vitro及びin vivoで脂肪生成分化を抑制することを示している。
本発明者は、脂肪細胞分化の重要なシグナル伝達経路であるインスリン/Akt軸が、TCHP欠損APでダウンレギュレーションされることを示した。これは、伸長した繊毛が、IGF1Rが位置する繊毛基部周辺のカベオリン/脂質ラフトの蓄積を妨害するためであった(非特許文献35:Nishimura et al., 2021。非特許文献51:Yamakawa et al., 2021。)。
【0025】
そこでin vitroでのPDGFRα+ FAPのCAV-1、cavin1、フロチリン2及びGM3などのいくつかのカベオリン/脂質ラフトマーカーの分布を調べた。脂肪生成誘導時にCAV-1、cavin1、及びフロチリン2は、WT FAPの繊毛基部の周りに蓄積したが、Tchp-/- FAPの周囲には蓄積しなかった(図2E~2H、図9A及びB)。更に、Akt活性は、WT FAPと比較して、Tchp-/-FAPではダウンレギュレーションされた(図2I)。これらの結果は、APで報告されているように、TCHP欠損による繊毛伸長が、脂質ラフトのダイナミクスに依存するAkt活性化を妨害することにより、FAPを脂肪生成分化から保護することを示している(非特許文献51:Yamakawa et al., 2021。)。但し、FAPとAPとの間には相違が認められる。例えば、WTマウスでは、Flotillin2はFAPの繊毛基部に蓄積されるが、APには蓄積されない。逆に、GM3の蓄積はAPで観察されたが、FAPでは観察されなかった(非特許文献51:Yamakawa et al., 2021。:図9)。繊毛基部周辺の脂質ラフトのダイナミクスは、脂肪生成分化において細胞型特異的または組織特異的である可能性がある。
【0026】
3.TCHP欠損は、損傷した筋肉組織へのM2マクロファージの浸潤を促進する
次に、Tchp-/-マウスで促進される筋再生のメカニズムを調べた。異所性脂肪の形成は、一般的には、筋肉の恒常性と再生を妨げると考えられている(非特許文献32:Molina et al., 2021。)。従って、Tchp-/-マウスの脂肪生成の減少は、損傷後の筋線維のサイズに影響を与える可能性がある。但し、WTマウス及びTchp-/-マウスで脂肪生成が検出される前に、筋線維サイズがWTマウスよりもTchp-/-マウスの方が損傷後3日で既に大きいことを確認した(図1E、1F及び図8B)。このため、別の可能性を模索した。
骨格筋の再生は、衛星細胞の活性化と増殖及びそれらの筋芽細胞への分化を引き起こし、その後、融合して新しい筋管を形成する(非特許文献7:Charge and Rudnicki、2004。非特許文献8:Collins et al., 2005。非特許文献10:Dhawan and Rando、2005。)。
【0027】
そこで、ex vivo及びin vitroシステムを用いて、TCHPの欠損が衛星細胞または筋芽細胞の増殖と分化に直接影響するか否かを調べた。
(1)WTマウス及びTchp-/-マウスの長指伸筋(extensor digitorum longus:EDL)からPAX7+ 衛星細胞を含む単一筋線維を分離し、増殖培地で培養した(非特許文献38:Pasut et al, 2013。)。3日間培養した後、WT細胞とTchp-/-衛星細胞の両方を増殖マーカーであるKi67で標識し、ex vivoでクローン増殖を行った(図10A)。
(2)次に、WTマウス及びTchp-/-マウスの後肢からPAX7+ 初代筋芽細胞を単離した。これらの細胞には、in vitroで同様の増殖を示したKi67陽性細胞のほぼ同一の集団が含まれていた(図10B-D)。
(3)in vitroで筋芽細胞が誘導されると、これらの筋芽細胞は増殖状態(vimentin +)から分化状態(desmin +)に移行した(非特許文献13:Frock et al., 2006。非特許文献31:Melcon et al., 2006。)。形態学的観察により、この状態移行が確認されたが、WT筋芽細胞とTchp-/-筋芽細胞の間に違いは認められなかった(図10E-G)。こうして、衛星細胞または筋芽細胞からのTCHPの欠損は、増殖または分化に影響を与えなかった。
【0028】
筋肉の再生は、マクロファージの協調作用にも依存している。炎症誘発性マクロファージまたはM1型マクロファージは、損傷した筋組織に最初に現れ、エフェロサイトーシス(死細胞または死につつある細胞を食細胞が除去する現象)によって、アポトーシス、壊死細胞及び組織破片を取り除く。その後、抗炎症性マクロファージまたはM2型マクロファージが優勢になり、筋肉の再生を調整する(非特許文献1:Arnold et al., 2007。非特許文献37:Panci and Chazaud., 2021)。今回の試験では、CD68+M1ではなくCD206+M2の浸潤が、WTマウスと比較してTchp-/-マウスで増加した(図3A-C)。但し、促進されたM2マクロファージ浸潤は、FAPなどの骨格筋ニッチの常在細胞によって引き起こされたものであり、マクロファージからのTCHP欠損によって引き起こされるものではないと考えられた。なぜならTCHP欠損は、FAPの繊毛伸長を誘発し、マクロファージも筋原性系統も繊毛を持たないためである(非特許文献23:Kopinke et al., 2017。)。
【0029】
4.FAPは骨格筋ニッチのIL-13産生細胞である
次に、WTマウス及びTchp-/-マウスの全TA筋組織を損傷後3日目に使用して、筋肉の再生に関与するmRNAレベルとFAPから分泌されるサイトカインのレベルを定量化した(図3D)。Tchp-/-マウスのデスミン発現が大幅に増加したことは、筋線維の再生が加速したことを示すというデータを裏付けた。特にIL-4、IL-10、IL-13、IL-33、フォリスタチンなど、M2マクロファージの極性化を刺激するサイトカイン(非特許文献12:Faas et al., 2021。非特許文献30:Martinez et al.,2009。非特許文献47:Van Dyken and Locksley, 2013)のうち、IL-13のmRNA発現量は、WTマウスと比べて、Tchp-/-マウスで有意に高かった。IL-6、IL-10、IL-33、フォリスタチンなどのFAP発現サイトカインの発現量の増加は認められなかった(非特許文献4:Biferali et al., 2019。非特許文献24:Kurowska-Stolarska et al., 2009。非特許文献25:Kuswanto et al., 2016)。
好酸球を含むCD45+白血球は、骨格筋損傷時のIL-13の主な供給源である(非特許文献30:Martinez et al., 2009。非特許文献47:Van Dyken and Locksley, 2013)。しかし、免疫蛍光分析によれば、CD45-非造血細胞は筋損傷後3日のWTマウスのTA筋にCD45+白血球と比較して同等レベルのIL-13タンパク質を含むこと、及びTchp-/-マウスのIL-13発現はWTマウスよりも高いことが明らかとなった(図3E-G)。更に、IL-13の発現はWTマウスから単離されたPDGFRα+ FAPで検出され、この発現レベルはTchp-/-マウスに由来するPDGFRα+ FAPでより高かった(図11)。これらの結果より、FAPがIL-13発現細胞であり、TCHP欠損がその発現を増強することを示している。既報にあるように(非特許文献30:Martinez et al., 2009。非特許文献47:Van Dyken and Locksley, 2013)、IL-4はCD45+白血球でのみ発現し、PDGFRα+FAPでは発現しなかった。逆に、IL-33はPDGFRα+ FAPで発現したが、骨格筋のCD45+白血球では発現しなかった(図3E図11)。
【0030】
5.一次繊毛は、ST2/JNK軸を介してFAPのIL-13発現を制御する
繊毛がFAPのIL-13発現を調節するかどうかを調べるために、Tchp-/-マウスから単離したPDGFRα+ FAPから一次繊毛の生合成と維持に関与する鞭毛内輸送タンパク質88(IFT88)を欠損させた。Ift88 siRNAでトランスフェクションしてから2日後、繊毛の長さはWTマウスから分離されたコントロールPDGFRα+ FAPのレベルに回復した(図4A及びB)。重要なことに、より高いIL-13レベルもIFT88ノックダウンによって減少し(図4C)、一次繊毛が骨格筋FAPにおけるIL-13発現に重要な役割を果たしていることを示している。
繊毛はFAPのIL-13産生をどのように調節するのかに関し、本発明者はIL-33シグナル伝達経路に焦点を当てた。これは、IL-33が他の細胞型でIL-13の発現を誘導することが示されていること(非特許文献12:Faas et al., 2021。非特許文献22:Kaur et al., 2015。非特許文献27:Liu et al., 2019。)、及びIL-33受容体であるST2は、TCHP欠損によって増加すること(図4D)という理由に依る。IL-4R及びIL-13Rα1はFAPでも発現するが(非特許文献16:Heredia et al., 2013。)、それらの発現レベルはTCHPまたはIFT88の欠損による影響を受けなかった。PDGFRα+FAPをIL-33で処理すると、IL-33/ST2軸の下流エフェクターの中で、ERK1/2ではなくJNK1/2が活性化された(非特許文献43:Schmitz et al., 2005。)。IL-33が誘導するJNK1/2の活性化は、WT FAPよりもTchp-/- FAPの方が高く、ST2の発現レベルと一致していた(図4E)。更に、強化されたJNK1/2活性は、Tchp-/- FAPのIFT88ノックダウンによって救済されたことから(図4F)、繊毛の長さがFAPのST2発現とJNK1/2活性に重要であることを示している。
【0031】
次に、強化されたST2/JNK1/2経路がTchp-/- FAPにおけるIL-13の発現増加の原因であるかどうかを調べた。予想通り、ST2またはJNK1/2のノックダウンにより、IL-13発現量が減少した(図5A及びB)。また、STノックダウンがJNK1/2活性をダウンレギュレーションすることを確認した(図5C)。これらのデータは、一次繊毛が骨格筋FAPのIL-33/ST2/JNK1/2軸を介してIL-13産生を制御すること示している。
FAPから放出されたIL-33は、損傷した筋組織にFOXP3+Tregを補充する。これらのTregはアンフィレグリンを分泌し、筋再生を促進する(非特許文献5:Burzyn et al., 2013。非特許文献25:Kuswanto et al., 2016。)。従って、TCHPの欠損がTregの蓄積に影響を与えるかどうかを調べた。カルジオトキシンの筋肉内注射はTregの蓄積を引き起こしたとの報告がある(非特許文献5:Burzyn et al., 2013。)が、グリセロール注射はほとんど効果がなかった。但し、どちらの処置でも、WTマウスとTchp-/-マウスの間に有意差は認められなかった(図12A-C)。これらの結果は、グリセロールを注射した3日後におけるWTマウス及びTchp-/-マウスによって生成されたアンフィレグリン濃度の結果と一致した(図3D)。こうして、FAPの一次繊毛は筋再生におけるTreg機能とは関係ないことが分かった。
【0032】
6.IL-13は、損傷時に筋芽細胞の拡大とM2マクロファージの極性化を促進する
in vivoにおける筋再生中のIL-13の効果を調べるために、グリセロールを注射したWTマウスに対し、組換えマウスIL-13またはPBSを注射後1日目に腹腔内注射した(図6A)。
IL-13を注射したマウスは、PBSを注射したマウスと比較して、3日後に筋線維サイズの拡大とCD206+ M2の浸潤の増加を示したが、CD68+ M1マクロファージは示さなかった(図6B-F)。IL-13を注射したマウスとTchp-/-マウスが類似する結果を示すことは、過剰なIL-13が筋肉の再生を促進する可能性があることを示している。
IL-13を介したM2マクロファージ極性化は確立されているが、IL-13が損傷時に筋線維サイズをどのように増加させるかは不明のままである(非特許文献28:Locati et al., 2013。)。IL-4/IL-13シグナル伝達は、FAP増殖を増強することによって筋修復を促進するが(非特許文献16:Heredia et al., 2013。)、TCHP欠損(図1J)もIL-13注射(図13A-C)も損傷後のFAP集団に影響を与えないことがわかった。更にPDGFRα+FAPをin vitroでIL-13処理しても、その数に影響はないので(図13D)、IL-13がFAPの増殖に関与していないことが分かる。
【0033】
筋再生プロセスはin vivoで関連する因子と複雑に絡み合っているため、骨格筋細胞及び常在細胞におけるIL-13の新規標的を探索するために、in vitroでIL-13の効果を調べた。IL-13処理によって、WTマウスの後肢から分離された初代培養筋芽細胞の増殖を直接増強し、シグナルトランスデューサー及び転写活性化因子6(STAT6)のリン酸化を刺激することを見出した(図6G-I)。一方、筋芽細胞はIL-33の投与には反応しなかった。これらのデータは、IL-13が筋芽細胞の増大とM2マクロファージの極性化を促進することで筋再生に寄与し、IL-33/ST2/JNK1/2軸がFAPを刺激してIL-13を産生することでプロセスに関与することを示している(図7)。
IL-13が50%グリセロールを投与されたWTマウスのTA筋の筋再生中に脂肪生成に影響を与えるかどうかを調べた。上記のように(図8B)、PBSを注射したWTマウスでは、脂肪細胞は3日後に観察されることは殆どなかったが、7日後には明らかに存在していた。しかし、IL-13注射はどちらの時点でも検出可能な効果は認めなかった(図13E,F)。PDGFRα+ FAPをIL-13で処理すると、in vitroで脂肪細胞の分化がいくらか抑制される(図13G、H)ので、脂肪生成に対するIL-13の効果を完全に発揮することはできなかったが、IL-13はFAPの脂肪生成の障害に関連することなく、筋再生を直接促進することをデータは示している。
【0034】
<考察>
FAPは骨格筋の修復中に複数の機能を持っているという認識が高まっている。今回の試験により、FAPの一次繊毛は、2つの異なる繊毛依存性シグナル伝達経路を介した骨格筋損傷時の脂肪生成と筋線維再生の両方で重要な役割を果たしていることが分かった。
まず最初に、TCHPの欠損が損傷後の筋肉内FAPの繊毛の伸長を誘発することを見出した(図1G-I及び図8D)。伸長した表現型は、繊毛タンパク質の調節不全によって引き起こされる可能性があり、適切な繊毛の動態と機能を破壊することにより、メッケル・グルーバー症候群などの繊毛関連障害を引き起こす(非特許文献2:Avasthi and Marshall、2012。)。従って、Tchp-/-マウスを利用して、筋再生中のFAP繊毛の機能を調査し、Tchp-/-マウスが損傷後の筋肉内脂肪生成から保護されていることを示した(図1B,C及び図8A,B)。同様の表現型がFAP無繊毛マウス(Pdgfrα-CreERTIft88Δ/-マウス)で観察され、このマウスではFAPによって損傷誘発性の繊毛形成がブロックされる(非特許文献23:Kopinke et al., 2017。)ことから、FAPが脂肪細胞に分化するためには適切に制御された繊毛動態が必要であることを示している。Hhシグナル伝達は繊毛に依存する。従って、FAP無繊毛マウスはGli1やPtch1などのHh標的遺伝子のアップレギュレーションを示し、脂肪生成分化を制限する(非特許文献23:Kopinke et al., 2017。)。対照的に、繊毛の伸長が繊毛基部周辺のカベオリン/脂質ラフトの蓄積を妨害し、脂肪生成の重要なシグナル伝達経路であるインスリン/Aktシグナル伝達を抑制した(図2E-I及び図9)。実際、マクロファージ、衛星細胞、内皮細胞などの各種の筋肉常在細胞から分泌されるIGF-1は、骨格筋の維持と再生において重要なマイオカイン/サイトカインとして機能する(非特許文献48:Winn et al., 2002。)。これらのデータは、FAPがインスリン/AktやHh経路などの繊毛依存性シグナル伝達経路を介して筋再生中に脂肪細胞の分化を制御することを示している。
【0035】
脂肪生成における役割に加えて、FAPはいくつかのプロセスを通じて筋線維の修復に関与する(非特許文献4:Biferali et al., 2019。非特許文献32:Molina et al., 2021。非特許文献50:Wosczyna and Rando, 2018。)。例えば、筋肉が損傷すると、FAPはIL-6とIL-33の産生を増加させ、衛星細胞の増殖を促進する(非特許文献19:Joe et al., 2010。非特許文献25:Kuswanto et al., 2016。)。また、IL-33はM1からM2マクロファージへの切り替えを引き起こす(非特許文献24:Kurowska-Stolarska et al., 2009。)。今回の試験では、筋線維の再生とM2分極の両方がTchp-/-マウスで促進されることを確認した(図1E,F及び図3A-C)が、TA筋全体のIL-6 mRNAまたはIL-33 mRNA量は、TCHP欠損の影響を受けなかった(図3D)ことから、別の要因の関与が示唆される。本発明者は、IL-13産生細胞としてFAPを特定した。CD45+ 白血球は、IL-13の主要な筋肉内供給源である(非特許文献14:Gessner et al., 2005。非特許文献36:Palm et al., 2012。)。しかし、蛍光抗体分析によれば、WTマウスでPDGFRα+ FAPとして同定されたCD45-非造血細胞で同等量のIL-13が発現し(図3E-G及び図11)、繊毛の長さに依存してTCHP欠損によりIL-13発現が増強されることが明らかとなった(図4A-C)。更に、Tchp-/-マウスで観察されたように、IL-13投与により、損傷後の筋線維サイズの拡大とM2マクロファージ浸潤を促進した(図6A-F)。これは、過剰なIL-13が筋線維再生の促進に関与していることを示している。但し、M2マクロファージ浸潤におけるIL-13の役割は十分に確認されている(非特許文献36:Palm et al., 2012。)一方、筋線維サイズに対するIL-13の影響については議論の余地がある。
【0036】
IL-13は、受容体サブユニットであるIL-4Rαを共有しているという事実から、IL-4と多くの生物学的特性を共有している。更にIl-4/Il-13-/-及びIl-4rα-/-マウスを使用した以前の研究では、IL-4/IL-13シグナル伝達がSTAT6刺激によるFAP増殖を促進し、FAPが脂肪細胞に分化するのを阻害しながら筋再生を支持することが示された(非特許文献16:Heredia et al., 2013。)。
しかし、筋傷害後、WTマウスとTchp-/-マウスとの間(図1J)またはPBSとIL-13を注射したマウスとの間(図13A-C)でFAP数に有意差は検出されず、IL-13処理がFAPの増加に影響を与えないことin vitroで確認した(図13D)。更に、IL-13投与はin vivoでの脂肪生成分化を制限できず(図13E,F)、Il-4/Il-13-/-及びIl-4rα-/-マウスで観察された表現型がIL-4の阻害に特異的である可能性を示している。代わりに、IL-13の新しい機能を発見した。IL-13はin vitroで筋芽細胞の増殖を直接加速した(図6G,H)。これらのデータは、FAPから放出されたIL-13が、筋芽細胞の増殖とM2マクロファージの極性化を促進することによって、筋線維の再生に寄与することを示している。
【0037】
繊毛は、どのようにしてIL-13産生を調節するのであろうか。骨格筋FAPがST2を発現すること、及びこの発現はTchp-/-マウスで繊毛依存的に増強されることを示した(図4D)。実際、FAPのIL-33処理は、FAPにおいてIL-33/ST2軸の下流エフェクターであるJNK1/2を直接活性化し(非特許文献9:De la Fuente et al., 2015。)、その活性化はTCHP欠損によって増強された(図4E,F)。更に、ST2またはJNK1/2のノックダウンはTchp-/-FAPでIL-13をダウンレギュレーションし(図5)、IL-33/ST2/JNK1/2軸がIL-13発現をアップレギュレートして筋線維の再生を促進することを示している。Hhシグナル伝達が肝外胆管における上皮細胞のIL-33誘導性増殖に関連していることを考慮すると(非特許文献27:Liu et al., 2019。非特許文献40:Razumilava et al., 2018。)、繊毛はHhシグナル伝達を介してST2発現に影響を与える可能性がある。しかし、この点については、骨格筋再生のメカニズムを明らかにするための更なる実験が必要である。
【0038】
要約すると、この研究は、FAPの一次繊毛がインスリン/Akt軸を調節することによってFAPを脂肪細胞に分化させ、ST2/JNK軸を介してIL-13分泌を調節することによって筋再生に重要な役割を果たしていることを明らかにしている。これらの新知見は、繊毛が筋肉の再生を調整する分子メカニズムと、繊毛の欠損によって引き起こされる筋疾患やその他の臨床表現型の根底にある病態生理学的メカニズムの理解を深める。
このように本実施形態によれば、IL-13を用いることにより、筋損傷時の筋再生を促進し、治療に有効に活かすことができた。また、本実施形態の試験方法によれば、筋再生を促進できる薬剤をスクリーニングできる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0039】
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