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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183852
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ステアリングロック装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/0215 20130101AFI20231221BHJP
   E05B 83/00 20140101ALI20231221BHJP
【FI】
B60R25/0215
E05B83/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097626
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 通之
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250KK02
2E250LL18
2E250PP03
2E250RR01
(57)【要約】
【課題】ソレノイドでロックバーを移動させてロックバーの応答速度を向上させることができるとともに、ロックバーの必要な移動距離を確保することができるステアリングロック装置を提供する。
【解決手段】ロックバーRを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、ロックバーRを後退させて没入状態とすることによりステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るステアリングロック装置において、通電により変位可能なプランジャPを有するソレノイドSと、ソレノイドSの変位動作をロックバーRに伝達可能なリンク部材5と、リンク部材5とロックバーRとの間に介在して取り付けられ、プランジャPの変位動作毎にロックバーRを突出状態又は没入状態に切り替える切替部材6とを具備したものである。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材に取り付けられたロックバーを具備し、当該ロックバーを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、前記ロックバーを後退させて没入状態とすることにより前記ステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るステアリングロック装置において、
コイルへの通電により変位可能なプランジャを有するソレノイドと、
前記ソレノイドの変位動作を前記ロックバーに伝達可能な伝達部材と、
前記伝達部材と前記ロックバーとの間に介在して取り付けられ、前記プランジャの変位動作毎に前記ロックバーを突出状態又は没入状態に切り替える切替部材と、
を具備したことを特徴とするステアリングロック装置。
【請求項2】
前記切替部材は、前記伝達部材にて伝達された前記プランジャの変位動作毎に所定角度ずつ回転し、前記ロックバーを突出状態で係止する第1係止位置と前記ロックバーを没入状態で係止する第2係止位置とを交互に切り替える回転子を有することを特徴とする請求項1記載のステアリングロック装置。
【請求項3】
前記伝達部材は、一端部及び他端部を有した長尺状のリンク部材から成ることを特徴とする請求項1記載のステアリングロック装置。
【請求項4】
前記リンク部材は、前記一端部を中心に回転自在とされるとともに、前記他端部が前記切替部材に接続され、且つ、前記一端部と他端部との間に前記プランジャが接続されたことを特徴とする請求項3記載のステアリングロック装置。
【請求項5】
前記リンク部材は、前記一端部が前記プランジャに接続され、且つ、前記他端部が前記切替部材に接続されるとともに、前記一端部と他端部との間の所定位置を中心に回転自在とされたことを特徴とする請求項3記載のステアリングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングロック及びその解除を行わせるためのステアリングロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二輪車等においては、通常、ステアリング(ハンドルバーの回動軸等)にロックバーを係止させてロックすることにより車両の盗難等を防止するためのステアリングロック装置が配設されている。しかるに、本出願人は、例えば特許文献1にて開示されているような、モータの駆動によってロックバーを出没させ得るステアリングロック装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-81347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のステアリングロック装置は、ロックバーの駆動源としてモータが採用されているが、出願人は、ロックバーの応答速度等の向上を図るため、モータに代えてソレノイドを用いることを検討するに至った。しかし、ソレノイドにおけるプランジャの変位量は限られており、ロックバーの必要な移動距離(ストローク)を確保できない場合がある。また、ロックバーを突出状態又は没入状態で保持するために、例えば自己保持型ソレノイドを用いる必要があり、製造コストが嵩んでしまう虞があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ソレノイドでロックバーを移動させてロックバーの応答速度を向上させることができるとともに、ロックバーの必要な移動距離を確保することができるステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ケース部材に取り付けられたロックバーを具備し、当該ロックバーを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、前記ロックバーを後退させて没入状態とすることにより前記ステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るステアリングロック装置において、コイルへの通電により変位可能なプランジャを有するソレノイドと、前記ソレノイドの変位動作を前記ロックバーに伝達可能な伝達部材と、前記伝達部材と前記ロックバーとの間に介在して取り付けられ、前記プランジャの変位動作毎に前記ロックバーを突出状態又は没入状態に切り替える切替部材とを具備したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のステアリングロック装置において、前記切替部材は、前記伝達部材にて伝達された前記プランジャの変位動作毎に所定角度ずつ回転し、前記ロックバーを突出状態で係止する第1係止位置と前記ロックバーを没入状態で係止する第2係止位置とを交互に切り替える回転子を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のステアリングロック装置において、前記伝達部材は、一端部及び他端部を有した長尺状のリンク部材から成ることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のステアリングロック装置において、前記リンク部材は、前記一端部を中心に回転自在とされるとともに、前記他端部が前記切替部材に接続され、且つ、前記一端部と他端部との間に前記プランジャが接続されたことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項3記載のステアリングロック装置において、前記リンク部材は、前記一端部が前記プランジャに接続され、且つ、前記他端部が前記切替部材に接続されるとともに、前記一端部と他端部との間の所定位置を中心に回転自在とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、コイルへの通電により変位可能なプランジャを有するソレノイドと、ソレノイドの変位動作をロックバーに伝達可能な伝達部材と、伝達部材とロックバーとの間に介在して取り付けられ、プランジャの変位動作毎にロックバーを突出状態又は没入状態に切り替える切替部材とを具備したので、ソレノイドでロックバーを移動させてロックバーの応答速度を向上させることができるとともに、ロックバーの必要な移動距離を確保することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、切替部材は、伝達部材にて伝達されたプランジャの変位動作毎に所定角度ずつ回転し、ロックバーを突出状態で係止する第1係止位置とロックバーを没入状態で係止する第2係止位置とを交互に切り替える回転子を有するので、簡易な構成でロックバーを突出状態又は没入状態で保持することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、伝達部材は、一端部及び他端部を有した長尺状のリンク部材から成るので、ロックバーの必要な移動距離を容易に確保することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、リンク部材は、一端部を中心に回転自在とされるとともに、他端部が切替部材に接続され、且つ、一端部と他端部との間にプランジャが接続されたので、リンク部材が一端部を中心に回転しつつプランジャの変位動作を切替部材に伝達させることができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、リンク部材は、一端部がプランジャに接続され、且つ、他端部が切替部材に接続されるとともに、一端部と他端部との間の所定位置を中心に回転自在とされたので、リンク部材が一端部と他端部との間の所定位置を中心に回転しつつプランジャの変位動作を切替部材に伝達させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るステアリングロック装置(ロックバーが突出状態)を示す外観斜視図
図2】同ステアリングロック装置の外観を示す4面図
図3】同ステアリングロック装置(ロックバーが没入状態)を示す外観斜視図
図4】同ステアリングロック装置(カバー部材を取り外した状態)を示す斜視図
図5】同ステアリングロック装置の主要部品を示す斜視図
図6】同ステアリングロック装置の主要部品を示す斜視図
図7】同ステアリングロック装置のケース部材及びそのケース部材に形成された接触板を示す斜視図
図8】同ステアリングロック装置における接触板を示す平面図
図9】同接触板及びその接触板に接続されたソレノイドを示す斜視図
図10】同ステアリングロック装置における切替部材、ロックバー、接点及び接点ケース部材等を示す分解斜視図
図11】同ステアリングロック装置における接点及び接点ケース部材を示す斜視図
図12】同ステアリングロック装置におけるロックバーが突出状態とされ、ステアリングロックされた状態を示す模式図
図13】同ステアリングロック装置におけるロックバーが突出状態のとき、ソレノイドのプランジャが変位してリンク部材を介して切替部材を作動させる状態を示す模式図
図14】同ステアリングロック装置におけるロックバーが没入状態とされ、ステアリングロックが解除された状態を示す模式図
図15】同ステアリングロック装置における切替部材を示す3面図
図16】同ステアリングロック装置における切替部材を示す斜視図
図17】同切替部材を構成する押圧部及び回転子を示す模式図
図18】同切替部材を構成する押圧部及び回転子を示す模式図
図19】本発明の他の実施形態に係るステアリングロック装置(ロックバーが突出状態)を示す外観斜視図
図20】同ステアリングロック装置の外観を示す4面図
図21】同ステアリングロック装置(カバー部材を取り外した状態)を示す斜視図
図22】同ステアリングロック装置の主要部品を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るステアリングロック装置は、二輪車等の車両に取り付けられ、ステアリングロック及びその解除を行わせるためのもので、ケース部材2に取り付けられたロックバーRを具備し、図1に示すように、当該ロックバーRを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、図3に示すように、ロックバーRを後退させて没入状態とすることによりステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るものである。
【0018】
具体的には、本実施形態に係るステアリングロック装置1は、図1~11に示すように、通電により変位可能なプランジャPを有するソレノイドSと、箱型の成形品から成るケース部材2と、ケース部材2の開口を覆うカバー部材3と、伝達部材としてのリンク部材5と、ロックバーRと、ケース7と、押圧部8及び回転子9にて構成された切替部材6と、接点ケース部材10とを具備して構成されている。
【0019】
ソレノイドSは、ケース部材2の所定位置に取り付けられて通電によりプランジャPを変位させ得るアクチュエータであり、その内部に配設されたコイル(不図示)への通電により磁気を生じさせ、その磁力によりプランジャPを変位させ得るよう構成されている。すなわち、ソレノイドSは、自己保持型ソレノイドとは異なり、永久磁石等の保持手段を具備していないため、内部のコイルに対する通電時間だけプランジャPを変位させ得る構成とされている。
【0020】
具体的には、本実施形態に係るソレノイドPは、内部のコイルに通電されない状態において、図12に示すように、プランジャPがコイルスプリングB1の付勢力で突出した状態が維持されるとともに、内部のコイルに通電されると、当該コイルに生じた磁気によって、図13に示すように、プランジャPがコイルスプリングB1の付勢力に抗して吸引されて同図中左側に変位するようになっている。
【0021】
ケース部材2は、下方に開口したカップ状部材から成り、図7に示すように、車体側から延設された配線の先端部を接続可能なコネクタ部2aと、ロックバーRを挿通可能な切欠き部2bと、ソレノイドSを臨ませる開口部2cとが形成されている。そして、かかるケース部材2には、図4に示すように、ソレノイドS、ロックバーR、リンク部材5及び切替部材6等が収容されるとともに、カバー部材3が取り付けられることにより、収容空間が閉じられるようになっている。なお、ケース部材2の一端側には、図1~3に示すように、締結部材4が取り付けられ、当該締結部材4によって車両の所定位置にステアリングロック装置1が取り付けられることとなる。
【0022】
リンク部材5(伝達部材)は、ソレノイドSの変位動作を切替部材6を介してロックバーRに伝達可能なもので、一端部5a及び他端部5bを有した長尺状のリンク部材から成る。本実施形態に係るリンク部材5は、一端部5aを中心に回転自在とされるとともに、他端部5bが切替部材6の押圧部8に接続され、且つ、一端部5aと他端部5bとの間にプランジャPが接続されている。
【0023】
より具体的には、リンク部材5の一端部5aは、ケース部材2に突出形成された軸部Laを挿通して回転自在に取り付けられるとともに、他端部5bは、切替部材6における押圧部8の基端に突出形成された軸部Lbを挿通して回転自在に取り付けられている。また、リンク部材5における一端部5aと他端部5bとの間の部位は、プランジャPの突端に突出形成された軸部Lcを挿通して回転自在に取り付けられている。
【0024】
これにより、ソレノイドSのコイルに通電してプランジャPが突出した状態(図12参照)から吸引された状態(図13参照)まで変位すると、リンク部材5が一端部5aを中心として図13中矢印方向に回動し、その回動に伴って他端部5bが押圧部8を押圧することにより、切替部材6を作動させることができる。そして、ソレノイドSのコイルに対する通電が終了すると、プランジャPは、コイルにて吸引される力が消滅するので、コイルスプリングB1の付勢力にて変位し、図14に示すように、突出した状態まで戻ることとなる。
【0025】
ロックバーRは、図4~6に示すように、ケース部材2に取り付けられた軸状部材から成り、ソレノイドSの通電により変位したプランジャP及びコイルスプリングB2の付勢力により前進又は後退して突出状態(図1参照)又は没入状態(図5参照)とされる。そして、ロックバーRが突出状態となると、図12、13に示すように、車両のステアリングWに形成された凹部KにロックバーRの先端部が係止してステアリングロックが行われるとともに、ロックバーRが没入状態となると、図14に示すように、凹部KからロックバーRの先端部が離間してステアリングWの凹部Kに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るようになっている。
【0026】
接点ケース部材10は、図10、11に示すように、ロックバーRを挿通可能な挿通孔10aを有したブロック状部材から成り、挿通孔10aの周縁部にロックバーRのフランジ部Raが当接して連結可能とされている。かかる接点ケース部材10の底面には、図10、11に示すように、導電性金属から成る接点11が取り付けられてり、接点ケース部材10の移動に伴って接点11がケース部材2の天面Tを摺動可能とされている。
【0027】
切替部材6は、リンク部材5とロックバーRとの間に介在して取り付けられ、プランジャPの変位動作毎にロックバーRを突出状態又は没入状態に切り替えるもので、所謂ノック式ボールペンの芯出し機構と称されるもの(押圧操作する毎に芯が突出状態及び没入状態を繰り返す機構)と同様の構成を具備している。すなわち、切替部材6は、ソレノイドSに通電してプランジャPが動作して突出した状態から吸引された状態となる毎に、ロックバーRが突出状態及び没入状態を繰り返すよう構成されている。
【0028】
具体的には、切替部材6は、図15~18に示すように、挿通孔7bが形成されたケース7と、ケース7の挿通孔7bに挿通された押圧部8及び回転子9とを有しており、押圧部8には、複数の凸条部fが周方向に亘って等間隔に一体形成されるとともに、回転子9には、複数の凸条部gが周方向に亘って等間隔に一体形成されている。なお、ケース7及び押圧部8には、リンク部材5の他端部5bを挿通して干渉を避けるための切欠き形状7a及び溝8aがそれぞれ形成されるとともに、押圧部8の基端には、軸部Lbを嵌入して取り付けるための取付孔8bが形成されている。
【0029】
また、ケース7に形成された挿通孔7bの内周面には、図10、16に示すように、周方向に亘って複数の凸条部7cが等間隔に一体形成されており、凸条部7cが成す凹凸形状の凹部に押圧部8の凸条部fが嵌入して組付けられている。これにより、押圧部8は、ケース7に対する回転が規制されつつ挿通孔7bの軸方向への摺動が許容されるようになっている。さらに、押圧部8は、軸方向に貫通する挿通孔8cを有した筒状とされており、図17、18に示すように、回転子9の突出部9aが挿通孔8cに挿通可能とされている。
【0030】
なお、回転子9の一端には、フランジ部9bが一体形成されており、図12~14に示すように、回転子9のフランジ部9bとロックバーRのフランジ部Raとが当接して組付けられている。また、図12~14に示すように、接点ケース部材10、ロックバーRのフランジ部Ra及び回転子9のフランジ部9bが重ねられて組付けられており、コイルスプリングB2にて接点ケース部材10、ロックバーR及び回転子9が同図中右側に付勢されるようになっている。
【0031】
回転子9は、リンク部材5(伝達部材)にて伝達されたプランジャPの変位動作毎に所定角度ずつ回転し、ロックバーRを突出状態で係止する第1係止位置とロックバーRを没入状態で係止する第2係止位置とを交互に切り替えるものである。すなわち、ロックバーRが突出状態(図12参照)のとき、回転子9は第1係止位置とされ、回転子9の凸条部gの突端面g1がケース7の凸条部7cの突端面7caと当接してロックバーRを突出状態で係止するようになっている。このように回転子9が第1係止位置にあるとき、図17に示すように、突出部9aが押圧部8の挿通孔8cに挿通した状態とされ、且つ、凸条部gの突端面g1と凸条部fの突端面f1とが所定寸法離間した状態とされている。
【0032】
この状態からソレノイドSに通電してプランジャPを吸引した状態まで変位させると、図13に示すように、リンク部材5の他端部5bが押圧部8を同図中左側に押圧するとともに、図18に示すように、凸条部fの突端面f1が凸条部gの突端面g1の一部に当接して押圧する。かかる凸条部fの突端面f1は、軸方向(押圧部8の移動方向)に対して偏向(所定角度勾配)して形成されており、回転子9を回転方向に押圧することとなる。なお、プランジャPは、ソレノイドSの通電後、コイルスプリングB1の付勢力にて突出した状態(図12の状態)となるので、リンク部材5も元の状態まで戻ることとなる。
【0033】
そして、回転子9がケース7に対して回転すると、当該回転子9の凸条部gがケース7の凸条部7cから外れて係止が解かれるとともに、凸条部gの突端面g1が凸条部fの突端面f1に当接して係止された状態が維持されつつコイルスプリングB2の付勢力によって回転子9が第2係止位置まで移動する(図14参照)。このとき、回転子9の移動と同時に、コイルスプリングB1の付勢力によってロックバーR及び接点ケース部材10も同方向(図14中右側)に移動するので、ロックバーRを没入状態で係止することができる。
【0034】
その後、再びソレノイドSに通電してプランジャPを吸引した状態(図13参照)まで変位させると、リンク部材5の他端部5bが押圧部8を図13中左側に押圧し、凸条部fの突端面f1が凸条部gの突端面g1の一部に当接した状態を維持しつつ押圧部8と共に回転子9を移動させる。なお、プランジャPは、ソレノイドSの通電後、コイルスプリングB1の付勢力にて突出した状態(図12の状態)となるので、リンク部材5も元の状態まで戻ることとなる。
【0035】
そして、回転子9は、コイルスプリングB2の付勢力に抗してケース7における凸条部7cの突端面7caまで移動すると、ケース7に対して回転して第2係止位置となり、凸条部gの突端面g1が凸条部7cの突端面7caに係止することとなる。このとき、回転子9の移動と同時に、コイルスプリングB1の付勢力に抗してロックバーR及び接点ケース部材10も同方向(図14中左側)に移動するので、ロックバーRを突出状態で係止することができる。
【0036】
このように、ソレノイドSに通電する毎に回転子9が第1位置と第2位置との間で移動するので、ソレノイドSに通電する毎にロックバーRを突出状態と没入状態との間で移動させることができる。したがって、ロックバーRを突出状態又は没入状態で保持させるために、ソレノイドSに継続的に通電させる必要がなく、バッテリの消耗やソレノイドSの過熱等を防止することができるとともに、高価な自己保持型ソレノイドを用いる必要がなく、製造コストを低下させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態に係るロックバーRの基端側に連結された接点ケース部材10には、既述のように、接点11が取り付けられており、ロックバーRが突出状態と没入状態との間で移動する際、接点11がケース部材2の天面T上を摺動し得るようになっている。また、ケース部材の天面Tには、図7に示すように、接触板12が形成されている。この接触板12は、ケース部材2の天面Tにインサート成形された金属部材(導電性部材)から成り、図8、9に示すように、第1接触板12a、第2接触板12b、第3接触板12c、第4接触板12d、第5接触板12eを有して構成されている。
【0038】
第1接触板12a及び第2接触板12bは、ソレノイドSのプラス端子及びマイナス端子から延設された配線hに接続されるとともに、端子部a、bを介して制御手段14と接続可能とされている。かかる制御手段14は、車体側に設置されたマイコン等から成り、端子部a、b及び配線hを介してソレノイドSと電気的に接続され、任意のタイミングでソレノイドSに通電可能とされている。
【0039】
第3接触板12c、第4接触板12d及び第5接触板12eは、接点ケース部材10と共に接点11が移動する際、接点11との接触位置に応じた電気回路が形成されるもので、端子部c~eを介して検出手段15と接続されている。かかる検出手段15は、制御手段14と同様、車体側に設置されたマイコン等から成り、第3接触板12c、第4接触板12d及び第5接触板12eとそれぞれ接続されている。
【0040】
しかるに、ロックバーRが突出状態とされて接点11が位置H1(図8、9参照)にあるとき、第3接触板12cと第5接触板12eとの間を導通して電気回路が形成されるとともに、ロックバーRが没入状態とされて接点11が位置H2(図8、9参照)にあるとき、第4接触板12dと第5接触板12eとの間を導通して電気回路が形成されるようになっている。
【0041】
したがって、検出手段15は、第3接触板12c、第4接触板12d及び第5接触板12eとそれぞれ接続されているので、接点11と接触板12(第3接触板12c、第4接触板12d及び第5接触板12e)との間に形成された電気回路に基づいてロックバーRの位置を検出することができ、例えば非接触センサ等の別個のセンサを具備することなく、ロックバーRの突出状態又は没入状態を検出することができる。
【0042】
本実施形態によれば、コイルへの通電により変位可能なプランジャPを有するソレノイドSと、ソレノイドSの変位動作をロックバーRに伝達可能なリンク部材5と、リンク部材5とロックバーRとの間に介在して取り付けられ、プランジャPの変位動作毎にロックバーRを突出状態又は没入状態に切り替える切替部材6とを具備したので、ソレノイドSでロックバーRを移動させてロックバーRの応答速度を向上させることができるとともに、ロックバーRの必要な移動距離を確保することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る切替部材6は、リンク部材5にて伝達されたプランジャPの変位動作毎に所定角度ずつ回転し、ロックバーRを突出状態で係止する第1係止位置とロックバーRを没入状態で係止する第2係止位置とを交互に切り替える回転子9を有するので、簡易な構成でロックバーRを突出状態又は没入状態で保持することができる。
【0044】
さらに、ソレノイドSの変位動作をロックバーRに伝達可能な伝達部材は、一端部5a及び他端部5bを有した長尺状のリンク部材5から成るので、ロックバーRの必要な移動距離を容易に確保することができる。またさらに、本実施形態に係るリンク部材5は、一端部5aを中心に回転自在とされるとともに、他端部5bが切替部材6に接続され、且つ、一端部5aと他端部5bとの間にプランジャPが接続されたので、リンク部材5が一端部5aを中心に回転しつつプランジャPの変位動作を切替部材6に伝達させることができる。
【0045】
なお、本実施形態に係るステアリングロック装置1によれば、ロックバーRに取り付けられた接点11と、接点11との接触位置に応じた電気回路が形成される接触板12(第3接触板12c、第4接触板12d及び第5接触板12e)とを有するとともに、接点11と接触板12との間に形成された電気回路に基づいてロックバーRの位置を検出可能な検出手段15を具備したので、ロックバーRの位置決め確認のためのセンサを不要とすることができ、製造コストを抑制することができる。
【0046】
加えて、本実施形態に係る接触板12は、ケース部材2にインサート成形された金属部材から成るので、ケース部材2に対する接触板12の位置ずれを防止することができ、ロックバーRの位置を精度よく検出することができる。特に、接触板12は、下方に開口したカップ状のケース部材2の天面Tに形成されているので、雨水等に浸ってしまうのを抑制することができ、電気的な不具合を回避することができる。
【0047】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図19~22に示すように、一端部5aがプランジャPに接続され、且つ、他端部5bが切替部材6に接続されるとともに、一端部5aと他端部5bとの間の所定位置を中心に回転自在とされたリンク部材5(伝達部材)を用いるようにしてもよい。
【0048】
この場合、リンク部材5の一端部5aは、プランジャPに突出形成された軸部Laを挿通して回転自在に取り付けられるとともに、他端部5bは、切替部材6における押圧部8の基端に突出形成された軸部Lbを挿通して回転自在に取り付けられている。また、リンク部材5における一端部5aと他端部5bとの間の部位は、ケース部材2に突出形成された軸部Lcを挿通して回転自在に取り付けられている。
【0049】
これにより、図22に示すように、ソレノイドSのコイルに通電してプランジャPが突出した状態から吸引された状態まで変位すると、リンク部材5が一端部5aと他端部5bとの間の位置を中心として回動し、その回動に伴って他端部5bが押圧部8を押圧することにより、切替部材6を作動させることができる。そして、ソレノイドSのコイルに対する通電が終了すると、プランジャPは、コイルにて吸引される力が消滅するので、コイルスプリングB1の付勢力にて変位し、突出した状態まで戻ることとなる。
【0050】
かかる他の実施形態によれば、リンク部材5は、一端部5aがプランジャPに接続され、且つ、他端部5bが切替部材6に接続されるとともに、一端部5aと他端部5bとの間の所定位置を中心に回転自在とされたので、リンク部材5が一端部5aと他端部5bとの間の所定位置を中心に回転しつつプランジャPの変位動作を切替部材6に伝達させることができる。
【0051】
なお、本実施形態においては、プランジャPの変位動作をロックバーRに伝達可能な伝達部材としてリンク部材5を用いているが、他の形態の伝達部材を用いるようにしてもよい。なお、本実施形態においては、二輪車に適用されているが、他の形態の車両に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
コイルへの通電により変位可能なプランジャを有するソレノイドと、ソレノイドの変位動作をロックバーに伝達可能な伝達部材と、伝達部材とロックバーとの間に介在して取り付けられ、プランジャの変位動作毎にロックバーを突出状態又は没入状態に切り替える切替部材とを具備したステアリングロック装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 ステアリングロック装置
2 ケース部材
2a コネクタ部
2b 切欠き部
2c 開口部
3 カバー部材
4 締結部材
5 リンク部材(伝達部材)
5a 一端部
5b 他端部
6 切替部材
7 ケース
7a 切欠き形状
7b 挿通孔
7c 凸条部
8 押圧部
8a 溝
8b 取付孔
8c 挿通孔
9 回転子
9a 突出部
9b フランジ部
10 接点ケース部材
10a 挿通孔
11 接点
12 接触板
14 制御手段
15 検出手段
S ソレノイド
P プランジャ
R ロックバー
Ra フランジ部
B1、B2 コイルスプリング
T 天面
W ステアリング
K 凹部
f、g 凸条部
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
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図22