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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183854
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ステアリングロック装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/0215 20130101AFI20231221BHJP
   E05B 83/00 20140101ALI20231221BHJP
【FI】
B60R25/0215
E05B83/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097628
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】水野 孝義
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH07
2E250JJ43
2E250KK02
2E250LL18
2E250PP03
2E250RR01
(57)【要約】
【課題】車両における装置の取付位置やステアリング近傍のレイアウトの自由度を向上させることができるステアリングロック装置を提供する。
【解決手段】ケース部材2に取り付けられたロックバーRを具備し、当該ロックバーRを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、ロックバーRを後退させて没入状態とすることによりステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るステアリングロック装置1において、車両のフロントフォークを連結するブラケットBに取り付けられるとともに、ロックバーRが車両のステアリングの回動軸Nと略平行な方向に移動可能に取り付けられたものである。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材に取り付けられたロックバーを具備し、当該ロックバーを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、前記ロックバーを後退させて没入状態とすることにより前記ステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るステアリングロック装置において、
車両のフロントフォークを連結するブラケットに取り付けられるとともに、前記ロックバーが前記車両のステアリングの回動軸と略平行な方向に移動可能に取り付けられたことを特徴とするステアリングロック装置。
【請求項2】
前記ブラケットに前記ケース部材の形状に倣った凹部が形成され、当該凹部に前記ケース部材が嵌入されたことを特徴とする請求項1記載のステアリングロック装置。
【請求項3】
前記ロックバーは、上方に向かって前進することにより突出状態となってステアリングロックを行わせるとともに、下方に向かって後退することにより没入状態となってステアリングロックを解除することを特徴とする請求項2記載のステアリングロック装置。
【請求項4】
前記ロックバーを突出状態で保持する付勢部材と、
コイルへの通電により生じる磁力及び永久磁石の磁力により変位可能なプランジャを有するとともに、前記プランジャが前記ロックバーと連結されて前記永久磁石の磁力により当該ロックバーを没入状態で保持する自己保持型ソレノイドと、
を具備したことを特徴とする請求項1記載のステアリングロック装置。
【請求項5】
前記プランジャと前記ロックバーとを略直交する方向に連結し、前記プランジャの変位方向に対して略直交する方向に前記ロックバーを移動させる連結部材を具備したことを特徴とする請求項4記載のステアリングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングロック及びその解除を行わせるためのステアリングロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二輪車等においては、通常、ステアリング(ハンドルバーの回動軸等)にロックバーを係止させてロックすることにより車両の盗難等を防止するためのステアリングロック装置が配設されている。しかるに、本出願人は、例えば特許文献1にて開示されているような、モータの駆動によってロックバーを出没させ得るステアリングロック装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-81347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のステアリングロック装置は、車両のステアリングに対して略直交方向に対してロックバーを移動可能とされているため、車両におけるステアリングロック装置の取付位置やステアリング近傍のレイアウトが制限されてしまうという不具合がある。また、車両によっては、ステアリングに対して略直交方向に対してロックバーを移動させるためのスペースがほとんどないものもある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、車両における装置の取付位置やステアリング近傍のレイアウトの自由度を向上させることができるステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ケース部材に取り付けられたロックバーを具備し、当該ロックバーを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、前記ロックバーを後退させて没入状態とすることにより前記ステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るステアリングロック装置において、車両のフロントフォークを連結するブラケットに取り付けられるとともに、前記ロックバーが前記車両のステアリングの回動軸と略平行な方向に移動可能に取り付けられたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のステアリングロック装置において、前記ブラケットに前記ケース部材の形状に倣った凹部が形成され、当該凹部に前記ケース部材が嵌入されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のステアリングロック装置において、前記ロックバーは、上方に向かって前進することにより突出状態となってステアリングロックを行わせるとともに、下方に向かって後退することにより没入状態となってステアリングロックを解除することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のステアリングロック装置において、前記ロックバーを突出状態で保持する付勢部材と、コイルへの通電により生じる磁力及び永久磁石の磁力により変位可能なプランジャを有するとともに、前記プランジャが前記ロックバーと連結されて前記永久磁石の磁力により当該ロックバーを没入状態で保持する自己保持型ソレノイドとを具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のステアリングロック装置において、前記プランジャと前記ロックバーとを略直交する方向に連結し、前記プランジャの変位方向に対して略直交する方向に前記ロックバーを移動させる連結部材を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、車両のフロントフォークを連結するブラケットに取り付けられるとともに、ロックバーが車両のステアリングの回動軸と略平行な方向に移動可能に取り付けられたので、ブラケットを利用してステアリングロック装置をステアリング近傍に容易に配置することができるとともに、車両における装置の取付位置やステアリング近傍のレイアウトの自由度を向上させることができる。また、ステアリングロック装置を取り付けるための部材が不要となるため、製造コストの低下を図ることができ、さらに、強度及び剛性の高いブラケットにステアリングロック装置を取り付けるので、ステアリングロック装置を簡素化・軽量化することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ブラケットにケース部材の形状に倣った凹部が形成され、当該凹部にケース部材が嵌入されたので、ステアリングロック装置をブラケットに安定して固定させることができる。また、強度及び剛性の高いブラケットにステアリングロック装置を嵌入させるので、ステアリングロック装置の強度及び剛性をブラケットに依存することができ、ステアリングロック装置をより簡素化且つ軽量化することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、ロックバーは、上方に向かって前進することにより突出状態となってステアリングロックを行わせるとともに、下方に向かって後退することにより没入状態となってステアリングロックを解除するので、ロックバーを円滑に上下させてステアリングロック及びその解除を行わせることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、ロックバーを突出状態で保持する付勢部材と、コイルへの通電により生じる磁力及び永久磁石の磁力により変位可能なプランジャを有するとともに、プランジャがロックバーと連結されて永久磁石の磁力により当該ロックバーを没入状態で保持する自己保持型ソレノイドとを具備したので、ソレノイドでロックバーを移動させることができるとともに、コイルに通電することなくロックバーの突出状態及び没入状態を保持することができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、プランジャとロックバーとを略直交する方向に連結し、前記プランジャの変位方向に対して略直交する方向にロックバーを移動させる連結部材を具備したので、プランジャの変位方向とロックバーの移動方向とを容易に異ならせることができ、車両のステアリング近傍におけるレイアウトの自由度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るステアリングロック装置(ロックバーが突出状態)を示す外観斜視図
図2】同ステアリングロック装置の外観を示す4面図
図3図2におけるIII-III線断面図
図4】同ステアリングロック装置(ロックバーが没入状態)を示す外観斜視図
図5】同ステアリングロック装置であってロックバーが没入状態を示す断面図
図6】同ステアリングロック装置におけるケース部材を取り外した状態を示す4面図
図7】同ステアリングロック装置におけるケース部材を取り外した状態であってロックバーが突出状態を示す斜視図
図8】同ステアリングロック装置におけるケース部材を取り外した状態であってロックバーが没入状態を示す斜視図
図9】同ステアリングロック装置におけるケース部材を示す斜視図
図10】同ケース部材を示す4面図
図11】同ステアリングロック装置における固定端子板を示す斜視図
図12】同固定端子板を示す平面図及び裏面図
図13】同ステアリングロック装置における連結部材を示す斜視図
図14】同ステアリングロック装置がスクータ型の小型車両に取り付けられた状態を示す正面図
図15】同小型車両に取り付けられたステアリングロック装置のロックバーが突出してステアリングロックが行われた状態を示す斜視図
図16】同ステアリングロック装置が取り付けられた車両のブラケットを示す底面図
図17図16におけるXVII-XVII線断面図
図18】同ステアリングロック装置が鞍乗り型の大型車両に取り付けられた状態を示す正面図
図19】同ステアリングロック装置が取り付けられた車両のブラケットを示す底面図
図20図19におけるXX-XX線断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るステアリングロック装置1は、二輪車等の車両に取り付けられ、ステアリングロック及びその解除を行わせるためのもので、ケース部材2に取り付けられたロックバーRを具備し、図1~3に示すように、当該ロックバーRを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、図4、5に示すように、ロックバーRを後退させて没入状態とすることによりステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るものである。
【0018】
具体的には、本実施形態に係るステアリングロック装置1は、図1~13に示すように、ロックバーRと、ロックバーRを突出状態で保持する付勢部材5と、通電により変位可能なプランジャPを有する自己保持型ソレノイドSと、箱型の成形品から成るケース部材2と、ケース部材2の開口を覆うカバー部材3と、連結部材6と、制御手段12及び検出手段13とを具備して構成されている。
【0019】
ロックバーRは、図6、7に示すように、ケース部材2に取り付けられた軸状部材から成り、自己保持型ソレノイドSの通電により変位したプランジャP及び付勢部材5の付勢力により前進又は後退して突出状態(図1参照)又は没入状態(図4参照)とされる。そして、ロックバーRが突出状態となると、図3に示すように、車両のステアリングWに形成された凹部KにロックバーRの先端部が係止してステアリングロックが行われるとともに、ロックバーRが没入状態となると、図5に示すように、凹部KからロックバーRの先端部が離間してステアリングWの凹部Kに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るようになっている。
【0020】
ケース部材2は、図9、10に示すように、上方に開口したカップ状部材から成り、底面には、水抜き孔2aが形成されるとともに、カバー部材3により上方の開口が覆われている。カバー部材3は、図5、6に示すように、板状の金属部品から成り、その所定部位には、ロックバーRを挿通して前進又は後退させ得る開口部3aが形成されている。また、カバー部材3は、ステアリングロック装置1が車両に組付けられた状態で上方に位置するようになっている。
【0021】
そして、かかるカバー部材3には、図6~8に示すように、自己保持型ソレノイドS、ロックバーR、連結部材6等が取り付けられるとともに、ケース部材2により、収容空間が閉じられるようになっている。なお、カバー部材3には、図1~5に示すように、締結部材4が取り付けられ、当該締結部材4によって車両の所定位置にステアリングロック装置1が取り付けられることとなる。
【0022】
付勢部材5は、図6に示すように、捩りコイルばねから成り、その付勢力によりロックバーRを突出方向(図3中上方)に付勢することにより突出状態で保持し得るものである。かかる付勢部材5は、捩りコイルばねに限らず、他の形態のスプリング(コイルスプリング等)や弾性体(弾性を有したゴム材や樹脂等)であってもよい。
【0023】
自己保持型ソレノイドSは、ケース部材2の所定位置に取り付けられて通電によりプランジャPを変位させ得るアクチュエータであり、図3図5~8に示すように、コイルCと、プランジャPと、永久磁石Ma、Mbと、パイプ状部材10と、フレーム部Fとを有して構成されている。また、本実施形態に係る自己保持型ソレノイドSは、コイルCへの通電により生じる磁力及び永久磁石Ma、Mbの磁力により変位可能なプランジャPを有するとともに、プランジャPがロックバーRと連結されて永久磁石Ma、Mbの磁力により当該ロックバーRを没入状態で保持し得るものである。
【0024】
フレーム部Fは、自己保持型ソレノイドSの筐体を構成するもので、図6、7に示すように、コ字状に折り曲げ加工された金属部品から成り、コイルC、プランジャP、永久磁石Ma、Mb及びパイプ状部材10が取り付けられるとともに、カバー部材3の所定位置に固定されている。なお、フレーム部Fの端部には、図5及び図7、8に示すように、板状の蓋部材Faがかしめ等により固定されている。
【0025】
コイルCは、配線h1、h2(図6参照)を介して通電可能とされ、通電により磁気を生じさせて、その磁力によりプランジャPを変位させ得るよう構成されている。プランジャPは、パイプ状部材10内に収容されるとともに、基端部側がコイルC内に位置して組付けられている。なお、フレーム部Fには、受け部材11(図3、5参照)が取り付けられており、当該受け部材11にパイプ状部材10の基端が固定されるとともに、プランジャPの基端部P2を受け得るようになっている。
【0026】
かかるパイプ状部材10は、例えば真鍮など高い電気伝導性を有した円筒状の金属部品から成り、内部にプランジャPを変位可能に収容するとともに永久磁石Ma、Mbが取り付けられている。永久磁石Ma、Mbは、互いに同極(S極どうし又はN極どうし)のものを2つ組み合わせ、パイプ状部材10の外周面とフレーム部Fの内周面との間に固定されたものである。
【0027】
本実施形態に係る連結部材6は、図3、5、7、8に示すように、自己保持型ソレノイドSのプランジャPとロックバーRとを略直交する方向に連結し、プランジャPの変位方向に対して略直交する方向にロックバーRを移動させるもので、図13に示すように、第1連結溝6aと、第2連結溝6bと、挿通孔6cとを有して構成されている。
【0028】
第1連結溝6aは、プランジャPの先端部に形成された突出部L1を挿通してプランジャPと連結し得るとともに、第2連結溝6bは、ロックバーRに形成された突出部L2を挿通してロックバーRと連結し得るようになっている。また、挿通孔6cは、カバー部材3に形成された突出部L3を挿通し、連結部材6をカバー部材3に対して揺動自在とされている。なお、プランジャPの先端部には、挿通孔P1が形成されており、当該挿通孔P1に突出部L1が挿通されるとともに、プランジャPの基端部P2を受け部材11が受け得るようになっている。
【0029】
さらに、本実施形態に係る連結部材6は、図13に示すように、所定部位に接点7が取り付けられている。これにより、連結部材6が突出部L3を中心として揺動するのに伴って接点7も移動し得るようになっている。かかる接点7と対向する位置には、図11、12に示すように、第1接触板9a、第2接触板9b及び第3接触板9cを有した固定端子板8が取り付けられている。
【0030】
固定端子板8は、その一方の面において接点7を摺動させ得るもので、第1接触板9a、第2接触板9b及び第3接触板9cからそれぞれ配線h3~h5が延設されており、これら配線h3~h5は、検出手段13と接続されている。かかる検出手段13は、車体側に設置されたマイコン等から成り、ロックバーRが突出状態とされて接点7が位置H1(図12参照)にあるとき、第1接触板9aと第3接触板9cとの間を導通して電気回路が形成されるとともに、ロックバーRが没入状態とされて接点7が位置H2(図12参照)にあるとき、第2接触板9bと第3接触板9cとの間を導通して電気回路が形成されるようになっている。
【0031】
したがって、検出手段13は、第1接触板9a、第2接触板9b及び第3接触板9cとそれぞれ接続されているので、接点7と第1接触板9a、第2接触板9b及び第3接触板9cとの間に形成された電気回路に基づいてロックバーRの位置を検出することができ、例えば非接触センサ等の別個のセンサを具備することなく、ロックバーRの突出状態又は没入状態を検出することができる。
【0032】
一方、本実施形態においては、図6に示すように、配線h1、h2を介して自己保持型ソレノイドSと制御手段12とが接続可能とされている。かかる制御手段12は、車体側に設置されたマイコン等から成り、配線h1、h2を介して自己保持型ソレノイドSと電気的に接続され、任意のタイミングで自己保持型ソレノイドSのコイルCに通電可能とされている。
【0033】
そして、コイルCに通電されない状態において、永久磁石Ma、Mbの磁力によるプランジャPの吸引力は、付勢部材5の付勢力より大きく設定されており、図5に示すように、プランジャPを吸引した状態が維持され、ロックバーRの没入状態が保持されるようになっている。この没入状態からコイルCに対して所定方向に電流を流して通電(順方向の通電)すると、コイルCに生じた磁力と永久磁石Ma、Mbによる磁力とが互いに打ち消し合うこととなり、図3に示すように、付勢部材5の付勢力によってプランジャPがパイプ状部材10内を摺動してロックバーRが突出状態とされる。
【0034】
さらに、この突出状態からコイルCに対して所定方向とは逆方向に電流を流して通電(逆方向の通電)すると、コイルCで生じる磁力と永久磁石Ma、Mbの磁力とが同一方向に作用することとなり、図5に示すように、コイルCで生じる磁力及び永久磁石Ma、Mbの磁力によってプランジャPがパイプ状部材10内を摺動してロックバーRが没入状態とされる。かかる没入状態において通電を終了させると、永久磁石Ma、Mbの磁力によってロックバーRの没入状態が保持されることとなる。
【0035】
したがって、自己保持型ソレノイドSによれば、コイルCに通電されない状態において、永久磁石Ma、Mbの磁力によってロックバーRの没入状態が保持されるとともに、コイルCに対する所定方向の電流の付与(順方向の通電)によりロックバーRを突出状態まで移動させ、且つ、コイルCに対する所定方向とは反対方向の電流の付与(逆方向の通電)によりロックバーRを没入状態まで移動させることができる。
【0036】
しかるに、例えば、ロックバーRの係止が不良であり不用意な負荷が付与されていて没入状態にならない場合、コイルCに逆方向の通電をしてロックバーRを突出状態から没入状態に移動させようとしても、突出状態が維持されることとなる。そこで、本実施形態においては、コイルCに通電(逆方向の通電)してプランジャPを吸引し、且つ、検出手段13にてロックバーRが突出状態の位置にあることが検出されたとき、制御手段12によってコイルCに所定回数繰り返し通電するよう制御されるようになっている。
【0037】
このように、本実施形態においては、検出手段13にてロックバーRの位置を検出することにより、係止不良等によりロックバーRが突出状態から没入状態にならないことを把握することができるので、制御手段12によってコイルCに所定回数繰り返し通電(例えば1秒に1回、複数回数繰り返し通電)することにより、係止不良の解消を促すことができ、ロックバーRを没入状態とすることができる。
【0038】
ここで、本実施形態に係るステアリングロック装置1は、図14~17に示すように、車両のフロントフォークDを連結するブラケットBに取り付けられるとともに、ロックバーRは、車両のステアリングの回動軸Nと略平行な方向(図17における上下方向)に移動可能に取り付けられている。なお、車両のハンドルバーJ、ハンドルバーJの操作に伴って回転する回動軸N、および回動軸Nを収容する外筒部Tにより車両のステアリングWが構成されている。
【0039】
本実施形態においては、例えば小型のスクータから成る自動二輪車に適用されており、フロントフォークDを連結するブラケットB(アッパブラケット)の所定位置(例えばブラケットBにおける回動軸Nより車両前方側の位置)にステアリングロック装置1が取り付けられている。また、ブラケットBには、図16、17に示すように、ステアリングロック装置1のケース部材2の形状(外観形状)に倣った凹部Baが形成されており、かかる凹部Baにケース部材2が嵌入されている。
【0040】
しかるに、ステアリングロック装置1がブラケットBに取り付けられた状態において、ソレノイドSのコイルCに対して通電または通電の停止を行うことにより、ロックバーRが回動軸Nと略平行な方向(上下方向)に移動するよう構成されている。そして、ロックバーRが上方に向かって前進することにより突出状態となると、図15に示すように、当該ロックバーRの先端部が外筒部Tの下部において突出形成された突出部Taに係止してステアリングロックが行われるとともに、ロックバーRが下方に向かって後退することにより没入状態となると、ロックバーRの先端部が突出部Taから離間してステアリングロックが解除されることとなる。
【0041】
本実施形態に係るステアリングロック装置1によれば、車両のフロントフォークDを連結するブラケットBに取り付けられたので、ブラケットBを利用してステアリングロック装置1をステアリング近傍に容易に配置することができるとともに、ステアリングロック装置1の取り付け位置やステアリング近傍のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、ステアリングロック装置1を取り付けるための部材が不要となるため、製造コストの低下を図ることができ、さらに、強度及び剛性の高いブラケットBにステアリングロック装置1を取り付けるので、ステアリングロック装置1を簡素化及び軽量化することができる。さらに、本実施形態によれば、ステアリング近傍のワイヤーハーネス配策の自由度を向上させることができる。すなわち、ステアリング近傍には、ハンドルバーJに取り付けられる電装品のワイヤーハーネスが配策されるが、ブラケットBにステアリングロック装置1を取り付けることで、ワイヤーハーネスの配策のためのガイド部材や保護部材の配置の自由度を増したり、或いはこれらの部材を廃止したりすることができる。
【0043】
さらに、ブラケットBにケース部材2の形状に倣った凹部Baが形成され、当該凹部Baにケース部材2が嵌入されるとともに、ロックバーRは、上方に向かって前進することにより突出状態となってステアリングロックを行わせるとともに、下方に向かって後退することにより没入状態となってステアリングロックを解除するので、ステアリングロック装置1をブラケットに安定して固定させることができるとともに、ロックバーRを円滑に上下させてステアリングロック及びその解除を行わせることができる。また、強度及び剛性の高いブラケットBにステアリングロック装置1のケース部材2を嵌入させるので、ステアリングロック装置1の強度及び剛性をブラケットBに依存することができ、ステアリングロック装置1をより簡素化且つ軽量化することができる。
【0044】
またさらに、ロックバーRを突出状態で保持する付勢部材5と、コイルCへの通電により生じる磁力及び永久磁石(Ma、Mb)の磁力により変位可能なプランジャPを有するとともに、プランジャPがロックバーRと連結されて永久磁石(Ma、Mb)の磁力により当該ロックバーRを没入状態で保持する自己保持型ソレノイドSとを具備したので、ソレノイドでロックバーRを移動させることができるとともに、コイルCに通電することなくロックバーRの突出状態及び没入状態を保持することができる。
【0045】
加えて、プランジャPとロックバーRとを略直交する方向に連結し、プランジャPの変位方向に対して略直交する方向にロックバーRを移動させる連結部材6を具備したので、プランジャPの変位方向とロックバーRの移動方向とを容易に異ならせることができ、車両のステアリング近傍におけるレイアウトの自由度をより向上させることができる。なお、本実施形態においては、プランジャPの移動方向とロックバーRの移動方向とが略直交しているが、平行な方向であってもよく、直交とは異なる所定角度有した方向であってもよい。
【0046】
また、自己保持型ソレノイドSは、プランジャPを収容しつつ永久磁石(Ma、Mb)が取り付けられたパイプ状部材10を有するので、プランジャPの変位を円滑に行わせることができるとともに、永久磁石(Ma、Mb)を所定の位置に確実に取り付けることができる。さらに、検出手段13は、ロックバーRと連動可能に取り付けられた接点7と、接点7との接触位置に応じた電気回路が形成される接触板とを有するとともに、接点7と接触板との間に形成された電気回路に基づいてロックバーRの位置を検出可能とされたので、ロックバーRの位置決め確認のためのセンサを不要とすることができ、製造コストを抑制することができる。
【0047】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図18~20に示すように、鞍乗り型の大型車両に取り付けられるものであってもよい。この場合、上記実施形態と同様、ハンドルバーJ、ハンドルバーJの操作に伴って回転する回動軸N、および回動軸Nを収容する外筒部Tにより車両のステアリングWが構成されるとともに、ステアリングロック装置1は、フロントフォークDを連結するブラケットA(アンダーブラケット)の下部に取り付けられている。
【0048】
しかるに、ステアリングロック装置1がブラケットAに取り付けられた状態において、ソレノイドSのコイルCに対して通電または通電の停止を行うことにより、ロックバーRが回動軸Nと略平行な方向(上下方向)に移動するよう構成されている。そして、ロックバーRが上方に向かって前進することにより突出状態となると、図20に示すように、当該ロックバーRの先端部が外筒部Tの下部において突出形成された突出部Taに係止してステアリングロックが行われるとともに、ロックバーRが下方に向かって後退することにより没入状態となると、ロックバーRの先端部が突出部Taから離間してステアリングロックが解除されることとなる。
【0049】
さらに、本実施形態に係るステアリングロック装置1は、ロックバーRの駆動源として自己保持型ソレノイドSが使用されているが、例えば永久磁石(Ma、Mb)を具備しない他の形態のソレノイドS、或いはモータなど他の駆動源を使用してもよい。なお、本実施形態においては、二輪車に適用されているが、他の形態の車両に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
ロックバーが車両のステアリングの回動軸と略平行な方向に移動可能に取り付けられたステアリングロック装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 ステアリングロック装置
2 ケース部材
2a 水抜き孔
3 カバー部材
3a 開口部
4 締結部材
5 付勢部材(捩りコイルばね)
6 連結部材
6a 第1連結溝
6b 第2連結溝
6c 挿通孔
7 接点
8 固定端子板
9a 第1接触板
9b 第2接触板
9c 第3接触板
10 パイプ状部材
11 受け部材
12 制御手段
13 検出手段
S 自己保持型ソレノイド
C コイル
F フレーム部
Fa 蓋部材
P プランジャ
R ロックバー
W ステアリング
K 凹部
Ma、Mb 永久磁石
h1~h5 配線
La~Lc 軸部
L1~L3 突出部
J ハンドルバー
N 回動軸
T 外筒部
Ta 突出部
B ブラケット
Ba 凹部
D フロントフォーク
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