(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183855
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ステアリングロック装置
(51)【国際特許分類】
B60R 25/0215 20130101AFI20231221BHJP
E05B 83/00 20140101ALI20231221BHJP
【FI】
B60R25/0215
E05B83/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097629
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 通之
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH07
2E250JJ10
2E250KK02
2E250LL18
2E250PP03
2E250RR01
(57)【要約】
【課題】ケース部材の内部に水が浸入し難い構造とするとともに、ケース部材の内部に侵入した水を良好に排出することができるステアリングロック装置を提供する。
【解決手段】ケース部材2に取り付けられたロックバーRを具備し、ロックバーRを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングWに係止してステアリングロックを行わせるとともに、ロックバーRを後退させて没入状態とすることによりステアリングWに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るステアリングロック装置において、ケース部材2は、下方に開口した収容空間を有し、その開口がカバー部材3にて覆われて構成されるとともに、カバー部材3に水抜き孔3aが形成されたものである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材に取り付けられたロックバーを具備し、当該ロックバーを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、前記ロックバーを後退させて没入状態とすることにより前記ステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るステアリングロック装置において、
前記ケース部材は、下方に開口した収容空間を有し、その開口がカバー部材にて覆われて構成されるとともに、前記カバー部材に水抜き孔が形成されたことを特徴とするステアリングロック装置。
【請求項2】
前記ロックバーに取り付けられた接点と、前記接点との接触位置に応じた電気回路が形成される接触板とを有するとともに、前記接点と接触板との間に形成された電気回路に基づいて前記ロックバーの位置を検出可能な検出手段を具備したことを特徴とする請求項1記載のステアリングロック装置。
【請求項3】
前記接触板は、前記ケース部材の天面又は側面に形成されたことを特徴とする請求項2記載のステアリングロック装置。
【請求項4】
前記接触板は、前記ケース部材の天面又は側面にインサート成形された金属部材から成ることを特徴とする請求項3記載のステアリングロック装置。
【請求項5】
前記ロックバーを突出状態で維持する付勢部材と、
コイルへの通電により生じる磁力及び永久磁石の磁力により変位可能なプランジャを有するとともに、前記プランジャが前記ロックバーと連結されて前記永久磁石の磁力により当該ロックバーを没入状態で維持する自己保持型ソレノイドと、
を具備したことを特徴とする請求項1記載のステアリングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングロック及びその解除を行わせるためのステアリングロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二輪車等においては、通常、ステアリング(ハンドルバーの回動軸等)にロックバーを係止させてロックすることにより車両の盗難等を防止するためのステアリングロック装置が配設されている。しかるに、本出願人は、例えば特許文献1にて開示されているような、モータ等の駆動源の駆動によってロックバーを出没させ得るステアリングロック装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のステアリングロック装置は、車両に取り付けられた状態で雨水等に曝されると、ケース部材の内部に水が浸入して溜まってしまい、ロックバーの移動に支障が生じてしまう虞があった。特に、ロックバーの駆動源としてモータやソレノイドを用いた場合、ステアリングロック装置のケース部材の内部に水が浸入して溜まってしまうと、ショート等の電気的不具合を生じる可能性もあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ケース部材の内部に水が浸入し難い構造とするとともに、ケース部材の内部に侵入した水を良好に排出することができるステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ケース部材に取り付けられたロックバーを具備し、当該ロックバーを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、前記ロックバーを後退させて没入状態とすることにより前記ステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るステアリングロック装置において、前記ケース部材は、下方に開口した収容空間を有し、その開口がカバー部材にて覆われて構成されるとともに、前記カバー部材に水抜き孔が形成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のステアリングロック装置において、前記ロックバーに取り付けられた接点と、前記接点との接触位置に応じた電気回路が形成される接触板とを有するとともに、前記接点と接触板との間に形成された電気回路に基づいて前記ロックバーの位置を検出可能な検出手段を具備したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のステアリングロック装置において、前記接触板は、前記ケース部材の天面又は側面に形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のステアリングロック装置において、前記接触板は、前記ケース部材の天面又は側面にインサート成形された金属部材から成ることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1記載のステアリングロック装置において、前記ロックバーを突出状態で維持する付勢部材と、コイルへの通電により生じる磁力及び永久磁石の磁力により変位可能なプランジャを有するとともに、前記プランジャが前記ロックバーと連結されて前記永久磁石の磁力により当該ロックバーを没入状態で維持する自己保持型ソレノイドとを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、ケース部材は、下方に開口した収容空間を有し、その開口がカバー部材にて覆われて構成されるとともに、カバー部材に水抜き孔が形成されたので、ケース部材の内部に水が浸入し難い構造とするとともに、ケース部材の内部に侵入した水を良好に排出することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、ロックバーに取り付けられた接点と、接点との接触位置に応じた電気回路が形成される接触板とを有するとともに、接点と接触板との間に形成された電気回路に基づいてロックバーの位置を検出可能な検出手段を具備したので、ロックバーの位置決め確認のためのセンサを不要とすることができ、製造コストを抑制することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、接触板は、ケース部材の天面又は側面に形成されたので、ケース部材の内部に侵入した水が接触板に至り難い構造とすることができ、電気的不具合の発生を抑制することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、接触板は、ケース部材の天面又は側面にインサート成形された金属部材から成るので、ケース部材に対する接触板の位置ずれを防止することができ、ロックバーの位置を精度よく検出することができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、ロックバーを突出状態で維持する付勢部材と、コイルへの通電により生じる磁力及び永久磁石の磁力により変位可能なプランジャを有するとともに、プランジャがロックバーと連結されて永久磁石の磁力により当該ロックバーを没入状態で維持する自己保持型ソレノイドとを具備したので、ソレノイドでロックバーを円滑に移動させることができるとともに、ソレノイドに対して継続的に通電しなくてもロックバーの没入状態を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るステアリングロック装置(ロックバーが突出状態)を示す外観斜視図
【
図2】同ステアリングロック装置の外観を示す4面図
【
図4】同ステアリングロック装置(ロックバーが没入状態)を示す外観斜視図
【
図5】同ステアリングロック装置であってロックバーが没入状態を示す断面図
【
図6】同ステアリングロック装置におけるケース部材を取り外した状態を示す斜視図
【
図7】同ステアリングロック装置におけるカバー部材、自己保持型ソレノイド、ロックバー、連結部材及び接点等を示す分解斜視図
【
図8】同ステアリングロック装置におけるケース部材を示す3面図
【
図10】同ステアリングロック装置における自己保持型ソレノイドを示す斜視図
【
図11】同ステアリングロック装置における連結部材及び接点を示す斜視図
【
図12】同ステアリングロック装置における接触板を示す平面図
【
図14】同ステアリングロック装置を車両に取り付けた状態を示す模式図
【
図15】同ステアリングロック装置を車両に取り付けた状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
実施形態に係るステアリングロック装置1は、二輪車等の車両に取り付けられ、ステアリングロック及びその解除を行わせるためのもので、ケース部材2に取り付けられたロックバーRを具備し、
図1~3に示すように、当該ロックバーRを前進させて突出状態とすることにより車両のステアリングに係止してステアリングロックを行わせるとともに、
図4、5に示すように、ロックバーRを後退させて没入状態とすることによりステアリングに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るものである。
【0018】
具体的には、本実施形態に係るステアリングロック装置1は、
図1~13に示すように、ロックバーRと、ロックバーRを突出状態で保持する付勢部材5と、通電により変位可能なプランジャPを有する自己保持型ソレノイドSと、箱型の成形品から成るケース部材2と、ケース部材2の開口を覆うカバー部材3と、連結部材6と、制御手段11及び検出手段12とを具備して構成されている。
【0019】
ロックバーRは、
図6、7に示すように、ケース部材2に取り付けられた軸状部材から成り、自己保持型ソレノイドSの通電により変位したプランジャP及び付勢部材5の付勢力により前進又は後退して突出状態(
図1参照)又は没入状態(
図4参照)とされる。そして、ロックバーRが突出状態となると、
図3に示すように、車両のステアリングWに形成された凹部KにロックバーRの先端部が係止してステアリングロックが行われるとともに、ロックバーRが没入状態となると、
図5に示すように、凹部KからロックバーRの先端部が離間してステアリングWの凹部Kに対する係止を解除してステアリングロックを解除し得るようになっている。
【0020】
付勢部材5は、
図3に示すように、連結部材6と自己保持型ソレノイドSを構成する蓋部材Faとの間に取り付けられたコイルスプリングから成り、その付勢力によりロックバーRを
図3中左側に付勢することにより突出状態で保持し得るものである。かかる付勢部材5は、コイルスプリングに限らず、他の形態のスプリング(捩りコイルばね等)や弾性体(弾性を有したゴム材や樹脂等)であってもよい。
【0021】
自己保持型ソレノイドSは、ケース部材2の所定位置に取り付けられて通電によりプランジャPを変位させ得るアクチュエータであり、
図7に示すように、コイルCと、プランジャPと、永久磁石Ma、Mbと、パイプ状部材9と、フレーム部Fとを有して構成されている。また、本実施形態に係る自己保持型ソレノイドSは、コイルCへの通電により生じる磁力及び永久磁石Ma、Mbの磁力により変位可能なプランジャPを有するとともに、プランジャPがロックバーRと連結されて永久磁石Ma、Mbの磁力により当該ロックバーRを没入状態で保持し得るものである。
【0022】
フレーム部Fは、自己保持型ソレノイドSの筐体を構成するもので、
図6、7に示すように、コ字状に折り曲げ加工された金属部品から成り、コイルC、プランジャP、永久磁石Ma、Mb及びパイプ状部材9が取り付けられるとともに、カバー部材3の所定位置に固定されている。なお、フレーム部Fの端部には、
図10に示すように、板状の蓋部材Faがかしめ等により固定されている。
【0023】
カバー部材3は、
図6、7に示すように、L字状に折り曲げ加工された金属部品から成り、折り曲げ加工により立ち上がって形成された部位には、ロックバーRを挿通して前進又は後退させ得る開口部3bが形成されている。また、カバー部材3は、ステアリングロック装置1が車両に組付けられた状態で下方に位置し、所定位置には、
図1、2、4、7に示すように、水抜き孔3aが形成されている。
【0024】
コイルCは、配線h(
図7、10参照)を介して通電可能とされ、通電により磁気を生じさせて、その磁力によりプランジャPを変位させ得るよう構成されている。プランジャPは、パイプ状部材9内に収容されるとともに、基端部側がコイルC内に位置して組付けられている。なお、フレーム部Fには、受け部材10(
図7参照)が取り付けられており、当該受け部材10にパイプ状部材9の基端が固定されるとともに、プランジャPの基端部Pbを受け得るようになっている。
【0025】
かかるパイプ状部材9は、例えば真鍮など高い電気伝導性を有した円筒状の金属部品から成り、内部にプランジャPを変位可能に収容するとともに永久磁石Ma、Mbが取り付けられている。永久磁石Ma、Mbは、互いに同極(S極どうし又はN極どうし)のものを2つ組み合わせ、パイプ状部材9の外周面とフレーム部Fの内周面との間に固定されたものである。
【0026】
しかるに、本実施形態においては、プランジャPとロックバーRとを長手方向(略一直線状)に連結し、プランジャPの変位方向に対してロックバーRを移動させる連結部材6を具備している。すなわち、プランジャPの先端部には、
図7に示すように、周方向に亘って溝Paが形成されるとともに、ロックバーRの基端部には、同図に示すように、周方向に亘って溝Raが形成されており、これらプランジャP及びロックバーRの溝Pa、Raが連結部材6の係止部6a、6bに係止されることにより、プランジャPとロックバーRとが連結されている。
【0027】
そして、コイルCに通電されない状態において、永久磁石Ma、Mbの磁力によるプランジャPの吸引力は、付勢部材5の付勢力より大きく設定されており、
図5に示すように、プランジャPを吸引した状態が維持され、ロックバーRの没入状態が保持されるようになっている。この没入状態からコイルCに対して所定方向に電流を流して通電(順方向の通電)すると、コイルCに生じた磁力と永久磁石Ma、Mbによる磁力とが互いに打ち消し合うこととなり、
図3に示すように、付勢部材5の付勢力によってプランジャPがパイプ状部材9内を摺動してロックバーRが突出状態とされる。
【0028】
さらに、この突出状態からコイルCに対して所定方向とは逆方向に電流を流して通電(逆方向の通電)すると、コイルCで生じる磁力と永久磁石Ma、Mbの磁力とが同一方向に作用することとなり、
図5に示すように、コイルCで生じる磁力及び永久磁石Ma、Mbの磁力によってプランジャPがパイプ状部材9内を摺動してロックバーRが没入状態とされる。かかる没入状態において通電を終了させると、永久磁石Ma、Mbの磁力によってロックバーRの没入状態が保持されることとなる。
【0029】
したがって、自己保持型ソレノイドSによれば、コイルCに通電されない状態において、永久磁石Ma、Mbの磁力によってロックバーRの没入状態が保持されるとともに、コイルCに対する所定方向の電流の付与(順方向の通電)によりロックバーRを突出状態まで移動させ、且つ、コイルCに対する所定方向とは反対方向の電流の付与(逆方向の通電)によりロックバーRを没入状態まで移動させることができる。
【0030】
ケース部材2は、下方に開口したカップ状部材から成り、
図8、9に示すように、車体側から延設された配線の先端部を接続可能なコネクタ部2aが形成されている。そして、かかるケース部材2には、
図3、5に示すように、自己保持型ソレノイドS、ロックバーR、連結部材6等が収容されるとともに、カバー部材3により、収容空間が閉じられるようになっている。なお、ケース部材2及びカバー部材3の一端側には、
図1~5に示すように、締結部材4が取り付けられ、当該締結部材4によって車両の所定位置にステアリングロック装置1が取り付けられることとなる。
【0031】
連結部材6は、既述のように、プランジャPとロックバーRとを連結させるとともに、
図7、11に示すように、接点7が取り付けられており、ロックバーRが突出状態と没入状態との間で移動する際、接点7がケース部材2の天面T上を摺動し得るようになっている。また、ケース部材の天面Tには、
図9に示すように、接触板8が形成されている。この接触板8は、ケース部材2の天面Tにインサート成形された金属部材(導電性部材)から成り、
図12、13に示すように、第1接触板8a、第2接触板8b、第3接触板8c、第4接触板8d、第5接触板8eを有して構成されている。
【0032】
第1接触板8a及び第2接触板8bは、端子部f、gを介して自己保持型ソレノイドSのプラス端子及びマイナス端子から延設された配線hに接続されるとともに、端子部a、bを介して制御手段11と接続可能とされている。かかる制御手段11は、車体側に設置されたマイコン等から成り、端子部a、b、端子部f、g及び配線hを介して自己保持型ソレノイドSと電気的に接続され、任意のタイミングで自己保持型ソレノイドSのコイルCに通電可能とされている。
【0033】
第3接触板8c、第4接触板8d及び第5接触板8eは、連結部材6と共に接点7が移動する際、接点7との接触位置に応じた電気回路が形成されるもので、端子部c~eを介して検出手段12と接続されている。かかる検出手段12は、制御手段11と同様、車体側に設置されたマイコン等から成り、第3接触板8c、第4接触板8d及び第5接触板8eとそれぞれ接続されている。
【0034】
そして、ロックバーRが突出状態とされて接点7が位置H1(
図12参照)にあるとき、第3接触板8cと第5接触板8eとの間を導通して電気回路が形成されるとともに、ロックバーRが没入状態とされて接点7が位置H2(
図12参照)にあるとき、第4接触板8dと第5接触板8eとの間を導通して電気回路が形成されるようになっている。
【0035】
したがって、検出手段12は、第3接触板8c、第4接触板8d及び第5接触板8eとそれぞれ接続されているので、接点7と接触板8(第3接触板8c、第4接触板8d及び第5接触板8e)との間に形成された電気回路に基づいてロックバーRの位置を検出することができ、例えば非接触センサ等の別個のセンサを具備することなく、ロックバーRの突出状態又は没入状態を検出することができる。
【0036】
しかるに、例えば、ロックバーRの係止が不良であり不用意な負荷が付与されていて没入状態にならない場合、コイルCに逆方向の通電をしてロックバーRを突出状態から没入状態に移動させようとしても、突出状態が維持されることとなる。そこで、本実施形態においては、コイルCに通電(逆方向の通電)してプランジャPを吸引し、且つ、検出手段12にてロックバーRが突出状態の位置にあることが検出されたとき、制御手段11によってコイルCに所定回数繰り返し通電するよう制御されるようになっている。
【0037】
このように、本実施形態においては、検出手段12にてロックバーRの位置を検出することにより、係止不良等によりロックバーRが突出状態から没入状態にならないことを把握することができるので、制御手段11によってコイルCに所定回数繰り返し通電(例えば1秒に1回、複数回数繰り返し通電)することにより、係止不良の解消を促すことができ、ロックバーRを没入状態とすることができる。
【0038】
この場合、制御手段11によって逆方向の通電を複数所定回数繰り返し行うのが有効であるが、複数回の逆方向の通電(ロックバーRを没入状態まで移動させるための通電)の間に順方向の通電(ロックバーRを突出状態まで移動させるための通電)を行うようにしてもよい。逆方向の通電に加え順方向の通電を行うことにより、ロックバーRを微振動させることが期待でき、係止不良の解消をより円滑に促すことができる。
【0039】
ここで、本実施形態に係るステアリングロック装置1に係るケース部材2は、
図9に示すように、下方に開口した収容空間を有し、その開口がカバー部材3にて覆われて構成されるとともに、
図1~5、7に示すように、カバー部材3の所定位置に水抜き孔3aが形成されている。そして、本実施形態に係るステアリングロック装置1は、
図14、15に示すように、二輪車のブラケットB(アッパブラケット)に取り付けられるようになっている。
【0040】
適用される二輪車は、フロントタイヤG、ステアリングWを操作可能なハンドルバーJ及び一対のフロントフォークDを具備したもので、一対のフロントフォークDを連結するブラケットBにステアリングロック装置1が固定されている。このように固定されたステアリングロック装置1は、上部にケース部材2及び下部にカバー部材3が位置するので、ケース部材2の内部に水が浸入し難くなっており、天面Tに形成された接触板8に水が至るのを防止することができる。また、ケース部材2の内部に水が浸入した場合であっても、水抜き孔3aから良好に排出させることができる。
【0041】
したがって、本実施形態によれば、ケース部材2は、下方に開口した収容空間を有し、その開口がカバー部材3にて覆われて構成されるとともに、カバー部材3に水抜き孔3aが形成されたので、ケース部材2の内部に水が浸入し難い構造とするとともに、ケース部材2の内部に侵入した水を良好に排出することができる。
【0042】
また、ロックバーRに取り付けられた接点7と、接点7との接触位置に応じた電気回路が形成される接触板8とを有するとともに、接点7と接触板8との間に形成された電気回路に基づいてロックバーRの位置を検出可能な検出手段12を具備したので、ロックバーRの位置決め確認のためのセンサを不要とすることができ、製造コストを抑制することができる。
【0043】
特に、本実施形態に係る接触板8は、ケース部材2の天面Tに形成されたので、ケース部材2の内部に侵入した水が接触板8に至り難い構造とすることができ、電気的不具合の発生を抑制することができる。さらに、本実施形態に係る接触板8は、ケース部材2の天面Tにインサート成形された金属部材から成るので、ケース部材2に対する接触板8の位置ずれを防止することができ、ロックバーRの位置を精度よく検出することができる。
【0044】
またさらに、ロックバーRを突出状態で維持する付勢部材5と、コイルCへの通電により生じる磁力及び永久磁石(Ma、Mb)の磁力により変位可能なプランジャPを有するとともに、プランジャPがロックバーRと連結されて永久磁石(Ma、Mb)の磁力により当該ロックバーRを没入状態で維持する自己保持型ソレノイドSとを具備したので、ソレノイドでロックバーRを円滑に移動させることができるとともに、ソレノイドに対して継続的に通電しなくてもロックバーRの没入状態を保持することができる。
【0045】
加えて、本実施形態によれば、ロックバーRを突出状態で保持する付勢部材5と、コイルCへの通電により生じる磁力及び永久磁石(Ma、Mb)の磁力により変位可能なプランジャPを有するとともに、プランジャPがロックバーRと連結されて永久磁石(Ma、Mb)の磁力により当該ロックバーRを没入状態で保持する自己保持型ソレノイドSと、ロックバーRの位置を検出する検出手段12とを具備し、コイルCに通電してプランジャPを吸引し、且つ、検出手段12にてロックバーRが突出状態の位置にあることが検出されたとき、コイルCに所定回数繰り返し通電するので、ソレノイドでロックバーRを移動させることができるとともに、ステアリングWに対するロックバーRの係止が不良であっても、コイルCに対する継続的な通電を避けてソレノイドの過熱を防止することができる。
【0046】
また、自己保持型ソレノイドSは、プランジャPを収容しつつ永久磁石(Ma、Mb)が取り付けられたパイプ状部材9を有するので、プランジャPの変位を円滑に行わせることができるとともに、永久磁石(Ma、Mb)を所定の位置に確実に取り付けることができる。
【0047】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばロックバーRを前進及び後退させる駆動源は、自己保持型ソレノイドに限らず、自己保持型でないソレノイド或いはモータ等他のアクチュエータを用いたものであってもよく、駆動源の駆動力をリンクやカムを用いてロックバーRに伝達するものであってもよい。また、本実施形態に係る接触板8は、ケース部材2の天面Tに形成されているが、ケース部材2の側面に形成されるものであってもよい。
【0048】
さらに、プランジャPとロックバーRとを連結させる連結部材として他の形態のものであってもよく、本実施形態の如くプランジャPとロックバーRとを長手方向に一直線状に連結させるものの他、プランジャPとロックバーRとを略直交する方向に連結させるものの、或いはプランジャPとロックバーRとを所定角度有した方向に連結させるものであってもよい。なお、本実施形態においては、二輪車に適用されているが、他の形態の車両に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
ケース部材は、下方に開口した収容空間を有し、その開口がカバー部材にて覆われて構成されるとともに、カバー部材に水抜き孔が形成されたステアリングロック装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ステアリングロック装置
2 ケース部材
2a コネクタ部
3 カバー部材
3a 水抜き孔
3b 開口部
4 締結部材
5 付勢部材(コイルスプリング)
6 連結部材
6a、6b 係止部
7 接点
8 接触板
9 パイプ状部材
10 受け部材
11 制御手段
12 検出手段
S 自己保持型ソレノイド
C コイル
F フレーム部
Fa 蓋部材
P プランジャ
Pa 溝
Pb 基端部
P1 挿通孔
R ロックバー
Ra 溝
T 天面
W ステアリング
K 凹部
Ma、Mb 永久磁石
h 配線
J ハンドルバー
B ブラケット
D フロントフォーク
G フロントタイヤ