(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183865
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】育成装置及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20231221BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20231221BHJP
A01G 9/00 20180101ALI20231221BHJP
【FI】
A01G7/00 603
A01G9/02 A
A01G9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097645
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】初谷 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 浩司
(72)【発明者】
【氏名】稲村 一彦
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NB03
2B327NE01
2B327TC04
(57)【要約】
【課題】生物の育成に関する情報をより精緻かつ効率的に取得することを可能する。
【解決手段】育成装置100は、水平面上に配置された育成棚で育成される複数の生物90の近傍を走査して、前記複数の生物90の各々の育成に関する情報である育成情報を取得するモニタリングシステム10を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面上に配置された育成棚で育成される複数の生物の近傍を走査して、前記複数の生物の各々の育成に関する情報である育成情報を取得するモニタリングシステムを備える、育成装置。
【請求項2】
前記モニタリングシステムは、
前記育成情報を検出する検出装置と、
前記検出装置を水平に移動させる駆動部と、
前検出装置及び前記駆動部を制御し、前記検出装置を水平に移動させて前記育成情報を検出させることにより、前記複数の生物の各々の前記育成情報を取得する、制御部と、
を備える、請求項1に記載の育成装置。
【請求項3】
前記モニタリングシステムは、前記検出装置として、前記育成情報を検出する複数の検出装置を備え、
前記駆動部は、第1の水平方向に沿って設けられた前記複数の検出装置を第2の水平方向へ移動させ、
前記制御部は、前記複数の検出装置及び前記駆動部を制御し、前記複数の検出装置を前記第2の水平方向へ移動させて前記育成情報を検出させることにより、前記複数の生物の各々の前記育成情報を取得する、
請求項2に記載の育成装置。
【請求項4】
前記モニタリングシステムは、前記検出装置として、生物の育成状況を示す情報を第1の前記育成情報として検出する少なくとも一つの状況センサーと、生物の育成環境を示す情報を第2の前記育成情報として検出する少なくとも一つの環境センサーと、を備える、請求項2に記載の育成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の生物の生長点に合わせて、前記環境センサーの高さを制御する、請求項4に記載の育成装置。
【請求項6】
前記複数の生物を育成する前記育成棚を更に備え、
前記育成棚は、前記複数の生物を格子状に配置する、
請求項1に記載の育成装置。
【請求項7】
鉛直方向に設けられた複数の前記育成棚ごとに設けられた前記モニタリングシステムを備える、請求項1に記載の育成装置。
【請求項8】
請求項1に記載の育成装置から受信した生物の育成環境を示す前記育成情報を取得し、
取得した前記育成情報をマップ状に示した画像を表示装置に表示させる、
制御部を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、育成装置及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物をはじめとする生物の育成管理を行う技術が知られている(特許文献1,2)。このような技術は、生物の育成状況及び環境に関する情報をモニタリングし、これらの情報を基に生物の育成環境を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-34248号公報
【特許文献2】特開2015-195786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生物の育成管理を行う際には、育成により生産される生物の品質及び生産効率を向上させる上で、生物の育成状況及び環境に関して精緻な情報を取得する必要がある。
【0005】
しかし、従来の構成においては、生物の育成に関する情報を精緻かつ効率的に取得することについて改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、生物の育成に関する情報をより精緻かつ効率的に取得することが可能な育成装置及び情報処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態に係る育成装置は、水平面上に配置された育成棚で育成される複数の生物の近傍を走査して、前記複数の生物の各々の育成に関する情報である育成情報を取得するモニタリングシステムを備える。
【0008】
このように、育成装置は、水平面上に配置された複数の生物の近傍を走査して各生物についての育成情報を取得するため、生物の育成に関する情報をより精緻かつ効率的に取得することが可能である。
【0009】
一実施形態に係る育成装置において、前記モニタリングシステムは、前記育成情報を検出する検出装置と、前記検出装置を水平に移動させる駆動部と、前検出装置及び前記駆動部を制御し、前記検出装置を水平に移動させて前記育成情報を検出させることにより、前記複数の生物の各々の前記育成情報を取得する、制御部と、を備える。
【0010】
このように、育成装置は、育成情報を検出する検出装置を水平方向に移動させて育成情報を検出するため、水平面上に配置された複数の生物の育成情報を効率的に取得することができる。
【0011】
一実施形態に係る育成装置において、前記モニタリングシステムは、前記検出装置として、前記育成情報を検出する複数の検出装置を備え、前記駆動部は、第1の水平方向に沿って設けられた前記複数の検出装置を第2の水平方向へ移動させ、前記制御部は、前記複数の検出装置及び前記駆動部を制御し、前記複数の検出装置を前記第2の水平方向へ移動させて前記育成情報を検出させることにより、前記複数の生物の各々の前記育成情報を取得する。
【0012】
このように、育成装置は、第1の方向に沿って設けられた複数の検出装置を第2の方向へ移動させて生物の育成情報を検出するため、水平面上に配置された複数の生物の育成情報を効率的に取得することができる。
【0013】
一実施形態に係る育成装置において、前記モニタリングシステムは、前記検出装置として、生物の育成状況を示す情報を第1の前記育成情報として検出する少なくとも一つの状況センサーと、生物の育成環境を示す情報を第2の前記育成情報として検出する少なくとも一つの環境センサーと、を備える。したがって、育成装置は、生物の育成状況及び環境に関して精緻な情報を取得することが可能である。
【0014】
一実施形態に係る育成装置において、前記制御部は、前記複数の生物の生長点に合わせて、前記環境センサーの高さを制御する。したがって、育成装置は、生物の成長に密接に関連する生長点付近の環境に関する精緻な情報を取得することができる。
【0015】
一実施形態に係る育成装置において、前記複数の生物を育成する前記育成棚を更に備え、前記育成棚は、前記複数の生物を格子状に配置する。したがって、育成装置は、複数の生物を高密度に配置することができ、単位面積当たりの生物の収量を増大させることができる。
【0016】
一実施形態に係る育成装置において、鉛直方向に設けられた複数の前記育成棚ごとに設けられた前記モニタリングシステムを備える。したがって、育成装置によれば、複数段の育成棚により生物の収量を増大させることが可能である。
【0017】
いくつかの実施形態に係る情報処理装置は、上記の育成装置から受信した生物の育成環境を示す前記育成情報を取得し、取得した前記育成情報をマップ状に示した画像を表示装置に表示させる。したがって、ユーザは、表示装置に表示された画像を参照することで、複数の生物に関する育成情報を容易に認識することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一実施形態によれば、生物の育成に関する情報をより精緻かつ効率的に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態に係る栽培システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図1の栽培装置の構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図1の栽培装置の構成例を示す正面図である。
【
図4】
図2の栽培パネル及びモニタリングシステムの上面図である。
【
図5】
図2の栽培パネル及びモニタリングシステムの斜視図である。
【
図6】
図2のモニタリングシステムの斜視図である。
【
図7】
図1の解析装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図1の解析装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図1の解析装置が実行する解析処理の動作手順例を示すフローチャートである。
【
図10】生理障害発生状況の表示例を示す図である。
【
図11】環境データのヒートマップ表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<比較例>
比較例としての特許文献1,2の構成について、以下に説明する。
【0021】
特許文献1には、センサー、カメラ、及びタグを含む生産状況検出手段により生物の生産状況を検出し、その検出結果に応じて生産計画修正情報を生成することが記載されている。特許文献1の構成では、タグ及びセンサーは、栽培ベッドと連動する。カメラは生物の育成室の天井又は壁等に設置される。
【0022】
しかし、特許文献1の構成のように、センサーを栽培ベッドと連動させると、栽培ベッド数分の多量のセンサーが必要となる。また、カメラを天井又は壁等に固定すると、撮影可能な範囲が限られ、全体の生産状況を把握するのが困難である。
【0023】
特許文献2には、植物を栽培する培地を収容可能な栽培容器と、栽培容器が載置される棚板が複数段設けられた栽培棚と、棚板上面へ光を照射する光源と、栽培容器を搬送する搬送装置と、植物を検査する検査部を備えた栽培システムが記載されている。検査部は、カメラ、栽培トレイが載置されたことを検知するセンサー、及び植物のクロロフィルを励起する所定の波長(例えば450nm及び近傍)の光を発光する光源である励起光光源等を備える。この構成は検査部による植物の検査結果に基づき植物の評価指標を算出する。この評価指標は、植物の経過観察、ひいては植物の選別又は移植等に用いられる。
【0024】
しかし、特許文献2の構成は、栽培トレイを検査部に搬送した上でデータを取得するが、植物の栽培場所と検査部内とでは温度及び湿度等の環境条件が異なる。そのため、特許文献2の構成は、実際に植物が育成する環境に関する精緻な情報を取得することができない。
【0025】
このように、比較例の構成においては、生物の育成に関する情報を精緻かつ効率的に取得することについて改善の余地があった。
【0026】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0027】
本実施形態に係る栽培システムは、平面状に配置された監視対象の生物の近傍を走査して、カメラ及び環境センサー等の検出装置によりその生物の育成に関する情報を取得する。したがって、本実施形態によれば、生物の育成に関する情報をより精緻かつ効率的に取得することが可能である。
【0028】
(栽培システム)
図1は、本開示の一実施形態に係る栽培システム1の構成例を示す図である。栽培システム1は、栽培装置100及び解析装置200を備える。
【0029】
本実施形態に係る育成装置としての栽培装置100は、生物を育成する装置である。本実施形態では、育成対象の生物がレタスである場合の例を説明するが、育成対象の生物は植物に限らず、動物(例えば、受精卵、単細胞生物等)でもよい。栽培装置100は、モニタリングシステム10を備える。モニタリングシステム10以外の栽培装置100が備える構成については、後述する。モニタリングシステム10は、育成対象であるレタスの育成状況及び環境等を監視して育成に関する情報である育成情報を取得する装置である。
【0030】
解析装置200は、モニタリングシステム10により取得された育成情報を解析する装置である。解析装置200は、PC(Personal Computer)、WS(Work Station)、又は、クラウド上のサーバ装置等の情報処理装置により構成されてもよい。モニタリングシステム10及び解析装置200は、互いに情報を伝送可能な通信回線により接続される。モニタリングシステム10及び解析装置200を接続する通信回線は、インターネット等の外部ネットワークを含んでもよい。
【0031】
(栽培装置)
図2は、
図1の栽培装置100の構成例を示す斜視図である。栽培装置100は、モニタリングシステム10、栽培棚20、LED(Light Emitting Diode)30、栽培ベッド40、及び栽培パネル50を備える。
図2において、X方向及びY方向は互いに直交する第1、第2の水平方向を示し、Z方向は鉛直方向(高さ方向)を示す。
【0032】
栽培棚20は、育成対象の生物であるレタス90を収容する棚である。栽培棚20は、支柱21(
図2のZ軸に平行)、横架材22(Y軸に平行)及び横架材23(Z軸に平行)を備えてもよい。栽培棚20は、水平面上に配置された複数のレタス90を育成する。
図2の例では、栽培棚20は複数段の棚を備え、各段の棚においてレタス90を栽培することで、限られたスペースにおいてレタス90の収量を増大させることが可能である。なお、栽培棚20は、1段の棚によりレタス90を栽培してもよい。栽培棚20上には、モニタリングシステム10、LED30、及び栽培ベッド40が設置される。
【0033】
LED30は、レタス90に対して光を供給する光源である。
図2に示すように、本実施形態では、栽培棚20の各棚において、Y軸に平行な複数の直線形状のLED30が互いに平行になるように設置される。これにより、栽培棚20上の各レタス90に対して、均一な光を供給することが可能である。なお、栽培装置100は、レタス90に対して光を供給することが可能であれば、例えば、白熱電球等のLEDとは異なる原理に基づく光源を備えてもよい。
【0034】
栽培ベッド40は、レタス90を育成するための養液又は培地を収容する容器である。栽培ベッド40上には栽培パネル50が設置され、栽培パネル50においてレタス90が栽培される。
【0035】
図3は、
図1の栽培装置100の構成例を示す正面図である。モニタリングシステム10は、複数のカメラ11、複数の環境センサー12、データロガー13、モーター14、シャフト15、養液センサー16、ケーブル17、部材181,182、及び案内部材183を備える。
【0036】
モニタリングシステム10は、複数のレタス90の近傍を走査して、複数のレタス90の各々の育成に関する情報である育成情報を取得する。
図3の例では、モニタリングシステム10は、X軸に平行な方向(第1の水平方向)に沿って設けられた、育成情報を検出する複数の検出装置(カメラ11、環境センサー12)を備える。モニタリングシステム10は、後述するモーター14の駆動により、栽培棚20の第2の水平方向(
図2のY軸に平行な方向)にこれらの複数の検出装置を移動させて、レタス90の育成情報を取得する。栽培装置100は、モニタリングシステム10の移動に応じて、カメラ11及び環境センサー12を各レタス90株の直上に配置することが可能である。
【0037】
カメラ11は、レタス90を撮影して画像データを取得する撮影装置である。カメラ11は、生物の育成状況を示す第1の育成情報として検出する状況センサーとして機能する。レタス90株の直上に配置されたカメラ11は、レタス90の中央のチップバーンを撮影することができる。チップバーンは、栽培対象の植物に発生する生理障害である。植物工場の栽培においては、チップバーンを削減することが課題となる。レタス90の外葉に発生するチップバーンは、出荷時に剥がすことができる。一方、レタス90の内側に発生するチップバーンはトリミングの手間がかかるため、外葉に発生するチップバーンより問題となる。カメラ11は、レタス90との焦点距離を確保できる位置に設置され、LED30と接触しないように設置される。
図3の例では、カメラ11は水平(例えば、X方向)に延びる部材181に取り付けられる。本実施形態においてカメラ11は例えばRGB(Red/Green/Blue)カメラであるが、これに代えて、ハイパースペクトルカメラ又はターゲットスペクトルカメラ等の特定波長のカメラとしてもよい。また、本実施形態では、栽培装置100は、状況センサーとしてカメラ11を備えているが、状況センサーはカメラ11に限られない。例えば、栽培装置100は、状況センサーとして、レタス90の大きさ及び形状を検出するセンサー、又は、レタス90の温度(例えば、レタス90の表面又は内部等の温度)を測定する温度センサー等を備えてもよい。
【0038】
環境センサー12は、レタス90の育成環境に関する情報である環境データ(第2の育成情報)を検出するセンサーである。一例として、環境センサー12は、環境データとして、温度(例えば、レタス90の周囲等の温度)、湿度、及び二酸化炭素濃度を測定することができるが、環境センサー12はこれら以外の情報を環境データとして測定してもよい。本実施形態に係るモニタリングシステム10は、後述するデータロガー13が備える制御部19の制御により、環境センサー12の高さ(Z方向)を調整することが可能である。
図3の例では、環境センサー12は水平(例えば、X方向)に延びる部材182に取り付けられる。部材182は、案内部材183に案内されて、部材181との間の間隔を修正することができる。制御部19は、モーター等の動力によって部材181に対する部材182の間隔を修正することにより、環境センサー12の高さを調整してもよい。モニタリングシステム10は、レタス90の成長に合わせて環境センサー12の高さを調整して環境データを取得することで、各レタス90の生長点付近の環境を測定することが可能である。なお、本実施形態では、モニタリングシステム10は、環境センサー12の高さを調整することができる例を説明するが、カメラ11を含む状況センサーの高さも調整できるようにしてもよい。例えば、制御部19は、モーター等の動力によって部材181の高さを修正することにより、カメラ11等の状況センサーの高さを調整してもよい。
【0039】
養液センサー16は、栽培ベッド40の養液に関する情報を検出するセンサーである。例えば、養液センサー16は、養液の温度、EC(肥料濃度)、及びpHを養液データとして測定してもよい。なお、本実施形態では、モニタリングシステム10は、栽培パネル50毎に一つ又は複数の養液センサー16を備えるが、これに代えて、レタス90毎に養液センサー16を備えてもよい。
【0040】
モニタリングシステム10は、カメラ11、環境センサー12、及び養液センサー16により画像データ、環境データ、及び養液データを同時に取得し、時刻情報(タイムスタンプ)とともに、データロガー13のメモリに記録してもよい。あるいは、モニタリングシステム10は、カメラ11及び環境センサー12をY方向に移動させながら、環境センサー12に環境データを取得させてもよい。
【0041】
図4は、
図2の栽培パネル50及びモニタリングシステム10の上面図である。
図5は、
図2の栽培パネル50及びモニタリングシステム10の斜視図である。栽培パネル50は、栽培ベッド40と挿通し、レタス90が育成する位置(植栽位置)を定める複数の植栽孔51を備える。複数の植栽孔51は、レタス90の栽培密度が均一になるように格子状に配置される。したがって、栽培装置100は、栽培パネル50の単位面積当たりのレタス90の収量を増大させることができる。
【0042】
モニタリングシステム10は、X方向に沿って、複数のカメラ11及び環境センサー12を備える。モニタリングシステム10は、まず、格子状に配置された植栽孔51の直上にカメラ11及び環境センサー12を配置する。カメラ11及び環境センサー12は、植栽位置毎に、環境センサー12の応答時間より長く植栽位置に静止して、画像データ及び環境データを取得する。
【0043】
モニタリングシステム10は、ある植栽位置において画像データ及び環境データを取得すると、駆動部としてのモーター14を駆動させて、カメラ11及び環境センサー12をシャフト15に沿って移動させる。シャフト15はY軸に平行に設けられており、カメラ11及び環境センサー12はY軸に平行な方向に移動する。これにより、カメラ11及び環境センサー12は、隣接する植栽孔51により特定される次の植栽位置に移動する。このようにして、モニタリングシステム10は、植栽孔51により位置が規定される各レタス90について、カメラ11及び環境センサー12により、育成情報を検出する。(画像データ、環境データ等)を取得する。なお、モーター14は、ケーブル17を介して供給される電力に基づき駆動する。なお、ケーブル17には、モーター14の電力を供給するためのケーブルだけではなく、データロガー13及びカメラ11を含む各装置の動作制御及び電力供給等を行うためのケーブルが含まれてもよい。
【0044】
図6は、
図2のモニタリングシステム10の斜視図である。カメラ11、環境センサー12、及び養液センサー16で取得された画像データ、環境データ、及び養液データは、データロガー13が備える記憶装置(メモリ)に記録される。養液センサー16は、棚を移動しないため、データロガー13とは別のデータロガーに保存してもよい。データロガー13に記録されたデータは、解析装置200へ伝奏されて保存される。
【0045】
データロガー13は、モニタリングシステム10の動作を制御する制御部19を備える。制御部19は、汎用又は専用のプロセッサ及びメモリを備える。例えば、制御部19は、複数の検出装置(例えば、カメラ11、環境センサー12)及び駆動部(モーター14)を制御し、複数の検出装置をY軸に平行な方向へ移動させて育成情報を検出させることにより、複数のレタス90の各々の育成情報を取得してもよい。あるいは、制御部19は、複数のレタス90の生長点に合わせて、環境センサー12の高さを制御してもよい。例えば、制御部19は、カメラ11等のセンサーによりレタス90の生長点を検出し、その生長点の高さに合わせて部材182の高さを修正することにより、レタス90の生長点に環境センサー12を近づけてもよい。カメラ11、環境センサー12、及び養液センサー16で取得された画像データ、環境データ、及び養液データは、制御部19のメモリに一時的に記録されてもよい。なお、データロガー13は、生物の育成情報を、育成情報を取得した時刻情報(タイムスタンプ)とともに記録してもよい。時刻情報と併せて育成情報を記録することで、栽培装置100は、時系列的な解析が可能な育成情報を取得することが可能である。
【0046】
以上のように、育成装置としての栽培装置100は、水平面上に配置された栽培棚20で育成される複数のレタス90の近傍を走査して、複数のレタス90の各々の育成に関する情報である育成情報を取得するモニタリングシステム10を備える。このように、栽培装置100は、水平面上に配置された複数のレタス90の近傍を走査して各レタス90についての育成情報を取得する。したがって、栽培棚20において多数のレタス90が密集して育成され、栽培装置100内に余分なスペースがほとんどない場合であっても、栽培装置100は、生物(レタス90)の育成に関する情報を生物ごとにより精緻かつ効率的に取得することが可能である。なお、レタス90ごとにカメラ11及び環境センサー12等の検出装置を設けた場合、検出装置の個数だけシステムのコストが大きくなり、また、配線が複雑になる。これに対して、本実施形態では、水平面上に配置された複数のレタス90の近傍を走査して各レタス90についての育成情報を取得することで、簡易でコストをかけずに各レタス90について精緻な育成情報を取得することができる。よって、栽培装置100によれば、単位体積当たりの生物の収量を増大することができるとともに、高品質な生物を育成することができる。
【0047】
また、モニタリングシステム10は、検出装置としてのカメラ11又は環境センサー12の少なくともいずれか、駆動部としてのモーター14、及び制御部19を備えてもよい。カメラ11又は環境センサー12は、レタス90の育成情報を検出してもよい。モーター14は、カメラ11又は環境センサー12を水平に移動させてもよい。制御部19は、カメラ11又は環境センサー12並びにモーター14を制御し、カメラ11又は環境センサー12を水平に移動させて育成情報を検出させることにより、複数のレタス90の各々の育成情報を取得してもよい。このように、モニタリングシステム10は、検出装置を水平に移動させてレタス90の育成情報を検出するため、水平面上に配置された複数のレタス90の育成情報を効率的に測定することができる。
【0048】
また、モニタリングシステム10は、複数の検出装置(カメラ11、環境センサー12等)を備えてもよい。カメラ11及び環境センサー12は、第1の水平方向(例えば、X方向)に沿って設けられ、レタス90の育成情報を検出してもよい。モーター14は、第2の水平方向(例えば、Y方向)へカメラ11及び環境センサー12を移動させてもよい。制御部19は、カメラ11及び環境センサー12並びにモーター14を制御し、カメラ11及び環境センサー12を第2の水平方向へ移動させて育成情報を検出させることにより、複数のレタス90の各々の育成情報を取得してもよい。このように、モニタリングシステム10は、第1の方向に沿って設けられた複数の検出装置を第2の方向へ移動させてレタス90の育成情報を検出するため、水平面上に配置された複数のレタス90の育成情報を効率的に測定することができる。なお、本実施形態では、複数のカメラ11及び環境センサー12が設けられる第1の方向と、カメラ11及び環境センサー12を移動させる第2の方向とが直交する例を説明したが、第1の方向及び第2の方向の間の角度は任意の角度としてもよい。
【0049】
なお、栽培装置100は、水平面上に配置された複数のレタス90の近傍を走査して各レタス90についての育成情報を取得する方式は、第1の方向に沿って設けられた複数の検出装置を第2の方向へ移動させてレタス90の育成情報を検出する方式に限られない。例えば、栽培装置100は、第1の方向に移動可能なカメラ11及び環境センサー12等の検出装置を備え、このような検出装置を第1の方向及び第2の方向に移動させて、各レタス90の育成情報を測定してもよい。このように、検出装置をX方向にも移動可能にすることで、少数の検出装置により、各レタス90の育成情報を精緻かつ効率的に取得することができる。また、本実施形態では、同一の水平面ごとに一つのモニタリングシステム10が設けられた構成例を説明したが、栽培装置100は、同一の水平面に複数のモニタリングシステム10を備えてもよい。また、モニタリングシステム10を鉛直方向にも移動可能とし、同一のモニタリングシステム10が、異なる階層の栽培棚20における生物の育成情報を取得してもよい。
【0050】
また、モニタリングシステム10は、複数の検出装置として、生物の育成状況を示す情報を第1の育成情報として検出する少なくとも一つの状況センサーと、生物の育成環境を示す情報を第2の育成情報として検出する少なくとも一つの環境センサーを備えてもよい。よって、モニタリングシステム10は、生物の育成状況及び環境に関して精緻な情報を取得することが可能である。
【0051】
また、制御部19は、複数の生物の生長点に合わせて、環境センサー12の高さを制御してもよい。したがって、栽培装置100は、生物の成長に密接に関連する生長点付近の環境に関する情報を取得して、精緻な生産管理を行うことが可能である。なお、制御部19は、環境センサー12だけでなく、カメラ11の高さも制御してもよい。
【0052】
また、育成棚としての栽培棚20は、複数のレタス90を格子状に配置する。したがって、栽培装置100は、レタス90を高密度に配置することができ、単位面積当たりのレタス90の収量を増大させることができる。
【0053】
また、栽培装置100は、鉛直方向に設けられた複数の栽培棚20と、複数の栽培棚20ごとに設けられたモニタリングシステム10と、を備えてもよい。したがって、栽培装置100によれば、複数段の栽培棚20により生物の収量を増大させることが可能である。
【0054】
(解析装置)
図7は、
図1の解析装置200のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、解析装置200は、制御部201、記憶部202、通信部203、入力部204、及び出力部205を備える。
【0055】
制御部201は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部201は、解析装置200を構成する各構成部と通信可能に接続され、解析装置200全体の動作を制御する。
【0056】
記憶部202は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部202は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部202は、解析装置200の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部202は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、栽培装置100から受信した育成情報(例えば、画像データ、環境データ、養液データ等)、及び通信部203によって受信された各種情報等を記憶してもよい。
【0057】
通信部203は、任意の通信技術によって、栽培装置100等の他の装置と通信接続可能な、任意の通信モジュールを含む。通信部203は、さらに、他の装置との通信を制御するための通信制御モジュール、及び他の装置との通信に必要となる識別情報等の通信用データを記憶する記憶モジュールを含んでもよい。
【0058】
入力部204は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インターフェースを含む。例えば、入力部204は、物理キー、又はポインティングディバイス等であるが、これらに限定されない。また、解析装置200は、入力部204を備えなくてもよい。
【0059】
出力部205は、ユーザに対して情報を出力し、ユーザに通知する1つ以上の出力インターフェースを含む。例えば、出力部205は、情報を画像で出力するディスプレイ、又は情報を音声で出力するスピーカ等であるが、これらに限定されない。なお、上述の入力部204及び出力部205の少なくとも一方は、解析装置200と一体に構成されてもよいし、別体として設けられてもよい。また、解析装置200は、出力部205を備えなくてもよい。
【0060】
解析装置200の機能は、本実施形態に係るコンピュータプログラム(プログラム)を、制御部201に含まれるプロセッサで実行することにより実現されうる。すなわち、解析装置200の機能は、ソフトウェアにより実現されうる。コンピュータプログラムは、解析装置200の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、各ステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させる。すなわち、コンピュータプログラムは、コンピュータを本実施形態に係る解析装置200として機能させるためのプログラムである。
【0061】
解析装置200の一部又は全ての機能が、制御部201に含まれる専用回路により実現されてもよい。すなわち、解析装置200の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。また、解析装置200は単一の情報処理装置により実現されてもよいし、複数の情報処理装置の協働により実現されてもよい。
【0062】
図8は、
図1の解析装置200の機能構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、解析装置200は、保存部210、データ出力部220、画像処理部230、モデル作成更新部240、及び環境条件出力部250の機能要素を備える。
【0063】
保存部210は、栽培装置100から受信した環境データ211、養液データ212、及び画像データ213等の育成情報を保存する。
【0064】
画像処理部230は、画像データ213から生理障害(チップバーン)を検出するためのモデルデータである検出モデル231を備える。画像処理部230は、各画像データ213を検出モデル231に基づき解析し、生理障害の有無を検出する。生理障害を検出した場合、画像処理部230は、その画像データ213に対して、生理障害の発生位置をラベリングする。例えば、画像処理部230は、生理障害の発生位置を示すメタデータを画像データ213に対して付与することで、ラベリングを行ってもよい。
【0065】
データ出力部220は、環境データ211、養液データ212、及び画像データ213を含む育成情報をユーザに対して出力する。データ出力部220は、これらの育成情報をユーザが認識するためのユーザーインターフェース221を備える。ユーザーインターフェース221は、出力部205のディスプレイ等により実現されてもよい。例えば、データ出力部220は、画像処理部230により生理障害の発生位置がラベリングされた画像データ213、並びに、環境データ211及び養液データ212等を出力部205のディスプレイに表示してもよい。
【0066】
モデル作成更新部240は、生理障害の発生位置がラベリングされた画像データ213、環境データ211、及び養液データ212を入力する。モデル作成更新部240は、入力されたこれらのデータを基に、高品質なレタス90の効率的な育成に最適な環境条件を推定するための推定モデル241を作成及び更新する。
【0067】
環境条件出力部250は、推定モデル241を用いて推定されたレタス90の育成に最適な環境条件をユーザに対して出力する。環境条件出力部250は、最適な環境条件をユーザが認識するためのユーザーインターフェース251を備える。ユーザーインターフェース251は、出力部205のディスプレイ等により実現されてもよい。例えば、環境条件出力部250は、最適な環境条件を示す画像を出力部205のディスプレイに表示してもよい。また、環境条件出力部250は、制御インターフェース252により、推定された最適な環境条件をレタス90の育成環境に反映させる。栽培装置100は、各栽培棚20における温度、湿度、二酸化炭素濃度等の育成環境を制御するための、温度調節器、湿度調節器、及び二酸化炭素制御器等を備えている。制御インターフェース252は、これらの装置を制御して、栽培装置100におけるレタス90の育成環境が最適なものになるようにする。
【0068】
(解析処理)
図9は、
図1の解析装置200が実行する解析処理の動作手順例を示すフローチャートである。
図9を参照して説明する解析装置200の動作は本実施形態に係る解析方法の少なくとも一部に相当し得る。
図9の各ステップは、解析装置200の制御部201の制御に基づき実行される。以下の処理は、栽培装置100から解析装置200へ育成情報が送信され、保存部210に各データが保存された状態において開始する。
【0069】
ステップS1において、制御部201は、保存部210を参照して、環境データ211、養液データ212、及び画像データ213を含む育成情報を取得する。
【0070】
ステップS2において、制御部201は、検出モデル231を用いて、画像データ213の各々について、生理障害(チップバーン)の有無を検出する。生理障害の検出モデル231は、予め任意の学習手法を用いて作成されてもよい。例えば、検出モデル231は、公知のディープラーニングを用いて、作成されてもよい。制御部201は、画像データ213に生理障害が検出された場合、その画像データ213に対して、生理障害の発生位置をラベリングする。制御部201は、ラベリングされた生理障害の面積から、生理障害の発生度合を算出する。生理障害の発生度合とは、発生した生理障害の深刻さを示す指標である。生理障害の面積が大きいなど生理障害がより深刻である場合、生理障害の発生度合はより大きな数値を示す。
【0071】
ステップS3において、制御部201は、ステップS2で算出した生理障害の発生度合に基づき、最適環境条件を更新するか否かを判定する。最適環境条件は、例えば、レタス90の育成に最適な、温度、湿度、二酸化炭素濃度、及び養液データについての、上限値及び下限値により特定された数値範囲により規定されてもよい。制御部201は、例えば、ステップS2で算出した生理障害の発生度合が予め定められた閾値以上の場合は最適環境条件を更新すると判定し、閾値未満の場合は最適環境条件を更新しないと判定してもよい。制御部201は、最適環境条件を更新すると判定した場合(ステップS3でYES)はステップS5へ進み、そうでない場合(ステップS3でNO)はステップS4へ進む。
【0072】
ステップS4において、制御部201は、生理障害の発生状況の情報を含む画像データ213、環境データ211、及び養液データ212を、モニタリングデータとしてユーザーインターフェース221により出力する。例えば、制御部201は、モニタリングデータを出力部205のディスプレイに表示する。
図10は、生理障害発生状況の表示例を示す図である。
図11は、環境データのヒートマップ表示の一例を示す図である。
【0073】
制御部201は、ユーザーインターフェース221(ディスプレイ)において、生理障害が発生した件数、生理障害の発生度合、最適環境条件の上下限値を超えている環境データ件数、最適環境条件の上下限値を超えている養液データ件数、及び上下限を超えた時刻の履歴等の情報を表示してもよい。制御部201は、チップバーンタブにおいて、生理障害の発生状況を表示してもよい。制御部201は、ヒートマップタブにおいて、環境データのヒートマップを表示してもよい。制御部201は、グラフタブにおいて、環境データ211及び養液データ212の時系列グラフを表示してもよい。
図10は、生理障害が発生したレタス90のロケーション、レタス90内の生理障害が発生した位置を示すラベリング画像、及びその発生度合の表示例を示している。
図11は、環境データのヒートマップの表示例を示している。制御部201は、環境データの値が最適環境条件の上下限を逸脱している場合は、赤色等の目立つ色又はマーク等により、環境データが最適環境条件を逸脱している位置を強調表示してもよい。また、制御部201は、特に育成状況が良好なレタス90の位置及びその環境データを強調表示してもよい。これにより、ユーザは、環境データが最適環境条件を逸脱している位置、及び良好に育成しているレタス90の位置及びその環境データを容易に認識することができる。
【0074】
ステップS5において、制御部201は、S1にて取得した環境データ211及び養液データ212について外れ値処理及び欠損処理を行う。
図12は、データセットの一例を示す図である。
図12に示すように、データセットは、生理障害の発生度合、環境データ211、及び養液データを含んでもよい。さらに、データセットは、これらのデータの特徴量として、データの積算値及び微分値を含んでもよい。
【0075】
ステップS6において、制御部201は、ステップS5で取得したデータセットに基づき、最適環境条件の推定モデル241を生成する。制御部201は、ステップS5において前処理を行ったデータセットの時系列をクラスタリングする。これにより、特徴量の類似性に基づきデータセットのクラスターが形成される。制御部201は、クラスタリングの際に生理障害の発生度合に基づきデータセットに重みをつけてもよい。重みをつけてクラスタリングすると、生理障害の発生度合に応じて環境データ及び養液データがクラスタリングされる。生理障害の発生度合は形成されたクラスターで表すことができる。形成されたクラスターは環境データ及び養液データで表すことができる。制御部201は、このようなクラスターを規定するようなベイジアンネットワークモデル構造を定義してもよい。制御部201は、定義したベイジアンネットワークモデル構造に対応したデータセットを用いて因果推論を実施し、最適環境条件の推定モデル241を構築してもよい。制御部201は、最適環境条件の推定モデル241により感度解析を実施し、生理障害発生の抑制に対し、影響の大きい環境要因を推定することができる。
【0076】
ステップS7において、制御部201は、ステップS6にて推定した生理障害発生の抑制に対し影響の大きい環境要因を最適環境条件として推定する。そして、制御部201は推定した最適環境条件を一覧表でユーザーインターフェース251に表示する。
図13は、最適環境条件の一例を示す図である。
図13の例では、最適環境条件として、温度20~22度、湿度70~80%、二酸化炭素濃度800~1100ppm、養液の液温19~23度、EC1.2~1.4、pH5~6が示されている。
【0077】
ステップS8において、制御部201は、ステップS7で推定した最適環境条件に基づき、制御インターフェース252により環境制御の目標値を変更する。これにより、栽培装置100は、この目標値に従って、環境条件の制御を行う。ステップS8の処理を終えると、制御部201はフローチャートの処理を終了する。
【0078】
以上のように、解析装置200の制御部201は、育成装置としての栽培装置100から受信した生物の育成環境を示す育成情報を取得し、取得した育成情報をマップ状に示した画像を表示装置(出力部205のディスプレイ等)に表示させる。
図2の栽培装置100のように、複数の栽培棚20を設けた場合、棚間隔が狭いため、栽培中は、栽培パネル50の中央部付近に位置するレタス90に生理障害発生が発生したかどうかを目視で確認するのが難しく、収穫時に栽培パネル50を引き出した際にはじめて生理障害の発生状況が分かるにすぎなかった。これに対して、本実施形態に係る解析装置200によれば、育成情報をマップ状に示した画像を表示するため、栽培中にリアルタイムで生理障害の発生状況をモニタリングすることが可能となる。また、解析装置200は、収集した環境データをヒートマップ状に表示することで、環境条件逸脱した位置を可視化する。したがって、ユーザは、環境条件を逸脱した場所を用意に把握することができる。
【0079】
また、解析装置200は、ディープラーニングにより生理障害を自動で検知することで、多量のレタス90から目視で生理障害の発生を検知する工数を削減することができる。
【0080】
また、解析装置200は、レタス90株毎に環境データを収集することで、同一栽培棚20の環境の違いを可視化でき、ユーザは、環境条件を逸脱しているスポットを容易に認識することができる。
【0081】
また、同一の栽培パネル50内においても、生理障害が発生するレタス90と発生しないレタス90が存在する場合がある。栽培装置100は、レタス90株毎に画像データ及び環境データを同一タイミングで収集する。したがって、解析装置200は、生理障害が発生する過程の画像データ及びその画像データと同時刻の環境データから、より高精度に生理障害の発生を抑制する栽培環境条件を解明して数値化することができる。したがって、栽培システム1によれば、適切な栽培環境を維持することができる。また、解析装置200は、収集した画像データ、環境データ、及び養液データ等の育成情報から最適環境条件を推定し、最適環境条件を提示する。したがって、ユーザは、最適環境条件を容易に認識することができる。
【0082】
また、解析装置200は、作物の栽培時において、カメラ11、環境センサー12、及び養液センサー16を同時に可動させることで、画像データ、環境データ、及び養液データを、同一の場所、及び、同一タイミングでデータ収集することが可能である。
【0083】
また、解析装置200は、栽培装置100により収集された画像データから、作物の生理障害の発生有無をデータ取得間隔毎に診断し、生理障害の発生有無を示す情報を画像データに付与してラベリングする。解析装置200は、このような画像データと、栽培装置100により収集された環境データとから、最適な環境条件を導出する。したがって、栽培システム1は、レタス90等の生物の育成を効果的に支援することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、LED30によりレタス90へ光を供給したが、太陽光によりレタス90へ光を供給してもよい。
【0085】
以上のように、栽培システム1は、作物の栽培時において、カメラ11及び環境センサー12を同時に可動させ、画像データ及び環境データを、同一の場所、及び、同一タイミングで収集する。さらに、栽培システム1は、作物の生理障害が発生する過程の画像データとその際の環境データから、より高精度に生理障害の発生を抑制する栽培環境条件を解明し数値化する。したがって、栽培システム1は、より適切な栽培環境維持の管理に資することが可能である。
【0086】
本開示の実施形態例について以下に付記する。
[1]
水平面上に配置された育成棚で育成される複数の生物の近傍を走査して、前記複数の生物の各々の育成に関する情報である育成情報を取得するモニタリングシステムを備える、育成装置。
[2]
前記モニタリングシステムは、
前記育成情報を検出する検出装置と、
前記検出装置を水平に移動させる駆動部と、
前検出装置及び前記駆動部を制御し、前記検出装置を水平に移動させて前記育成情報を検出させることにより、前記複数の生物の各々の前記育成情報を取得する、制御部と、
を備える、[1]に記載の育成装置。
[3]
前記モニタリングシステムは、前記検出装置として、前記育成情報を検出する複数の検出装置を備え、
前記駆動部は、第1の水平方向に沿って設けられた前記複数の検出装置を第2の水平方向へ移動させ、
前記制御部は、前記複数の検出装置及び前記駆動部を制御し、前記複数の検出装置を前記第2の水平方向へ移動させて前記育成情報を検出させることにより、前記複数の生物の各々の前記育成情報を取得する、
[2]に記載の育成装置。
[4]
前記モニタリングシステムは、前記検出装置として、生物の育成状況を示す情報を第1の前記育成情報として検出する少なくとも一つの状況センサーと、生物の育成環境を示す情報を第2の前記育成情報として検出する少なくとも一つの環境センサーと、を備える、[2]又は[3]に記載の育成装置。
[5]
前記制御部は、前記複数の生物の生長点に合わせて、前記環境センサーの高さを制御する、[4]に記載の育成装置。
[6]
前記複数の生物を育成する前記育成棚を更に備え、
前記育成棚は、前記複数の生物を格子状に配置する、
[1]から[5]のいずれか一項に記載の育成装置。
[7]
鉛直方向に設けられた複数の前記育成棚ごとに設けられた前記モニタリングシステムを備える、[1]から[6]のいずれか一項に記載の育成装置。
[8]
[1]から[7]のいずれか一項に記載の育成装置から受信した生物の育成環境を示す前記育成情報を取得し、
取得した前記育成情報をマップ状に示した画像を表示装置に表示させる、
制御部を備える情報処理装置。
【0087】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は1つのブロックは分割されてもよい。フローチャートに記載の複数のステップは、記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 栽培システム
10 モニタリングシステム
11 カメラ
12 環境センサー
13 データロガー
14 モーター
15 シャフト
16 養液センサー
17 ケーブル
181 部材
182 部材
183 案内部材
19 制御部
20 栽培棚
21 支柱
22,23 横架材
30 LED
40 栽培ベッド
50 栽培パネル
51 植栽孔
90 レタス(生物)
100 栽培装置
200 解析装置
201 制御部
202 記憶部
203 通信部
204 入力部
205 出力部
210 保存部
211 環境データ
212 養液データ
213 画像データ
220 データ出力部
221 ユーザーインターフェース
230 画像処理部
231 画像処理部
240 モデル作成更新部
241 推定モデル
250 環境条件出力部
251 ユーザーインターフェース
252 制御インターフェース