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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183867
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】内接ギヤポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
F04C2/10 341B
F04C2/10 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097648
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石 夏氷
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝明
(72)【発明者】
【氏名】竹田 博昭
【テーマコード(参考)】
3H041
【Fターム(参考)】
3H041AA00
3H041BB03
3H041CC03
3H041CC20
3H041DD03
3H041DD05
3H041DD23
(57)【要約】
【課題】内接ギヤポンプの騒音抑制と、ポンプ効率の低下抑制とを両立させる。
【解決手段】内接ギヤポンプ1は、ピニオンギヤ3と、リングギヤ4と、ピニオンギヤ及びリングギヤを回転可能に収容するハウジング10と、外歯31が当接する第1円弧壁541、及び、内歯41が当接する第2円弧壁542を有するクレセント54と、を備え、第1円弧壁及び第2円弧壁は共に、外歯及び内歯の方へ移動しない固定壁であり、クレセントを挟んだピニオンギヤ側の領域とリングギヤ側の領域とのうち、リングギヤ側の領域にのみ、吐出ポートから延びる圧力伝達油路91が、ハウジング内に形成され、圧力伝達油路は、吐出ポートとリングギヤの歯の間の空間とを連通させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外歯を有するピニオンギヤと、
前記外歯に噛み合う内歯を有するリングギヤと、
吸込ポート及び吐出ポートを有すると共に、前記ピニオンギヤ及び前記リングギヤを回転可能に収容するハウジングと、
前記ピニオンギヤと前記リングギヤとの噛み合いが離れる箇所に位置しかつ、前記外歯が当接する第1円弧壁、及び、前記内歯が当接する第2円弧壁を有するクレセントと、を備え、
前記第1円弧壁及び前記第2円弧壁は共に、前記外歯及び前記内歯の方へ移動しない固定壁であり、
前記クレセントを挟んだ前記ピニオンギヤ側の領域と前記リングギヤ側の領域とのうち、前記リングギヤ側の領域にのみ、前記吐出ポートから延びる圧力伝達油路が、前記ハウジング内に形成され、
前記圧力伝達油路は、前記吐出ポートと前記リングギヤの歯の間の空間とを連通させる、内接ギヤポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の内接ギヤポンプにおいて、
前記ハウジングは、前記リングギヤの外周面が摺動する摺動面を有し、
前記摺動面に開口する導入口を通じて、前記外周面と前記摺動面との間に高圧の作動油を供給する高圧油供給部を備え、
前記導入口は、前記リングギヤを挟んだ前記クレセントとは反対側に位置している、内接ギヤポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内接ギヤポンプにおいて、
前記ハウジングは、前記リングギヤの側面であって、前記リングギヤの回転軸に直交する二つの側面をそれぞれ支持する第1支持面及び第2支持面を有し、
前記吐出ポートは、前記第1支持面及び前記第2支持面のそれぞれに形成され、
前記圧力伝達油路は、前記第1支持面、前記第2支持面、又は、前記第1支持面及び前記第2支持面から凹陥するように、形成され、
前記圧力伝達油路は、前記回転軸の方向に見た場合に、前記リングギヤの歯の間の空間と重なっている、内接ギヤポンプ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の内接ギヤポンプにおいて、
前記圧力伝達油路は、前記クレセントの前記第2円弧壁から凹陥するように、形成されている、内接ギヤポンプ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の内接ギヤポンプにおいて、
前記圧力伝達油路の先端は、前記リングギヤの回転軸を中心として、前記吐出ポートの縁から、前記リングギヤの歯幅に相当する角度θ1以上でかつ、前記吐出ポートから前記吸込ポートまで延びる前記クレセントの中間位置までの角度θ2以下の範囲に位置している、内接ギヤポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、内接ギヤポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内接歯車ポンプ(1)が記載されている。この内接歯車ポンプ(1)は、分離部材(7)(いわゆるクレセント)を有している。内歯車(2)の歯先とピニオン(3)の歯先とはそれぞれ、分離部材(7)に当接する。
【0003】
分離部材(7)は、内側部分(13)と外側部分(14)とばね(16)とを有している。ばね(16)は、内側部分(13)をピニオン(3)の歯先に押し当て、外側部分(14)を内歯車(2)の歯先に押し当てる。分離部材(7)は、可動する構造を有している。可動する分離部材(7)は、内接歯車ポンプ(1)内の漏れ流れを抑制して、ポンプ効率を向上させる。
【0004】
分離部材(7)はまた、内側部分(13)と外側部分(14)との間に中間空間(17)を有している。中間空間(17)は、内接歯車ポンプ(1)の加圧領域(9)と連通している。内側部分(13)及び外側部分(14)は、貫通部(19)を有している。貫通部(19)は、内側部分(13)及び外側部分(14)のそれぞれを径方向に貫通し、中間部分(17)を、ピニオン(3)及び内歯車(2)の歯の間の空間と連通させる。内接歯車ポンプ(1)の作動時に中間空間(17)は加圧領域(9)と同じ圧力であるため、貫通部(19)を通じて、ピニオン(3)及び内歯車(2)の歯の間の空間の圧力が上昇する。歯の間の空間の高い圧力は、ポンプ吐出部での急激な圧力変化を抑制し、内接歯車ポンプ(1)の騒音を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6297277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の内接歯車ポンプ(1)の貫通部(19)は、騒音の抑制のために、分離部材(7)とピニオン(3)との間、及び、分離部材(7)と内歯車(2)との間の両方へ、ポンプ吐出部から液体を供給する。しかしながら、こうした液体の供給は、内接歯車ポンプ(1)内の漏れ流れを増やすことになる。従来の内接ギヤポンプは、騒音が抑制される一方で、ポンプ効率の低下を招く。
【0007】
ここに開示する技術は、内接ギヤポンプの騒音抑制と、ポンプ効率の低下抑制とを両立させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特許文献1に記載された内接歯車ポンプ(1)は、クレセントが可動する構造を有している。これとは異なり、可動しない構造のクレセントを有する内接ギヤポンプが知られている。
【0009】
本願発明者らが検討をしたところ、クレセントが可動しない構造の場合、ピニオンギヤの歯の間の空間の圧力は比較的高いことが、新たにわかった。これは、クレセントの壁がピニオンギヤの外歯に押し付けられないため、ピニオンギヤの歯とクレセントの壁との間に微少な隙間が存在しているためと考えられる。微少な隙間は、吐出ポートからの漏れ流れを許容し、その漏れ流れが、ピニオンギヤの歯の間の空間の圧力を高める。
【0010】
騒音抑制を目的として、吐出ポートからピニオンギヤの歯の間の空間へ作動油が供給される構造を内接ギヤポンプに追加しても、漏れ流れが増えてポンプ効率が低下するだけで、内接ギヤポンプの騒音抑制効果は、実質的に向上しない。
【0011】
そこで、本願発明者らは、可動しない構造のクレセントを有する内接ギヤポンプにおいて、吐出ポートからリングギヤの歯の間の空間へ延びる圧力伝達油路のみを、ハウジング内に形成することにした。
【0012】
具体的に、ここに開示する技術は、内接ギヤポンプに係る。この内接ギヤポンプは、
外歯を有するピニオンギヤと、
前記外歯に噛み合う内歯を有するリングギヤと、
吸込ポート及び吐出ポートを有すると共に、前記ピニオンギヤ及び前記リングギヤを回転可能に収容するハウジングと、
前記ピニオンギヤと前記リングギヤとの噛み合いが離れる箇所に位置しかつ、前記外歯が当接する第1円弧壁、及び、前記内歯が当接する第2円弧壁を有するクレセントと、を備え、
前記第1円弧壁及び前記第2円弧壁は共に、前記外歯及び前記内歯の方へ移動しない固定壁であり、
前記クレセントを挟んだ前記ピニオンギヤ側の領域と前記リングギヤ側の領域とのうち、前記リングギヤ側の領域にのみ、前記吐出ポートから延びる圧力伝達油路が、前記ハウジング内に形成され、
前記圧力伝達油路は、前記吐出ポートと前記リングギヤの歯の間の空間とを連通させる。
【0013】
尚、リングギヤの歯の間の空間は、リングギヤにおいて隣合う歯と歯に挟まれた空間である。
【0014】
この内接ギヤポンプは、クレセントが可動しない構造を有している。前述したように、ピニオンギヤの歯の間の空間の圧力は比較的高い。
【0015】
圧力伝達油路は、クレセントを挟んだピニオンギヤ側の領域とリングギヤ側の領域とのうち、リングギヤ側の領域にのみ、ハウジング内に形成されている。吐出ポートから延びる圧力伝達油路は、吐出ポートから低圧側へ作動油の一部を流す。圧力伝達油路は、吐出ポートとリングギヤの歯の間の空間とを連通させるため、吐出ポートの高圧の作動油の一部がリングギヤの歯の間の空間へ流れる。リングギヤの歯の間の空間の圧力が高まる。歯の間の空間の高い圧力は、吐出ポートでの急激な圧力変化を抑制する。
【0016】
ピニオンギヤの歯の間の空間の圧力は、圧力伝達油路が無くても高い。ピニオンギヤ側においても、吐出ポートでの急激な圧力変化が抑制される。
【0017】
可動しない構造のクレセントを挟んだリングギヤ側の領域にのみ圧力伝達油路を形成することは、リングギヤ側及びピニオンギヤ側のそれぞれにおいて、吐出ポートでの急激な圧力変化を抑制するから、内接ギヤポンプの騒音が抑制される。
【0018】
また、圧力伝達油路は、内接ギヤポンプの漏れ流れを助長するが、圧力伝達油路は、リングギヤ側の領域にのみ形成され、ピニオンギヤ側の領域には形成されていない。内接ギヤポンプの漏れ流れの増大が抑制される。よって、ポンプ効率の低下が抑制される。
【0019】
従って、前記の内接ギヤポンプは、騒音抑制と、ポンプ効率の低下抑制とが両立する。
【0020】
前記ハウジングは、前記リングギヤの外周面が摺動する摺動面を有し、
前記内接ギヤポンプは、前記摺動面に開口する導入口を通じて、前記外周面と前記摺動面との間に高圧の作動油を供給する高圧油供給部を備え、
前記導入口は、前記リングギヤを挟んだ前記クレセントとは反対側に位置している、としてもよい。
【0021】
高圧油供給部は、リングギヤの外周面と、ハウジングの摺動面との間に高圧の作動油を供給する。供給された高圧の作動油は、リングギヤを、リングギヤの回転軸の方へ押す。導入口は、リングギヤを挟んだクレセントとは反対側に位置しているため、リングギヤの内歯はクレセントの第2円弧壁に押し付けられる。内歯と第2円弧壁との間から作動油が漏れることが抑制される。高圧油供給部は、内接ギヤポンプのポンプ効率を高める。
【0022】
リングギヤの内歯がクレセントの第2円弧壁に押し付けられることは、ポンプ効率を高める一方で、吐出ポートからの漏れ流れによるリングギヤの歯の間の空間の圧力上昇を抑制する。リングギヤの歯の間の空間の圧力が低いことは、内接ギヤポンプの騒音を増大させる。
【0023】
前記の内接ギヤポンプは、リングギヤ側の領域においてハウジングに形成された圧力伝達油路を有している。前述したように、圧力伝達油路は、リングギヤの歯の間の空間の圧力を高める。高圧油供給部と、リングギヤ側の圧力伝達油路との組み合わせは、内接ギヤポンプの騒音抑制と、ポンプ効率の低下抑制とを、高いレベルで両立させる。
【0024】
前記ハウジングは、前記リングギヤの側面であって、回転軸に直交する二つの側面をそれぞれ支持する第1支持面及び第2支持面を有し、
前記吐出ポートは、前記第1支持面及び前記第2支持面のそれぞれに形成され、
前記圧力伝達油路は、前記第1支持面、前記第2支持面、又は、前記第1支持面及び前記第2支持面から凹陥するように、形成され、
前記圧力伝達油路は、前記回転軸の方向に見た場合に、前記リングギヤの歯の間の空間と重なっている、としてもよい。
【0025】
第1支持面及び/又は第2支持面に形成された圧力伝達油路は、回転軸の方向に見た場合にリングギヤの歯の間の空間と重なるため、吐出ポートからリングギヤの歯の間の空間へ作動油を供給できる。リングギヤの歯の間の空間の圧力が高まる。
【0026】
第1支持面及び/又は第2支持面に形成された前記圧力伝達油路の横断面は、三角形である、としてもよい。第1支持面及び/又は第2支持面に形成された前記圧力伝達油路の横断面は、四角形である、としてもよい。
【0027】
前記圧力伝達油路は、第1支持面及び/又は第2支持面に形成された溝である、としてもよい。
【0028】
前記圧力伝達油路は、直線状である、としてもよい。前記圧力伝達油路は、曲線状である、としてもよい。
【0029】
前記圧力伝達油路は、前記クレセントの前記第2円弧壁から凹陥するように、形成されている、としてもよい。
【0030】
前記圧力伝達油路は、前記クレセントの表面が切り欠かれて形成されている、としてもよい。
【0031】
クレセントの第2円弧壁に形成された圧力伝達油路は、リングギヤの歯の間の空間と連通する。圧力伝達油路は、吐出ポートからリングギヤの歯の間の空間へ作動油を供給できる。リングギヤの歯の間の空間の圧力が高まる。
【0032】
前記圧力伝達油路の深さは、前記吐出ポートから離れるに従い、次第に浅くなっている、としてもよい。前記圧力伝達油路の深さは、一定深さである、としてもよい。前記圧力伝達油路の幅は、前記吐出ポートから離れるに従い、次第に狭くなっている、としてもよい。前記圧力伝達油路の幅は、一定幅である、としてもよい。
【0033】
前記圧力伝達油路の先端は、前記リングギヤの回転軸を中心として、前記吐出ポートの縁から、前記リングギヤの歯幅に相当する角度θ1以上でかつ、前記吐出ポートから前記吸込ポートまで延びる前記クレセントの中間位置までの角度θ2以下の範囲に位置している、としてもよい。
【0034】
適切な長さの圧力伝達油路は、内接ギヤポンプの騒音抑制と、ポンプ効率の低下抑制とを両立させる。
【0035】
圧力伝達油路の先端がθ1未満の位置に位置している場合、圧力伝達油路が短すぎる。つまり、短すぎる圧力伝達油路は、リングギヤの歯の間の空間の圧力を、当該空間が吐出ポートに開放される前に上昇させることができない。
【0036】
圧力伝達油路の先端がθ2を超える位置に位置しても、騒音抑制効果がθ2以下の場合と実質的に同じである。一方で、長すぎる圧力伝達油路は、作動油の漏れ流れを増やしてポンプ効率の低下を招く。
【0037】
圧力伝達油路の先端が、角度θ1以上でかつ、角度θ2以下の範囲に位置している場合、騒音抑制と、ポンプ効率の低下抑制とが両立する。
【発明の効果】
【0038】
前記の内接ギヤポンプは、騒音抑制とポンプ効率の低下抑制とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、内接ギヤポンプの分解図である。
図2図2は、内接ギヤポンプの断面図である。
図3図3は、圧力伝達油路を例示している。
図4図4は、圧力伝達油路の変形例である。
図5図5は、圧力伝達油路の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、内接ギヤポンプの実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する内接ギヤポンプは例示である。
【0041】
(内接ギヤポンプの全体構造)
図1及び2は、内接ギヤポンプ1を例示している。内接ギヤポンプ1は、シャフト2と、ピニオンギヤ3と、リングギヤ4と、ギヤハウジング5と、フロントカバー6と、を備えている。ギヤハウジング5、及び、フロントカバー6は、内接ギヤポンプ1のハウジング10である。尚、図1は、フロントカバー6がギヤハウジング5から取り外された分解図である。
【0042】
シャフト2は、図2における紙面左右方向に伸びている。シャフト2は、第1シャフト21と第2シャフト22とからなる。第1シャフト21と第2シャフト22とは、同軸となるように結合され、一体に回転する。第2シャフト22は、ハウジング10から突出していて、図示を省略する原動機に接続される。原動機は、例えば電気モータである。
【0043】
ピニオンギヤ3は、第1シャフト21の中間位置に一体に形成されている。ピニオンギヤ3とシャフト2とは同軸である。ピニオンギヤ3は、シャフト2と共に回転する。ピニオンギヤ3は、外歯31を有している。
【0044】
リングギヤ4は、ピニオンギヤ3に噛み合う。リングギヤ4は、シャフト2に対して偏心して配置されている。図1のC1は、ピニオンギヤ3の回転軸であり、C2は、リングギヤ4の回転軸である。リングギヤ4の内周面には、内歯41が形成されている。図1の右図において、紙面右側の領域にて、ピニオンギヤ3の外歯31の一部がリングギヤ4の内歯41の一部に噛み合う。
【0045】
ギヤハウジング5は、ピニオンギヤ3及びリングギヤ4を収容する。ギヤハウジング5には、内孔53が形成されている。第1シャフト21の端部は、内孔53内に位置する。
【0046】
ピニオンギヤ3及びリングギヤ4は、回転可能に、ギヤハウジング5に収容される。ギヤハウジング5は、リングギヤ4の外周面42が摺動する摺動面51を有している。リングギヤ4の外周面42は、横断面円形状を有している。ギヤハウジング5の摺動面51も、横断面円形状を有している。摺動面51は、シャフト2に対して偏心している。
【0047】
ギヤハウジング5は、摺動面51に直交する第1支持面52を有している。摺動面51及び第1支持面52は、ピニオンギヤ3及びリングギヤ4を収容する空間50を形成する。当該空間50は、図2における紙面左側に開放されている。ピニオンギヤ3の第1側面32、及び、リングギヤ4の第1側面43はそれぞれ、ギヤハウジング5の第1支持面52に支持されると共に、第1支持面52を摺動する。尚、ピニオンギヤ3の第1側面32は、ピニオンギヤ3の回転軸C1に直交する面であって、図2の右の側面である。リングギヤ4の第1側面43は、リングギヤ4の回転軸C2に直交する面であって、図2の右の側面である。
【0048】
フロントカバー6は、ギヤハウジング5に隣接して配設されている。フロントカバー6、及び、ギヤハウジング5は、互いに固定されることによって一体化されている。フロントカバー6は、ギヤハウジング5に接すると共に、空間50を閉じる第2支持面61を有している。ピニオンギヤ3の第2側面33、及び、リングギヤ4の第2側面44はそれぞれ、フロントカバー6の第2支持面61に支持されると共に、第2支持面61を摺動する。尚、ピニオンギヤ3の第2側面33は、ピニオンギヤ3の回転軸C1に直交する面であって、図2の左の側面である。リングギヤ4の第2側面44は、リングギヤ4の回転軸C2に直交する面であって、図2の左の側面である。
【0049】
フロントカバー6には、シャフト2が通る支持孔62が貫通して形成されている。シャフト2は、ベアリング63と軸受部材64とを介して、フロントカバー6及びギヤハウジング5に、回転可能に支持されている。支持孔62の開口は、封止部材621によって塞がれている。
【0050】
フロントカバー6及びギヤハウジング5には、吸込ポート11が形成されている。吸込ポート11は、ハウジング10の内部の空間50へ作動油を吸い込むポートである。吸込ポート11の入口は、図2に示すように、フロントカバー6の外周面に開口している。吸込ポート11の出口は、図1及び2に示すように、フロントカバー6の第2支持面61及びギヤハウジング5の第1支持面52のそれぞれに開口している。吸込ポート11の出口はまた、シャフト2の回転方向に沿うように、周方向に延びている。
【0051】
フロントカバー6、及び、ギヤハウジング5にはまた、吐出ポート12が形成されている。吐出ポート12は、ハウジング10の内部の空間50から作動油を吐き出すポートである。吐出ポート12の出口は、図2に示すように、ギヤハウジング5の外周面に開口している。尚、吸込ポート11の入口の向きと、吐出ポート12の出口の向きとは、図2に例示するように異なる方向であってもよいし、図示は省略するが、同じ方向であってもよい。
【0052】
吐出ポート12の入口は、フロントカバー6の第2支持面61及びギヤハウジング5の第1支持面52のそれぞれに開口している。吐出ポート12の入口はまた、図1に示すように、吸込ポート11に対して、シャフト2を挟んだ反対側において、シャフト2の回転方向に沿うように、周方向に延びている。
【0053】
ギヤハウジング5には、クレセント54が設けられている。クレセント54は、ピニオンギヤ3とリングギヤ4との噛み合いが離れる箇所に配設されている。クレセント54は、後述する第2領域と第1領域とを分離する。
【0054】
クレセント54は、シャフト2の回転方向に沿うように、所定の角度範囲に亘って周方向に伸びている。図1に示すように、クレセント54は、シャフト2の軸方向に見たときに、三日月形状を有している。クレセント54は、第1円弧壁541と、第2円弧壁542との二つの円弧壁を有し、第1円弧壁541及び第2円弧壁542はそれぞれ、ギヤハウジング5の第1支持面52に立設している。
【0055】
ピニオンギヤ3の外歯31の歯先は、クレセント54の第1円弧壁541に、実質的に当接する。リングギヤ4の内歯41の歯先は、クレセント54の第2円弧壁542に、実質的に当接する。第1円弧壁541及び第2円弧壁542は共に、外歯31及び内歯41の方へ移動しない固定壁である。
【0056】
ハウジング10内は、リングギヤ4の回転軸C2を中心として周方向に、吸込ポート11が開口する第1領域と、吐出ポート12が開口する第2領域と、第1領域及び第2領域の間であってクレセント54が配設されている第3領域と、の三領域に分けることができる。第1領域は低圧領域であり、第2領域は高圧領域である。
【0057】
次に、内接ギヤポンプ1の運転を簡単に説明する。原動機によってシャフト2が、図1の右図における時計回りの方向に回転すると、ピニオンギヤ3及びリングギヤ4がそれぞれ、第1領域から、第3領域を経て、第2領域に至る方向に回転する。
【0058】
ハウジング10内の第1領域において、噛み合っていたピニオンギヤ3の外歯31とリングギヤ4の内歯41とが離れるに伴って、吸込ポート11から外歯31と内歯41との間に作動油が吸い込まれる。吸い込まれた作動油は、ピニオンギヤ3及びリングギヤ4の回転に伴い、第1領域から、第3領域を経て第2領域へ運ばれる。
【0059】
ハウジング10内の第2領域においては、離れていたピニオンギヤ3の外歯31とリングギヤ4の内歯41とが次第に近づいて噛み合う。このことにより、作動油が、外歯31と内歯41との間から吐出ポート12を通じて吐き出される。
【0060】
(ポンプ効率を高める構造)
内接ギヤポンプ1は、高圧油供給部8を備えている。高圧油供給部8は、リングギヤ4の外周面42とギヤハウジング5の摺動面51との間に高圧の作動油を供給する。尚、高圧油供給部8は、図1にのみ図示される。
【0061】
高圧油供給部8は、高圧の作動油によって、リングギヤ4を、第3領域の外周囲から回転軸C2の方へ押して移動させる。リングギヤ4の歯先がクレセント54の第2円弧壁542に押し当てられるから、ハウジング10内で、高圧側から低圧側へ作動油が漏れることが抑制される。
【0062】
高圧油供給部8は、摺動面51に開口する導入口81と、吐出ポート12と導入口81とをつなぐ供給路82とを有している。
【0063】
導入口81は、図1に示すように、第3領域に位置している。より詳細に、導入口81は、クレセント54に対し、リングギヤ4を挟んで径方向に向かい合っている。導入口81は、吐出ポート12から吐出される高圧の作動油の一部を、ハウジング10内へ導入する。リングギヤ4の歯先をクレセント54に効率的に押し付けるために、導入口81は、クレセント54に向かい合う位置であることが好ましい。また、ハウジング10内に導入した高圧の作動油が低圧の第1領域へ流れることを抑制するために、導入口81は、低圧側の領域と高圧側の領域とに二等分される第3領域において、高圧側の領域に位置することが好ましい。
【0064】
供給路82は、ギヤハウジング5内に形成されている。供給路82は、ギヤハウジング5の第1支持面52に開口する吐出ポート12と、導入口81とをつないでいる。尚、供給路は、フロントカバー6の第2支持面61に開口する吐出ポート12と、導入口81とをつなぐように、フロントカバー6及びギヤハウジング5に形成されてもよい。また、供給路は、第1支持面52に開口する吐出ポート12と導入口81とをつなぐと共に、第2支持面61に開口する吐出ポート12と導入口81とをつないでもよい。
【0065】
前述したように、内接ギヤポンプ1の運転中に、吐出ポート12の高圧の作動油の一部は、供給路82及び導入口81を通じて、リングギヤ4の外周面とギヤハウジング5の摺動面51との間に導入される。高圧の作動油は、リングギヤ4を、第3領域の外周囲から回転軸C2の方へ押す。リングギヤ4の歯先はクレセント54の第2円弧壁542に押し付けられる。第3領域において、リングギヤ4の歯先とクレセント54の第2円弧壁542との間を通って、作動油が高圧側から低圧側へ漏れることが抑制される。ハウジング10内の漏れ流れが抑制されることによって、内接ギヤポンプ1のポンプ効率が向上する。
【0066】
尚、高圧油供給部8は、供給路82の途中に絞りを有していてもよい。絞りは、リングギヤ4の外周面とギヤハウジング5の摺動面51との間に導入される作動油の圧力を調整する。
【0067】
内接ギヤポンプ1において、高圧油供給部8は省略されてもよい。高圧油供給部8は、内接ギヤポンプ1において必須の要素ではない。
【0068】
(騒音を抑制する構造)
内接ギヤポンプ1では、ピニオンギヤ3の歯の間の空間及びリングギヤ4の歯の間の空間が、第3領域を通過して、吐出ポート12に開放される際に、吐出ポート12の圧力と歯の間の空間の圧力との圧力差に起因して騒音が生じる。吐出ポート12の圧力と歯の間の空間の圧力との圧力差が大きいほど歯の間の空間が吐出ポート12に開放される際の圧力変動が大きいから、内接ギヤポンプの騒音は大きくなる。内接ギヤポンプ1は、騒音を抑制させる圧力伝達油路91を有している。
【0069】
圧力伝達油路91は、吐出ポート12の高い圧力を利用して、歯の間の空間に閉じ込められている作動油の圧力を第3領域において予め高め、それによって、吐出ポート12の圧力と歯の間の空間の圧力との圧力差を小さくする。圧力差が小さいと、歯の間の空間が吐出ポート12に開放される際の圧力変動が小さくなるから、内接ギヤポンプの騒音は抑制される。
【0070】
図1及び3に例示する内接ギヤポンプ1において、圧力伝達油路91は、フロントカバー6の第2支持面61から凹陥するように形成されている。尚、図1の右図及び図3において二点鎖線で示す圧力伝達油路91は、圧力伝達油路91、リングギヤ4、及び、クレセント54の位置関係を明確にするために、フロントカバー6に形成された圧力伝達油路91を、ギヤハウジング5に投影して示している。
【0071】
圧力伝達油路91は、第2支持面61に形成された溝である。図3に示すように、圧力伝達油路91の横断面の形状は、三角形である。尚、圧力伝達油路91の横断面の形状は、三角形に限らない。横断面の形状は、例えば四角形であってもよい。
【0072】
圧力伝達油路91は、吐出ポート12の縁から、第3領域における低圧側の方へ、真っ直ぐに延びている。図3に示すように、圧力伝達油路91の深さは、吐出ポート12から離れるに従い、次第に浅くなりかつ、圧力伝達油路91の幅は、吐出ポート12から離れるに従い、次第に狭くなる。尚、圧力伝達油路の深さは一定深さであってもよいし、圧力伝達油路の幅は一定幅であってもよい。
【0073】
圧力伝達油路91は、リングギヤ4の回転軸C2の方向に見た場合に、換言すると図1の右図又は図3において、リングギヤ4の歯の間の空間と重なっている。圧力伝達油路91は直線状である一方、クレセント54は三日月形状であるため、圧力伝達油路91の基端(つまり、圧力伝達油路91と吐出ポート12との接続端)は、吐出ポート12における径方向の最も外側の縁の近くに位置し、圧力伝達油路91の中間部は、クレセント54の第2円弧壁542の近くに位置し、圧力伝達油路91の先端は、クレセント54の第2円弧壁542から離れて位置する。圧力伝達油路91は、クレセント54との干渉を避けて延びることができる。
【0074】
第3領域において、リングギヤ4の歯の間の空間は、リングギヤ4の歯先がクレセント54の第2円弧壁542に押し付けられているため閉じている。圧力伝達油路91は、リングギヤ4の歯の間の空間に対して、図1又は3の紙面に直交する方向に連通する。吐出ポート12の高圧の作動油の一部は、圧力伝達油路91を通じて、リングギヤ4の歯の間の空間に流入し、当該空間の圧力を高める。本願発明者らが、ハウジング10内の圧力を実際に計測した結果によれば、圧力伝達油路91が形成されていない場合、第3領域のクレセント54を挟んだリングギヤ4側において、リングギヤ4の歯の間の空間の圧力は、吐出圧力に対して低下する一方、圧力伝達油路91が形成されることにより、当該空間の圧力が高まることが確認できた。リングギヤ4の歯の間の空間の圧力が第3領域において予め高まるから、吐出ポート12の圧力と歯の間の空間の圧力との圧力差が小さくなる。当該空間が吐出ポート12に開放される際の圧力変動が抑制されるから、内接ギヤポンプ1の騒音が抑制される。本願発明者らの検討によれば、圧力伝達油路91が形成されることによる騒音レベルの低減が確認でき、騒音レベルの改善効果は、内接ギヤポンプ1の吐出圧力が高いほど高いことがわかった。
【0075】
内接ギヤポンプ1は、第3領域におけるクレセント54を挟んだピニオンギヤ3側の領域とリングギヤ4側の領域とのうち、リングギヤ4側の領域にのみ、ハウジング10内に形成されている。ピニオンギヤ3側の領域に、圧力伝達油路は形成されていない。
【0076】
本願発明者らの検討によると、ピニオンギヤ3の歯の間の空間の圧力は、圧力伝達油路が無くても比較的高くて、圧力伝達油路91が形成されている場合のリングギヤ4側の圧力と同等かそれよりも高いことが分かった。ピニオンギヤ3の歯の間の空間が吐出ポート12に開放された際の圧力変動は、比較的小さい。これは、クレセント54が、第1円弧壁541及び第2円弧壁542が可動しない構造を有し、ピニオンギヤ3の歯先と第1円弧壁541との間に、微少の隙間が存在しているためである。ピニオンギヤ3側においては、当該隙間を通じた、吐出ポート12からピニオンギヤ3の歯の間の空間へ漏れ流れが発生する。その結果、第3領域において、ピニオンギヤ3の歯の間の空間の圧力は比較的高い。
【0077】
ピニオンギヤ3の歯の間の空間の圧力が比較的高いため、ピニオンギヤ3側の領域に圧力伝達油路が形成されても当該空間の圧力はそれ以上に高まらない。内接ギヤポンプ1の騒音抑制効果は向上しにくい。その一方で、圧力伝達油路が形成されると、その分、漏れ流れが増えてしまう。内接ギヤポンプ1のポンプ効率が低下する恐れがある。
【0078】
そこで、内接ギヤポンプ1では、リングギヤ4側の領域にのみ、圧力伝達油路91がハウジング内に形成され、ピニオンギヤ3側の領域に、圧力伝達油路は形成されていない。内接ギヤポンプ1の騒音抑制と、ポンプ効率の向上とが両立する。
【0079】
次に、圧力伝達油路91の好ましい長さについて検討する。ここでは、圧力伝達油路91の先端がハウジング10内の第3領域におけるどの位置に位置しているか、によって、圧力伝達油路91の長さを特定する。ここで言う圧力伝達油路91の長さは、直線状の圧力伝達油路91に沿った長さではない。
【0080】
前述したように、圧力伝達油路91は、リングギヤ4の歯の間の空間が吐出ポート12に連通する前に、当該空間の圧力を高める機能を有している。圧力伝達油路91が短すぎると、リングギヤ4の歯の間の空間が吐出ポート12に連通する前に、当該空間の圧力を予め高めることが難しい。圧力伝達油路91が機能を発揮できるための、圧力伝達油路91の最低長さが存在する。
【0081】
具体的に、図3に示すように、圧力伝達油路91の先端は、リングギヤ4の回転軸C2を中心として、吐出ポート12の縁から、リングギヤ4の歯幅TWに相当する角度θ1以上となる位置に位置している。角度θ1以上の位置まで圧力伝達油路91が延びていると、圧力伝達油路91は、リングギヤ4の少なくとも一つの歯を超えて、吐出ポート12と、歯の間の空間とを互いに連通させることができる。圧力伝達油路91は、歯の間の空間が吐出ポート12に到達する前に、当該空間内へ高圧の作動油を供給できる。つまり、圧力伝達油路91は、リングギヤ4の歯の間の空間が吐出ポート12に連通する前に、当該空間の圧力を予め高めることができる。
【0082】
圧力伝達油路91を長くすることは、リングギヤ4の歯の間の空間の圧力を高める上で有利である。しかし、圧力伝達油路91がある程度長くなれば、圧力伝達油路91をそれ以上に長くしても歯の間の空間の圧力は高まらない。一方、圧力伝達油路91が長くなればなるほど、ハウジング10内の漏れ流れが増える。そこで、圧力伝達油路91の先端は、吐出ポート12の縁から、クレセント54の中間位置までの角度θ2以下の範囲に位置している。図例の圧力伝達油路91は、その先端がクレセント54の中間位置に位置している。クレセント54の中間位置は、吐出ポート12から吸込ポート11まで周方向に延びるクレセント54の、周方向についての中間位置である。圧力伝達油路91が長すぎないことによって、リングギヤ4の歯の間の空間の圧力が十分に高まると共に、漏れ流れの増加が抑制できる。
【0083】
(圧力伝達油路の変形例)
図1に示す内接ギヤポンプ1において、圧力伝達油路91は、フロントカバー6の第2支持面61に形成されている。圧力伝達油路91は、ギヤハウジング5の第1支持面52から凹陥するように形成されてもよい。圧力伝達油路91は、フロントカバー6の第2支持面61と、ギヤハウジング5の第1支持面52とのそれぞれに形成されてもよい。
【0084】
圧力伝達油路は直線状に限定されない。図4は、曲線状の圧力伝達油路92を示している。圧力伝達油路92は、圧力伝達油路91と同様に、フロントカバー6の第2支持面61に形成されている。尚、図4の圧力伝達油路92も、図3と同様に、フロントカバー6に形成された圧力伝達油路92を、ギヤハウジング5に投影して示している。
【0085】
圧力伝達油路92は、クレセント54の第2円弧壁542の曲線に沿うように、円弧状に延びている。リングギヤ4の回転軸C2の方向に見た場合に、圧力伝達油路92は、リングギヤ4の歯の間の空間と重なる。圧力伝達油路92は、リングギヤ4の歯の間の空間に連通する。リングギヤ4の歯の間の空間の圧力が第3領域において高まるから、当該空間が吐出ポート12に開放される際の、吐出ポート12の圧力と歯の間の空間の圧力との圧力差は小さい。内接ギヤポンプ1の騒音が抑制される。
【0086】
尚、図4に示す圧力伝達油路92の円弧形状は例示である。曲線状の圧力伝達油路92は、円弧状に限定されない。圧力伝達油路92の深さは、吐出ポート12から離れるに従い、次第に浅くなってもよいし、一定深さであってもよい。圧力伝達油路92の幅は、吐出ポート12から離れるに従い、次第に狭くなってもよいし、一定幅であってもよい。また、圧力伝達油路92の先端の位置は、前述したθ1以上θ2以下の範囲で、任意に設定できる。圧力伝達油路92は、フロントカバー6の第2支持面61に形成される代わりに、又は、第2支持面61に形成されることに加えて、ギヤハウジング5の第1支持面52に形成されてもよい。
【0087】
また、第1支持面52及び/又は第2支持面61に形成される圧力伝達油路は、その途中で折れ曲がっていてもよい。
【0088】
圧力伝達油路は、第1支持面52及び/又は第2支持面61に形成されることに限定されない。図5は、フロントカバー6を取り外した状態における内接ギヤポンプ1の斜視図である。この内接ギヤポンプ1は、クレセント54に形成された圧力伝達油路93を有している。
【0089】
圧力伝達油路93は、クレセント54の第2円弧壁542の上端に形成されている。圧力伝達油路93は、クレセント54の表面が切り欠かれて形成されている。尚、ここでいう上端は、ギヤハウジング5の第1支持面52から立設したクレセント54における、第1支持面52とは逆側の端である。第2円弧壁542の上端は、フロントカバー6の第2支持面61に当接する端である。
【0090】
圧力伝達油路93は、クレセント54における高圧側の端(つまり、図5における左端)から、クレセント54の中間位置まで延びている。圧力伝達油路93は、フロントカバー6の第2支持面61に開口する吐出ポート12に連通する。圧力伝達油路93の長さは、前述したθ1以上θ2以下の範囲で、任意に設定できる。圧力伝達油路93は、図5の構成例では、その幅/深さが、吐出ポート12から離れるに従い、次第に狭く/浅くなっている。圧力伝達油路93の幅/深さは、一定であってもよい。
【0091】
クレセント54に形成された圧力伝達油路93も、前述した圧力伝達油路91、92と同様に、リングギヤ4の歯の間の空間と吐出ポート12とを連通させる。リングギヤ4の歯の間の空間の圧力が第3領域において高まるから、当該空間が吐出ポート12に開放される際の、吐出ポート12の圧力と歯の間の空間の圧力との圧力差は小さい。圧力変動が抑制されるから、内接ギヤポンプ1の騒音が抑制される。
【0092】
尚、クレセント54に形成される圧力伝達油路は、クレセント54の上端に形成されることに限定されない。圧力伝達油路は、クレセント54の第2円弧壁542における上下方向の中間位置に形成されてもよい。圧力伝達油路は、クレセント54の下端に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 内接ギヤポンプ
10 ハウジング
11 吸込ポート
12 吐出ポート
3 ピニオンギヤ
31 外歯
4 リングギヤ
41 内歯
42 外周面
43 第1側面
44 第2側面
5 ギヤハウジング(ハウジング)
51 摺動面
52 第1支持面
54 クレセント
541 第1円弧壁
542 第2円弧壁
6 フロントカバー(ハウジング)
61 第2支持面
8 高圧油供給部
81 導入口
91 圧力伝達油路
92 圧力伝達油路
93 圧力伝達油路
C2 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5