(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183874
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】歯科用アバットメント、歯科補綴物、歯科用アバットメント及び歯科補綴物の接続構造、並びに歯科用インプラント
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097662
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥
(72)【発明者】
【氏名】加藤 牧子
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA44
4C159AA46
(57)【要約】
【課題】歯科補綴物とアバットメントとの位置決めを、簡単かつ適切に行うことができ、アバットメントに対する歯科補綴物の位置ズレを適切に防止する。
【解決手段】歯科用アバットメント20は、歯槽骨1に埋入されるインプラントフィクスチャー10に固定される基部21と、歯科補綴物30に設けられた埋入孔33に固定される埋入部22とを有する。埋入部22は、第1平坦面23a及び第2平坦面23bと、バネ部材24と、を有する。第1平坦面23a及び第2平坦面23bに対応する第1当接面35a及び第2当接面35bが、埋入孔33に設けられている。バネ部材24は、埋入部22を埋入孔33に挿入したときに、第1平坦面23a及び第2平坦面23bが第1当接面35a及び第2当接面35bに押し付けられる方向に埋入部23を付勢する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯槽骨に埋入されるインプラントフィクスチャーに固定される基部と、歯科補綴物に設けられた埋入孔に固定される埋入部とを有する歯科用アバットメントであって、
前記埋入部は、外周に設けられた少なくとも1つの平坦面と、バネ部材と、を有し、
前記平坦面に対応する当接面が、前記埋入孔に設けられており、
前記バネ部材は、前記埋入部を前記埋入孔に挿入したときに、前記平坦面が前記当接面に押し付けられる方向に前記埋入部を付勢する
ことを特徴とする歯科用アバットメント。
【請求項2】
前記バネ部材は、前記埋入部の軸線方向に沿って配置されて前記埋入部の外径方向及び内径方向に可動する板バネからなる
ことを特徴とする請求項1に記載の歯科用アバットメント。
【請求項3】
前記板バネは、ヤング率が200GPa以下の弾性変形可能な材料からなる
ことを特徴とする請求項2に記載の歯科用アバットメント。
【請求項4】
前記平坦面は、前記埋入部の外周に複数設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の歯科用アバットメント。
【請求項5】
前記平坦面は、前記埋入部の外周を該埋入部の軸に沿って矩形状に切欠いて設けられた第1平坦面及び第2平坦面から構成され、前記第1平坦面及び前記第2平坦面と、前記バネ部材は、前記埋入部の中心軸を挟んで互いに対向して設けられるとともに、前記第1平坦面の軸線方向の一辺の2つの端点A及び端点C及び前記第2平坦面の軸線方向の一辺の2つの端点B及び端点Dのうち、前記バネ部材に近い側の前記端点Aと前記端点B間の距離をαとし、前記バネ部材から離れた側の前記端点Cと前記端点D間の距離をβとしたとき、α>βを満足する
ことを特徴とする請求項1に記載の歯科用アバットメント。
【請求項6】
歯槽骨に埋入されるインプラントフィクスチャーに、歯科用アバットメントを介して固定される歯科補綴物であって、
前記歯科用アバットメントは、外周に設けられた少なくとも1つの平坦面と、バネ部材と、を有し前記歯科補綴物に固定される埋入部を備え、
前記歯科補綴物は、前記平坦面に対応する当接面を有し前記埋入部が挿入される埋入孔を備え、
前記バネ部材は、前記埋入部を前記埋入孔に挿入したときに、前記平坦面が前記当接面に押し付けられる方向に前記埋入部を付勢する
ことを特徴とする歯科補綴物。
【請求項7】
歯科用インプラントに用いられる歯科用アバットメント及び歯科補綴物の接続構造であって、
前記歯科用アバットメントは、外周に設けられた少なくとも1つの平坦面と、バネ部材と、を有し前記歯科補綴物に固定される埋入部を備え、
前記歯科補綴物は、前記平坦面に対応する当接面を有し前記埋入部が挿入される埋入孔を備え、
前記バネ部材は、前記埋入部を前記埋入孔に挿入したときに、前記平坦面が前記当接面に押し付けられる方向に前記埋入部を付勢する
ことを特徴とする歯科用アバットメント及び歯科補綴物の接続構造。
【請求項8】
インプラントフィクスチャーと、歯科用アバットメントと、歯科補綴物と、を備える歯科用インプラントであって、
前記歯科用アバットメントは、前記インプラントフィクスチャーに固定される基部と、前記歯科補綴物に固定される埋入部と、を備え、
前記埋入部は、外周に設けられた少なくとも1つの平坦面と、バネ部材と、を有し、
前記歯科補綴物は、前記平坦面に対応する当接面を有し前記埋入部が挿入される埋入孔を備え、
前記バネ部材は、前記埋入部を前記埋入孔に挿入したときに、前記平坦面が前記当接面に押し付けられる方向に前記埋入部を付勢する
ことを特徴とする歯科用インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科用アバットメント、歯科補綴物、歯科用アバットメント及び歯科補綴物の接続構造、並びに歯科用インプラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯槽骨内に埋入されたインプラントフィクスチャーに、クラウン等の歯科補綴物を、歯科用アバットメントを介して固定する歯科用インプラントに関する技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1には、歯科補綴物の埋入孔にアバットメントの埋入部を挿入すると、埋入孔の内周面に形成された第1平坦面と、埋入部の外周部に形成された第2平坦面とが対応して配置されるとともに、埋入孔に形成された突起部が切削されることで、歯科補綴物とアバットメントとが位置決めされ、アバットメントと歯科補綴物が強固に接続固定されて回転等の位置ズレを防止する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、歯科補綴物の埋入孔に埋入されるアバットメントの埋入部が軸線方向に延びる複数の薄板等からなる拡張部を有し、埋入部を埋入孔に挿入した状態で、これらをネジ部品でフィクスチャーに固定すると、ネジ部品により拡張部に横方向の力が加わって弾性的に拡張部の外径が増大し、歯科補綴物がアバットメントに固定され、歯科補綴物の移動を阻止する技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、歯科補綴物とアバットメントとの固定時に突起部が切削されるため、やり直しがきかず、歯科技工士等は高い技量が必要とされていた。また、突起部は修復できないため、切削過多の場合等には歯科補綴物を作り直さざるを得ないことがあった。また、特許文献2に記載の従来技術では、ネジ部品を取り付けるまではアバットメントと歯科補綴物とが固定されず、フィクスチャーへの取り付け作業中に不測に位置ズレを生じる可能性があった。また、拡張部の構造が複雑で部品点数も多いため、アバットメントの製造や組み立てが煩雑であるとともに、この複雑な形状の拡張部に対応させて、歯科補綴物の内面を複雑な形状で加工する必要があり、歯科補綴物の加工作業も煩雑となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/169037号
【特許文献2】特表2019-529047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、上記問題に着目してなされたもので、アバットメントと歯科補綴物との位置決めを、簡単かつ適切に行うことができ、アバットメントに対する歯科補綴物の位置ズレを適切に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の歯科用アバットメントは、歯槽骨に埋入されるインプラントフィクスチャーに固定される基部と、歯科補綴物に設けられた埋入孔に固定される埋入部とを有する歯科用アバットメントである。前記埋入部は、外周に設けられた少なくとも1つの平坦面と、バネ部材と、を有し、前記平坦面に対応する当接面が、前記埋入孔に設けられており、前記バネ部材は、前記埋入部を前記埋入孔に挿入したときに、前記平坦面が前記当接面に押し付けられる方向に前記埋入部を付勢する。
また、本開示の歯科補綴物は、歯槽骨に埋入されるインプラントフィクスチャーに、歯科用アバットメントを介して固定される歯科補綴物である。前記歯科用アバットメントは、外周に設けられた少なくとも1つの平坦面と、バネ部材と、を有し前記歯科補綴物に固定される埋入部を備え、前記歯科補綴物は、前記平坦面に対応する当接面を有し前記埋入部が挿入される埋入孔を備え、前記バネ部材は、前記埋入部を前記埋入孔に挿入したときに、前記平坦面が前記当接面に押し付けられる方向に前記埋入部を付勢する。
また、本開示の歯科用アバットメント及び歯科補綴物の接続構造は、歯科用インプラントに用いられる歯科用アバットメント及び歯科補綴物の接続構造である。前記歯科用アバットメントは、外周に設けられた少なくとも1つの平坦面と、バネ部材と、を有し前記歯科補綴物に固定される埋入部を備え、前記歯科補綴物は、前記平坦面に対応する当接面を有し前記埋入部が挿入される埋入孔を備え、前記バネ部材は、前記埋入部を前記埋入孔に挿入したときに、前記平坦面が前記当接面に押し付けられる方向に前記埋入部を付勢する。
また、本開示の歯科用インプラントは、インプラントフィクスチャーと、歯科用アバットメントと、歯科補綴物と、を備える歯科用インプラントである。前記歯科用アバットメントは、前記インプラントフィクスチャーに固定される基部と、前記歯科補綴物に固定される埋入部と、を備え、前記埋入部は、外周に設けられた少なくとも1つの平坦面と、バネ部材と、を有し、前記歯科補綴物は、前記平坦面に対応する当接面を有し前記埋入部が挿入される埋入孔を備え、前記バネ部材は、前記埋入部を前記埋入孔に挿入したときに、前記平坦面が前記当接面に押し付けられる方向に前記埋入部を付勢する。
【発明の効果】
【0009】
このように構成されることで、埋入部は埋入孔に対して回転方向において平坦面が当接面に当接する方向に導かれ、平坦面が当接面に押し付けられつつ当接する。これにより、アバットメントと歯科補綴物の位置決めが適切に行われるとともに、これらの回転方向への相対的な移動が防止される。したがって、アバットメントと歯科補綴物との位置決めを、簡単かつ適切に行うことができ、アバットメントに対する歯科補綴物の位置ズレを適切に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る歯科用インプラントの分解図である。
【
図2】第1実施形態に係る歯科用インプラントの使用状態を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るアバットメントの側面図、正面図、斜視図及び平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る歯科補綴物の構成を説明するための説明図であり、(a)はアバットメントが固定された前歯用の歯科補綴物の正面図であり、(b)は前歯用の歯科補綴物の底面図である。
【
図5】第1平坦面及び第2平坦面と、バネ部材の好適な構成を説明するための説明図であって(a)は第1平坦面及び第2平坦面と、バネ部材の好ましい位置関係を示す図であり、(b)は第1平坦面及び第2平坦面の厚みを最小としたときの、これらとバネ部材の位置関係を示す図である。
【
図9】変形例4のアバットメントの側面図及び背面図である。
【
図10】変形例5のアバットメントの平面図である。
【
図11】変形例6のアバットメントの平面図である。
【
図12】変形例7のアバットメントの平面図である。
【
図13】変形例8のアバットメントの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る歯科用アバットメント、歯科補綴物及び歯科用インプラントについて、図面を参照しながら説明する。
【0012】
まず、第1実施形態に係る歯科用インプラント100の構成を、
図1の分解図及び
図2の断面図を参照しながら説明する。
図1、
図2に示すように、歯科用インプラント100は、インプラントフィクスチャー10(以下、単に「フィクスチャー10」という。)と、歯科用アバットメント20(以下、単に「アバットメント20」という。)と、歯科補綴物30と、スクリュー40とを主に有する。
【0013】
フィクスチャー10は、患者の顎骨の歯槽骨1(
図2参照)に形成されたインプラント窩2に埋入される。フィクスチャー10は、軸状の本体部11と、この本体部11の外周に設けられたスクリュー部12とを有するスクリュー型のフィクスチャーである。本体部11は、インプラント窩2に挿入される一端側(後端側)が閉じ、アバットメント20を取り付ける他端側(先端側)が開口した構成であり、アバットメント20の後述する基部21を嵌合して固定する嵌合孔13と、スクリュー40の雄ネジ部41が螺着されるネジ孔(雌ネジ)14が設けられている。
【0014】
このような構成のフィクスチャー10は、歯槽骨1の歯の欠損部分に形成されたインプラント窩2にねじ込まれることで、歯槽骨1に固定される。なお、フィクスチャー10は、この構成に限定されることはなく、スクリュー部12を有せず、インプラント窩2に嵌合されることで歯槽骨1に固定されるシリンダ型のフィクスチャーとすることもできる。
【0015】
フィクスチャー10の材料は、例えば、チタン、チタン合金等の金属、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスが好適に挙げられるが、これらに限定されない。本実施形態では、フィクスチャー10は、チタン合金から形成されている。
【0016】
以下、本明細書では、インプラント100及びこれを構成する各部(フィクスチャー10、アバットメント20、歯科補綴物30)において、インプラント100の軸に沿った方向を軸線方向といい、歯槽骨1に挿入される側を後端又は根端といい、その反対側(歯科補綴物30に向かう方向)を先端という。また、歯や歯科補綴物30において、舌方向に配置される面を舌側面といい、舌方向とは反対方向、つまり唇や頬方向(以下、「唇頬側方向」という。)に向けて配置される面を唇頬側面という。
【0017】
次に、アバットメント20の構成について、
図3を参照して説明する。アバットメント20は、基部21と、埋入部22とを有する。基部21は、スクリュー挿通孔21aを有し、軸に沿った断面形状が矩形の筒状部材からなり、フィクスチャー10の嵌合孔13に嵌合される。スクリュー挿通孔21aは、スクリュー40の雄ネジ部41が挿通される孔であり、雄ネジ部41の外径(最大外径)と略同一の内径を有する。
【0018】
埋入部22は、スクリュー収容孔22aを有し、基部21よりも大径であって、軸に沿った断面形状が矩形又は台形の筒状部材からなる。埋入部22は、後述する歯科補綴物30の埋入孔33に挿入され、セメント剤等の歯科用接着剤によって固定される。スクリュー収容孔22aの内径は、スクリュー挿通孔21aの内径よりも大きく、スクリュー40の頭部42を収容可能な大きさとなっている。基部21と埋入部22との間(スクリュー挿通孔21aとスクリュー収容孔22aとの間)は、スクリュー収容孔22aに配置されたスクリュー40の頭部42が係合される係合部22bが設けられている。
【0019】
また、埋入部22は、外周に2つの平坦面23、すなわち第1平坦面23a及び第2平坦面23bと、バネ部材24とが設けられている。以下、第1平坦面23aと第2平坦面23bを区別しないときは、単に平坦面23という。第1平坦面23a及び第2平坦面23bは、埋入部22の筒状の外周面の一部を埋入部22の軸に沿って略矩形状に切欠いて、内方(内径方向、外から中心に向かう方向)に凹んだ形状となっている。このような第1平坦面23a及び第2平坦面23bは、例えば、埋入部22の外周面を、軸に沿ってカットする、いわゆるDカットによって形成することができるが、これに限定されず、第1平坦面23a及び第2平坦面23bに対応する平坦面を有する型枠等により形成してもよい。
【0020】
なお、平坦面23が、このような切欠き形状に限定されず、他の異なる形状として、平坦面23は、埋入部22の外周面の一部を外方(外径方向、中心から外に向かう方向)に突出させた形状であってもよく、埋入部22の本体部分の曲面からなる外周面に対して平坦な面が形成されればよい。
【0021】
第1平坦面23a及び第2平坦面23bの円周方向の長さ(幅)は、1mm以上であることが好ましい。また、第1平坦面23a及び第2平坦面23bの厚みは、0.4mm以上が好ましい。このような寸法とすることで、第1平坦面23a及び第2平坦面23bによるアバットメント20と歯科補綴物30の位置決めを、適切に行うことができるとともに、アバットメント20の強度を適切に保つことができる。なお、第1平坦面23a及び第2平坦面23bの寸法が、上記寸法に限定されることはなく、アバットメント20の大きさ、材質等によって適宜変更することができる。
【0022】
バネ部材24は、埋入部22の軸線方向に沿って配置されて埋入部22の外径方向及び内径方向に可動する板バネからなり、埋入部22を埋入孔33内においてその内面に押し付ける方向に付勢する。本実施形態では、バネ部材24は、埋入部22の壁面の一部を、矩形状に切欠くことで形成された、片持ち構造をなす板バネである。バネ部材24は、後端が切り取られずに埋入部22の本体部分に連結された固定端となっており、この固定端近傍を谷折り線として外方(外径方向)に折り曲げられることで、先端側が外径方向及び内径方向に可動する自由端となっている。なお、バネ部材24は、埋入部22の壁面の先端よりもやや後端側までを切欠いて形成され、埋入部22の壁面の先端側は切欠きのない構造となっているが、バネ部材24は、埋入部22の壁面を先端側まで切欠いて形成してもよく、作製の行い易さや材質等によって適宜選択できる。
【0023】
また、バネ部材24を切欠くことで埋入部22に形成される開口部分は、バネ部材24を収容可能な収容部25となっている。また、埋入部22は、後端側(基部21側)に、外方(外径方向)に突出する環状の鍔部26が設けられている。この鍔部26は、歯科補綴物30の後端が配置されることで、歯科補綴物30を支持する支持部やストッパとして機能する。また、埋入部22の後端は、フィクスチャー10の先端に突き当てる突当部27となっている。
【0024】
アバットメント20の材料は、例えば、チタン、チタン合金、ステンレス鋼等の金属、アルミナ、ジルコニア等のセラミックス、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の樹脂が好適に挙げられるが、これらに限定されない。また、バネ部材24は、ヤング率が200GPa以下の弾性変形可能な材料からなることが好ましく、ヤング率が100~120GPaの弾性変形可能な材料からなることがより好ましい。
【0025】
本実施形態のアバットメント20は、例えば、ヤング率が106Gpaのチタン、ヤング率が113Gpaのチタン合金から形成されている。このような材料で形成されることで、アバットメント20は、強度、耐久性、生体親和性に優れ、さび等の変質を抑制することができ、さらにバネ部材24は、形状記憶性等に優れ、弾性変形によって適切な付勢力を維持可能なものとなる。
【0026】
次に、平坦面23とバネ部材24との好適な構成について、
図5を参照しながら説明するが、これらの構成は
図5の構成に限定されない。平坦面23とバネ部材24は、アバットメント20の中心軸Iを挟んで互いに対向して配置されることが好ましい。この構成により、バネ部材24によって平坦面23を当接面35に押し付ける方向に、適切かつ効率的に付勢することができる。
【0027】
また、平坦面23は、本実施形態のように、埋入部22の外周を埋入部22の軸に沿って矩形状に切欠いて設けられた2つ(一対)の平坦面23、つまり第1平坦面23a及び第2平坦面23bから構成されることが好ましい。この構成により、アバットメント20は、歯科補綴物30に対して、時計回り方向及び反時計回り方向において、第1平坦面23a及び第2平坦面23bが、後述する埋入孔33の第1当接面35a及び第2当接面35bへ当接する方向に導かれ、アバットメント20と歯科補綴物30の位置決めがより適切に行われる。
【0028】
また、第1平坦面23aの軸線方向の一辺(先端側の辺)の2つの端点A、C及び第2平坦面23bの軸線方向の一辺(先端側の辺)の2つの端点B、Dのうち、バネ部材24に近い側の端点Aと端点B間(線分AB)の距離をαとし、バネ部材24から離れた側の端点Cと端点D間(線分CD)の距離をβとしたとき、下記式(1)を満足することが好ましい。
【0029】
α>β (1)
【0030】
さらに、バネ部材24は、端点Cと端点Dとを結んだ線分CDの二等分線E上であって、第1平坦面23a及び第2平坦面23bと、中心軸Iを挟んで対向して配置されることが好ましい。言い換えれば、第1平坦面23a及び第2平坦面23bは、埋入部22の中心軸Iとバネ部材24の円周方向の中心Jとを含む平面を挟んで面対称に設けられることが好ましい。
【0031】
上記のような配置関係とすることで、埋入部22が埋入孔に挿入されたときに、バネ部材24は、第1平坦面23aと第2平坦面23bとを、埋入孔33に押し付ける方向に略均等な付勢力で付勢する。また、この付勢力と、面対称に設けられた第1平坦面23a及び第2平坦面23bにより、歯科補綴物30は、時計回り方向及び反時計回り方向の何れかに回転しながら、第1平坦面23a及び第2平坦面23bが、各々第1当接面35a及び第2当接面35bに当接する位置に、つまり最適な位置(ベストポジション)に配置されるように導かれる。この結果、第1平坦面23a及び第2平坦面23bが、各々第1当接面35a及び第2当接面35bに、押し付けられつつ当接して配置され、アバットメント20と歯科補綴物30との位置決めが、より適切に行われるとともに、回転方向への位置ズレもより適切に防止される。
【0032】
さらに、第1平坦面23a及び第2平坦面23bは、上記各条件を満足しつつ、
図5の(b)に示すように、厚みが0.4mm以上であることが好ましい。このような厚みとすることで、第1平坦面23a及び第2平坦面23bを設けた部分、さらにはアバットメント20全体が、外力等によって変形や破損を生じにくい強度を有するものとなる。
【0033】
歯科補綴物30は、セラミック系材料、ジルコニア系材料、チタン等の金属材料等を歯の形に加工して形成された補綴物本体31を有する。この補綴物本体31は、
図1、
図2に示すように、貫通孔32と、埋入孔33とを有する。
【0034】
貫通孔32は、補綴物本体31を貫通して設けられた筒状の孔であり、フィクスチャー10の本体部11内に設けられたネジ孔14に螺着するスクリュー40が挿通される。貫通孔32は、スクリュー40の頭部42を挿通可能な内径を有している。
【0035】
埋入孔33は、貫通孔32の後端側に設けられ、アバットメント20の埋入部22が埋入される筒状の孔である。埋入孔33の内径は、貫通孔32の内径よりも大きく形成され、埋入孔33と貫通孔32との間には、埋入部22の先端が突き当たる段部34が設けられている。この段部34により、埋入孔33への埋入部22の過剰な挿入が防止される。
【0036】
また、埋入孔33は、アバットメント20の平坦面23が当接する面であって、この平坦面23に対応する平坦な形状で形成された当接面35が設けられている。本実施形態では、第1平坦面23a及び第2平坦面23bに対応して、埋入孔33は、第1当接面35a及び第2当接面35bからなる2つの当接面が設けられている。
【0037】
また、埋入孔33の内面形状は、第1当接面35a及び第2当接面35bを設けた以外の部分も、埋入部22の外面形状に対応した形状に形成されている。すなわち、埋入孔33は、バネ部材24が収容部25に収容された状態の埋入部22が収まり、第1平坦面23a及び第2平坦面23bが、第1当接面35a及び第2当接面35bに当接するような形状と寸法合わせで形成されている。
【0038】
なお、埋入孔33の内面形状が、埋入部22の外面形状に厳密に対応するような寸法合わせで形成されていなくてもよい。埋入孔33と埋入部22の形状、寸法に多少の製造公差を生じていても、埋入孔33内で、バネ部材24が、外径方向に可動することで、埋入部22の外径が実質的に拡大し、かつ、バネ部材24によって埋入部22の本体部分が埋入孔33の内面に押し付けられる。これによって、歯科補綴物30とアバットメント20とが固定(仮止め)され、歯科補綴物30とアバットメント20の相対的な回転やぐらつき等を抑制することができ、製造公差を吸収することができる。
【0039】
上述のような構成の歯科用インプラント100の作製手順及びインプラント治療手順を説明する。まず、歯科補綴物30を作製する際には、歯槽骨1にフィクスチャー10を埋め込んだ状態で、歯科医師等が患者の歯型の印象を取得する。アナログ印象法の場合は、歯科医師が印象剤を用いて型取りを行い、石膏模型を作製する。ついで、作製者は、3次元計測装置を用いて石膏模型の3次元スキャンを行い、スキャン結果に基づきコンピュータ上でデジタル模型を作製する。一方、デジタル印象法の場合は、歯科医師等が、口腔内スキャナー等を用いて患者の口腔内をスキャンし、デジタル模型を作製する。
【0040】
次に、作製者は、アナログ印象法又はデジタル印象法で作製されたデジタル模型を用いて、歯科用CADソフトウェアにより歯科補綴物30の外面形状及び内面形状を設計する。この歯科補綴物30を固定するアバットメント20は、第1平坦面23a及び第2平坦面23bと、バネ部材24を有するアバットメント20を有している。このため、作製者又はシステム担当者等は、歯科用CADソフトウェアに、予め埋入孔33の内面形状のデータ又は設計プログラムをインストールしておくことで、歯科用CADソフトウェアに第1当接面35a及び第2当接面35bを有する埋入孔33が設けられた内面形状の設計データを生成させることができる。
【0041】
そして、作製者は、この設計データをCAMソフトウェアに読み込ませ、演算によってNCデータを作成し、切削加工機に、例えばセラミックスブロックを装着し、コンピュータ制御により切削工具を用いて、セラミックスブロックを切削加工させる。これにより、第1当接面35a及び第2当接面35bを有する埋入孔33等を備える第1実施形態の歯科補綴物30が作製される。
【0042】
ところで、歯には唇頬側方向に向く唇頬側面と、舌方向に配置される舌側面とがあり、歯科補綴物30にも唇頬側面と舌側面とがある。これを鑑みて、例えば、歯科補綴物30は、唇頬側面となる側の内面に、当接面35を設けることが好ましい。このような構成とすることで、歯科補綴物30が固定されたアバットメント20をフィクスチャー10に固定したときに、当接面35及び平坦面23が、唇頬側面側であって唇頬側方向に向いて配置される。これにより、バネ部材24による付勢力が、歯科補綴物30の唇頬側面に分散して作用し、歯科補綴物30への負荷を低減することができる。また、当接面35及び平坦面23との当接によって、使用時の歯科補綴物30の回転等も適切に防止することができる。なお、平坦面23及び当接面35の向きが第1実施形態の向きに限定されず、治療手順や作業の行い易さに応じて、任意の方向を向くように配置してもよい。
【0043】
図1、
図2には、奥歯(臼歯)用の歯科補綴物30が示され、この歯科補綴物30の唇頬側面となる側に、当接面35(
図1参照)が設けられている。これに対して、
図4は、前歯(切歯)用の歯科補綴物30を示している。この
図4の(a)は、アバットメント20が固定された前歯用の歯科補綴物30であり、歯科補綴物30の唇頬側面となる側に第1当接面35a及び第2当接面35bが設けられ、各々にアバットメント20の第1平坦面23a及び第2平坦面23bが当接している。
図4の(b)は、前歯用の歯科補綴物30の底面図であり、埋入孔33は、唇頬側面側に第1当接面35a及び第2当接面35bが設けられており、埋入部22の外面形状に対応した内面形状に形成されている。
【0044】
上記のようにして作製したアバットメント20と歯科補綴物30とが、患者の歯槽骨1に嵌合したフィクスチャー10に固定されることで、歯の欠損部分のインプラント治療が行われる。それには、まず、歯科医師等が、アバットメント20の埋入部22の外周面や歯科補綴物30の埋入孔33の内面に、セメント剤等の歯科用接着剤を塗布して、埋入部22を埋入孔33に挿入し、アバットメント20に歯科補綴物30を接着固定する。
【0045】
ところで、従来技術では、埋入部を埋入孔に挿入すると、突起部が切削されるためにやり直しがきかないとか、フィクスチャーへの固定用のネジ部品を取り付けるまではアバットメントと歯科補綴物とが固定されない等の問題があった。
【0046】
これに対して、第1実施形態の歯科用インプラント100では、アバットメント20の埋入部22は、外周に設けられた第1平坦面23a及び第2平坦面23bと、バネ部材24と、を有している。一方、歯科補綴物30は、第1平坦面23a及び第2平坦面23bに対応する第1当接面35a及び第2当接面35bが設けられた埋入孔33を備えている。この構成により、第1実施形態では、上記問題を解消することができる。
【0047】
第1実施形態のアバットメント20と歯科補綴物30とを接着固定するに際して、歯科医師等は、内径方向にバネ部材24を押して、収容部25内にバネ部材24を収納する。この状態で、埋入部22を埋入孔33に挿入すると、バネ部材24は、復元して外径方向に可動し、埋入部22を付勢する。これにより、埋入部22は、円周方向(回転方向)において、第1平坦面23a及び第2平坦面23bが第1当接面35a及び第2当接面35bに当接する方向(ベストポジション)に導かれ、歯科医師等が手動で厳密に位置合わせを行わなくても、第1平坦面23a及び第2平坦面23bと、第1当接面35a及び第2当接面35bとを、迅速かつ精度よく当接させることができる。
【0048】
また、埋入部22と埋入孔33に、製造公差が生じていても、埋入孔33内でバネ部材24の付勢力によって、バネ部材24と埋入部22とが埋入孔33の内面に強く押し付けられ、アバットメント20と歯科補綴物30の相対的な回転やぐらつき等が抑制される。
【0049】
また、バネ部材24の付勢力によってアバットメント20と歯科補綴物30の位置決めと固定が行えるので、例えば、接着剤を塗布する前に、歯科技工士等は、アバットメント20と歯科補綴物30との仮接続(仮止め)を行って、これらの接続状態を確認することができる。また、アバットメント20と歯科補綴物30とを容易に着脱することができ、埋入孔33や埋入部22の微調整と、微調整後の接続状態の確認を、繰り返し行うことも可能である。よって、アバットメント20と歯科補綴物30とを固定する際の作業性や接続精度を向上させることができる。
【0050】
歯科医師は、上述のように歯科補綴物30が接着固定されたアバットメント20を、患者の口腔内のフィクスチャー10に装着する。次いで、歯科医師は、歯科補綴物30の貫通孔32及びアバットメント20のスクリュー挿通孔21aからスクリュー40を挿入して、スクリュー40の雄ネジ部41をフィクスチャー10のネジ孔14に螺着することで、アバットメント20及び歯科補綴物30をフィクスチャー10に固定する。その後、歯科医師が貫通孔32及びスクリュー挿通孔21a内にシリコン、熱可逆性樹脂、コンポジットレジン、セラミック等の充填剤を充填し、これらの孔を封鎖することでインプラント治療が完了する。
【0051】
以上説明したように、第1実施形態のアバットメント20、歯科補綴物30、アバットメント20と歯科補綴物30の接続構造、及び歯科用インプラント100によれば、アバットメント20と歯科補綴物30との位置決めを、簡単かつ適切に行うことができ、アバットメント20に対する歯科補綴物30の位置ズレを適切に防止することができる。
【0052】
この結果、歯科用インプラント100の使用時に、歯科補綴物30の回転等の位置ズレを適切に防止することができ、使用性、耐久性に優れるアバットメント20、歯科補綴物30、アバットメント20と歯科補綴物30の接続構造、及び歯科用インプラント100を提供することができる。
【0053】
(変形例1~変形例8)
次に、変形例1~変形例8に係るアバットメント20A~20Hについて、
図6~
図13を参照しながら説明する。変形例1~変形例8に係るアバットメント20A~20Hは、平坦面23又はバネ部材24の構成が異なること以外は、第1実施形態のアバットメント20と同様の基本構成を備えている。このため、以下では、第1実施形態のアバットメント20と異なる構成について、主に説明する。なお、変形例1~変形例8に係るアバットメント20A~20Hに固定される歯科補綴物30は、変形例1~変形例8に係るアバットメント20A~20Hの平坦面23に対応する当接面35が形成された埋入孔33を有するように設計及び加工がされる。
【0054】
図6は、変形例1のアバットメント20Aの斜視図である。上記第1実施形態のアバットメント20は、埋入部22の外周を基部21の近傍から上端まで切欠いた略矩形の第1平坦面23a及び第2平坦面23bとしている。これに対して、
図6に示す変形例1のアバットメント20Aは、外周面を上端まで切欠かず、かつ、外周の一部が円弧状になるように切欠いて、帆形(三角形)の第1平坦面23aと第2平坦面23bとしている。
【0055】
図7に示す変形例2のアバットメント20Bは、第1平坦面23aと第2平坦面23bとの円周方向の間隔が、第1実施形態のアバットメント20のこれらの間隔よりも広く形成されている。
図8に示す変形例3のアバットメント20Cは、第1平坦面23aと第2平坦面23bの軸線方向の長さが、第1実施形態のアバットメント20のこれらの長さよりも短く形成されている。
【0056】
上記変形例1~3のアバットメント20A、20B、20Cによっても、バネ部材24の付勢力と平坦面23によって、歯科補綴物30を、円周方向(回転方向)において適切な位置(平坦面23と当接面35が当接する位置)に導くことができ、適切な位置合わせが可能となる。
【0057】
図9は、変形例4のアバットメント20Dの側面図及び背面図である。この変形例4のアバットメント20Dは、バネ部材24の埋入部22の本体との連結位置が第1実施形態のアバットメント20と異なる。具体的には、第1実施形態のアバットメント20は、埋入部22の壁面を、基部21側から先端に向かって矩形状に切欠かれて形成され、バネ部材24の基部21側(後端側)が埋入部22の本体部分と連結されている。これに対して、変形例4のアバットメント20Dは、壁面を先端側から基部21側に向かって矩形状に切欠き、埋入部22の先端側において、バネ部材24は埋入部22の本体部分と連結されている。このような構成でも、バネ部材24は、平坦面23が当接面35に押し付けられる方向に埋入部22を付勢し、適切な位置合わせが可能となる。さらに、埋入部22を埋入孔33に挿入する際に、バネ部材24を人手で押さなくても、埋入孔33の内面に押されて、バネ部材24が収容部25に収容される方向(内径方向)に可動するため、より円滑な挿入が可能となる。
【0058】
図10に示す変形例5のアバットメント20Eは、バネ部材24と対向する平坦面23を1つのみ有する。
図11に示す変形例6のアバットメント20Fは、3つの平坦面23(第1平坦面23a、第2平坦面23b及び第3平坦面23c)を有し、第2平坦面23bがバネ部材24と対向して配置され、その両側に面対称に第1平坦面23aと第3平坦面23cが配置されている。
図12に示す変形例7のアバットメント20Gは、4つの平坦面23(第1平坦面23a、第2平坦面23b、第3平坦面23c及び第4平坦面23d)を有し、第1平坦面23a及び第2平坦面23bと、第3平坦面23c及び第4平坦面23dとが、面対称に配置されている。
【0059】
図13に示す変形例8のアバットメント20Hは、2つの平坦面23(第1平坦面23a及び第2平坦面23b)を有するが、第1平坦面23a及び第2平坦面23bの大きさ(幅及び厚み)が異なる。より具体的には、第1実施形態のアバットメント20は、第1平坦面23aは、第2平坦面23bは、面対称(シンメトリー)に形成されている。これに対して、変形例8では、第1平坦面23aと第2平坦面23bとは非対称(アシンメトリー)に形成されている。第1平坦面23aは、第2平坦面23bよりも広い幅で、大きく壁面を切欠いて形成されているため、厚みも第2平坦面23bよりも薄くなっている。
【0060】
上記変形例5~変形例8に係るアバットメント20E~20Hによっても、バネ部材24の付勢力と1つ又は複数の平坦面23によって、歯科補綴物30を、円周方向(回転方向)において適切な位置(平坦面23と当接面35が当接する位置)に導くことができ、適切な位置合わせが可能となる。
【0061】
上記変形例1~変形例8に係るアバットメント20A~20Hは、上記第1実施形態のアバットメント20に代えて、第1実施形態の歯科用インプラント100のアバットメントとして用いることができる。
【0062】
以上、本開示の実施形態及び変形例を図面により詳述してきたが、上記実施形態及び各変形例は本開示の例示にしか過ぎないものであり、本開示は上記実施形態及び各変形例の構成にのみ限定されるものではない。本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本開示に含まれることは勿論である。
【0063】
例えば、上記実施形態及び各変形例では、バネ部材24は、埋入部22の壁面の一部を矩形状に切り欠いて形成された板バネであるが、これに限定されない。例えば、埋入部22とは別個に作製した板バネ又は市販の板バネを、埋入部22の外周に溶接、接着等によって固定してもよいし、金具等の適宜の取付部材によって埋入部22の外周に取り付けてもよい。また、埋入部22は、埋入孔33に挿入されたときに、バネ部材24が収容される収容部25を有しているが、必ずしも収容部25を設ける必要はなく、バネ部材24が埋入部22の外周に積層される構成としてもよい。
【0064】
また、バネ部材24は、板バネに限定されず、平坦面23を当接面35に押し付ける方向に埋入部22を付勢可能であればよい。例えば、他の異なる例として、バネ部材24は、コイルバネ、ねじりバネ、ぜんまいバネ、ゴム等の弾性体等であってもよい。
【0065】
また、上記実施形態及び各変形例のアバットメント20~20Hは、既存の歯科補綴物を固定して用いることができる。具体的には、当接面に相当する平坦な面が埋入孔に形成された既存の歯科補綴物を用いることができる。このような既存の歯科補綴物の埋入孔に対応する寸法合わせで、作製者は平坦面及びバネ部材を設けてアバットメント20~20Hの埋入部を作製する。これにより、埋入孔に埋入部を挿入したときに、平坦面とバネ部材との上述したような作用によって、既存の歯科補綴物とアバットメント20~20Hとの位置合わせを適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 :歯槽骨 10 :インプラントフィクスチャー
20~20H :歯科用アバットメント
21 :基部 22 :埋入部
23 :平坦面 23a :第1平坦面
23b :第2平坦面 23c :第3平坦面
23d :第4平坦面 24 :バネ部材
30 :歯科補綴物 33 :埋入孔
35 :当接面 35a :第1当接面
35b :第2当接面 100 :歯科用インプラント