(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183875
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電気集塵装置
(51)【国際特許分類】
B03C 3/70 20060101AFI20231221BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20231221BHJP
F01N 3/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B03C3/70 Z
B03C3/40 A
F01N3/02 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097665
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 悠二
(72)【発明者】
【氏名】高野 哲美
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 禎弥
【テーマコード(参考)】
3G190
4D054
【Fターム(参考)】
3G190AA12
3G190BA21
3G190BA38
3G190CA21
4D054AA03
4D054BA02
4D054BC18
4D054BC31
4D054CA11
4D054EA19
(57)【要約】
【課題】ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、碍子の表面に排ガス中の粒子状物質が付着することを低減し、碍子の絶縁性を維持する電気集塵装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様は、ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、前記排ガスが流入する入口と前記排ガスが流出する出口とを有し、高電圧電極が配置された筒型の筐体と、前記筐体の側面に前記筐体の軸方向に間隔を空けて設けられ、気体を前記筐体の内部に供給する複数のエアパージ部と、前記複数のエアパージ部のそれぞれに設けられ、前記高電圧電極を支持する複数の碍子と、を備え、前記複数のエアパージ部のそれぞれに供給される前記気体の流量は、前記複数のエアパージ部のそれぞれの位置における前記排ガスの圧力に応じた流量となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、
前記排ガスが流入する入口と前記排ガスが流出する出口とを有し、高電圧電極が配置された筒型の筐体と、
前記筐体の側面に前記筐体の軸方向に間隔を空けて設けられ、気体を前記筐体の内部に供給する複数のエアパージ部と、
前記複数のエアパージ部のそれぞれに設けられ、前記高電圧電極を支持する複数の碍子と、
を備え、
前記複数のエアパージ部のそれぞれに供給される前記気体の流量は、前記複数のエアパージ部のそれぞれの位置における前記排ガスの圧力に応じた流量となる電気集塵装置。
【請求項2】
前記複数のエアパージ部のそれぞれの圧力は、前記入口の圧力よりも高く、
前記排ガスの流通方向の最も下流側に位置する前記エアパージ部に供給される前記気体の流量は、前記排ガスの流通方向の上流側に隣接する前記エアパージ部に供給される前記気体の流量よりも大きく、
前記排ガスの流通方向の最も下流側に位置する前記エアパージ部を除いて、前記複数のエアパージ部に供給される前記気体の流量は、前記排ガスの流通方向の上流側から下流側に向かうに従い小さくなる請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記エアパージ部は、N個(Nは2以上の整数)設けられ、
前記入口側から1番目、2~(N-2)番目、(N-1)番目、N番目の前記エアパージ部に供給される前記気体の流量の分配比は、1:0.5~0.7:0.25~0.35:0.40~0.45である請求項2に記載の電気集塵装置。
【請求項4】
前記N個のエアパージ部に前記気体を供給する気体供給部と、
前記N個のエアパージ部のそれぞれに接続され、前記気体供給部から供給された前記気体を流通させるN個の供給管と、
を備え、
前記入口側から1番目、2~(N-2)番目、(N-1)番目、N番目の前記エアパージ部に接続される前記供給管の断面積の比は、1:0.65~0.85:0.3~0.5:0.3~0.5である請求項3に記載の電気集塵装置。
【請求項5】
前記N個の供給管のうち、前記入口側から2~(N-2)番目の前記エアパージ部に接続される前記供給管それぞれの長さは、前記入口側から1番目の前記エアパージ部に接続される前記供給管の長さ及び前記入口側からN番目の前記エアパージ部に接続される前記供給管の長さのいずれよりも長い請求項4に記載の電気集塵装置。
【請求項6】
前記N個の供給管のそれぞれに設けられたN個のバルブと、N個の圧力計と、を備え、
前記入口側から1番目、2~(N-2)番目、(N-1)番目、N番目の前記エアパージ部に接続される前記供給管に設けられた前記バルブの開口率の比は、1:0.8~0.9:0.65~0.75:1である請求項4に記載の電気集塵装置。
【請求項7】
前記筐体内に設けられた、前記粒子状物質を帯電する帯電部と、
前記帯電部の前記出口側に連接し、帯電した前記粒子状物質を集塵する集塵部と、
を備え、
前記高電圧電極は、前記帯電部及び前記集塵部のそれぞれに設けられ、
前記集塵部に設けられた前記高電圧電極は、高電圧支持電極と、高電圧平板電極とを含み、
前記高電圧平板電極は、前記入口側から、(N-1)番目の前記エアパージ部とN番目の前記エアパージ部との間の前記筐体内に配置されている請求項3又は4に記載の電気集塵装置。
【請求項8】
前記気体供給部は、1つのブロワからなり、
前記ブロワと前記N個のエアパージ部との間に設けられた分流器を備える請求項4に記載の電気集塵装置。
【請求項9】
前記入口における前記排ガスの流量をQp、前記入口の断面積をSg、それぞれの前記エアパージ部の前記気体の流量をQpa、それぞれの前記エアパージ部の断面積をSgaとしたとき、下記式(1)を満たす請求項1から3のいずれか一項に記載の電気集塵装置。
Qp/Sg < Qpa/Sga・・・(1)
【請求項10】
前記エアパージ部は、前記筐体に対して着脱可能である請求項1から3のいずれか一項に記載の電気集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接地電極と高電圧電極との間の電圧によってコロナ放電を発生させることにより、ガス中の粒子状物質を除去する電気集塵装置が知られている。このような電気集塵装置において、電気集塵装置の運転時、電気集塵装置内に流入するガス中の粒子状物質が、高電圧電極を絶縁支持する碍子に付着すると、粒子状物質を介して電気集塵装置の筐体にリーク電流が生じる。これに対して、碍子を碍子室内に収容し、碍子室へ外部から気体を加圧供給することにより、碍子室内に粒子状物質が流入することを防止するエアパージ方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エアパージ方式を採用した従来の電気集塵装置は、ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する際、排ガスの脈動や温度分布により、排ガスの入口側と出口側とで圧力が変化するところ、いずれの位置においても一定の圧力又は流量でエアパージすることになる。よって、エアパージの圧力又は流量が不十分な位置において、碍子室内に粒子状物質が流入し碍子に付着して、電気集塵装置の筐体にリーク電流が生じる可能性がある。
【0005】
上記の点に鑑みて、本発明の一態様は、ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、碍子の表面における排ガス中の粒子状物質の付着を低減し、碍子の絶縁性を維持する電気集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、前記排ガスが流入する入口と前記排ガスが流出する出口とを有し、高電圧電極が配置された筒型の筐体と、前記筐体の側面に前記筐体の軸方向に間隔を空けて設けられ、気体を前記筐体の内部に供給する複数のエアパージ部と、前記複数のエアパージ部のそれぞれに設けられ、前記高電圧電極を支持する複数の碍子と、を備え、前記複数のエアパージ部のそれぞれに供給される前記気体の流量は、前記複数のエアパージ部のそれぞれの位置における前記排ガスの圧力に応じた流量となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、碍子の表面における排ガス中の粒子状物質の付着を低減し、碍子の絶縁性を維持する電気集塵装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態による電気集塵装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0010】
本発明の一実施形態による電気集塵装置について説明する。
【0011】
図1は、一実施形態による電気集塵装置1の斜視図であり、
図2は、
図1のX-Y断面を示す図である。本発明の一実施形態による電気集塵装置1は、ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス(排気ガス)中の粒子状物質を捕集する。排ガスは、例えば、船舶等の移動体に搭載されるエンジンから排出される排ガスである。移動体は、船舶に限定されず、車両等でもよい。粒子状物質は、例えば、ブラックカーボン等を含む。
【0012】
図1及び
図2に示すように、電気集塵装置1は、排ガスGが流入する入口21と排ガスGが流出する出口22とを有し、高電圧電極3が配置された筒型の筐体2を備える。電気集塵装置1は、
図2に示すように、筐体2内に設けられた、粒子状物質を帯電する帯電部11と、この帯電部11の出口22側に連接し、帯電した粒子状物質を集塵する集塵部12とを備える。高電圧電極3は、帯電部11及び集塵部12のそれぞれに設けられている。帯電部11に設けられた高電圧電極3は、高電圧棘電極31と、高電圧支持電極33とを含んでいてよい。集塵部12に設けられた高電圧電極3は、高電圧平板電極32と、高電圧支持電極34とを含んでいてよい。
【0013】
電気集塵装置1の集塵の動作について説明する。
【0014】
まず、ディーゼルエンジンから排出される排ガスGが帯電部11に供給される。帯電部11では、排ガスGの流通方向(X軸方向)と平行に接地電極61及び高電圧棘電極31が配置されている。よって、隣接する接地電極61間の高電圧棘電極31が配置された空間を排ガスGが流れる。なお、排ガスGの流通方向は、筐体2の軸方向(筐体2の軸に沿う方向)に相当する。
【0015】
そして、帯電部11を流れる排ガスGに含まれる粒子状物質は、コロナ放電によって発生した負イオン流により帯電されて集塵部12に送られる。集塵部12では、排ガスGの流通方向と平行に接地電極62及び高電圧平板電極32が配置されている。よって、隣接する接地電極62の高電圧平板電極32が配置された空間を排ガスGが流れるため、流路抵抗を低減した状態で排ガスGを流すことができる。
【0016】
そして、接地電極62及び高電圧平板電極32間に供給される直流の高電圧によって、静電界が形成され、接地電極62が、集塵部12を流れる排ガスG中の帯電された粒子状物質をクーロン力により吸引して捕集する。
【0017】
帯電部11は、筐体2の軸(排ガスGの流通方向)に沿って配置された複数の平板状の接地電極61と、隣接する接地電極61の間のそれぞれに設けられた複数の高電圧棘電極31と、複数の高電圧棘電極31を支持する高電圧支持電極33とを有する。高電圧棘電極31と接地電極61とは、筐体2の軸と直交する方向に所定距離、離隔して交互に配置されている。
【0018】
高電圧棘電極31は、筐体2の軸に沿う棒状の中心導体と、中心導体の外周面に等間隔に、中心導体の外周面から突出してもう設けられた複数の棘状の電極と有していてよい。中心導体の断面形状は、円形であってよく、矩形であってもよい。高電圧棘電極31は、接地電極61と対向する位置に設けられている。
【0019】
高電圧支持電極33は、金属等の導電性材料で構成され、複数の高電圧棘電極31同士を電気的に接続する。図示しない高電圧電源が高電圧導入部19に接続され、高電圧導入部19から高電圧支持電極33に高電圧が印加され、高電圧支持電極33を介して、複数の高電圧棘電極31に高電圧が印加されてよい。高電圧棘電極31と接地電極61との間には、例えば-9kVの直流高電圧を供給し、高電圧棘電極31で負のコロナ放電を行わせて、排ガスG中に含まれる粒子状物質を帯電させる。
【0020】
集塵部12は、筐体2の軸に沿って配置された複数の平板状の接地電極62と、隣接する接地電極62の間のそれぞれに設けられた複数の平板状の高電圧平板電極32と、複数の高電圧平板電極32を支持する高電圧支持電極34とを有する。高電圧平板電極32と接地電極62とは、筐体2の軸と直交する方向に所定距離、離隔して交互に配置されている。
【0021】
高電圧平板電極32及び接地電極62は、例えばステンレス鋼板で形成された平板状の電極から構成される。接地電極62の形状は、筐体2の軸に直交する方向に開口を有する箱形状であってよい。接地電極62の形状は、箱形状であることにより、内部の捕集空間に粒子状物質を捕集する捕集箱として機能する。接地電極62は、箱形状を有する場合、筐体2の軸方向に沿う2つの面の少なくとも一方の面に複数の捕集開口が設けられていてよい。例えば、接地電極62は、筐体2の軸方向に沿う2つの面の少なくとも一方の面がパンチングメタルであってよい。捕集開口は、高電圧平板電極32と接地電極62との間の空間と、接地電極62の捕集空間とを接続する。排ガスG中の帯電された粒子状物質は、クーロン力により吸引され、捕集開口から接地電極62である捕集箱内に入り捕集される。捕集開口は、円形の縁部を有していてよい。なお、接地電極62の形状は、箱形状に限らず、1枚の平板状であってもよい。
【0022】
高電圧支持電極34は、金属等の導電性材料で構成され、複数の高電圧平板電極32同士を電気的に接続する。図示しない高電圧電源が高電圧導入部19に接続され、高電圧導入部19から高電圧支持電極34に高電圧が印加され、高電圧支持電極34を介して、複数の高電圧平板電極32に高電圧が印加されてよい。高電圧平板電極32と接地電極62との間には、例えば-7.5kVの直流高電圧を印加する。
【0023】
電気集塵装置1は、筐体2の側面を貫通して設けられ、帯電部11の複数の高電圧棘電極31を接続して支持する高電圧支持電極33を有する。高電圧支持電極33は、高電圧棘電極31を挟んで一対設けられ、高電圧棘電極31の両端をそれぞれ、接続して支持している。高電圧支持電極33は、金属等の導電性材料で構成され、複数の高電圧棘電極31同士を電気的に接続する。図示しない高電圧電源から高電圧支持電極33に高電圧が印加され、高電圧支持電極33を介して、複数の高電圧棘電極31に高電圧が印加されてよい。
【0024】
また、電気集塵装置1は、筐体2の側面を貫通して設けられ、集塵部12の複数の高電圧平板電極32を接続して支持する高電圧支持電極34を有する。高電圧支持電極34は、高電圧平板電極32を挟んで一対設けられ、高電圧平板電極32の両端をそれぞれ、接続して支持している。高電圧支持電極34は、金属等の導電性材料で構成され、複数の高電圧平板電極32同士を電気的に接続する。図示しない高電圧電源から高電圧支持電極34に高電圧が印加され、高電圧支持電極34を介して、複数の高電圧平板電極32に高電圧が印加されてよい。
【0025】
電気集塵装置1は、筐体2の側面に筐体2の軸方向に間隔を空けて設けられ、気体を筐体2の内部に供給する複数のエアパージ部4と、複数のエアパージ部4のそれぞれに設けられ、高電圧電極3を支持する複数の碍子5とを備えている。
【0026】
エアパージ部4は、筒型の形状を有し、筐体2内部と連通している。エアパージ部4は、筐体2とは別体であり、筐体2の側面に、例えばボルト及びナット等により締結して取り付けられている。即ち、エアパージ部4は、筐体2に対して着脱可能となっている。よって、碍子5が排ガスG中の粒子状物質によって汚損されることがあっても、エンジンを停止し電気集塵装置1を冷却した後、エアパージ部4を筐体2から取り外し、汚損された碍子5のみを新しい碍子5に交換することで、電気集塵装置1を容易に復旧させることができる。
【0027】
エアパージ部4の数は、高電圧支持電極33、34を支持する碍子5の数と同じである。エアパージ部4の数は、少なくとも3つ設けられていることが好ましい。エアパージ部4は、
図2に示すように、筐体2の軸に対して対称に4対、即ち8つ設けられていてもよい。
【0028】
図3は、碍子5の平面図である。碍子5を構成する材料としては、例えば、PEEK樹脂、セラミック、高耐熱樹脂FRP材等が挙げられる。碍子5は、
図3に示すように、円盤状の形状を有し、中心軸に沿う方向に貫通する開口51と、平面視で周縁部に設けられた複数の締結穴52と、中心に設けられた1つの支持穴53とを有する。開口51は、エアパージ部4に導入された気体を流通させるための開口である。開口51は、複数設けられていてよく、例えば、2つ、3つ、又は4つ設けられていてもよい。開口51は、碍子5の中心に対して回転対称となる位置に設けられていてよく、本実施形態では、4つの開口51が、4回対称となる位置に設けられている。締結穴52は、碍子5をエアパージ部4の筐体に取り付ける際、ボルト等を嵌合させ締結可能な穴である。支持穴53は、高電圧支持電極33、34を嵌合させ取り付けるための穴である。
【0029】
図4は、エアパージ部47の拡大断面図である。
図4に示すように、碍子5は、エアパージ部47の気体の流入口471側において、碍子5の上面又は下面が筐体2の軸に沿うようにボルト及びナット等で締結して取り付けられている。そして、高電圧支持電極34の端部が、碍子5の支持穴53に嵌合することにより、碍子5は、高電圧支持電極34を絶縁すると共に支持している。高電圧支持電極34は、碍子5の支持穴53に嵌合し、さらにネジ等により碍子5に固定されていてもよい。なお、エアパージ部47と、碍子5及び高電圧支持電極34の配置関係は、他のエアパージ部41~46、48においても同様である。
【0030】
エアパージ部4は、接地電極としての給電管63を有する。高電圧支持電極34は、エアパージ部4の給電管63の中央に配置され、給電管63の内周面から均一な距離で離隔している。よって、複数のエアパージ部41~48において、高電圧支持電極33、34は同じ絶縁距離で支持されている。
【0031】
エアパージ部4の流入口471から導入された気体は、
図4に矢印で示すように、碍子5の開口51を通過し、給電管63内部から筐体2の内部に向かって流れる。
【0032】
電気集塵装置1は、
図2に示すように、複数のエアパージ部4(エアパージ部41~44)に気体を供給する気体供給部7と、複数のエアパージ部4のそれぞれに接続され、気体供給部7から供給された気体を流通させる複数の供給管8(供給管81~84)とを備えていてよい。換言すると、供給管8の一端は、エアパージ部4の流入口471に接続され、供給管8の他端は、気体供給部7に接続されていてよい。
【0033】
気体供給部7は、1つのブロワからなり、電気集塵装置1は、ブロワと複数のエアパージ部4との間に設けられた分流器13を備えていてよい。換言すると、供給管8の一端は、エアパージ部4の流入口471に接続され、供給管8の他端は、分流器13に接続されていてよい。電気集塵装置1は、1つのブロワを備えることにより、複数のエアパージ部に対して複数のブロアを用いた場合と比較して、製造コストを低減することができる。
【0034】
ブロワは、筐体2の入口21における排ガスGの圧力よりも高い排圧(静圧)を有することが好ましい。筐体2の入口21における排ガスGの圧力の平均値が、大気圧より数kPa高いことから、ブロワの排圧は、10kPa以上であることが好ましい。これにより、各エアパージ部41~48と筐体2との境界において、排ガスGの圧力よりもエアパージの圧力を高くすることができるため、排ガスG中の粒子状物質のエアパージ部4への流入が抑制され、粒子状物質の碍子5への付着が低減する。
【0035】
また、電気集塵装置1は、複数の供給管8のそれぞれに設けられた複数のバルブ9と、複数の圧力計14とを備えていてよい。この構成により、電気集塵装置1は、気体供給部7の故障や電源喪失等、エンジンが稼働状態であるにも関わらず、エアパージが不良となった場合、圧力計14の値により不良となったことを認知することができ、全てのバルブ9を閉鎖することで、気体供給部7、分流器13、及び圧力計14の機器類を保護することができる。
【0036】
バルブ9は、例えば、ボールバルブであってよく、供給管8の径と同じ口径を有することが好ましい。複数のバルブ9及び複数の圧力計14は、分流器13と複数のエアパージ部4との間の複数の供給管8のそれぞれに設けられていてよい。なお、エアパージ部4とバルブ9の間の供給管8は分岐しておらず、又エアパージ部4とバルブ9の間には計器は設けられていない。
【0037】
複数のエアパージ部41~48のそれぞれに供給される気体の流量は、複数のエアパージ部41~48のそれぞれの位置における排ガスGの圧力に応じた流量となる。この構成により、排ガスGの脈動等により筐体2内の位置によって異なる排ガスGの圧力に応じて、エアパージ部41~48のそれぞれに供給される気体の流量を、排ガスGがエアパージ部に流入しない流量となるよう個別に設定することができる。よって、碍子5の表面にディーゼルエンジンの燃焼による排ガスG中の粒子状物質が付着することを低減し、碍子5の絶縁性を維持することができる。なお、複数のエアパージ部41~48のそれぞれの位置における排ガスの圧力は、2箇所以上で同じであってもよく、この場合、複数のエアパージ部41~48のそれぞれに供給される気体の流量は、対応する2箇所以上で同じであってよい。
【0038】
複数のエアパージ部41~48のそれぞれの圧力は、入口21の圧力よりも高いことが好ましい。また、排ガスGの流通方向の最も下流側に位置するエアパージ部44、48に供給される気体の流量は、排ガスGの流通方向の上流側に隣接するエアパージ部43、47に供給される気体の流量よりも大きいことが好ましい。さらに、排ガスGの流通方向の最も下流側に位置するエアパージ部44、48を除いて、複数のエアパージ部41~43、45~47に供給される気体の流量は、排ガスGの流通方向の上流側から下流側に向かうに従い小さくなることが好ましい。この場合、碍子5の表面にディーゼルエンジンの燃焼による排ガスG中の粒子状物質が付着することをより低減し、碍子5の絶縁性をより維持することができる。
【0039】
入口21における排ガスGの流量をQp、入口21の断面積をSg、それぞれのエアパージ部4の気体の流量をQpa、それぞれのエアパージ部4の断面積をSgaとしたとき、下記式(1)を満たすことが好ましい。
Qp/Sg < Qpa/Sga・・・(1)
【0040】
上記式を満たすことにより、排ガスG中の粒子状物質がエアパージ部4に流入することを抑制するため、碍子5に付着することをより低減し、碍子5の絶縁性をより維持することができる。
【0041】
エアパージ部4は、N個(Nは2以上の整数)設けられているとすると、入口21側から1番目、2~(N-2)番目、(N-1)番目、N番目のエアパージ部4に供給される気体の流量の分配比は、1:0.5~0.7:0.25~0.35:0.40~0.45であることが好ましい。これにより、碍子5の表面にディーゼルエンジンの燃焼による排ガスG中の粒子状物質が付着することをより低減し、碍子5の絶縁性をより維持することができる。
【0042】
また、N個のエアパージ部4に気体を供給する気体供給部7と、N個のエアパージ部4のそれぞれに接続され、気体供給部7から供給された気体を流通させるN個の供給管8とを備える場合、入口21側から1番目、2~(N-2)番目、(N-1)番目、N番目のエアパージ部4に接続される供給管8の断面積の比は、1:0.65~0.85:0.3~0.5:0.3~0.5であることが好ましい。また、それぞれの供給管8が接続される、分流器13のそれぞれの接続口の断面積の比も、1:0.65~0.85:0.3~0.5:0.3~0.5であることが好ましい。これにより、規格内の供給管8又は分流器13を利用することができるため、碍子5の表面にディーゼルエンジンの燃焼による排ガスG中の粒子状物質が付着することを低減すると共に、電気集塵装置1の製造コストを低減することができる。
【0043】
上述の断面積の比(1:0.65~0.85:0.3~0.5:0.3~0.5)を満たす供給管8を用いて、上述のN個のエアパージ部に供給される気体の流量の分配比(1:0.5~0.7:0.25~0.35:0.40~0.45)とするために、供給管8の長さを調整してもよく、バルブ9の開口率を調整してもよい。
【0044】
供給管8の長さを調整する場合、N個のエアパージ部4に接続されるN個の供給管8のうち、入口21側から2~(N-2)番目のエアパージ部4に接続される供給管8の長さは、入口21側から1番目のエアパージ部4に接続される供給管8の長さ及び入口21側からN番目のエアパージ部4に接続される供給管8の長さのいずれよりも長いことが好ましい。これにより、碍子5の表面にディーゼルエンジンの燃焼による排ガスG中の粒子状物質が付着することをさらに低減し、碍子5の絶縁性をさらに維持することができる。なお、供給管8の長さとは、電気集塵装置1が、分流器13を備える場合、分流器13からエアパージ部4までの全長を意味する。電気集塵装置1が、分流器13を備えない場合、供給管8の長さとは、気体供給部7からエアパージ部4までの全長を意味する。
【0045】
具体的には、例えば、入口21側から1番目、2~(N-2)番目、(N-1)番目、N番目のエアパージ部4に接続されるN個の供給管8それぞれの長さの比は、1:1~1.2:1~1.3:0.5~0.6であってよい。
【0046】
一方、N個の供給管8のそれぞれに設けられたN個のバルブ9と、N個の圧力計14とを備え、N個の供給管8の長さが同じで、N個のバルブ9の開口率を調整する場合、入口21側から1番目、2~(N-2)番目、(N-1)番目、N番目の前記エアパージ部4に設けられたバルブ9の開口率の比は、1:0.8~0.9:0.65~0.75:1であることが好ましく、1:0.85:0.70:1であることがより好ましい。1番目、2~(N-2)番目、(N-1)番目、N番目の前記エアパージ部4に設けられたバルブ9の開口率の比が、1:0.8~0.9:0.65~0.75:1であることにより、碍子5の表面にディーゼルエンジンの燃焼による排ガスG中の粒子状物質が付着することをさらに低減し、碍子5の絶縁性をさらに維持することができる。
【0047】
エアパージ部4は、N個設けられているとすると、集塵部12の高電圧平板電極32は、入口21側から、(N-1)番目のエアパージ部4とN番目のエアパージ部4との間の筐体2内に配置されていることが好ましい。これにより、排ガスGの流速(圧力)が最も小さくなった位置に集塵部12が配置されるため、排ガスG中の粒子状物質が集塵されやすく、碍子5の表面にディーゼルエンジンの燃焼による排ガスG中の粒子状物質が付着することをさらに低減し、碍子5の絶縁性をさらに維持することができる。
【実施例0048】
電気集塵装置1に、エアパージ部4を、筐体の軸に対して対称に4対、即ち8つ搭載した。ブロワとして、10kPa以上の排圧を有するブロワを選定した。そして、全てのエアパージ部41~48の圧力が電気集塵装置1の入口21における排ガスGの圧力を上回るように設定した。電気集塵装置1の入口21における排ガスGの流量をQp、入口21の断面積をSg、それぞれのエアパージ部41~48の気体の流量をQpa、それぞれのエアパージ部41~48の断面積をSgaとしたとき、下記式(1)を満たすようにエアパージ部を設計した。
Qp/Sg < Qpa/Sga・・・(1)
【0049】
そして、熱流体解析より、筐体の軸に対して一方側に位置する4つのエアパージ部45~48に供給される気体の流量の分配比は、電気集塵装置1の入口21側から順に、1:0.57:0.29:0.43(以下、分配比(2)とする。)が好ましいことを見出した。なお、筐体の軸に対して他方側に位置する4つのエアパージ部41~44についても同様である。
【0050】
4つのエアパージ部45~48に接続される4つの供給管81~84それぞれの断面積の比は、経済合理性の観点から規格内の径の供給管を利用するため、電気集塵装置1の入口21側から順に、1:0.71:0.43:0.43とした。また、それぞれの供給管81~84が接続される、分流器13の4つの接続口それぞれの断面積の比も、電気集塵装置1の入口21側から順に、1:0.71:0.43:0.43とした。なお、筐体2の軸に対して他方側に位置する4つのエアパージ部41~44に接続される供給管、及び当該供給管が接続される、分流器の4つの接続口についても同様にした。
【0051】
4つのエアパージ部45~48に接続される4つの供給管81~84のうち、電気集塵装置1の入口21側から2番目のエアパージ部42に接続される供給管82の長さ及び3番目のエアパージ部43に接続される供給管83の長さを、入口21側から1番目のエアパージ部41に接続される供給管81の長さ及び4番目のエアパージ部44に接続される供給管84の長さのいずれよりも長くすることにより、上述の分配比(2)を実現することができた。具体的には、4つのエアパージ部41、42、43、44に接続される4つの供給管81、82、83、84それぞれの長さの比は、入口21側から順に、1:1.2:1.2:0.6とした。なお、筐体2の軸に対して他方側に位置する4つのエアパージ部41~44に接続される供給管についても同様にした。
【0052】
4つのエアパージ部45~48に接続される4つの供給管81~84の長さを同じ長さとし、4つのエアパージ部4に接続される供給管81~84に設けられた4つのバルブ91、92、93、94それぞれの開口率の比は、入口21側から順に、1:0.80:0.67:1とすることにより、上述の分配比(2)を実現することができた。なお、筐体2の軸に対して他方側に位置する4つのエアパージ部41~44に接続される供給管に設けられた4つのバルブについても同様にした。
【0053】
本実施形態の電気集塵装置1は、船舶用電気集塵装置を含む。また、電気集塵装置1は、船舶の他、鉄道車両等の大型の車両用、発電用、産業用等のディーゼルエンジンに適用することができる。
【0054】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。