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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183876
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電気集塵装置
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/40 20060101AFI20231221BHJP
   F01N 3/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B03C3/40 Z
B03C3/40 A
F01N3/02 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097666
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 禎弥
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 悠二
(72)【発明者】
【氏名】高野 哲美
【テーマコード(参考)】
3G190
4D054
【Fターム(参考)】
3G190AA12
3G190BA21
3G190BA41
3G190CA21
4D054AA03
4D054BA02
4D054BC18
4D054BC31
4D054BC40
(57)【要約】
【課題】高電圧平板電極の熱膨張による変形を抑制し、高電圧平板電極と接地電極との間のギャップを維持する電気集塵装置を提供すること。
【解決手段】ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、前記排ガスが流入する入口と、前記排ガスが流出する出口とを有する筒型の筐体と、前記筐体内に設けられた、前記粒子状物質を帯電する帯電部と、前記帯電部の前記出口側に連接し、帯電した前記粒子状物質を集塵する集塵部と、を備え、前記集塵部は、複数の高電圧平板電極と、前記高電圧平板電極と離隔して配置された複数の接地電極と、前記複数の高電圧平板電極を支持する高電圧支持電極とを有し、前記複数の高電圧平板電極及び前記複数の接地電極は、前記排ガスの流通方向と直交する方向に並列に配置され、前記高電圧支持電極は、前記複数の高電圧平板電極を接続し、前記複数の高電圧平板電極のそれぞれを1点で支持する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、
前記排ガスが流入する入口と、前記排ガスが流出する出口とを有する筒型の筐体と、
前記筐体内に設けられた、前記粒子状物質を帯電する帯電部と、
前記帯電部の前記出口側に連接し、帯電した前記粒子状物質を集塵する集塵部と、
を備え、
前記集塵部は、複数の高電圧平板電極と、前記高電圧平板電極と離隔して配置された複数の接地電極と、前記複数の高電圧平板電極を支持する高電圧支持電極とを有し、
前記複数の高電圧平板電極及び前記複数の接地電極は、前記排ガスの流通方向と直交する方向に並列に配置され、
前記高電圧支持電極は、前記複数の高電圧平板電極を接続し、前記複数の高電圧平板電極のそれぞれを1点で支持する電気集塵装置。
【請求項2】
前記高電圧平板電極と直交する方向から見たとき、
前記接地電極は、前記高電圧平板電極の外縁よりも内側に位置し、前記高電圧支持電極は、前記接地電極の外縁より外側において、前記高電圧平板電極を支持する請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記高電圧支持電極は、前記接地電極の外縁より外側において、前記高電圧平板電極の中央部を支持する請求項2に記載の電気集塵装置。
【請求項4】
前記高電圧平板電極は、前記高電圧支持電極が通過する貫通開口を有し、
前記高電圧支持電極は、1本の棒状の形状を有し、前記貫通開口を通過し、前記排ガスの流通方向と直交する方向に延伸する請求項3に記載の電気集塵装置。
【請求項5】
前記複数の高電圧平板電極及び前記高電圧支持電極は、1つの高電圧電極ユニットを構成し、
前記高電圧電極ユニットは、前記排ガスの流通方向に沿って複数設けられ、
隣接する前記高電圧電極ユニットの前記高電圧平板電極は、重なっている請求項4に記載の電気集塵装置。
【請求項6】
前記集塵部は、前記複数の高電圧平板電極を保持するガイドを有し、
前記ガイドは、前記高電圧支持電極と対向する平面上に設けられ、前記高電圧平板電極の端部を収容する溝部を有し、
前記溝部の底面と前記高電圧平板電極の端部は、離隔している請求項5に記載の電気集塵装置。
【請求項7】
前記ガイドは、1つの前記高電圧電極ユニットに少なくとも1個設けられている請求項6に記載の電気集塵装置。
【請求項8】
前記ガイドは、隣接する2つの前記高電圧電極ユニットの間に、少なくとも1個設けられている請求項6又は7に記載の電気集塵装置。
【請求項9】
前記ガイドは、2個以上設けられ、
前記筐体の軸に直交する方向における、前記ガイドと前記高電圧支持電極との間隔、及び、前記筐体の軸方向における、前記ガイド同士の間隔をL、前記高電圧平板電極と前記接地電極との間隔をd、前記高電圧平板電極を構成する材料の熱膨張係数をα、前記高電圧平板電極の温度変化をΔTとしたとき、下記式(1)を満たす請求項8に記載の電気集塵装置。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接地電極と高電圧電極との間の電圧によってコロナ放電を発生させることにより、ガス中の粒子状物質を除去する電気集塵装置が知られている。このような電気集塵機の電極に用いられる平板電極は、電極自体の重量や振動を考慮して2点以上で支持することが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の平板状の集塵電極(接地電極)、複数の平板状の加電電極、第1スリーブ、第2スリーブ、第1支持棒、第2支持棒、第1ナット、第2ナットを含む電気集塵装置が開示されている。第1支持棒は、各集塵電極および各第1スリーブに共通に挿通され、軸線方向両端部にねじ部が設けられる。また、第2支持棒は、各加電電極および各第2スリーブに共通に挿通され、軸線方向両端部にねじ部が設けられる。第1および第2支持棒は、両側に配置される一対の電極主板に形成される透孔をそれぞれ挿通し、各ねじ部が外側方に突出している。これらのねじ部には、第1および第2ナットが螺着され、その締付け力によって各集塵電極および各加電電極が上段、中段、下段において複数点で結束され、1つの電極ユニットを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-7112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電気集塵装置では、船舶等のディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質の集塵に適用した場合、最大で400℃付近の高温にさらされるところ、平板電極は、2点以上で支持されているため、熱膨張による伸びに対して拘束され、電極間のギャップ方向に湾曲し変形する。特に、高電圧電極としての平板電極は、より温度が高くなり変形し易い。平板電極が変形し、電極間のギャップが変化すると、電気集塵装置の集塵性能が低下する可能性がある。さらに、平板電極の変形が進展して電極間のギャップがなくなり、高電圧電極と接地電極とが接触すると、電界をかけることができなくなり、電気集塵装置は、集塵機能を喪失する可能性がある。
【0006】
上記の点に鑑みて、本発明の一態様は、高電圧平板電極の熱膨張による変形を抑制し、高電圧平板電極と接地電極との間のギャップを維持する電気集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、前記排ガスが流入する入口と、前記排ガスが流出する出口とを有する筒型の筐体と、前記筐体内に設けられた、前記粒子状物質を帯電する帯電部と、前記帯電部の前記出口側に連接し、帯電した前記粒子状物質を集塵する集塵部と、を備え、前記集塵部は、複数の高電圧平板電極と、前記高電圧平板電極と離隔して配置された複数の接地電極と、前記複数の高電圧平板電極を支持する高電圧支持電極とを有し、前記複数の高電圧平板電極及び前記複数の接地電極は、前記排ガスの流通方向と直交する方向に並列に配置され、前記高電圧支持電極は、前記複数の高電圧平板電極を接続し、前記複数の高電圧平板電極のそれぞれを1点で支持する電気集塵装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、高電圧平板電極の熱膨張による変形を抑制し、高電圧平板電極と接地電極との間のギャップを維持する電気集塵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態による電気集塵装置の斜視図である。
図2図1のX-Y断面における帯電部及び集塵部を模式的に示す図である。
図3】第一実施形態による電気集塵装置の集塵部を示す平面図である。
図4】第一実施形態による電気集塵装置の集塵部を示す側面図である。
図5】第二実施形態による電気集塵装置の集塵部を示す平面図である。
図6】第三実施形態による電気集塵装置の集塵部を示す正面図である。
図7】第三実施形態による電気集塵装置の集塵部を示す平面図である。
図8】第三実施形態による電気集塵装置の集塵部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0011】
<第一実施形態>
図1は、第一実施形態による電気集塵装置1の斜視図であり、図2は、図1のX-Y断面における帯電部11及び集塵部12を模式的に示す図である。本実施形態による電気集塵装置1は、ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス(排気ガス)中の粒子状物質を捕集する。排ガスは、例えば、船舶等の移動体に搭載されるエンジンから排出される排ガスである。移動体は、船舶に限定されず、車両等でもよい。粒子状物質は、例えば、ブラックカーボン等を含む。
【0012】
図1及び図2に示すように、電気集塵装置1は、排ガスGが流入する入口21と排ガスGが流出する出口22とを有する筒型の筐体2を備える。電気集塵装置1は、図2に示すように、筐体2内に設けられた、粒子状物質を帯電する帯電部11と、この帯電部11の出口22側に連接し、帯電した粒子状物質を集塵する集塵部12とを備える。
【0013】
電気集塵装置1は、筐体2の側面に筐体2の軸方向(筐体2の軸に沿う方向、又はX軸方向)に間隔を空けて設けられ、気体を筐体2の内部に供給する複数のエアパージ部4と、複数のエアパージ部4のそれぞれに設けられ、後述する高電圧棘電極31及び高電圧平板電極32を支持する複数の碍子(図示なし)とを備えている。エアパージ部4は、少なくとも4つ設けられていることが好ましい。エアパージ部4は、図1に示すように、筐体2の軸に対して対称に4対、即ち8つ設けられていてもよい。
【0014】
帯電部11は、筐体2の軸に沿って(排ガスGの流通方向に沿って)配置された複数の平板状の接地電極61と、隣接する接地電極61の間のそれぞれに設けられた複数の高電圧棘電極31とを有する。高電圧棘電極31と接地電極61とは、筐体2の軸と直交する方向に所定距離、離隔して交互に配置されている。
【0015】
高電圧棘電極31は、筐体2の軸に沿う棒状の中心導体と、中心導体の外周面に等間隔に、中心導体の外周面から突出して設けられた複数の棘状の電極と有していてよい。中心導体の断面形状は、円形であってよく、矩形であってもよい。高電圧棘電極31は、接地電極61と対向する位置に設けられている。
【0016】
帯電部11は、複数の高電圧棘電極31を支持する図示しない高電圧支持電極を有する。高電圧支持電極は、金属等の導電性材料で構成され、複数の高電圧棘電極31同士を電気的に接続する。図2に示す高電圧電源51が、図1に示す高電圧導入部19に接続され、高電圧導入部19から高電圧支持電極に高電圧が印加され、高電圧支持電極を介して、複数の高電圧棘電極31に高電圧が印加されてよい。高電圧棘電極31と接地電極61との間には、例えば-9kVの直流高電圧を供給し、高電圧棘電極31で負のコロナ放電を行わせて、排ガスG中に含まれる粒子状物質を帯電させる。なお、高電圧電極の形状は、高電圧棘電極31の形状に限らず、平板状であってもよい。
【0017】
集塵部12は、複数の平板状の高電圧平板電極32と、高電圧平板電極32と離隔して配置された複数の接地電極62とを有する。複数の高電圧平板電極32及び複数の接地電極62は、排ガスGの流通方向と直交する方向に並列に配置されている。換言すると、複数の平板状の高電圧平板電極32が、隣接する接地電極62の間のそれぞれに配置され、高電圧平板電極32と接地電極62とは、筐体2の軸と直交する方向に所定距離、離隔して交互に配置されている。なお、排ガスGの流通方向は、筐体2の軸方向(筐体2の軸に沿う方向、又はX軸方向)に相当する。
【0018】
次に、電気集塵装置1の集塵の動作について説明する。
【0019】
まず、図2に示すように、ディーゼルエンジンから排出される排ガスGが帯電部11に供給される。帯電部11では、排ガスGの流通方向(X軸方向)と平行に接地電極61及び高電圧棘電極31が配置されている。よって、隣接する接地電極61間の高電圧棘電極31が配置された空間を排ガスGが流れる。
【0020】
そして、帯電部11を流れる排ガスGに含まれる粒子状物質は、コロナ放電によって発生した負イオン流により帯電されて集塵部12に送られる。集塵部12では、排ガスGの流通方向と平行に接地電極62及び高電圧平板電極32が配置されている。よって、隣接する接地電極62間の高電圧平板電極32が配置された空間を排ガスGが流れるため、流路抵抗を低減した状態で排ガスGを流すことができる。
【0021】
そして、接地電極62と高電圧平板電極32の間に供給される直流の高電圧によって、静電界が形成され、接地電極62が、集塵部12を流れる排ガスG中の帯電された粒子状物質をクーロン力により吸引して捕集する。
【0022】
次に、集塵部12について、詳細に説明する。図3は、第一実施形態による電気集塵装置1の集塵部12を示す平面図であり、図4は、第一実施形態による電気集塵装置1の集塵部12を示す側面図である。
【0023】
高電圧平板電極32及び接地電極62は、例えば、ステンレス鋼板で形成された平板状の電極から構成される。接地電極62の形状は、筐体2の軸に直交する方向に開口を有する箱形状を有していてよい。接地電極62の形状は、箱形状であることにより、内部の捕集空間に粒子状物質を捕集する捕集箱として機能する。接地電極62は、箱形状を有する場合、筐体2の軸方向に沿う2つの面の少なくとも一方の面に複数の捕集開口621が設けられていてよい。例えば、接地電極62は、筐体2の軸方向に沿う2つの面の少なくとも一方の面がパンチングメタルで構成されていてよい。捕集開口621は、高電圧平板電極32と接地電極62との間の空間と、接地電極62の捕集空間とを接続する。排ガスG中の帯電された粒子状物質は、クーロン力により吸引され、捕集開口621から接地電極62である捕集箱内に入り捕集される。捕集開口621は、図4に示すように円形の縁部を有していてよい。なお、接地電極62の形状は、箱形状に限らず、1枚の平板状であってもよい。高電圧平板電極32と接地電極62との間には、例えば-7.5kVの直流高電圧を印加する。
【0024】
集塵部12は、複数の高電圧平板電極32を支持する高電圧支持電極34を有する。高電圧支持電極34は、複数の高電圧平板電極32を接続し、複数の高電圧平板電極32のそれぞれを1点で支持する。この構成により、高電圧平板電極32は、例えば、ディーゼルエンジンの稼働下において、熱膨張により伸びても拘束されないため、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップ方向に湾曲することを抑制することができる。よって、電気集塵装置1は、高電圧平板電極32の熱膨張による変形を抑制し、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップを維持することができる。
【0025】
高電圧支持電極34は、金属等の導電性材料で構成され、複数の高電圧平板電極32同士を電気的に接続する。図2に示す高電圧電源52が、図1に示す高電圧導入部19に接続され、高電圧導入部19から高電圧支持電極34に高電圧が印加され、高電圧支持電極34を介して、複数の高電圧平板電極32に高電圧が印加されてよい。
【0026】
図4に示すように、高電圧平板電極32に直交する方向(Y軸方向)から見たとき、接地電極62は、高電圧平板電極32の外縁よりも内側に位置し、高電圧支持電極34は、接地電極62の外縁より外側において、高電圧平板電極32を支持することが好ましい。換言すると、接地電極62の外形の寸法は、高電圧平板電極32の外形の寸法よりも小さく、高電圧支持電極34は、接地電極62の外縁より外側において、高電圧平板電極32を支持することが好ましい。即ち、高電圧支持電極34は、接地電極62を回避し、接地電極62を貫通しない位置に設けられている。高電圧支持電極34が、接地電極62を貫通する構成の場合、高電圧支持電極34と接地電極62との間に不平等電界場が形成され、粒子状物質を捕集するための静電界の形成を妨害する。本実施形態の電気集塵装置1は、高電圧支持電極34が、接地電極62を貫通しない位置に設けられていることにより、不平等電界場の形成を抑制し、集塵部12の集塵性能を維持しつつ、複数の高電圧平板電極32を1点で支持することができる。
【0027】
高電圧支持電極34は、高電圧平板電極32の中央部を支持することが好ましい。換言すると、高電圧支持電極34は、高電圧平板電極32のX軸方向を二等分する中心線上を支持することが好ましい。この構成により、複数の高電圧平板電極32のそれぞれを1点で安定して支持することができる。よって、電気集塵装置1は、高電圧平板電極32の熱膨張による変形をより抑制し、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップをより維持することができる。
【0028】
高電圧平板電極32は、高電圧支持電極34が通過する貫通開口を有し、高電圧支持電極34は、1本の棒状の形状を有し、貫通開口を通過し、図3に示すように、排ガスGの流通方向と直交する方向に延伸することが好ましい。この構成により、高電圧支持電極34は、複数の高電圧平板電極32のそれぞれを1点で容易に支持することができる。よって、電気集塵装置1は、高電圧平板電極32の熱膨張による変形をより抑制し、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップをより維持することができる。
【0029】
複数の高電圧平板電極32を支持する構成の他の例では、高電圧支持電極34は、複数の把持部を有し、高電圧支持電極34の複数の把持部のそれぞれは、複数の高電圧平板電極32のそれぞれの1点を把持していてもよい。具体的には、把持部は、フック等の吊り金具、又はクリップ等の開閉可能な弾性部材であってよい。把持部がフックである場合、フックを高電圧平板電極32の貫通開口に引っ掛けることにより、複数の高電圧平板電極32のそれぞれを1点で支持することができる。又、把持部がクリップである場合、高電圧平板電極32は貫通開口を有していなくてもよく、クリップで高電圧平板電極32を挟むことにより、複数の高電圧平板電極32のそれぞれを1点で支持することができる。
【0030】
なお、帯電部11の高電圧電極として、高電圧棘電極31に替えて高電圧平板電極を用いた場合、複数の高電圧平板電極を支持する構成として、上述の集塵部12の複数の高電圧平板電極32を支持する構成と同様の構成を適用してもよい。具体的には、帯電部11は、複数の高電圧平板電極を支持する高電圧支持電極を有していてよく、高電圧支持電極は、複数の高電圧平板電極を接続し、複数の高電圧平板電極のそれぞれを1点で支持していてよい。
【0031】
<第二実施形態>
図5は、第二実施形態による電気集塵装置1の集塵部12を示す平面図である。第二実施形態による電気集塵装置1は、第一実施形態の集塵部12を直列に拡張した構成を有する。複数の高電圧平板電極32及び1つの高電圧支持電極34は、1つの高電圧電極ユニットUを構成していてよい。また、高電圧電極ユニットUは、排ガスGの流通方向に沿って複数設けられ、隣接する高電圧電極ユニットUの高電圧平板電極32は、重なっていてよい。具体的には、集塵部12は、隣接する高電圧電極ユニットUの高電圧平板電極32の互いの端部が重なった接続部321を有する。接続部321では、隣接する高電圧電極ユニットUの高電圧平板電極32の端部同士は、接触し、互いに接触面上を摺動可能な状態である。換言すると、隣接する高電圧電極ユニットUの高電圧平板電極32の端部同士は、接触し、且つ固定されていない。そして、高電圧電極ユニットUは、排ガスGの流通方向に沿って、直列に接続されている。
【0032】
この構成により、高電圧平板電極32は、熱膨張により伸びても、隣接する高電圧電極ユニットUの高電圧平板電極32の端部同士が突き合わされて干渉することがなく、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップ方向に湾曲することを抑制することができる。よって、電気集塵装置1は、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップ方向における、高電圧平板電極32の熱膨張による変形を抑制し、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップを維持した上で、排ガスの処理容量の増加に応じて集塵部12を容易に拡張することができる。別の観点では、集塵部12の高電圧平板電極32は、排ガスの処理容量の増加に応じて長尺化するところ、高電圧電極ユニットU毎に分割することにより、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップ方向における、高電圧平板電極32の熱膨張による変形を抑制し、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップを維持することができる。このように、集塵部12を排ガスGの流通方向に延長することにより、排ガスの処理容量の増加に応じて電気集塵装置1の集塵性能を向上させることができる。
【0033】
一方、集塵部12を排ガスGの流通方向と直交する方向に、並列に拡張する場合、筐体2の断面積を増やす必要がある。筐体2の断面積が増えると、筐体2内の圧力が低下する。これに対して、本実施例の電気集塵装置1は、集塵部12を排ガスGの流通方向に沿って直列に延長することにより、筐体2の断面積を維持したまま、排ガスの処理容量の増加に応じて集塵部12を容易に拡張することができるため、筐体2内の圧力を維持することができる。
【0034】
また、隣接する高電圧電極ユニットUの高電圧平板電極32の端部同士の間に隙間が生じないため、接続部321の電界分布が一様となり、集塵部12の集塵性能を維持しつつ、排ガスの処理容量の増加に応じて集塵部12を容易に拡張し、電気集塵装置1の集塵性能を向上させることができる。
【0035】
隣接する高電圧電極ユニットUの高電圧平板電極32は、筐体2の軸と直交する方向(Y軸方向)における配置が交互となるよう重なっていてよい。この構成により、電気集塵装置1は、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップ方向における、高電圧平板電極32の熱膨張による変形をより抑制し、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップをより維持した上で、排ガスの処理容量の増加に応じて集塵部12を容易に拡張することができる。
【0036】
なお、接地電極62は、複数の高電圧電極ユニットUを横断する共通の部材であってよく、1つの高電圧電極ユニットU毎に設けられていてもよい。
【0037】
<第三実施形態>
図6は、第三実施形態による電気集塵装置1の集塵部12を示す正面図であり、図7は、第三実施形態による電気集塵装置1の集塵部を示す平面図であり、図8は、第三実施形態による電気集塵装置1の集塵部を示す側面図である。
【0038】
集塵部12は、図6から図8に示すように、複数の高電圧平板電極32を保持するガイド15を有していてよい。第三実施形態による電気集塵装置1は、ガイド15以外の構成は、第一実施形態又は第二実施形態と同様である。ガイド15としては、丸棒、パイプ材等を用いることができる。ガイド15を構成する材料としては、ステンレス鋼等の耐腐食性を有する材料が好ましい。
【0039】
ガイド15は、図6に示すように、高電圧支持電極34と対向する平面上に設けられ、高電圧平板電極32の端部を収容する溝部151を有する。また、溝部151の底面と高電圧平板電極32の端部は、離隔している。複数の高電圧平板電極32は、高電圧支持電極34により1点で支持されている。支持が片持ちであると、支持されている側と対向する平面上において、高電圧平板電極32が、排ガスの脈動等により高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップ方向(Y軸方向)に振れ易くなる。本実施形態の電気集塵装置1は、ガイド15により高電圧平板電極32のギャップ方向の振れを規制することができるため、排ガスの脈動等による高電圧平板電極32の振れを抑制することができる。また、溝部151の底面と高電圧平板電極32の端部が離隔していることにより、高電圧平板電極32が、熱膨張により伸びても、ガイド15の底面と当接し座屈することを抑制し、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップ方向に湾曲することを抑制することができる。よって、電気集塵装置1は、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップ方向における、高電圧平板電極32の熱膨張による変形をより抑制し、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップをより維持することができる。
【0040】
ガイド15は、具体的には、図8に示すように、高電圧平板電極32と直交する方向から見たとき、接地電極62の外縁より外側において、高電圧平板電極32を保持していてよい。即ち、ガイド15は、接地電極62を回避し、接地電極62を貫通しない位置に設けられている。ガイド15が、接地電極62を貫通する構成の場合、ガイド15と接地電極62との間に不平等電界場が形成され、粒子状物質を捕集するための静電界の形成を妨害する。本実施形態の電気集塵装置1は、ガイド15が、接地電極62を貫通しない位置に設けられていることにより、不平等電界場の形成を抑制し、集塵部12の集塵性能を維持しつつ、高電圧平板電極32の振れを抑制すると共に、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップを維持することができる。
【0041】
ガイド15は、1つの高電圧電極ユニットUに少なくとも1個設けられていることが好ましい。これにより、集塵部12が拡張されても、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップ方向への高電圧平板電極32の振れをより抑制することができる。図7に示す例では、ガイド15は、1つの高電圧電極ユニットUに2個設けられており、隣接する2つの高電圧電極ユニットUで1つのガイド15を共有している。
【0042】
ガイド15は、隣接する2つの高電圧電極ユニットUの間に、少なくとも1個設けられていることが好ましい。これにより、接続部321において、隣接する高電圧電極ユニットUの高電圧平板電極32は、重なった状態を維持することができる。よって、集塵部12が拡張されても、高電圧平板電極32が高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップ方向に湾曲することを抑制すると共に、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップ方向への高電圧平板電極32の振れをさらに抑制することができる。
【0043】
なお、図7及び図8で示す例では、複数の高電圧電極ユニットUを有する第二実施形態の集塵部12にガイド15を設ける例を示したが、単一の高電圧平板電極32及び高電圧支持電極34からなる第一実施形態の集塵部12にガイド15を設けてもよい。
【0044】
ガイド15は、図8に示すように、2個以上設けられ、筐体2の軸に直交する方向における、ガイド15と高電圧支持電極34との間隔、及び、筐体2の軸方向(X軸方向)における、ガイド15同士の間隔をL、高電圧平板電極32と接地電極62との間隔をd、高電圧平板電極32を構成する材料の熱膨張係数をα、高電圧平板電極32の温度変化をΔTとしたとき、下記式(1)を満たすことが好ましい。なお、ガイド15と高電圧支持電極34との間隔Lとは、ガイド15の中心と高電圧支持電極34の中心との間隔を意味する。ガイド15同士の間隔をLとは、隣接するガイド15の中心間の間隔を意味する。
【0045】
【数1】
【0046】
例えば、高電圧支持電極34を構成する材料をSUS304(400℃での熱膨張係数18.4×10-6[1/℃])とし、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップを30mmとした場合、高電圧平板電極32の温度変化が400℃のとき、L<493mmとなる。
【0047】
高電圧平板電極32は、熱膨張により伸びて、ガイド15と当接することにより座屈し、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップ方向に湾曲する場合がある。このような場合においても、上記式(1)を満たすことにより、高電圧平板電極32と接地電極62との間のギャップがなくなり、高電圧平板電極32と接地電極62とが接触することを回避することができる。よって、電気集塵装置1は、高電圧平板電極32と接地電極62との間に電界がかけられず、集塵機能を喪失することを防ぐことができる。
【0048】
なお、図8に示す例では、筐体2の軸に直交する方向(Z軸方向)において、一方側(上方側)に高電圧支持電極34、他方側(下方側)にガイド15が配置されているが、他方側(上方側)にガイド15、一方側(下方側)に高電圧支持電極34が配置されていてもよい。
【0049】
本実施形態の電気集塵装置1は、船舶用電気集塵装置を含む。また、電気集塵装置1は、船舶の他、鉄道車両等の大型の車両用、発電用、産業用等のディーゼルエンジンに適用することができる。
【0050】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 電気集塵装置
11 帯電部
12 集塵部
15 ガイド
151 溝部
19 高電圧導入部
2 筐体
21 入口
22 出口
31 高電圧棘電極
32 高電圧平板電極
321 接続部
34 高電圧支持電極
4 エアパージ部
51、52 高電圧電源
61、62 接地電極
621 捕集開口
U 高圧電極ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8