(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183877
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電気集塵装置
(51)【国際特許分類】
B03C 3/41 20060101AFI20231221BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20231221BHJP
B03C 3/47 20060101ALI20231221BHJP
B03C 3/51 20060101ALI20231221BHJP
F01N 3/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B03C3/41 B
B03C3/40 A
B03C3/41 J
B03C3/47
B03C3/51
F01N3/02 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097667
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 禎弥
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 悠二
(72)【発明者】
【氏名】高野 哲美
【テーマコード(参考)】
3G190
4D054
【Fターム(参考)】
3G190AA12
3G190BA21
3G190BA41
3G190CA21
4D054AA03
4D054BA02
4D054BB03
4D054BB15
4D054BC03
4D054BC08
4D054BC18
4D054BC31
4D054BC40
(57)【要約】
【課題】高い集塵効率を有する電気集塵装置を提供すること。
【解決手段】排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、前記排ガスが流入する入口と、前記排ガスが流出する出口とを有する筒型の筐体と、前記筐体内に設けられた、前記粒子状物質を帯電する帯電部と、前記帯電部の前記出口側に連接し、帯電した前記粒子状物質を集塵する集塵部と、を備え、前記帯電部は、前記筐体の軸に沿って延伸する筒型の第1接地電極と、前記第1接地電極の筒内において前記第1接地電極と同軸上に設けられた高電圧棘電極とを有し、前記高電圧棘電極は、前記筐体の軸に沿って延伸する支持部と、前記筐体の軸に沿って互いに離隔して前記支持部に固定された複数の平板部と、前記複数の平板部それぞれの外周部から突出して設けられた複数の突起とを含み、隣接する前記平板部に設けられた前記複数の突起は、前記筐体の軸方向から見たとき、互いに重ならない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、
前記排ガスが流入する入口と、前記排ガスが流出する出口とを有する筒型の筐体と、
前記筐体内に設けられた、前記粒子状物質を帯電する帯電部と、
前記帯電部の前記出口側に連接し、帯電した前記粒子状物質を集塵する集塵部と、
を備え、
前記帯電部は、前記筐体の軸に沿って延伸する筒型の第1接地電極と、前記第1接地電極の筒内において前記第1接地電極と同軸上に設けられた高電圧棘電極とを有し、
前記高電圧棘電極は、前記筐体の軸に沿って延伸する支持部と、前記筐体の軸に沿って互いに離隔して前記支持部に固定された複数の平板部と、前記複数の平板部それぞれの外周部から突出して設けられた複数の突起とを含み、
隣接する前記平板部に設けられた前記複数の突起は、前記筐体の軸方向から見たとき、互いに重ならない電気集塵装置。
【請求項2】
前記複数の突起は、前記平板部の周方向に等間隔に設けられ、
一の前記平板部に設けられた前記突起は、前記筐体の軸方向から見たとき、前記一の平板部に隣接する他の前記平板部に設けられた隣接する前記突起の中間部に配置されている請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項3】
前記突起の先端と前記第1接地電極との距離は、30mm~100mmである請求項2に記載の電気集塵装置。
【請求項4】
前記筐体は、水平方向に配置され、
鉛直方向において、前記集塵部に対向して設けられ、前記集塵部から離脱した前記粒子状物質を収容する回収部を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の電気集塵装置。
【請求項5】
前記集塵部は、鉛直方向に立てた状態で配置された複数の高電圧平板電極と、前記高電圧平板電極と離隔して配置された複数の第2接地電極とを有し、
前記複数の高電圧平板電極及び前記複数の第2接地電極は、前記排ガスの流通方向と直交する方向に並列に配置され、
前記第2接地電極は、鉛直方向に開放され捕集空間を構成する箱形状を有し、前記高電圧平板電極と対向する2つの面に複数の捕集開口が設けられ、前記捕集空間に配置された、前記2つの面に平行な第1集塵板及び前記2つの面に垂直な第2集塵板を含む請求項4に記載の電気集塵装置。
【請求項6】
前記捕集空間と前記回収部の内部とを連通する回収口と、
前記第2接地電極と前記高電圧平板電極の間の空間と、前記回収部との間に設けられた仕切板とを備える請求項5に記載の電気集塵装置。
【請求項7】
前記仕切板は、複数の補助開口を有する請求項6に記載の電気集塵装置。
【請求項8】
1つの前記第1接地電極及び1つの前記高電圧棘電極は、1つの帯電ユニットを構成し、前記筐体の軸に対して直列又は並列に複数配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の電気集塵装置。
【請求項9】
1つの前記高電圧平板電極及び前記1つの高電圧平板電極と対向する前記第2接地電極の部分は、1つの集塵ユニットを構成し、前記筐体の軸に対して直列又は並列に複数配置されている請求項5に記載の電気集塵装置。
【請求項10】
ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、
前記排ガスが流入する入口と、前記排ガスが流出する出口とを有し、水平方向に配置された筒型の筐体と、
前記筐体内に設けられた、前記粒子状物質を帯電する帯電部と、
前記帯電部の前記出口側に連接し、帯電した前記粒子状物質を集塵する集塵部と、
鉛直方向において、前記集塵部に対向して設けられ、前記集塵部から離脱した前記粒子状物質を収容する回収部と、を備える電気集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接地電極と高電圧電極との間の電圧によってコロナ放電を発生させ、気体中の粒子状物質を帯電させて集塵する電気集塵装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、重油を使用するディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる主電極と放電電極、及び、帯電された粒状物質を捕集する集塵電極とからなる管状捕集部を有するディーゼルエンジン排ガス処理用電気集塵装置が開示されている。放電電極は、主電極の外周に取着された円筒状の放電電極支持筒の外周に短尺の放電電極針あるいは低高さ鋸刃状放電電極板を放射状に配置して構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のディーゼルエンジン排ガス処理用電気集塵装置では、帯電部と集塵部が一体となった構成であるため、帯電された粒子状物質は、排ガスの流れで移動し、実際に捕集されるのは排ガスの流通方向の下流側に集中する可能性が高い。そのため、排ガスの流通方向の上流側の部分は、粒子状物質の捕集機能を果たさず集塵効率が低下するという問題がある。また、特許文献1に記載のディーゼルエンジン排ガス処理用電気集塵装置では、電気集塵装置の捕集管に付着した粒子状物質が再飛散する可能性があり、これによっても粒子状物質の集塵効率が低下する。
【0006】
上記の点に鑑みて、本発明の一態様は、高い集塵効率を有する電気集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス中の粒子状物質を捕集する電気集塵装置であって、前記排ガスが流入する入口と、前記排ガスが流出する出口とを有する筒型の筐体と、前記筐体内に設けられた、前記粒子状物質を帯電する帯電部と、前記帯電部の前記出口側に連接し、帯電した前記粒子状物質を集塵する集塵部と、を備え、前記帯電部は、前記筐体の軸に沿って延伸する筒型の第1接地電極と、前記第1接地電極の筒内において前記第1接地電極と同軸上に設けられた高電圧棘電極とを有し、前記高電圧棘電極は、前記筐体の軸に沿って延伸する支持部と、前記筐体の軸に沿って互いに離隔して前記支持部に固定された複数の平板部と、前記複数の平板部それぞれの外周部から突出して設けられた複数の突起とを含み、隣接する前記平板部に設けられた前記複数の突起は、前記筐体の軸方向から見たとき、互いに重ならない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、高い集塵効率を有する電気集塵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による電気集塵装置の斜視図である。
【
図7】
図1のX-Y断面における第2接地電極及び高電圧平板電極の拡大図である。
【
図9】電気集塵装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図10】
図1のY-Z断面における集塵部及び回収部を示す斜視図である。
【
図11】
図1のX-Y断面における集塵部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0011】
図1は、一実施形態による電気集塵装置1の斜視図であり、
図2は、
図1のX-Y断面図である。本発明の一実施形態による電気集塵装置1は、ディーゼルエンジンの燃焼による排ガス(排気ガス)中の粒子状物質を捕集する。排ガスは、例えば、船舶等の移動体に搭載されるエンジンから排出される排ガスである。移動体は、船舶に限定されず、車両等でもよい。粒子状物質は、例えば、ブラックカーボン等を含む。
【0012】
図1及び
図2に示すように、電気集塵装置1は、排ガスGが流入する入口21と排ガスGが流出する出口22とを有する筒型の筐体2を備える。電気集塵装置1は、
図2に示すように、筐体2内に設けられた、粒子状物質を帯電する帯電部11と、この帯電部11の出口22側に連接し、帯電した粒子状物質を集塵する集塵部12とを備える。即ち、電気集塵装置1は、粒子状物質を帯電する機能と、帯電した粒子状物質を集塵する機能とが分離されている。
【0013】
粒子状物質を帯電する機能と、帯電した粒子状物質を集塵する機能が一体となった電気集塵装置では、帯電された粒子状物質は、排ガスの流通方向に移動するため、実際に捕集されるのは、排ガスの流通方向の下流側に集中する可能性が高い。そのため、排ガスの流通方向の上流側の部分は、粒子状物質の捕集機能を果たさず、且つ、放電電極は、捕集電極の長さに合わせる必要性から、排ガスの流通方向の下流側まで不要に長くなってしまう可能性がある。特に、船舶のディーゼルエンジンの排ガスの流れは、相対的に速いため、捕集電極及び放電電極の長さ(大きさ)が不要に大きくなってしまう可能性がある。よって、電気集塵装置のサイズが大型化する可能性がある。
【0014】
これに対して、本実施形態の電気集塵装置1では、粒子状物質を帯電する機能と、帯電した粒子状物質を集塵する機能とを、排ガスの流通方向において分離し、それぞれのサイズをその機能に合わせて最適化することができる。そのため、電気集塵装置1の小型化を図ることができる。特に、船舶のように、電気集塵装置の配置スペースに余裕が無いような場合に好適である。
【0015】
筐体2の形状は、筒型であればよく、円筒、又は、断面形状が三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形の角筒であってよく、これらを組合せた形状であってもよい。本実施形態では、入口21及び出口22における筐体2の断面形状は、円形であり、帯電部11及び集塵部12における筐体2の断面形状は、四角形である。
【0016】
図3は、帯電部11の斜視図であり、
図4は、高電圧棘電極31の側面図であり、
図5は、1つの帯電ユニットU1の正面図である。帯電部11は、
図3に示すように、筐体2の軸に沿って延伸する筒型の第1接地電極61と、第1接地電極61の管内において第1接地電極61と同軸上に設けられた高電圧棘電極31とを有する。即ち、高電圧棘電極31は、第1接地電極61と対向して設けられている。第1接地電極61及び高電圧棘電極31は、例えば、ステンレス、タングステン、チタン、炭素素材等の導電性の材料を適宜用いて構成されてよい。
【0017】
1つの第1接地電極61及び1つの高電圧棘電極31は、1つの帯電ユニットU1を構成していてよい。そして、帯電ユニットU1が、筐体2の軸に対して直列又は並列に複数配置されていてよい。本実施形態では、9つの帯電ユニットU1が、筐体2の軸に対して並列に配置されている。具体的には、帯電ユニットU1は、Y軸方向に3列、且つZ軸方向に3列となるよう配置されることにより、9つの帯電ユニットU1が、筐体2の軸に対して並列に配置されている。
【0018】
複数の帯電ユニットU1を、筐体2の軸に対して直列又は並列に配置することにより、排ガスの処理容量の増加に応じて、帯電部11を容易に拡張し、電気集塵装置1の集塵効率を向上させることができる。
【0019】
第1接地電極61の形状は、円筒、又は、断面形状が三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形の角筒であってよい。この中でも、第1接地電極61の断面形状は、四角形の角筒であることが好ましい。第1接地電極61の断面形状が、四角形の角筒であることにより、筐体2の軸に対して帯電ユニットU1を並列に配置する場合、帯電性能に寄与しない無駄なスペースを低減し、小型化を図りつつ、帯電部11を拡張することができる。
【0020】
高電圧棘電極31は、
図3から
図5に示すように、筐体2の軸に沿って延伸する支持部311と、筐体2の軸に沿って互いに離隔して支持部311に固定された複数の平板部312と、複数の平板部312それぞれの外周部から突出して設けられた複数の突起313とを含む。この構成により、支持部311の軸を中心に360°に亘って、イオン流に排ガス中の粒子状物質をムラなく当て、粒子状物質を帯電させることができるため、帯電効率を高めることができ、結果として、電気集塵装置1の集塵効率を高めることができる。
【0021】
また、
図5に示すように、隣接する平板部312に設けられた複数の突起313(複数の突起313aと複数の突起313b)は、筐体2の軸方向(筐体2の軸に沿う方向、又はX軸方向)から見たとき、互いに重ならない。換言すると、隣接する平板部312に設けられた複数の突起313(複数の突起313aと複数の突起313b)は、筐体2の軸方向から見たとき、千鳥状に配置されている。
【0022】
帯電部11に排ガスGを流通させると、時間経過と共に、突起313の先端に導電性の粒子状物質が付着し堆積する場合がある。突起313の先端に粒子状物質が堆積すると、高電圧棘電極31は高電界が維持できず、放電電流が小さくなる。これに対し、本実施形態の高電圧棘電極31は、複数の突起313が、筐体2の軸方向から見たとき、互いに重ならないように配置されていることにより、突起313の先端付近の排ガスGの流れが乱流および渦流となり、突起313の先端付近に大きな圧力が加わることで、突起313の先端に付着した粒子状物質が取り除かれるため、排ガス中の粒子状物質が突起313の先端に付着することを抑制する。よって、帯電効率を高めることができ、結果として、電気集塵装置1の集塵効率を高めることができる。
【0023】
複数の突起313は、平板部312の周方向において等間隔に設けられていることが好ましい。さらに、一の平板部312に設けられた突起313aは、筐体2の軸方向から見たとき、一の平板部312に隣接する他の平板部312に設けられた、隣接する突起313b、313bの中間部に配置されていることが好ましい。この構成により、全ての突起313の先端付近において、排ガスGの流れが乱流および渦流となり、突起313の先端付近に大きな圧力が加わることで、突起313の先端に付着した粒子状物質が取り除かれるため、排ガス中の粒子状物質が突起313の先端に付着することをより抑制する。よって、帯電効率をより高めることができ、結果として、電気集塵装置1の集塵効率をより高めることができる。
【0024】
突起313の先端と第1接地電極61との距離は、30mm~100mmであることが好ましい。突起313の先端と第1接地電極61との距離とは、それぞれの突起313の先端と第1接地電極61との最短距離を意味する。突起313の先端と第1接地電極61との距離が、30mm以上であることにより、装置の大型化に伴う寸法精度の低下の影響を受けにくく、また、エンジン等の振動により突起313の先端と第1接地電極61とが接触若しくは緩衝することを抑制することができる。突起313の先端と第1接地電極61との距離が、100mm以下であることにより、必要な高電圧直流電流を適切な大きさとすることができ、不要に高電界や高い放電電流を得るため高電圧電源を設けたり、高い絶縁性を得るための絶縁部を設けることを抑制することができる。よって、電気集塵装置1を小型化すると共に製造コストを低減することができる。
【0025】
帯電部11は、
図2に示すように、複数の高電圧棘電極31を支持する高電圧支持電極33を有する。高電圧支持電極33は、金属等の導電性材料で構成され、複数の高電圧棘電極31同士を電気的に接続する。図示しない高電圧電源が高電圧導入部19に接続され、高電圧導入部19から高電圧支持電極33に高電圧が印加され、高電圧支持電極33を介して、複数の高電圧棘電極31に高電圧が印加されてよい。高電圧棘電極31と第1接地電極61との間には、例えば-9kVの直流高電圧を供給し、高電圧棘電極31で負のコロナ放電を行わせて、排ガスG中に含まれる粒子状物質を帯電させる。
【0026】
図6は、集塵部12の斜視図であり、
図7は、
図1のX-Y断面における第2接地電極62及び高電圧平板電極32の拡大図であり、
図8は、集塵部12の正面図である。筐体2は、水平方向に配置される場合、集塵部12は、
図6に示すように、鉛直方向(Z軸方向)に立てた状態で配置された複数の高電圧平板電極32と、高電圧平板電極32と離隔して配置された複数の第2接地電極62とを有する。複数の高電圧平板電極32及び複数の第2接地電極62は、排ガスGの流通方向と直交する方向(Y軸方向)に並列に配置されている。なお、排ガスGの流通方向は、筐体2の軸方向に相当する。高電圧平板電極32及び第2接地電極62は、例えば、ステンレス、タングステン、チタン、炭素素材等の導電性の材料を適宜用いて構成されてよい。
【0027】
第2接地電極62は、例えば、
図6及び
図7に示すように、鉛直方向に開放され捕集空間620を構成する箱形状を有し、高電圧平板電極32と対向する2つの面の少なくとも一方の面に複数の捕集開口621が設けられている。具体的には、第2接地電極62は、高電圧平板電極32と対向する2つの平板部62aと、2つの平板部62a同士を接続する両端部の曲面部62bとを含む。これにより、2つの平板部62a、及びその両端部の曲面部62bに包囲された捕集空間620が構成される。2つの平板部62a及び曲面部62bは、第2接地電極62の本体部624を構成する。そして、高電圧平板電極32と対向する2つの平板部62aの少なくとも一方に、複数の捕集開口621が設けられている。例えば、2つの平板部62aの少なくとも一方がパンチングメタルで構成されていてよい。
【0028】
捕集開口621は、平板部62aを貫通して、平板部62aに設けられる。具体的には、捕集開口621は、平板部62aの面積に対して、非常に小さい面積を有し、複数設けられる。捕集開口621は、高電圧平板電極32と第2接地電極62との間の空間と、第2接地電極62の捕集空間620とを接続する。排ガスG中の帯電された粒子状物質は、クーロン力により吸引され、捕集開口621から第2接地電極62の捕集空間620内に入り捕集される。即ち、第2接地電極62は、粒子状物質を捕集する捕集箱として機能する。この構成によれば、捕集箱内は排ガスGの速い流れの影響を受けにくく、電界もゼロであるため、捕集空間620内に捕集された粒子状物質が、風や電界による剥離力を受けず再飛散することを抑制することができる。よって、電気集塵装置1の集塵効率を高めることができる。
【0029】
第2接地電極62は、高電圧平板電極32と対向する2つの面(平板部62a、62a)に複数の捕集開口621が設けられ、捕集空間620に配置された、2つの面に平行な第1集塵板622及び2つの面に垂直な第2集塵板623を含むことが好ましい。第1集塵板622は、捕集空間620を、一方の面(平板部62a)側の空間と他方の面(平板部62a)側の空間とに仕切るように構成される。これにより、双方の面(平板部62a、62a)の捕集開口621から捕集空間620に流入する粒子状物質を第1集塵板622の両面に付着させることができる。なお、第1集塵板622の周辺では、ガス流は低速で整流になるため、第1集塵板622表面の流速はゼロになり、排ガスGの流れによって粒子状物質が再飛散することはない。また、捕集開口621から捕集空間620内に流入した粒子状物質は、排ガスGの主流に比して流速が相対的に低いものの、排ガスGの流通方向に流れるため、排ガスGの流通方向と直交して設けられた第2集塵板623にも粒子状物質を付着させることができる。よって、第2接地電極62は、第1集塵板622及び第2集塵板623を含むことにより、粒子状物質の再飛散をより抑制することができ、電気集塵装置1の集塵効率をより高めることができる。
【0030】
特に、船舶のエンジンから排出される排ガスは、流速が相対的に大きいため、例えば、平板状の第2接地電極の場合、再飛散の可能性が相対的に高くなる。これに対して、第2接地電極62は、第1集塵板622及び第2集塵板623を含むことにより、船舶のエンジンからの排ガスのように流速が相対的に高い場合であっても、捕集した粒子状物質の再飛散を抑制することができる。また、第2集塵板623は、第2接地電極62の平板部62aの歪みを抑制し第2接地電極62を補強する役割も担う。第2集塵板623は、第2接地電極62の2つ面に平行な方向に等間隔に設けられていてよい。第2集塵板623の数は、特に限定されないが、例えば、3つであってよい。
【0031】
第2接地電極62は、高電圧平板電極32と対向する2つの面うち一方の面に複数の捕集開口621が設けられ、捕集空間620に配置された、2つの面に垂直な第2集塵板623を含んでいてもよい。この構成においても、捕集開口621から捕集空間620内に流入した粒子状物質は、第2集塵板623に付着させることができる。よって、粒子状物質の再飛散をより抑制することができ、電気集塵装置1の集塵効率をより高めることができる。
【0032】
高電圧平板電極32と第2接地電極62との距離は、30mm~100mmであることが好ましい。ここで言う距離とは、最短距離を意味する。また、第2接地電極62が、箱形状を有する場合は、高電圧平板電極32と第2接地電極62との距離とは、高電圧平板電極32と第2接地電極62の平板部62aとの距離を意味する。高電圧平板電極32と第2接地電極62との距離が、30mm以上であることにより、装置の大型化に伴う寸法精度の低下の影響を受けにくくすることができる。高電圧平板電極32と第2接地電極62との距離が、100mm以下であることにより、不要に高電界を得るため高電圧電源を設けたり、高い絶縁性を得るための絶縁部を設けることを抑制することができる。よって、電気集塵装置1を小型化すると共に製造コストを低減することができる。同時に、上述のように、帯電部11の突起313の先端と第1接地電極61との距離も、30mm~100mmとすることにより、帯電部11と集塵部12とで同様の電源及び絶縁部の構造を用いることができる、よって、電気集塵装置1をより小型化すると共に製造コストをより低減することができる。
【0033】
集塵部12は、
図8に示すように、1つの高電圧平板電極32、及び1つの高電圧平板電極32と対向する第2接地電極62の部分は、1つの集塵ユニットU2を構成していてよい。1つの高電圧平板電極32と対向する第2接地電極62の部分とは、第2接地電極62を、第1集塵板622を境に2分割した場合の半分を意味する。換言すると、1つの高電圧平板電極32と対向する第2接地電極62の部分は、平板部62aと、平板部62aの両端に連接された曲面部62bとを含む。そして、集塵ユニットU2が、筐体2の軸に対して直列又は並列に複数配置されていてよい。本実施形態では、筐体2の軸に対して4つの集塵ユニットU2が並列に配置されている。
【0034】
複数の集塵ユニットU2を、筐体2の軸に対して直列又は並列に配置することにより、排ガスの処理容量の増加に応じて集塵部12を容易に拡張し、電気集塵装置1の集塵効率を向上させることができる。
【0035】
本実施形態では、複数の帯電ユニットU1及び複数の集塵ユニットU2を筐体2の軸に対して並列に配置しているが、これに限らず、例えば、1つの帯電ユニットU1に対し複数の集塵ユニットU2を筐体2の軸に対して並列又は直列に配置してよく、1つの集塵ユニットU2に対し複数の帯電ユニットU1を筐体2の軸に対して並列又は直列に配置してもよい。
【0036】
集塵部12は、
図2に示すように、複数の高電圧平板電極32を支持する高電圧支持電極34を有する。高電圧支持電極34は、金属等の導電性材料で構成され、複数の高電圧平板電極32同士を電気的に接続する。図示しない高電圧電源が高電圧導入部19に接続され、高電圧導入部19から高電圧支持電極34に高電圧が印加され、高電圧支持電極34を介して、複数の高電圧平板電極32に高電圧が印加されてよい。高電圧平板電極32と第2接地電極62との間には、例えば-7.5kVの直流高電圧を印加する。
【0037】
次に、電気集塵装置1の集塵の動作について説明する。
【0038】
まず、
図2に示すように、ディーゼルエンジンから排出される排ガスGが帯電部11に供給される。帯電部11では、排ガスGの流通方向(X軸方向)と平行に第1接地電極61及び高電圧棘電極31が配置されている。よって、隣接する第1接地電極61間の高電圧棘電極31が配置された空間を排ガスGが流れる。
【0039】
そして、帯電部11を流れる排ガスGに含まれる粒子状物質は、コロナ放電によって発生した負イオン流により帯電されて集塵部12に送られる。集塵部12では、排ガスGの流通方向と平行に第2接地電極62及び高電圧平板電極32が配置されている。よって、隣接する第2接地電極62間の高電圧平板電極32が配置された空間を排ガスGが流れるため、流路抵抗を低減した状態で排ガスGを流すことができる。
【0040】
そして、第2接地電極62及び高電圧平板電極32間に供給される直流の高電圧によって、静電界が形成され、第2接地電極62が、集塵部12を流れる排ガスG中の帯電された粒子状物質をクーロン力により吸引して捕集する。
【0041】
電気集塵装置1は、
図1及び2に示すように、筐体2の側面に筐体2の軸方向に間隔を空けて設けられ、気体を筐体2の内部に供給する複数のエアパージ部4と、複数のエアパージ部4のそれぞれに設けられ、高電圧支持電極33、34を支持する複数の碍子5とを備えていてよい。
【0042】
エアパージ部4は、筒型の形状を有し、筐体2内部と連通している。エアパージ部4は、筐体2とは別体であり、筐体2の側面に、例えばボルト及びナット等により締結して取り付けられている。即ち、エアパージ部4は、筐体2に対して着脱可能となっている。よって、碍子5が排ガスG中の粒子状物質によって汚損されることがあっても、エンジンを停止し電気集塵装置1を冷却した後、エアパージ部4を筐体2から取り外し、汚損された碍子5のみを新しい碍子5に交換することで、電気集塵装置1を容易に復旧させることができる。
【0043】
エアパージ部4の数は、高電圧支持電極33、34を支持する碍子5の数と同じである。エアパージ部4の数は、少なくとも4つ設けられていることが好ましい。エアパージ部4は、
図2に示すように、筐体2の軸に対して対称に4対、即ち8つ設けられていてもよい。
【0044】
図9は、電気集塵装置1の内部構造を示す斜視図であり、
図10は、
図1のY-Z断面における集塵部及び回収部15を示す斜視図であり、
図11は、
図1のX-Y断面における集塵部12を示す図であり、
図12は、天板18の平面図である。筐体2は、
図9に示すように、水平方向に配置され、電気集塵装置1は、鉛直方向において、集塵部12に対向して設けられ、集塵部12から離脱した粒子状物質を収容する回収部15を備えていてよい。この場合、帯電部11及び集塵部12の構成は、上述の本実施形態の構成を適用することができるが、上述の本実施形態の構成以外の構成であってもよい。
【0045】
集塵部12において、例えば、第2接地電極62の第1集塵板622、第2集塵板623、本体部624の壁面等に捕集され付着した粒子状物質は、時間経過と共に凝集し肥大する。肥大した粒子状物質は、エンジン等の脈動による振動や、粒子状物質自体の重量の影響を受けるようになり、集塵部12の第2接地電極62に対する付着力よりも剥離力が上回ると、第2接地電極62から離脱し、
図10の矢印で示す流れに沿って、鉛直方向下方に設けられた回収部15に自重で落下する。よって、集塵部12内に粒子状物質が滞留し、再飛散することを抑制することができ、電気集塵装置1の集塵効率をさらに高めることができる。
【0046】
また、本実施形態の電気集塵装置1は、サイクロン装置等の回収装置や配管を別途設けることなく、集塵部12で捕集した粒子状物質を回収することができるため、電気集塵装置1を小型化すると共に、電気集塵装置1の製造コストを低減することができる。
【0047】
電気集塵装置1は、回収部15への粒子状物質の落下を促進するために、ハンマー等の槌打機構を有していてもよい。回収部15は、鉛直方向において、集塵部12に対向して、筐体2に着脱可能に取り付けられていてよい。この構成により、回収部15を取り外して、回収部15内に溜まった粒子状物質を処理することができる。
【0048】
電気集塵装置1は、
図11に示すように集塵部12の捕集空間620と回収部15の内部とを連通する回収口16を有していてよい。この構成により、集塵部12の捕集空間620において、例えば、第1集塵板622、第2集塵板623、本体部624の内周面等に捕集され付着した粒子状物質を、鉛直方向下方に設けられた回収部15に導き、粒子状物質が集塵部12内に滞留し、再飛散することを抑制することができる。よって、電気集塵装置1の集塵効率を高めることができる。回収口16は、筐体2の周壁に設けられていてよい。また、
図10に示すように、第2接地電極62の端部が、回収口16に嵌合していてよい。別の実施形態では、第2接地電極62の端部が、回収口16の鉛直方向上方に位置していてもよい。
【0049】
回収部15は、鉛直方向上方に開口151を有し、鉛直方向上端から外方に延びて設けられた鍔部152を有していてよい。この構成により、筐体2に回収部15を取り付ける際、筐体2の鉛直方向下端から外方に延びて設けられた鍔部23と、回収部15の鍔部152を当接させることにより、気密を維持した状態で筐体2に回収部15を取り付けることができる。
【0050】
また、電気集塵装置1は、
図10及び
図11に示すように、第2接地電極62と高電圧平板電極32の間の空間と、回収部15との間に設けられた仕切板17を備えることが好ましい。この構成により、回収部15に排ガスが流入し、回収した粒子状物質が再飛散することを抑制し、電気集塵装置1の集塵効率をより高めることができる。仕切板17は、第2接地電極62と高電圧平板電極32の間の空間と、回収部15との間の全てを埋めるように設けられていることが好ましい。本実施形態では、仕切板17は、隣接する第2接地電極62の間にそれぞれ設けられ、合計4個設けられている。なお、隣接する第2接地電極62の間には、高電圧平板電極32が配置されている。
【0051】
仕切板17は、複数の補助開口171を有することが好ましい。これにより、集塵部12の捕集空間620に入らずに、例えば、第2接地電極62の外周面に付着し、凝集、肥大して、仕切板17の上に落下した粒子状物質、又は第2接地電極62の外周面に付着せずにそのまま仕切板17の上に落下した粒子状物質は、補助開口171を通過して鉛直方向下方に設けられた回収部15に自重で落下する。よって、集塵部12内で粒子状物質が滞留し、再飛散することをより抑制することができ、電気集塵装置1の集塵効率をさらに高めることができる。仕切板17は、例えば、パンチングメタルであってよい。
【0052】
仕切板17は、集塵部12、回収部15、筐体2のいずれに設けられていてもよく、例えば、筐体2に設けられていてよい。具体的には、筐体2は、水平方向における集塵部12の両端に、筐体2の奥行方向(Y軸方向)に延びて設けられた1対の支持板24と、1対の支持板24の間に水平方向に延びて設けられた複数の仕切板17とを有していてよい。換言すると、筐体2の周壁は、仕切板17を含んでいてよい。
【0053】
電気集塵装置1は、
図10に示すように、仕切板17と対向する位置に、第2接地電極62と高電圧平板電極32の間の空間の鉛直方向上方を塞ぐ天板18を有していてもよい。この構成により、集塵部12の捕集空間620に入らずに、第2接地電極62と高電圧平板電極32の間の空間に浮遊した粒子状物質が鉛直方向上方から集塵部12外に流出することを防止することができる。なお、天板18は、開口を有していない。
【0054】
天板18は、第2接地電極62と高電圧平板電極32の間の空間の鉛直方向上方を全て塞ぐように設けられていることが好ましい。換言すると、天板18は、仕切板17と同じ形状を有し、同じ数設けられていることが好ましい。本実施形態では、天板18は、隣接する第2接地電極62の間にそれぞれ設けられ、合計4個設けられている。なお、隣接する第2接地電極62の間には、高電圧平板電極32が配置されている。
【0055】
複数の天板18は、
図12に示すように、筐体2の奥行方向(Y軸方向)に延びる1対の支持板20の間に所定の間隔を空けて設けられて、一体となっていてよい。これにより、複数の天板18を容易に組付けることができる。
【0056】
本実施形態の電気集塵装置1は、船舶用電気集塵装置を含む。また、電気集塵装置1は、船舶の他、鉄道車両等の大型の車両用、発電用、産業用等のディーゼルエンジンに適用することができる。
【0057】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 電気集塵装置
11 帯電部
12 集塵部
15 回収部
151 開口
152 鍔部
16 回収口
17 仕切板
171 補助開口
18 天板
19 高電圧導入部
20 支持板
2 筐体
21 入口
22 出口
23 鍔部
24 支持板
31 高電圧棘電極
311 支持部
312 平板部
313、313a、313b 突起
32 高電圧平板電極
33、34 高電圧支持電極
4 エアパージ部
5 碍子
61 第1接地電極
62 第2接地電極
62a 平板部
62b 曲面部
620 捕集空間
621 捕集開口
622 第1集塵板
623 第2集塵板
624 本体部
U1 帯電ユニット
U2 集塵ユニット