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特開2023-18388導電性高分子含有液及びその製造方法、並びに導電性積層体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018388
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】導電性高分子含有液及びその製造方法、並びに導電性積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20230201BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20230201BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230201BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20230201BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20230201BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20230201BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230201BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230201BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20230201BHJP
   C09D 181/00 20060101ALI20230201BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20230201BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20230201BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20230201BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
C08L101/12
H01B1/12 F
H01B13/00 Z
H01B5/14 A
H01B13/00 503B
H01B1/20 A
C09D5/24
C09D5/02
C09D7/63
C09D7/20
C09D181/00
C09D133/00
B32B7/025
C08K5/05
C08K5/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122477
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松林 総
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J038
5G301
5G307
5G323
【Fターム(参考)】
4F100AG00B
4F100AH03A
4F100AK01A
4F100AK12A
4F100AK25A
4F100AK55A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100EJ08A
4F100JB14A
4F100JG01
4F100JG01A
4F100YY00A
4J002AA001
4J002BC121
4J002CE002
4J002GQ02
4J038CG142
4J038DK001
4J038GA01
4J038JA17
4J038JB02
4J038JB32
4J038KA06
4J038MA07
4J038MA10
4J038NA20
4J038PC08
5G301DA28
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
5G307FA01
5G307FA02
5G307FB03
5G307FC10
5G323BA05
5G323BB01
5G323BB02
5G323BB06
5G323BC03
(57)【要約】
【課題】導電性が向上した導電層を備えた導電性積層体とこれを容易に製造できる製造方法、並びに、その製造方法において使用する導電性高分子含有液及びその製造方法を提供する。
【解決手段】π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、水と、非水溶性アミン化合物と、水溶性アミン化合物と、1種以上の有機溶剤とを含有し、前記ポリアニオンは、前記非水溶性アミン化合物及び前記水溶性アミン化合物のうち少なくとも前記非水溶性アミン化合物との反応により修飾されている、導電性高分子含有液。前記有機溶剤がアルコールを含むことが好ましい。また、さらに紫外線硬化型アクリル樹脂を含んでいてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、水と、非水溶性アミン化合物と、水溶性アミン化合物と、1種以上の有機溶剤とを含有し、
前記ポリアニオンは、前記非水溶性アミン化合物及び前記水溶性アミン化合物のうち少なくとも前記非水溶性アミン化合物との反応により修飾されている、導電性高分子含有液。
【請求項2】
前記有機溶剤がアルコールを含む、請求項1に記載の導電性高分子含有液。
【請求項3】
紫外線硬化型アクリル樹脂をさらに含む、請求項1又は2に記載の導電性高分子含有液。
【請求項4】
前記有機溶剤が沸点100℃以上の有機溶剤を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の導電性高分子含有液。
【請求項5】
(前記非水溶性アミン化合物/前記水溶性アミン化合物)で表される質量比が、2以上20以下である、請求項1~4の何れか一項に記載の導電性高分子含有液。
【請求項6】
前記水溶性アミン化合物は、分子中に炭素原子以外のヘテロ原子を2つ以上有するアミン化合物を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の導電性高分子含有液。
【請求項7】
前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であるか、又は、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項1~6の何れか一項に記載の導電性高分子含有液。
【請求項8】
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体が水系分散媒中に含まれる導電性高分子分散液に、有機溶剤と、非水溶性アミン化合物と、水溶性アミン化合物とを添加し、前記ポリアニオンに少なくとも前記非水溶性アミン化合物を反応させることを有する、導電性高分子含有液の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7の何れか一項に記載の導電性高分子含有液を、基材の少なくとも一部の面に塗工することを有する、導電性積層体の製造方法。
【請求項10】
基材と、前記基材の少なくとも一部の面に形成された、請求項1~7の何れか一項に記載の導電性高分子含有液の硬化層からなる導電層とを備えた、導電性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含有する導電性高分子含有液及びその製造方法、並びに導電性積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖がπ共役系で構成されているπ共役系導電性高分子は、アニオン基を有するポリアニオンがドープすることによって導電性複合体を形成し、水に対する分散性が生じる。導電性複合体を含有する導電性高分子含有液(導電性高分子分散液ということもある。)をフィルム基材等に塗工することにより、導電層を備えた導電性フィルムを製造することができる。また、導電性高分子含有液のフィルム基材に対する濡れ性を高めたり、形成する導電層の導電性を高めたりする目的で、導電性複合体にエポキシ化合物を反応させることがある。例えば特許文献1には、環式エポキシ化合物を反応させることにより導電性複合体の導電性を向上させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-111650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、導電性が向上した導電層を備えた導電性積層体とこれを容易に製造できる製造方法、並びに、その製造方法において使用する導電性高分子含有液及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、水と、非水溶性アミン化合物と、水溶性アミン化合物と、1種以上の有機溶剤とを含有し、前記ポリアニオンは、前記非水溶性アミン化合物及び前記水溶性アミン化合物のうち少なくとも前記非水溶性アミン化合物との反応により修飾されている、導電性高分子含有液。
[2] 前記有機溶剤がアルコールを含む、[1]に記載の導電性高分子含有液。
[3] 紫外線硬化型アクリル樹脂をさらに含む、[1]又は[2]に記載の導電性高分子含有液。
[4] 前記有機溶剤が沸点100℃以上の有機溶剤を含む、[1]~[3]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液。
[5] (前記非水溶性アミン化合物/前記水溶性アミン化合物)で表される質量比が、2以上20以下である、[1]~[4]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液。
[6] 前記水溶性アミン化合物は、分子中に炭素原子以外のヘテロ原子を2つ以上有するアミン化合物を含む、[1]~[5]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液。
[7] 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であるか、又は、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、[1]~[6]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液。
[8] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体が水系分散媒中に含まれる導電性高分子分散液に、有機溶剤と、非水溶性アミン化合物と、水溶性アミン化合物とを添加し、前記ポリアニオンに少なくとも前記非水溶性アミン化合物を反応させることを有する、導電性高分子含有液の製造方法。
[9] [1]~[7]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液を、基材の少なくとも一部の面に塗工することを有する、導電性積層体の製造方法。
[10] 基材と、前記基材の少なくとも一部の面に形成された、[1]~[7]の何れか一項に記載の導電性高分子含有液の硬化層からなる導電層とを備えた、導電性積層体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の導電性高分子含有液及びこれを用いた導電性積層体の製造方法によれば、導電性が優れた導電層を備えた導電性積層体を容易に製造できる。
本発明の導電性高分子含有液の製造方法によれば、上記の導電性高分子含有液を容易に製造できる。
【0007】
本発明はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に資すると考えられる。
【0008】
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で示す数値範囲の下限値及び上限値はその数値範囲に含まれるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪導電性高分子含有液≫
本発明の第一態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、水と、非水溶性アミン化合物と、水溶性アミン化合物と、1種以上の有機溶剤とを含有し、前記ポリアニオンは、前記非水溶性アミン化合物及び前記水溶性アミン化合物のうち少なくとも前記非水溶性アミン化合物との反応により修飾されている、導電性高分子含有液である。
本態様の導電性高分子含有液において、導電性複合体は、分散状態であってもよいし、溶解状態であってもよく、特に明記しない限り両者を区別しない。
【0010】
<π共役系導電性高分子>
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0011】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0012】
<ポリアニオン>
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記導電性複合体を構成する前記ポリアニオンは1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
【0013】
ポリアニオンが、π共役系導電性高分子にドープすることによって導電性複合体を形成する。ただし、ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。この余剰のアニオン基は親水基であるため、後述するようにアミン化合物と反応させる前の状態では、導電性複合体は水分散性が高く、有機溶剤分散性が低い。
ポリアニオンが有する全てのアニオン基の個数を100モル%としたとき、余剰のアニオン基は、30モル%以上90モル%以下が好ましく、45モル%以上75モル%以下がより好ましい。
【0014】
本発明のポリアニオンは、ポリアニオンが有するドープに関与しない余剰のアニオン基(以下、「一部のアニオン基」ともいう)が、非水溶性アミン化合物及び水溶性アミン化合物のうち少なくとも非水溶性アミン化合物との反応により修飾されている。すなわち、本発明のポリアニオンは、少なくとも非水溶性アミン化合物と、一部のアニオン基との反応によって形成された置換基(B)を有する。
【0015】
(置換基B)
導電性複合体の詳細な分析は必ずしも容易ではないが、置換基(B)は下記式(B)で表される基であると推測される。
【0016】
-HN111213 ・・・(B)
[式(B)中、R11~R13はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有してもよい炭化水素基であり、ただし、R11~R13のうち少なくとも1つは置換基を有してもよい炭化水素基である。]
【0017】
置換基(B)において、左端の結合手は、アニオン基の負電荷と、アミン化合物の正電荷とが結合していることを表す。負に荷電し得るアニオン基として、例えば「-SO 」のように、酸素原子に活性なプロトンが結合したアニオン基が挙げられる。
【0018】
化学式(B)におけるR11~R13は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。化学式(B)におけるR11~R13は後述するアミン化合物に由来する置換基である。
化学式(B)における炭化水素基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基の置換基としては、例えばフェニル基、水酸基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基の置換基としては、例えば炭素数1~5のアルキル基、水酸基等が挙げられる。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲において、水溶性アミン化合物は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上のアミン化合物であり、非水溶性アミン化合物は、20℃の水100gに対する溶解量が1g未満のアミン化合物である。
本態様の導電性高分子含有液に含まれる水溶性アミン化合物は1種類でもよいし、2種以上でもよい。本態様の導電性高分子含有液に含まれる非水溶性アミン化合物は1種類でもよいし、2種以上でもよい。
以下では、水溶性アミン化合物と非水溶性アミン化合物の総称として単に「アミン化合物」ということがある。
【0020】
前記アミン化合物は、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
第一級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
第二級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物のうち、本態様の導電性複合体の導電性を高められることから、第三級アミンが好ましく、トリオクチルアミン及びトリブチルアミンの少なくとも一方がより好ましい。
【0021】
有機溶剤への分散性、特に、低極性の炭化水素系溶剤、エステル系溶剤への分散性が高くなることから、非水溶性アミン化合物は、窒素原子上に炭素数が4以上の置換基を有することが好ましく、6以上の置換基を有することがより好ましく、窒素原子上に炭素数が8以上の置換基を有することがさらに好ましい。この窒素原子上の置換基の炭素数の上限値は特に制限されず、溶剤への溶解性や反応性を考慮して、例えば、50以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下がさらに好ましい。
また、非水溶性アミン化合物が有する前記R11~R13の合計の炭素数は、6~33が好ましく、9~30がより好ましく、12~27がさらに好ましい。
前記窒素原子上の各置換基の炭素数の数は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
本態様の非水溶性アミン化合物としては、例えば、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリドデシルアミン、ジドデシルアミン、トリヘキシルアミン、及びトリデシルアミンからなる群から選択される1種以上が好ましい。
上記の好適な非水溶性アミン化合物であると、本態様の導電性高分子含有液からなる導電層の導電性がより高まる。
【0023】
本態様の水溶性アミン化合物は、水溶性を呈する観点から、分子中に有する炭素原子の数が3以下であることが好ましい。また、水溶性アミン化合物が分子中に有するヘテロ原子(炭素原子以外の原子。例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等)の数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。分子中のヘテロ原子は不対電子対を有するので、水素結合の形成により水に対する溶解性が高まる。このため、ヘテロ原子を2以上有する水溶性アミン化合物は、分子中の炭素原子の数が4以上であっても水溶性を呈し得る。前記ヘテロ原子の数の上限値は特に制限されず、例えば10以下が目安として挙げられる。
【0024】
本態様の水溶性アミン化合物としては、例えば、イミダゾール、ビニルイミダゾール、トリエタノールアミン、トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン、エタノールアミン及びアンモニアからなる群から選択される1種以上が好ましい。
上記の好適な水溶性アミン化合物であると、本態様の導電性高分子含有液からなる導電層の導電性がより高まる。
【0025】
本態様の非水溶性アミン化合物と水溶性アミン化合物との組み合わせは特に制限されず、例えば、上述した好適なアミン化合物からそれぞれ任意に選択した1種ずつの組み合わせが挙げられる。
【0026】
本態様の導電性高分子含有液に含まれる非水溶性アミン化合物の含有量は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計質量100質量部に対して、10質量部以上1000質量部以下が好ましく、30質量部以上500質量部以下がより好ましく、50質量部以上200質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなり、有機溶剤に対する分散性が向上する。
上記範囲の上限値以下であると、未反応のアミン化合物による導電性低下を防止できる。
ここで、非水溶性アミン化合物の全てが置換基(B)を形成していなくてもよいが、少なくとも一部が置換基(B)を形成していることが、導電性複合体の有機溶剤に対する分散性を高める観点から、好ましい。
【0027】
本態様の導電性高分子含有液に含まれる水溶性アミン化合物の含有量は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計質量100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下が好ましく、3質量部以上50質量部以下がより好ましく、5質量部以上20質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、本態様の導電性高分子含有液からなる導電層の導電性がより高まる。
ここで、水溶性アミン化合物は置換基(B)を形成していてもよいし、形成していなくてもよい。
【0028】
本態様の導電性高分子含有液に含まれる非水溶性アミン化合物の質量Xと水溶性アミン化合物の質量Yの比(X:Y)は、10:0.1~10:5が好ましく、10:0.5~10:4がより好ましく、10:1~10:3がさらに好ましい。
上記範囲であると、本態様の導電性高分子含有液からなる導電層の導電性がより高まる。
【0029】
本態様の導電性高分子含有液において、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲が好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲がさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、ドープに関与しないアニオン基の量が適度に抑えられ、アニオン基にアミン化合物を反応させ、導電性複合体を疎水性に変換することが容易になる。
【0030】
導電性高分子含有液の総質量に対する、前記導電性複合体の含有量は、例えば、0.01質量%以上2質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
<分散媒>
本態様の導電性高分子含有液に含まれる分散媒は、前述した導電性複合体を分散又は溶解する液剤である。本明細書において、分散と溶解とを区別せずに単に分散ということがあり、分散媒と溶媒とを区別せずに単に分散媒ということがある。よって、前記分散媒を溶媒と言い換えてもよい。
【0032】
前記分散媒は、水及び1種以上の有機溶剤を含む。
導電性高分子含有液に含まれる導電性複合体は、前述したように疎水化されているので、有機溶剤に対する分散性に優れる。
【0033】
(有機溶剤)
本態様における有機溶剤は、水溶性有機溶剤でもよいし、非水溶性有機溶剤でもよいし、水溶性有機溶剤及び非水溶性有機溶剤の混合溶剤でもよい。ここで、水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤であり、非水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g未満の有機溶剤である。
前記アミン化合物の溶解性が高まることから、本態様における有機溶剤は水溶性有機溶剤であることが好ましい。
【0034】
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤(アルコール)としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロパノール)、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性高分子含有液の基材に対する塗工性が良好になることから、水溶性有機溶剤としてはアルコール系溶剤、ケトン系溶剤又はエステル系溶剤が好ましい。
【0035】
非水溶性有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤等が挙げられる。炭化水素系溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
非水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
本態様の導電性高分子含有液の分散媒の総質量に対する有機溶剤の含有量は、50質量%超であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上99.9質量%以下であることがさらに好ましい。有機溶剤の含有割合が上記範囲であると、疎水化された導電性複合体を容易に分散させることができ、容易に導電層を形成するこができる。
【0037】
(高沸点溶剤)
本態様の導電性高分子含有液は、1気圧(101325パスカル)における沸点が100℃以上の高沸点溶剤を含んでいてもよい。高沸点溶剤の前記沸点は250℃以下が好ましい。高沸点溶剤を含むことにより、導電性の向上等の効果が得られる。
本態様の導電性高分子含有は、高沸点溶剤と、高沸点溶剤以外の有機溶剤(1気圧における沸点が100℃未満の有機溶剤)を含むことが好ましい。
本態様の導電性高分子含有液が含む高沸点溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。また、本態様の導電性高分子含有液が含む高沸点溶剤以外の有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
【0038】
高沸点溶剤として、水溶性有機溶剤、非水溶性有機溶剤が例示される。ここで、水溶性有機溶剤と非水溶性有機溶剤の定義は上述と同じである。
【0039】
高沸点の水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤、硫黄原子含有溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール(沸点198℃)、1,2-プロパンジオール(別名:プロピレングリコール、沸点188℃)、1,3-プロパンジオール(沸点214℃)、1,2-ブタンジオール(沸点194℃)、1,3-ブタンジオール(沸点207℃)、1,4-ブタンジオール(沸点228℃)、ジプロピレングリコール(沸点232℃、異性体の混合物)、ジエチレングリコール(沸点245℃)、等の多価アルコールが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点:132.8℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点188℃)等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、メチルアミルケトン(沸点151℃)、ジアセトンアルコール(沸点168℃)等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン(沸点202℃)、N-メチルアセトアミド(沸点206℃)、ジメチルアセトアミド(沸点165℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃)等が挙げられる。
硫黄原子含有溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)等が挙げられる。
【0040】
高沸点の非水溶性有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤等が挙げられる。炭化水素系溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ノナン(沸点151℃)、デカン(沸点174℃)、ドデカン(沸点216℃)等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、プロピルベンゼン(沸点159℃)、イソプロピルベンゼン(沸点152℃)等が挙げられる。
【0041】
上記例の中でも、導電性向上の効果がより一層得られることから、アルコール系又はエーテル系の高沸点溶剤が好ましい。
【0042】
本態様の導電性高分子含有液に含まれるアミン化合物の合計10質量部に対する高沸点溶剤の含有割合は、100質量部以上10000質量部以下が好ましく、500質量部以上5000質量部以下がより好ましく、800質量部以上3000質量部以下がさらに好ましい。上記範囲であると、形成される導電層の導電性がより一層向上する。
【0043】
本態様の導電性高分子含有液の総質量に対する高沸点溶剤の含有量は、1質量%以上3
0質量%以下が好ましく、5質量%以上25質量%以下がより好ましく、10質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。上記範囲であると、形成される導電層の導電性がより一層向上する。
【0044】
本態様の導電性高分子含有液に含まれる高沸点溶剤と高沸点溶剤以外の有機溶剤の割合は、高沸点溶剤の質量(M1)<高沸点溶剤以外の有機溶剤の質量(M2)の割合であることが好ましい。また、M2/M1比は、1~10が好ましく、2~8がより好ましく、3~5がさらに好ましい。
上記割合であると、形成される導電層の導電性をより高めることができる。
【0045】
本態様の導電性高分子含有液が後述する紫外線硬化樹脂を含む場合、高沸点溶剤を含むことが好ましい。
【0046】
<紫外線硬化型アクリル樹脂>
本態様の導電性高分子含有液は、紫外線硬化型アクリル樹脂を含んでいてもよい。前記紫外線硬化型アクリル樹脂は、導電層形成時の紫外線照射によって硬化してアクリル樹脂となる、モノマー又はオリゴマー(重量平均分子量が1万以下の低重合体)である。
本態様の導電性高分子含有液に含まれる前記紫外線硬化型アクリル樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0047】
前記紫外線硬化型アクリル樹脂は、多官能(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を、「(メタ)アクリル樹脂」とは「アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂」を、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基」を、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは「アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基」を意味する。
【0048】
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであれば、特に制限されない。例えば、2官能(メタ)アクリレート(a1)、3官能(メタ)アクリレート(a2)、4~6官能(メタ)アクリレート(a3)及び7~10官能(メタ)アクリレート(a4)が挙げられる。
【0049】
2官能(メタ)アクリレート(a1)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えば、グリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのジ(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1,5-ペンタンジオールのジ(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシ-2-エチル-1,3-プロパンジオールのジ(メタ)アクリレート];多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と(メタ)アクリル酸のエステル化物[例えばトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート及びグリセリンのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート];水酸基含有両末端エポキシアクリレート;多価アルコールと(メタ)アクリル酸とヒドロキシカルボン酸のエステル化物[例えばヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート]等が挙げられる。
ここで、多価アルコールの水酸基のすべてを(メタ)アクリル酸やアルキレンオキサイド付加物等と反応させる必要はなく、未反応の水酸基が残っていてもよい。
【0050】
3官能(メタ)アクリレート(a2)としては、グリセリンのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのトリ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
4~6官能(メタ)アクリレート(a3)としては、ペンタエリスリトールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加物のペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
7~10官能の(メタ)アクリレート化合物(a4)としては、例えばジペンタエリス
リトールペンタ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応により得られる化合物等のジイソシアネート化合物と水酸基含有多官能(メタ)アクリレート化合物との反応物等が挙げられる。
【0053】
本態様の導電性高分子含有液の総質量に対する前記紫外線硬化型アクリル樹脂の含有量は、5質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましく、15質量%以上25質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、形成する導電層の膜強度をより高めることができる。
上記範囲の上限値以下であると、形成する導電層に含まれる導電性複合体の含有量を高められるので、前記導電層の導電性をより高めることができる。
【0054】
前記紫外線硬化型アクリル樹脂と合わせて、紫外線照射によりラジカルを発生させる光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0055】
(その他の添加剤)
本態様の導電性高分子含有液には、公知のその他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤などを使用できる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
本態様の導電性高分子含有液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
【0056】
≪導電性高分子含有液の製造方法≫
本発明の第二態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体が水系分散媒中に含まれる導電性高分子分散液に、有機溶剤と、非水溶性アミン化合物と、水溶性アミン化合物とを添加し、前記ポリアニオンに少なくとも前記非水溶性アミン化合物を反応させることを有する、導電性高分子含有液の製造方法である。
本態様の製造方法により、第一態様の導電性高分子含有液を製造することができる。
【0057】
前記導電性高分子分散液に前記非水溶性アミン化合物及び前記水溶性アミン化合物を添加すると、少なくとも非水溶性アミン化合物がポリアニオンの一部のアニオン基と反応する。これにより置換基(B)が形成されて導電性複合体が疎水性になる。このため、反応時に有機溶剤を添加しておくことにより、反応後の導電性複合体が分散媒中で安定に分散又は溶解した導電性高分子含有液が得られる。ここで、反応時に添加する有機溶剤は前記「高沸点溶剤以外の有機溶剤」であることが好ましい。
【0058】
非水溶性アミン化合物の添加量は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計質量100質量部に対して、10質量部以上1000質量部以下が好ましく、30質量部以上500質量部以下がより好ましく、50質量部以上200質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなり、有機溶剤に対する分散性が向上する。
上記範囲の上限値以下であると、未反応のアミン化合物による導電性低下を防止できる。
【0059】
水溶性アミン化合物の添加量は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの合計質量100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下が好ましく、3質量部以上50質量部以下がより好ましく、5質量部以上20質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、本態様の導電性高分子含有液からなる導電層の導電性がより高まる。
【0060】
非水溶性アミン化合物の添加量Xと水溶性アミン化合物の添加量Yの質量比(X:Y)は、10:0.1~10:5が好ましく、10:0.5~10:4がより好ましく、10:1~10:3がさらに好ましい。
上記範囲であると、本態様の導電性高分子含有液からなる導電層の導電性がより高まる。
【0061】
非水溶性アミン化合物及び水溶性アミン化合物の合計の添加量は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンの100質量部に対して、10質量部以上1000質量部以下が好ましく、40質量部以上500質量部以下がより好ましく、80質量部以上300質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなり、有機溶剤に対する分散性が向上する。
上記範囲の上限値以下であると、未反応のアミン化合物による導電性低下を防止できる。
【0062】
本態様で「原材料」として用いる導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が水系分散媒中に含まれる分散液である。
ここで、上記の導電性高分子分散液の水系分散媒は、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合液である。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。水系分散媒に含まれる水溶性有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。上記の導電性高分子分散液の水系分散媒の総質量に対する水の含有量は、50質量%超が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
【0063】
導電性高分子分散液は、例えば、ポリアニオンの水溶液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合することにより得られる。また、導電性高分子分散液は市販のものを使用してもよい。
前記化学酸化重合には、公知の触媒及び酸化剤を用いることができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。
【0064】
前記反応により得られた導電性高分子含有液に対して、さらに高沸点有機溶剤や紫外線硬化型アクリル樹脂を添加してもよい。
【0065】
≪導電性積層体≫
本発明の第三態様は、基材と、前記基材の少なくとも一部の面に形成された、第一態様の導電性高分子含有液の硬化層からなる導電層とを備えた、導電性積層体である。
【0066】
[導電層]
前記導電層の形成範囲は、基材が有する任意の面の全体でもよいし、一部でもよい。導電性フィルムにおいては、フィルム基材の一方の面又は他方の面のほぼ全体にほぼ均一な厚さの導電層が形成されていることが好ましい。基材が有する面の一部のみに導電層が形成されている場合、例えば、当該導電層は回路や電極などの微細な導電パターンであってもよいし、導電層が設けられた領域と設けられていない領域とが同じ面に存在して大まかに区分けされただけであってもよい。
【0067】
前記導電層の平均厚みとしては、例えば、10nm以上100μm以下が好ましく、20nm以上50μm以下がより好ましく、30nm以上30μm以下がさらに好ましい。
導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層の基材に対する密着性がより向上する。
【0068】
[基材]
前記基材は、絶縁性材料からなる基材であってもよいし、導電性材料からなる基材であってもよい。基材の形状は特に制限されず、例えば、フィルム、基板等の平面を主体とする形状が挙げられる。
絶縁性材料としては、ガラス、合成樹脂、セラミックス等が挙げられる。
導電性材料としては、金属、導電性金属酸化物、カーボン等が挙げられる。
【0069】
(フィルム基材)
前記基材としてフィルム基材を用いると、導電性積層体は導電性フィルムとなる。
前記フィルム基材としては、例えば、合成樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。前記合成樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
フィルム基材と導電層との密着性を高める観点から、フィルム基材用の合成樹脂はポリエステル樹脂であることが好ましく、なかでも、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0070】
フィルム基材用の合成樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、前記導電層の密着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
【0071】
フィルム基材の平均厚みは、5μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0072】
(ガラス基材)
ガラス基材としては、例えば、無アルカリガラス基材、ソーダ石灰ガラス基材、ホウケイ酸ガラス基材、石英ガラス基材等が挙げられる。基材にアルカリ成分が含まれると、導電層の導電性が低下する傾向にあるため、前記ガラス基材のなかでも、無アルカリガラスが好ましい。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分の含有量がガラス組成物の総質量に対し、0.1質量%以下のガラス組成物のことである。
【0073】
ガラス基材の平均厚みとしては、100μm以上3000μm以下が好ましく、100μm以上1000μm以下がより好ましい。ガラス基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破損しにくくなり、前記上限値以下であれば、導電性積層体の薄型化に寄与できる。
ガラス基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0074】
≪導電性積層体の製造方法≫
本発明の第四態様は、第一態様の導電性高分子含有液を、基材の少なくとも一部の面に塗工し、導電層を形成することを含む、導電性積層体の製造方法である。本態様の製造方法により、第三態様の導電性積層体を製造することができる。
【0075】
導電性高分子含有液を基材の任意の面に塗工(塗布)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
【0076】
導電性高分子含有液の基材への塗布量は特に制限されないが、均一にムラなく塗工することと、導電性と膜強度を勘案して、固形分として、0.01g/m以上10.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
【0077】
基材上に塗工した導電性高分子含有液からなる塗膜を乾燥させて、分散媒の少なくとも一部を除去し、硬化させることにより、導電層を形成することができる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上200℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記加熱温度の範囲における好適な乾燥時間としては、0.5分以上30分以下が好ましく、1分以上15分以下がより好ましい。
乾燥後にUV照射することにより、塗膜中に含まれるUV硬化樹脂を硬化させてもよい。
【実施例0078】
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、得られたポリスチレンスルホン酸溶液の約1000mlの溶媒を限外ろ過法により除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0079】
(製造例2)
0.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、1.5gのポリスチレンスルホン酸を15.0gのイオン交換水に溶かした溶液を20℃で混合した。次に、イオン交換水89.5gを添加した。
得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、0.03gの硫酸第二鉄を4.97gのイオン交換水に溶かした溶液と、1.1gの過硫酸アンモニウムを8.9gのイオン交換水に溶かした溶液とをゆっくり添加し、得られた反応液を24時間攪拌して反応させた。
上記反応により、π共役系導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体(PEDOT-PSS)と、分散媒である水とを含む導電性高分子分散液を得た。
この導電性高分子分散液にデュオライトC255LFH(住化ケムテックス社製、陽イオン交換樹脂)13.2gとデュオライトA368S(住化ケムテックス社製、陰イオン交換樹脂)13.2gを加え、濾過してイオン交換樹脂を除き、前記酸化剤及び前記触媒が除去された導電性高分子分散液(導電性複合体濃度は約1.3質量%)を得た。
【0080】
(実施例1)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.824gと、トリオクチルアミン0.16gと、イミダゾール0.016gとを混合し、各アミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。
次に、#4のバーコーターを用いてPETフィルム(東レ社製、ルミラーT-60)に塗布し、120℃で1分間乾燥して導電性フィルムを得た。この導電性フィルムの表面抵抗値を測定した結果を表1に示す。
続いて、上記の導電性高分子含有液64.2gと、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20gと、イルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)0.8gと、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点:132.8℃)15gとを混合して塗料を得た。次に、#8のバーコーターを用いてPETフィルムに塗布し、100℃で1分間乾燥し、400mJの紫外線を照射して導電性フィルム(導電性ハードコートフィルム)を得た。この表面抵抗値を測定した結果を表1に示す。
【0081】
(実施例2)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.808gと、トリオクチルアミン0.16gと、イミダゾール0.032gとを混合し、各アミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0082】
(実施例3)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.792gと、トリオクチルアミン0.16gと、イミダゾール0.048gとを混合し、各アミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0083】
(実施例4)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.824gと、トリオクチルアミン0.16gと、ビニルイミダゾール0.016gとを混合し、各アミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0084】
(実施例5)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.824gと、トリオクチルアミン0.16gと、トリエタノールアミン0.016gとを混合し、各アミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0085】
(実施例6)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.824gと、トリオクチルアミン0.16gと、トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン0.016gとを混合し、各アミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0086】
(実施例7)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.736gと、トリドデシルアミン0.24gと、イミダゾール0.024gとを混合し、各アミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0087】
(実施例8)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.824gと、ジドデシルアミン0.16gと、イミダゾール0.016gとを混合し、各アミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0088】
(実施例9)
製造例2で得た導電性高分子分散液30gと、イソプロパノール69.648gと、トリオクチルアミン0.32gと、イミダゾール0.032gとを混合し、各アミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0089】
(実施例10)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、メタノール15gと、メチルエチルケトン69.824gと、トリオクチルアミン0.16gと、イミダゾール0.016gとを混合し、各アミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0090】
(比較例1)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.84gと、トリオクチルアミン0.16gとを混合し、1種のアミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0091】
(比較例2)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.76gと、トリドデシルアミン0.24gとを混合し、1種のアミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0092】
(比較例3)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.84gと、ジドデシルアミン0.16gとを混合し、1種のアミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0093】
(比較例4)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.824gと、トリオクチルアミン0.16gと、トリドデシルアミン0.016gとを混合し、各アミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0094】
(比較例5)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.97gと、イミダゾール0.03gとを混合し、導電性高分子含有液を作製したが、導電性高分子が沈降し、塗布可能な分散状態にならなかったため、中止した。
【0095】
(比較例6)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.957gと、ビニルイミダゾール0.043gとを混合し、導電性高分子含有液を作製したが、導電性高分子が沈降し、塗布可能な分散状態にならなかったため、中止した。
【0096】
(比較例7)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.932gと、トリエタノールアミン0.068gとを混合し、導電性高分子含有液を作製したが、導電性高分子が沈降し、塗布可能な分散状態にならなかったため、中止した。
【0097】
(比較例8)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.854gと、トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン0.146gとを混合し、導電性高分子含有液を作製したが、導電性高分子が沈降し、塗布可能な分散状態にならなかったため、中止した。
【0098】
(比較例9)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、イソプロパノール84.967gと、イミダゾール0.03gとビニルイミダゾール0.003gを混合し、導電性高分子含有液を作製したが、導電性高分子が沈降し、塗布可能な分散状態にならなかったため、中止した。
【0099】
(比較例10)
製造例2で得た導電性高分子分散液30gと、イソプロパノール69.68gと、トリオクチルアミン0.32gとを混合し、1種のアミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0100】
(比較例11)
製造例2で得た導電性高分子分散液15gと、メタノール15gと、メチルエチルケトン69.84gと、トリオクチルアミン0.16gとを混合し、1種のアミン化合物がPEDOT-PSSに反応した生成物を含む導電性高分子含有液を得た。これを用い、実施例1と同様にして2種の導電性フィルムを得て、各表面抵抗値を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0101】
[表面抵抗値の測定]
各例で作製した導電性フィルムについて、導電層の表面抵抗値を、抵抗率計(日東精工アナリテック株式会社製ハイレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。表中、「2.0E+05」は「2.0×10」を意味し、他も同様である。表中の測定値の単位は、Ω/□である。
【0102】
【表1】
【0103】
<結果>
非水溶性アミン化合物及び水溶性アミン化合物の添加により、有機溶剤に分散可能に疎水化された導電性複合体を含む導電性高分子含有液を用いて作製した各実施例の導電性フィルムの導電性は、比較例に対して優れていた。比較例1~4,10,11では、非水溶性アミン化合物によって疎水化された導電性複合体を含むが、水溶性アミン化合物を含まないため、導電性が劣っていた。比較例5~9では、水溶性アミン化合物を含むが非水溶性アミン化合物を含まないため、導電性複合体が有機溶剤に分散可能な状態にならなかった。