IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

<>
  • 特開-表示装置 図1
  • 特開-表示装置 図2
  • 特開-表示装置 図3
  • 特開-表示装置 図4
  • 特開-表示装置 図5
  • 特開-表示装置 図6
  • 特開-表示装置 図7
  • 特開-表示装置 図8
  • 特開-表示装置 図9
  • 特開-表示装置 図10
  • 特開-表示装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183882
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/377 20060101AFI20231221BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G09G5/36 520L
G09G5/00 510A
G09G5/00 550C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097675
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100087723
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206357
【弁理士】
【氏名又は名称】角谷 智広
(72)【発明者】
【氏名】宇田 尚典
【テーマコード(参考)】
5C182
【Fターム(参考)】
5C182AA02
5C182AA03
5C182AA04
5C182AB11
5C182AB13
5C182AC03
5C182AC43
5C182BA29
5C182CB12
5C182CB32
5C182CB53
5C182CB55
(57)【要約】
【課題】見る人の位置に応じて表示される映像の抽象度が変化する表示装置を実現すること。
【解決手段】抽象度生成部2によって、距離測定部1により測定した距離から抽象度を算出する。次に、映像生成部3によって、抽象度から以下のようにして映像を生成する。第0映像は、各辺に模様がある2つの矩形の映像を合成した映像とする。次に、第0映像を左右上下反転して2×2に配列することで第1映像を生成する。第1映像をマトリクス状に配列することで第2映像を生成する。同様に第2映像をマトリクス状に配列することで第3映像を生成する。これを繰り返して第(n-1)映像から第n映像を生成し、第n映像から第(n+1)映像を生成する。次に、第n映像と第(n+1)映像をアルファ合成する。このとき、抽象度の小数部分をaとして、第n映像の重みを1-a、第(n+1)映像の重みをaとして合成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を見る人の位置を取得し、その位置から映像の抽象度を生成する抽象度生成部と、
前記抽象度に応じた映像を生成する映像生成部と、
前記映像生成部によって生成された前記抽象度に応じた映像を表示する表示部と、
を有し、
前記映像生成部は、各辺のうち少なくとも一辺に模様を有する2つの矩形の映像を合成して第0映像とし、前記第0映像を左右上下反転して2×2に配列した第1映像を生成し、その後、前記第1映像を配列することを繰り返して、前記抽象度に応じた映像を生成する、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記抽象度生成部は、実数パラメータで整数部分がn(nは0以上の整数)、小数部分がaである抽象度を生成し、
前記映像生成部は、
前記第1映像を単位として2×2、1×2、または2×1に配列して第2映像を生成し、前記第2映像に同様の処理を繰り返して第3映像から第(n+1)映像までを生成し、さらに第n映像と第(n+1)映像をaに応じて重み付けて合成することで、前記抽象度に対応した映像を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記映像生成部は、第n映像と第(n+1)映像をaに応じて重み付けて合成した映像に、前記抽象度に応じたエフェクト具合のエフェクトをかける、
ことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記抽象度生成部は、前記商事部から人までの距離が第1所定値以下では抽象度を0とし、前記距離が第1所定値より大きく第2所定値以下では前記距離と前記抽象度を線形に対応させて0からnまで増加させ、前記距離が前記第2所定値よりも大きければ前記抽象度をnとする、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記映像生成部は、第n映像に1-aの重み付け、第(n+1)映像にaの重み付けをしてアルファ合成する、ことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示装置は商品を表示するディスプレイ装置であり、
前記第0映像の合成元である2つの矩形の映像のうち、一方は前記商品を含む映像である、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像を表示する表示装置であって、映像を見る人の位置に応じて映像の抽象度を変化させるものに関する。
【背景技術】
【0002】
映像を抽象化(元の映像が何かをわかりにくくすること)し、元の映像を人に推定させることが一般に行われている。
【0003】
映像を抽象化する方法として万華鏡がある。特許文献1では、観察者自身をビデオカメラで撮影し、その映像を切り出して反射パターンに配置することで電子的に万華鏡を実現している。また、特許文献2では、ライブ映像から所定の形状を切り出して対称的に配置することで電子的な万華鏡を実現している。
【0004】
特許文献3には、対称的に感圧紙を折り畳み、その折り畳んだ感圧紙の表面に図形を描き、折り重なった部分にも図形を転写し、その後に感圧紙を広げることで図形を分割して抽象化する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-147424号公報
【特許文献2】特開2014-35766号公報
【特許文献3】特開平5-189576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者は、見る人との距離に応じて映像の抽象度を変化させることを思い付いた。たとえば、遠目には商品の映像の抽象度を高くし、何だろうと思って近づいていくと抽象度が低くなって商品が何かわかる、というような商品の印象付けに利用することを考えた。
【0007】
特許文献1~3には、映像の抽象度を変化させることは記載されていない。また、特許文献1、2は万華鏡であり、対称性を有した美しいパターンを表示させることが目的で、元の映像が何かを推定させることが目的ではない。また、特許文献3は図形を複雑化して元の図形を秘匿化することが目的であり、元の図形が推定されては意味がない。
【0008】
そこで本発明の目的は、見る人の位置に応じて表示される映像の抽象度が変化する表示装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、映像を見る人の位置を取得し、その位置から映像の抽象度を生成する抽象度生成部と、前記抽象度に応じた映像を生成する映像生成部と、前記映像生成部によって生成された前記抽象度に応じた映像を表示する表示部と、を有し、前記映像生成部は、各辺のうち少なくとも一辺に模様を有する2つの矩形の映像を合成して第0映像とし、前記第0映像を左右上下反転して2×2に配列した第1映像を生成し、その後、前記第1映像を配列することを繰り返して、前記抽象度に応じた映像を生成する、ことを特徴とする表示装置である。
【0010】
本発明において、前記抽象度生成部は、実数パラメータで整数部分がn(nは0以上の整数)、小数部分がaである抽象度を生成し、前記映像生成部は、前記第1映像を単位として2×2、1×2、または2×1に配列して第2映像を生成し、前記第2映像に同様の処理を繰り返して第3映像から第(n+1)映像までを生成し、さらに第n映像と第(n+1)映像をaに応じて重み付けて合成することで、前記抽象度に対応した映像を生成してもよい。
【0011】
本発明において、前記映像生成部は、第n映像と第(n+1)映像をaに応じて重み付けて合成した映像に、前記抽象度に応じたエフェクト具合のエフェクトをかけてもよい。
【0012】
本発明において、前記抽象度生成部は、前記商事部から人までの距離が第1所定値以下では抽象度を0とし、前記距離が第1所定値より大きく第2所定値以下では前記距離と前記抽象度を線形に対応させて0からnまで増加させ、前記距離が前記第2所定値よりも大きければ前記抽象度をnとしてもよい。
【0013】
本発明において、前記映像生成部は、第n映像に1-aの重み付け、第(n+1)映像にaの重み付けをしてアルファ合成してもよい。
【0014】
本発明において、前記表示装置は商品を表示するディスプレイ装置であり、前記第0映像の合成元である2つの矩形の映像のうち、一方は前記商品を含む映像であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、見る人の位置に応じて表示される映像の抽象度が変化する表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の表示装置の構成を示した図。
図2】第n映像の生成方法を模式的に示した図。
図3】映像の例を示した図。
図4】映像の例を示した図。
図5】映像の例を示した図。
図6】映像の例を示した図。
図7】映像の例を示した図。
図8】映像の例を示した図。
図9】映像の例を示した図。
図10】映像の例を示した図。
図11】映像の例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を参照に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の表示装置の構成を示した図である。図1のように、第1実施形態の表示装置は、距離測定部1と、抽象度生成部2と、映像生成部3と、表示部4と、を有している。
【0019】
距離測定部1は、表示部4から人までの距離を測定する装置である。距離の測定は、所定間隔で常時行う。後述の抽象度生成と映像生成に要する時間よりも長い間隔であれば任意でよく、たとえば、10ms~1s間隔で行う。これにより、人の位置の変化を検出する。距離測定部1により測定した距離データは、測定毎に抽象度生成部2に送信される。
【0020】
距離測定部1には、たとえば、レーザーレンジファインダー、距離画像センサ、LiDARなどを用いることができる。距離の測定方式もTOF法など任意の方式でよく、光、電波、超音波のいずれを用いてもよい。
【0021】
表示部4から人までの距離を直接的に測定する必要はなく、間接的に測定してもよい。たとえば、既知の位置に対する人の位置を測定し、表示部4に対する既知の位置と、既知の位置に対する人の位置から、表示部4から人までの距離を算出してもよい。距離測定部1は任意の位置に配置でき、表示部4の近傍でもよいし、表示部4から離れた位置でもよい。
【0022】
また、表示部4から人までの距離は、人の任意の部位までの距離でもよいし、所定部位までの距離でもよい。たとえば、表示部4から人の手までの距離でもよい。
【0023】
抽象度生成部2は、距離測定部1によって測定された距離に基づいて抽象度を算出するものである。ここで、抽象度は、元の映像が何かを判別する難易度を示す指標であり、値が大きいほどその難易度が高くなるような実数値である。第1実施形態では、抽象度は0以上の実数値を取り、抽象度0は元の映像を示す。以下、抽象度の整数部分をn(nは0以上の整数)、小数部分をaとする。nやaに特に制限はないが、aは、たとえば小数第2位~第4位までの値である。nの最大値はたとえば3~5である。
【0024】
抽象度は、表示部4から人までの距離に応じて抽象度が変化するように1対1に対応付けられていればよく、その対応関係は任意でよい。たとえば、距離が第1所定値以下では抽象度を0とし、距離が第1所定値より大きく第2所定値以下では距離と抽象度を線形に対応させて0からnまで増加させ、距離が第2所定値よりも大きければ抽象度をnとする。また、距離ではなく位置に応じて抽象度が変化するように対応付けてもよい。つまり、人までの距離に加えてあるいは替えて、表示部4に対する人の角度に応じて抽象度が変化するように対応付けてもよい。
【0025】
映像生成部3は、抽象度生成部2によって算出された抽象度に応じた映像を生成するものである。抽象度に応じた映像の生成方法については後述する。映像は、静止画でも動画でもよい。抽象度生成部2や映像生成部3は、たとえばコンピュータのソフトウェアによって実現される。
【0026】
表示部4は、映像生成部3によって生成された抽象度に応じた映像を表示する装置である。たとえば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プロジェクタである。
【0027】
次に、第1実施形態の表示装置の動作について説明する。
【0028】
まず、距離測定部1によって、表示部4からその表示部4を見る人までの距離を所定間隔で測定する。測定した距離データは抽象度生成部2に送られる。
【0029】
次に、抽象度生成部2によって、距離測定部1により測定した距離から抽象度を算出する。抽象度は、あらかじめ設定され記憶された距離と抽象度との対応関係から算出する。また、抽象度の生成は、距離測定部1によって距離が測定されるたびに行う。
【0030】
次に、映像生成部3によって、抽象度生成部2により算出した抽象度から以下のようにして映像を生成する。まず、抽象度の整数部分n(nは0以上の整数)から第n映像と第(n+1)映像を生成する。
【0031】
第n映像は、以下のようにして生成する。まず、元となる映像(第0映像とする)を用意する(図2(a)参照)。第0映像は、各辺に模様がある2つの矩形の映像を合成した映像とする。ここで模様は、色や濃淡が一様ではないことを意味する。また、各辺に模様がある、とは、4つの辺のうち少なくとも一辺に模様があればよい。2以上の辺に模様があることが好ましく、より好ましくは3以上の辺、最も好ましくは4つの辺全てに模様があることである。合成する2つの映像のうち一方は人に推定させたい映像とする。2つの映像は両方動画でもよいし、両方静止画でもよいし、一方が静止画、他方が動画でもよい。合成する2つの映像のうち少なくとも一方を、カメラによってリアルタイムに取得した映像としてもよい。合成は、人に推定させたい映像が明確にわかるようにする。たとえば、切り出した対象物と背景との合成、対象物のみで背景のない映像と背景との合成である。合成方法は、たとえばクロマキー合成である。
【0032】
次に、第0映像を縮小し左右上下反転して2×2に配列することで第1映像を生成する(図2(b)参照)。ここで、第0映像を左右上下反転させているため、第0映像の各辺の模様が配列の境界部分で連続し、文様を形成する。そのため、第1映像中の第0映像の位置や向きを認識することが難しくなる。また、配列の境界がわかりにくくなるので第1映像のうちどの領域が第0映像であるのかがわかりにくくなる。したがって第1映像は抽象度が増加している。さらに、第1映像の境界部分に現れる文様が時間的に変化することで抽象度がより増している。特に、第0映像が各辺に模様がある2つの映像の合成である場合、文様の構造が時間的に大きく変化するため、抽象度をより高めることができる。
【0033】
なお、映像の境界部分で文様が認識されるのは、ゲシュタルト原則におけるプレグナンツの法則によるものである。プレグナンツの法則は、近接、連続、閉合など一定の関連性があるものを1纏まりのグループとして認識するものである。本件では、第0映像の左右上下反転による配置で各辺の模様が近接したり連続したりするため、文様として認識されるのである。また、映像の合成によって重なった部分の色が変わって見えることがあるが、これもゲシュタルト原則によるものである。
【0034】
nが1より大きければ、第1映像を縮小してマトリクス状に配列することで第2映像を生成する(図2(c)参照)。たとえば、2×2、1×2、2×1に配列する。配列の際、あるいは配列後に適宜映像を回転、縮小、縦横比の変更を行ってよい。図2(c)では2×2の例を示している。
【0035】
さらに、nが2より大きければ、同様に第2映像をマトリクス状に配列することで第3映像を生成する(図2(d)参照)。これを繰り返して第(n-1)映像から第n映像を生成し、第n映像から第(n+1)映像を生成する。以上のように、配列を繰り返して配列数を増やすことで抽象度を高め、第n映像と第(n+1)映像を生成する。
【0036】
次に、第n映像と第(n+1)映像をアルファ合成する。このとき、抽象度の小数部分をaとして、第n映像の重みを1-a、第(n+1)映像の重みをaとして合成する。たとえば、抽象度が2.4であれば、第2映像と第3映像について第2映像の重みを0.6、第3映像の重みを0.4としてアルファ合成する。このようにして、実数値(整数部分n、小数部分a)である抽象度に対応した映像を生成する。また、この映像の生成は抽象度生成部2によって抽象度が生成されるたびに行う。
【0037】
なお、映像の合成方法はアルファ合成に限らず、第n映像と第(n+1)映像に重み付けして合成する方法であれば任意の合成方法であってよい。たとえば、クロマキー合成、ルマキー合成、論理合成などを用いてもよい。また、画像合成によって下地に色が重なることで色が変わって見える現象がある。これによって映像の抽象度がより向上している。
【0038】
また、第1実施形態では第n映像と第(n+1)映像の2つのみを考慮しているが、第0映像~第(n-1)映像をさらに考慮して合成してもよい。映像の抽象度をより高めることができる。たとえば、第(n-1)映像と第n映像を合成し、さらに第(n+1)映像を合成してもよい。
【0039】
また、合成した映像にさらに映像エフェクトをかけてもよい。映像のさらなる抽象化を図ることができる。この場合、エフェクトの度合いを抽象度で制御してもよい。たとえば、抽象度に応じたぼかしをかけてもよい。
【0040】
次に、映像生成部3によってアルファ合成された映像を表示部4に表示する。表示部4には、表示部4から人までの距離に応じた抽象度の映像が表示される。
【0041】
表示部4に表示される映像の例を以下に示す。図3に示す自動車の映像であって4辺に模様がない映像と、図4に示す花の種子の映像であって各辺に模様がある映像をクロマキー合成して第0映像を生成し、その第0映像から第1実施形態の方法によって第2映像を生成した。その結果が図5である。図5のように、第0映像が比較的認識しやすく、あまり抽象度が上がっていないことがわかる。
【0042】
次に、図6に示す海岸の映像であって各辺に模様がある映像と、図4に示す映像をクロマキー合成して第0映像を生成し、その第0映像から第1実施形態の方法によって第2映像を生成した。その結果が図7である。図7のように、第0映像を認識することは難しく、抽象度が上がっていることがわかる。
【0043】
図3~7の結果から、第0映像が各辺に模様がある2つの矩形の映像を合成したものである場合、抽象度を向上させることができることがわかった。一方、2つの映像のうち一方が4辺に模様のない映像である場合、抽象度はあまり向上できないことがわかった。第0映像を左右上下反転して第1映像を生成することで各辺の模様が連続し、文様を形成するため抽象度が上がったと考えられる。
【0044】
次に、図7において第0映像の境界の部分を黒塗りして枠を設けた。その結果が図8である。図8のように、第0映像が認識しやすくなり、抽象度が下がっていることがわかる。境界を消すことによって文様が削除されるため、抽象度が下がったと考えられる。
【0045】
図9は、図4を第0映像として第2映像を生成した例である。図4中の複数の花の種の位置が時間的に変化すると、図9(a)~(d)に示すように文様も大きく変化している。特に、構造自体が変化している点が注目である。図9(a)では横方向に4列の文様で縦方向には繋がっているが横方向にはつながっていない文様であるが、図9(b)では縦横に繋がり、横方向に5列の文様である。また、図9(c)では縦には繋がっていないが横方向には繋がりがあるような文様であり、図9(d)は縦にも横にも複雑な繋がりのある文様である。このように、各辺に模様がありそれが時間的に変化すると、模様の連続により形成される文様が複雑に変化し、抽象度が上がることがわかった。
【0046】
図10、11は、第0映像に図4の花の種子の映像を合成した場合としない場合とで第2映像がどのように変化するかを比較したものである。図10(a)、図11(a)が図4の映像を合成しなかった場合、図10(b)、図11(b)が合成した場合である。図4を合成したことで文様の構造が変化していることがわかる。このことから、第0映像として各辺に模様がある2つの映像を合成したものを用いることで抽象度を上げることができることがわかった。
【0047】
以上、第1実施形態の表示装置では、人の位置に応じて映像の抽象度を変化させることができ、実数値である抽象度に応じて連続的に変化する映像を生成し表示することができる。表示部4に近づくほど元の映像に近づいていくので、人は元の映像を推定するために表示部4へと近づいていく。そのため、リハビリやナビなどの目標として第1実施形態の表示装置を利用することができる。
【0048】
また、推定できたときの表示部4から人までの距離を競うゲームとして利用することができる。人が表示部4に近づいて行って抽象度を下げて第0映像を推定する場合(順方向推定)と、第0映像を認識した後に表示部4から離れて行って抽象度を上げる場合に第0映像を見出す場合(逆方向推定)とで、第0映像の配列の認識に差があり、映像の感じ方が異なる。つまり、表示部4に表示された映像から元の映像を見出すことが、順方向推定よりも逆方向推定の方が容易であり、この差異がゲームの楽しさとなる。
【0049】
また、商品の宣伝用ディスプレイなどにも利用することができる。この場合、第0映像の合成元となる2つの映像のうち一方について商品を含む映像とする。遠くから見ると対称性の美しいパターンで目を引き、近づくことで次第に商品の映像をはっきりとさせることができるので、商品の印象付けを効果的に行うことができる。また、何の映像だろうと人が近づいていく順方向推定と、商品がわかった後に、そういうことかと思いながら人が遠ざかっていく逆方向推定とで、推定の難易度が違うことから、商品の印象付けを効果的に行うことができる。
【0050】
なお、第1実施形態では抽象度を実数値とし、映像はその実数値に応じて連続的に変化するが、抽象度は整数値としてもよい。たとえば、第1実施形態で算出した実数値を小数点以下四捨五入して整数値としてもよい。その場合、第n映像と第(n+1)映像を合成することなく、第n映像をそのまま用いることになる。
【0051】
(付記)
(技術案1)
映像を見る人の位置を取得し、その位置から映像の抽象度を生成する抽象度生成部と、
前記抽象度に応じた映像を生成する映像生成部と、
前記映像生成部によって生成された前記抽象度に応じた映像を表示する表示部と、
を有し、
前記映像生成部は、各辺に模様を有する2つの矩形の映像を合成して第0映像とし、前記第0映像を左右上下反転して2×2に配列した第1映像を生成し、その後、前記第1映像を配列することを繰り返して、前記抽象度に応じた映像を生成する、
ことを特徴とする表示装置。
(技術案2)
前記抽象度生成部は、実数パラメータで整数部分がn(nは0以上の整数)、小数部分がaである抽象度を生成し、
前記映像生成部は、
前記第1映像を単位として2×2、1×2、または2×1に配列して第2映像を生成し、前記第2映像に同様の処理を繰り返して第3映像から第(n+1)映像までを生成し、さらに第n映像と第(n+1)映像をaに応じて重み付けて合成することで、前記抽象度に対応した映像を生成する、
ことを特徴とする技術案1に記載の表示装置。
(技術案3)
前記映像生成部は、第n映像と第(n+1)映像をaに応じて重み付けて合成した映像に、前記抽象度に応じたエフェクト具合のエフェクトをかける、
ことを特徴とする技術案2に記載の表示装置。
(技術案4)
前記抽象度生成部は、前記商事部から人までの距離が第1所定値以下では抽象度を0とし、前記距離が第1所定値より大きく第2所定値以下では前記距離と前記抽象度を線形に対応させて0からnまで増加させ、前記距離が前記第2所定値よりも大きければ前記抽象度をnとする、ことを特徴とする技術案1から技術案3までのいずれかに記載の表示装置。
(技術案5)
前記映像生成部は、第n映像に1-aの重み付け、第(n+1)映像にaの重み付けをしてアルファ合成する、ことを特徴とする技術案2から技術案4までのいずれかに記載の表示装置。
(技術案6)
前記表示装置は商品を表示するディスプレイ装置であり、
前記第0映像の合成元である2つの矩形の映像のうち、一方は前記商品を含む映像である、
ことを特徴とする技術案1から技術案5までのいずれかに記載の表示装置。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の表示装置は、リハビリやナビの目標、商品のディスプレイなどに利用することができる。特に、順方向推定と逆方向推定の推定難易度の違いによる商品の印象付けに効果的である。
【符号の説明】
【0053】
1:距離測定部
2:抽象度生成部
3:映像生成部
4:表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を見る人の位置を取得し、その位置から映像の抽象度を生成する抽象度生成部と、
前記抽象度に応じた映像を生成する映像生成部と、
前記映像生成部によって生成された前記抽象度に応じた映像を表示する表示部と、
を有し、
前記映像生成部は、各辺のうち少なくとも一辺に模様を有する2つの矩形の映像を合成して第0映像とし、前記第0映像を左右上下反転して2×2に配列した第1映像を生成し、その後、前記第1映像を配列することを繰り返して、前記抽象度に応じた映像を生成する、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記抽象度生成部は、実数パラメータで整数部分がn(nは0以上の整数)、小数部分がaである抽象度を生成し、
前記映像生成部は、
前記第1映像を単位として2×2、1×2、または2×1に配列して第2映像を生成し、前記第2映像に同様の処理を繰り返して第3映像から第(n+1)映像までを生成し、さらに第n映像と第(n+1)映像をaに応じて重み付けて合成することで、前記抽象度に対応した映像を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記映像生成部は、第n映像と第(n+1)映像をaに応じて重み付けて合成した映像に、前記抽象度に応じたエフェクト具合のエフェクトをかける、
ことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記抽象度生成部は、前記表示部から人までの距離が第1所定値以下では抽象度を0とし、前記距離が第1所定値より大きく第2所定値以下では前記距離と前記抽象度を線形に対応させて0からnまで増加させ、前記距離が前記第2所定値よりも大きければ前記抽象度をnとする、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記映像生成部は、第n映像に1-aの重み付け、第(n+1)映像にaの重み付けをしてアルファ合成する、ことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示装置は商品を表示するディスプレイ装置であり、
前記第0映像の合成元である2つの矩形の映像のうち、一方は前記商品を含む映像である、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明において、前記抽象度生成部は、前記表示部から人までの距離が第1所定値以下では抽象度を0とし、前記距離が第1所定値より大きく第2所定値以下では前記距離と前記抽象度を線形に対応させて0からnまで増加させ、前記距離が前記第2所定値よりも大きければ前記抽象度をnとしてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
(付記)
(技術案1)
映像を見る人の位置を取得し、その位置から映像の抽象度を生成する抽象度生成部と、
前記抽象度に応じた映像を生成する映像生成部と、
前記映像生成部によって生成された前記抽象度に応じた映像を表示する表示部と、
を有し、
前記映像生成部は、各辺に模様を有する2つの矩形の映像を合成して第0映像とし、前記第0映像を左右上下反転して2×2に配列した第1映像を生成し、その後、前記第1映像を配列することを繰り返して、前記抽象度に応じた映像を生成する、
ことを特徴とする表示装置。
(技術案2)
前記抽象度生成部は、実数パラメータで整数部分がn(nは0以上の整数)、小数部分がaである抽象度を生成し、
前記映像生成部は、
前記第1映像を単位として2×2、1×2、または2×1に配列して第2映像を生成し、前記第2映像に同様の処理を繰り返して第3映像から第(n+1)映像までを生成し、さらに第n映像と第(n+1)映像をaに応じて重み付けて合成することで、前記抽象度に対応した映像を生成する、
ことを特徴とする技術案1に記載の表示装置。
(技術案3)
前記映像生成部は、第n映像と第(n+1)映像をaに応じて重み付けて合成した映像に、前記抽象度に応じたエフェクト具合のエフェクトをかける、
ことを特徴とする技術案2に記載の表示装置。
(技術案4)
前記抽象度生成部は、前記表示部から人までの距離が第1所定値以下では抽象度を0とし、前記距離が第1所定値より大きく第2所定値以下では前記距離と前記抽象度を線形に対応させて0からnまで増加させ、前記距離が前記第2所定値よりも大きければ前記抽象度をnとする、ことを特徴とする技術案1から技術案3までのいずれかに記載の表示装置。
(技術案5)
前記映像生成部は、第n映像に1-aの重み付け、第(n+1)映像にaの重み付けをしてアルファ合成する、ことを特徴とする技術案2から技術案4までのいずれかに記載の表示装置。
(技術案6)
前記表示装置は商品を表示するディスプレイ装置であり、
前記第0映像の合成元である2つの矩形の映像のうち、一方は前記商品を含む映像である、
ことを特徴とする技術案1から技術案5までのいずれかに記載の表示装置。