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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183885
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】漏水排出装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 15/14 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
E01D15/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097679
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】522242797
【氏名又は名称】熊本ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】今福 洋介
(72)【発明者】
【氏名】森 洋佐
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059BB11
2D059GG43
(57)【要約】
【課題】浮桟橋の内部に侵入した海水や雨水が浮桟橋の内部に溜まらないようにする漏水排出装置を提供すること。
【解決手段】浮桟橋の上部に形成され作業員が浮桟橋の内部に出入り可能な点検口に取り付けられる漏水排出装置1であって、浮桟橋における点検口の縁部に形成されかつ蓋体を支持する段差部の下方に、点検口の縁部に沿って配置され、段差部を通って点検口に流下する漏水を受ける枠状の樋部10と、樋部10に形成された排水口18に接続され、排水口18に流入する漏水を浮桟橋の外部に導く排水部20と、樋部10の所定部位から上方に延在し、段差部に係止させて、樋部10を点検口の下方に配置させる係止片12と、を備え、係止片12を段差部に係止させたとき、樋部10は、排水口側に下り傾斜するように斜めに配置されるとともに、樋部10の内周が点検口の内側に配置され、樋部10の外周が点検口の外側に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮桟橋の上部に形成され作業員が前記浮桟橋の内部に出入り可能な点検口に取り付けられる漏水排出装置であって、
前記浮桟橋における前記点検口の縁部に形成されかつ蓋体を支持する段差部の下方に、前記点検口の縁部に沿って配置され、前記段差部を通って前記点検口に流下する漏水を受ける枠状の樋部と、
前記樋部に形成された排水口に流入する漏水を前記浮桟橋の外部に導く筒状の排水部と、
前記樋部の所定部位から上方に延在し、前記段差部に係止させて、前記樋部を前記点検口の下方に配置させる係止部と、を備え、
前記係止部を前記段差部に係止させたとき、前記樋部は、前記排水口側に下り傾斜するように斜めに配置されるとともに、前記樋部の内周が前記点検口の内側に配置され、前記樋部の外周が前記点検口の外側に配置されることを特徴とする漏水排出装置。
【請求項2】
前記樋部は、前記排水口の近傍から上方に延在し、前記係止部を前記段差部に係止させたときに前記段差部の下面に当接して前記樋部を傾けた状態に維持する当接部を更に備え、
前記点検口及び前記樋部は平面視矩形であり、
前記樋部における四辺の長さは、前記点検口の対角線の長さよりも短く、
前記樋部の一方の対角線上に位置する一対の角部にそれぞれ前記係止部が配置され、他方の対角線上に位置する一対の角部における片方の角部に前記排水口と前記当接部が配置されていることを特徴とする請求項1記載の漏水排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮桟橋の点検口に適用される漏水排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾や防波堤に船舶を直接係留すると、潮の干満差によって船の位置が変わるために、船への乗り降りが不便になる。そこで、従来、港湾や防波堤近くの海面上に浮桟橋を配置し、この浮桟橋を介して船への乗り降りを行うことにより、不便さを解消している。
【0003】
従来におけるこの種の技術として特許文献1に記載された技術がある。特許文献1には、海底に設置された堤体であって、バラストが収容された箱体からなり、この箱体は、開閉可能の少なくとも1つの孔を有しており、この孔からのバラストの排出により箱体を浮上させ、これを桟橋として利用することについて開示されている。更に、特許文献1には、箱体にマンホールが設けられており、このマンホールは、作業員による箱体の内部点検のための出入り口として利用することができることについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-296428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術のように、浮桟橋には、内部点検を行う際に作業員が出入りする点検口が設けられている。点検口は、内部点検を行うとき以外は蓋体によって閉鎖されている。ところで、浮桟橋は、屋外でかつ海面上に配置されるため、波によって浮桟橋上に海水が打ち上げられたり、雨天において浮桟橋上に雨水を浴びたりする環境下にある。このため、蓋体と点検口との隙間から侵入した海水や雨水が浮桟橋の内部に漏れるおそれがあることから、漏水対策を行う必要があった。漏水対策として、従来、蓋体と点検口との隙間に樹脂等を充填して隙間を埋めるといったシーリングやコーキングを行っている。
【0006】
しかしながら、浮桟橋の点検前には蓋体を外す必要があるためコーキング等を除去しなければならず、しかも点検後に再度コーキング等を行う必要があった。また、浮桟橋は、屋外にあるため風雨にさらされるだけでなく、波による揺れによってコーキング等に負荷がかかるため、コーキング等の劣化が早くなる。コーキング等が劣化すると、蓋体と点検口との隙間から浮桟橋の内部へ漏水するおそれがあった。このように、漏水対策を施しても、浮桟橋の内部への漏水を完全に防ぐことは現実的に困難であった。
【0007】
浮桟橋の内部への漏水を放置すると隣合う浮桟橋同士のバランスが崩れ、両者の連結部分に負荷がかかって劣化したりするおそれがある。このため、浮桟橋の内部に侵入した海水や雨水が浮桟橋の内部に溜まらないようにする装置の出現が望まれている。
【0008】
本発明は、このような問題点に対して鑑みなされたものであり、浮桟橋の内部に侵入した海水や雨水が浮桟橋の内部に溜まらないようにする漏水排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は次に記載する構成を備える。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
(1) 浮桟橋の上部に形成され作業員が前記浮桟橋の内部に出入り可能な点検口に取り付けられる漏水排出装置であって、
前記浮桟橋における前記点検口の縁部に形成されかつ蓋体を支持する段差部の下方に、前記点検口の縁部に沿って配置され、前記段差部を通って前記点検口に流下する漏水を受ける枠状の樋部(例えば、樋部10)と、
前記樋部に形成された排水口に流入する漏水を前記浮桟橋の外部に導く筒状の排水部と、
前記樋部の所定部位から上方に延在し、前記段差部に係止させて、前記樋部を前記点検口の下方に配置させる係止部(例えば、係止片12)と、を備え、
前記係止部を前記段差部に係止させたとき、前記樋部は、前記排水口側に下り傾斜するように斜めに配置されるとともに、前記樋部の内周が前記点検口の内側に配置され、前記樋部の外周が前記点検口の外側に配置されることを特徴とする漏水排出装置。
【0011】
(1)によれば、蓋体を支持する段差部の下方に、点検口の縁部に沿って枠状の樋部が配置されるため、段差部を通って点検口に流下する漏水を樋部が受けとめ、排水口から排水部を通って漏水を浮桟橋の外部に排出することが可能になる。また、係止部を段差部に係止させたとき、樋部は、排水口側に下り傾斜するように斜めに配置されるとともに、樋部の内周が点検口の内部に配置され、樋部の外周が点検口の外部に配置される。このため、樋部が漏水を確実に受けとめることが可能になり、しかも受けとめた漏水を排水口側に確実に移動させることが可能になる。これにより、浮桟橋の内部に侵入した海水や雨水が浮桟橋の内部に溜まらないようにすることが可能になる。
【0012】
(2) (1)において、
前記樋部は、前記排水口の近傍から上方に延在し、前記係止部を前記段差部に係止させたときに前記段差部の下面に当接して前記樋部を傾けた状態に維持する当接部(例えば、当接部13)を更に備え、
前記点検口及び前記樋部は平面視矩形であり、
前記樋部における四辺の長さは、前記点検口の対角線の長さよりも短く、
前記樋部の一方の対角線上に位置する一対の角部にそれぞれ前記係止部が配置され、他方の対角線上に位置する一対の角部における片方の角部に前記排水口と前記当接部が配置されていることを特徴とする漏水排出装置。
【0013】
(2)によれば、点検口及び樋部は平面視矩形であり、樋部における四辺の長さが点検口の対角線の長さよりも短いため、樋部を点検口の内部に挿入することが可能になり、樋部を段差部の下方に位置付けることができる。また、係止部が、樋部の一方の対角線上に位置する一対の角部にそれぞれ配置されているため、係止部を段差部に係止させた場合に、樋部が浮桟橋の内部に落下しないように、係止部によって樋部を支持させることが可能になる。この際、当接部が段差部に当接することによって樋部が傾斜するようになり、当接部の近傍に位置する排出口側を下方に傾けることが可能になる。これにより、浮桟橋の内部に侵入した海水や雨水が浮桟橋の内部に溜まらないようにすることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、浮桟橋の内部に侵入した海水や雨水が浮桟橋の内部に溜まらないようにする漏水排出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における漏水排出装置1を取り付けた浮桟橋100の要部の外観を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態における漏水排出装置1の外観を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態における漏水排出装置1に係る樋部10の外観を示す斜視図である。
図4図3の樋部10の平面図である。
図5図3の樋部10の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態における漏水排出装置1を取り付けた浮桟橋100の要部の外観を示す斜視図であり、図1(a)は浮桟橋100の外側から漏水排出装置1付近を視認した図、図1(b)は浮桟橋100の内側から漏水排出装置1付近を視認した図である。なお、図1において、漏水排出装置1の樋部10以外は破線で示されている。
【0018】
浮桟橋100の上部に点検口101が形成されている。浮桟橋100における点検口101の縁部に段差部103が形成されている。この段差部103に蓋体102が載置される。点検口101は、作業員が浮桟橋100の内部点検を行う際に出入りする正方形の開口であり、内部点検を行うとき以外は、蓋体102によって閉鎖される。
【0019】
漏水排出装置1は、点検口101の縁部を通って浮桟橋100の内部に侵入する漏水を受けとめる樋部10と、樋部10が受けとめた漏水を浮桟橋100の外部に排出させる排水部20と、を備えている。樋部10は、段差部103の下方に配置される。
【0020】
[漏水排出装置1の構成]
図2は、本発明の一実施形態における漏水排出装置1の外観を示す斜視図であり、図2(a)は斜め上方から視認した図、図2(b)は斜め下方から視認した図である。なお、図2において、漏水排出装置1の樋部10以外は破線で示されている。
【0021】
図3は、本発明の一実施形態における漏水排出装置1に係る樋部10の外観を示す斜視図であり、図3(a)は斜め上方から視認した図、図3(b)は斜め下方から視認した図である。図4は、図3の樋部10の平面図である。図4は、図3の樋部10の側面図である。
【0022】
樋部10は、アルミニウム材によって構成されており、漏水を受けとめる本体11と、本体11を段差部103に取り付けるための係止片12と、本体11を点検口101に取り付けた場合に点検口101の縁部に当接する当接部13と、排水口18と、排水管19を備えている。
【0023】
本体11は、同形の板状部材11aを4本結合してなる正方形の枠状部材である。板状部材11aは、平面視した場合に長手方向の両端部が斜めに欠落された等脚台形形状の底面部15と、底面部15における互いに平行な短辺と長辺において、短辺側から底面部15の板面に対して直角に延在する内壁部16と、長辺側から底面部15の板面に対して直角に延在する外壁部17と、を有する。内壁部16及び外壁部17の延在幅は同じである。また、内壁部16と外壁部17とは対向しておりかつ互いに平行であるため、板状部材11aの端部を長手方向に沿って側面視した場合に、板状部材11aはU字形の形状に視認される。
【0024】
ここで、4本の板状部材11aを第1の板状部材11a、第2の板状部材11a、第3の板状部材11a、第4の板状部材11aとした場合、第1の板状部材11aの一端部に係止片12が配置され、第1の板状部材11aの他端部に排水口18が形成されている。第2の板状部材11aの一端部に当接部13が配置されている。第3の板状部材11aの一端部に係止片12が配置されている。第4の板状部材11aは係止片12、当接部13及び排水口18のいずれも有していない。
【0025】
本体11は、第1の板状部材11aの他端部と第2の板状部材11aとを一端部とを連結し、第2の板状部材11aの他端部と第3の板状部材11aとを一端部とを連結し、第3の板状部材11aの他端部と第4の板状部材11aとを一端部とを連結し、第4の板状部材11aの他端部と第1の板状部材11aとを一端部とを連結することにより、正方形の枠状に組立てられる。本体11の外周による正方形は点検口101よりも大きい正方形である。更に、隣合う内壁部16、16の間に隙間がないように溶接等によって接合する。同様に、隣合う外壁部17、17の間に隙間がないように溶接等によって接合する。
【0026】
本体11は、中央に正方形の開口11bが形成されている。開口11bは、作業員が出入り可能な大きさであり、点検口101よりも小さい正方形である。
【0027】
係止片12は、矩形のアルミ片の両端部に曲げを施してコ字状に形成した部材であり、中央部12aと、中央部12aの長手方向の一端部から直角に延び、本体11の底面部15に固定される固定部12bと、中央部12aの長手方向の他端から直角に延び、段差部103に係合して本体11を支持する支持部12cと、を備える。
【0028】
固定部12bは、先端が外壁部17を向くように固定される。ここで、中央部12aの長手方向の長さは内壁部16及び外壁部17の延在幅よりも長く設定されている。このため、支持部12cは、固定部12bが底面部15に固定されたとき、先端が外壁部17側を向いた状態で、外壁部17の上方に位置付けられる。
【0029】
当接部13は、第2の板状部材11aの一端部に、内壁部16及び外壁部17の先端部から延出して内壁部16と外壁部17とを掛け渡すようにコ字状の形成されており、中央部13aと、中央部13aの長手方向の両端から直角に延びる側板部13b、13bと、を有する。
【0030】
当接部13における中央部13aの上面は、係止片12における支持部12cの下面と同じ高さに位置する。言い換えれば、係止片12における支持部12cの上面は、係止片12の板厚分だけ、当接部13における中央部13aの上面よりも高い位置にある。
【0031】
このように、係止片12、12は、本体11の外周によって形成される正方形の2本の対角線において一方の対角線上に位置する一対の角部にそれぞれ配置されている。また、本体11における他方の対角線上に位置する一の角部に排水口18と当接部13とが配置されている。
【0032】
排水管19は、円筒状の部材であり、排水管19の一端部は、本体11の下方から排水口18の縁部に当接させ、溶接等により隙間なく固定される。排水管19は、本体11の外側に向かって斜め下方に延びている。
【0033】
排水部20は、浮桟橋100に固定される接続部材21と、樋部10と接続部材21とを接続するホース部材22と、を有する。
【0034】
接続部材21は、浮桟橋100に固定される固定板21aと、固定板21aの中央に配置された円筒状の排水管21bと、を備えている。固定板21aの中央部には孔部が形成されており、この孔部に排水管21bが通される。そして、固定板21aと排水管21bの側面部とが溶接等によって隙間なく固定される。
【0035】
排水管21bは中央部がくの字形に屈曲しており、排水管21bの一端は開放されており、他端は閉鎖されかつ他端部の側面に開口が形成されている。排水管21bは、他端側から固定板21aの孔部に通される。このため、排水管21bの他端部は固定板21aに対して直角に延びており、孔部に通されない排水管21bの一端部は固定板21aに対して斜めに延びている。
【0036】
接続部材21は、浮桟橋100において点検口101よりも下方に固定される。このとき、排水管21bの一端部は浮桟橋100の内部に配置され斜め上方に延びている。排水管21bの他端部は浮桟橋100の外部に配置され、浮桟橋100の側面に対して直角に延びている。また、排水管21bの他端部の開口は鉛直下方を向いている。
【0037】
ホース部材22は、排水管19と排水管21bとを接続するものであり、可撓性を有する長尺の円筒部材である。排水管21bの内径はホース部材22の外径よりも若干大きく設定されており、ホース部材22の端部は排水管21bの内部に挿入される。また、排水管19の外径はホース部材22の内径よりも若干大きく設定されており、排水管19がホース部材22の端部の内部に挿入される。
【0038】
[点検口101付近の構成]
次に、浮桟橋100における点検口101付近の構成について、図1を参照しながら説明する。
【0039】
浮桟橋100は、箱状に構成されており、水平方向に広がる上面に点検口101が形成されている。点検口101の縁部に点検口101の内部に向かって二段の段差部103が形成されており、点検口101を開閉する蓋体102は、一段目の水平面上に載置される。一段目までの深さは蓋体102の厚さに設定されているため、蓋体102で点検口101を閉鎖した場合に、蓋体102の上面と浮桟橋100の上面とは面一になる。
【0040】
樋部10は、支持部12cの下面を段差部103における二段目の水平面上に載置することにより、段差部103に取り付けられる。樋部10が段差部103に取り付けられたとき、内壁部16が点検口101の内側に配置され、外壁部17が点検口101の外側に配置される。すなわち、点検口101の外周の直下に底面部15が位置付けられる。
【0041】
[樋部10の取付作業]
次に、樋部10の取り付けについて説明する。
【0042】
樋部10の一辺の長さすなわち板状部材11aの長辺の長さは、点検口101の対角線の長さよりも短いことから、樋部10を点検口101に通すことが可能である。
【0043】
そこで、作業員は、樋部10を点検口101に通してから持ち上げて、支持部12cのみを二段目の水平面上に位置付ける。そして、作業員が、樋部10を下ろして支持部12cの下面を二段目の水平面上に当接させる。最後に、支持部12cの中央に形成された孔部にビスを通して段差部103にビス止めすることにより、樋部10が段差部103に取り付けられる。
【0044】
樋部10が段差部103に取り付けられたとき、点検口101の縁部の下面に当接部13の上面が当接する。このため、樋部10における排水口18付近の角部が、点検口101の縁部の板厚分だけ押し下げられる。その結果、樋部10は、排水口18側に下り傾斜するように斜めに配置される。
【0045】
なお、樋部10が段差部103に取り付けられた後、作業員は、点検口101から浮桟橋100の内部に入って、排水管19と排水管21bとをホース部材22によって接続する。これにより、漏水排出装置1の取付作業が完了する。
【0046】
[漏水排出装置1による漏水の排出]
点検口101の外周の直下に樋部10の底面部15が位置付けられるため、浮桟橋100と蓋体102との隙間から海水や雨水が侵入して、点検口101の縁部から漏水した場合、その漏水は樋部10によって受けとめられる。また、樋部10は、排水口18側に下り傾斜するように斜めに配置されている。このため、樋部10が受け取った漏水は排水口18側に移動し、排水口18に入り込む。排水口18を入り込んだ漏水は、排水管19、ホース部材22及び排水管21bを通過して、箱状の浮桟橋100の側面部から外部に排出される。
【0047】
[作用効果]
以上説明したように構成された本実施形態によれば、蓋体102を支持する段差部103の下方に、点検口101の縁部の外周に沿った枠状に樋部10が配置されるため、段差部103を通って点検口101の内部に流下する漏水を樋部10が受けとめ、排水口18から排水部20を通って漏水を浮桟橋100の外部に排出することが可能になる。これにより、浮桟橋100の内部に侵入した海水や雨水が浮桟橋100の内部に溜まらないようにすることが可能になる。また、支持部12cを二段目の段差の水平面上に載置させたとき、樋部10は、排水口18側に下り傾斜するように斜めに配置されるとともに、樋部10の内壁部16が点検口101の内部に配置され、樋部10の外壁部17が点検口101の外部に配置される。このため、点検口101の縁部の直下に底面部15が配置されるようになり、樋部10が漏水を確実に受けることが可能になり、しかも受けとめた漏水を排水口18側に確実に移動させることが可能になる。
【0048】
また本実施形態によれば、点検口101及び樋部10は平面視矩形であり、樋部10における四辺それぞれの長さが点検口101の対角線の長さよりも短いため、樋部10を点検口101の内部に挿入することが可能になり、樋部10を段差部103の下方に位置付けることができる。また、係止片12が、樋部10の一方の対角線に対向する一対の角部にそれぞれ配置されているため、支持部12cを段差部103の上面に載置させた場合に、樋部10が浮桟橋100の内部に落下しないように、2つの支持部12cによって樋部10を支持させることが可能になる。このように、樋部10を点検口101の内部に挿入し、2つの支持部12cのみを段差部103の上方に位置付けて、2つの支持部12c上面に載置するという、簡単な作業で樋部10を段差部103に取り付けることが可能になる。しかも、当接部13の上面と支持部12cの下面とが同じ高さであるため、当接部13が段差部103の下面に当接することによって樋部10が浮桟橋100の板厚分だけ傾斜するようになり、樋部10を段差部103に取り付けたときに、当接部13の近傍に位置する排水口18側を下方に傾けることが可能になる。
【0049】
また本実施形態によれば、排水管21bの他端部は浮桟橋100の外部に配置され、浮桟橋100の側面に対して直角に延びており、しかも、排水管21bの他端部が閉鎖されており側面の開口が鉛直下方を向いている。このため、雨天時に雨水が側面の開口から侵入することが困難になり、また、排水管21bの開口が絞られていることから、波が荒いときに排水管21bの他端部から海水が流入することが困難になる。このように、排水管21bから海水や雨水が流入して、樋部10に逆流することが防止できる。更に、排水管21bの一端部が浮桟橋100の内部に斜め上方を向いており、ホース部材22の端部は排水管21bの内部に挿入される。このため、ホース部材22の端部が排水管21bから外れ難くなり、樋部10から送り出された漏水がホース部材22の端部と排水管21bとの繋ぎ目付近で漏れ出すことが低減できる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は上述したものに限るものではない。例えば、上述した本実施形態によれば、樋部10や点検口101は正方形であるが、それに限らず、長方形でもよく、要は矩形であれば適用可能である。
【0051】
また、上述した本実施形態によれば、段差部103を二段に形成し、下段に支持部12cを載置させているが、段差部103を一段に形成し、蓋体102を載置する面に支持部12cを載置させてもよい。この場合、直方体形状の蓋体102であれば、蓋体102と段差部103との間に支持部12cが挟まれるため、樋部10の全体が傾き難くなるが、板厚程度の緩い傾斜であれば、アルミ製の本体11の撓りによって排水口18側を下方に傾けることが可能になる。なお、裏側において外周部以外が凹んでいる蓋体102であれば、蓋体102の裏側の空間に支持部12cが配置されるので、樋部10を撓らせることなく傾けることが可能になる。
【0052】
また、係止片12の中央部12aに板バネ性を持たせてもよい。これにより、一方の係止片12の支持部12cを点検口101の縁部の上方に位置付け、この状態で係止片12を縁部側に押し込んで支持部12cを撓ませることにより、他の係止片12の支持部12cを点検口101の縁部の上方に位置付けることが容易に可能になる。
【0053】
また、上述した本実施形態によれば、組み立てた状態の樋部10を点検口101に挿入して、点検口101の縁部に設置しているが、樋部10を複数の部品に分け、部品毎に点検口101に挿入して、点検口101の縁部の下方で樋部10を組立てながら、点検口101の縁部に設置してもよい。これにより、点検口101が円形の場合のように点検口101から樋部10を挿入しにくい場合であっても、点検口101の縁部の下方に樋部10を配置することが可能になる。
【0054】
また、上述した本実施形態によれば、樋部10の撓り具合を考慮しながら、当接部13の高さを適宜変更することにより、樋部10の傾きを変えることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 漏水排出装置
10 樋部
11 本体
11a 板状部材
11b 開口
12 係止片
12a 中央部
12b 固定部
12c 支持部
13 当接部
13a 中央部
13b 側板部
15 底面部
16 内壁部
17 外壁部
18 排水口
19 排水管
20 排水部
21 接続部材
21a 固定板
21b 排水管
22 ホース部材
100 浮桟橋
101 点検口
102 蓋体
103 段差部
図1
図2
図3
図4
図5