(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183892
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】はんだ付け装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
H01L21/52 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097689
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】勅使河原 一成
(72)【発明者】
【氏名】江草 稔
(72)【発明者】
【氏名】中島 泰
(72)【発明者】
【氏名】滝下 裕基
(72)【発明者】
【氏名】浅地 伸洋
【テーマコード(参考)】
5F047
【Fターム(参考)】
5F047AA17
5F047BA01
(57)【要約】
【課題】半導体装置においてボイドの発生を抑制することで、X線検査の手間および廃棄ロスを削減可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】はんだ付け装置10は、内部を移動するように搬送される半導体装置20を加熱する加熱炉13と、加熱炉13の外側から内側に向けて加熱炉13の壁部13aを貫通した状態で配置され、加熱炉13の内側への突き出し量が変化する可動部15と、加熱炉13の外側において可動部15の基端側に配置され、可動部15を駆動する駆動部16とを備えている。半導体装置20は、絶縁基板21と、絶縁基板21上にはんだ22を介して搭載される半導体チップ23とを有している。はんだ付け装置10はさらに、可動部15の先端に配置され、半導体チップ23と接触する接触部14を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付け装置であって、
内部を移動するように搬送される半導体装置を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉の外側から内側に向けて前記加熱炉の壁部を貫通した状態で配置され、前記加熱炉の内側への突き出し量が変化する可動部と、
前記加熱炉の外側において前記可動部の基端側に配置され、前記可動部を駆動する駆動部と、を備え、
前記半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板上にはんだを介して搭載される半導体チップとを有し、
前記はんだ付け装置はさらに、
前記可動部の先端に配置され、前記半導体チップと接触する接触部を備える、はんだ付け装置。
【請求項2】
前記可動部は、前記半導体チップに対して斜め方向である第1の方向に突き出している、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項3】
前記接触部は300℃以上の耐熱性を有し、はんだ濡れ性のない材料により構成される、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項4】
前記可動部は鉄系の材料により構成される、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項5】
前記可動部は、内部が空洞のパイプ形状を有する、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項6】
前記第1の方向と交差する方向である第2の方向に突き出している、前記可動部とは別の可動部が配置される、請求項2に記載のはんだ付け装置。
【請求項7】
はんだ付け装置であって、
内部を移動するように搬送される半導体装置を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉の外側から内側に向けて前記加熱炉の壁部を貫通した状態で配置され、前記加熱炉の内側への突き出し量が変化する可動部と、
前記加熱炉の外側において前記可動部の基端側に配置され、前記可動部を駆動する駆動部と、を備え、
前記半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板上にはんだを介して搭載される半導体チップとを有し、
前記はんだ付け装置はさらに、
前記可動部の先端に配置され、前記半導体チップの上面と平行となる位置に配置された第1の台座と、
前記第1の台座に対向する位置に配置された第2の台座と、
前記第1の台座と前記第2の台座との間に配置され、弾性変形可能な変形部と、
前記第2の台座における前記半導体チップ側に配置され、前記半導体チップと接触する接触部とを備える、はんだ付け装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のはんだ付け装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記半導体装置の前記絶縁基板と前記半導体チップとを接合するためのはんだを溶融する工程と、
前記可動部の前記突き出し量を変化させて前記接触部と前記半導体チップとを接触させる工程と、
前記接触部と前記半導体チップとが前記はんだに対して水平方向に移動する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記はんだを溶融する工程よりも前に、前記絶縁基板と前記半導体チップとの間に前記はんだの厚み方向の距離よりも短い突起部を形成する工程をさらに備える、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記はんだを溶融する工程よりも前に、前記はんだの内部に前記はんだの厚み方向の距離よりも小さいNiボールを形成する工程をさらに備える、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、はんだ付け装置および半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なはんだ付け工程では、液状のフラックスを用いて、はんだおよび電極の酸化物を除去して接合を実施することが大半である。しかしながら、フラックスには還元性の作用があるため、フラックスが接合部の近傍に残存すると、酸化物を還元して金属イオンが生成される状態が維持される。
【0003】
半導体装置では、電気的な絶縁が必要な箇所に電気的な絶縁を確保する必要がある。半導体装置は電圧、電流、および交流直流の変換を実施する機能を有するが、これにはパルス状の電圧波形を発生させて変換するいわゆるパワーエレクトロニクス技術が応用されている。そのときに、半導体装置内の電極間には電力系統から得たり、内部で変換して得た電位差、例えば600Vまたは1200Vなどの定格耐電圧の指標を満足する絶縁性の維持が必要となる。また、対地でAC2500Vを1分間与えても絶縁破壊しない特性が求められている。
【0004】
ところで、はんだ付けした電極の周囲の絶縁領域にフラックスが付着したまま電圧が印加されると、イオン化した金属によりマイグレーションが起きて電流のリークが発生することから、その回避のためにフラックスの除去を行っている。しかしながら、フラックス除去のための洗浄工程は長い時間が必要であったり、洗浄液が産業廃棄物になるという問題がある。
【0005】
このような問題を解消するために、フラックス洗浄を必要としないはんだ付け技術が採用されている。例えば特許文献1には、還元性のある水素ガスを用いて電極およびはんだの酸化物を除去する技術が記載されている。また特許文献2には、ギ酸などのカルボン酸を含有させた混合ガスを導入し、はんだ付け前に電極およびはんだの酸化物を除去する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-157858号公報
【特許文献2】国際公開第2018/096917号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のはんだ付け装置では、半導体チップと基板間、および基板とベース間をはんだによって面接合し、はんだ付け工程後、はんだ層を形成する。このとき、例えば半導体チップと基板間であれば、はんだ付けされる半導体チップの主面とはんだ付けされる基板の主面間に一旦加熱によって固体から液体となったはんだが濡れた後、半導体チップと基板とをはんだの融点以下に冷却することで2つの主面間にはんだ層が形成される。基板とベース間のはんだ付けについても、基本的には同様の方法で2つの主面間にはんだ層を形成している。
【0008】
このとき、例えばはんだを印刷により供給するペーストはんだを用いる場合は、はんだペーストに含まれるフラックス成分からガスが発生する。はんだ付けの対象である対向する2つの主面間で形成される領域からガスが抜けなかった場合、はんだ付け工程後に、はんだ層内にボイドが残ることになる。はんだ層内にボイドが発生した場合、X線検査によりボイドの大きさを測定し、ボイドが基準を超える大きさであれば、この半導体装置は使用できないため廃棄ロスが発生していた。
【0009】
そこで、本開示は、半導体装置においてボイドの発生を抑制することで、X線検査の手間および廃棄ロスを削減可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係るはんだ付け装置は、内部を移動するように搬送される半導体装置を加熱する加熱炉と、前記加熱炉の外側から内側に向けて前記加熱炉の壁部を貫通した状態で配置され、前記加熱炉の内側への突き出し量が変化する可動部と、前記加熱炉の外側において前記可動部の基端側に配置され、前記可動部を駆動する駆動部とを備え、前記半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板上にはんだを介して搭載される半導体チップとを有し、前記はんだ付け装置はさらに、前記可動部の先端に配置され、前記半導体チップと接触する接触部を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、加熱されたはんだが溶融した状態で半導体チップを移動させることで、はんだ内のボイドをはんだ外へ排出することができる。これにより、半導体装置においてボイドの発生が抑制されるため、はんだ付け工程後に行われるX線検査の手間および廃棄ロスを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係るはんだ付け装置が備える可動部と半導体装置の半導体チップとが接触している状態を示す概略断面図である。
【
図2】実施の形態1の変形例1に係るはんだ付け装置が備える可動部と半導体装置の半導体チップとが接触している状態を示す概略断面図である。
【
図3】実施の形態1の変形例2に係るはんだ付け装置が備える可動部と半導体装置の半導体チップとが接触している状態を示す概略断面図である。
【
図4】実施の形態2に係るはんだ付け装置が備える可動部と半導体装置の半導体チップとが接触している状態を示す概略断面図である。
【
図5】実施の形態3に係るはんだ付け装置が備える可動部と半導体装置の半導体チップとが接触している状態を示す概略断面図である。
【
図6】手作業で半導体チップを水平方向に移動させてはんだ内のボイドを排出している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
実施の形態1について、図面を用いて以下に説明する。
図1は、実施の形態1に係るはんだ付け装置10が備える可動部15と半導体装置20の半導体チップ23とが接触している状態を示す概略断面図である。
【0014】
図1に示すように、はんだ付け装置10は、加熱炉13と、可動部15と、駆動部16と、接触部14と、搬送メッシュ11とを備えている。
【0015】
実施の形態1では、加熱炉13はトンネル炉である。また、加熱炉13は断面視にて下部が矩形状、上部が三角形状に形成されている。加熱炉13内には、搬送メッシュ11が配置されている。半導体装置20は、搬送メッシュ11上に載置されたパレット12によって加熱炉13内を移動するように搬送され、所定の温度プロファイルによって酸化物を還元処理した後に溶融ゾーンに入る。
図1では、加熱炉13の入口と出口を繋ぐ方向の断面を示している。
【0016】
半導体装置20は、絶縁基板21と、絶縁基板21上にはんだ22を介して搭載される半導体チップ23とを備えている。
図1では、絶縁基板21上にそれぞれ2つのはんだ22を介して2つの半導体チップ23が搭載されている。
【0017】
可動部15は、加熱炉13の外側から内側に向けて加熱炉13における上部の壁部13aの一方側を貫通した状態で配置されている。そのため、可動部15は、加熱炉13の内側において半導体チップ23の上面に対して斜め方法である第1の方向に突き出している。
【0018】
駆動部16は、加熱炉13の外側において可動部15の基端側、すなわち高温にならない箇所に配置されている。駆動部16は、エア機構またはサーボ機構である。駆動部16の駆動によって、可動部15における加熱炉13の内側への突き出し量を変化させる。
【0019】
接触部14は、球状に形成され、可動部15の先端に配置されている。接触部14は、300℃以上の耐熱性を有し、摩耗しにくく、はんだ濡れ性のない材料により構成されている。接触部14は、例えばPTFE(polytetrafluoroethylene)またはポリイミドにより構成されている。
図1では、2つの半導体チップ23に対応するように、可動部15と駆動部16と接触部14は2つずつ配置されている。
【0020】
このように、第1の方向に突き出した可動部15の先端に配置された接触部14が半導体チップ23に接触した後、可動部15の突き出し量を変化させることで、絶縁基板21に対する半導体チップ23の水平方向の位置を変化させることができる。このとき、はんだ22内のボイドがはんだ22外へ排出される作用が発生する。従来は、この工程は手作業によって実施されていた。
【0021】
図6を用いて、手作業によるはんだ22内のボイド26の排出工程を説明する。
図6は、手作業で半導体チップを水平方向に移動させてはんだ22内のボイド26を排出している状態を示す断面図である。なお、
図6では、絶縁基板21は、放熱板27上にはんだ28を介して配置されている。
【0022】
図6に示すように、はんだ22が溶融して絶縁基板21の主面21aと半導体チップ23の主面23aが共に濡れている状態において、先端をR形状にしたテフロン(登録商標)棒30で半導体チップ23を水平方向にスクラブする。このとき、被接合物である半導体チップ23がその幅の半分まで水平方向に移動することで、2つの主面21a,23a間のはんだ22内に発生したボイド26は排出される。
【0023】
すなわち、はんだ22の外気への露出面積は、半導体チップ23の移動方向と直交する辺の幅×はんだ厚みであったものが、半導体チップ23をその幅の半分まで移動させたことで、半導体チップ23の移動方向と平行な辺の幅の半分×半導体チップ23の移動方向と直交する辺の幅となり、はんだ22の外気への露出面積が大幅に増大する。それに従って、はんだ22内のボイド26の一部が外気に解放されて露出する。液体では、表面積が小さい程エネルギーが低いため、一旦外気に一部でも繋がったボイド26は表面積を維持できずはんだ22に内在するボイド26は排出される。
【0024】
XYZステージなどの複雑な機構を加熱炉13内に設けることによっても同様の動作を行うことができるが、可動部15および駆動部16を高温のトンネル炉(またはバッチ炉)内に設けて、高速で動作させることは非常に大がかりで精密な機構を必要とする。そのため、XYZステージなどの複雑な機構を設けた場合は、実施の形態1の構成と比較すると非経済的である。
【0025】
<変形例>
次に、実施の形態1の変形例について説明する。
図2は、実施の形態1の変形例1に係るはんだ付け装置10が備える可動部15と半導体装置20の半導体チップ23とが接触している状態を示す概略断面図である。
図3は、実施の形態1の変形例2に係るはんだ付け装置10が備える可動部15と半導体装置20の半導体チップ23とが接触している状態を示す概略断面図である。
図2と
図3では、駆動部16の図示が省略されている。
【0026】
上記では、加熱炉13がトンネル炉である場合について説明したが、図示しないバッチ式チャンバー型であってもよく、この場合も同様の作用を奏する。また、
図1では、2組の駆動部16、可動部15および接触部14がそれぞれ2つの半導体チップ23に接触しているが、これに限定されることなく、駆動部16、可動部15および接触部14の組数は半導体チップ23の個数に合わせて設定される。
【0027】
また、好ましくは、
図2に示すように、絶縁基板21と半導体チップ23の2つの主面21a,23a間に突起部24が設けられていると、突起部24の高さ以下に2つの主面21a,23a間の距離が縮まることを抑制できる。突起部24は、はんだ22を溶融する工程よりも前に予め絶縁基板21上に短くボンディングしたAlワイヤ、または表面電極を塑性加工によって形成されてもよいし、絶縁基板21上にプレス加工によって形成されてもよい。
【0028】
または、はんだ付け温度ではんだ22に溶解しない球状の非溶解のスペーサを混ぜることでも達成できる。具体的には、
図3に示すように、はんだ22の内部にはんだ22の厚み方向の距離よりも小さいNiボール25が形成されてもよい。Niは高温になる程はんだ22への溶解速度が速まるが、通常のはんだ付け温度では完全な溶解を避けることができる。
【0029】
はんだ22の最低厚みを規定できることで、可動部15の動作により加圧されて溶融したはんだ22が2つの主面21a,23a間から飛び出すという不具合を効果的に抑制できる。すなわち、2つの主面21a,23a間の体積は2つの主面21a,23aの面積×2つの主面21a,23a間の距離であるが、2つの主面21a,23a間の距離が小さくなりすぎると供給したはんだ22の体積よりも2つの主面21a,23a間の体積が小さくなり、はんだ22は2つの主面21a,23a間の領域の外側に押し出されてしまう。
【0030】
可動部15の加圧を取り除くと、表面張力によりはんだ22は元の2つの主面21a,23a間の領域に戻ろうとする。しかし、押し出された体積が大きいと、2つの主面21a,23a間の領域との接続された形態よりも分離して球状にまとまった方が表面積の合計が小さい場合には分離し、可動部15の加圧を取り除いても元の2つの主面21a,23a間の領域に戻らなくなる。その結果、はんだボールが発生するという不具合が生じる。突起部24またはNiボール25などはんだ22の最低厚みを規定できる手段を備えたことで、可動部15の動作に起因するはんだボールの発生を回避できる。
【0031】
可動部15は、高温にさらすことは好ましくないため、熱抵抗を大きくするために熱伝導率の低い例えば鉄系の材料により構成されることが好ましい。可動部15の材料として例えばステンレスが好適である。また、断面積が小さいほうが熱抵抗は大きくなるが、細くすると剛性が低下するため、可動部15を内部が空洞のパイプ形状とすることで経済的に高い熱抵抗と、高い合成とを両立することができる。
【0032】
可動部15は、シール部17を介して加熱炉13の壁部13aを貫通しているが、シール部17と可動部15の隙間が小さいほど遮熱性が高まる。高温への耐久性のあるグリースなどをシール部17の摺動部に用いるとよい。可動部15に図示しない冷却手段を設けて、駆動部16から伝達される熱によって可動部15が高温となることを抑制することも可能である。
【0033】
<効果>
以上のように、実施の形態1および変形例1,2に係るはんだ付け装置10は、内部を移動するように搬送される半導体装置20を加熱する加熱炉13と、加熱炉13の外側から内側に向けて加熱炉13の壁部13aを貫通した状態で配置され、加熱炉13の内側への突き出し量が変化する可動部15と、加熱炉13の外側において可動部15の基端側に配置され、可動部15を駆動する駆動部16とを備えている。半導体装置20は、絶縁基板21と、絶縁基板21上にはんだ22を介して搭載される半導体チップ23とを有している。はんだ付け装置10はさらに、可動部15の先端に配置され、半導体チップ23と接触する接触部14を備えている。
【0034】
したがって、加熱されたはんだ22が溶融した状態で半導体チップ23を移動させることで、はんだ22内のボイドをはんだ22外へ排出することができる。これにより、半導体装置20においてボイドの発生が抑制されるため、はんだ付け工程後に行われるX線検査の手間および廃棄ロスを削減することができる。
【0035】
また、XYZステージなどの複雑な機構を設ける必要がないため、はんだ付け装置10を簡便に実現することができる。
【0036】
また、可動部15は、半導体チップ23に対して斜め方向である第1の方向に突き出しているため、半導体チップ23に対して垂直方向に突き出した場合よりも、半導体チップ23を絶縁基板21の表面と平行な方向に動かしやすくなる。また、半導体チップ23に対して垂直方向の場合には可動部15の動作に2軸必要であるが、半導体チップ23に対して斜め方向であるため、可動部15の動作を1軸で実現できる。これにより、ボイドの低減を経済的に行うことができる。
【0037】
また、接触部14は300℃以上の耐熱性を有し、はんだ濡れ性のない材料により構成されているため、はんだ付け時に高温となっている半導体チップ23に接触部14が接触しても劣化しにくい。接触部14が這い上がってきたはんだ22に接触しても、接触部14にはんだ22が付着せず、接触部14を正常な状態に保つことができる。
【0038】
また、可動部15は鉄系の材料により構成されているため、可動部15を熱伝導率の低い材料で構成することで、熱に弱い駆動部16に熱が伝わりにくくなり駆動部16を保護することができる。
【0039】
また、可動部15は、内部が空洞のパイプ形状を有しているため、可動部15の熱抵抗を高くすることで、熱に弱い駆動部16に熱が伝わりにくくなり駆動部16を保護することができる。
【0040】
また、実施の形態1および変形例1,2に係る半導体装置20の製造方法は、半導体装置20の絶縁基板21と半導体チップ23とを接合するためのはんだ22を溶融する工程と、可動部15の突き出し量を変化させて接触部14と半導体チップ23とを接触させる工程と、接触部14と半導体チップ23とがはんだ22に対して水平方向に移動する工程とを備えている。したがって、ボイドが少なく高品質の製品を安定して製造することができる。
【0041】
また、半導体装置20の製造方法は、はんだ22を溶融する工程よりも前に、絶縁基板21と半導体チップ23との間にはんだ22の厚み方向の距離よりも短い突起部24を形成する工程をさらに備えているため、はんだ22の厚みを維持しつつ、ボイドを排出することができる。
【0042】
また、半導体装置20の製造方法は、はんだ22を溶融する工程よりも前に、はんだ22の内部にはんだ22の厚み方向の距離よりも小さいNiボール25を形成する工程をさらに備えているため、はんだ22の厚みを維持しつつ、ボイドを排出することができる。
【0043】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2に係るはんだ付け装置10について説明する。
図4は、実施の形態2に係るはんだ付け装置10が備える可動部15と半導体装置20の半導体チップ23とが接触している状態を示す概略断面図である。なお、実施の形態2において、実施の形態1で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0044】
図4に示すように、実施の形態2では、第1の方向と交差する方向である第2の方向に突き出している、可動部15とは別の可動部15が配置されている。より具体的には、1つの被接合物である半導体チップ23に対して互いに交差する方向に突き出す2つの可動部15が設けられている。別の可動部15は、
図4において左側に配置され、より具体的には、加熱炉13の外側から内側に向けて加熱炉13における上部の壁部13aの他方側を貫通した状態で配置されている。このとき、2つの可動部15を互いに対向する方向にスライドさせるように配置することで、2つの可動部15を交互に動作させることで、いわゆるスクラブ動作を実現できる。なお、実施の形態1の変形例の構成を実施の形態2に採用することも可能である。
【0045】
以上のように、実施の形態2に係るはんだ付け装置10では、第1の方向と交差する方向である第2の方向に突き出している、可動部15とは別の可動部15が配置されている。したがって、半導体チップ23の移動方向を増やすことができるため、はんだ22の内部からボイドをさらに排出しやすくなる。
【0046】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3に係るはんだ付け装置10について説明する。
図5は、実施の形態3に係るはんだ付け装置10が備える可動部15と半導体装置20の半導体チップ23とが接触している状態を示す概略断面図である。
図5では、駆動部16の図示が省略されている。なお、実施の形態3において、実施の形態1,2で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0047】
図5に示すように、実施の形態3では、可動部15と接触部14との間にリンク機構18が配置されている。リンク機構18は、第1の台座18aと、第2の台座18bと、変形部18cとを備えている。
【0048】
第1の台座18aは、可動部15の先端に配置され、半導体チップ23の上面と平行となる位置に配置されている。そのため、可動部15は、第1の台座18aに対して斜めに取り付けられている。第2の台座18bは、第1の台座18aに対向する位置であり、かつ、半導体チップ23の上面と平行となる位置に配置されている。また、第2の台座18bは、第1の台座18aに対して水平方向にずれた位置に配置されている。
【0049】
変形部18cは、弾性変形可能な部材であり、第1の台座18aと第2の台座18bとの間に配置されている。変形部18cの基端部は第1の台座18aに取り付けられ、変形部18cの先端部は第2の台座18bに取り付けられている。変形部18cにおける基端側と先端側の取り付け位置は、可動部15の移動方向と平行になるように水平方向にずらしてある。
図5では、変形部18cは2つ示されているが、これに限定されない。例えば変形部18cは4つ配置されていてもよい。
【0050】
第2の台座18bにおける半導体チップ23側の面には、2つの接触部14が配置されている。2つの接触部14は、絶縁基板21上にはんだ22を介して搭載された2つの半導体チップ23にそれぞれ接触している。
【0051】
このような構成により、2つの接触部14がそれぞれ2つの半導体チップ23に接触した状態で可動部15の突き出し量を増加させると、リンク機構18が変形して水平方向に接触部14を微動させることができる。この動作によれば、可動部15の移動量に対して直交する成分の移動が生じるため、2つの主面21a,23a間の距離の変化量よりも大きな変化量を2つの主面21a,23a間の水平方向に作用させることができる。これにより、さらに効率的にボイドの低減効果が発揮される。
【0052】
図2に示した突起部24、および
図3に示したNiボール25に対して、押し付け力を高めると局所的に荷重がかかって半導体チップ23を破損させるリスクが増大するが、実施の形態3の構成では、押し付け力を高めずに水平方向への移動量を、一軸の移動のみで実現できるため、ボイドの低減を経済的に行うことができる。
【0053】
なお、可動部15は、加熱炉13の壁部13aから鉛直に突き出していてもよい。可動部15の垂直動作のみでも水平方向の移動を半導体チップ23に対して付与することができる。また、実施の形態1の変形例の構成を実施の形態3に採用することも可能である。
【0054】
以上のように、実施の形態3に係るはんだ付け装置10は、内部を移動するように搬送される半導体装置20を加熱する加熱炉13と、加熱炉13の外側から内側に向けて加熱炉13の壁部13aを貫通した状態で配置され、加熱炉13の内側への突き出し量が変化する可動部15と、加熱炉13の外側において可動部15の基端側に配置され、可動部15を駆動する駆動部16とを備えている。半導体装置20は、絶縁基板21と、絶縁基板21上にはんだ22を介して搭載される半導体チップ23とを有している。はんだ付け装置10はさらに、可動部15の先端に配置され、半導体チップ23の上面と平行となる位置に配置された第1の台座18aと、第1の台座18aに対向する位置に配置された第2の台座18bと、第1の台座18aと第2の台座18bとの間に配置され、弾性変形可能な変形部18cと、第2の台座18bにおける半導体チップ23側に配置され、半導体チップ23と接触する接触部14とを備えている。
【0055】
したがって、可動部15の移動量に変形部18cの変形量が加わることで、半導体チップ23の移動量が増加するため、ボイドをさらに排出しやすくなる。
【0056】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【0057】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0058】
(付記1)
はんだ付け装置であって、
内部を移動するように搬送される半導体装置を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉の外側から内側に向けて前記加熱炉の壁部を貫通した状態で配置され、前記加熱炉の内側への突き出し量が変化する可動部と、
前記加熱炉の外側において前記可動部の基端側に配置され、前記可動部を駆動する駆動部と、を備え、
前記半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板上にはんだを介して搭載される半導体チップとを有し、
前記はんだ付け装置はさらに、
前記可動部の先端に配置され、前記半導体チップと接触する接触部を備える、はんだ付け装置。
【0059】
(付記2)
前記可動部は、前記半導体チップに対して斜め方向である第1の方向に突き出している、付記1に記載のはんだ付け装置。
【0060】
(付記3)
前記接触部は300℃以上の耐熱性を有し、はんだ濡れ性のない材料により構成される、付記1に記載のはんだ付け装置。
【0061】
(付記4)
前記可動部は鉄系の材料により構成される、付記1に記載のはんだ付け装置。
【0062】
(付記5)
前記可動部は、内部が空洞のパイプ形状を有する、付記1に記載のはんだ付け装置。
【0063】
(付記6)
前記第1の方向と交差する方向である第2の方向に突き出している、前記可動部とは別の可動部が配置される、付記2に記載のはんだ付け装置。
【0064】
(付記7)
はんだ付け装置であって、
内部を移動するように搬送される半導体装置を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉の外側から内側に向けて前記加熱炉の壁部を貫通した状態で配置され、前記加熱炉の内側への突き出し量が変化する可動部と、
前記加熱炉の外側において前記可動部の基端側に配置され、前記可動部を駆動する駆動部と、を備え、
前記半導体装置は、絶縁基板と、前記絶縁基板上にはんだを介して搭載される半導体チップとを有し、
前記はんだ付け装置はさらに、
前記可動部の先端に配置され、前記半導体チップの上面と平行となる位置に配置された第1の台座と、
前記第1の台座に対向する位置に配置された第2の台座と、
前記第1の台座と前記第2の台座との間に配置され、弾性変形可能な変形部と、
前記第2の台座における前記半導体チップ側に配置され、前記半導体チップと接触する接触部とを備える、はんだ付け装置。
【0065】
(付記8)
付記1から付記7のいずれか1項に記載のはんだ付け装置を用いた半導体装置の製造方法であって、
前記半導体装置の前記絶縁基板と前記半導体チップとを接合するためのはんだを溶融する工程と、
前記可動部の前記突き出し量を変化させて前記接触部と前記半導体チップとを接触させる工程と、
前記接触部と前記半導体チップとが前記はんだに対して水平方向に移動する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【0066】
(付記9)
前記はんだを溶融する工程よりも前に、前記絶縁基板と前記半導体チップとの間に前記はんだの厚み方向の距離よりも短い突起部を形成する工程をさらに備える、付記8に記載の半導体装置の製造方法。
【0067】
(付記10)
前記はんだを溶融する工程よりも前に、前記はんだの内部に前記はんだの厚み方向の距離よりも小さいNiボールを形成する工程をさらに備える、付記8に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0068】
10 はんだ付け装置、13 加熱炉、13a 壁部、14 接触部、15 可動部、16 駆動部、18a,18b 台座、18c 変形部、20 半導体装置、21 絶縁基板、22 はんだ、23 半導体チップ、24 突起部、25 Niボール。