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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183900
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/04 20210101AFI20231221BHJP
   F24C 15/20 20060101ALI20231221BHJP
   F24C 7/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F24C7/04 301Z
F24C15/20 C
F24C7/02 350A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097701
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 智子
【テーマコード(参考)】
3L086
3L087
【Fターム(参考)】
3L086AA01
3L086AA13
3L086CA04
3L086DA14
3L087AA01
3L087AA05
3L087BA03
3L087BC02
3L087DA30
(57)【要約】
【課題】ペット用飲食物の加熱に適した加熱調理器を提供するものである。
【解決手段】加熱調理器は、被加熱物が収容される加熱庫と、被加熱物を加熱する加熱手段と、加熱庫内の排気を行う排気ファンと、加熱手段及び排気ファンを制御して、ペットモード又は通常モードでの加熱動作を実施する制御装置と、を備え、制御装置は、ペットモードでの加熱動作において、加熱の開始前又は加熱の終了後に排気ファンを駆動して、加熱庫内の排気を行うものである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が収容される加熱庫と、
前記被加熱物を加熱する加熱手段と、
前記加熱庫内の排気を行う排気ファンと、
前記加熱手段及び前記排気ファンを制御して、ペットモード又は通常モードでの加熱動作を実施する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ペットモードでの前記加熱動作において、加熱の開始前又は加熱の終了後に前記排気ファンを駆動して、前記加熱庫内の排気を行う、加熱調理器。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記通常モードでの前記加熱動作において、前回が前記ペットモードでの前記加熱動作だった場合、加熱の開始前に前記排気ファンを駆動して、前記加熱庫内の排気を行う請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱庫内の臭気レベルを測定する臭気センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記ペットモードでの前記加熱動作において、加熱の開始前又は加熱の終了後に、前記臭気レベルが閾値レベル以下になるまで前記加熱庫内の排気を行う請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記ペットモードでの前記加熱動作において、加熱の開始前又は加熱の終了後に、予め設定された閾値時間が経過するまで前記加熱庫内の排気を行う請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記ペットモードでの前記加熱動作において、前記排気ファンの回転数を前記通常モードでの前記排気ファンの回転数よりも大きくする請求項1~4の何れか一項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記加熱庫には、排気口が設けられており、
前記加熱庫の底面の前記排気口に近接した位置に、載置ガイド部が設けられた請求項1~4の何れか一項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱庫内の被加熱物を加熱する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
人間と長く共生してきた身近な動物を伴侶動物という。以下、伴侶動物を「ペット」と称する。近年では、ペットは、家族の一員として認識されるようになっており、ペットの重要性が増している。ペットの代表としては、例えば犬、猫、ウサギ、リス、ハムスター、モルモット、及びフェレット等の哺乳類が挙げられる。ペット業界では、人間とペットとの共生に対応する取り組み、並びに人間及びペット双方の超高齢化社会に対応する取り組みが各方面で行われている。例えば、ペットの年齢層に対応した添加物を考慮したペットフードの提供などが進んでおり、これがペットの長寿命化につながっている。
【0003】
また、国の方針によれば、人間の高齢者の健康維持年齢、いわゆる健康寿命を「2040年までに男女ともに3年以上延伸し、75歳以上に」を目標としている。このためには、人間とペットとの共生が欠かせなくなっていることが、医学会でのデータからも検証されている。また、人間とペットとの共生は、人間の寿命にも影響していることが確認されている。
【0004】
犬又は猫などのペットの食事(ドッグフード、キャットフード、他)の大半を占めるドライタイプのペットフードは、指定された方法で保管していても時間の経過とともに酸化が進み、匂い及び風味が落ちてしまう。匂い及び風味が落ちると、ペットの食欲が低下し、食べずに残してしまうことがある。そこで、ペットの食欲を増進させる目的でペットフードを温める場合がある。また、水についても、温めた方がペットの水を飲む量が増えるという報告もある。
【0005】
ペットの飲食物の温めに関して、例えば特許文献1には、電子レンジ加熱対応のペットフード及びその包装体が提案されている。特許文献1のペットフードが収納された包装体の表面には、ペットフードに対するペットの嗜好性が高まる温度において色相変化を起こすサーモラベル(登録商標)が貼付されている。そして、ペットフードが収納された包装体を電子レンジで加熱すると、適温においてサーモラベル(登録商標)の色相が変化し、ペットフードが適温に加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-144059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、電子レンジなどの加熱庫内で被加熱物を加熱する加熱調理器を用いてペット用の飲食物を加熱した場合、加熱庫内にペット用の飲食物の匂いが残る場合がある。この場合、その後に人用の飲食物を加熱すると、ペット用の飲食物の匂いが人用の飲食物に移ってしまう可能性がある。また逆に、上記の加熱調理器で人用の飲食物を加熱した後、ペット用の飲食物を加熱すると、人用の飲食物の匂いがペット用の飲食物に移ってしまう可能性がある。これらの場合、飲食物に人用又はペット用の匂いが移ることで、人及びペットの食欲が低下してしまう恐れがある。
【0008】
本開示は、上記のような課題を背景としたものであり、ペット用飲食物の加熱に適した加熱調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る加熱調理器は、被加熱物が収容される加熱庫と、被加熱物を加熱する加熱手段と、加熱庫内の排気を行う排気ファンと、加熱手段及び排気ファンを制御して、ペットモード又は通常モードでの加熱動作を実施する制御装置と、を備え、制御装置は、ペットモードでの加熱動作において、加熱の開始前又は加熱の終了後に排気ファンを駆動して、加熱庫内の排気を行うものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の加熱調理器によれば、ペットモードでの加熱動作において、加熱の開始前又は加熱の終了後に排気ファンを駆動して、加熱庫内の排気を行うことで、加熱庫内にペット用又は人用の飲食物の匂いが残ることを抑制できる。これにより、人又はペットの食欲低下を抑制することができ、ペット用飲食物の加熱に適した加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る加熱調理器の斜視図である。
図2】実施の形態1に係る加熱調理器の正面図である。
図3】実施の形態1に係る加熱調理器の側面図である。
図4】実施の形態1に係る加熱調理器の制御ブロック図である。
図5】実施の形態1に係る加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
図6】実施の形態2に係る加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
図7】実施の形態3に係る加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
図8】実施の形態4における排気ファンの回転数の経時変化を示す図である。
図9】実施の形態5に係る加熱調理器の正面図である。
図10】実施の形態5に係る載置ガイド部の印刷パターンの例である。
図11】実施の形態5の変形例1に係る加熱調理器の正面図である。
図12】実施の形態5の変形例2に係る加熱調理器の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器100の斜視図である。本実施の形態の加熱調理器100は、マイクロ波を被加熱物に照射して加熱するマイクロ波式加熱手段を備える加熱調理器である。図1に示すように、加熱調理器100は、内部に被加熱物が収容される加熱庫110が形成され、前面が開口している筐体101と、筐体101の前面に設けられた扉102とを備える。扉102には、加熱庫110内の様子を見るための窓103と、把手104とが設けられている。扉102は、下部が筐体101に軸支されており、上部に設けられた把手104により開閉可能に構成されている。
【0013】
加熱調理器100の扉102の右側には、加熱調理器100の設定及び調理状況などを表示する表示部105と、使用者が調理に関する入力を行う操作部106とが設けられている。操作部106は、運転モードを選択するためのモード選択ボタン106a、並びに加熱力(例えばワット数)及び加熱時間などを設定するための設定ボタン106bを含む複数のボタンを備えている。
【0014】
本実施の形態の加熱調理器100は、運転モードとして、人用の飲食物を自動で加熱する自動加熱モードと、人用の飲食物を設定した加熱力及び加熱時間で加熱する設定加熱モードと、ペット用の飲食物を加熱するペットモードとを含む。なお、以下の説明において、人用の飲食物を加熱する自動加熱モードと設定加熱モードとをまとめて通常モードという。使用者は、モード選択ボタン106aを操作して、運転モードを選択することができる。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器100の正面図である。図2では、加熱調理器100の扉102を空けた状態を示している。図3は、実施の形態1に係る加熱調理器100の側面図である。図2及び図3において、外観から確認できない内部構造は破線で示されている。
【0016】
図2に示すように、加熱庫110の上面には、加熱庫110に収容された被加熱物の温度を測定する温度センサ111と、加熱庫110内の臭気を測定する臭気センサ112とが設けられている。温度センサ111は、例えば非接触で測定対象の温度を測定する赤外線センサである。臭気センサ112は、臭気を構成する成分の濃度を臭気レベルとして測定するセンサであり、例えば金属酸化物半導体又は有機半導体で構成されるセンサ、水晶振動子式のセンサ、もしくはFETバイオセンサなどである。温度センサ111により測定された温度、及び臭気センサ112によって測定された臭気レベルは、制御装置118に送信される。
【0017】
図2及び図3に示すように、加熱庫110の背面を構成する隔壁113には、第1排気口114が設けられている。そして、第1排気口114の後方であって、隔壁113と筐体101の背面との間には、排気ファン115が設けられている。また、筐体101の背面には、第2排気口101aが設けられている。排気ファン115は、図示しないモータにより回転され、加熱庫110内の空気を第1排気口114から吸込み、第2排気口101aから加熱調理器100の外へ排出する。
【0018】
図2及び図3に示すように、加熱庫110の底面と筐体101の底面との間には、高周波発生部116と、電波攪拌部117と、制御装置118とが設けられている。高周波発生部116は、約2.45GHzのマイクロ波を生成するマグネトロンである。電波攪拌部117は、回転可能に軸支されたアンテナ、アンテナを回転させるモータ、及び高周波発生部116が生成したマイクロ波をアンテナに伝搬する導波管を含む。電波攪拌部117は、高周波発生部116が発生するマイクロ波を加熱庫110内に放射する。高周波発生部116と電波攪拌部117とにより、マイクロ波式加熱手段が構成される。
【0019】
制御装置118は、プログラムを実行するCPUなどのプロセッサと、制御で用いられる各種閾値などのパラメータ及びプログラムなどを記憶するメモリとを備え、加熱調理器100の各部の動作を制御する。図4は、実施の形態1に係る加熱調理器100の制御ブロック図である。図4に示すように、制御装置118は、計時部181と、加熱制御部182と、ファン制御部183と、を有している。制御装置118の各部は、プロセッサがメモリに記憶されるプログラムを実行することで実現される機能部である。なお、制御装置118の各部の少なくとも何れかを、ASIC又はFPGAなどの処理回路で実現してもよい。
【0020】
計時部181は、加熱開始からの時間(加熱時間)を計測し、計測した時間を加熱制御部182に出力する。
【0021】
加熱制御部182は、操作部106を介して入力される設定、温度センサ111により測定された被加熱物の温度、及び計時部181で測定された加熱時間に基づき、高周波発生部116及び電波攪拌部117の駆動を制御する。具体的には、加熱制御部182は、自動加熱モードが選択された場合、予め設定された加熱力で、被加熱物の温度が人用の閾値温度以上になるまで高周波発生部116及び電波攪拌部117を駆動する。また、加熱制御部182は、操作部106を介して設定加熱モードが選択された場合、操作部106を介して設定された加熱力で、加熱時間が操作部106を介して設定された時間に到達するまで高周波発生部116及び電波攪拌部117を駆動する。
【0022】
また、加熱制御部182は、ペットモードが選択された場合、予め設定された加熱力で、被加熱物の温度がペット用の閾値温度以上になるまで高周波発生部116及び電波攪拌部117を駆動する。ペットに対しては、人肌より少しあたたかい程度の温度でペットフードを提供すると、ペットの食欲を刺激できると報告されている。また、ペットは空腹時に勢いよくペットフードを食べてしまうこともある。したがって、ペットの食欲増進と適温調理という観点では、ペット用の閾値温度を人用の閾値温度よりも低くすることが望ましく、例えばペット用の閾値温度を40[℃]程度に設定する。これにより、ペットモードを選択することで、ペットの飲食物を適切な温度に温めることができる。
【0023】
ファン制御部183は、操作部106を介して選択された運転モード及び臭気センサ112によって測定された臭気レベルに基づき、排気ファン115の運転を制御する。具体的には、ファン制御部183は、通常モードが選択された場合は、加熱中、すなわち加熱の開始から停止までの間、排気ファン115を予め設定された回転数で回転させる。また、ファン制御部183は、ペットモードが選択された場合、加熱中に排気ファン115を予め設定された回転数で回転させ、加熱終了後も臭気センサ112によって測定された臭気レベルが人用の閾値レベル以下となるまで排気ファン115の駆動を継続させる。人用の閾値レベルは、人の鼻が匂いを認識できるレベルとする。
【0024】
図5は、実施の形態1に係る加熱調理器100の動作を示すフローチャートである。図5の動作は、加熱の開始が指示された場合に制御装置118によって実行される。まず、使用者によって選択されたモードがペットモードであるか否かが判断される(S1)。選択されたモードがペットモードでない場合(S1:NO)、すなわち通常モードである場合、通常モードの加熱動作が実施される(S2)。
【0025】
通常モードの加熱動作では、まず排気ファン115が駆動され、排気が開始される(S21)。そして、高周波発生部116及び電波攪拌部117が駆動され、加熱が開始される(S22)。なお、排気と加熱は同時に開始されてもよいし、加熱が開始された後に排気が開始されてもよい。そして、加熱が終了するまで(S23:NO)、排気と加熱が継続される。加熱制御部182は、運転モードに応じて、計時部181により計測される加熱時間が設定された時間に到達した場合、又は温度センサ111により計測された被加熱物の温度が人用の閾値温度以上となった場合に、加熱を終了すると判断する。加熱を終了すると判断された場合(S23:YES)、高周波発生部116及び電波攪拌部117が停止され、被加熱物の加熱が停止される(S24)。また、排気ファン115が停止され、排気が停止される(S25)。なお、排気と加熱は同時に停止されてもよい。
【0026】
一方、選択されたモードがペットモードである場合(S1:YES)、ペットモードの加熱動作が実施される(S3)。ペットモードの加熱動作では、まず排気ファン115が駆動され、排気が開始される(S31)。そして、高周波発生部116及び電波攪拌部117が駆動され、加熱が開始される(S32)。なお、排気と加熱は同時に開始されてもよいし、加熱が開始された後に排気が開始されてもよい。そして、加熱が終了するまで(S33:NO)、排気と加熱が継続される。加熱制御部182は、温度センサ111により計測された被加熱物の温度がペット用の閾値温度以上となった場合に、加熱を終了すると判断する。
【0027】
そして、加熱を終了すると判断された場合(S33:YES)、高周波発生部116及び電波攪拌部117が停止され、加熱が停止される(S34)。このとき、排気ファン115による排気は継続される。そして、加熱庫110内に臭気があるか否かが判断される(S35)。ここでは、ファン制御部183によって、臭気センサ112により測定される臭気レベルが人用の閾値レベル以上の場合、臭気があると判断される。
【0028】
加熱庫110内に臭気があると判断された場合(S35:YES)、排気ファン115の運転が継続され、加熱庫110の排気が継続される。一方、加熱庫110内に臭気がないと判断された場合(S35:NO)、すなわち、臭気センサ112により測定される臭気レベルが人用の閾値レベル未満となった場合、排気ファン115が停止され、排気が停止される(S36)。
【0029】
以上のように、本実施の形態の加熱調理器100は、ペットモードが選択された場合に、加熱終了後に排気を継続することで、ペット用の飲食物に起因する匂いが加熱庫110内に残ることを抑制することができる。これにより、その後加熱調理器100で加熱する人用の飲食物にペット用飲食物の匂いが付着することを抑制できる。その結果、人の食欲低下を抑制することができる。
【0030】
実施の形態2.
実施の形態2について説明する。実施の形態2の加熱調理器100は、ペットモードの加熱動作において、実施の形態1と相違する。加熱調理器100の構成及びその他の機能は、実施の形態1と同じである。
【0031】
図6は、実施の形態2に係る加熱調理器100の動作を示すフローチャートである。図6の動作は、加熱の開始が指示された場合に制御装置118によって実行される。まず、使用者によって選択されたモードがペットモードであるか否かが判断される(S1)。選択されたモードがペットモードでない場合(S1:NO)、すなわち通常モードである場合、通常モードの加熱動作が実施される(S2)。通常モードの加熱動作は、実施の形態1と同じである。
【0032】
一方、選択されたモードがペットモードである場合(S1:YES)、ペットモードの加熱動作が実施される(S30)。本実施の形態のペットモードの加熱動作では、まず排気ファン115が駆動され、排気が開始される(S41)。そして、加熱庫110内に臭気があるか否かが判断される(S42)。ここでは、ファン制御部183によって、臭気センサ112により測定される臭気レベルがペット用の閾値レベル以上の場合、臭気があると判断される。ペット用の閾値レベルは、ペットの鼻が匂いを認識できるレベルである。ペットは人よりも嗅覚が優れているため、ペット用の閾値レベルは、人用の閾値レベルよりも低く設定される。
【0033】
加熱庫110内に臭気があると判断された場合(S42:YES)、加熱庫110の排気が継続される。一方、加熱庫110内に臭気がないと判断された場合(S42:NO)、すなわち、臭気センサ112により測定される臭気レベルがペット用の閾値レベル未満となった場合、高周波発生部116及び電波攪拌部117が駆動され、加熱が開始される(S43)。そして、加熱が終了するまで(S44:NO)、排気と加熱が継続される。加熱制御部182は、通常モードと同様に、温度センサ111により計測された被加熱物の温度がペット用の閾値温度以上になった場合、加熱を終了すると判断する。
【0034】
そして、加熱を終了すると判断された場合(S44:YES)、高周波発生部116及び電波攪拌部117が停止され、加熱が停止される(S45)。そして、排気ファン115が停止され、排気が停止される(S46)。
【0035】
以上のように、本実施の形態の加熱調理器100は、ペットモードが選択された場合に、加熱を開始する前に排気を行うことで、ペットにとって馴染みのない人用の飲食物に起因する匂いが加熱庫110内に残ることを抑制することができる。これにより、その後加熱調理器100で加熱するペット用の飲食物に人用の飲食物の匂いが付着することを抑制できる。その結果、ペットの食欲低下を抑制することができる。
【0036】
実施の形態3.
実施の形態3について説明する。実施の形態3の加熱調理器100は、通常モードにおける加熱動作において、実施の形態1と相違する。加熱調理器100の構成及びその他の機能は、実施の形態1と同じである。
【0037】
図7は、実施の形態3に係る加熱調理器100の動作を示すフローチャートである。図7の動作は、加熱の開始が指示された場合に制御装置118によって実行される。まず、使用者によって選択されたモードがペットモードであるか否かが判断される(S1)。選択されたモードがペットモードでない場合(S1:NO)、前回がペットモードでの加熱動作だったか否かが判断される(S4)。
【0038】
加熱調理器100における加熱動作の履歴は、制御装置118のメモリに記憶されているものとする。そして、前回がペットモードでの加熱動作ではなかった場合(S4:NO)、実施の形態1と同じ通常モードの加熱動作が実施される(S2)。前回がペットモードでの加熱動作ではなかった場合、加熱庫110内にはペット用飲食物の臭いは残っていない。そのため、この場合は、実施の形態1と同じ通常モードの加熱動作を実行する。
【0039】
一方、前回がペットモードでの加熱動作だった場合(S4:YES)、ペットモード後の通常モードの加熱動作が実施される(S20)。ペットモード後の通常モードの加熱動作では、まず、排気ファン115が駆動され、排気が開始される(S51)。そして、加熱庫110内に臭気があるか否かが判断される(S52)。ここでは、ファン制御部183によって、臭気センサ112により測定される臭気レベルが人用の閾値レベル以上の場合、臭気があると判断される。
【0040】
加熱庫110内に臭気があると判断された場合(S52:YES)加熱庫110の排気が継続される。一方、加熱庫110内に臭気がないと判断された場合(S52:NO)、すなわち、臭気センサ112により測定される臭気レベルが人用の閾値レベル未満となった場合、高周波発生部116及び電波攪拌部117が駆動され、加熱が開始される(S53)。そして、加熱が終了するまで(S54:NO)、排気と加熱が継続される。加熱制御部182は、運転モードに応じて、計時部181により計測される加熱時間が設定された時間に到達した場合、又は温度センサ111により計測された被加熱物の温度が人用の閾値温度以上となった場合に、加熱を終了すると判断する。
【0041】
そして、加熱を終了すると判断された場合(S54:YES)、高周波発生部116及び電波攪拌部117の駆動が停止され、加熱が停止される(S55)。そして、排気ファン115が停止され、排気が停止される(S56)。なお、排気と加熱は同時に停止されてもよい。
【0042】
一方、選択されたモードがペットモードである場合(S1:YES)、ペットモードの加熱動作が実施される(S3)。なお、ペットモードの加熱動作は、実施の形態1のステップS3の動作又は実施の形態2のステップS30の動作の何れであってもよい。
【0043】
以上のように、本実施の形態の加熱調理器100は、人用飲食物を加熱する前に加熱した被加熱物がペット用飲食物だった場合には、加熱を開始する前に排気を行うことで、ペット用の飲食物に起因する匂いが加熱庫110内に残ることを抑制することができる。これにより、その後加熱調理器100で加熱する人用飲食物にペット用飲食物の匂いが付着することを抑制できる。その結果、人の食欲低下を抑制することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、前回ペット用飲食物が加熱されてから時間が経過した状態、すなわちペット用飲食物の匂いが薄れた状態で、排気ファン115による排気が行われる。そのため、実施の形態1のように、ペット用飲食物の加熱直後に排気ファン115による排気を行う場合に比べて、排気時間を短縮することができる。
【0045】
実施の形態4.
実施の形態4について説明する。実施の形態4の加熱調理器100は、排気ファン115の制御において、実施の形態1と相違する。加熱調理器100の構成及びその他の機能は、実施の形態1と同じである。
【0046】
図8は、実施の形態4における排気ファン115の回転数の経時変化を示す図である。図8の縦軸は排気ファン115の回転数[rpm]を示し、横軸は時間を示す。時間t1は、排気ファン115の駆動が開始された時間である。本実施の形態のファン制御部183は、通常モードとペットモードとで排気ファン115の回転数を異ならせる。具体的には、ファン制御部183は、通常モードが選択された場合は、排気ファン115を、図8に破線で示される回転数R1で回転させる。一方、ファン制御部183は、ペットモードが選択された場合は、排気ファン115を、図8に実線で示される回転数R2で回転させる。ペットモードにおける回転数R2は通常モードにおける回転数R1よりも大きいものとする。
【0047】
また、ペットモードが選択された場合の排気ファン115の回転数R2は、固定値であってもよいし、臭気センサ112によって測定される臭気レベルに応じて変化する値であってもよい。例えば、ファン制御部183は、臭気センサ112によって測定される臭気レベルが高いほど、回転数R2を大きくしてもよい。
【0048】
以上のように、本実施の形態の加熱調理器100は、ペットモードの場合の排気ファン115の回転数を通常モードの場合の排気ファン115の回転数よりも大きくすることで、加熱中にペット用飲食物の匂いが加熱庫110内にこもることを抑制することができる。これにより、その後加熱調理器100で加熱する人用の飲食物にペット用の飲食物の匂いが付着することを抑制できる。その結果、人の食欲低下を抑制することができる。
【0049】
なお、ファン制御部183は、加熱調理器100の運転履歴を用いて、前回の加熱動作と今回の加熱動作とが異なる場合に、今回の加熱動作における排気ファン115の回転数を基準の回転数(例えばR1)よりも大きくしてもよい。前回の加熱動作と今回の加熱動作とが異なる場合とは、通常モードの加熱動作の後にペットモードの加熱動作が実施される場合、又はペットモードの加熱動作の後に通常モードの加熱動作が実施される場合などである。これにより、人及びペットの食欲低下を抑制することができる。
【0050】
実施の形態5.
実施の形態5について説明する。実施の形態5の加熱調理器100Aは、載置ガイド部120を備える点において、実施の形態1と相違する。加熱調理器100Aのその他の構成及び機能は、実施の形態1と同じである。
【0051】
図9は、実施の形態5に係る加熱調理器100Aの正面図である。図9では、加熱調理器100Aの扉102を空けた状態を示している。図9に示すように、本実施の形態の加熱調理器100Aの加熱庫110の底面には、ペット用飲食物の載置位置を示す載置ガイド部120が設けられている。
【0052】
載置ガイド部120は、第1排気口114に近接した位置に設けられている。載置ガイド部120は、人用飲食物が通常載置される領域内における第1排気口114に近接した位置に設けられてもよいし、人用飲食物が通常載置される領域とは異なる位置であって、第1排気口114に近接した位置に設けられてもよい。ただし、温度センサ111によってペット用飲食物の温度の測定ができるように、載置ガイド部120は、温度センサ111の測定範囲内に設けられることが望ましい。
【0053】
載置ガイド部120は、加熱庫110の底面への印刷によって形成される。図10は、実施の形態5に係る載置ガイド部120の印刷パターンの例である。載置ガイド部120の印刷パターンは、図10(a)に示すように単純なチェック柄であってもよいし、図10(b)に示すようにペット用の飲食物を載置することが直感的にわかる肉球のマークなどであってもよい。
【0054】
以上のように、本実施の形態の加熱調理器100Aは、ペット用飲食物を第1排気口114に近い位置に載置するよう誘導することで、ペット用飲食物の匂いをより早く加熱庫110の外へ排出することができる。また、加熱庫110内における匂いの拡散を抑制することもできる。
【0055】
なお、載置ガイド部120は、図9に示す印刷によるものに限定されない。図11は、実施の形態5の変形例1に係る加熱調理器100Aの正面図である。図11に示すように、載置ガイド部120は、加熱庫110の底面に形成された凹部であってもよい。
【0056】
図12は、実施の形態5の変形例2に係る加熱調理器100Aの正面図である。図12に示すように、載置ガイド部120は、加熱庫110の底面に例えばエンボス加工などの表面加工を行うことで形成されてもよい。
【0057】
以上が実施の形態の説明であるが、本開示は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形又は組み合わせることが可能である。例えば、実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせてもよい。具体的には、ペットモードの加熱動作において、加熱開始前と加熱終了後の両方に排気ファン115により加熱庫110の排気を行ってもよい。また、上記実施の形態では、通常モード及びペットモードの加熱動作において、加熱中に排気ファン115を駆動して排気を行う構成としたが、加熱中の排気は行わなくてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態においては、ファン制御部183は、臭気センサ112により測定される臭気レベルに応じて排気ファン115を制御するものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ファン制御部183は、計時部181により計測される時間に応じて排気ファン115を制御してもよい。この場合は、臭気センサ112は省略することができる。
【0059】
具体的には、実施の形態1において、ファン制御部183は、加熱を終了してからの経過時間が予め設定された閾値時間に到達した場合に、排気ファン115を停止し、排気を停止してもよい。また、実施の形態2及び3において、ファン制御部183は、排気を開始してからの経過時間が予め設定された閾値時間に到達した場合に、排気ファン115を停止し、排気を停止してもよい。この場合の閾値時間は、一定の時間であってもよいし、直前の加熱動作における加熱力及び加熱時間に応じて異なる時間が設定されてもよい。例えば、ファン制御部183は、直前の加熱動作における加熱力又は加熱時間が基準値又は基準時間以上である場合は、加熱量が多く匂いが多く排出されていると判断し、加熱量が少ない場合と比べて閾値時間を長くしてもよい。
【0060】
また、実施の形態3において、使用者によって選択されたモードがペットモードでない場合(S1:NO)、加熱調理器100の前回がペットモードの加熱動作だったか否かの判定(S4)を行うことなく、ステップS20の処理を行ってもよい。
【0061】
また、操作部106は、ペットモードを選択するための専用のペットモードボタンを備えてもよい。この場合、ペットモードの選択のためのボタンであることを使用者に分かりやすく示すために、ペットモードボタンに、「ペット用」との文字を印字してもよいし、動物の顔、ペットのシルエット、又は肉球を模したアイコンを表示してもよい。また、ペットモードボタンは、操作部106の他のボタンとは異なる位置に配置されてもよい。これにより、使用者がペットモードでの加熱を実行する際に、操作を間違えて通常モードでの加熱を実行してしまう可能性を低くすることができる。
【0062】
さらに、一般的に、ペットフードは、水分量の少ないドライフードと、水分量の多いウェットフードとに分けられる。そこで、操作部106は、ペットモードを選択するためのボタンとして、ドライフードボタンと、ウェットフードボタンとを備えてもよい。また、被加熱物の水分が多いと、高温となった場合に大量の水蒸気が発生すると予想され、しかも水の比熱が大きいために温度が下がりにくい。そのため、ウェットフードボタンが操作された場合の加熱制御におけるペット用の閾値温度は、ドライフードボタンが操作された場合のペット用の閾値温度よりも低く設定される。
【0063】
また、ドライフードボタンが操作された場合、加熱制御部182は、被加熱物の温度がペット用の閾値温度よりも高い100[℃]以上になった状態を予め設定された時間維持し、被加熱物に含まれる水分を蒸発させてもよい。これにより、開封してから時間が経過し、劣化したドライフードの匂い及び風味を改善し、ペットの食欲を刺激することができる。
【0064】
また、ペットが嫌がる匂いの成分の一例として、猫の場合は柑橘系、ハーブ、又はアロマオイルの匂いなどがあり、犬の場合は柑橘系、香水、アルコール、又はたばこなどの匂いがある。そこで、臭気センサ112として、これらの匂いの成分を識別可能なセンサを用いてもよい。
【0065】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0066】
(付記1)
被加熱物が収容される加熱庫と、
前記被加熱物を加熱する加熱手段と、
前記加熱庫内の排気を行う排気ファンと、
前記加熱手段及び前記排気ファンを制御して、ペットモード又は通常モードでの加熱動作を実施する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記ペットモードでの前記加熱動作において、加熱の開始前又は加熱の終了後に前記排気ファンを駆動して、前記加熱庫内の排気を行う、加熱調理器。
(付記2)
前記制御装置は、
前記通常モードでの前記加熱動作において、前回が前記ペットモードでの前記加熱動作だった場合、加熱の開始前に前記排気ファンを駆動して、前記加熱庫内の排気を行う付記1に記載の加熱調理器。
(付記3)
前記加熱庫内の臭気レベルを測定する臭気センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記ペットモードでの前記加熱動作において、加熱の開始前又は加熱の終了後に、前記臭気レベルが閾値レベル以下になるまで前記加熱庫内の排気を行う付記1又は付記2に記載の加熱調理器。
(付記4)
前記制御装置は、
前記ペットモードでの前記加熱動作において、加熱の開始前又は加熱の終了後に、予め設定された閾値時間が経過するまで前記加熱庫内の排気を行う付記1又は付記2に記載の加熱調理器。
(付記5)
前記制御装置は、
前記ペットモードでの前記加熱動作において、前記排気ファンの回転数を前記通常モードでの前記排気ファンの回転数よりも大きくする付記1~4の何れか一つに記載の加熱調理器。
(付記6)
前記加熱庫には、排気口が設けられており、
前記加熱庫の底面の前記排気口に近接した位置に、載置ガイド部が設けられた付記1~5の何れか一つに記載の加熱調理器。
【符号の説明】
【0067】
100、100A 加熱調理器、101 筐体、101a 第2排気口、102 扉、103 窓、104 把手、105 表示部、106 操作部、106a モード選択ボタン、106b 設定ボタン、110 加熱庫、111 温度センサ、112 臭気センサ、113 隔壁、114 第1排気口、115 排気ファン、116 高周波発生部、117 電波攪拌部、118 制御装置、120 載置ガイド部、181 計時部、182 加熱制御部、183 ファン制御部。
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