(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183901
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電子機器、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G10H 1/00 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
G10H1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097702
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岡野 真吾
(72)【発明者】
【氏名】梶川 知哉
(72)【発明者】
【氏名】森山 修
(72)【発明者】
【氏名】森谷 信一
(72)【発明者】
【氏名】市村 優太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮田 陽
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 健
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478KK12
5D478MM05
(57)【要約】
【課題】起動処理の完了を待つユーザのストレスを軽減すること。
【解決手段】電子機器は、データを記憶可能なデータ領域を有する記憶部と、出力部と、少なくとも1つのプロセッサと、を備える。少なくとも1つのプロセッサは、データ領域におけるデータの使用状態に関わらず、起動時間が一定の第1の起動処理と、第1の起動処理の実行中に、第1のパターンの情報を出力部に出力する第1の出力処理と、データの使用状態によって、起動時間が変動する第2の起動処理と、第2の起動処理が完了するまで、第2のパターンの情報を出力部に出力する第2の出力処理と、を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶可能なデータ領域を有する記憶部と、
出力部と、
少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記データ領域におけるデータの使用状態に関わらず、起動時間が一定の第1の起動処理と、
前記第1の起動処理の実行中に、第1のパターンの情報を前記出力部に出力する第1の出力処理と、
前記データの使用状態によって、起動時間が変動する第2の起動処理と、
前記第2の起動処理が完了するまで、第2のパターンの情報を前記出力部に出力する第2の出力処理と、を実行する、
電子機器。
【請求項2】
前記第2の起動処理にかかる起動時間は、前記データ領域の状態が第1の状態である場合と、前記データ領域の状態が前記第1の状態とは異なる第2の状態である場合とで異なる、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第1の起動処理が完了すると、前記第2の起動処理を実行する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記少なくとも1つのプロセッサは、一定時間かかる前記第1の起動処理が完了した際に前記第1のパターンの情報の出力が終わるように、前記第1の出力処理を実行する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第2の出力処理において前記第2の起動処理が完了するまで、前記第2のパターンの情報を前記出力部に繰り返し出力する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第1の起動処理は、前記電子機器に対する演奏操作に応じた音を出力可能な状態にするための処理を含む、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記データ領域に、ユーザによる操作に応じて取得されるデータが記憶される、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記データ領域に前記データが記憶されていない場合、前記第2のパターンの情報を前記出力部から出力させない、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第2の起動処理は、前記データ領域の最適化処理を含む、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項10】
前記情報は、視覚的情報と聴覚的情報の少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項11】
前記出力部は、光を発する発光部を含み、
前記第1の起動処理中と前記第2の起動処理中とで、前記発光部の発光パターンが異なる、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項12】
操作子を備え、
前記出力部は、画像を表示する表示部を更に含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第1の起動処理の実行中における前記第1の出力処理において、前記表示部に前記操作子に関する画像を表示させるとともに、前記発光部に前記画像に対応する発光パターンで前記操作子を発光させる、
請求項11に記載の電子機器。
【請求項13】
前記操作子に関する画像は、前記操作子の操作に対応する画像であり、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記表示部に表示された前記画像の表示内容に対応して前記発光部を発光させる、
請求項12に記載の電子機器。
【請求項14】
前記発光部が複数備えられ、
前記操作子は複数あり、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第2の起動処理の実行中における前記第2の出力処理において、前記複数の操作子のそれぞれに対応する発光部を、所定の順序で発光させる、
請求項12に記載の電子機器。
【請求項15】
複数の鍵を有する電子楽器である、
請求項1から請求項14の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項16】
データを記憶可能なデータ領域を有する記憶部と、出力部と、を備えるコンピュータが、
前記データ領域におけるデータの使用状態に関わらず、起動時間が一定の第1の起動処理と、
前記第1の起動処理の実行中に、第1のパターンの情報を前記出力部に出力する第1の出力処理と、
前記データの使用状態によって、起動時間が変動する第2の起動処理と、
前記第2の起動処理が完了するまで、第2のパターンの情報を前記出力部に出力する第2の出力処理と、を実行する、
方法。
【請求項17】
データを記憶可能なデータ領域を有する記憶部と、出力部と、を備えるコンピュータが、
前記データ領域におけるデータの使用状態に関わらず、起動時間が一定の第1の起動処理と、
前記第1の起動処理の実行中に、第1のパターンの情報を前記出力部に出力する第1の出力処理と、
前記データの使用状態によって、起動時間が変動する第2の起動処理と、
前記第2の起動処理が完了するまで、第2のパターンの情報を前記出力部に出力する第2の出力処理と、を実行する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、電子機器、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の一例である電子楽器が知られている(例えば特許文献1参照)。この種の電子楽器では、電源がオンされると起動処理が実行される。この起動処理が完了することによってはじめて、電子楽器は演奏可能な状態となる。このように、電子楽器は、アコースティック楽器と比べて、演奏可能な状態になるまでに時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子楽器が有するメモリ領域の状態によっては、電源がオンされてから起動処理が完了するまでにかかる時間(起動時間)がより長くなる場合がある。起動時間が長いとユーザにとってストレスとなり得る。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、起動処理の完了を待つユーザのストレスを軽減することができる電子機器、方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る電子機器は、データを記憶可能なデータ領域を有する記憶部と、出力部と、少なくとも1つのプロセッサと、を備える。前記少なくとも1つのプロセッサは、前記データ領域におけるデータの使用状態に関わらず、起動時間が一定の第1の起動処理と、前記第1の起動処理の実行中に、第1のパターンの情報を前記出力部に出力する第1の出力処理と、前記データの使用状態によって、起動時間が変動する第2の起動処理と、前記第2の起動処理が完了するまで、第2のパターンの情報を前記出力部に出力する第2の出力処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、起動処理の完了を待つユーザのストレスを軽減することができる電子機器、方法及びプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子楽器の外観を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電子楽器の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態で実行される処理のシーケンス図である。
【
図4】本発明の一実施形態で実行される第1の起動処理を示すサブルーチンである。
【
図5】第1の起動処理中に出力される第1のパターンの演出情報を示す図である。
【
図6A】出荷時の電子楽器のフラッシュROM(Read Only Memory)の状態を示す図である。
【
図6B】ユーザにより使用された電子楽器のフラッシュROMの状態を示す図である。
【
図7】第2の起動処理中に出力される第2のパターンの演出情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る電子機器、コンピュータの一例である電子機器により実行される方法及びプログラムについて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器の一例である電子楽器1の外観を示す図である。
図2は、電子楽器1の構成を示すブロック図である。電子楽器1は、例えば電子キーボードである。電子楽器1は、電子キーボード以外の電子鍵盤楽器であってもよく、また、電子打楽器、電子管楽器、電子弦楽器等の、他の形態の電子楽器であってもよい。
【0011】
電子楽器1は、ハードウェア構成として、プロセッサ10、RAM(Random Access Memory)11、フラッシュROM12、スイッチパネル13、入出力インタフェース14、LED(Light Emitting Diode)15、LEDドライバ16、鍵盤17、キースキャナ18、LCD(Liquid Crystal Display)19、LCDコントローラ20、シリアルインタフェース21、波形ROM22、音源LSI(Large Scale Integration)23、D/Aコンバータ24、アンプ25及びスピーカ26を備える。電子楽器1の各部は、バス27により接続される。
【0012】
プロセッサ10は、フラッシュROM12に格納されたプログラム及びデータを読み出し、RAM11をワークエリアとして用いることにより、電子楽器1を統括的に制御する。
【0013】
プロセッサ10は、例えばシングルプロセッサ又はマルチプロセッサであり、少なくとも1つのプロセッサを含む。複数のプロセッサを含む構成とした場合、プロセッサ10は、単一の装置としてパッケージ化されたものであってもよく、電子楽器1内で物理的に分離した複数の装置で構成されてもよい。プロセッサ10は、例えば、制御部、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)又はMCU(Micro Controller Unit)と呼ばれてもよい。
【0014】
RAM11は、データやプログラムを一時的に保持する。RAM11には、フラッシュROM12から読み出されたプログラムやデータ、波形ROM22から読み出された波形データ、その他、通信に必要なデータが保持される。
【0015】
フラッシュROM12は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性の半導体メモリである。
【0016】
スイッチパネル13は、電子楽器1の筐体に設けられたフラットな操作パネルである。ユーザがスイッチパネル13を操作すると、その操作内容を示す信号が入出力インタフェース14を介してプロセッサ10に出力される。
【0017】
スイッチパネル13は、例えば、静電容量方式や光学方式のタッチパネルを内蔵し、操作子13a、13b及び複数の操作子13cを含む。
【0018】
操作子13aは、例えば電子楽器1の電源をオン又はオフするためのスイッチである。ユーザは、操作子13aをタッチすることにより、電子楽器1の電源をオンまたはオフすることができる。
【0019】
操作子13bは、例えば音量等のパラメータ値を調整したり項目を選択したりするための操作子である。
【0020】
ユーザは、例えば、操作子13bを回転させるように操作子13b上で指をスライドさせることにより、パラメータ値を調整することができる。ユーザは、例えば、操作子13c(パラメータ値の切替機能がアサインされた操作子13c)をタッチすることにより、操作子13bで調整可能なパラメータ値を切り替えることができる。
【0021】
ユーザは、例えば、操作子13bの円周の上部(円周の上側の円弧)、下部(円周の下側の円弧)、右部(円周の右側の円弧)又は左部(円周の左側の円弧)をタッチすることにより、LCD19に表示されるメニュー画面のなかから項目を選択することができる。ユーザは、例えば、操作子13c(メニュー画面の切替機能がアサインされた操作子13c)をタッチすることにより、LCD19に表示されるメニュー画面を切り替えることができる。
【0022】
複数の操作子13cは、例えば電子楽器1の設定値を指定する操作子である。ユーザは、例えば、操作子13cをタッチすることにより、電子楽器1の設定値を指定することができる。一例として、ユーザは、操作子13cをタッチすることにより、音色(ギター、ベース、ピアノ等)を指定することができる。
【0023】
なお、スイッチパネル13は、フラットな操作パネルに限らず、また、タッチパネルに限らない。スイッチパネル13は、メカニカル方式、静電容量無接点方式、メンブレン方式等のスイッチ、ボタン、ノブ、ロータリエンコーダ、ホイール等の操作子を含む構成としてもよい。
【0024】
スイッチパネル13が形成される天板の裏側であって、操作子13a、13b及び13cの各操作子が位置する各箇所に、LED15が設置される。各LED15は、LEDドライバ16により個別に駆動される。プロセッサ10は、LEDドライバ16を制御することにより、例えば、ユーザによるタッチ操作に応じて、LED15を点灯、点滅、又は消灯させる。
【0025】
このように、LED15は、操作子を発光(点灯)させる発光部として動作する。より詳細には、LED15は複数備えられる。複数のLED15のそれぞれが、対応する発光部を発光させる。
【0026】
鍵盤17は、複数の演奏操作子として複数の白鍵及び黒鍵を有する鍵盤である。各鍵は、それぞれ異なる音高と対応付けられている。
【0027】
キースキャナ18は、鍵盤17に対する押鍵及び離鍵を監視する。キースキャナ18は、例えばユーザによる押鍵操作を検出すると、押鍵イベント情報をプロセッサ10に出力する。押鍵イベント情報には、押鍵操作に係る鍵の音高の情報(キーナンバ)が含まれる。キーナンバは、鍵番号やMIDIキー、ノートナンバと呼ばれることもある。
【0028】
本実施形態では、鍵の押鍵速度(ベロシティ値)を計測する手段が別途設けられており、この手段により計測されたベロシティ値も押鍵イベント情報に含まれる。例示的には、各鍵について複数の接点スイッチが設けられている。鍵が押される際の各接点スイッチが導通する時間の差により、ベロシティ値が計測される。ベロシティ値は、押鍵操作の強さを示す値ともいえ、また、楽音の大きさ(音量)を示す値ともいえる。
【0029】
LCD19は、LCDコントローラ20により駆動される。プロセッサ10による制御信号に従ってLCDコントローラ20がLCD19を駆動すると、LCD19に、制御信号に応じた画面が表示される。LCD19は、有機EL(Electro Luminescence)等の表示装置に置き換えてもよい。LCD19は、タッチパネルが内蔵された操作子の1つであってもよい。
【0030】
このように、LCD19は、画像を表示する表示部として動作する。
【0031】
シリアルインタフェース21は、プロセッサ10の制御下で、外部のMIDI(Musical Instrument Digital Interface)機器とMIDIデータ(MIDIメッセージ)をシリアル形式で入出力するインタフェースである。
【0032】
波形ROM22は、波形データのセットを音色(ギター、ベース、ピアノ等)毎に記憶する。各音色の波形データのセットは、鍵盤17の各鍵に対応する全てのキーナンバのなかの、一部の(複数の)キーナンバの波形データ(便宜上「波形データ群」と記す。)を含む。本実施形態では、波形データの読み出し速度(言い換えるとピッチ)を変えることにより、波形データ群に含まれないキーナンバの楽音も発音できるようになっている。すなわち、一部のキーナンバしか含まない波形データ群を用いて、鍵盤17の各鍵に対応する全てのキーナンバの楽音を発音できるようになっている。
【0033】
波形ROM22に記憶された波形データ(例えば現在設定されている音色の波形データ)は、押鍵操作に応じて楽音が速やかに発音されるように、起動処理時にRAM11にロードされる。プロセッサ10は、RAM11にロードされた複数の波形データのなかから、対応する波形データの読み出しを音源LSI23に指示する。読み出し対象の波形データは、例えば、ユーザによる操作によって選択された音色及び押鍵イベント情報に応じて決まる。
【0034】
音源LSI23は、プロセッサ10の指示のもと、RAM11から読み出した波形データに基づいて楽音を生成する。音源LSI23は、例えば128のジェネレータセクションを備えており、最大で128の楽音を同時に発音することができる。なお、本実施形態では、プロセッサ10と音源LSI23とが別々の装置として構成されるが、別の実施形態では、プロセッサ10と音源LSI23とが1つのプロセッサとして構成されてもよい。
【0035】
音源LSI23により生成されたデジタル楽音データは、D/Aコンバータ24によりアナログ信号に変換された後、アンプ25により増幅されて、スピーカ26に出力される。
【0036】
プロセッサ10は、機能ブロックとして、第1の起動処理を実行する第1起動部100a、第2の起動処理を実行する第2起動部100b、起動処理中に起動時間を演出する情報を人(例えば電子楽器1のユーザ)が知覚可能な形式(例えば、視覚的情報である画像や光と、聴覚的情報である音と、の少なくとも一方)で出力部に出力させる出力制御部100cを備える。附言するに、出力制御部100cは、第1の起動処理の実行中に、第1のパターンの情報を出力部に出力する第1の出力処理と、第2の起動処理が完了するまで、第2のパターンの情報を出力部に出力する第2の出力処理と、を実行する。これらの機能ブロックの動作により、第1の起動処理及び第2の起動処理を含む起動処理の実行中、画像や光、音による演出が行われる。このような視聴覚的な演出が行われることにより、起動処理中の待ち時間をユーザに意識させにくくできる。そのため、電子楽器1が演奏可能な状態になるのを待つユーザのストレスを軽減させることができる。
【0037】
本実施形態において、プロセッサ10の各機能ブロックは、ソフトウェアである制御プログラム120(後述)により実現される。なお、プロセッサ10の各機能ブロックは、一部又は全部が専用の論理回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
【0038】
図3は、プロセッサ10と出力部により実行される処理のシーケンス図を示す。本実施形態において、起動時間中に視聴覚的な演出情報を出力する出力部は、LED15、LEDドライバ16、LCD19及びLCDコントローラ20で構成される。
【0039】
概説すると、電子楽器1の電源がオンされると、プロセッサ10が、既定の処理である第1の起動処理を実行する。一定時間かかる第1の起動処理の実行中、出力部が、起動時間を演出する第1のパターンの演出情報を出力する。電源がオンされてから一定時間が経過した時点で、第1の起動処理が完了するとともに第1のパターンの演出情報の出力が終了する。次いで、プロセッサ10が、時間が可変長な第2の起動処理を実行する。また、出力部が、第1のパターンの演出情報の終了に続いて第2のパターンの演出情報を出力する。第2のパターンの演出情報は、第2の起動処理が完了するまで繰り返し出力される。第1及び第2のパターンの演出情報をユーザに提示することにより、起動処理中の待ち時間(例えば最大で数十秒程度)をユーザに意識させにくくできる。
【0040】
図3に示されるように、プロセッサ10は、電子楽器1の電源がオンされて電源が供給されると(ステップS101)、演出情報の出力を指示する制御信号S1を出力部に送信するとともに(ステップS102)、第1の起動処理の実行を開始する(ステップS103)。
【0041】
第1の起動処理は、出荷時の状態でも実行される既定の処理であり、フラッシュROM12のデータ領域におけるデータの使用状態に関わらず、開始から完了までにかかる起動時間が一定である。第1の起動処理は、例えば、ユーザによる電子楽器1に対する演奏操作に応じた音を出力可能な状態(演奏可能状態)にするための処理を含む。具体的な例示として、第1の起動処理は、次の第1の処理~第4の処理を含む。
【0042】
図4は、第1の起動処理を示すサブルーチンである。
図4に示されるように、プロセッサ10は、第1の処理を実行する(ステップS301)。第1の処理は、各部(例えば、スイッチパネル13、鍵盤17、LCD19、シリアルインタフェース21、音源LSI23等)を接続するための各種ドライバの初期化処理、各部のパラメータ値の設定処理(更新処理等)等を含む。
【0043】
第1の処理が完了すると、プロセッサ10は、第2の処理を実行する(ステップS302)。第2の処理は、出荷時点でのプリセットデータ(例えば、デモンストレーション音源、メトロノーム音源等のデータ)を処理するファイルシステムの初期化処理等を含む。
【0044】
第2の処理が完了すると、プロセッサ10は、第3の処理を実行する(ステップS303)。第3の処理は、各種機能を実現するためのモジュール(例えば、エフェクト、ミキサ、DSP(Digital Signal Processor)等)の初期化処理、出力ライン(スピーカ26、ヘッドフォン、ラインアウト等)をミュートするミュート処理等を含む。
【0045】
第3の処理が完了すると、プロセッサ10は、第4の処理を実行する(ステップS304)。第4の処理は、特定の波形データ(例えば、使用頻度の高い波形データや、起動時に設定される音色の波形データ)を波形ROM22からRAM11にロードする波形データロード処理等を含む。波形ROM22よりも処理速度の速いRAM11に波形データを予めロードすることにより、押鍵操作に応じて楽音を速やかに発音させることができる。
【0046】
以上の第1の処理~第4の処理が完了することにより、電子楽器1は、電源オフ状態から演奏可能状態に遷移する。
【0047】
出力部をなすLEDドライバ16、LCDコントローラ20は、それぞれ、制御信号S1(ステップS102)を受信すると、LED15、LCD19を第1のパターンで駆動する(ステップS201)。
【0048】
図5に、第1のパターンで駆動するLED15及びLCD19により出力される第1のパターンの演出情報を示す。第1のパターンの演出情報は、
図5の符号A1~A5の順に出力される。ここでは、主に、操作子13b及びLCD19の演出情報を説明する。なお、スイッチパネル13が形成される天板の裏側には、操作子13bに対応して複数のLED15が円周状に配置される。円周状に配置された複数のLED15の発光状態に応じて、操作子13bの全周が発光(言い換えると、操作子13bがリング状に発光)したり、操作子13bの一部の角度範囲だけ発光したりする。以下、説明の便宜上、リング状の発光範囲を有する操作子13bのうち、LED15により発光している発光部分を符号BLで表し、LED15により発光していない非発光部分(言い換えると、LED15が消灯している部分)を符号TLで表す。また、
図5において、発光部分と非発光部分とを区別しやすくする都合上、発光部分を太線で表し、非発光部分を細線で表す。
【0049】
最初の状態として符号A1に示されるように、「Welcome」のメッセージがLCD19に表示されるとともに、LED15により操作子13bがリング状に発光する。つまり、符号BL1を付した太線で示されるように、操作子13bは円全体が発光する。
【0050】
2番目の状態として符号A2に示されるように、LCD19に3つの矩形L1~L3が表示されるとともに、符号BL2を付した太線で示されるように、操作子13bが一部の角度範囲(操作子13bの円周の上側の部分)だけ発光する。より詳細には、LCD19において矩形L1の色が、矩形L2、L3の色とは異なる色で表示され、時間の経過に伴って矩形L1の色が矩形L2、L3へと順に移り変わる。矩形L2の色が矩形L1の色と同じ色に変わる際には、矩形L1の色は矩形L3の色へ変わる。矩形L3の色が矩形L2と同じ色に変わる際も同様である。つまり、矩形L1~L3のうち何れか1つの矩形が他の矩形とは異なる色で表示される。それと共に、操作子13bの発光部分(符号BL2を付した太線で示される部分)が回転して見えるように、この発光部分が時間の経過に伴って所定の回転方向に徐々に移り変わる。
【0051】
上記の如き、操作子13bの発光部分を回転するように見せた操作子13bの発光パターンは、操作子13bに対するユーザの回転操作を模擬的に表現したパターンである。また、上記の如き、矩形L1~L3の色が順に移り変わる動画は、操作子13bに対するユーザの回転操作に応じてLCD19に表示された画面の選択項目が移動することを模擬的に表現した動画である。
【0052】
このように、符号A2に示される2番目の状態では、操作子13bに対するユーザの回転操作に応じてLCD19に表示された画面の選択項目が移動することが表現される。なお、動画は、フレームレートに従って連続的に表示される静止画像よりなる。別の実施形態では、動画に代えて、静止画像(例示的には、操作子13bに対するユーザの回転操作に応じてLCD19に表示された画面の選択項目が移動することを模擬的に表現した静止画像)がLCD19に表示されてもよい。
【0053】
すなわち、表示部の一例であるLCD19は、操作子に関する画像(静止画像又は動画)として、操作子の操作に対応する画像(上記の例では、操作子13bに対するユーザの回転操作に応じてLCD19に表示された画面の選択項目が移動することを模擬的に表現した動画)を表示する。また、発光部の一例であるLED15は、LCD19に表示された画像の表示内容に対応して操作子13bを発光させる。
【0054】
3番目の状態として符号A3に示されるように、操作子13bの上部(符号BL3を付した太線参照)と下部(符号BL4を付した太線参照)が発光するとともに、LCD19の上部と下部にそれぞれ上向きと下向きの矢印が表示される。
【0055】
操作子13bの上部と下部のみ発光させる発光パターンは、ユーザが操作子13bの上部と下部をタッチする操作を模擬的に表現したパターンである。LCD19に表示された上向き矢印と下向き矢印は、例えば、LCD19に表示される画面の切り替わりや選択項目の移動を模擬的に表現した画像である。
【0056】
このように、符号A3に示される3番目の状態では、操作子13bの上部と下部に対するユーザのタッチ操作に応じて、例えば、LCD19に表示される画面が切り替わったり、選択項目が移動したりすることが表現される。
【0057】
4番目の状態として符号A4に示されるように、操作子13bの左部(符号BL5を付した太線参照)と右部(符号BL6を付した太線参照)が発光するとともに、LCD19の左部と右部にそれぞれ左向きと右向きの矢印が表示される。
【0058】
操作子13bの左部と右部のみ発光させる発光パターンは、ユーザが操作子13bの左部と右部をタッチする操作を模擬的に表現したパターンである。LCD19に表示された左向き矢印と右向き矢印は、例えば、LCD19に表示される画面の切り替わりや選択項目の移動を模擬的に表現した画像である。
【0059】
このように、符号A4に示される4番目の状態では、操作子13bの左部と右部に対するユーザのタッチ操作に応じて、例えば、LCD19に表示される画面が切り替わったり、選択項目が移動したりすることが表現される。
【0060】
5番目の状態として符号A5に示されるように、第1のパターンの演出情報の最後として、ロゴがLCD19に表示されるとともに全ての操作子(13a、13b、13c)が発光する。
【0061】
符号A1~A5に示される一連の演出情報は、一定時間かけて再生される演出情報である。そのため、本実施形態では、プロセッサ10が第1の起動処理を開始すると同時に第1のパターンの演出情報の出力が開始され、プロセッサ10が第1の起動処理が完了すると同時に第1のパターンの演出情報の出力が終了する。
【0062】
このように、プロセッサ10は、第1の起動処理中に第1のパターンの演出情報を出力部に出力させる出力制御部100cとして動作する。より詳細には、出力制御部100cとして動作するプロセッサ10は、制御信号S1(ステップS102)を出力部に送信することにより、一定時間かかる第1の起動処理が完了した際に第1のパターンの演出情報の出力が終わるように、第1のパターンの演出情報を出力部に出力させる。第1のパターンの演出情報を見たユーザは、操作子13bの操作イメージを掴むことができる。上述の、制御信号S1に基づいた出力処理は、「第1の起動処理の実行中に、第1のパターンの情報を出力部に出力する第1の出力処理」と表現することもできる。すなわち、プロセッサ10は、一定時間かかる第1の起動処理が完了した際に第1のパターンの演出情報の出力が終わるように、第1の出力処理を実行する、とも言える。また、プロセッサ10は、第1の起動処理の実行中における第1の出力処理において、操作子に関する画像をLCD19に表示させるとともに、LED15に、表示された画像に対応する発光パターンで操作子を発光させる、とも言える。
【0063】
本実施形態では、電子楽器1を演奏可能な状態に遷移させる第1の起動処理だけでは、起動処理は完了しない。第1の起動処理が完了すると、プロセッサ10は、第2起動部100bにより第2の起動処理を実行する(ステップS104)。
【0064】
第2の起動処理は、例えば、フラッシュROM12の最適化処理を含む。第2の起動処理は、フラッシュROM12のデータ領域におけるデータの使用状態に応じて開始から完了までにかかる起動時間が変化する。
【0065】
図6Aは、出荷時の電子楽器1のフラッシュROM12の状態を示す。
図6Bは、ユーザにより使用された電子楽器1のフラッシュROM12の状態を示す。
図6A及び
図6Bに示されるように、フラッシュROM12には、制御プログラム120及びデータ122が格納される。
【0066】
制御プログラム120は、OS(Operating System)120a及びプログラム120bを含む。プログラム120bは、OS120aよりも上位のレイヤのソフトウェアであり、OS120a上で動作する各種プログラムを含む。
【0067】
データ122は、例えば、プログラム120bにより参照される、デフォルトで用意された各種データを含む。
【0068】
フラッシュROM12は、メモリ領域12Rを有する。メモリ領域12Rは、ユーザデータUD用に予め確保された領域である。
【0069】
このように、フラッシュROM12は、データを記憶可能なデータ領域の一例であるメモリ領域12Rを有する記憶部として動作する。
【0070】
メモリ領域12Rに記憶されるユーザデータUDは、ユーザによる操作に応じて取得されるデータである。ユーザデータUDとして、例えば、録音データ、楽曲データ、レジストレーションデータが挙げられる。録音データは、例えば、電子楽器1のレコーダ機能を用いて録音された、ユーザの演奏データである。楽曲データは、例えば、シリアルインタフェース21に接続された外部機器から取得された楽曲データである。レジストレーションデータは、例えば、音色等のプリファレンスデータである。
【0071】
プロセッサ10は、ユーザデータUDを、例えばファイルシステムで管理する。プロセッサ10は、ポインタが示すフラッシュROM12内のアドレスにアクセスし、アクセスしたアドレスに格納されたユーザデータUDを参照する。
【0072】
ユーザによる電子楽器1の使用状況に応じて種々のユーザデータUDがフラッシュROM12に順次格納される。一例として、
図6Bに示されるように、ユーザデータUD
1~UD
nがフラッシュROM12に格納される。
【0073】
例えばユーザデータUD2の消去を指示する操作が行われると、プロセッサ10は、ユーザデータUD2を格納するアドレスを示すポインタを消去する。一方、プロセッサ10は、ユーザデータUD2の実データを消去しない。そのため、新たなユーザデータUDをメモリ領域12Rに書き込む都度、メモリ領域12Rの空き領域が少なくなっていく。例えばメモリ領域12Rの空き領域が一定容量未満になると、プロセッサ10は、空き領域を確保するため、消去済みのポインタが示す番地にあるユーザデータUDの実データを消去する。
【0074】
ユーザデータUDの実データの書き込みと消去が繰り返されると、メモリ領域12R内に不連続で細かな空き領域が増える。このように空き領域が整理できていない状態では、新たなユーザデータUDを複数の細かな空き領域に飛び飛びに書き込まなければならない。これを避けるため、本実施形態では、第2の起動処理中、フラッシュROM12(より詳細には、メモリ領域12R)の最適化処理が行われる。
【0075】
最適化処理では、プロセッサ10は、例えばガベージコレクションを実行する。ガベージコレクションは、コンピュータプログラムの実行環境などが備える機能の一つである。ガベージコレクションでは、実行中のプログラムが占有していたメモリ領域のうち不要になったものを自動的に解放し、空き領域として再利用できるようにする。ガベージコレクションを少し具体的に説明すると、プロセッサ10は、ガベージコレクションの実行時にヒープ領域内のオブジェクトが必要かどうかを判断し、不要なオブジェクトのメモリ領域を解放する。ここでヒープ領域とは、あるプログラムが使用できるメモリ領域であり、ヒープ領域は例えば、Young、Old、Permanentの3つの領域に分けられる。基本的にメモリへの割り当ては頻繁に発生するものの、ほとんどは長生きしないという考えから、出来て間もないデータはYoung領域に、長期的に参照されるデータはOld領域にそれぞれ格納される。また、Permanent領域には、ロードされたクラスの情報など、変わらないことがある程度保証されているデータが格納される。そして、プロセッサ10は、マイナー・ガベージコレクションとしてYoung領域に含まれるデータだけをガベージコレクションの対象とする処理、または、フル・ガベージコレクションとしてYoung領域とOld領域に含まれるデータをガベージコレクションの対象とする処理を、メモリ領域12Rの記録状況に応じて適切に使い分ける。マイナー・ガベージコレクションの処理にかかる時間は、フル・ガベージコレクションの処理にかかる時間に対して比較的短時間になる。プロセッサ10は、例えばガベージコレクションを実行することで、最適化処理を完了させる。また、プロセッサ10は、最適化処理として、デフラグを実行してもよい。
【0076】
上記に例示される最適化処理は、傾向として、メモリ使用量(具体的には、メモリ領域12Rのうち、ユーザデータUDが占有する領域)が多いほど、開始から完了までに時間がかかる。なお、「メモリ使用量」は、例えば「メモリ使用率」と読み替えられてもよい。最適化処理に時間がかかるほど、電子楽器1の起動時間が伸びるため、ユーザにストレスを与え得る。
【0077】
そこで、出力部をなすLEDドライバ16、LCDコントローラ20は、第1のパターンの演出情報の出力が終了すると(言い換えると、第1の起動処理が完了して第2の起動処理の実行が開始されるタイミングで)、LED15、LCD19を第2のパターンで駆動する(ステップS202)。
【0078】
図7に、第2のパターンで駆動するLED15及びLCD19により出力される第2のパターンの演出情報を示す。第2のパターンの演出情報は、
図7の符号B1~B5の順に繰り返し出力される。
図7においても
図5と同様に、操作子13bの発光部分、非発光部分のそれぞれに符号を付すとともに、発光部分を太線で表し、非発光部分を細線で表す。
【0079】
最初の状態として符号B1に示されるように、ロゴがLCD19に表示されるとともに、操作子13bに対応するLED15が発光する。具体的には、操作子13bの円周のうち一部分のLED15が消灯している状態で操作子13bが発光する(符号BL8を付した太線参照)。次いで、符号B2~B5に示されるように、LCD19に近い側に配置された操作子13cから、スイッチパネル13の左右方向の端部(
図1参照)に向かう方向に配置された操作子13cの順に発光する。また、符号B1~B5に示されるように、第2の起動処理中にLCD19に表示されるロゴは、静止画像である。
【0080】
このように、第2の起動処理中、操作子13cに対応するLED15のそれぞれが所定の順序で発光し、この発光処理を第2の起動処理が完了するまで繰り返す。また、第2の起動処理中、符号B1~B5の各図(符号BL8~BL12を付した太線参照)に示されるように、操作子13bの発光部分を少しずつ変えることで、操作子13bに対するユーザの回転操作が模擬的に表現される。これにより、操作子13bがユーザによって回転操作されているイメージを与えることができる。
【0081】
フラッシュROM12の最適化処理が完了すると(ステップS105:YES)、プロセッサ10は、ミュート(
図4のステップS303参照)を解除して、ユーザの操作を待ち受ける待受状態に遷移するとともに(ステップS107)、演出情報の出力の停止を指示する制御信号S2を出力部に送信する(ステップS106)。
【0082】
図7の符号B1~B5に示される第2のパターンの演出情報は、第2の起動処理が完了するまで繰り返し出力される。出力部をなすLEDドライバ16、LCDコントローラ20は、それぞれ、制御信号S2(ステップS106)を受信すると、第2のパターンでの駆動を停止して、LED15、LCD19を待受モードで駆動する(ステップS203)。待受モードでは、例えば、所定のメニュー画面がLCD19に表示されるとともに全ての操作子(13a、13b、13c)が発光する。
【0083】
図7の符号B1~B5に示されるように、第2の起動処理中は、操作子13cを順次発光させ、また、静止画像をLCD19に表示させるだけのものである。そのため、第2の起動処理の完了時に第2のパターンの演出情報の出力が唐突に停止された場合にも、ユーザに違和感を与えにくい。
【0084】
このように、第1の起動処理と第2の起動処理とにおいて、発光部の一例であるLED15の発光パターンが異なる。具体的には、プロセッサ10は、第2の起動処理中に第2のパターンの演出情報を出力部に出力させる。より詳細には、プロセッサ10は、第1の起動処理の実行を開始する際、演出情報の出力を指示する制御信号S1(ステップS102)を出力部に送信することにより、第1のパターンの演出情報を出力部に出力(及びその一定時間経過後に第2のパターンの演出情報を出力部に出力)させ、第1の起動処理の完了に次いで、第2の起動処理の実行を開始し、第2の起動処理が完了すると、第2の起動処理の完了を示す制御信号S2(ステップS106)を出力部に送信することにより、第2のパターンの演出情報の出力を出力部に終了させる。上述の、制御信号S1及び制御信号S2に基づいた出力処理は、「第2の起動処理が完了するまで、第2のパターンの情報を出力部に出力する第2の出力処理」と表現することもできる。本実施形態では、プロセッサ10は、第2の起動処理の実行中における第2の出力処理において、複数の操作子13cのそれぞれに対応するLED15を、所定の順序で発光させる。
【0085】
なお、メモリ領域12RにユーザデータUDが記憶されていない場合を考える(
図6A参照)。この場合、第1の起動処理の完了直後に最適化処理の完了が判定される。そのため、第1の起動処理の完了直後、制御信号S2(ステップS106)が出力部に送信される。そのため、出力部は、第1のパターンの演出情報の出力が終了した直後に制御信号S2を受信する。そのため、第2のパターンの演出情報は、出力部から出力されない。言い換えると、プロセッサ10は、メモリ領域12RにユーザデータUDが記憶されていない場合、第2のパターンの演出情報を出力部から出力させない。
【0086】
このように、第2の起動処理にかかる時間は、メモリ領域12Rが第1の状態(例えば
図6Aに示される出荷時の状態)である場合と、メモリ領域12Rが第1の状態とは異なる第2の状態(例えば最適化処理が必要な状態)である場合とで異なる。第2の起動処理にかかる時間に応じて、出力部が第2のパターンの演出情報を出力する時間も変わる。
【0087】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0088】
上記の実施形態では、視覚的情報(画像と光)での演出を行う構成を説明したが、別の実施形態では、視覚的情報に代えて又は加えて、聴覚的情報での演出を行う構成が採用されてもよい。一例として、第1の起動処理中、ある楽曲のフレーズがスピーカ26から出力される。次いで、第1の起動処理が完了してから第2の起動処理が完了するまでの間、上記フレーズより短い、ある楽曲の小節が、スピーカ26から繰り返し出力される。
【0089】
このような聴覚的な演出が行われることにより、起動処理中の待ち時間をユーザに意識させにくくできる。この場合も、電子楽器1が演奏可能な状態になるのを待つユーザのストレスを軽減させることができる。
【0090】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
データを記憶可能なデータ領域を有する記憶部と、
出力部と、
少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記データ領域におけるデータの使用状態に関わらず、起動時間が一定の第1の起動処理と、
前記第1の起動処理の実行中に、第1のパターンの情報を前記出力部に出力する第1の出力処理と、
前記データの使用状態によって、起動時間が変動する第2の起動処理と、
前記第2の起動処理が完了するまで、第2のパターンの情報を前記出力部に出力する第2の出力処理と、を実行する、
電子機器。
[付記2]
前記第2の起動処理にかかる起動時間は、前記データ領域の状態が第1の状態である場合と、前記データ領域の状態が前記第1の状態とは異なる第2の状態である場合とで異なる、
付記1に記載の電子機器。
[付記3]
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第1の起動処理が完了すると、前記第2の起動処理を実行する、
付記1又は付記2に記載の電子機器。
[付記4]
前記少なくとも1つのプロセッサは、一定時間かかる前記第1の起動処理が完了した際に前記第1のパターンの情報の出力が終わるように、前記第1の出力処理を実行する、
付記1から付記3の何れか1つに記載の電子機器。
[付記5]
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第2の出力処理において前記第2の起動処理が完了するまで、前記第2のパターンの情報を前記出力部に繰り返し出力する、
付記1から付記4の何れか1つに記載の電子機器。
[付記6]
前記第1の起動処理は、前記電子機器に対する演奏操作に応じた音を出力可能な状態にするための処理を含む、
付記1から付記5の何れか1つに記載の電子機器。
[付記7]
前記データ領域に、ユーザによる操作に応じて取得されるデータが記憶される、
付記1から付記6の何れか1つに記載の電子機器。
[付記8]
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記データ領域に前記データが記憶されていない場合、前記第2のパターンの情報を前記出力部から出力させない、
付記1から付記7の何れか1つに記載の電子機器。
[付記9]
前記第2の起動処理は、前記データ領域の最適化処理を含む、
付記1から付記8の何れか1つに記載の電子機器。
[付記10]
前記情報は、視覚的情報と聴覚的情報の少なくとも一方を含む、
付記1から付記9の何れか1つに記載の電子機器。
[付記11]
前記出力部は、光を発する発光部を含み、
前記第1の起動処理中と前記第2の起動処理中とで、前記発光部の発光パターンが異なる、
付記1から付記10の何れか1つに記載の電子機器。
[付記12]
操作子を備え、
前記出力部は、画像を表示する表示部を更に含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第1の起動処理の実行中における前記第1の出力処理において、前記表示部に前記操作子に関する画像を表示させるとともに、前記発光部に前記画像に対応する発光パターンで前記操作子を発光させる、
付記11に記載の電子機器。
[付記13]
前記操作子に関する画像は、前記操作子の操作に対応する画像であり、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記表示部に表示された前記画像の表示内容に対応して前記発光部を発光させる、
付記12に記載の電子機器。
[付記14]
前記発光部が複数備えられ、
前記操作子は複数あり、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第2の起動処理の実行中における前記第2の出力処理において、前記複数の操作子のそれぞれに対応する発光部を、所定の順序で発光させる、
付記12又は付記13に記載の電子機器。
[付記15]
複数の鍵を有する電子楽器である、
付記1から付記14の何れか1つに記載の電子機器。
[付記16]
データを記憶可能なデータ領域を有する記憶部と、出力部と、を備えるコンピュータが、
前記データ領域におけるデータの使用状態に関わらず、起動時間が一定の第1の起動処理と、
前記第1の起動処理の実行中に、第1のパターンの情報を前記出力部に出力する第1の出力処理と、
前記データの使用状態によって、起動時間が変動する第2の起動処理と、
前記第2の起動処理が完了するまで、第2のパターンの情報を前記出力部に出力する第2の出力処理と、を実行する、
方法。
[付記17]
データを記憶可能なデータ領域を有する記憶部と、出力部と、を備えるコンピュータが、
前記データ領域におけるデータの使用状態に関わらず、起動時間が一定の第1の起動処理と、
前記第1の起動処理の実行中に、第1のパターンの情報を前記出力部に出力する第1の出力処理と、
前記データの使用状態によって、起動時間が変動する第2の起動処理と、
前記第2の起動処理が完了するまで、第2のパターンの情報を前記出力部に出力する第2の出力処理と、を実行する、
プログラム。
【符号の説明】
【0091】
1 :電子楽器
10 :プロセッサ
11 :RAM
12 :フラッシュROM
12R :メモリ領域
13 :スイッチパネル
13a~13c:操作子
14 :入出力インタフェース
15 :LED
16 :LEDドライバ
17 :鍵盤
18 :キースキャナ
19 :LCD
20 :LCDコントローラ
21 :シリアルインタフェース
22 :波形ROM
23 :音源LSI
24 :D/Aコンバータ
25 :アンプ
26 :スピーカ
100a :第1起動部
100b :第2起動部
100c :出力制御部
120 :制御プログラム