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特開2023-183916バルーンカテーテル用バルーンの製造方法及び金型セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183916
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル用バルーンの製造方法及び金型セット
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20231221BHJP
【FI】
A61M25/10 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097723
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 勇介
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267BB27
4C267FF01
4C267GG03
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG10
(57)【要約】
【課題】得られるバルーンの周方向割れを抑制することが容易なバルーンカテーテル用バルーンの製造方法を提供する。
【解決手段】中央区間33を有しているパリソン30を準備するステップと、スリーブ部A1とスリーブ部A2と直管部とを有しているポスト金型を準備するステップと、スリーブ部B1とスリーブ部B2と金型拡径部40Eとを有しており、金型拡径部40Eが金型第1拡径部41と金型第2拡径部42と縮径部43とを有しているプレ金型40を準備するステップと、中央区間33がプレ金型40の縮径部43に位置するようにパリソン30をプレ金型40の内腔40Lに配置し、少なくとも中央区間33を延伸する第1加熱ステップと、第1加熱ステップの後に、ポスト金型を加熱して拡径部30Eを二軸延伸する第2加熱ステップと、を有しているバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂で構成され長手軸方向に延在し内腔を有しているパリソンであって、スリーブ部P1と、スリーブ部P2と、前記長手軸方向において前記スリーブ部P1と前記スリーブ部P2の間に位置し前記スリーブ部P1の内径以上且つ前記スリーブ部P2の内径以上の内径を有している拡径部とを有しており、前記長手軸方向において、前記拡径部の第1端を0%の位置、第2端を100%の位置としたとき、前記拡径部が40%の位置から60%の位置までの中央区間と、前記中央区間よりも前記第1端側に位置している第1区間と、前記中央区間よりも前記第2端側に位置している第2区間とを有しているパリソンを準備するステップと、
長手軸方向に延在し内腔を有しており、スリーブ部A1と、スリーブ部A2と、前記長手軸方向において前記スリーブ部A1と前記スリーブ部A2の間に位置し前記スリーブ部A1の内径以上且つ前記スリーブ部A2の内径以上の内径を有している直管部とを有しているポスト金型を準備するステップと、
長手軸方向に延在し内腔を有しており、スリーブ部B1と、スリーブ部B2と、前記長手軸方向において前記スリーブ部B1と前記スリーブ部B2の間に位置し前記スリーブ部B1の内径以上且つ前記スリーブ部B2の内径以上の内径を有している金型拡径部とを有しており、前記金型拡径部が、金型第1拡径部と、金型第2拡径部と、前記長手軸方向において前記金型第1拡径部と前記金型第2拡径部の間に前記金型第1拡径部及び前記金型第2拡径部における最大内径よりも小さい最大内径を有する縮径部とを有しているプレ金型を準備するステップと、
前記パリソンを、前記中央区間が前記プレ金型の前記縮径部に位置するように前記プレ金型の内腔に配置し、前記プレ金型を加熱し少なくとも前記中央区間を延伸する第1加熱ステップと、
前記第1加熱ステップの後に、前記パリソンを前記プレ金型の内腔から取り出し、前記拡径部が前記ポスト金型の前記直管部に位置するように前記ポスト金型の内腔に配置し、前記ポスト金型を加熱して前記拡径部を前記長手軸方向及び前記拡径部の径方向に二軸延伸する第2加熱ステップと、を有しているバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項2】
前記第1加熱ステップにおいて、前記プレ金型を前記樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱し、前記第2加熱ステップにおいて、前記ポスト金型を前記樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱する請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項3】
前記第1加熱ステップの終了時に、前記拡径部の前記中央区間の最大外径は前記第1区間の最大外径及び前記第2区間の最大外径よりも小さい請求項1又は2に記載のバルーンカテーテルの製造方法。
【請求項4】
前記第1加熱ステップにおいて、前記拡径部の内圧を0bar以上30bar以下に保持し、前記第2加熱ステップにおいて、前記第1加熱ステップにおける内圧よりも高い内圧を前記拡径部にかける請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項5】
前記第1加熱ステップの開始時から終了時までのいずれかの時点において、前記拡径部の前記中央区間は前記プレ金型の前記縮径部の内壁に当接している請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項6】
前記第1加熱ステップの終了時に、前記拡径部の前記第1区間の少なくとも一部は前記プレ金型の前記金型第1拡径部の内壁に当接しており、前記拡径部の前記第2区間の少なくとも一部は前記プレ金型の前記金型第2拡径部の内壁に当接している請求項5に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項7】
さらに、前記第2加熱ステップの後に、前記拡径部を前記樹脂の結晶化温度Tc以上の温度にする工程を含む請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項8】
バルーンカテーテル用バルーンを製造するための金型セットであって、
長手軸方向に延在し内腔を有しており、スリーブ部A1と、スリーブ部A2と、前記長手軸方向において前記スリーブ部A1と前記スリーブ部A2の間に位置し前記スリーブ部A1の内径以上且つ前記スリーブ部A2の内径以上の内径を有している直管部とを有しているポスト金型と、
長手軸方向に延在し内腔を有しており、スリーブ部B1と、スリーブ部B2と、前記長手軸方向において前記スリーブ部B1と前記スリーブ部B2の間に位置し前記スリーブ部B1の内径以上且つ前記スリーブ部B2の内径以上の内径を有している金型拡径部を有しており、前記金型拡径部は、金型第1拡径部と、金型第2拡径部と、前記長手軸方向において前記金型第1拡径部と前記金型第2拡径部の間に前記金型第1拡径部及び前記金型第2拡径部における最大内径よりも小さい最大内径を有する縮径部とを有しているプレ金型と、を有する金型セット。
【請求項9】
前記プレ金型は、前記長手軸方向において、前記金型第1拡径部から前記縮径部にかけて前記内腔が縮径しているテーパー部T1と、前記縮径部から前記金型第2拡径部にかけて前記内腔が拡径しているテーパー部T2とを有している請求項8に記載の金型セット。
【請求項10】
前記プレ金型は、前記長手軸方向において、前記スリーブ部B1から前記金型第1拡径部にかけて前記内腔が拡径しているテーパー部T3と、前記金型第2拡径部から前記スリーブ部B2にかけて前記内腔が縮径しているテーパー部T4とを有している請求項9に記載の金型セット。
【請求項11】
前記ポスト金型は、前記長手軸方向において、前記スリーブ部A1から前記直管部にかけて前記内腔が拡径しているテーパー部T5と、前記直管部から前記スリーブ部A2にかけて前記内腔が縮径しているテーパー部T6とを有している請求項9又は10に記載の金型セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテル用バルーンの製造方法、及び当該製造方法において用いることのできる金型セットに関する。
【背景技術】
【0002】
血管の狭窄部にバルーンカテーテルを挿入してバルーンを拡張させることにより、血管を拡張して血流を確保する血管形成術は、低侵襲療法として広く行われている。血管形成術は、例えば心臓の冠動脈に狭窄を生じることにより引き起こされる心筋梗塞等の疾病の治療や、透析のためのシャント部に発生した狭窄の治療などにおいて行われる。バルーンカテーテル用に用いられるバルーンは、通常、遠位側と近位側がすぼまった円柱状の形状を有しており、最大径を有する円柱部分により血管の拡張が行われる。
【0003】
バルーンカテーテルにより狭窄部を拡張させる際には、対象とする部位に応じた拡張圧力をバルーンにかけるが、手技中に想定外の内圧がバルーンにかかる等によりバルーンの内圧が過加圧となるとバルーンが破壊してしまうことがあった。このとき、バルーンが周方向に破壊すると、破壊箇所から遠位側のバルーンの断裂片が体内に残存してしまうという重大なリスクが生じるため、仮にバルーンが破壊してしまう場合であってもバルーンの破壊が周方向の割れとならずに長手軸方向の割れとなるような技術が求められる。
【0004】
例えば特許文献1~3には、バルーンを構成する樹脂の分子配向を制御することにより、耐圧性の向上を試みたバルーンが開示されている。これらの文献には、バルーンの製造方法として、パリソンの長手方向延伸に次いで径方向延伸を行う際に長手方向の延伸倍率に対する径方向の延伸倍率を所定以下とする方法、パリソンの軸方向にかかる応力の変化に応じて金型を移動させる方法、及び延伸速度を制御することにより所望の配向を有するバルーンを得る方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献4では、バルーンの膜状本体が非エラストマーを含有する中間層と該中間層の外表面及び内表面に配置されるエラストマーを含有する外層及び内層とを有しており、中間層の平均膜厚をバルーン全体の平均膜厚の30%~70%とすることにより、コンプライアンスが向上し、且つ耐圧性能と通過性能とのバランスが取れたバルーンを得たことが開示されている。このようなバルーンを製造する方法として、共押出により三層のパリソンを成形し、当該パリソンを非エラストマー及びエラストマーの二次転移温度から一次転移温度までの温度で軸方向に延伸し、さらに半径方向に膨張させて二軸延伸した後、パリソンを二次転移温度以下に冷却して収縮させバルーンを成形する工程が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-298354号公報
【特許文献2】特開平9-38195号公報
【特許文献3】国際公開第2014/141382号
【特許文献4】国際公開第2013/145479号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バルーンカテーテルを用いた処置において体内でバルーンが破壊してしまった場合、万が一にもバルーンが周方向の破壊を起こすと、破壊箇所から遠位側のバルーンの破断片が体内に残存してしまうという重大なリスクが生じるところ、上記のような従来のバルーンでは周方向割れを防止する点で改善の余地があった。
【0008】
上記の事情に鑑み本発明は、得られるバルーンの周方向割れを抑制することが容易なバルーンカテーテル用バルーンの製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記バルーンカテーテル用バルーンの製造に用いることのできる金型セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し得た本発明のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法の一実施形態は、以下の通りである。
[1]樹脂で構成され長手軸方向に延在し内腔を有しているパリソンであって、スリーブ部P1と、スリーブ部P2と、前記長手軸方向において前記スリーブ部P1と前記スリーブ部P2の間に位置し前記スリーブ部P1の内径以上且つ前記スリーブ部P2の内径以上の内径を有している拡径部とを有しており、前記長手軸方向において、前記拡径部の第1端を0%の位置、第2端を100%の位置としたとき、前記拡径部が40%の位置から60%の位置までの中央区間と、前記中央区間よりも前記第1端側に位置している第1区間と、前記中央区間よりも前記第2端側に位置している第2区間とを有しているパリソンを準備するステップと、長手軸方向に延在し内腔を有しており、スリーブ部A1と、スリーブ部A2と、前記長手軸方向において前記スリーブ部A1と前記スリーブ部A2の間に位置し前記スリーブ部A1の内径以上且つ前記スリーブ部A2の内径以上の内径を有している直管部とを有しているポスト金型を準備するステップと、長手軸方向に延在し内腔を有しており、スリーブ部B1と、スリーブ部B2と、前記長手軸方向において前記スリーブ部B1と前記スリーブ部B2の間に位置し前記スリーブ部B1の内径以上且つ前記スリーブ部B2の内径以上の内径を有している金型拡径部とを有しており、前記金型拡径部が、金型第1拡径部と、金型第2拡径部と、前記長手軸方向において前記金型第1拡径部と前記金型第2拡径部の間に前記金型第1拡径部及び前記金型第2拡径部における最大内径よりも小さい最大内径を有する縮径部とを有しているプレ金型を準備するステップと、前記パリソンを、前記中央区間が前記プレ金型の前記縮径部に位置するように前記プレ金型の内腔に配置し、前記プレ金型を加熱し少なくとも前記中央区間を延伸する第1加熱ステップと、前記第1加熱ステップの後に、前記パリソンを前記プレ金型の内腔から取り出し、前記拡径部が前記ポスト金型の前記直管部に位置するように前記ポスト金型の内腔に配置し、前記ポスト金型を加熱して前記拡径部を前記長手軸方向及び前記拡径部の径方向に二軸延伸する第2加熱ステップと、を有しているバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【0010】
第1加熱ステップにおいてパリソンの中央区間がプレ金型の縮径部に位置するようにパリソンをプレ金型の内腔を配置して加熱延伸し、第1加熱ステップの後に第2加熱ステップとしてパリソンの拡径部がポスト金型の直管部に位置するようにパリソンをポスト金型の内腔に配置してポスト金型を加熱し拡径部を二軸延伸することにより、第1加熱ステップにおいてパリソンの拡径部のうち中央区間を径方向への延伸を抑制しつつ長手軸方向に延伸し、第2加熱ステップにおいて拡径部全体を二軸延伸することができるため、得られるバルーンが中央区間において長手軸方向の樹脂の分子配向を有するようにバルーンを製造することができる。これにより、バルーンカテーテル用バルーンが過加圧等により破壊してしまう場合であっても、中央区間で長手軸方向割れのきっかけを作ることができ、中央区間で生じた長手軸方向割れにより内圧を逃すことができるため、周方向割れを防止することができる。その結果、バルーンカテーテル用バルーンの破断片が体内に残存してしまうリスクを回避でき、安全な処置が可能なバルーンカテーテル用バルーンを製造することが可能となる。
【0011】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンの製造方法は、以下の[2]~[7]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記第1加熱ステップにおいて、前記プレ金型を前記樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱し、前記第2加熱ステップにおいて、前記ポスト金型を前記樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱する[1]に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[3]前記第1加熱ステップの終了時に、前記拡径部の前記中央区間の最大外径は前記第1区間の最大外径及び前記第2区間の最大外径よりも小さい[1]又は[2]に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[4]前記第1加熱ステップにおいて、前記拡径部の内圧を0bar以上30bar以下に保持し、前記第2加熱ステップにおいて、前記第1加熱ステップにおける内圧よりも高い内圧を前記拡径部にかける[1]~[3]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[5]前記第1加熱ステップの開始時から終了時までのいずれかの時点において、前記拡径部の前記中央区間は前記プレ金型の前記縮径部の内壁に当接している[1]~[4]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[6]前記第1加熱ステップの終了時に、前記拡径部の前記第1区間の少なくとも一部は前記プレ金型の前記金型第1拡径部の内壁に当接しており、前記拡径部の前記第2区間の少なくとも一部は前記プレ金型の前記金型第2拡径部の内壁に当接している[1]~[5]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[7]さらに、前記第2加熱ステップの後に、前記拡径部を前記樹脂の結晶化温度Tc以上の温度にする工程を含む[1]~[6]に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【0012】
本発明はまた、上記課題を解決し得たバルーンカテーテル用バルーンを製造するための方法に用いることのできる金型セットをも提供する。本発明の実施形態に係る金型セットは、以下の通りである。
[8]バルーンカテーテル用バルーンを製造するための金型セットであって、長手軸方向に延在し内腔を有しており、スリーブ部A1と、スリーブ部A2と、前記長手軸方向において前記スリーブ部A1と前記スリーブ部A2の間に位置し前記スリーブ部A1の内径以上且つ前記スリーブ部A2の内径以上の内径を有している直管部とを有しているポスト金型と、長手軸方向に延在し内腔を有しており、スリーブ部B1と、スリーブ部B2と、前記長手軸方向において前記スリーブ部B1と前記スリーブ部B2の間に位置し前記スリーブ部B1の内径以上且つ前記スリーブ部B2の内径以上の内径を有している金型拡径部を有しており、前記金型拡径部は、金型第1拡径部と、金型第2拡径部と、前記長手軸方向において前記金型第1拡径部と前記金型第2拡径部の間に前記金型第1拡径部及び前記金型第2拡径部における最大内径よりも小さい最大内径を有する縮径部とを有しているプレ金型と、を有する金型セット。
【0013】
本発明の実施形態に係る金型セットは、以下の[9]~[11]のいずれかであることが好ましい。
[9]前記プレ金型は、前記長手軸方向において、前記金型第1拡径部から前記縮径部にかけて前記内腔が縮径しているテーパー部T1と、前記縮径部から前記金型第2拡径部にかけて前記内腔が拡径しているテーパー部T2とを有している[8]に記載の金型セット。
[10]前記プレ金型は、前記長手軸方向において、前記スリーブ部B1から前記金型第1拡径部にかけて前記内腔が拡径しているテーパー部T3と、前記金型第2拡径部から前記スリーブ部B2にかけて前記内腔が縮径しているテーパー部T4とを有している[8]又は[9]に記載の金型セット。
[11]前記ポスト金型は、前記長手軸方向において、前記スリーブ部A1から前記直管部にかけて前記内腔が拡径しているテーパー部T5と、前記直管部から前記スリーブ部A2にかけて前記内腔が縮径しているテーパー部T6とを有している[8]~[10]のいずれかに記載の金型セット。
【発明の効果】
【0014】
上記バルーンカテーテル用バルーンの製造方法及び金型セットによれば、第1加熱ステップにおいてプレ金型を用い第2加熱ステップにおいてポスト金型を用いることにより、第1加熱ステップにおいてパリソンの拡径部のうち中央区間を径方向への延伸を抑制しつつ長手軸方向に延伸し、第2加熱ステップにおいて拡径部全体を二軸延伸することができるため、得られるバルーンが中央区間において長手軸方向の分子配向を有するようにバルーンを製造することができる。これにより、バルーンカテーテル用バルーンが過加圧等により破壊してしまう場合であっても、中央区間で長手軸方向割れのきっかけを作ることができ、中央区間で生じた長手軸方向割れにより内圧を逃すことができるため、周方向割れを防止することができる。その結果、バルーンカテーテル用バルーンの破断片が体内に残存してしまうリスクを回避でき、安全な処置が可能なバルーンカテーテル用バルーンを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るバルーンカテーテルの平面図を表す。
図2】本発明の実施形態に係るパリソンの長手軸方向の断面図を表す。
図3】本発明の実施形態に係るプレ金型の長手軸方向の断面図を表す。
図4】本発明の実施形態において、パリソンをプレ金型の内腔に配置したときのパリソンとプレ金型の長手軸方向の断面図を表す。
図5】本発明の実施形態において、パリソンをプレ金型の内腔に配置したときのパリソンとプレ金型の長手軸方向の断面図の別の例を表す。
図6】本発明の実施形態において、第1加熱ステップが終了したときのパリソンとプレ金型の長手軸方向の断面図を表す。
図7】本発明の実施形態に係るポスト金型の長手軸方向の断面図を表す。
図8】本発明の実施形態において、第1加熱ステップ後にパリソンをポスト金型の内腔に配置したときのパリソンとポスト金型の長手軸方向の断面図を表す。
図9】本発明の実施形態において、第2加熱ステップが終了したときのパリソンとポスト金型の長手軸方向の断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0017】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンの製造方法は、樹脂で構成され長手軸方向に延在し内腔を有しているパリソンであって、スリーブ部P1と、スリーブ部P2と、長手軸方向においてスリーブ部P1とスリーブ部P2の間に位置しスリーブ部P1の内径以上且つスリーブ部P2の内径以上の内径を有している拡径部とを有しており、長手軸方向において、拡径部の第1端を0%の位置、第2端を100%の位置としたとき、拡径部が40%の位置から60%の位置までの中央区間と、中央区間よりも第1端側に位置している第1区間と、中央区間よりも第2端側に位置している第2区間とを有しているパリソンを準備するステップと、長手軸方向に延在し内腔を有しており、スリーブ部A1と、スリーブ部A2と、長手軸方向においてスリーブ部A1とスリーブ部A2の間に位置しスリーブ部A1の内径以上且つスリーブ部A2の内径以上の内径を有している直管部とを有しているポスト金型を準備するステップと、長手軸方向に延在し内腔を有しており、スリーブ部B1と、スリーブ部B2と、長手軸方向においてスリーブ部B1とスリーブ部B2の間に位置しスリーブ部B1の内径以上且つスリーブ部B2の内径以上の内径を有している金型拡径部とを有しており、金型拡径部が、金型第1拡径部と、金型第2拡径部と、長手軸方向において金型第1拡径部と金型第2拡径部の間に金型第1拡径部及び金型第2拡径部における最大内径よりも小さい最大内径を有する縮径部とを有しているプレ金型を準備するステップと、パリソンを、中央区間がプレ金型の縮径部に位置するようにプレ金型の内腔に配置し、プレ金型を加熱し少なくとも中央区間を延伸する第1加熱ステップと、第1加熱ステップの後に、パリソンをプレ金型の内腔から取り出し、拡径部がポスト金型の直管部に位置するようにポスト金型の内腔に配置し、ポスト金型を加熱して拡径部を長手軸方向及び拡径部の径方向に二軸延伸する第2加熱ステップと、を有している。
【0018】
プレ金型が、金型第1拡径部と、金型第2拡径部と、長手軸方向において金型第1拡径部と金型第2拡径部の間に縮径部とを有しているため、第1加熱ステップにおいてパリソンの中央区間がプレ金型の縮径部に位置するようにパリソンをプレ金型の内腔に配置してプレ金型を加熱することにより、第1加熱ステップにおいてパリソンの拡径部のうち中央区間の径方向への延伸を抑制することができる。これにより、第1加熱ステップにおいてパリソンの中央区間を径方向への延伸を抑制しつつ長手軸方向に延伸することができる。この状態のパリソンを第2加熱ステップにおいてポスト金型の内腔に配置して加熱することにより拡径部全体を二軸延伸することができる。このような第1加熱ステップ及び第2加熱ステップを経ることにより、得られるバルーンが中央区間において長手軸方向の樹脂の分子配向を有するようにバルーンを製造することができる。その結果、バルーンカテーテル用バルーンが過加圧等により破壊してしまう場合であっても、中央区間で長手軸方向割れのきっかけを作ることができ、中央区間で生じた長手軸方向割れにより内圧を逃すことができるため、周方向割れを防止することが可能となる。
【0019】
以下、図1図9を参照しつつ本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンの製造方法について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテルの平面図を表す。図2は、本発明の実施形態に係るパリソンの長手軸方向の断面図を表す。図3は、本発明の実施形態に係るプレ金型の長手軸方向の断面図を表す。図4は、本発明の実施形態において、第1加熱ステップの開始前にパリソンをプレ金型の内腔に配置したときのパリソンとプレ金型の長手軸方向の断面図を表す。図5は、本発明の実施形態において、第1加熱ステップの開始前にパリソンをプレ金型の内腔に配置したときのパリソンとプレ金型の長手軸方向の断面図の別の例を表す。図6は、本発明の実施形態において、第1加熱ステップが終了したときのパリソンとプレ金型の長手軸方向の断面図を表す。図7は、本発明の実施形態に係るポスト金型の長手軸方向の断面図を表す。図8は、本発明の実施形態において、第1加熱ステップ後であって第2加熱ステップの開始時にパリソンをポスト金型の内腔に配置したときのパリソンとポスト金型の長手軸方向の断面図を表す。図9は、本発明の実施形態において、第2加熱ステップが終了したときのパリソンとポスト金型の長手軸方向の断面図を表す。
【0020】
本明細書において、バルーンカテーテル用バルーンを単に「バルーン」と称することがある。また、バルーンカテーテル用バルーン20、パリソン30、プレ金型40、及びポスト金型50は、それぞれの長手軸方向、径方向、及び周方向を有するが、本明細書においては、理解のし易さのために、全ての部材が図1に示すバルーンカテーテル用バルーン20の長手軸方向x、径方向y、及び周方向zと同じ長手軸方向、径方向、及び周方向を有しているとして説明する。ただし、これは全ての部材が必ず同じ方向に配置されていることを意味するものではなく、各部材の長手軸方向、径方向、及び周方向は互いに異なっていてもよい。バルーン20の周方向zは、長手軸方向xに垂直な断面において拡張状態のバルーン20の外周に沿う方向であり、バルーン20の径方向yは、長手軸方向xに垂直な断面において拡張状態のバルーン20の外縁の図心とバルーン20の外縁上の点とを結ぶ方向である。長手軸方向xにおいて、バルーンカテーテル1の使用者の手元側の方向を近位側、近位側とは反対側、即ち処置対象者側を遠位側と称する。
【0021】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンの製造方法は、図1に示すようなバルーンカテーテル1に用いられるバルーン20を製造するための方法である。バルーン20はシャフト3の遠位側に接続され、シャフト3の内腔を通じて流体を導入することによりバルーン20を拡張させ、流体を排出することによりバルーン20を収縮させることができる。流体は、インデフレーター(バルーン用加圧器)を用いて導入又は排出され、バルーン20の拡張と収縮を制御することができる。流体は、ポンプ等により加圧された加圧流体であってもよい。
【0022】
樹脂で構成されたパリソン30を延伸してバルーン20を製造することにより、バルーン20は分子配向を有する樹脂からなる構成を有することができる。バルーン20は、拡張部22と、拡張部22よりも近位側に位置している近位側スリーブ部21と、拡張部22よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部23とを有していることが好ましい。拡張部22が流体の導入により拡張する部分であるのに対し、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部23は拡張しないことが好ましく、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部23の少なくとも一部をシャフト3と固定することにより、バルーン20をシャフト3と接続することができる。
【0023】
バルーン20を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂;ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂;ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂;フッ素系樹脂;シリコーン系樹脂;ラテックスゴム等の天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が好ましく、ナイロン12、ナイロン11等のポリアミド系樹脂がより好ましく、ナイロン12が特に好ましい。バルーン20の薄膜化や柔軟性の観点からは、エラストマー樹脂を用いることが好ましく、ポリアミドエーテルエラストマー等のポリアミドエラストマーが好適に用いられる。
【0024】
バルーン20の外径は、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましい。バルーン20の外径の下限が上記範囲であることにより、血管内の狭窄部を十分に拡張することができる。また、バルーン20の外径は、35mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがさらに好ましい。バルーン20の外径の上限が上記範囲であることにより、バルーン20の体腔内への挿入が容易になる。
【0025】
バルーン20の長手軸方向xの長さは、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることがさらに好ましい。バルーン20の長手軸方向xの長さの下限が上記範囲であることにより、一度に拡張できる狭窄部の面積を大きくして手技にかかる時間を短縮することが可能である。また、バルーン20の長手軸方向xの長さは、300mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましく、100mm以下であることがさらに好ましい。バルーン20の長手軸方向xの長さの上限が上記範囲であることにより、狭窄部の拡張のためにバルーン20の内部に導入する流体の容量を減らし、バルーン20を十分に拡張させるために必要な時間を短縮することができる。
【0026】
バルーン20の厚みは、5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましく、また、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。バルーン20の厚みが上記範囲であることにより、バルーン20の強度と柔軟性のバランスを図ることができる。
【0027】
シャフト3を構成する材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、シャフト3を構成する材料は、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びフッ素系樹脂の少なくとも1つであることが好ましい。これにより、シャフト3の表面の滑り性を高め、バルーンカテーテル1の体腔内での挿通性を向上できる。
【0028】
バルーン20とシャフト3との接合は、接着剤による接着、溶着、バルーン20の端部とシャフト3とが重なっている箇所にリング状部材を取り付けてかしめること等が挙げられる。中でも、バルーン20とシャフト3とは、溶着により接合されていることが好ましい。バルーン20とシャフト3とが溶着されていることにより、バルーン20を繰り返し拡張又は収縮させてもバルーン20とシャフト3との接合が解除されにくく、バルーン20とシャフト3との接合強度を容易に高めることができる。
【0029】
図1に示すように、バルーンカテーテル1において、シャフト3の近位側にはハブ4が設けられていてもよく、ハブ4にはバルーン20の内部に供給される流体の流路と連通した流体注入部6が設けられていることが好ましい。また、ハブ4には、ガイドワイヤの挿通路と連通したガイドワイヤ挿入部5が設けられていてもよい。このような構成により、バルーン20の内部に流体を供給してバルーン20を拡張又は収縮させる操作や、ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテル1を治療部位まで送達する操作を容易に行うことができる。図1にはガイドワイヤがシャフト3の遠位側から近位側にわたって挿通される所謂オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテル1を示したが、バルーン20はシャフト3の遠位側から近位側に至る途中までガイドワイヤを挿通する所謂ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルにも適用できる。
【0030】
シャフト3とハブ4との接合は、例えば、接着剤による接着、溶着等が挙げられる。中でも、シャフト3とハブ4とは、接着により接合されていることが好ましい。シャフト3とハブ4とが接着されていることにより、例えば、シャフト3は柔軟性の高い材料から構成され、ハブ4は剛性の高い材料から構成されている等、シャフト3を構成する材料とハブ4を構成する材料とが異なっている場合に、シャフト3とハブ4との接合強度を高めてバルーンカテーテル1の耐久性を向上できる。
【0031】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーン20の製造方法は、樹脂で構成され長手軸方向xに延在し内腔30Lを有しているパリソン30を準備するステップを有する。パリソン30の内部を加圧して内腔30Lを拡張させることによりバルーン20を製造することができる。パリソン30を構成する樹脂については、上記バルーン20を構成する材料の項を参照できる。パリソン30は、押出成形や射出成形等の公知の方法で作製できるが、押出成形で作製されることが好ましい。
【0032】
図2に示すように、パリソン30は、スリーブ部P1と、スリーブ部P2と、長手軸方向xにおいてスリーブ部P1とスリーブ部P2の間に位置しスリーブ部P1の内径以上且つスリーブ部P2の内径以上の内径を有している拡径部30Eを有している。パリソン30の拡径部30Eは、パリソン30からバルーン20を作製した際にバルーン20の拡張部22になる部分である。パリソン30のスリーブ部P1とスリーブ部P2は、パリソン30からバルーン20を作製した際にバルーン20の近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部23になる部分を含む。スリーブ部P1とスリーブ部P2において、パリソン30の内径は長手軸方向xに沿って同じであっても異なっていてもよいが、実質的に同じであることが好ましい。また、スリーブ部P1の内径とスリーブ部P2の内径は同じであっても異なっていてもよいが、実質的に同じであることが好ましい。これによりパリソン30の作製が容易になる。ここで、「実質的に同じ」とは、内径の変化率([最大内径-最小内径]/平均内径)が0.2以下であることを意味する。内径の変化率は、0.18以下、0.15以下、0.1以下、0.08以下、0.05以下、0.02以下であってもよく、0であってもよい。以降、パリソン30や金型の内径が「実質的に同じ」というときは、内径の変化率が上記範囲であることを意味する。外径が実質的に同じ、という場合についても、外径の変化率が上記範囲であることを意味する。
【0033】
拡径部30Eの最大内径は、スリーブ部P1の最大内径及びスリーブ部P2の最大内径よりも大きいことが好ましい。ここで、拡径部30Eの最大内径とは、長手軸方向xにおいて拡径部30Eが最大の内径を有している部分における内径のことである。同様に、スリーブ部P1の最大内径及びスリーブ部P2の最大内径とは、長手軸方向xにおいてスリーブ部P1及びスリーブ部P2がそれぞれ最大の内径を有している部分におけるそれぞれの内径のことである。以降、所定部材又は所定区間の最大内径というとき、最大内径は長手軸方向xにおいて所定部材又は所定区間が最大の内径を有している部分における内径のことであるという同様の説明が適用できるものとする。
【0034】
パリソン30の拡径部30Eは、長手軸方向xにおいて、拡径部30Eの第1端を0%の位置D、第2端を100%の位置D100としたとき、40%の位置D40から60%の位置D60までの中央区間33と、中央区間33よりも第1端側に位置している第1区間31と、中央区間33よりも第2端側に位置している第2区間32とを有している。第1区間31、第2区間32、及び中央区間33は、パリソン30が押出成形や射出成形等の公知の方法で作製された後、第1加熱ステップに供される前の初期状態における長手軸方向xの位置により決定される。この初期状態におけるパリソン30の中央区間33が後述するプレ金型40の縮径部43に位置するようにパリソン30をプレ金型40の内腔40Eに配置する第1加熱ステップを有することが本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーン20の製造方法の特徴の一つである。
【0035】
後段に詳述する第1加熱ステップや第2加熱ステップにおいてパリソン30を延伸すると、長手軸方向xにおける延伸量の違いにより、延伸前の中央区間33と延伸後の中央区間とは厳密には異なることがある。この場合は、それぞれの時点でのパリソン30の拡径部30Eの第1端を0%の位置D、第2端を100%の位置D100として、40%の位置D40から60%の位置D60までの区間を中央区間33、中央区間33よりも第1端側に位置している区間を第1区間31、中央区間33よりも第2端側に位置している区間を第2区間32とする。
【0036】
図3に示すように、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーン20の製造方法は、長手軸方向xに延在し内腔40Lを有しており、スリーブ部B1と、スリーブ部B2と、長手軸方向xにおいてスリーブ部B1とスリーブ部B2の間に位置しスリーブ部B1の内径以上且つスリーブ部B2の内径以上の内径を有している金型拡径部40Eを有しており、金型拡径部40Eが、金型第1拡径部41と、金型第2拡径部42と、長手軸方向xにおいて金型第1拡径部41と金型第2拡径部42の間に金型第1拡径部41及び金型第2拡径部42における最大内径よりも小さい最大内径を有する縮径部43とを有しているプレ金型40を準備するステップを有する。
【0037】
スリーブ部B1とスリーブ部B2において、プレ金型40の内径は長手軸方向xに沿って同じであっても異なっていてもよいが、実質的に同じであることが好ましい。また、スリーブ部B1の内径とスリーブ部B2の内径は同じであっても異なっていてもよい。金型拡径部40Eの内径は、スリーブ部B1の内径以上であり且つスリーブ部B2の内径以上であることが好ましい。金型第1拡径部41の内径と金型第2拡径部42の内径は同じであっても異なっていてもよいが、製造するバルーン20の拡張部22が長手軸方向xに実質的に同じ外径を有する筒状のバルーン20としたい場合には、金型第1拡径部41の内径と金型第2拡径部42の内径は実質的に同じであることが好ましい。長手軸方向xにおいて金型第1拡径部41と金型第2拡径部42の間に配される縮径部43の内径は長手軸方向xに沿って同じであっても異なっていてもよいが、実質的に同じであることが好ましく、縮径部43の最大内径は、金型第1拡径部41の最大内径よりも小さく且つ金型第2拡径部42の最大内径よりも小さい。縮径部43の内径は、スリーブ部B1の内径及びスリーブ部B2の内径より大きいことが好ましい。
【0038】
プレ金型40において、金型拡径部40Eの長手軸方向xの長さは、製造するバルーン20の拡張部22の長手軸方向xの長さに応じて決めることができる。また、金型拡径部40Eの内径は、製造するバルーン20の拡張部22の外径に応じて決めることができる。
【0039】
図4及び図5に示すように、第1加熱ステップでは、パリソン30を、パリソン30の中央区間33がプレ金型40の縮径部43に位置するようにプレ金型40の内腔40Lに配置し、プレ金型40を加熱してパリソン30の少なくとも中央区間33を長手軸方向xに延伸する。このとき、図4に示すように、第1加熱ステップの開始時おいてパリソン30の中央区間33の外壁とプレ金型40の縮径部43の内壁が当接しており、中央区間33が径方向yに延伸される余地がないような内径を縮径部43が有していてもよい。或いは、図5に示すように、第1加熱ステップの開始時においてはパリソン30の中央区間33の外壁とプレ金型40の縮径部43の内壁は当接しておらず、中央区間33が径方向yに若干延伸される程度の内径を縮径部43が有していてもよい。いずれの場合であっても、中央区間33はプレ金型40の縮径部43に位置するように配置され、縮径部43の内径は金型第1拡径部41の内径及び金型第2拡径部42の内径よりも小さいため、中央区間33は金型第1拡径部41及び金型第2拡径部42の内腔に配置される部分よりも径方向yへの延伸を抑えられつつ長手軸方向xに延伸されることができる。
【0040】
縮径部43の最大内径は、金型第1拡径部41の最大内径の95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましく、70%以下、60%以下であることも許容される。また、縮径部43の最大内径は、金型第2拡径部42の最大内径の95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましく、70%以下、60%以下であることも許容される。金型第1拡径部41の最大内径及び金型第2拡径部42の最大内径に対する縮径部43の最大内径の割合の上限が上記範囲であることにより、第1加熱ステップにおいて、パリソン30の中央区間33を径方向yへの延伸を抑えつつ長手軸方向xに延伸できる一方、パリソン30の中央区間33以外の部分は径方向yへの延伸が可能とすることができる。
【0041】
縮径部43の最大内径は、金型第1拡径部41の最大内径の30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。また、縮径部43の最大内径は、金型第2拡径部42の最大内径の30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。金型第1拡径部41の最大内径及び金型第2拡径部42の最大内径に対する縮径部43の最大内径の割合の下限が上記範囲であることにより、第1加熱ステップの後の第2加熱ステップにおいて中央区間33を径方向yへ延伸して最終的にバルーン20を得ることが容易になる。
【0042】
プレ金型40の加熱は、プレ金型40の外側に配置されたヒーターにより加熱する方法、プレ金型40自体を誘導加熱により加熱する方法等、公知の方法で行うことができる。第1加熱ステップによる長手軸方向xへの延伸は、例えば、加熱しつつ、パリソン30のスリーブ部P1とスリーブ部P2を長手軸方向xにおいて互いに離れるように引くことにより行うことができる。このとき、パリソン30の内部は加圧されてもよいし加圧されなくてもよいが、第2加熱ステップにおける延伸を容易にするためには第1加熱ステップにおいてパリソン30の内部が加圧されることが好ましい。
【0043】
プレ金型40のスリーブ部B1及びスリーブ部B2の内腔には、パリソン30のスリーブ部P1及びスリーブ部P2がそれぞれ配置されることが好ましい。これにより、パリソン30のスリーブ部P1及びスリーブ部P2をバルーン20の近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部23に形成することが容易になる。金型第1拡径部41及び金型第2拡径部42の内腔には、パリソン30の拡径部30Eの第1区間31の少なくとも一部及び第2区間32の少なくとも一部がそれぞれ配置されることが好ましい。これにより、第1区間31及び第2区間32が径方向yへ延伸される空間を確保することができるため、第1加熱ステップが終了した時点において、第1区間31及び第2区間32の径方向yへの延伸が比較的大きく、中央区間33の径方向yへの延伸が抑えられた状態にパリソン30を形成することが可能になる。
【0044】
図6に示すように、第1加熱ステップが終了した時点において、パリソン30の拡径部30Eはプレ金型40の内腔40Lに沿うように二軸延伸されていることが好ましい。
【0045】
図7に示すように、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーン20の製造方法は、長手軸方向xに延在し内腔50Lを有しており、スリーブ部A1と、スリーブ部A2と、長手軸方向xにおいてスリーブ部A1とスリーブ部A2の間に位置しスリーブ部A1の内径以上且つスリーブ部A2の内径以上の内径を有している直管部51とを有しているポスト金型50を準備するステップを有する。
【0046】
スリーブ部A1とスリーブ部A2において、ポスト金型50の内径は長手軸方向xに沿って同じであっても異なっていてもよいが、実質的に同じであることが好ましい。また、スリーブ部A1の内径とスリーブ部A2の内径は同じであっても異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。例えば、スリーブ部A1の内径の方がスリーブ部A2の内径よりも大きい場合、スリーブ部A1によりバルーン20の近位側スリーブ部21が形成されスリーブ部A2によりバルーン20の遠位側スリーブ部23が形成されるようにすることで、バルーン20の近位側スリーブ部21の径を大きくしてシャフト3と固定し易くし、遠位側スリーブ部23の径を小さくしてバルーン20の遠位端を閉じ易くすることが可能になる。直管部51の内径は、スリーブ部A1の内径以上であり且つスリーブ部A2の内径以上であることが好ましい。直管部51の内径は長手軸方向xに沿って同じであっても異なっていてもよいが、製造するバルーン20の拡張部22が長手軸方向xに実質的に同じ外径を有する筒状のバルーン20としたい場合には、直管部51の内径は長手軸方向xに沿って実質的に同じであることが好ましい。
【0047】
ポスト金型50において、直管部51の長手軸方向xの長さは、製造するバルーン20の拡張部22の長手軸方向xの長さに応じて決めることができる。また、直管部51の内径は、製造するバルーン20の拡張部22の外径に応じて決めることができる。
【0048】
図8に示すように、第2加熱ステップでは、第1加熱ステップの後に、パリソン30をプレ金型40の内腔40Lから取り出し、拡径部30Eがポスト金型50の直管部51に位置するようにパリソン30をポスト金型50の内腔50Lに配置し、ポスト金型50を加熱して拡径部30Eを長手軸方向x及び径方向yに二軸延伸する。これにより、図9に示すように、パリソン30はポスト金型50の内腔50Lに沿った形状に成形されることができ、バルーン20を作製することができる。
【0049】
ポスト金型50の直管部51の最大内径は、プレ金型40の金型第1拡径部41の最大内径の105%以上が好ましく、110%以上がより好ましく、115%以上がさらに好ましく、また、150%以下が好ましく、140%以下がより好ましく、130%以下がさらに好ましい。また、ポスト金型50の直管部51の最大内径は、プレ金型40の金型第2拡径部42の最大内径の105%以上が好ましく、110%以上がより好ましく、115%以上がさらに好ましく、また、150%以下が好ましく、140%以下がより好ましく、130%以下がさらに好ましい。プレ金型40の金型拡径部40Eの最大内径に対するポスト金型50の直管部51の最大内径の割合が上記範囲であることにより、第2加熱ステップにおいてパリソン30を二軸延伸することが容易になる。
【0050】
上記第1加熱ステップ及び第2加熱ステップを経て得られたバルーン20は、第1加熱ステップにおいて径方向yへの延伸を抑えつつ長手軸方向xに延伸された中央区間33を第2加熱ステップにおいて長手軸方向x及び径方向yに二軸延伸することにより、拡張部22の中央区間における樹脂が強い長手軸方向xの分子配向を有することができる。これは、第1加熱ステップにおいて中央区間33を径方向yへの延伸を抑えつつ長手軸方向xに延伸することにより、中央区間33において樹脂の分子鎖が長手軸方向xに伸びて配列するためであると考えられる。
【0051】
これに対し、パリソン30の第1区間31及び第2区間32は中央区間33に比べて樹脂の長手軸方向xの分子配向が弱い構成であってもよい。これにより、得られたバルーン20の拡張部22は、スリーブ部に近い端部よりも中央区間において樹脂の長手軸方向xの分子配向が強い構成に製造できる。また、パリソン30の中央区間33は、第1加熱ステップにおいて長手軸方向xに延伸された後、第2加熱ステップにおいてさらに長手軸方向x及び径方向yに延伸されるため、得られるバルーン20を端部よりも中央区間において膜厚が薄い構成とすることができる。その結果、バルーン20が過加圧等により破壊してしまう場合であっても、中央区間で長手軸方向xの割れのきっかけを作ることができ、中央区間で生じた長手軸方向xの割れにより内圧を逃すことができるため、周方向zの割れを防止することが可能になる。
【0052】
ポスト金型50の加熱は、ポスト金型50の外側に配置されたヒーターにより加熱する方法、ポスト金型50自体を誘導加熱により加熱する方法等、公知の方法で行うことができる。第2加熱ステップによる長手軸方向x及び径方向yへの二軸延伸は、加熱しつつパリソン30の内部を加圧することにより行うことができる。パリソン30の内部を加圧する方法としては、例えば、空気、窒素ガス等の気体や、純水、生理食塩水等の液体といった流体をパリソン30の内腔30Lに供給すること等が挙げられる。流体を加圧するには、例えば、ポンプ等を用いることができる。パリソン30の内部の加圧では、中でも、圧縮された気体を用いることが好ましい。つまり、第2加熱ステップにおいてパリソン30がブロー成形されることによりバルーン20が製造されることが好ましい。パリソン30に圧縮した気体を送り込んで内部を加圧してバルーン20を製造できるため、バルーン20の製造効率を高めることができる。
【0053】
ポスト金型50のスリーブ部A1及びスリーブ部A2の内腔には、パリソン30のスリーブ部P1及びスリーブ部P2がそれぞれ配置されることが好ましい。これにより、パリソン30のスリーブ部P1及びスリーブ部P2をバルーン20の近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部23に形成することが容易になる。
【0054】
図9に示すように、第2加熱ステップが終了した時点において、パリソン30の拡径部30Eはポスト金型50の内腔50Lに沿うように二軸延伸されていることが好ましい。これにより、ポスト金型50の内腔50Lの形状により得られるバルーン20の形状をデザインすることが容易になる。
【0055】
第1加熱ステップにおいて、パリソン30を構成する樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度でプレ金型40を加熱し、第2加熱ステップにおいて、パリソン30を構成する樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度でポスト金型50を加熱することが好ましい。
【0056】
第1加熱ステップにおいて、プレ金型40を加熱する温度は、パリソン30を構成する樹脂のガラス転移温度Tg+25℃以下がより好ましく、ガラス転移温度Tg+20℃以下がさらに好ましく、ガラス転移温度Tg+10℃以下であってもよい。第1加熱ステップにおいてプレ金型40を上記範囲の温度で加熱することによりパリソン30の中央区間33を長手軸方向xに延伸し易くしつつ、プレ金型40の内腔40Lの形状により中央区間33の径方向yへの延伸を抑えることができる。
【0057】
第2加熱ステップにおいて、ポスト金型50を加熱する温度は、パリソン30を構成する樹脂のガラス転移温度Tg+25℃以下がより好ましく、ガラス転移温度Tg+20℃以下がさらに好ましく、ガラス転移温度Tg+10℃以下の温度であってもよい。第2加熱ステップにおいてポスト金型50を上記範囲の温度で加熱することにより、パリソン30の拡径部30Eを二軸延伸し易くできる。
【0058】
上述のように、第1加熱ステップ及び第2加熱ステップにおいてプレ金型40及びポスト金型50をそれぞれ樹脂のガラス転移温度Tg以上の上記範囲の温度で加熱しても、プレ金型40とポスト金型50はそれぞれ所定の形状を有する内腔を有していることから、第1加熱ステップにおいてパリソン30の中央区間33を径方向yへの延伸を抑えつつ長手軸方向xに延伸できる。その結果、第2加熱ステップ終了時におけるパリソン30の拡径部30Eの樹脂の分子配向が長手軸方向xに沿って異なるように成形することが可能であり、拡径部30Eの中央区間33が強い長手軸方向xの配向を有する構成とすることができる。
【0059】
なお、ガラス転移温度TgはJIS K7121に準拠して測定し、示差走査熱量計を使用して樹脂サンプル5mgを0℃~250℃の温度範囲において昇温速度20℃/分で昇温し、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度Tgとすることができる。
【0060】
例えば、パリソン30を構成する樹脂としてポリアミド系樹脂を使用する場合は、ガラス転移温度Tgは40℃~60℃である。パリソン30を構成する樹脂として他の樹脂を使用する場合は、上記温度に限定されず、上記方法に従ってガラス転移温度Tgを求めることができる。
【0061】
第1加熱ステップにおいて、パリソン30の拡径部30Eの内圧を0bar(0MPa)以上30bar(3MPa)以下に保持し、第2加熱ステップにおいて、第1加熱ステップにおける内圧よりも高い内圧をパリソン30の拡径部30Eにかけることが好ましい。なお、内圧は絶対圧ではなく、ゲージ圧、即ち大気圧にプラスされる圧力である。
【0062】
第1加熱ステップにおいて、パリソン30の拡径部30Eにかける内圧は、2bar(0.2MPa)以上がより好ましく、5bar(0.5MPa)以上がさらに好ましく、7bar(0.7MPa)以上、10bar(1MPa)以上であってもよい。第1加熱ステップにおいて拡径部30Eにかける内圧の下限が上記範囲であることにより、第1加熱ステップでパリソン30の拡径部30Eがある程度径方向yにも延伸され、第2加熱ステップにおける二軸延伸が容易に行えるようになる。また、第1加熱ステップにおいて、パリソン30の拡径部30Eにかける内圧は、25bar(2.5MPa)以下がより好ましく、20bar(2MPa)以下がさらに好ましく、15bar以下(1.5MPa)であってもよい。第1加熱ステップにおいては、拡径部30Eにかける内圧の上限が上記範囲であっても、プレ金型40の内腔40Lが所定の形状を有していることから、中央区間33の径方向yへの延伸を抑えつつ拡径部30Eを二軸延伸することができる。
【0063】
第2加熱ステップにおいて、パリソン30の拡径部30Eにかける内圧は、10bar(1MPa)以上が好ましく、15bar(1.5MPa)以上がより好ましく、30bar(3Mpa)以上がさらに好ましく、また、60bar(6MPa)以下が好ましく、50bar(5MPa)以下がより好ましく、40bar(4MPa)以下がさらに好ましい。第2加熱ステップにおいてパリソン30の拡径部30Eに第1加熱ステップにおける内圧よりも大きい上記範囲の内圧をかけることにより、第1加熱ステップにおいては径方向yへの延伸が抑えられていたパリソン30の中央区間33の内腔も含め、拡径部30Eを二軸延伸させてバルーン20を得ることが容易になる。
【0064】
図6及び図8に示すように、第1加熱ステップの終了時に、パリソン30の拡径部30Eの中央区間33の最大外径は、第1区間31の最大外径及び第2区間32の最大外径よりも小さいことが好ましい。ここで、中央区間33の最大外径とは、長手軸方向xにおいて中央区間33が最大の外径を有している部分における外径のことである。以降、所定部材又は所定区間の最大外径というとき、最大外径は長手軸方向xにおいて所定部材又は所定区間が最大の外径を有している部分における外径のことである。
【0065】
第1加熱ステップ終了時の中央区間33の最大外径は、プレ金型40の内腔40Lが所定の形状を有することにより中央区間33の径方向yへの延伸が抑制されるため小さく抑えられるが、第1区間31と第2区間32は中央区間33よりも径方向yへ延伸されることが可能なため、中央区間33よりも大きな最大外径を有することができる。これにより、第1区間31及び第2区間32と、中央区間33とで、樹脂の配向が異なるように形成されることができ、得られたバルーン20が中央区間において長手軸方向xの配向を有するようにバルーン20を製造することができる。
【0066】
第1加熱ステップの終了時に、中央区間33における膜厚は、第1区間31における膜厚及び第2区間32における膜厚と実質的に同じであることが好ましい。第1加熱ステップでは、中央区間33は径方向yへの延伸を抑えられつつ長手軸方向xに延伸され、第1区間31及び第2区間32は径方向yに延伸されてもよいことから、第1加熱ステップの終了時においては中央区間33、第1区間31、及び第2区間における膜厚が実質的に同じになるようにパリソン30を延伸することができる。このような拡径部30Eが第2加熱ステップにおいて二軸延伸されることにより、すでに第1加熱ステップにおいて長手軸方向xに延伸されていた中央区間33がさらに二軸延伸され、中央区間33の膜厚が第1区間31における膜厚及び第2区間32における膜厚よりも薄い構成とすることができる。
【0067】
図4図6に示すように、第1加熱ステップの開始時から終了時までのいずれかの時点において、拡径部30Eの中央区間33はプレ金型40の縮径部43の内壁に当接していることが好ましい。図4に示すように、第1加熱ステップの開始時に中央区間33が縮径部43の内壁に当接していてもよい。これにより、中央区間33の径方向yへの延伸を抑えて長手軸方向xに延伸することがより容易になる。或いは、図5に示すように、第1加熱ステップの開始時においては中央区間33は縮径部43の内壁に当接しておらず、第1加熱ステップの終了時までのいずれかの時点において中央区間33が縮径部43の内壁に当接してもよい。このような場合であっても、縮径部43が所定以下の内径を有しているため、中央区間33の径方向yへの延伸を抑えて長手軸方向xに延伸することができる。
【0068】
図6に示すように、第1加熱ステップの終了時に、拡径部30Eの中央区間33はプレ金型40の縮径部43の内壁に当接していることが好ましい。これにより、第1加熱ステップ終了時の中央区間33の外径をプレ金型40の縮径部43の内径とすることができ、プレ金型40の縮径部43の内径により第1加熱ステップ終了時の中央区間33の径方向yへの延伸の最大倍率を決定することができる。これにより、中央区間33を径方向yへの延伸を抑えつつ長手軸方向xに延伸することが容易になる。
【0069】
上記に加えてさらに、第1加熱ステップの終了時に、拡径部30Eの第1区間31の少なくとも一部はプレ金型40の金型第1拡径部41の内壁に当接しており、拡径部30Eの第2区間32の少なくとも一部はプレ金型40の金型第2拡径部42の内壁に当接していることが好ましい。これにより、第1加熱ステップ終了時の中央区間33の外径、第1区間31の最大外径、及び第2区間32の最大外径をプレ金型40の内腔40Lの形状により決めることができ、第1加熱ステップ終了時に中央区間33の径方向yへの延伸を抑えつつ、第1区間31の少なくとも一部及び第2区間32の少なくとも一部の径方向yへの延伸倍率を中央区間33の径方向yへの延伸倍率よりも大きくすることができる。これにより、中央区間33と、第1区間31及び第2区間32における延伸状態が異なるパリソン30を第1加熱ステップ終了時に得ることができ、このようなパリソン30を第2加熱ステップにおいて二軸延伸することにより、中央区間が長手軸方向xの配向を有するバルーン20を得ることが容易になる。
【0070】
このとき、第1区間31及び第2区間32の全体が、それぞれ金型第1拡径部41及び金型第2拡径部42の内壁に当接していることが好ましい。これにより、第1加熱ステップ終了時におけるパリソン30の形状をプレ金型40の内腔40Lの形状により決めることが容易になるため、第1加熱ステップにおけるパリソン30の延伸状態を制御することがより容易になる。
【0071】
或いは、図示していないが、第1加熱ステップの終了時に、パリソン30の中央区間33はプレ金型40の縮径部43の内壁に当接しているものの、第1区間31及び第2区間32はどちらか一方又は両方が金型第1拡径部41及び金型第2拡径部42にそれぞれ当接していなくてもよい。このような状態であっても、中央区間33の径方向yへの延伸はプレ金型40の縮径部43より抑制されるため、中央区間33を径方向yへの延伸を抑えつつ長手軸方向xに延伸することができる。
【0072】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーン20の製造方法は、さらに、第2加熱ステップの後に、拡径部30Eを樹脂の結晶化温度Tc以上の温度にする工程を含むことが好ましい。この工程は、ポスト金型50を結晶化温度Tc以上の温度に加熱することにより行ってもよい。第2加熱ステップ終了時には、パリソン30の拡径部30Eはバルーン20の拡張部22の形状に成形されているが、この後にパリソン30の拡径部30Eを樹脂の結晶化温度Tc以上の温度にすることにより樹脂の結晶化を促進し、拡径部30Eの形状固定を行うことができる。これは、第2加熱ステップ終了時に配向している分子同士の分子間力による結合を促進することにより、形状が固定できるためであると考えられる。この工程を行わないと、パリソン30から成形されたバルーン20をポスト金型50から取り出した際に、バルーン20が収縮してしまうことがある。
【0073】
なお、結晶化温度Tcは、JIS K7121に準拠して測定し、示差走査熱量計を使用して樹脂サンプル5mgを0℃~250℃の温度範囲において昇温速度20℃/分で昇温し、この温度に10分間保った後、冷却速度20℃/分で結晶化ピーク終了時より約50℃低い温度まで冷却し、DSC曲線から得られた補外結晶化開始温度を結晶化温度Tcとすることができる。
【0074】
例えば、パリソン30を構成する樹脂としてポリアミド系樹脂を使用する場合は、結晶化温度Tcは130℃~155℃である。パリソン30を構成する樹脂として他の樹脂を使用する場合は、上記温度に限定されず、上記方法に従って結晶化温度Tcを求めることができる。
【0075】
次に、本発明の実施形態に係る金型セットについて説明する。なお、金型セットの説明において、上記のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法の説明と重複する部分は説明を省略する。
【0076】
図3及び図7に示すように、バルーンカテーテル用バルーンを製造するための金型セットは、長手軸方向xに延在し内腔50Lを有しており、スリーブ部A1と、スリーブ部A2と、長手軸方向xにおいてスリーブ部A1とスリーブ部A2の間に位置しスリーブ部A1の内径以上且つスリーブ部A2の内径以上の内径を有している直管部51とを有しているポスト金型50と、長手軸方向xに延在し内腔40Lを有しており、スリーブ部B1と、スリーブ部B2と、長手軸方向xにおいてスリーブ部B1とスリーブ部B2の間に位置しスリーブ部B1の内径以上且つスリーブ部B2の内径以上の内径を有している金型拡径部40Eを有しており、金型拡径部40Eは、金型第1拡径部41と、金型第2拡径部42と、長手軸方向xにおいて金型第1拡径部41と金型第2拡径部42の間に金型第1拡径部41及び金型第2拡径部42における最大内径よりも小さい最大内径を有する縮径部43とを有しているプレ金型40と、を有している。
【0077】
プレ金型40は、一つの部材から構成されていてもよく、或いは複数の部材から構成されていてもよい。例えば、プレ金型40は複数の半割体から構成されていてもよく、複数のセグメントが周方向zに接続されるように構成されていてもよく、複数のセグメントが長手軸方向xに接続されるように構成されていてもよい。例えば、複数の金型部材が長手軸方向xに分割可能に接続されるように構成されていれば、金型自体が発熱することによりプレ金型40の内腔40Lに配置されたパリソン30が加熱される方法を採った場合等に、各金型部材を独立して異なる温度にすることが可能になり、パリソン30の延伸を制御することが容易になる。
【0078】
ポスト金型50は、一つの部材から構成されていてもよく、或いは複数の部材から構成されていてもよい。例えば、ポスト金型50は複数の半割体から構成されていてもよく、複数のセグメントが周方向zに接続されるように構成されていてもよく、複数のセグメントが長手軸方向xに接続されるように構成されていてもよい。例えば、複数の金型部材のセグメントが長手軸方向xに分割可能に接続されるように構成されていれば、金型自体が発熱することによりポスト金型50の内腔50Lに配置されたパリソン30が加熱される方法を採った場合等に、各金型部材を独立して異なる温度にすることが可能になり、パリソン30の延伸を制御することが容易になる。
【0079】
図3に示すように、プレ金型40は、長手軸方向xにおいて、金型第1拡径部41から縮径部43にかけて内腔40Lが縮径しているテーパー部T1と、縮径部43から金型第2拡径部42にかけて内腔40Lが拡径しているテーパー部T2とを有していることが好ましい。このように、プレ金型40が縮径部43の両端にテーパー部T1とテーパー部T2を有していることにより、第1加熱ステップにおいて、パリソン30の拡径部30Eの中央区間33から両端部にかけての分子配向の移行をなだらかにすることができるため、第2加熱ステップにおいて二軸延伸を行う際に、中央区間33から両端部にかけての分子配向についてもなだらかな移行にできるため好ましい。中央区間33から両端部にかけて分子配向がなだらかに移行することにより、分子配向が急激に変化することによる応力集中を避けることができ、得られるバルーン20の機械的強度と成形性を向上することができる。
【0080】
プレ金型40は、長手軸方向xにおいて、スリーブ部B1から金型第1拡径部41にかけて内腔40Lが拡径しているテーパー部T3と、金型第2拡径部42からスリーブ部B2にかけて内腔40Lが縮径しているテーパー部T4とを有していることが好ましい。このように、プレ金型40が金型拡径部40Eの両端にテーパー部T3とテーパー部T4を有していることにより、第1加熱ステップにおいて拡径部30Eの両端部からテーパー部P1及びテーパー部P2への形状移行をなだらかにできるため、第2加熱ステップにおける二軸延伸が容易になる。
【0081】
図7に示すように、ポスト金型50は、長手軸方向xにおいて、スリーブ部A1から直管部51にかけて内腔50Lが拡径しているテーパー部T5と、直管部51からスリーブ部A2にかけて内腔50Lが縮径しているテーパー部T6とを有していることが好ましい。このように、ポスト金型50が直管部51の両端にテーパー部T5とテーパー部T6を有していることにより、第2加熱ステップにおいて拡径部30Eの両端部からテーパー部P1及びテーパー部P2への形状移行や分子配向の移行をなだらかにできるため、形状や分子配向が急激に変化することによる応力集中を避けることができ、得られるバルーン20の機械的強度と成形性を向上することができる。
【符号の説明】
【0082】
1:バルーンカテーテル
3:シャフト
4:ハブ
5:ガイドワイヤ挿入部
6:流体注入部
20:バルーン
21:バルーンの近位側スリーブ部
22:バルーンの拡張部
23:バルーンの遠位側スリーブ部
30:パリソン
30E:パリソンの拡径部
30L:パリソンの内腔
31:パリソンの第1区間
32:パリソンの第2区間
33:パリソンの中央区間
40:プレ金型
40E:金型拡径部
40L:プレ金型の内腔
41:金型第1拡径部
42:金型第2拡径部
43:プレ金型の縮径部
50:ポスト金型
50L:ポスト金型の内腔
51:ポスト金型の直管部
A1:ポスト金型のスリーブ部
A2:ポスト金型のスリーブ部
B1:プレ金型のスリーブ部
B2:プレ金型のスリーブ部
P1:パリソンのスリーブ部
P2:パリソンのスリーブ部
T1:プレ金型のテーパー部
T2:プレ金型のテーパー部
T3:プレ金型のテーパー部
T4:プレ金型のテーパー部
T5:ポスト金型のテーパー部
T6:ポスト金型のテーパー部
:0%の位置
40:40%の位置
60:60%の位置
100:100%の位置
x:長手軸方向
y:径方向
z:周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9