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特開2023-183917バルーンカテーテル用バルーンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183917
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル用バルーンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20231221BHJP
   B29C 49/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61M25/10 502
B29C49/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097724
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 勇介
【テーマコード(参考)】
4C267
4F208
【Fターム(参考)】
4C267BB28
4C267CC09
4C267DD01
4C267EE05
4C267FF10
4C267GG05
4C267GG07
4C267GG08
4F208AG08
4F208AH63
4F208AR02
4F208AR06
4F208AR12
4F208LA03
4F208LA07
4F208LB01
4F208LD16
4F208LG04
4F208LG13
4F208LH06
4F208LH10
4F208LN11
4F208LN29
(57)【要約】
【課題】得られるバルーンの周方向割れを抑制することが容易なバルーンカテーテル用バルーンの製造方法を提供する。
【解決手段】パリソン30を準備するステップと、金型を準備するステップと、金型の内腔にパリソン30を配置するステップと、中央区間33を樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱し、第1区間31及び第2区間32はガラス転移温度Tg未満の温度に保持しながら、中央区間33を延伸する第1延伸ステップと、第1延伸ステップの後に、拡径部30Eをガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱しながら、長手軸方向x及び径方向yに二軸延伸する第2延伸ステップと、を有しているバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂で構成され長手軸方向に延在し内腔を有しているパリソンであって、第1スリーブ部と、第2スリーブ部と、前記長手軸方向において前記第1スリーブ部と前記第2スリーブ部の間に位置し前記第1スリーブ部の内径以上且つ前記第2スリーブ部の内径以上の内径を有している拡径部と、を有しており、前記長手軸方向において前記拡径部の第1端を0%の位置、第2端を100%の位置としたとき、45%の位置から55%の位置までの中央区間、0%の位置から10%の位置までの第1区間、及び90%の位置から100%の位置までの第2区間を有しているパリソンを準備するステップと、
長手軸方向に延在し内腔を有している金型を準備するステップと、
前記金型の内腔に前記パリソンを配置するステップと、
前記中央区間を前記樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱し、前記第1区間及び前記第2区間は前記樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度に保持しながら、前記拡径部の少なくとも前記中央区間を延伸する第1延伸ステップと、
前記第1延伸ステップの後に、前記拡径部をガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱しながら、前記拡径部を前記長手軸方向及び前記拡径部の径方向に二軸延伸する第2延伸ステップと、を有しており、
前記樹脂の常温での応力歪曲線において、歪がゼロから降伏点までの応力の平均変化率に対し、歪が降伏点を超えてから応力の微分係数が5%以上の値となる点Aにおける歪を超えるまで、前記第1延伸ステップにおいて前記拡径部の少なくとも前記中央区間を延伸するバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項2】
前記第1延伸ステップにおいて、前記拡径部の内圧を0bar以上30bar以下に保持しながら前記拡径部の少なくとも前記中央区間を延伸し、前記第2延伸ステップにおいて、前記第1延伸ステップにおいて前記拡径部にかけられた内圧よりも高い内圧を前記拡径部にかけることにより前記拡径部を二軸延伸する請求項1に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項3】
前記第1延伸ステップにおいて、前記第1区間及び前記第2区間は前記点Aにおける歪を超えないように延伸される請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項4】
前記第1延伸ステップにおける延伸速度は、前記第2延伸ステップにおける延伸速度よりも遅い請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項5】
前記金型の内腔に前記パリソンを配置するステップは、前記第1延伸ステップの前に実施される請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項6】
前記金型の内腔に前記パリソンを配置するステップは、前記第1延伸ステップの後、且つ前記第2延伸ステップの前に実施される請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項7】
さらに、前記第2延伸ステップの後に、前記拡径部を前記樹脂の結晶化温度Tc以上の温度にするステップを含む請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項8】
前記第1延伸ステップにおいて、前記第1区間及び前記第2区間を前記樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度で加熱する請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項9】
前記金型は、第1端領域と、第2端領域と、前記長手軸方向において前記第1端領域と前記第2端領域の間に位置する中央領域とを有しており、前記第1端領域と前記第2端領域と前記中央領域とはそれぞれ独立して加熱できる請求項8に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【請求項10】
前記第1端領域と前記第2端領域と前記中央領域は、それぞれ別部材で構成され、前記別部材が前記長手軸方向に連結されることにより前記金型が形成される請求項9に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルに用いられる樹脂で構成されるバルーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の狭窄部にバルーンカテーテルを挿入してバルーンを拡張させることにより、血管を拡張して血流を確保する血管形成術は、低侵襲療法として広く行われている。血管形成術は、例えば心臓の冠動脈に狭窄を生じることにより引き起こされる心筋梗塞等の疾病の治療や、透析のためのシャント部に発生した狭窄の治療などにおいて行われる。バルーンカテーテルに用いられるバルーンは、通常、遠位側と近位側がすぼまった円柱状の形状を有しており、最大径を有する円柱部分により血管の拡張が行われる。
【0003】
バルーンカテーテルにより狭窄部を拡張させる際には、対象とする部位に応じた拡張圧力をバルーンにかけるが、手技中に想定外の内圧がバルーンにかかる等によりバルーンの内圧が過加圧となるとバルーンが破壊してしまうことがあった。このとき、バルーンが周方向に破壊すると、破壊箇所から遠位側のバルーンの断裂片が体内に残存してしまうという重大なリスクが生じるため、仮にバルーンが破壊してしまう場合であってもバルーンの破壊が周方向の割れとならずに長手軸方向の割れとなるような技術が求められる。
【0004】
例えば特許文献1~3には、バルーンを構成する樹脂の分子配向を制御することにより、耐圧性の向上を試みたバルーンが開示されている。これらの文献には、バルーンの製造方法として、パリソンの長手方向延伸に次いで径方向延伸を行う際に長手方向の延伸倍率に対する径方向の延伸倍率を所定以下とする方法、パリソンの軸方向にかかる応力の変化に応じて金型を移動させる方法、及び延伸速度を制御することにより所望の配向を有するバルーンを得る方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献4では、バルーンの膜状本体が非エラストマーを含有する中間層と該中間層の外表面及び内表面に配置されるエラストマーを含有する外層及び内層とを有しており、中間層の平均膜厚をバルーン全体の平均膜厚の30%~70%とすることにより、コンプライアンスが向上し、且つ耐圧性能と通過性能とのバランスが取れたバルーンを得たことが開示されている。このようなバルーンを製造する方法として、共押出により三層のパリソンを成形し、当該パリソンを非エラストマー及びエラストマーの二次転移温度から一次転移温度までの温度で軸方向に延伸し、さらに半径方向に膨張させて二軸延伸した後、パリソンを二軸転移温度以下に冷却して収縮させバルーンを成形する工程が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-298354号公報
【特許文献2】特開平9-38195号公報
【特許文献3】国際公開第2014/141382号
【特許文献4】国際公開第2013/145479号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バルーンカテーテルを用いた処置において体内でバルーンが破壊してしまった場合、万が一にもバルーンが周方向の破壊を起こすと、破壊箇所から遠位側のバルーンの破断片が体内に残存してしまうという重大なリスクが生じるところ、上記のような従来のバルーンでは周方向割れを防止する点で改善の余地があった。
【0008】
上記の事情に鑑み本発明は、バルーンの周方向割れを抑制することが容易なバルーンカテーテル用バルーンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し得た本発明のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法の一実施形態は、以下の通りである。
[1]樹脂で構成され長手軸方向に延在し内腔を有しているパリソンであって、第1スリーブ部と、第2スリーブ部と、前記長手軸方向において前記第1スリーブ部と前記第2スリーブ部の間に位置し前記第1スリーブ部の内径以上且つ前記第2スリーブ部の内径以上の内径を有している拡径部と、を有しており、前記長手軸方向において前記拡径部の第1端を0%の位置、第2端を100%の位置としたとき、45%の位置から55%の位置までの中央区間、0%の位置から10%の位置までの第1区間、及び90%の位置から100%の位置までの第2区間を有しているパリソンを準備するステップと、長手軸方向に延在し内腔を有している金型を準備するステップと、前記金型の内腔に前記パリソンを配置するステップと、前記中央区間を前記樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱し、前記第1区間及び前記第2区間は前記樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度に保持しながら、前記拡径部の少なくとも前記中央区間を延伸する第1延伸ステップと、前記第1延伸ステップの後に、前記拡径部をガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱しながら、前記拡径部を前記長手軸方向及び前記拡径部の径方向に二軸延伸する第2延伸ステップと、を有しており、前記樹脂の常温での応力歪曲線において、歪がゼロから降伏点までの応力の平均変化率に対し、歪が降伏点を超えてから応力の微分係数が5%以上の値となる点Aにおける歪を超えるまで、前記第1延伸ステップにおいて前記拡径部の少なくとも前記中央区間を延伸するバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【0010】
第1延伸ステップにおいて、パリソンの中央区間を樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱し、パリソンの第1区間及び第2区間は樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度に保持することにより、第1延伸ステップにおいてパリソンの拡径部のうち少なくとも中央区間を長手軸方向に延伸することができる。このとき、樹脂の常温での応力歪曲線において、歪がゼロから降伏点までの応力の平均変化率に対し、歪が降伏点を超えてから応力の微分係数が5%以上の値となる点Aにおける歪を超えるまで中央区間が延伸され、第1延伸ステップを経た拡径部が第2延伸ステップにおいて二軸延伸されることにより、中央区間において長手軸方向の樹脂の分子配向を有するバルーンを製造することができる。これにより、バルーンカテーテル用バルーンが過加圧等により破壊してしまう場合であっても、中央区間で長手軸方向割れのきっかけを作ることができ、中央区間で生じた長手軸方向割れにより内圧を逃すことができるため、周方向割れを防止することができる。その結果、バルーンカテーテル用バルーンの破断片が体内に残存してしまうリスクを回避でき、安全な処置が可能なバルーンカテーテル用バルーンを製造することが可能となる。
【0011】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンの製造方法は、以下の[2]~[10]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記第1延伸ステップにおいて、前記拡径部の内圧を0bar以上30bar以下に保持しながら前記拡径部の少なくとも前記中央区間を延伸し、前記第2延伸ステップにおいて、前記第1延伸ステップにおいて前記拡径部にかけられた内圧よりも高い内圧を前記拡径部にかけることにより前記拡径部を二軸延伸する[1]に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[3]前記第1延伸ステップにおいて、前記第1区間及び前記第2区間は前記点Aにおける歪を超えないように延伸される[1]又は[2]に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[4]前記第1延伸ステップにおける延伸速度は、前記第2延伸ステップにおける延伸速度よりも遅い[1]~[3]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[5]前記金型の内腔に前記パリソンを配置するステップは、前記第1延伸ステップの前に実施される[1]~[4]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[6]前記金型の内腔に前記パリソンを配置するステップは、前記第1延伸ステップの後、且つ前記第2延伸ステップの前に実施される[1]~[4]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[7]さらに、前記第2延伸ステップの後に、前記拡径部を前記樹脂の結晶化温度Tc以上の温度にするステップを含む[1]~[6]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[8]前記第1延伸ステップにおいて、前記第1区間及び前記第2区間を前記樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度で加熱する[1]~[7]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[9]前記金型は、第1端領域と、第2端領域と、前記長手軸方向において前記第1端領域と前記第2端領域の間に位置する中央領域とを有しており、前記第1端領域と前記第2端領域と前記中央領域とはそれぞれ独立して加熱できる[1]~[8]のいずれかに記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
[10]前記第1端領域と前記第2端領域と前記中央領域は、それぞれ別部材で構成され、前記別部材が前記長手軸方向に連結されることにより前記金型が形成される[9]に記載のバルーンカテーテル用バルーンの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
上記バルーンカテーテル用バルーンの製造方法によれば、得られたバルーンが中央区間において長手軸方向の樹脂の分子配向を有するようにバルーンを製造することができる。これにより、バルーンカテーテル用バルーンが過加圧等により破壊してしまう場合であっても、中央区間で長手軸方向割れのきっかけを作ることができ、中央区間で生じた長手軸方向割れにより内圧を逃すことができるため、周方向割れを防止することができる。その結果、バルーンカテーテル用バルーンの破断片が体内に残存してしまうリスクを回避でき、安全な処置が可能なバルーンカテーテル用バルーンを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るバルーンカテーテルの平面図を表す。
図2】本発明の実施形態に係るパリソンの長手軸方向の断面図を表す。
図3】ポリエステル系樹脂の応力歪曲線を表す。
図4】ポリアミド系樹脂の応力歪曲線を表す。
図5】本発明の実施形態に係る金型の長手軸方向の断面図を表す。
図6】第1延伸ステップの模式図を表す。
図7】第2延伸ステップの開始時点におけるパリソンと金型の長手軸方向の断面図を表す。
図8】第2延伸ステップの開始時点におけるパリソンと金型の長手軸方向の断面図の別の例を表す。
図9】第2延伸ステップの終了時点におけるパリソンと金型の長手軸方向の断面図を表す。
図10】本発明の実施形態に係る金型の長手軸方向の断面図の別の例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0015】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンの製造方法は、樹脂で構成され長手軸方向に延在し内腔を有しているパリソンであって、第1スリーブ部と、第2スリーブ部と、長手軸方向において第1スリーブ部と第2スリーブ部の間に位置し第1スリーブ部の内径以上且つ第2スリーブ部の内径以上の内径を有している拡径部と、を有しており、長手軸方向において拡径部の第1端を0%の位置、第2端を100%の位置としたとき、45%の位置から55%の位置までの中央区間、0%の位置から10%の位置までの第1区間、及び90%の位置から100%の位置までの第2区間を有しているパリソンを準備するステップと、長手軸方向に延在し内腔を有している金型を準備するステップと、金型の内腔に前記パリソンを配置するステップと、中央区間を樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱し、第1区間及び第2区間は樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度に保持しながら、拡径部の少なくとも中央区間を延伸する第1延伸ステップと、第1延伸ステップの後に、拡径部をガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱しながら、拡径部を長手軸方向及び拡径部の径方向に二軸延伸する第2延伸ステップと、を有しており、樹脂の常温での応力歪曲線において、歪がゼロから降伏点までの応力の平均変化率に対し、歪が降伏点を超えてから応力の微分係数が5%以上の値となる点Aにおける歪を超えるまで、第1延伸ステップにおいて拡径部の少なくとも中央区間を延伸することを特徴とする。
【0016】
第1延伸ステップにおいて、パリソンの中央区間を樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱し、パリソンの第1区間及び第2区間は樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度に保持することにより、第1延伸ステップにおいてパリソンの拡径部のうち少なくとも中央区間を長手軸方向に延伸することができる。このとき、樹脂の常温での応力歪曲線において、歪がゼロから降伏点までの応力の平均変化率に対し、歪が降伏点を超えてから応力の微分係数が5%以上の値となる点Aにおける歪みを超えるまで中央区間を延伸する。このような第1延伸ステップを経ることにより、パリソンの両端部ではガラス転移温度Tg未満の温度に保持されることから樹脂の分子が動けず、分子鎖が延伸の影響を殆ど受けないのに対し、パリソンの中央区間ではガラス転移温度Tg以上に加熱することで樹脂の分子が弛緩し、分子鎖が動きやすい状態で長手軸方向に延伸されるため、分子鎖が長手軸方向に延びて配列することができる。このような状態のパリソンをさらに第2延伸ステップにおいて二軸延伸することにより、中央区間において長手軸方向の樹脂の分子配向を有するバルーンを製造することができる。これにより、バルーンカテーテル用バルーンが過加圧等により破壊してしまう場合であっても、中央区間で長手軸方向割れのきっかけを作ることができ、中央区間で生じた長手軸方向割れにより内圧を逃すことができるため、周方向割れを防止することができる。その結果、バルーンカテーテル用バルーンの破断片が体内に残存してしまうリスクを回避でき、安全な処置が可能なバルーンカテーテル用バルーンを製造することが可能となる。
【0017】
以下、図1図10を参照しつつ本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンの製造方法について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテルの平面図を表す。図2は、本発明の実施形態に係るパリソンの長手軸方向の断面図を表す。図3はポリエステル系樹脂の応力歪曲線の一例を表し、図4はポリアミド系樹脂の応力歪曲線の一例を表す。図5は、本発明の実施形態に係る金型の長手軸方向の断面図を表す。図6は、第1延伸ステップの模式図を表し、パリソンを金型の内腔に配置せずに、パリソンの中央区間近傍にヒーターを配置した状態を表している。図7は第1延伸ステップの終了後であって第2延伸ステップの開始時点におけるパリソンと金型の長手軸方向の断面図を表し、図8は第1延伸ステップの終了後であって第2延伸ステップの開始時点におけるパリソンと金型の長手軸方向の断面図の別の例を表す。図9は、第2延伸ステップの終了時点におけるパリソンと金型の長手軸方向の断面図を表す。図10は、本発明の実施形態に係る金型の長手軸方向の断面図の別の例を表す。
【0018】
本明細書において、バルーンカテーテル用バルーンを単に「バルーン」と称することがある。また、バルーンカテーテル用バルーン20、パリソン30、金型40は、それぞれの長手軸方向、径方向、及び周方向を有するが、本明細書においては、理解のし易さのために、全ての部材が図1に示すバルーンカテーテル用バルーン20の長手軸方向x、径方向y、及び周方向zと同じ長手軸方向、径方向、及び周方向を有しているとして説明する。ただし、これは全ての部材が必ず同じ方向に配置されていることを意味するものではなく、各部材の長手軸方向、径方向、及び周方向は互いに異なっていてもよい。バルーン20の周方向zは、長手軸方向xに垂直な断面において拡張状態のバルーン20の外周に沿う方向であり、バルーン20の径方向yは、長手軸方向xに垂直な断面において拡張状態のバルーン20の外縁の図心とバルーン20の外縁上の点とを結ぶ方向である。長手軸方向xにおいて、バルーンカテーテル1の使用者の手元側の方向を近位側、近位側とは反対側、即ち処置対象者側を遠位側と称する。
【0019】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーンの製造方法は、図1に示すようなバルーンカテーテル1に用いられるバルーン20を製造するための方法である。バルーン20はシャフト3の遠位側に接続され、シャフト3の内腔を通じて流体を導入することによりバルーン20を拡張させ、流体を排出することによりバルーン20を収縮させることができる。流体は、インデフレーター(バルーン用加圧器)を用いて導入又は排出され、バルーン20の拡張と収縮を制御することができる。流体は、ポンプ等により加圧された加圧流体であってもよい。
【0020】
樹脂で構成されたパリソン30を延伸してバルーン20を製造することにより、バルーン20は分子配向を有する樹脂からなる構成を有することができる。バルーン20は、拡張部22と、拡張部22よりも近位側に位置している近位側スリーブ部21と、拡張部22よりも遠位側に位置している遠位側スリーブ部23とを有していることが好ましい。拡張部22が流体の導入により拡張する部分であるのに対し、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部23は拡張しないことが好ましく、近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部23の少なくとも一部をシャフト3と固定することにより、バルーン20をシャフト3と接続することができる。
【0021】
バルーン20を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂;ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂;ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂;フッ素系樹脂;シリコーン系樹脂;ラテックスゴム等の天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が好ましく、ナイロン12、ナイロン11等のポリアミド系樹脂がより好ましく、ナイロン12が特に好ましい。バルーン20の薄膜化や柔軟性の観点からは、エラストマー樹脂を用いることが好ましく、ポリアミドエーテルエラストマー等のポリアミドエラストマーが好適に用いられる。
【0022】
バルーン20の外径は、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましい。バルーン20の外径の下限が上記範囲であることにより、血管内の狭窄部を十分に拡張することができる。また、バルーン20の外径は、35mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることがさらに好ましい。バルーン20の外径の上限が上記範囲であることにより、バルーン20の体腔内への挿入が容易になる。
【0023】
バルーン20の長手軸方向xの長さは、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、15mm以上であることがさらに好ましい。バルーン20の長手軸方向xの長さの下限が上記範囲であることにより、一度に拡張できる狭窄部の面積を大きくして手技にかかる時間を短縮することが可能である。また、バルーン20の長手軸方向xの長さは、300mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましく、100mm以下であることがさらに好ましい。バルーン20の長手軸方向xの長さの上限が上記範囲であることにより、狭窄部の拡張のためにバルーン20の内部に導入する流体の容量を減らし、バルーン20を十分に拡張させるために必要な時間を短縮することができる。
【0024】
バルーン20の厚みは、5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましく、また、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。バルーン20の厚みが上記範囲であることにより、バルーン20の強度と柔軟性のバランスを図ることができる。
【0025】
シャフト3を構成する材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、シャフト3を構成する材料は、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びフッ素系樹脂の少なくとも1つであることが好ましい。これにより、シャフト3の表面の滑り性を高め、バルーンカテーテル1の体腔内での挿通性を向上できる。
【0026】
バルーン20とシャフト3との接合は、接着剤による接着、溶着、バルーン20の端部とシャフト3とが重なっている箇所にリング状部材を取り付けてかしめること等が挙げられる。中でも、バルーン20とシャフト3とは、溶着により接合されていることが好ましい。バルーン20とシャフト3とが溶着されていることにより、バルーン20を繰り返し拡張又は収縮させてもバルーン20とシャフト3との接合が解除されにくく、バルーン20とシャフト3との接合強度を容易に高めることができる。
【0027】
図1に示すように、バルーンカテーテル1において、シャフト3の近位側にはハブ4が設けられていてもよく、ハブ4にはバルーン20の内部に供給される流体の流路と連通した流体注入部6が設けられていることが好ましい。また、ハブ4には、ガイドワイヤの挿通路と連通したガイドワイヤ挿入部5が設けられていてもよい。このような構成により、バルーン20の内部に流体を供給してバルーン20を拡張又は収縮させる操作や、ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテル1を治療部位まで送達する操作を容易に行うことができる。図1にはガイドワイヤがシャフト3の遠位側から近位側にわたって挿通される所謂オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテル1を示したが、バルーン20はシャフト3の遠位側から近位側に至る途中までガイドワイヤを挿通する所謂ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルにも適用できる。
【0028】
シャフト3とハブ4との接合は、例えば、接着剤による接着、溶着等が挙げられる。中でも、シャフト3とハブ4とは、接着により接合されていることが好ましい。シャフト3とハブ4とが接着されていることにより、例えば、シャフト3は柔軟性の高い材料から構成され、ハブ4は剛性の高い材料から構成されている等、シャフト3を構成する材料とハブ4を構成する材料とが異なっている場合に、シャフト3とハブ4との接合強度を高めてバルーンカテーテル1の耐久性を向上できる。
【0029】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーン20の製造方法は、樹脂で構成され長手軸方向xに延在し内腔30Lを有しているパリソン30を準備するステップを有する。パリソン30の内部を加圧して内腔30Lを拡張させることによりバルーン20を製造することができる。パリソン30を構成する樹脂については、上記バルーン20を構成する材料の項を参照できる。パリソン30は、押出成形や射出成形等の公知の方法で作製できるが、押出成形で作製されることが好ましい。
【0030】
図2に示すように、パリソン30は、第1スリーブ部34と、第2スリーブ部35と、長手軸方向xにおいて第1スリーブ部34と第2スリーブ部35の間に位置し第1スリーブ部34の内径以上且つ第2スリーブ部35の内径以上の内径を有している拡径部30Eを有している。パリソン30の拡径部30Eは、パリソン30からバルーン20を作製した際にバルーン20の拡張部22になる部分である。パリソン30の第1スリーブ部34と第2スリーブ部35は、パリソン30からバルーン20を作製した際にバルーン20の近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部23になる部分を含む。第1スリーブ部34と第2スリーブ部35において、パリソン30の内径は長手軸方向xに沿って同じであっても異なっていてもよいが、実質的に同じであることが好ましい。また、第1スリーブ部34と第2スリーブ部35の内径は同じであっても異なっていてもよいが、実質的に同じであることが好ましい。これによりパリソン30の作製が容易になる。ここで、「実質的に同じ」とは、内径の変化率([最大内径-最小内径]/平均内径)が0.2以下であることを意味する。内径の変化率は、0.18以下、0.15以下、0.1以下、0.08以下、0.05以下、0.02以下であってもよく、0であってもよい。以降、パリソン30や金型の内径が「実質的に同じ」というときは、内径の変化率が上記範囲であることを意味する。外径が実質的に同じ、という場合についても、外径の変化率が上記範囲であることを意味する。
【0031】
拡径部30Eの最大内径は、第1スリーブ部34の最大内径及び第2スリーブ部35の最大内径よりも大きいことが好ましい。ここで、拡径部30Eの最大内径とは、長手軸方向xにおいて拡径部30Eが最大の内径を有している部分における内径のことである。同様に、第1スリーブ部34の最大内径及び第2スリーブ部35の最大内径とは、長手軸方向xにおいて第1スリーブ部34及び第2スリーブ部35がそれぞれ最大の内径を有している部分におけるそれぞれの内径のことである。以降、所定部材又は所定区間の最大内径というとき、最大内径は長手軸方向xにおいて所定部材又は所定区間が最大の内径を有している部分における内径のことであるという同様の説明が適用できるものとする。
【0032】
パリソン30は、長手軸方向xにおいて拡径部30Eの第1端を0%の位置D、第2端を100の位置D100としたとき、45%の位置D45から55%の位置D55までの中央区間33、0%の位置Dから10%の位置D10までの第1区間31、及び90%の位置D90から100の位置D100までの第2区間32を有している。第1区間31、第2区間32、及び中央区間33は、パリソン30が押出成形や射出成形等の公知の方法で作製された後、第1延伸ステップに供される前の初期状態における長手軸方向xの位置により決定される。この初期状態におけるパリソン30の中央区間33を後述する第1延伸ステップにおいて樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱し、第1区間31及び第2区間32をガラス転移温度Tg未満の温度に保持することが本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーン20の製造方法の特徴の一つである。
【0033】
第1延伸ステップにおいては、パリソン30を構成する樹脂のガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度でパリソン30の中央区間33を加熱し、第1区間31及び第2区間32は上記樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度に保持しながら、パリソン30の拡径部30Eのうち少なくとも中央区間33を延伸する。中央区間33は上記温度範囲で加熱されていることから、例えば、パリソン30の第1スリーブ部31と第2スリーブ部32を長手軸方向xにおいて互いに離れるように引くことにより、中央区間33が長手軸方向xに延伸される。
【0034】
第1延伸ステップにおいて、中央区間33を加熱する温度は、パリソン30を構成する樹脂のガラス転移温度Tg+25℃以下がより好ましく、ガラス転移温度Tg+20℃以下がさらに好ましく、ガラス転移温度Tg+10℃以下であってもよい。第1加熱ステップにおいて中央区間33を上記範囲の温度で加熱することにより中央区間33を長手軸方向xに延伸し易くできる。
【0035】
なお、ガラス転移温度TgはJIS K7121に準拠して測定し、示差走査熱量計を使用して樹脂サンプル5mgを0℃~250℃の温度範囲において昇温速度20℃/分で昇温し、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度Tgとすることができる。
【0036】
例えば、パリソン30を構成する樹脂としてポリアミド系樹脂を使用する場合は、ガラス転移温度Tgは40℃~60℃である。パリソン30を構成する樹脂として他の樹脂を使用する場合は、上記温度に限定されず、上記方法に従ってガラス転移温度Tgを求めることができる。
【0037】
第1延伸ステップにおいて、パリソン30の第1区間31と第2区間32は加熱されないことが好ましい。これにより、パリソン30の両端部が延伸されないようにできる。
【0038】
第1延伸ステップでは、パリソン30を構成する樹脂の常温での応力歪曲線において、歪がゼロから降伏点Bまでの応力の平均変化率に対し、歪が降伏点Bを超えてから応力の微分係数が5%以上の値となる点Aにおける歪を超えるまで、中央区間33が延伸される。
【0039】
図3及び図4に応力歪曲線の例を示す。図3はポリエステル系樹脂の応力歪曲線の一例であり、図4はポリアミド系樹脂の応力歪曲線の一例である。多くの樹脂では、図3に示すような応力歪曲線において、降伏点Bまでの弾性変形の領域では折れ曲がった状態の分子鎖が延びるように応力が働く。降伏点B以降は、分子間力で引き合っていた分子鎖同士がせん断方向にずれる塑性変形が始まる。分子鎖が一旦ずれ始めると分子鎖に緩みが生じ応力が下降伏点Lまで減少する現象を示す樹脂もある。その後は暫く横ばいの応力を示す領域が見られ、このような領域はネッキング領域Rと称される。ネッキング領域Rでは歪みにより分子鎖がずれることで一定の応力を示していたところ、所定の歪以上になると分子鎖同士が接近して密に配向し分子鎖間に強い分子間力が生まれるため、所定の歪み以上、即ちネッキング領域Rを超えた領域では応力は右肩上がりで上昇する。歪がゼロから降伏点Bまでの応力の平均変化率に対し、歪が降伏点Bを超えてから応力の微分係数が5%以上の値となる点Aにおける歪を超えるまで中央区間33を延伸する、という第1延伸ステップの条件は、上記ネッキング領域Rを超えるまで中央区間33を延伸する、と言い換えることもできる。
【0040】
第1延伸ステップでは歪がゼロから降伏点Bまでの応力の平均変化率に対し、歪が降伏点Bを超えてから応力の微分係数が5%以上の値となる点Aにおける歪を超えるまで中央区間33を長手軸方向xに延伸することにより、中央区間33を分子鎖のずれが終了する状態まで延伸することができる。図4に示すように、樹脂の中には図3で見られるほど明確なネッキング領域Rを示さないものもあるが、歪がゼロから降伏点Bまでの応力の平均変化率に対し、歪が降伏点Bを超えてから応力の微分係数が5%以上の値となる点Aにおける歪を超えるまでとの条件で第1延伸ステップにおいて中央区間33を延伸することにより、中央区間33を分子鎖のずれが終了する状態まで延伸することが可能である。
【0041】
第1延伸ステップでは、第1区間31及び第2区間32は樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度に保持されることから、第1区間31及び第2区間32、すなわちパリソン30の両端部は上記の中央区間33のように延伸されない。これにより、パリソン30の両端部では樹脂の分子が動けず分子鎖が延伸の影響を殆ど受けないのに対し、パリソン30の中央区間33では樹脂の分子が弛緩し分子鎖が動きやすい状態で長手軸方向xに延伸されるため、分子鎖が長手軸方向に延びて配列することができる。このような状態のパリソン30をさらに後述の第2延伸ステップにおいて二軸延伸することにより、中央区間において長手軸方向xの樹脂の分子配向を有するバルーンを製造することができる。これにより、バルーンカテーテル用バルーン20が過加圧等により破壊してしまう場合であっても、中央区間で長手軸方向xの割れのきっかけを作ることができ、中央区間で生じた長手軸方向xの割れにより内圧を逃すことができるため、周方向zの割れを防止することができる。その結果、バルーンカテーテル用バルーン20の破断片が体内に残存してしまうリスクを回避でき、安全な処置が可能なバルーンカテーテル用バルーン20を製造することが可能となる。
【0042】
図5に示すように、本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーン20の製造方法は、長手軸方向xに延在し内腔40Lを有している金型40を準備するステップを有する。金型40は、直管部43と、直管部43の両側に位置している金型第1スリーブ部41及び金型第2スリーブ部42を有していることが好ましい。
【0043】
金型第1スリーブ部41と金型第2スリーブ部42において、金型40の内径は長手軸方向xに沿って同じであっても異なっていてもよいが、実質的に同じであることが好ましい。また、金型第1スリーブ部41の内径と金型第2スリーブ部42の内径は同じであっても異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。例えば、金型第1スリーブ部41の内径の方が金型第2スリーブ部42の内径よりも大きい場合、金型第1スリーブ部41によりバルーン20の近位側スリーブ部21が形成され金型第2スリーブ部42によりバルーン20の遠位側スリーブ部23が形成されるようにすることで、バルーン20の近位側スリーブ部21の径を大きくしてシャフト3と固定し易くし、遠位側スリーブ部23の径を小さくしてバルーン20の遠位端を閉じ易くすることが可能になる。直管部43の内径は、金型第1スリーブ部41の内径以上であり且つ金型第2スリーブ部42の内径以上であることが好ましい。直管部43の内径は長手軸方向xに沿って同じであっても異なっていてもよいが、製造するバルーン20の拡張部22が長手軸方向xに実質的に同じ外径を有する筒状のバルーン20としたい場合には、直管部43の内径は長手軸方向xに沿って実質的に同じであることが好ましい。
【0044】
金型40において、直管部43の長手軸方向xの長さは、製造するバルーン20の拡張部22の長手軸方向xの長さに応じて決めることができる。また、直管部43の内径は、製造するバルーン20の拡張部22の外径に応じて決めることができる。
【0045】
金型40は、一つの部材から構成されていてもよく、複数の部材から構成されていてもよい。例えば、金型40は複数の半割体から構成されていてもよく、複数のセグメントが周方向zに接続されるように構成されていてもよい。金型40が複数の半割体やセグメントから構成されていれば、金型40の内腔40Lにパリソン30を配置することが容易になる。或いは、後述する金型400のように複数の金型のセグメントが長手軸方向xに接続されるように構成されていてもよい。
【0046】
金型40は、長手軸方向xにおいて、金型第1スリーブ部41から直管部43にかけて内腔40Lが拡径している金型第1テーパー部44と、直管部43から金型第2スリーブ部42にかけて内腔40Lが縮径している金型第2テーパー部45とを有していることが好ましい。このように、金型40が直管部43の両端に金型第1テーパー部44と金型第2テーパー部45を有していることにより、第2延伸ステップにおいて拡径部30Eの両端部から第1スリーブ部34及び第2スリーブ部35への形状移行や分子配向の移行をなだらかにできるため、形状や分子配向が急激に変化することによる応力集中を避けることができ、得られるバルーン20の機械的強度と成形性を向上することができる。
【0047】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーン20の製造方法は、金型40の内腔40Lにパリソン30を配置するステップを有するが、第1延伸ステップにおいてパリソン30は金型40の内腔40Lに配置されていてもよいし配置されていなくてもよい。
【0048】
図6に示すように、第1延伸ステップにおいてパリソン30が金型40の内腔40Lに配置されていない場合、パリソン30の近傍に配置されたヒーター50により加熱する等公知の方法で中央区間33を加熱できる。或いは、パリソン30が金型40の内腔40Lに配置されている場合、金型40の外側に配置されたヒーターにより加熱する方法、金型40自体を誘導加熱により加熱する方法等公知の方法で中央区間33を加熱できる。
【0049】
金型40の内腔40Lにパリソン30を配置するステップは、第1延伸ステップの前に実施されることが好ましい。これにより、金型40を加熱することでパリソン30を加熱することができ、中央区間33と第1区間31及び第2区間32とで加熱温度を変えることが容易になる。
【0050】
或いは、金型40の内腔40Lにパリソン30を配置するステップは、第1延伸ステップの後、且つ後述する第2延伸ステップの前に実施されてもよい。金型40の内腔40Lにパリソン30を配置するステップを第1延伸ステップの後にすることにより、第1延伸ステップにおいてパリソン30を金型40の外で扱うことができ延伸が容易になる。
【0051】
金型40の内腔40Lにパリソン30を配置するステップにおいて、金型40の金型第1スリーブ部41及び金型第2スリーブ部42の内腔には、パリソン30の第1スリーブ部34及び第2スリーブ部35がそれぞれ配置されることが好ましい。これにより、パリソン30の第1スリーブ部34及び第2スリーブ部35をバルーン20の近位側スリーブ部21及び遠位側スリーブ部23に形成することが容易になる。また、金型40の直管部43の内腔には、パリソン30の拡径部30Eが配置されることが好ましい。これにより、後述する第2延伸ステップにおいてパリソン30の拡径部30Eを直管部43に沿うように二軸延伸することが容易になる。
【0052】
図7に示すように、第1延伸ステップにおいて延伸されたパリソン30は両端部に対して中央部がくびれていてもよい。第1延伸ステップ後のパリソン30は、第1延伸ステップ前の初期状態のパリソン30に比べて拡張部30Eの長手軸方向xの長さが長く、これは、パリソン30のうち主に中央区間33が長手軸方向xに延伸されたことによる。
【0053】
或いは、図8に示すように、第1延伸ステップにおいて延伸されたパリソン30は両端部に対して中央部がくびれていなくてもよい。後述する第2延伸ステップにおける二軸延伸のし易さの観点からは、第1延伸ステップにおいて延伸されたパリソン30は両端部に対して中央部がくびれていない方が好ましい。この場合も、第1延伸ステップ後のパリソン30は、第1延伸ステップ前の初期状態のパリソン30に比べて拡張部30Eの長手軸方向xの長さが長く、これは、パリソン30のうち主に中央区間33が長手軸方向xに延伸されたことによる。
【0054】
第1延伸ステップにおいて、パリソン30の内部は加圧されてもよいし加圧されなくてもよいが、パリソン30の中央部が両端部に対してくびれてしまうことを防止し第2延伸ステップにおける延伸を容易にするためには、第1延伸ステップにおいてパリソン30の内部が加圧されることが好ましい。第1延伸ステップにおいてパリソン30の内部が加圧されることにより、長手軸方向xに延伸される中央区間33がくびれない程度に拡径部30Eを径方向yに延伸することができる。
【0055】
パリソン30の内部を加圧する方法としては、例えば、空気、窒素ガス等の気体や、純水、生理食塩水等の液体といった流体をパリソン30の内腔30Lに供給すること等が挙げられる。流体を加圧するには、例えば、ポンプ等を用いることができる。
【0056】
第1延伸ステップにおいてパリソン30の中央部がくびれないように延伸することにより、第1延伸ステップにおいて長手軸方向xに延伸される中央区間33がある程度径方向yにも延伸され、中央区間33の膜厚を薄くすることができる。中央区間33は後述する第2延伸ステップによりさらに二軸延伸されるため、得られるバルーン20を端部よりも中央区間において膜厚が薄い構成とすることができる。その結果、バルーン20が過加圧等により破壊してしまう場合であっても、中央区間で長手軸方向xの割れのきっかけを作ることができ、中央区間で生じた長手軸方向xの割れにより内圧を逃すことができるため、周方向zの割れを防止することが可能になる。
【0057】
図7及び図8に示すように、第1延伸ステップの終了後、第2延伸ステップの開始時点においては、パリソン30の拡径部30Eは金型40の直管部43の内壁に当接していないことが好ましい。これにより、第2延伸ステップにおいてパリソン30の拡径部30Eを容易に二軸延伸できる。
【0058】
第2延伸ステップでは、第1延伸ステップを終了したパリソン30の拡径部30Eをガラス転移温度Tg以上且つガラス転移温度Tg+30℃以下の温度で加熱しながら、拡径部30Eを長手軸方向x及び径方向yに二軸延伸する。このとき、拡径部30E全体が加熱されることが好ましい。拡径部30Eを上記温度で加熱しながら、パリソン30の内部を加圧することにより、拡径部30Eを二軸延伸してバルーン20を得ることができる。
【0059】
第2延伸ステップにおいて、拡径部30Eを加熱する温度は、パリソン30を構成する樹脂のガラス転移温度Tg+25℃以下がより好ましく、ガラス転移温度Tg+20℃以下がさらに好ましく、ガラス転移温度Tg+10℃以下であってもよい。第2加熱ステップにおいて拡径部30Eを上記範囲の温度で加熱することにより拡径部30Eを長手軸方向x及び径方向yに二軸延伸し易くできる。
【0060】
第2延伸ステップにおいて、拡径部30Eは、金型40の外側に配置されたヒーターにより加熱する方法、金型40自体を誘導加熱により加熱する方法等公知の方法で加熱できる。
【0061】
第2延伸ステップでは、例えば、空気、窒素ガス等の気体や、純水、生理食塩水等の液体といった流体をパリソン30の内腔30Lに供給すること等によりパリソン30の内部を加圧することにより、拡径部30Eを二軸延伸できる。流体はポンプ等により加圧できる。中でも、第2延伸ステップでは、圧縮された気体を用いてパリソン30の内部を加圧することにより、パリソン30がブロー成形されることが好ましい。パリソン30に圧縮した気体を送り込んで内部を加圧してバルーン20を製造できるため、バルーン20の製造効率を高めることができる。
【0062】
図9に示すように、第2延伸ステップが終了した時点において、パリソン30の拡径部30Eは金型40の内腔40Lに沿うように二軸延伸されていることが好ましい。これにより、金型40の内腔40Lの形状により得られるバルーン20の形状をデザインすることが容易になる。
【0063】
第1延伸ステップにおいて、拡径部30Eの内圧を0bar(0MPa)以上30bar(3MPa)以下に保持しながら拡径部30Eの少なくとも中央区間33を延伸し、第2延伸ステップにおいて、第1延伸ステップにおいて拡径部30Eにかけられた内圧よりも高い内圧を拡径部30Eにかけることにより拡径部30Eを二軸延伸することが好ましい。なお、内圧は絶対圧ではなく、ゲージ圧、即ち大気圧にプラスされる圧力である。
【0064】
第1延伸ステップにおいて、パリソン30の拡径部30Eにかける内圧は、2bar(0.2MPa)以上がより好ましく、5bar(0.5MPa)以上がさらに好ましく、7bar(0.7MPa)以上、10bar(1MPa)以上であってもよい。第1延伸ステップにおいて拡径部30Eにかける内圧の下限が上記範囲であることにより、長手軸方向xに延伸される中央区間33がくびれることを防止でき、第2延伸ステップにおける二軸延伸が容易に行えるようになる。また、第1延伸ステップにおいて、パリソン30の拡径部30Eにかける内圧は、25bar(2.5MPa)以下がより好ましく、20bar(2MPa)以下がさらに好ましく、15bar(1.5MPa)以下であってもよい。第1延伸ステップにおいては、拡径部30Eにかける内圧の上限を上記範囲にすることにより、中央区間33を必要以上に径方向yに延伸することなく応力歪曲線の点Aを超えるまで長手軸方向xに延伸することができる。
【0065】
第2延伸ステップにおいて、パリソン30の拡径部30Eにかける内圧は、10bar(1MPa)以上が好ましく、15bar(1.5MPa)以上がより好ましく、30bar(3MPa)以上がさらに好ましく、また、60bar(6MPa)以下が好ましく、50bar(5MPa)以下がより好ましく、40bar(4MPa)以下がさらに好ましい。第2延伸ステップにおいてパリソン30の拡径部30Eに第1延伸ステップにおける内圧よりも大きい上記範囲の内圧をかけることにより、拡径部30Eを長手軸方向x及び径方向yに二軸延伸させてバルーン20を得ることが容易になる。
【0066】
第1延伸ステップにおいて、パリソン30の第1区間31及び第2区間32は、応力歪曲線の点Aにおける歪を超えないように延伸されることが好ましい。第1延伸ステップにおいてパリソン30の第1区間31及び第2区間32、即ち両端部が延伸されたとしても、その延伸が応力歪曲線の点Aにおける歪を超えないような延伸であることにより、中央区間33では樹脂の分子が弛緩して分子鎖が動きやすい状態で長手軸方向xに配列する一方、両端部では樹脂の分子が動けず分子鎖が延伸の影響を殆ど受けないため、中央区間において長手軸方向xの分子配向を有するバルーン20を得ることが容易になる。
【0067】
第1延伸ステップにおける延伸速度は、第2延伸ステップにおける延伸速度よりも遅いことが好ましい。第1延伸ステップにおける延伸速度は、例えば、25mm/s以下が好ましく、20mm/s以下がより好ましく、10mm/s以下がさらに好ましく、また、3mm/s以上が好ましく、5mm/s以上がより好ましい。第1延伸ステップにおける延伸速度が上記範囲であることにより、第1延伸ステップにおいてパリソン30の中央部がくびれ過ぎることを防止できる。第2延伸ステップにおける延伸速度は、例えば、200mm/s以下が好ましく、180mm/s以下がより好ましく、160mm/s以下がさらに好ましく、また、100mm/s以上が好ましく、120mm/s以上がより好ましく、140mm/s以上がさらに好ましい。第2延伸ステップにおける延伸速度が上記範囲であることにより、効率よくバルーン20を製造することができる。
【0068】
本発明の実施形態に係るバルーンカテーテル用バルーン20の製造方法は、さらに、第2延伸ステップの後に、拡径部30Eを樹脂の結晶化温度Tc以上の温度にする工程を含むことが好ましい。この工程は、金型40を結晶化温度Tc以上の温度に加熱することにより行ってもよい。第2延伸ステップ終了時には、パリソン30の拡径部30Eは金型40の内腔40Lの形状により画定されるバルーン20の拡張部22の形状に形成されているが、この後にパリソン30の拡径部30Eを樹脂の結晶化温度Tc以上の温度にすることにより樹脂の結晶化を促進し、拡径部30Eの形状固定を行うことができる。これは、第2延伸ステップ終了時に配向している分子同士の分子間力による結合を促進することにより、形状が固定できるためであると考えられる。この工程を行わないと、パリソン30から成形されたバルーン20を金型40から取り出した際に、バルーン20が著しく収縮してしまうことがある。
【0069】
なお、結晶化温度Tcは、JIS K7121に準拠して測定し、示差走査熱量計を使用して樹脂サンプル5mgを0℃~250℃の温度範囲において昇温速度20℃/分で昇温し、この温度に10分間保った後、冷却速度20℃/分で結晶化ピーク終了時より約50℃低い温度まで冷却し、DSC曲線から得られた補外結晶化開始温度を結晶化温度Tcとすることができる。
【0070】
例えば、パリソン30を構成する樹脂としてポリアミド系樹脂を使用する場合は、結晶化温度Tcは130℃~155℃である。パリソン30を構成する樹脂として他の樹脂を使用する場合は、上記温度に限定されず、上記方法に従って結晶化温度Tcを求めることができる。
【0071】
第1延伸ステップにおいて、パリソン30を構成する樹脂のガラス転移温度Tg未満の温度で第1区間31及び第2区間32を加熱してもよい。これにより、第1延伸ステップにおける延伸をより容易に行うことができる。
【0072】
上記のように第1延伸ステップにおいてパリソン30を長手軸方向xに沿って異なる温度で加熱する場合、図10に示すような金型400を用いることもできる。
【0073】
図10に示すように、金型400は第1端領域401と、第2端領域402と、長手軸方向xにおいて第1端領域401と第2端領域402の間に位置する中央領域403とを有しており、第1端領域401と第2端領域402と中央領域403とはそれぞれ独立して加熱できることが好ましい。第1端領域401と第2端領域402と中央領域403とがそれぞれ独立して加熱できることにより、パリソン30の第1区間31、第2区間32、及び中央区間33をそれぞれ別の温度で加熱することが容易になる。
【0074】
金型400の第1端領域401と第2端領域402と中央領域403は、それぞれ別部材で構成され、これら別部材が長手軸方向xに連結されることにより金型400が形成されることが好ましい。長手軸方向xにおいて、第1端領域401と中央領域403との間や第2端領域402と中央領域403との間には、さらに別の部材が設けられていてもよい。
【0075】
金型400の第1端領域401、第2端領域402、及び中央領域403は、それぞれ一つの部材から構成されていてもよく、それぞれが金型400のセグメントであってもよい。或いは、金型400は半割体から構成されていてもよく、複数のセグメントが周方向zに接続されるように構成されていてもよい。金型400が複数の半割体やセグメントから構成されていれば、金型400の内腔40Lにパリソン30を配置することが容易になる。
【0076】
金型400は、長手軸方向xにおいて、金型第1スリーブ部410から直管部430にかけて内腔40Lが拡径している金型第1テーパー部440と、直管部430から金型第2スリーブ部420にかけて内腔400Lが縮径している金型第2テーパー部450とを有していることが好ましい。このように、金型400が直管部430の両端に金型第1テーパー部440と金型第2テーパー部450を有していることにより、第2延伸ステップにおいて拡径部30Eの両端部から第1スリーブ部34及び第2スリーブ部35への形状移行や分子配向の移行をなだらかにできるため、形状や分子配向が急激に変化することによる応力集中を避けることができ、得られるバルーン20の機械的強度と成形性を向上することができる。
【符号の説明】
【0077】
1:バルーンカテーテル
3:シャフト
4:ハブ
5:ガイドワイヤ挿入部
6:流体注入部
20:バルーン
21:バルーンの近位側スリーブ部
22:バルーンの拡張部
23:バルーンの遠位側スリーブ部
30:パリソン
30E:パリソンの拡径部
30L:パリソンの内腔
31:パリソンの第1区間
32:パリソンの第2区間
33:パリソンの中央区間
34:パリソンの第1スリーブ部
35:パリソンの第2スリーブ部
40:金型
40L:金型の内腔
41:金型第1スリーブ部
42:金型第2スリーブ部
43:直管部
44:金型第1テーパー部
45:金型第2テーパー部
50:ヒーター
400:金型
401:第1端領域
402:第2端領域
403:中央領域
410:金型第1スリーブ部
420:金型第2スリーブ部
430:直管部
440:金型第1テーパー部
450:金型第2テーパー部
B:降伏点
:0%の位置
10:10%の位置
45:45%の位置
55:55%の位置
90:90%の位置
100:100%の位置
L:下降伏点
:ネッキング領域
x:長手軸方向
y:径方向
z:周方向
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10