(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183919
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】磁気記録情報処理装置及び磁気記録情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G11B 20/10 20060101AFI20231221BHJP
G11B 20/14 20060101ALI20231221BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20231221BHJP
G11B 5/09 20060101ALI20231221BHJP
G06K 7/08 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G11B20/10 321Z
G11B20/10 321A
G11B20/14 341B
G11B5/02 Z
G11B5/09 321A
G11B5/09 361B
G11B5/09 371C
G06K7/08 040
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097726
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】二村 史彦
【テーマコード(参考)】
5D044
【Fターム(参考)】
5D044CC08
5D044DE68
5D044FG05
5D044FG10
5D044FG12
5D044FG14
5D044FG21
5D044GK03
5D044GK19
5D044GL02
5D044GM11
(57)【要約】
【課題】磁気カードなどの磁気記録媒体から情報を読み出す磁気記録情報処理装置において、コストの上昇を抑えつつ、ヘッド-媒体間速度の広い範囲にわたって安定して情報を読み出す。
【解決手段】磁気記録情報処理装置は、磁気再生波形をデジタル信号に変換するAD変換部21と、変換後のデジタル信号を第1のサンプリング周期でデータとして蓄積するメモリ22と、変換後のデジタル信号を、第1のサンプリング周期より長い第2のサンプリング周期でサンプリングする間引き処理部23と、復調処理を行う復調処理部24と、間引き処理部23によってサンプリングされたデジタル信号に基づいて復調処理部24にリアルタイムでの復調処理を実行させ、リアルタイムでの復調処理において失敗したときに、復調処理部24に、メモリに蓄積されたデータに基づく復調処理を実行させる制御部25と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体から情報を読み出す磁気記録情報処理装置であって、
前記磁気記録媒体を読み取って磁気再生波形を出力する磁気ヘッドと、
前記磁気再生波形をデジタル信号に変換するAD変換部と、
前記デジタル信号を第1のサンプリング周期でサンプリングしてデータとして蓄積するメモリと、
前記デジタル信号を、前記第1のサンプリング周期より長い第2のサンプリング周期でサンプリングする間引き処理部と、
前記情報の復調処理を行う復調処理部と、
前記間引き処理部によってサンプリングされた前記デジタル信号に基づいて前記復調処理部にリアルタイムでの復調処理を実行させ、前記リアルタイムでの復調処理において失敗したときに、前記復調処理部に、前記メモリに蓄積された前記データに基づく復調処理を実行させる制御部と、
を有する、磁気記録情報処理装置。
【請求項2】
前記第2のサンプリング周期は前記第1のサンプリング周期の整数倍である、請求項1に記載の磁気記録情報処理装置。
【請求項3】
前記AD変換部でのサンプリング周期は前記第1のサンプリング周期と等しい、請求項2に記載の磁気記録情報処理装置。
【請求項4】
前記磁気記録媒体は磁気カードである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁気記録情報処理装置。
【請求項5】
手動式の磁気記録情報処理装置である、請求項4に記載の磁気記録情報処理装置。
【請求項6】
磁気記録媒体から情報を読み出す磁気記録情報処理方法であって、
前記磁気記録媒体を磁気ヘッドで読み取って得られた磁気再生波形をデジタル信号に変換する変換工程と、
前記デジタル信号を第1のサンプリング周期でサンプリングしてデータとしてメモリに蓄積する工程と、
前記デジタル信号を、前記第1のサンプリング周期より長い第2のサンプリング周期でサンプリングしてリアルタイムで前記情報の復調を行う第1の復調工程と、
前記第1の復調工程において前記情報の復調に失敗したときに、前記メモリに蓄積された前記データを用いて前記情報の復調を行う第2の復調工程と、
を有する、磁気記録情報処理方法。
【請求項7】
前記第2のサンプリング周期は前記第1のサンプリング周期の整数倍である、請求項6に記載の磁気記録情報処理方法。
【請求項8】
前記変換工程でのサンプリング周期は前記第1のサンプリング周期と等しい、請求項7に記載の磁気記録情報処理方法。
【請求項9】
前記磁気記録媒体は磁気カードである、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の磁気記録情報処理方法。
【請求項10】
利用者の手による動作により前記磁気ヘッドに対して前記磁気記録媒体を相対的に移動させる、請求項9に記載の磁気記録情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気カードなどの磁気記録媒体から情報を読み出すときに用いられる磁気記録情報処理装置と磁気記録情報処理方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気カードなどの磁気記録媒体では、その磁性面における磁化の方向を反転させることすなわち磁化反転を形成することによって情報の記録が行われる。例えば、磁性面において隣接する2つの磁化反転の間隔が長いことを“0”に対応させ、短い間隔での磁化反転が2回連続することを“1”に対応させるなどして、“0”及び“1”の二値の情報記録が行われる。このようにして情報が記録された磁気記録媒体からその情報を読み出すときは、磁気記録媒体を磁気ヘッドに近接させた状態で磁気ヘッドに対して磁気記録媒体を一定方向に搬送する。すると、磁性面での磁化反転位置に対応してピークとなるように磁気ヘッドに誘起電圧が発生し、磁気ヘッドは磁気再生波形の信号を出力する。磁気再生波形に含まれるピークには、正方向のピーク(いわゆる山)と負方向のピーク(谷)とがあり、正方向のピークと負方向のピークとが交互に現れる。そこで、磁気再生波形に対してアナログ/デジタル変換(AD変換)を行い、得られたデジタル信号に基づいてピークを検出し、一連のピークにおける時間間隔の判別を行うことにより、磁気記録媒体からの情報の読み出し、すなわち復調を行うことができる。
【0003】
ところで、磁気記録媒体からの情報の読み出しに用いられる、例えば、磁気カードリーダなどの磁気記録情報処理装置では、磁気ヘッドと磁気カードとの相対的な運動を実現する方法として、モータによって磁気記録媒体を搬送する方法と、利用者が自ら磁気カードを手に持って磁気カードを磁気ヘッドに対して相対的に動かす方法とがある。前者の方法を用いる磁気記録情報処理装置は、磁気ヘッドに対する磁気記録媒体の速度を一定とすることが容易であり、安定した復調を行うことができるが、モータや搬送ローラなどを必要として部品点数が増え、装置の小型化が難しい、という課題を有する。これに対して利用者の手で磁気記録媒体を移動させる後者の方法による磁気記録情報処理装置すなわち手動式の磁気記録情報処理装置は、部品点数を少なくすることができ、装置の小型化が容易であり、低コストの装置とすることができる。手動式の磁気記録情報処理装置には、スワイプ式の装置やディップ式の装置の装置などが知られている。
【0004】
ここで磁気ヘッドに対する磁気記録媒体の相対速度のことをヘッド-媒体間速度と呼ぶことにする。特にスワイプ式の装置においては、ヘッド-媒体間速度はスワイプ速度である。磁気記録情報処理装置では、磁気再生波形の振幅はヘッド-媒体間速度に比例するから、利用者自身がその手で磁気記録媒体を動かす手動式の磁気記録情報処理装置では、ヘッド-媒体間速度が小さくて磁気再生波形の振幅も小さくなり、その結果、復調が適切に行えなくなることがある。そこで特許文献1は、スワイプ式あるいはディップ式の磁気記録情報処理装置において、増幅率(利得)が異なる2つの増幅器に磁気再生波形を増幅し、増幅後の信号をそれぞれ別のAD変換器でデジタル信号に変換し、磁気再生波形の振幅に応じてこれらのAD変換器からのデジタル信号を切り替えて復調に用いることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
磁気記録媒体から情報の読み出しを行う場合、磁気再生波形を取得しながら並行して復調を行うリアルタイム復調と、磁気再生波形をAD変換していったんメモリに格納し、対象とする磁気記録媒体からの磁気再生波形の取得が終わってからメモリに格納されたデータを対象として一括して復調を行う蓄積一括復調とがある。これらの復調動作は、CPU(中央処理装置)やマイクロプロセッサなどのプロセッサを用いて行われる。リアルタイム復調は、ヘッド-媒体間速度が大きいときには、高速処理が可能なプロセッサを必要とする。一方、蓄積一括復調は、AD変換後のデジタルデータをいったんメモリに蓄積するので、プロセッサとしては高速処理が可能なものである必要はないが、一連の磁気再生波形の全体をメモリに蓄積する必要があり、AD変換でのサンプリングレートが一定であるとしてヘッド-媒体間速度が小さいときには必要となるメモリ容量が大きくなる。手動式の磁気記録情報処理装置では、利用者が磁気記録媒体をゆっくり動かすか素早く動かすかによってヘッド-媒体間速度が大きくばらつくので、ヘッド-媒体間速度の最大値に合わせて装置を設計すると高速処理が可能なプロセッサを必要とし、ヘッド-媒体間速度の最小値に合わせて装置を設計するとメモリ容量を大きくする必要がある。高速処理が可能なプロセッサを用いることやメモリ容量を大きくすることは、いずれもコスト上昇の要因となり、このため、低コストであることも目的とする手動式の磁気記録情報処理装置におけるコスト面での大きな制約となる。また、必要なメモリ容量の確保のために外付けメモリを用いる場合には、装置の小型化が阻害されるとともに、バス設計の変更などを必要として装置における基板設計を難しくする。
【0007】
本発明の目的は、コストの上昇などを伴なうことなく、ヘッド-媒体間速度の大小にかかわらずに安定して磁気記録媒体から情報を読み出すことができる磁気記録情報処理装置及び磁気記録情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、磁気記録媒体から情報を読み出す磁気記録情報処理装置は、磁気記録媒体を読み取って磁気再生波形を出力する磁気ヘッドと、磁気再生波形をデジタル信号に変換するAD変換部と、デジタル信号を第1のサンプリング周期でサンプリングしてデータとして蓄積するメモリと、デジタル信号を、第1のサンプリング周期より長い第2のサンプリング周期でサンプリングする間引き処理部と、情報の復調処理を行う復調処理部と、間引き処理部によってサンプリングされたデジタル信号に基づいて復調処理部にリアルタイムでの復調処理を実行させ、リアルタイムでの復調処理に失敗したときに、復調処理部に、メモリに蓄積されたデータに基づく復調処理を実行させる制御部と、を有する。
【0009】
上述の磁気記録情報処理装置では、磁気再生波形をデジタル信号に変換した後に、第1のサンプリング周期よりも長い第2のサンプリング周期を用いてリアルタイム復調を行うので、復調に用いるプロセッサとして、ヘッド-媒体間速度が低速から中速領域であるときに対応できる比較的安価なものを使用できる。このとき、ヘッド-媒体間速度が高速であるとリアルタイム復調においてエラーが発生し、リアルタイム復調に失敗するが、この場合にはメモリに既に蓄積されているデータを用いて蓄積一括復調を行う。メモリは、ヘッド-媒体間速度が高速または中高速であるときに一連の磁気再生波形の全体を格納できる容量だけを有すればよいので、比較的小容量のものとすることができる。したがってこの磁気記録情報処理装置は、コストの上昇などを伴なうことなく、ヘッド-媒体間速度によらずに安定して情報の読み出しを行うことができる。
【0010】
本発明の一態様の磁気記録情報処理装置においては、第2のサンプリング周期を第1のサンプリング周期の整数倍とすることが好ましい。また、AD変換部でのサンプリング周期を第1のサンプリング周期と等しくすることも好ましい。このように第2のサンプリング周期やAD変換部でのアナログ/デジタル変換のサンプリング周期を設定することにより、処理負荷を低減することができる。
【0011】
本発明の一態様の磁気記録情報処理装置では、磁気記録媒体は磁気カードである。磁気カードに記録される情報量は規格によって定められており、これにより、メモリに必要な容量を見積もりやすくなる。また、磁気記録情報処理装置は、手動式の磁気記録情報処理装置であってよい。手動式の磁気記録情報処理装置では利用者が手で磁気カードなどの磁気記録媒体を動かすので、利用者が磁気記録媒体から情報を読み出そうとするごとにヘッド-媒体間速度が大きく異なる可能性があるが、本発明の一態様の磁気記録情報処理装置によれば、ヘッド-媒体間速度によらず、安定して磁気記録媒体から情報の読み出しを行えるようになる。
【0012】
本発明の別の態様によれば、磁気記録媒体から情報を読み出す磁気記録情報処理方法は、磁気記録媒体を磁気ヘッドで読み取って得られた磁気再生波形をデジタル信号に変換する変換工程と、デジタル信号を第1のサンプリング周期でサンプリングしてデータとしてメモリに蓄積する工程と、デジタル信号を、第1のサンプリング周期より長い第2のサンプリング周期でサンプリングしてリアルタイムで情報の復調を行う第1の復調工程と、第1の復調工程において情報の復調に失敗したときに、メモリに蓄積されたデータを用いて情報の復調を行う第2の復調工程と、を有する。
【0013】
本発明の別の態様の磁気記録情報処理方法では、磁気再生波形をデジタル信号に変換した後に、第1の復調工程において、第1のサンプリング周期よりも長い第2のサンプリング周期を用いてリアルタイム復調を行い、第1の復調工程においてエラーが発生し情報の復調に失敗したときには、メモリに既に蓄積されているデータを用いて第2の復調工程において蓄積一括復調を行う。リアルタイム復調におけるサンプリング周期は第2のサンプリング周期であって相対的に長く、また、蓄積一括復調には処理速度は要求されないので、この磁気記録情報処理方法では、使用するプロセッサとして処理速度が比較的低速なものを使用することができる。またメモリとしては、ヘッド-媒体間速度が高速あるいは中高速のときの一連の磁気再生波形の全体を格納できるだけの容量があればよいので、比較的小容量のものを使用できる。したがってこの磁気記録情報処理方法によれば、装置コストの上昇を伴なわずに、ヘッド-媒体間速度によらずに安定して情報の読み出しを行うことができる。
【0014】
本発明の別の態様の磁気記録情報処理方法では、第2のサンプリング周期を第1のサンプリング周期の整数倍とすることが好ましい。また、アナログ信号である磁気再生波形をデジタル信号に変換するときのサンプリング周期を第1のサンプリング周期と等しくすることも好ましい。このように第2のサンプリング周期やアナログ/デジタル変換のサンプリング周期を設定することにより、処理負荷を低減することができる。
【0015】
本発明の別の態様の磁気記録情報処理方法において、磁気記録媒体は磁気カードである。磁気カードに記録される情報量は規格によって定められており、これにより、規格によって定められた情報量に応じて蓄積一括復調に用いるメモリの容量を選択することが可能になる。また磁気記録情報処理方法では、磁気記録媒体は、例えば利用者に手による動作によって磁気ヘッドに対して相対的に動かされる。利用者の手による例えばスワイプ動作やディップ動作などの動作ではその動作が行われるごとにヘッド-媒体間速度が大きく異なる可能性があるが、この磁気記録情報処理方法を適用することに追って、ヘッド-媒体間速度によらず、安定して磁気記録媒体から情報の読み出しを行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば処理速度が比較的低くかつメモリ容量が比較的小さなプロセッサを使用可能になるなど、低コストで、ヘッド-媒体間速度の広い範囲にわたって磁気記録媒体から安定して情報を読み出すことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の一形態の磁気カードリーダを示すブロック図である。
【
図2】磁気データの復調処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。以下では、磁気情報媒体が磁気カードであって、磁気記録媒体から情報を読み出す磁気記録情報処理装置が磁気カードリーダである場合を例に挙げて本発明の実施の形態の一例を説明するが、本発明が適用可能な磁気情報媒体は磁気カードに限定されるものではなく、また本発明が適用可能な磁気記録情報処理装置は磁気カードリーダに限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施の一形態の磁気カードリーダの構成を示している。この磁気カードリーダは、スワイプ式あるいはディップ式などの手動式の磁気カードリーダであるが、ここではスワイプ式の磁気カードリーダであるものとする。磁気カードリーダは、磁気カードの磁気ストライプに記録された磁気情報を読み取って磁気再生波形をアナログ信号として出力する磁気ヘッド10と、磁気ヘッド10から出力される磁気再生波形を増幅する増幅器11と、増幅後の磁気再生波形に対してアナログ/デジタル変換(AD変換)を行って磁気再生波形をデジタル信号に変換し、このデジタル信号に対して信号処理を行って磁気情報を復調しデータとして出力するプロセッサ20とを備えている。
【0020】
プロセッサ20は、磁気再生波形のAD変換を行うAD変換部21と、ランダムアクセスメモリ(RAM)として構成されたメモリ22と、AD変換後のデジタル信号を間引く間引き処理部23と、磁気再生波形から得られたデジタル信号に基づいて磁気情報の復調を行う復調処理部24と、磁気情報の復調に関する処理の全体を制御する制御部25と、を備えている。メモリ22は、AD変換後のデジタル信号を第1のサンプリング周期でサンプリングしてデータとして蓄積する。AD変換でのサンプリング周期を不必要に短くしないように、言い換えればAD変換のサンプリング周波数を不必要に高くしないように、AD変換部21でのAD変換のサンプリング周期を第1のサンプリング周期と等しくして、AD変換部21において磁気再生波形のAD変換を行うごとにAD変換によって得られたデジタル値をメモリ22に格納するように構成することが好ましい。間引き処理部23は、AD変換後のデジタル信号を、第1のサンプリング周期より長い第2のサンプリング周期でサンプリングして復調処理部24に送る。第2のサンプリング周期は、第1のサンプリング周期の整数倍であることが好ましい。例えば、第1のサンプリング周期はマイクロ秒のオーダーのものであり、第2のサンプリング周期は、第1のサンプリング周期の2倍から10倍の長さである。一例として、第1のサンプリング周期は5μsであるときに、第2のサンプリング周期は、10μs、15μsあるいは20μsである。
【0021】
スワイプ式の磁気カードリーダでは、利用者が磁気カードを読み込ませるごとに、スワイプ速度すなわちヘッド-媒体間速度が大きく異なる可能性がある。予想されるスワイプ速度を高速、中速及び低速の例えば3段階に分け、さらに中速を高速よりの中高速と低速よりの中低速の2つに細分するとして、第1のサンプリング周期は、スワイプ速度が高速であるときでの磁気再生波形からピーク位置を検知して磁気情報を適切に復調できるようなサンプリング周期とされる。第2のサンプリング周期は、スワイプ速度が中速から低速であるときに磁気再生波形からピーク位置を検知して磁気情報を適切に復調できるものであればよく、スワイプ速度が高速であるときにもピーク位置を検知できるものである必要はない。磁気再生波形の時間的な長さは、スワイプ速度に反比例するが、メモリ22のデータ容量は、スワイプ速度が高速あるいは中高速であるときに第1のサンプリング周波数で磁気再生波形をサンプリングしたとして磁気再生波形の全体を格納できるようなものとされる。この場合、メモリ22の容量は、スワイプ速度が低速である場合に第1のサンプリング周波数で磁気再生波形の全体を格納するために必要な容量を下回っていてもよい。
【0022】
次に、復調処理部24での復調処理について説明する。間引き処理部23では磁気再生波形を示すデジタルデータが第2のサンプリング周期を用いて間引かれており、復調処理部24は、間引き処理部23において間引かれたデータを対象としてリアルタイムで磁気再生波形におけるピークの位置を検出し、検出されたピーク位置に基づいて磁気情報の復調を行う。この処理は第1の復調工程での処理であるが、リアルタイムでの処理であることにより失敗することがある。リアルタイム復調に失敗したことは、例えば、磁気情報におけるSS(スタートセンチネル)やES(エンドセンチネル)を検出できない、復調後のデータのパリティチェック結果が不正である、などのエラー事象が発生したことによって検出することができる。磁気情報の復調は、磁気再生波形における波形変化の速さによって定まる適切なサンプリング周期を用いてピークの検出を行えることを前提とするものであり、リアルタイム復調においてはサンプリング周期(この場合は第2のサンプリング周期)が適切なサンプリング周期よりも長すぎる場合には復調に失敗することになる。本実施形態では、復調処理部24において磁気再生波形のリアルタイム復調に失敗した場合には、復調処理部24は、メモリ22に既に蓄積されている磁気再生波形のデジタルデータを使用して、第2の復調工程として、磁気再生波形の蓄積一括復調を行う。メモリ22に蓄積されているデータは、リアルタイム復調に用いたサンプリング周期よりも短い周期である第1のサンプリング周期によって磁気再生波形をサンプリングしたデータであるから、サンプリング周期が長すぎることに起因するエラーは発生しない。本実施形態の磁気カードリーダからは、第1の復調工程で復調に成功したときはその復調データが、第1の復調工程で復調に失敗したときは第2の復調工程で得られた復調データが、磁気カードから読み出された情報として出力される。制御部25は、第1の復調工程と第2の復調工程の切り替えを含めて磁気情報の復調に関する処理の全体を制御し、復調後のデータを例えば上位装置に向けて出力する。
【0023】
プロセッサ20は、実際には例えば組み込み用のマイクロプロセッサあるいはCPU(中央処理装置)によって構成されており、間引き処理部23、復調処理部24及び制御部25は、マイクロプロセッサあるいはCPUにおいてソフトウェアを実行することによって機能として実現されるものである。以下、
図2を用いて制御部25による処理の詳細を説明することにより、本実施形態の磁気記録情報処理装置についてさらに詳しく説明する。
【0024】
利用者がスワイプ動作によって磁気カードを磁気カードリーダに読み込ませると、磁気カードに記録された磁気情報により、磁気ヘッド10が出力する磁気再生波形にまず変化が表われる。制御部25は、AD変換部21の出力を監視しており、ステップ101において、磁気ヘッド10が磁気カードに記録された磁気情報による磁気を検知したかどうかを判定し、磁気を検知するまで待ち合わせる。磁気を検知したら、制御部25は、AD変換部21が出力するデータをメモリ22に保存することを開始する。これにより、ステップ102において、第1のサンプリング周期でサンプリングされた磁気再生波形のデータがメモリ22に保存され、ステップ103において、第2のサンプリング周波数によって間引かれたデータに基づいて復調処理部24がリアルタイム復調(すなわち第1の復調工程)を実行する。メモリ22の容量には限界があるので、制御部25は、ステップ104において、メモリ22の記憶容量が満杯になって保存が終了したかどうかを判断し、保存が終了していなければステップ102からの処理が繰り返し実行されるようにする。メモリ22での保存が終了していれば、ステップ105において、復調処理部24は引き続いてリアルタイム復調を実行する。
【0025】
磁気ヘッド10からの磁気情報の読み取りが終了すると磁気再生波形がフラットになって磁気が終了するので、制御部25は、ステップ106において磁気が終了したかどうかを判定し、磁気が終了していなければステップ105に戻ってリアルライム復調を引き続き実行させ、磁気が終了していれば、ステップ107において、リアルタイム復調に成功したかどうかを判定する。成功していれば、制御部25は、ステップ109において、復調処理部24からの復調データをそのまま出力データとして出力し、磁気カードからの情報の読み出しの処理を終了する。一方、ステップ107においてリアルタイム復調に失敗したと判定したときは、制御部25は、ステップ108において、メモリ22内のデータを利用した蓄積一括復調(すなわち第2の復調工程)を復調処理部24に実行させ、その後、ステップ109において、蓄積一括復調による復調データを出力データとして出力し、磁気カードからの情報の読み出しの処理を終了する。
【0026】
以上の処理を実行することにより、本実施形態では、スワイプ速度が低速から中速であるときはリアルタイム復調により磁気情報の復調が行われ、スワイプ速度が高速であるときは、メモリ22に既に蓄積されているデータに基づく蓄積一括復調により磁気情報の復調が行われる。したがって、復調処理部24として処理速度が比較的遅いものを使用しつつ、スワイプ速度が高速の場合にも磁気カードから安定して情報を読み出すことができる。また、メモリとして、高速から中高速のスワイプ速度に対応した比較的少容量のものを使用できる。その結果、本実施形態によれば、プロセッサやメモリのコストの上昇を抑えつつ、スワイプ速度の広い範囲にわたって磁気カードから安定して情報を読み出すことができるようになる。
【0027】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
【0028】
(1) 磁気記録媒体から情報を読み出す磁気記録情報処理装置であって、
前記磁気記録媒体を読み取って磁気再生波形を出力する磁気ヘッドと、
前記磁気再生波形をデジタル信号に変換するAD変換部と、
前記デジタル信号を第1のサンプリング周期でサンプリングしてデータとして蓄積するメモリと、
前記デジタル信号を、前記第1のサンプリング周期より長い第2のサンプリング周期でサンプリングする間引き処理部と、
前記情報の復調処理を行う復調処理部と、
前記間引き処理部によってサンプリングされた前記デジタル信号に基づいて前記復調処理部にリアルタイムでの復調処理を実行させ、前記リアルタイムでの復調処理において失敗したときに、前記復調処理部に、前記メモリに蓄積された前記データに基づく復調処理を実行させる制御部と、
を有する、磁気記録情報処理装置。
【0029】
(2) 前記第2のサンプリング周期は前記第1のサンプリング周期の整数倍である、(1)に記載の磁気記録情報処理装置。
【0030】
(3) 前記AD変換部でのサンプリング周期は前記第1のサンプリング周期と等しい、(1)または(2)に記載の磁気記録情報処理装置。
【0031】
(4) 前記磁気記録媒体は磁気カードである、(1)乃至(3)のいずれかに記載の磁気記録情報処理装置。
【0032】
(5) 手動式の磁気記録情報処理装置である、(1)乃至(4)のいずれかに記載の磁気記録情報処理装置。
【0033】
(6) 磁気記録媒体から情報を読み出す磁気記録情報処理方法であって、
前記磁気記録媒体を磁気ヘッドで読み取って得られた磁気再生波形をデジタル信号に変換する変換工程と、
前記デジタル信号を第1のサンプリング周期でサンプリングしてデータとしてメモリに蓄積する工程と、
前記デジタル信号を、前記第1のサンプリング周期より長い第2のサンプリング周期でサンプリングしてリアルタイムで前記情報の復調を行う第1の復調工程と、
前記第1の復調工程において前記情報の復調に失敗したときに、前記メモリに蓄積された前記データを用いて前記情報の復調を行う第2の復調工程と、
を有する、磁気記録情報処理方法。
【0034】
(7) 前記第2のサンプリング周期は前記第1のサンプリング周期の整数倍である、(6)に記載の磁気記録情報処理方法。
【0035】
(8) 前記変換工程でのサンプリング周期は前記第1のサンプリング周期と等しい、(6)または(7)に記載の磁気記録情報処理方法。
【0036】
(9) 前記磁気記録媒体は磁気カードである、(6)乃至(8)のいずれかに記載の磁気記録情報処理方法。
【0037】
(10) 利用者の手による動作により前記磁気ヘッドに対して前記磁気記録媒体を相対的に移動させる、(6)乃至(9)のいずれかに記載の磁気記録情報処理方法。
【符号の説明】
【0038】
10…磁気ヘッド;11…増幅器;20…プロセッサ;21…AD変換部;22…間引き処理部;23…復調処理部;24…メモリ;25…制御部。