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特開2023-183935カードリーダ及びカード引き抜き検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183935
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】カードリーダ及びカード引き抜き検出方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 13/06 20060101AFI20231221BHJP
   G06K 13/067 20060101ALI20231221BHJP
   G06K 7/08 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G06K13/06 C
G06K13/067 Z
G06K7/08 040
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097751
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 宗政
【テーマコード(参考)】
5B023
【Fターム(参考)】
5B023DA02
5B023FA03
5B023GA02
(57)【要約】
【課題】挿入途中のカードが引き抜かれることを検出するモータ搬送式のカードリーダを提供する。
【解決手段】
挿入口Sは、カード2が挿入される。ゲートセンサ50は、挿入口Sにカード2が挿入されたことを検知する。搬送路Cは、挿入口Sから挿入されたカード2が搬送される。搬送部は、モータ等の駆動部20を含み、搬送路C内でカード2を搬送する。搬送検知センサは、搬送路Cを搬送されるカード2を検知する。制御部10は、ゲートセンサ50がオンの状態で、搬送検知センサがオフ、オン、オフと変化した場合、駆動部20を、特定時間だけ第一方向に回転させた後、特定時間だけ第二方向に回転させ、カード2が挿入口Sの方向に移動する方向に駆動部20を回転させた方が、逆方向に回転させた場合より負荷が少ない場合に、カード2が挿入途中で引き抜かれたと判断する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入される挿入口と、
前記挿入口に前記カードが挿入されたことを検知する挿入検知センサと、
前記挿入口から挿入された前記カードが搬送される搬送路と、
駆動部を含み、前記搬送路内で前記カードを搬送する搬送部と、
前記搬送路を搬送されるカードを検知する搬送検知センサと、
前記挿入検知センサがオンの状態で、前記搬送検知センサがオフ、オン、オフと変化した場合、前記駆動部を、特定時間だけ第一方向に回転させた後、前記特定時間だけ第二方向に回転させて、前記カードが前記挿入口の方向に移動する方向に前記駆動部を回転させた方が、逆方向に回転させた場合より負荷が少ない場合に、前記カードが挿入途中で引き抜かれたと判断する制御部とを備える
ことを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第一方向への回転時間と前記第二方向への回転時間とにおいて、
目標速度に到達するまでの加速時間、
加速中の失速の有無、及び
加速完了後の前記駆動部のトルク出力を算出して、前記判断を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記第一方向は、前記カードを挿入方向へ搬送する正回転方向であり、
前記第二方向は、前記カードを排出方向へ搬送する逆回転方向である
ことを特徴とする請求項2に記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記制御部は、
前記判断の条件として、更に、
前記正回転方向の加速時間が、前記逆回転方向の加速時間に加速閾値を加えたものより大きくなった場合、
前記正回転方向の加速中の失速が有った場合、
前記正回転方向の加速完了後の前記駆動部のトルク出力が、前記逆回転方向の加速完了後の前記駆動部のトルク出力にトルク閾値を加えたものより大きくなった場合、及び
前記正回転方向の加速完了後に前記駆動部のトルク出力がリミット値へ到達した場合のいずれかの条件が生じた場合、前記カードが挿入途中で引き抜かれたと判断する
ことを特徴とする請求項3に記載のカードリーダ。
【請求項5】
前記制御部は、
前記判断の条件として、更に、
前記逆回転方向の加速時間が、前記正回転方向の加速時間に加速閾値を加えたもの以上になった場合、
前記逆回転方向の加速完了後の前記駆動部のトルク出力が、前記正回転方向の加速完了後の前記駆動部のトルク出力にトルク閾値を加えたもの以上になった場合、
前記逆回転方向の加速完了後に前記駆動部のトルク出力がリミット値へ到達した場合のいずれかの条件が生じた場合、
前記カードが挿入途中で引き抜かれていないと判断する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のカードリーダ。
【請求項6】
カードが挿入される挿入口と、
前記挿入口に前記カードが挿入されたことを検知する挿入検知センサと、
前記挿入口から挿入された前記カードが搬送される搬送路と、
駆動部を含み、前記搬送路内で前記カードを搬送する搬送部と、
前記搬送路を搬送されるカードを検知する搬送検知センサとを備えるカードリーダにより実行されるカード引き抜き検出方法であって、前記カードリーダにより、
前記挿入検知センサがオンの状態で、前記搬送検知センサがオフ、オン、オフと変化した場合、前記駆動部を、特定時間だけ第一方向に回転させ、特定時間だけ第二方向に回転させ、
前記カードが前記挿入口の方向に移動する方向に前記駆動部を回転させた方が、逆方向に回転させた場合より負荷が少ない場合に、前記カードが挿入途中で引き抜かれたと判断させる
ことを特徴とするカード引き抜き検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にカードを読み取るカードリーダ及びカード引き抜き検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カード状媒体(以下、単に「カード」と称する。)から情報を読み取り、情報を書き込むカードリーダライタ(以下、単に「カードリーダ」と称する。)が存在する。カードリーダは、カードに磁気情報を書き込む磁気ヘッド、搬送路内のカードの位置を検出するセンサ等を備えている。
【0003】
従来のカードリーダの一例として、特許文献1を参照すると、カードをユーザが手動で操作する手動式のカード処理装置であって、カードを挿入するカード挿入部と、挿入されたカードの後端部がカード挿入部から露出した状態でカードを収容するカード収容部と、カード収容部に収容されるカードの記録情報を読み取る読取部と、カード挿入部からカード収容部にカードが挿入されたことを検出する第1検出部と、第1検出部よりもカードの挿入方向における奥側に配置され、カードが挿入されたことを検出する第2検出部と、第1検出部及び第2検出部におけるカードの検出の関係により、不正を検出する状態監視部とを備えることを特徴とするカードリーダが記載されている。
【0004】
一方、モータ等の駆動部によりカードを搬送するモータ搬送式のカードリーダも存在する。このようなモータ搬送式のカードリーダでは、通常、カード挿入部にてカードが検出されると、駆動部によりカードが搬送路内に挿入され、読み取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-055573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、モータ搬送式のカードリーダであっても、何らかの理由で、挿入途中のカードがユーザにより引き抜かれることがあり得た。
その場合、特許文献1に記載のカードリーダのような状態監視によりエラーとなり、サービスパーソンを呼ぶ必要があった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ユーザにより挿入途中のカードが引き抜かれることを検出するモータ搬送式のカードリーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係るカードリーダは、カードが挿入される挿入口と、前記挿入口に前記カードが挿入されたことを検知する挿入検知センサと、前記挿入口から挿入された前記カードが搬送される搬送路と、駆動部を含み、前記搬送路内で前記カードを搬送する搬送部と、前記搬送路を搬送されるカードを検知する搬送検知センサと、前記挿入検知センサがオンの状態で、前記搬送検知センサがオフ、オン、オフと変化した場合、前記駆動部を、特定時間だけ第一方向に回転させた後、前記特定時間だけ第二方向に回転させて、前記カードが前記挿入口の方向に移動する方向に前記駆動部を回転させた方が、逆方向に回転させた場合より負荷が少ない場合に、前記カードが挿入途中で引き抜かれたと判断する制御部とを備えることを特徴とする。
このように構成することで、ユーザにより挿入中のカードが引き抜かれることを検出することができる。
【0009】
本発明の一形態に係るカードリーダは、前記制御部は、前記第一方向への回転時間と前記第二方向への回転時間とにおいて、目標速度に到達するまでの加速時間、加速中の失速の有無、及び加速完了後の前記駆動部のトルク出力を算出して、前記判断を行うことを特徴とする。
このように構成することで、挿入途中のカードが引き抜かれているのか異常発生なのかを確実に判断可能になる。
【0010】
本発明の一形態に係るカードリーダは、前記第一方向は、前記カードを挿入方向へ搬送する正回転方向であり、前記第二方向は、前記カードを排出方向へ搬送する逆回転方向であることを特徴とする。
このように構成することで、引き抜きにより駆動部に負荷がかかっていることを確実に検出することができる。
【0011】
本発明の一形態に係るカードリーダは、前記制御部は、前記判断の条件として、更に、前記正回転方向の加速時間が、前記逆回転方向の加速時間に加速閾値を加えたものより大きくなった場合、前記正回転方向の加速中の失速が有った場合、前記正回転方向の加速完了後の前記駆動部のトルク出力が、前記逆回転方向の加速完了後の前記駆動部のトルク出力にトルク閾値を加えたものより大きくなった場合、及び前記正回転方向の加速完了後に前記駆動部のトルク出力がリミット値へ到達した場合のいずれかの条件が生じた場合、前記カードが挿入途中で引き抜かれたと判断することを特徴とする。
このように構成することで、挿入途中でカードが引き抜かれたことを確実に検出することができる。
【0012】
本発明の一形態に係るカードリーダは、前記制御部は、前記判断の条件として、更に、前記逆回転方向の加速時間が、前記正回転方向の加速時間に加速閾値を加えたもの以上になった場合、前記逆回転方向の加速完了後の前記駆動部のトルク出力が、前記正回転方向の加速完了後の前記駆動部のトルク出力にトルク閾値を加えたもの以上になった場合、前記逆回転方向の加速完了後に前記駆動部のトルク出力がリミット値へ到達した場合のいずれかの条件が生じた場合、前記カードが挿入途中で引き抜かれていないと判断することを特徴とする。
このように構成することで、挿入途中でのカードの引き抜き以外の異常発生が起こったことを確実に検出することができる。
【0013】
本発明の一形態に係るカード引き抜き検出方法は、カードが挿入される挿入口と、前記挿入口に前記カードが挿入されたことを検知する挿入検知センサと、前記挿入口から挿入された前記カードが搬送される搬送路と、駆動部を含み、前記搬送路内で前記カードを搬送する搬送部と、前記搬送路を搬送されるカードを検知する搬送検知センサとを備えるカードリーダにより実行されるカード引き抜き検出方法であって、前記カードリーダにより、前記挿入検知センサがオンの状態で、前記搬送検知センサがオフ、オン、オフと変化した場合、前記駆動部を、特定時間だけ第一方向に回転させ、特定時間だけ第二方向に回転させ、前記カードが前記挿入口の方向に移動する方向に前記駆動部を回転させた方が、逆方向に回転させた場合より負荷が少ない場合に、前記カードが挿入途中で引き抜かれたと判断させることを特徴とする。
このように構成することで、ユーザにより挿入中のカードが引き抜かれることを検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、挿入検知センサがオンの状態で、搬送検知センサがオフ、オン、オフと変化した場合、駆動部を、特定時間だけ第一方向に回転させた後、特定時間だけ第二方向に回転させ、カードが挿入口の方向に移動する方向に駆動部を回転させた方が、逆方向に回転させた場合より負荷が少ない場合に、カードが挿入途中で引き抜かれたと判断することで、ユーザにより挿入中のカードが引き抜かれることを検出するモータ搬送式のカードリーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のカードリーダの実施の形態のシステム構成図である。
図2図1に示すカードリーダの略側断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るカード引き抜き検出処理のフローチャートである。
図4図3に示すカード引き抜き検出処理の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施の形態>
〔カードリーダ1の構成〕
図1及び図2を参照して、本発明のカードリーダ1の実施形態における構成の一例について説明する。
カードリーダ1は、本実施形態においては、ATM、キオスク(Kiosk)の端末、交通機関のチケット発行システム、コンビニエンスストア等のポイントカード発行システム、小売店のメンバーカード発行システム、遊技機のカード発行/支払システム、入退場管理システム等(以下、単に「ATM等」と省略して記載する。)に接続されるカードリーダの一例である。
【0017】
まず、図1により、カードリーダ1の制御構成について説明する。
カードリーダ1は、例えば、カード2へ情報を読み込み(リード)、書き込み(ライト)が可能なモータ搬送式(自動式)のカードリーダ/ライタ装置である。この場合、カードリーダ1は、カード2による決済等のため、カード2への磁気信号の読み取り及び書き込みを行う。加えて、カードリーダ1は、読み出し又は書き込みされる情報を暗号化したり復号化したりすることも可能であってもよい。
【0018】
本実施形態に係るカードリーダ1は、上位装置3が接続され、上位装置3の指示でカード2を読み取り、書き込むように構成されている。カードリーダ1は、例えば、USB(Universal Serial Bus)やRS-232C等で上位装置3と接続可能である。
【0019】
カード2は、接触若しくは非接触ICカード、及び/又は磁気記録可能な磁気ストライプを備えた磁気カード等である。カード2は、例えば、厚さが0.7~0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製である。カード2には、例えば、磁気データが記録される磁気ストライプが形成されている。また、カード2には、例えば、ICチップが内蔵されていてもよい。この場合、カード2には、ICと磁気ストライプとが両方設けられていてもよい。なお、カード2は、厚さが0.18~0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であってもよい。カード2は、ユーザPの情報や貨幣価値情報等を記憶している。
【0020】
上位装置3は、ATM等の組み込みPC(Embedded Personal Computer)、FC(Factory Computer)、サーバ等である。
本実施形態において、上位装置3は、ユーザPが操作するタッチパネルディスプレイ等を備えて、カードリーダ1を制御し、決済やカード2の発行の指示を行う。
【0021】
なお、本実施形態に係るカードリーダ1は、ICカードのIC情報を読み書きするIC接点ブロック、非接触ICカードへの情報の読み取りや書き込みに対応したRF(Radio Frequency)アンテナや電磁誘導アンテナとその回路等を含んでいてもよい。
また、カードリーダ1は、カード2にカラー又は白黒で印刷を行うインクリボン式の熱転写プリンタ、インクジェットプリンタ、ドットマトリクスプリンタ、刻印デバイス等のカードプリンタユニットを含んでいてもよい。
さらに、カードリーダ1は、カード2に光学的に記載された写真や文字等を光学読み取りするイメージリーダ(スキャナ)を含んでいてもよい。
【0022】
加えて、カードリーダ1は、カード2が複数収納され、収納されたカード2をカードリーダ1に向かって送付するカードホッパ等と接続されていてもよい。
さらに加えて、カードリーダ1は、カード2を回収する回収庫、及び回収したカード2を粉砕する粉砕機等が接続されていてもよい。
【0023】
次に、カードリーダ1の制御構成について、より詳細に説明する。
カードリーダ1は、主に、制御部10、搬送部11、プリヘッド12、シャッタ機構13、センサ群15、及び磁気ヘッド14を含んで構成される。
【0024】
制御部10は、カードリーダ1全体の制御を行う。制御部10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含む制御演算手段である。
制御部10は、不揮発性のROM(Read Only Memory)及び揮発性のRAM(Random Access Memory)のような一時的でない記録媒体を含んでいる。
【0025】
このうち、ROMは、カードリーダ1の各種動作に必要なデータや制御プログラム等を格納する不揮発性メモリである。また、ROMは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やフラッシュメモリ(Flash Memory)等の書き換え可能な一時的でない記録媒体であってもよい。本実施形態において、このROMには、データとして、後述する駆動部20のモータ出力特性に関する特性値、加速閾値、失速閾値、トルク閾値、及びリミット値、その他の設定値が格納されていてもよい。
【0026】
RAMは、制御部10がROMに格納されているプログラムを実行する際に、ワーキングエリア等として使用される。RAMは、センサ群15の各センサの検出状態、エンコーダの値の時系列データ、トルク出力のデータ等を含む一時データ、制御部10が直前まで実行していた処理の履歴データ、上位装置3との通信データ等が格納される。
【0027】
制御部10は、ROMに格納されている制御プログラム及びデータに基づいて処理を実行する。これにより、カードリーダ1の各部が制御される。
加えて、本実施形態において、制御部10は、搬送部11の駆動部20をPWM制御する際のデューティー比(Duty)等から、駆動部20のトルク出力を算出可能である。
【0028】
搬送部11は、駆動部20を含み、カードリーダ1の搬送路C(図2)内でカード2を搬送する機構である。
搬送部11の詳細については後述する。
【0029】
プリヘッド12は、カードリーダ1にカード2以外のユーザPのカードが挿入された等の場合に、これを検出するためだけに使用される磁気ヘッド等である。プリヘッド12は、カードリーダ1の前端側部分を構成するカード挿入部の内部に配置されている。
【0030】
シャッタ機構13は、外の粉塵や異物が入り込むのを防ぐシャッタ部材等を駆動する機構である。シャッタ機構13は、例えば、カードリーダ1のカード挿入部に配置されている。シャッタ機構13は、ソレノイド(図示せず)の動力によって、シャッタ部材を、搬送路Cを塞ぐ閉位置と、搬送路Cを開放する開位置との間で移動させる。
【0031】
磁気ヘッド14は、搬送部11により搬送されたカード2の読み取り及び書き込みを行う磁気ヘッドである。
本実施形態に係る磁気ヘッド14は、カード2上に形成された磁気ストライプに接触、摺動させることで、磁気ストライプに対して新たな磁気データを書き込み、又は記録された磁気データを読み取る。このため、磁気ヘッド14には、出力されるアナログ状の出力信号を復調してデジタル状の復調信号を生成する復調用電子部品である復調ICが接続され、これを介して制御部10と接続されている。
なお、磁気ヘッド14は、磁気信号の暗号化に対応した暗号化磁気ヘッドであってもよい。
【0032】
センサ群15は、カードリーダ1内で搬送されるカード2の位置を検知する複数のセンサである。センサ群15は、例えば、発光素子(フォトダイオード)を含む発光部と受光素子(フォトセンサ)を含む受光部とからなる光学式センサ、カード2と接触した際の押圧の圧力を検出する圧電センサや物理的なスイッチ(以下、単に「スイッチ」という。)、カード2の静電容量を検知する静電容量センサ等を含んでいてもよい。このようなセンサ群15の各センサを、搬送路C内で位置を変化させて複数個配置することによって、搬送路Cにおけるカード2の位置を詳細に検出可能となる。
このセンサ群15の各センサの配置の詳細についても後述する。
【0033】
次に、図2の側面外観構成も参照して、本実施形態に係るカードリーダ1のセンサ群15の詳細と位置関係について説明する。
図2において、X方向はカードリーダ1の前後方向であり、Z方向はカードリーダ1の上下方向であり、Y方向は前後方向と上下方向とに直交するカードリーダ1の左右方向である。前後方向のうちのX1方向(引き抜き方向、排出方向)側は、カードリーダ1の手前側(前方)であり、その反対側であるX2方向(引き込み方向、挿入方向)側は、カードリーダ1の奥側(後ろ側、後方)である。
【0034】
カードリーダ1は、ATM等の前面側にカードリーダ1の前端(手前)側が配置されるように、上位装置3に搭載される。
加えて、以下、本実施形態においては、カード2が前端(手前)側に設けられた挿入口Sから奥側に向かって搬送路C内を搬送される方向(X2方向)の端を先端、カード2が手前に向かって挿入口Sへ排出される側(X1方向)の端を後端であるとして説明する。
【0035】
図2によれば、カードリーダ1は、カード2が挿入され排出される挿入口Sが設けられ、カードリーダ1の内部に搬送路Cが形成されている。この搬送路Cは、挿入口Sから挿入されたカード2が搬送される。そして、この搬送路Cの手前側から奥側に、それぞれ、プリヘッド12、シャッタ機構13、及び磁気ヘッド14が設けられている。プリヘッド12及び磁気ヘッド14は、上側及び/又は下側から搬送路Cに臨むように配置されている。
【0036】
ここで、本実施形態に係る搬送部11の詳細について説明する。
搬送部11は、搬送路C内で、カード2を搬送する。搬送部11は、例えば、駆動部20、プーリ、ベルト、及びローラ等を含む搬送機構により構成される。
【0037】
駆動部20は、駆動ベルトを介してプーリに駆動力を伝えるステッピングモータ等である。駆動部20には、ロータリーエンコーダ(以下、単にエンコーダと記載する。)が軸着されており、駆動部20の軸の回転位置や速度を検出可能である。なお、駆動部20が、軸のトルク出力を検出するトルクセンサも含んでいてもよい。
プーリは、カードリーダ1の筐体に回転可能に支持される滑車又は歯車である。
ベルトは、ローラ間で連結されたゴム又はエラストマー等の動力伝達用のベルトである。
【0038】
センサ群15は、搬送路C内で、手前側から奥側に、それぞれ、ゲートセンサ50、第一センサ51、ヘッドセンサ54、第二センサ52、及び第三センサ53の順に設けられている。
【0039】
ゲートセンサ50は、本実施形態に係る挿入検知センサの一例であり、挿入口Sにカード2が挿入された又は排出されたことを検知する。本実施形態において、例えば、ゲートセンサ50は、プリヘッド12を通過したカード2がシャッタ機構13のシャッタを通過したことを検出するスイッチや光学センサや静電容量センサ等であってもよい。
【0040】
第一センサ51は、本実施形態に係る搬送路Cを搬送されるカード2を検知する搬送検知センサの一例である。第一センサ51は、手前側のローラの近傍に設けられている。
本実施形態においては、第一センサ51は、カード2の先端が挿入口Sから挿入され、ゲートセンサ50で検出され、磁気ヘッド14に到達するまでに、カード2が引き抜きされたか否かを判断するために用いられる。
【0041】
第二センサ52は、奥側のローラの近傍に設けられたセンサである。本実施形態においては、第二センサ52は、カード2の磁気ヘッド14によるによる書き込み/読み取り時に、カード2が正しく搬送されていたか否かを判断するために用いられる。
【0042】
第三センサ53は、搬送路Cの奧端に達するカード2の位置を検出するセンサである。すなわち、第三センサ53は、磁気ヘッド14より搬送路Cの奥側に配置され、搬送路Cを搬送されるカード2の位置を検出するセンサである。
本実施形態においては、第三センサ53は、カード2が搬送されて搬送路Cの奧端に到達した場合に、これを検出可能である。
【0043】
ヘッドセンサ54は、第二センサ52の手前に設けられ、カード2の先端が磁気ヘッド14まで到達した状態であることを検出するためのセンサである。このヘッドセンサ54にてカード2が検出された場合、磁気データの読み取り及び/又は書き込みが開始される。
【0044】
センサ群15の各センサは、光学式センサの場合、例えば発光部と受光部との間の光路がカード2によって遮断されることによって、カード2が挿入されたことを検知してもよい。スイッチの場合、カード2の押圧により圧電が生じたりスイッチの導通により電流値が変化したりすることでカード2を検出可能であってもよい。静電容量センサの場合は、カード2により静電容量が変化した場合にカード2を検知してもよい。
【0045】
加えて、本実施形態では、各センサにおいて、カード2が検出された場合は、「ON(オン)」の状態となり、検出されない場合は「OFF(オフ)」の状態となる例について説明する。
【0046】
次に、本実施形態に係る制御部10の機能的な構成について説明する。
本実施形態において、制御部10は、ゲートセンサ50がオンの状態で、第一センサ51がオフ、オン、オフと変化した場合、駆動部20を、特定時間だけ第一方向に回転させた後、特定時間だけ第二方向に回転させる。この上で、制御部10は、カード2が挿入口Sの方向に移動する方向(カード排出方向)に駆動部20を回転させた方が、逆方向(カード挿入方向)に回転させた場合より負荷が少ない場合に、カード2が挿入途中で引き抜かれたと判断する。
【0047】
具体的には、制御部10は、第一方向への回転時間と第二方向への回転時間とにおいて、目標速度に到達するまでの加速時間、加速中の失速の有無、及び加速完了後の駆動部20のトルク出力を算出して、判断を行ってもよい。
ここで、第一方向は、カード2を挿入方向へ搬送する正回転方向であり、第二方向は、カード2を排出方向へ搬送する逆回転方向であってもよい。
【0048】
より具体的には、制御部10は、判断の条件として、更に、正回転方向の加速時間が、条件(A)逆回転方向の加速時間に加速閾値を加えたものより大きくなった場合、条件(B)正回転方向の加速中の失速が有った場合、条件(C)正回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力が、逆回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力にトルク閾値を加えたものより大きくなった場合、及び条件(D)正回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力のリミット値への到達が生じた場合のいずれかの条件が生じた場合、カード2が挿入途中で引き抜かれたと判断することが可能である。
【0049】
さらに、制御部10は、判断の条件として、更に、条件(E)逆回転方向の加速時間が、正回転方向の加速時間に加速閾値を加えたもの以上になった場合、条件(F)逆回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力が、正回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力にトルク閾値を加えたもの以上になった場合、条件(G)逆回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力のリミット値への到達が生じた場合のいずれかの条件が生じた場合、カード2が挿入途中で引き抜かれていないと判断することも可能である。
ここで、制御部10は、カード2が挿入途中で引き抜かれていないと判断した場合、異常発生として、例えば、セキュリティ上のリスクが発生したと判断してもよい。
【0050】
〔カード引き抜き検出処理〕
次に、図3及び図4により、本発明の実施の形態に係るカード引き抜き検出処理の説明を行う。このカード引き抜き検出処理は、本実施形態に係るカード引き抜き検出方法を制御部10が実行するための処理となる。
【0051】
本実施形態に係るカード引き抜き検出処理では、挿入口Sからカード2が挿入されたことをゲートセンサ50により検知する。このゲートセンサ50がオンの状態で、第一センサ51がオフ、オン、オフと変化した場合、駆動部20を、特定時間、第一方向に回転させる。その後、特定時間、第二方向に回転させ、カード2が挿入口Sの方向に移動する方向に駆動部20を回転させた方が、逆方向に回転させた場合より負荷が少ない場合、カード2が挿入途中で引き抜かれたと判断する。
【0052】
本実施形態のカード引き抜き検出処理は、主に制御部10が、内蔵された記憶媒体に記憶された制御プログラムを、各部と協働し、ハードウェア資源を用いて実行する。
以下で、図3のフローチャートにより、本実施形態に係るカード引き抜き検出処理の詳細をステップ毎に説明する。
【0053】
(ステップS101)
まず、制御部10が、カード搬送処理を行う。
制御部10は、挿入口Sからカード2が挿入されたことをゲートセンサ50により検知する。
すると、制御部10は、カードリーダ1の初期化処理を行い、搬送部11の駆動部20を正方向に回転させる。これにより、制御部10は、カードリーダ1の磁気ヘッド14に向けて、カード2を搬送路C内の手前側(X1方向)から奥側(X2方向)へ搬送する。
すると、ゲートセンサ50がオンの状態で、カード2は、第一センサ51の方に搬送される。すると、プリヘッド12により、カード2が磁気ストライプを備えた磁気カードであることが確認される。この上で、カード2の先端が第一センサ51に到達し、オフからオンになる。
図4(a)は、この状態のカード2の様子を示す。
【0054】
(ステップS102)
次に、制御部10が、第一センサ51がオフ、オン、オフと変化したか否かを判定する。
制御部10は、上述のように、ゲートセンサ50がオンの状態で、第一センサ51がオフからオンになったものの、またオフへと変化した場合に、これを異常状態として検出し、Yesと判定する。
図4(b)は、この状態のカード2の状態の例として、ユーザPが別のカードを使用しようと思った等、何らかの理由で、挿入途中のカード2がユーザPにより引き抜かれようとしている状態を示している。
【0055】
一方、制御部10は、それ以外の場合、すなわち、第一センサ51がオフからオンのままになり、カード2が奥側に搬送されてゲートセンサ50がオフになった正常状態の場合は、Noと判定する。制御部10は、それ以外のまだ搬送途中の場合等にも、Noと判定する。
【0056】
Yesの場合、制御部10は、処理をステップS103に進める。
Noの場合、制御部10は、処理をステップS111に進める。
【0057】
(ステップS103)
ゲートセンサ50がオンの状態で、第一センサ51がオフ、オン、オフと変化した場合、制御部10が、正回転処理を行う。
制御部10は、カード取り込み中である等、ゲートセンサ50の変化の検知時に、既に搬送部がカード2を挿入方向へ搬送する方向(正回転方向)に回転している場合は、一旦停止する。
その後、制御部10は、駆動部20を、正回転方向に、特定時間だけ回転させる。この特定時間は、例えば、数ミリ秒~十数秒程度であってもよい。
【0058】
(ステップS104)
次に、制御部10が、加速失速トルク取得処理を行う。
制御部10は、駆動部20のモータ出力特性に関する特性値を取得する。
本実施形態において、制御部10は、(i)目標速度に到達するまでの加速時間を算出する。具体的には、制御部10は、例えば、回転中のエンコーダの値を時系列データとして取得し、これにより角速度を算出し、この角速度が目標速度に到達するまでの時間を加速時間として算出してもよい。この目標速度は、例えば、カード2の搬送路C内での搬送時の通常の搬送速度であってもよい。加えて、この通常の搬送速度は、駆動部20のモータのトルク出力等により適切な値が設定されていてもよい。
【0059】
次に、制御部10は、(ii)加速中の失速の有無についても、上述の時系列データから取得する。制御部10は、時系列データにより角速度から角加速度を算出し、この角加速度が失速閾値より低下した場合に、失速有りと判断してもよい。すなわち、制御部10は、ユーザPによるカード2の引き抜き等により、搬送速度が低下する(失速「有り」である)ことを検出する。
【0060】
次に、制御部10は、(iii)加速完了後のトルク出力を取得する。具体的には、制御部10は、例えば、上述の時系列データから算出された角速度が目標速度に到達した後のトルク出力を、加速完了後のトルク出力として取得する。このトルク出力としては、例えば、駆動部20の実用最大トルク出力が、「リミット値」として設定されていてもよい。
【0061】
(ステップS105)
次に、制御部10が、逆回転処理を行う。
制御部10は、駆動部20を一旦停止させ、カード2を排出方向へ搬送する逆回転方向に、特定時間だけ回転させる。本実施形態において、この特定時間は、上述のステップS103の特定時間と同じ時間であってもよい。
【0062】
(ステップS106)
次に、制御部10が、加速失速トルク取得処理を行う。
この処理は、ステップS104と同様に、制御部10が、駆動部20のモータ出力特性に関する特性値を算出して取得する。
なお、この際、制御部10は、各値は、符号別のない絶対値の値を取得してもよい。
【0063】
(ステップS107)
次に、制御部10が、条件判断処理を行う。
制御部10は、正回転と逆回転とにおいて、取得された駆動部20のモータ出力特性に関する特性値について、下記の条件の項目を比較する。
【0064】
条件(A)は、(i)加速時間が、正回転≧逆回転+加速閾値だったことである。すなわち、条件(A)は、正回転方向の加速時間が、逆回転方向の加速時間に加速閾値を加えたものより大きくなった場合である。この加速閾値は、引き抜きの際に、実際に取得される加速度等から、適宜設定可能である。
条件(B)は、(ii)加速中の失速が、正回転で有りだったことである。すなわち、条件(B)は、正回転方向の加速中の失速が有った場合である。
【0065】
条件(C)は、(iii)加速完了後のトルク出力が、正回転≧逆回転+トルク閾値だったことである。すなわち、条件(C)は、正回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力が、逆回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力にトルク閾値を加えたものより大きくなった場合である。このトルク閾値は、引き抜きの際に、実際に取得されるトルク出力等から、適宜設定可能である。
条件(D)は、(iii)加速完了後のトルク出力が、正回転ではリミット値へ到達していたことである。すなわち、条件(D)は、正回転方向の加速完了後に駆動部20のトルク出力がリミット値へ到達した場合である。
【0066】
条件(E)は、(i)加速時間が、逆回転≧正回転+加速閾値だったことである。すなわち、条件(E)は、逆回転方向の加速時間が、正回転方向の加速時間に加速閾値を加えたもの以上になった場合である。
条件(F)は、(iii)加速完了後のトルク出力が、逆回転≧正回転+トルク閾値だったことである。すなわち、条件(F)は、逆回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力が、正回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力にトルク閾値を加えたもの以上になった場合である。
条件(G)は、(iii)加速完了後のトルク出力が、逆回転ではリミット値へ到達していたことである。すなわち、条件(G)は、逆回転方向の加速完了後に駆動部20のトルク出力がリミット値へ到達した場合である。
【0067】
(ステップS108)
次に、制御部10が、上述の条件により、カード引き抜きがあったか否か判定する。制御部10は、上述の各条件について、条件(A)~(D)の何れかが成立し、及び/又は条件(E)~(G)が成立しない場合に、条件成立としてカード引き抜きと判断し、Yesと判定する。すなわち、これらの条件成立の場合、制御部10は、カード2が挿入口Sの方向に移動する排出方向(X1方向)に駆動部20を逆回転させた方が、逆方向である挿入方向(X2方向)に正回転させた場合より負荷が少ないため、Yesと判定可能である。制御部10は、それ以外の場合には、カード引き抜きはなかったと判断して、Noと判定する。
Yesの場合、制御部10は、処理をステップS109に進める。
Noの場合、制御部10は、処理をステップS110に進める。
【0068】
(ステップS109)
カード引き抜きがあった場合、制御部10が、引き抜き対応処理を行う。
制御部10は、上位装置3へ、カード2の引き抜きが発生したことを通知する。
これにより、上位装置3では、「挿入したカードを引き抜かないで下さい」といった警告文を表示部に表示させてもよい。
ここでは、カード2が挿入された後にカード2の引き抜きが発生したと考えられるため、制御部10は、更に搬送部11の駆動部20を逆回転方向に駆動し、手前側(X1方向)にカード2を搬送させ、排出されるようにしてもよい。
さらに、この上で、制御部10は、再度のカード2の挿入を待機してもよい。
その後、制御部10は、カード引き抜き検出処理を終了する。
【0069】
(ステップS110)
カード引き抜きはなかったと判断された場合、制御部10が、エラー処理を行う。
制御部10は、カードの引き抜きがなかったのに、ゲートセンサ50がオンの状態で、第一センサ51がオフ、オン、オフと変化したことで、異常が発生したと判断し、エラー発生に関する処理を行う。
本実施形態では、制御部10は、ゲートセンサ50若しくは第一センサ51が故障した、又は異常なカード2、磁気カードに書き込まれた情報を不正に取得するすなわちスキミングを行うための部材、待機時の押し込み等を行う挿入部材(以下、スキミング部材、単に「スキマ」という。)等が挿入されたものとして、上位装置3へエラー通知する。
その後、制御部10は、カード2の読み取りができないように、ロック状態としてもよい。
【0070】
(ステップS111)
正常状態の場合、制御部10が、通常搬送処理を行う。
制御部10は、通常のカード読み取りの処理を続けて、搬送部11の駆動部20を正回転方向に駆動させ続けて、億側(X2方向)へ奧端までカード2の搬送を続ける。
すなわち、制御部10は、ヘッドセンサ54でカード2の先端を検出し、カード2の磁気ストライプの磁気信号を磁気ヘッド14で読み取る。
または、制御部10は、IC接点ブロックで、カード2のICに必要なIC情報を読み込んでもよい。同様に、制御部10は、RFアンテナや電磁誘導アンテナにて、非接触ICを活性化して、必要なIC情報を読み込んでもよい。
さらに、制御部10は、イメージリーダが備えられていた場合、カード2に光学的に記載された写真や文字等の画像を読み取ってもよい。
そして、制御部10は、カード2の先端が第二センサ52で検知され、第三センサ53で検知されるまで搬送部11によりカード2を搬送する。
これにより、磁気信号が読み取られて、上位装置3へ送信される。
【0071】
その後、制御部10は、カード2を、挿入口Sまで排出する。具体的には、制御部10は、搬送部11の駆動部20を逆回転方向に駆動させ、手前側(X1方向)へ、カード2が排出されるまで搬送する。
この際に、もう一度、カード2の磁気ストライプの磁気信号の反転信号が取得されてもよい。
その後、制御部10は、カード2の後端がゲートセンサ50に検出され、第一センサ51がオフとなるまで、カード2の搬送を続ける。これにより、カード2が排出され、カード2の後端が挿入口Sから突出した状態で停止する。
この状態で、ユーザPに対して、「カード読取が完了したので挿入口Sからカードを取り出して下さい」と、上位装置3の表示部に表示し、音声で通知等してもよい。
以上により、本発明の実施の形態に係るカード引き抜き検出処理を終了する。
【0072】
〔本実施形態の主な効果〕
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
従来、モータ搬送式のカードリーダであっても、ユーザPが間違えたカードを挿入した、別のカードを使用しようと思った等、何らかの理由で、挿入途中のカードがユーザPにより引き抜かれることがあり得た。
そのような引き抜きが生じた場合、特許文献1に記載のカードリーダのような状態監視によりエラーとなり、サービスパーソンを呼ぶ必要があった。
【0073】
これに対して、(1)本発明の実施形態に係るカードリーダ1は、カード2が挿入される挿入口Sと、挿入口Sにカード2が挿入されたことを検知するゲートセンサ50と、挿入口Sから挿入されたカード2が搬送される搬送路Cと、駆動部20を含み、搬送路C内でカード2を搬送する搬送部11と、搬送路Cを搬送されるカード2を検知する第一センサ51と、ゲートセンサ50がオンの状態で、第一センサ51がオフ、オン、オフと変化した場合、駆動部20を、特定時間だけ第一方向に回転させた後、特定時間だけ第二方向に回転させ、カード2が挿入口Sの方向に移動する方向に駆動部20を回転させた方が、逆方向に回転させた場合より負荷が少ない場合に、カード2が挿入途中で引き抜かれたと判断する制御部10とを備えることを特徴とする。
【0074】
このように構成することで、第一センサ51がオン、オフと変化した原因がカード2の引き抜きか、それ以外(異常発生)かを判定することが可能なモータ搬送式のカードリーダ1を提供することができる。これにより、ユーザPによるカード2の引き抜きにより、カードリーダ1が異常停止状態となることによるサービスパーソンの手間を減らすことができ、メンテナンスコストを低減することができる。
さらに、特別なハードウェアを追加することなく、挿入途中のカード2がユーザPにより引き抜かれることを、ほぼ確実に検出することが可能となる。すなわち、ハードウェア構成が、従来と同様のモータ搬送式のカードリーダであっても、ソフトウェアを変更(更新又は追加)するだけで、カード2の引き抜きを検知することができる。このため、機能追加に関するコストを低減することもできる。
【0075】
(2)本発明の実施形態に係るカードリーダ1において、制御部10は、第一方向への回転時間と第二方向への回転時間とにおいて、目標速度に到達するまでの加速時間、加速中の失速の有無、及び加速完了後の駆動部20のトルク出力を算出して、判断を行う(1)に記載のカードリーダであることを特徴とする。
このように構成することで、挿入途中のカード2が引き抜かれているのか異常発生なのかを確実に判断可能になる。すなわち、目標速度に到達するまでの加速時間、加速中の失速の有無、及び加速完了後の駆動部20のトルク出力にて、第一方向における負荷と、第二方向における負荷とを正確に評価でき、より確実に引き抜きを判断できる。
【0076】
(3)本発明の実施形態に係るカードリーダ1において、第一方向は、カード2を挿入方向へ搬送する正回転方向であり、第二方向は、カード2を排出方向へ搬送する逆回転方向である(1)又は(2)に記載のカードリーダであることを特徴とする。
このように構成することで、引き抜きにより駆動部20に負荷がかかっていることを確実に検出することができる。すなわち、通常、引き抜き時には、カード2が挿入口Sの方向に移動する排出方向(X1方向)に駆動部20を逆回転させた方が、逆方向である挿入方向(X2方向)に正回転させた場合より負荷が少ない。これを容易に検出可能となる。
【0077】
(4)本発明の実施形態に係るカードリーダ1において、制御部10は、判断の条件として、更に、(A)正回転方向の加速時間が、逆回転方向の加速時間に加速閾値を加えたものより大きくなった場合、(B)正回転方向の加速中の失速が有った場合、(C)正回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力が、逆回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力にトルク閾値を加えたものより大きくなった場合、及び(D)正回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力のリミット値への到達が生じた場合のいずれかの条件が生じた場合、カード2が挿入途中で引き抜かれたと判断する(3)に記載のカードリーダであることを特徴とする。
このように構成することで、挿入途中でカード2が引き抜かれたことを更に確実に検出することができる。すなわち、排出方向(X1方向)に駆動部20を逆回転させた方が、挿入方向(X2方向)に正回転させた場合より負荷が少ないことを確実に検出できる。
【0078】
(5)本発明の実施形態に係るカードリーダ1において、制御部10は、判断の条件として、更に、(E)逆回転方向の加速時間が、正回転方向の加速時間に加速閾値を加えたもの以上になった場合、(F)逆回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力が、正回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力にトルク閾値を加えたもの以上になった場合、(G)逆回転方向の加速完了後の駆動部20のトルク出力がリミット値へ到達した場合のいずれかの条件が生じた場合、カード2が挿入途中で引き抜かれていないと判断する(3)又は(4)に記載のカードリーダであることを特徴とする。
このように構成することで、搬送検知センサがオフ、オン、オフと変化した際に、挿入途中でのカード2の引き抜き以外の事態、すなわち異常発生が起こったことを確実に検出できる。これにより、挿入途中でカード2が引き抜かれた場合の負荷のかかり方とは違うことが検出できる。よって、セキュリティ性を向上させることができる。
【0079】
(6)本発明の実施形態に係るカードリーダ1において、制御部10は、条件(A)~(D)の何れかが成立し、及び/又は条件(E)~(G)が成立しない場合に、条件成立としてカード引き抜きと判断することを特徴とする(5)に記載のカードリーダであることを特徴とする。
このように構成することで、挿入途中でカード2が引き抜かれたことを確実に検出可能となる。さらに、搬送検知センサがオフ、オン、オフと変化した際に、挿入途中でのカード2の引き抜きでない異常発生が起こったことも、確実に検出できる。これにより、引き抜きによるサービスパーソンの負荷を軽減しつつ、セキュリティ性を向上させることができる。
【0080】
〔他の実施の形態〕
なお、上述の実施の形態においては、挿入検知センサとしてゲートセンサ50を、搬送検知センサとして第一センサ51を用いる例について記載した。
しかしながら、挿入検知センサ及び/又は搬送検知センサとして、本願の目的のカード検出にも使用可能な適切な場所に配置されたプリヘッド及び/又はヘッドセンサ等を用いるような構成も可能である。
【0081】
具体的には、例えば、プリヘッド12が挿入検知センサの代わりに、カード2を検出してもよい。この場合、制御部10は、カード2の磁気信号が検出されなくなった、又は磁気ストライプの先端の位置に応じた信号が検出された場合に、カード2が引き抜かれたと判断することが可能である。
【0082】
また、制御部10は、カード2の引き抜きが発生して、カード2が手前側(X1方向)移動してプリヘッド12で磁気信号を検知した場合にも、カード2の引き抜きを判断するように構成してもよい。加えて、プリヘッド12にて読み取られた磁気データの連続性を監視して、引き抜き又は異常発生を検出することも可能であってもよい。この際、プリヘッド12で読み取られた磁気データが反転していることを検出してもよい。
【0083】
または、搬送検知センサとしてヘッドセンサ54及び第二センサ52が用いられた場合、カード2の後端が搬送路C内に入り込んでいてもよい。この場合、上述の各条件のうち、条件(F)~(G)の異常発生のみを判断しても、条件(A)~(C)により引き抜きを検知しても異常発生と判断してもよい。
【0084】
さらに、搬送検知センサとして、第二センサ52も用いる構成であってもよい。
このような構成に加えて、挿入検知センサとしてゲートセンサ50を、搬送検知センサとして第一センサ51をこれらに加えて用いるような構成であってもよい。
すなわち、単一又は複数のセンサの組み合わせを挿入検知センサ及び/又は搬送検知センサとして用いてもよい。さらに、センサ群15のそれぞれのセンサを挿入検知センサ及び/又は搬送検知センサとして用いて、状態偏移を監視するように構成してもよい。
このように構成することで、より柔軟に引き抜きを検出することが可能となり、異常発生も確実に検出することが可能となる。
【0085】
また、上述の実施形態では、特別なハードウェアを追加せずに、挿入検知センサ及び搬送検知センサにてカード2の引き抜きを検出するように記載した。
しかしながら、上述の各センサに加えて、ICチップセンサを用いてICチップ以外の金属を監視したり、静電容量センサを用いて静電容量の変化を監視したりして、引き抜き又は異常発生を判定してもよい。
さらに、振動センサや加速度センサ等を更に備えて、この振動センサや加速度センサで筐体の揺れを検出した場合に、カード2の引き抜きが発生した可能性があると検知してもよい。この場合、カード2が挿入された後であれば、引き抜きの判断を行うようにしてもよい。
このように構成することで、より確実に、カード2の引き抜き又は異常発生を検出することができる。
【0086】
また、上述の実施形態においては、主にカード2の引き抜きの検出を行う例について記載した。
しかしながら、上述のカード2の引き抜き以外の異常発生の判定を行うことで、より積極的にカードリーダ1内への異物の挿入を検出してもよい。具体的には、上述の異常発生の判定により、スキマがカードリーダ1内に挿入されたことを検出してもよい。
【0087】
具体的に、スキマは、カードリーダ内に挿入された際に光学式のセンサに反応しないよう、以下のような形状上の特徴がある:
(1)スキマ本体が光学式のセンサに反応するため、本体の一部にセンサを避ける穴が開いている。
(2)スキマ本体が透明なシート等で構成されており、本体は光学式のセンサには反応しないが、センサと同じ直線上にあるスキミング用のヘッドが光学式のセンサを通過する時のみ反応する。
(1)(2)いずれの場合も、スキマの挿入中に搬送路C内のセンサがオンからオフへと変化するので、この変化を検出することでスキマと判断することができる。
しかしながら、従来は、カード2が引き抜かれた場合にも、同様の変化が生じるため、スキマ挿入とカード引抜の区別がつかなかった。
【0088】
これに対して、そこで、第一センサ51がオン、オフと変化した原因として、カード2の引き抜きを検出した後で異常発生を検出することで、確実にスキマを検出することができる。さらに、追加のハードウェアを必要とせずに、ソフトウェアの更新だけでスキマ検出の機能を追加又は向上させることが可能となる。近年、従来の手法で検出できない形状や特徴のスキマによる新たなスキミングが発生しており、このような場合であっても、スキマ検出を可能とすることができる。
【0089】
上述の実施形態においては、第一方向は、カード2を挿入方向へ搬送する正回転方向であり、第二方向は、カード2を排出方向へ搬送する逆回転方向である例について記載した。
しかしながら、これらの方向はそれぞれ逆であってもよい。すなわち、第一方向が逆回転方向であり、第二方向が正回転方向であってもよい。
このように構成することで、他の条件により、カード2の挿入途中での引き抜き、異常発生等について判断することが可能となる。
【0090】
上述の実施形態においては、カードリーダ1は、カード2が挿入口Sに挿入されることで読み込みとなるように記載した。
しかしながら、上位装置3にて、何かのカード読取に関するコマンド等を取得したことを検知してから、カード2を読み取るようにしてもよい。それ以外で、カード2の挿入や引き抜きが発生した場合には、異常発生と判断してもよい。
このように構成することで、カード2の引き抜き又は異常発生を、上位装置3からの指示と併せて確実に判断することができる。
【0091】
上述の実施形態においては、ROMに格納されている制御プログラムにより上述の各処理を実行する例について記載した。
しかしながら、このような各処理を実行可能な制御プログラムを、通常のセンサ群15を備えたカードリーダにインストールして実行することで、上述の各処理を可能とし、本実施形態に係るカードリーダ1として機能させてもよい。
このため、サービスパーソン等が、この制御プログラムを含むファームウェア等を、これが格納されたフラッシュメモリカードやUSBメモリ等の記録媒体、又は上位装置3若しくは他のサーバ等からダウンロード等させて、インストールしてもよい。
これにより、制御プログラムを変更、更新することによって、既存の磁気カードリーダを本実施形態に係るカードリーダ1として使用することが可能になる。
【0092】
また、制御部10は、上述の時系列データを分析して、カード2の引き抜き時における駆動部20のモータ出力特性に関する特性値の各値の平均値や標準偏差等を算出してもよい。
さらに、この算出された値により、加速閾値、トルク閾値、及びリミット値等を算出して、更新してもよい。
加えて、これらの値や値の変化を多層ニューラルネットワーク(ディープニューラルネットワーク)等のAIや統計モデル等に学習させて、より確実に引き抜きや異常発生を検出可能としてもよい。
【0093】
この上で、この平均的なカード2の引き抜きの平均距離や標準偏差から逸脱していた場合、メンテナンスの必要性、又はカードリーダ1の異常発生があった可能性について、カードリーダ1の管理者にアラートを送信してもよい。
このように構成することで、メンテナンス性やセキュリティ性を高めることができる。
【0094】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0095】
1 カードリーダ
2 カード
3 上位装置
10 制御部
11 搬送部
12 プリヘッド
13 シャッタ機構
14 磁気ヘッド
15 センサ群
20 駆動部
50 ゲートセンサ
51 第一センサ
52 第二センサ
53 第三センサ
54 ヘッドセンサ
C 搬送路
P ユーザ
S 挿入口
図1
図2
図3
図4