(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183937
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】目標検出装置およびレーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/937 20200101AFI20231221BHJP
G01S 7/295 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01S13/937
G01S7/295
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097754
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】土屋 廣憲
(72)【発明者】
【氏名】堀内 亮太
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB01
5J070AC02
5J070AC13
5J070AD01
5J070AF05
5J070AH31
5J070AK40
5J070BG09
5J070BG27
(57)【要約】
【課題】海領域からの目標検出を精度よく行なうことができる目標検出装置およびレーダ装置を提供する。
【解決手段】地図データ取得部94は、現在位置に基づいて地図データベース92からベクタ形式の地図データを取得し、海岸線データ生成部95は、地図データに基づいてラスタ形式の海岸線データを生成する。海領域データ生成部96は、海岸線データの海岸線に接する領域を塗りつぶし、塗りつぶした領域を抽出して海領域データを生成する。セクタ範囲抽出部97は、海領域データから1セクタ分の範囲を抽出し、Bスコープ変換部98は、1セクタ分の海領域データをBスコープ形式に変換する。マスク処理部99は、セクタデータ生成部91にて生成されたBスコープ形式のセクタデータと、1セクタ分の海領域データとを重ね合わせ、海領域内に存在する目標を抽出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを回転させながらパルス状のレーダ波を送信し、前記レーダ波が反射されたエコーを受信するスイープ処理を繰り返す船舶用レーダ装置に用いられ、前記エコーに基づいて目標を検出する目標検出装置であって、
前記アンテナの1スキャン分の回転を複数のセクタに分割し、前記セクタごとに、前記エコーに基づいて生成された複数のスイープデータから、Bスコープ形式のセクタデータを生成するセクタデータ生成手段と、
ベクタ形式の地図データを記憶する地図データベースと、
前記船舶の現在位置を検出する位置検出手段と、
検出された前記現在位置に基づいて、前記地図データベースから、前記現在位置を含む所定範囲の前記ベクタ形式の地図データを取得する地図データ取得手段と、
取得された前記ベクタ形式の地図データから海岸線を示すデータを抽出し、抽出したデータに基づいてラスタ形式の海岸線データを生成する海岸線データ生成手段と、
前記海岸線データにおいて、海岸線に接していて、かつ、閉じられていない領域を塗りつぶし、塗りつぶされた領域に基づいて海領域データを生成する海領域データ生成手段と、
前記海領域データから、前記セクタデータに相当する範囲を抽出するセクタ範囲抽出手段と、
前記セクタ範囲の海領域データを、Bスコープ形式に変換するBスコープ変換手段と、
Bスコープ形式の前記セクタ範囲の海領域データと、前記セクタデータとを重ね合わせ、前記セクタ範囲の海領域データに重なっている前記セクタデータの領域を抽出するマスク処理手段と、
を備えることを特徴とする目標検出装置。
【請求項2】
アンテナを回転させながらパルス状のレーダ波を送信し、前記レーダ波が反射されたエコーを受信するスイープ処理を繰り返すレーダ装置であって、
請求項1に記載の目標検出装置を備える、
ことを特徴とするレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ波が反射されたエコーに基づいて目標の検出を行なう目標検出装置およびレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶などに搭載されるレーダ装置は、自船の全周方向にレーダ波を送信し、目標によって反射されたレーダ波のエコーをアンテナによって受信し、受信したエコーに基づいて目標の位置(方位および距離)を検出する。具体的には、アンテナが水平面内で回転する間に、レーダ波としてパルス状の電波を送信し、レーダ波が反射されたエコーを受信するスイープ処理を繰り返し行なう。そして、各スイープ処理で受信したエコーに基づいて、自船の周囲に存在する目標(他船、浮遊物あるいは浮標など)を検出する。
【0003】
このような船舶用のレーダ装置では、陸地、陸地上の山や建造物などの固定物が目標として誤検出されることがある。このような誤検出を防ぐために、陸地部分の目標の検出を行なわないように制御するレーダ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このレーダ装置では、自船の位置を中心とする海図データと、レーダ波の送信周期および送信方位とに基づいて、アンテナが陸地の方向を向いているときのスイープ処理ごとに、陸地部分の距離範囲に対応する時間位置に遮断ゲート信号を発生し、この遮断ゲート信号に基づいて、エコーの陸地部分の距離範囲においては目標の検出を行なわないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のレーダ装置において、陸地からの目標検出を遮断するには、海岸線の形状に合わせて遮断ゲート信号を発生しなければならない。しかしながら、海岸線が非常に複雑な形状をしている場合には、遮断ゲート信号が海岸線に対してずれてしまう可能性がある。遮断ゲート信号が海岸線からずれてしまうと、実際には海である領域が陸地であると誤判定されたり、陸地である領域が海であると誤判定されたりする可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、海領域からの目標検出を精度よく行なうことができる目標検出装置およびレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、アンテナを回転させながらパルス状のレーダ波を送信し、前記レーダ波が反射されたエコーを受信するスイープ処理を繰り返す船舶用レーダ装置に用いられ、前記エコーに基づいて目標を検出する目標検出装置であって、前記アンテナの1スキャン分の回転を複数のセクタに分割し、前記セクタごとに、前記エコーに基づいて生成された複数のスイープデータから、Bスコープ形式のセクタデータを生成するセクタデータ生成手段と、ベクタ形式の地図データを記憶する地図データベースと、前記船舶の現在位置を検出する位置検出手段と、検出された前記現在位置に基づいて、前記地図データベースから、前記現在位置を含む所定範囲の前記ベクタ形式の地図データを取得する地図データ取得手段と、取得された前記ベクタ形式の地図データから海岸線を示すデータを抽出し、抽出したデータに基づいてラスタ形式の海岸線データを生成する海岸線データ生成手段と、前記海岸線データにおいて、海岸線に接していて、かつ、閉じられていない領域を塗りつぶし、塗りつぶされた領域に基づいて海領域データを生成する海領域データ生成手段と、前記海領域データから、前記セクタデータに相当する範囲を抽出するセクタ範囲抽出手段と、前記セクタ範囲の海領域データを、Bスコープ形式に変換するBスコープ変換手段と、Bスコープ形式の前記セクタ範囲の海領域データと、前記セクタデータとを重ね合わせ、前記セクタ範囲の海領域データに重なっている前記セクタデータの領域を抽出するマスク処理手段と、を備えることを特徴とする目標検出装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、アンテナを回転させながらパルス状のレーダ波を送信し、前記レーダ波が反射されたエコーを受信するスイープ処理を繰り返すレーダ装置であって、請求項1に記載の目標検出装置を備える、ことを特徴とするレーダ装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、セクタ単位で目標を検出するので、スイープごとに処理を行なう従来技術と比べ、精度よく海領域からの目標検出を行なうことが可能である。また、アンテナ1回転分のスキャンデータから目標を検出する場合に比べ、処理負荷を低減することが可能である。さらに、ベクタ形式の地図データを用いるので、海岸線のデータを容易に抽出することができ、正確、かつ、迅速にラスタ形式の海岸線データを生成することが可能である。また、海岸線データに塗りつぶし処理を行なって海領域データを生成するので、精度よく海領域を判定することが可能である。さらに、Bスコープ形式に変換されたセクタ範囲の海領域データと、同じくBスコープ形式のセクタデータとを重ね合わせて、海領域内の目標のみを抽出できるようにしたので、陸地や陸地部分の固定物が目標と誤検出されるのを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の実施の形態に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す目標検出部の機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】レーダ波の1スイープ、セクタおよび1スキャンの説明図である。
【
図4】Bスコープ形式のセクタデータの一例を示す図である。
【
図5】ベクタ形式の地図データからラスタ形式の海岸データを生成する処理を示す図である。
【
図6】海岸線データから海領域データを生成する処理を示す図である。
【
図7】海領域データから抽出されたセクタ範囲の海領域データを示す図である。
【
図8】海領域データとセクタデータとに基づいて目標を抽出する処理を示す図である。
【
図9】目標検出の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態に係るレーダ装置1の概略構成を示すブロック図である。レーダ装置1は、例えば、船舶に搭載されており、アンテナ2と、送受信部3と、A/D変換部4と、座標変換部5と、スイープデータ記憶部6と、表示制御部7と、表示部8と、目標検出部(目標検出装置)9と、を備えている。
【0013】
アンテナ2は、水平面内で回転しながらパルス状のレーダ波を送信する処理と、目標にて反射されたレーダ波のエコーを受信する処理とを含むスイープ処理を繰り返す。送受信部3は、アンテナ2から送信するレーダ波を発生してアンテナ2に入力する。また、送受信部3は、アンテナ2によって受信したエコーを検波して増幅し、アナログのエコー信号を生成する。
【0014】
A/D変換部4は、送受信部3から出力されたエコー信号をA/D変換してデジタルのスイープデータを生成する。座標変換部5は、A/D変換部4から出力された極座標系のスイープデータを、方位θおよび距離Rが直交座標によって示された直交座標系のスイープデータに変換する。
【0015】
スイープデータ記憶部6は、座標変換部5から出力された1スイープ分のスイープデータを記憶し、次のスイープ処理が実行されて新たなスイープデータが入力されるまで、この1スイープ分のスイープデータを表示制御部7および目標検出部9に出力する。目標検出部9は、スイープデータに基づいて目標を検出し、その検出結果を表示制御部7へ出力する。
【0016】
表示制御部7は、1スキャン分のスイープデータに基づいて、Bスコープ形式のレーダ画像を生成する。また、表示制御部7は、目標検出部9の目標検出結果に基づいて、目標識別用グラフィック画像などを生成する。なお、目標識別用グラフィック画像は、目標検出部9により検出された目標の識別名などを表示するためのグラフィック画像であり、レーダ画像に重畳して表示される。表示部8は、表示制御部7によって生成されたレーダ画像およびグラフィック画像などを表示する機能を備えた表示器であり、例えば液晶ディスプレイによって構成される。
【0017】
図2に示すように、目標検出部9は、セクタデータ生成部(セクタデータ生成手段)91と、地図データベース92と、位置検出部(位置検出手段)93と、地図データ取得部(地図データ取得手段)94と、海岸線データ生成部(海岸線データ生成手段)95と、海領域データ生成部(海領域データ生成手段)96と、セクタ範囲抽出部(セクタ範囲抽出手段)97と、Bスコープ変換部(Bスコープ変換手段)98と、マスク処理部(マスク処理手段)99と、閾値判定部100とを備えている。
【0018】
セクタデータ生成部91は、スイープデータ記憶部6から出力された1セクタ分のスイープデータに基づいて、セクタデータを生成する。ここで、
図3に示すように、アンテナ2によるレーダ波の送信からエコーの受信までの1回の送受信を1スイープとし、アンテナ2の1回転を1スキャンとした場合、1スキャンには多数のスイープ、すなわち、スイープデータが含まれている。セクタデータ生成部91は、アンテナ2の1スキャン分の回転を複数のセクタ(例えば、セクタS-1、セクタS、セクタS+1など)に分割し、セクタごとに、セクタ内の複数のスイープデータが配列されたBスコープ形式のセクタデータを生成する。
【0019】
図4は、セクタデータ生成部91により生成されたセクタデータの一例を示している。セクタデータ91aは、横軸方向に延びるスイープデータSwpが縦軸方向に沿って複数(1セクタ分)配列されている。各スイープデータSwpは、アンテナ2からの距離に基づいて複数のセルCに区分けされており、各セルCにはエコー信号の信号強度を示すセルデータが格納されている。これにより、セクタデータ91aは、複数のセルCがマトリクス状に配列され、距離R及び方位θが直交座標系によって示されている。セクタデータ生成部91は、生成したセクタデータの方位θの範囲に関する情報をセクタ範囲抽出部97へ出力する。
【0020】
地図データベース92は、ベクタ形式の地図データを記憶したデータベースである。周知のとおり、ベクタ形式の地図データは、地図が、ポイントデータと、2つ以上のポイントデータ間を結ぶラインデータとによって表されている。また、ポイントデータの位置は、緯度および経度によって示されている。
【0021】
位置検出部93は、GPSなどの全地球航法衛星システム(GNSS;Global Navigation Satellite System)から位置情報を検出する装置である。位置検出部93は、レーダ装置1が搭載されている船舶の現在位置を検出し、その位置情報(緯度および経度)を地図情報取得部94へ出力する。
【0022】
地図データ取得部94は、位置検出部93から受信した位置情報に基づいて、船舶の現在位置を含む所定範囲の地図情報を地図データベース92から取得する。なお、地図データベース92は、例えば、所定の緯度、経度ごとに複数のブロックに分割された地図データを記憶しており、地図データ取得部94は、船舶の現在位置を含むブロックの地図情報を取得する。地図データ取得部94は、取得した地図データを海岸線データ生成部95へ出力する。
【0023】
海岸線データ生成部95は、取得されたベクタ形式の地図データから海岸線を示すデータを抽出し、抽出したデータに基づいてラスタ形式の海岸線データを生成する。海岸線データ生成部95は、
図5に示すように、緯度および経度によって表されたベクタ形式の地図データMdから、海岸線を示すデータ(海岸線L1、L2、L3およびL4を示す緯度、経度)を抽出し、抽出した海岸線を示すデータに基づいて、ラスタ形式の海岸線データCdを生成する。海岸線データ生成部95は、生成した海岸線データCdを海領域データ生成部96へ出力する。
【0024】
海領域データ生成部96は、海岸線データにおいて、海岸線によって囲まれている領域を塗りつぶし、塗りつぶされた領域に基づいて海領域データを生成する。具体的には、海領域データ生成部96は、
図6に示すように、ラスタ形式の海岸線データCdにおいて、海岸線L1~L4に接し、かつ、海岸線L1~L4によって閉じられていない領域を塗りつぶす。この塗りつぶし処理は、海領域を確実に塗りつぶしていくため、例えば、自船の位置からその周囲に向かって塗りつぶしていくのが好ましい。
図6において、斜線が描かれた領域Paが塗りつぶされた領域である。
【0025】
海領域データ生成部96は、
図6に示す海岸線データCdから、塗りつぶされた領域Paのみを抽出して海領域データSdを生成する。すなわち、海領域データSdは、海岸線データCdから海岸線L1~L4を除去したデータである。海領域データ生成部96は、生成した海領域データSdをセクタ範囲抽出部97へ出力する。
【0026】
セクタ範囲抽出部97は、セクタデータ生成部91から出力されたセクタデータの方位θの範囲に関する情報に基づいて、海領域データSdからセクタデータ91aに相当する範囲A1を抽出し、
図7に示すように、セクタ範囲の海領域データSd1を生成する。セクタ範囲抽出部97は、生成したセクタ範囲の海領域データSd1をBスコープ変換部98へ出力する。
【0027】
Bスコープ変換部98は、セクタ範囲の海領域データSd1をBスコープ形式の海領域データSd2に変換する(
図8参照)。Bスコープ変換部98は、生成したBスコープ形式の海領域データSd2をマスク処理部99へ出力する。
【0028】
マスク処理部99は、
図8に示すように、Bスコープ形式の海領域データSd2と、セクタデータ91aとを重ね合わせ、セクタデータ91aから、海領域データSd2に重なっている領域91b、91c、91d、91e、91fを抽出する。このように、海領域データSd2と、セクタデータ91aとを用いることにより、陸地や陸地の固定物を除外して、海上の目標のみを検出することができる。マスク処理部99は、領域91b~91fが抽出されたセクタデータ91aを閾値判定部100へ出力する。
【0029】
閾値判定部100は、セクタデータ91aから抽出された領域91b~91fのセルデータおよび面積などについて、予め設定された閾値と比較し、閾値以上である場合に他船や浮遊物、あるいは浮標などの目標として検出を行なう。閾値判定部100は、目標の検出結果を表示制御部7へ出力する。
【0030】
次に、上記の目標検出部9の処理について、
図9に示すフローチャートに基づいて説明する。スイープデータ記憶部6は、アンテナ2による1回のレーダ波の送受信に基づいて生成されたスイープデータを目標検出部9へ出力する。目標検出部9のセクタデータ生成部91は、スイープデータ記憶部6から出力された1セクタ分のスイープデータに基づいて、Bスコープ形式のセクタデータ91aを生成する(ステップS1)。
【0031】
位置検出部93は、自船の現在位置を検出し、その検出結果を地図データ取得部94へ出力する(ステップS2)。地図データ取得部94は、受信した現在位置に基づいて、現在位置を含むブロックの地図データMdを地図データベース92から取得し、取得した地図データMdを海岸線データ生成部95へ出力する(ステップS3)。
【0032】
海岸線データ生成部95は、ベクタ形式の地図データMdから海岸線に関するデータを抽出し、抽出したデータに基づいてラスタ形式の海岸線データCdを生成する。海岸線データ生成部95は、生成した海岸線データCdを海領域データ生成部96へ出力する(ステップS4)。
【0033】
海領域データ生成部96は、ラスタ形式の海岸線データCdにおいて、海岸線L1~L4に接し、かつ、海岸線L1~L4によって閉じられていない領域を塗りつぶす。海領域データ生成部96は、海岸線データCdから、塗りつぶされた領域Paのみを抽出して海領域データSdを生成し、生成した海領域データSdをセクタ範囲抽出部97へ出力する(ステップS5)。
【0034】
セクタ範囲抽出部97は、セクタデータ生成部91から出力されたセクタデータの方位の範囲に関する情報に基づいて、海領域データSdからセクタデータ91aに相当する範囲A1を抽出し、セクタ範囲の海領域データSd1を生成する。セクタ範囲抽出部97は、生成したセクタ範囲の海領域データSd1をBスコープ変換部98へ出力する(ステップS6)。
【0035】
Bスコープ変換部98は、セクタ範囲の海領域データSd1をBスコープ形式の海領域データSd2に変換する。Bスコープ変換部98は、生成したBスコープ形式の海領域データSd2をマスク処理部99へ出力する(ステップS7)。
【0036】
マスク処理部99は、Bスコープ形式の海領域データSd2と、セクタデータ91aとを重ね合わせ、セクタデータ91aから、海領域データSd2に重なっている領域91b、91c、91d、91e、91fを抽出する。マスク処理部99は、領域91b~91fが抽出されたセクタデータ91aを閾値判定部100へ出力する(ステップS8)。
【0037】
閾値判定部100は、セクタデータ91aから抽出された領域91b~91fのセルデータおよび面積などについて、予め設定された閾値と比較し、閾値以上である場合に他船や浮遊物、あるいは浮標などの目標として検出を行なう。閾値判定部100は、目標の検出結果を表示制御部7へ出力する(ステップS9)。
【0038】
以上で説明したように、本実施の形態にレーダ装置1および目標検出部9によれば、セクタ単位で目標を検出するので、スイープごとに処理を行なう従来技術と比べ、精度よく海領域からの目標検出を行なうことが可能である。また、アンテナ1回転分のスキャンデータから目標を検出する場合に比べ、処理負荷を低減することが可能である。さらに、ベクタ形式の地図データMdを用いるので、海岸線のデータを容易に抽出することができ、正確、かつ、迅速にラスタ形式の海岸線データCdを生成することが可能である。また、海岸線データCdに塗りつぶし処理を行なって海領域データSdを生成するので、精度よく海領域を判定することが可能である。さらに、Bスコープ形式に変換されたセクタ範囲の海領域データSd1と、同じくBスコープ形式のセクタデータ91aとを重ね合わせて、海領域内の目標のみを抽出できるようにしたので、陸地や陸地部分の固定物が目標と誤検出されるのを抑制することが可能である。
【0039】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、船舶用のレーダ装置を例に説明したが、レーダ波が走査されるその他のレーダ装置にも適用可能である。また、陸上に設置されたレーダ装置によって陸上の目標のみを検出する際に、海上の目標が検出されないようにする場合に適用することも可能である。
【0040】
1 レーダ装置
2 アンテナ
3 送受信部
4 A/D変換部
5 座標変換部
6 スイープデータ記憶部
7 表示制御部
8 表示部
9 目標検出部(目標検出装置)
91 セクタデータ生成部(セクタデータ生成手段)
91a セクタデータ
92 地図データベース
93 位置検出部(位置検出手段)
94 地図データ取得部(地図データ取得手段)
95 海岸線データ生成部(海岸線データ生成手段)
96 海領域データ生成部(海領域データ生成手段)
97 セクタ範囲抽出部(セクタ範囲抽出手段)
98 Bスコープ変換部(Bスコープ変換手段)
99 マスク処理部(マスク処理手段)
100 閾値判定部
Md 地図データ
Cd 海岸線データ
Sd 海領域データ
Sd1 セクタ範囲の海領域データ
Sd2 Cスコープ形式の海領域データ