(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183943
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ロータリジョイント
(51)【国際特許分類】
F16L 27/093 20060101AFI20231221BHJP
F16C 32/00 20060101ALI20231221BHJP
F16C 33/74 20060101ALI20231221BHJP
F16J 15/34 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F16L27/093
F16C32/00 C
F16C33/74 Z
F16J15/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097763
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中塚 将也
(72)【発明者】
【氏名】藤永 繁行
(72)【発明者】
【氏名】奥西 泰之
【テーマコード(参考)】
3H104
3J041
3J102
3J216
【Fターム(参考)】
3H104JA04
3H104LE01
3H104LE05
3H104LF06
3H104LG22
3J041AA04
3J041AA06
3J041BA03
3J041BD06
3J041DA07
3J041DA20
3J102AA02
3J102AA08
3J102BA02
3J102BA17
3J102BA18
3J102BA19
3J102CA05
3J102CA06
3J102CA10
3J102EA02
3J102EA06
3J102EA09
3J102GA01
3J216AA06
3J216AA07
3J216AA12
3J216AA13
3J216AA14
3J216AB48
3J216BA30
3J216CA02
3J216CC67
3J216EA09
(57)【要約】
【課題】回転軸を回転可能に支持しつつ、被密封流体に異物が混入するのを抑制することができるロータリジョイントを提供する。
【解決手段】ロータリジョイント1は、被密封流体が流れる外側流路23aを有する筒状のケース体2と、ケース体2内に配置され被密封流体が流れる内側流路4aを有する回転軸4と、ケース体2に設けられた静止密封環61,62、静止密封環61,62に軸方向に対向して回転軸4に設けられた回転密封環63、及び外側流路23aと内側流路4aとを繋ぐための連通流路64を有し、静止密封環61,62と回転密封環63との間をシールするメカニカルシール6と、ケース体2に設けられ加圧ガスにより回転軸4を非接触で回転可能に支持する気体軸受5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被密封流体が流れる外側流路を有する筒状のケース体と、
前記ケース体内に配置され、被密封流体が流れる内側流路を有する回転軸と、
前記ケース体に設けられた静止密封環、前記静止密封環に軸方向に対向して前記回転軸に設けられた回転密封環、及び前記外側流路と前記内側流路とを繋ぐための連通流路を有し、前記静止密封環と前記回転密封環との間をシールするメカニカルシールと、
前記ケース体に設けられ、加圧ガスにより前記回転軸を非接触で回転可能に支持する気体軸受と、を備えるロータリジョイント。
【請求項2】
前記気体軸受は、前記回転軸の外周面を非接触で支持するラジアル軸受部と、前記回転軸の軸方向の端面を非接触で支持するスラスト軸受部と、を有する、請求項1に記載のロータリジョイント。
【請求項3】
前記メカニカルシールは、前記静止密封環と前記回転密封環との間にシールガスにより静圧又は動圧を発生させることで、当該間をシールガスにより非接触状態に保持しながらシールする非接触式メカニカルシールである、請求項1又は請求項2に記載のロータリジョイント。
【請求項4】
前記メカニカルシールは、前記静止密封環と前記回転密封環との間に前記シールガスにより静圧を発生させる静圧型の非接触式メカニカルシールである、請求項3に記載のロータリジョイント。
【請求項5】
前記シールガスは、前記加圧ガスと同一種類のガスである、請求項3に記載のロータリジョイント。
【請求項6】
前記ケース体は、前記加圧ガス及び前記シールガスの両方を排出する共用の排出路を有する、請求項3に記載のロータリジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリジョイントは、固定側部材の流路と回転側部材の流路とを接続するために用いられる。例えば、半導体ウエハの表面研磨処理を行うために用いられるCMP装置(Chemical Mechanical Polishing装置)では、回転側部材(ターンテーブル又はトップリング)と、これを支持する固定側部材(CMP装置本体)との間を、研磨液、加圧用空気、洗浄水、純水、窒素等の不活性ガス、エアーブロー用空気、研磨残渣液等が被密封流体として流れる。これらの被密封流体が前記回転側部材と前記固定側部材との間を流れるように、特許文献1に記載されているロータリジョイントが用いられる。
【0003】
特許文献1のロータリジョイントは、筒状のケース体(本体)と、ケース体内に回転可能に設けられた回転軸と、ケース体と回転軸との間の環状空間において軸方向に並べて設けられた複数のメカニカルシールと、を備えている。ケース体には、径方向に貫通する複数の流体通路が形成されている。回転軸には、ケース体の流体通路と同数の流体通路が、回転軸の外周側で開口するように形成されている。前記環状空間には、ケース体の各流体通路と回転軸の各流体通路とを繋ぐ複数の連通路が形成されている。この連通路は、複数のメカニカルシールにより密封されている。回転軸は、ケース体に対して転がり軸受を介して回転可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成されたロータリジョイントでは、回転軸を回転可能に支持する転がり軸受の内部は、グリース等の潤滑剤により潤滑されている。転がり軸受内の潤滑剤は、回転軸が回転しているときに、転がり軸受の外側に飛散する場合がある。この場合、飛散した潤滑剤が被密封流体に混入し、半導体の製造プロセス等に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、回転軸を回転可能に支持しつつ、被密封流体に異物が混入するのを抑制することができるロータリジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示は、被密封流体が流れる外側流路を有する筒状のケース体と、前記ケース体内に配置され、被密封流体が流れる内側流路を有する回転軸と、前記ケース体に設けられた静止密封環、前記静止密封環に軸方向に対向して前記回転軸に設けられた回転密封環、及び前記外側流路と前記内側流路とを繋ぐための連通流路を有し、前記静止密封環と前記回転密封環との間をシールするメカニカルシールと、前記ケース体に設けられ、加圧ガスにより前記回転軸を非接触で回転可能に支持する気体軸受と、を備えるロータリジョイントである。
【0008】
本開示のロータリジョイントによれば、ケース体に設けられた気体軸受により、回転軸は非接触で回転可能に支持される。気体軸受は潤滑剤が不要であるため、外側流路、連通流路、及び内側流路を流れる被密封流体に、異物(潤滑剤)が混入するのを抑制することができる。
【0009】
(2)前記(1)のロータリジョイントにおいて、前記気体軸受は、前記回転軸の外周面を非接触で支持するラジアル軸受部と、前記回転軸の軸方向の端面を非接触で支持するスラスト軸受部と、を有するのが好ましい。
この場合、回転軸の外周面を非接触で支持するラジアル軸受部、及び軸方向の端面を非接触で支持するスラスト軸受部は、いずれも潤滑剤が不要である。このため、被密封流体に異物(潤滑剤)が混入するのをさらに抑制することができる。
【0010】
(3)前記(1)又は(2)のロータリジョイントにおいて、前記メカニカルシールは、前記静止密封環と前記回転密封環との間にシールガスにより静圧又は動圧を発生させることで、当該間をシールガスにより非接触状態に保持しながらシールする非接触式メカニカルシールであるのが好ましい。
この場合、メカニカルシールの静止密封環と回転密封環との間はシールガスにより非接触状態に保持されるので、静止密封環と回転密封環との間で摩耗粉が発生するのを抑制することができる。これにより、被密封流体に異物(摩耗粉)が混入するのをさらに抑制することができる。
【0011】
(4)前記(3)のロータリジョイントにおいて、前記メカニカルシールは、前記静止密封環と前記回転密封環との間に前記シールガスにより静圧を発生させる静圧型の非接触式メカニカルシールであるのが好ましい。
この場合、動圧型の非接触式メカニカルシールよりも、静止密封環と回転密封環との間で摩耗粉が発生するのを抑制することができる。これにより、被密封流体に異物(摩耗粉)が混入するのをさらに抑制することができる。
【0012】
(5)前記(3)又は(4)のロータリジョイントにおいて、前記シールガスは、前記加圧ガスと同一種類のガスであるのが好ましい。
この場合、メカニカルシール用のシールガスとして、気体軸受用の加圧ガスを用いることができるので、ランニングコストを抑えることができる。
【0013】
(6)前記(3)から(5)のいずれかのロータリジョイントにおいて、前記ケース体は、前記加圧ガス及び前記シールガスの両方を排出する共用の排出路を有するのが好ましい。
この場合、ケース体に、加圧ガスの排出路とシールガスの排出路とを別々に設ける必要がないので、ケース体の製造コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示のロータリジョイントによれば、回転軸を回転可能に支持しつつ、被密封流体に異物が混入するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るロータリジョイントを示す断面図である。
【
図5】気体軸受の他の変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[全体構成]
図1は、実施形態に係るロータリジョイント1を示す断面図である。ロータリジョイント1は、筒状のケース体2と、回転軸4と、を備えている。ケース体2は、回転機器の固定側部材(例えば、CMP装置本体)に取り付けられる。回転軸4は、回転機器の回転側部材(例えば、CMP装置のターンテーブル)に取り付けられる。本実施形態のケース体2及び回転軸4は、軸方向が上下方向として配置されている。
【0017】
なお、本開示において、「軸方向」とは、ロータリジョイント1の中心線Cに沿った方向(中心線Cに平行な方向も含む)である。また、本開示において、「径方向」とは、ロータリジョイント1の中心線Cに対して直交する方向であり、「周方向」とは、ロータリジョイント1の中心線C回りの方向である。また、ロータリジョイント1の姿勢は、
図1に示す姿勢以外であってもよいが、説明の便宜上、本実施形態では、
図1の上側をロータリジョイント1の「上側」とし、
図1の下側をロータリジョイント1の「下側」とする。
【0018】
[ケース体]
ケース体2は、第一フランジ21、第二フランジ22、第三フランジ23、第四フランジ24、第五フランジ25、及び第六フランジ26を、この順に下から積み重ねて構成されている。第一フランジ21~第五フランジ25は、いずれも円環状に形成されている。第六フランジ26は、円板状に形成されている。全てのフランジ21~26は、複数本のボルト27(
図1では1本のみ図示)により、上下に積み重ねられた状態で固定されている。これにより、ケース体2は、全体として有天筒状に形成されている。
【0019】
第一フランジ21と第二フランジ22との間、第二フランジ22と第三フランジ23との間、第三フランジ23と第四フランジ24との間、及び第四フランジ24と第五フランジ25との間は、それぞれOリング28によりシールされている。
【0020】
第三フランジ23の周方向の所定箇所には、被密封流体が流れる外側流路23aが径方向に延びて形成されている。被密封流体としては、例えば、研磨液、加圧用空気、洗浄水、純水、窒素等の不活性ガス、エアーブロー用空気、研磨残渣液等が挙げられる。外側流路23aは、第三フランジ23の内周面と外周面とでそれぞれ開口している。第三フランジ23の外周面の開口は、前記固定側部材の配管が接続される接続ポートとされている。以上より、ケース体2は、被密封流体が流れる外側流路23aを有している。
【0021】
[回転軸]
回転軸4は、円柱状に形成されている。回転軸4は、ケース体2の内周側に配置されている。回転軸4は、被密封流体が流れる内側流路4aを有している。具体的には、回転軸4の内部には、被密封流体が流れる内側流路4aが軸方向に延びて形成されている。内側流路4aの上端部は、回転軸4の外周面4bにおいて、ケース体2の外側流路23aに対応する高さ位置で開口している。図示を省略するが、内側流路4aの下端部は、回転軸4の下端面で開口している。この下端面の開口には、前記回転側部材の配管が接続される。
【0022】
[気体軸受]
ロータリジョイント1は、回転軸4を非接触で回転可能に支持する気体軸受5を備えている。本実施形態の気体軸受5は、ケース体2の第五フランジ25に設けられ、回転軸4の上端部を支持している。具体的には、第五フランジ25の中央部には、上方に開口する円環状の嵌合溝25eが形成されている。この嵌合溝25eに気体軸受5が上方から嵌め込まれている。
【0023】
図2は、気体軸受5の拡大断面図である。
図2において、気体軸受5は、例えば、静圧気体軸受であり、多数孔型の自成絞り方式を採用している。気体軸受5は、ラジアル軸受部51と、スラスト軸受部52と、を有している。ラジアル軸受部51は、回転軸4の外周面4bを非接触で支持する。スラスト軸受部52は、回転軸4の軸方向上側の端面4cを非接触で支持する。
【0024】
スラスト軸受部52は、例えば円板状の部材からなる。スラスト軸受部52には、上側に突出する円環状の突出部52aが形成されている。突出部52aは、第六フランジ26の下面の中央部に形成された窪み部26aに嵌め込まれている。突出部52aの上面は、窪み部26aの底面に当接している。スラスト軸受部52の外周面は、第五フランジ25の嵌合溝25eの内周面に嵌合して固定されている。
【0025】
ラジアル軸受部51は、例えば円筒状の部材からなる。ラジアル軸受部51は、スラスト軸受部52の径方向外側部から下方に突出している。ラジアル軸受部51の外周面は、第五フランジ25の嵌合溝25eの内周面に嵌合して固定されている。ラジアル軸受部51の内径は、回転軸4の外径よりも少し大きい。以上より、気体軸受5は、全体として有天筒状に形成されている。気体軸受5の内部には、その下方から回転軸4の上端部が挿入されている。
【0026】
ラジアル軸受部51の外周には、全周にわたって円周溝51aが形成されている。ラジアル軸受部51には、円周溝51aに連通する複数の噴出孔53が径方向に貫通して形成されている。複数の噴出孔53は、ラジアル軸受部51の周方向に等間隔をあけて形成されている。各噴出孔53は、ラジアル軸受部51の内周面51bと回転軸4の外周面4bとの間に加圧ガスを噴出する孔である。各噴出孔53は、径方向外側から順に、大径部53a、絞り部53b、及び小径部53cを有している。
【0027】
大径部53aは、ラジアル軸受部51の円周溝51aの底面において開口している。小径部53cは、大径部53aよりも小径に形成されている。小径部53cは、ラジアル軸受部51の内周面51bにおいて開口している。この小径部53cの開口は、加圧ガスを噴出する噴出口53dとされている。絞り部53bは、大径部53aの径方向内端から小径部53cの径方向外端にかけて、徐々に縮径するように形成されている。
【0028】
第五フランジ25には、ロータリジョイント1の外部から複数の噴出孔53に加圧ガスを供給する供給路25cが形成されている。本実施形態の供給路25cは、第五フランジ25の周方向の所定箇所において径方向に貫通して形成された孔である。供給路25cは、ラジアル軸受部51の円周溝51aと連通している。これにより、供給路25cは、円周溝51aを介して複数の噴出孔53それぞれと連通している。
【0029】
スラスト軸受部52には、その下面52bと回転軸4の上側の端面4cとの間に加圧ガスを噴出する複数の噴出孔54が形成されている。各噴出孔54は、スラスト軸受部52の突出部52aよりも径方向内側において、上下方向に貫通して形成されている。各噴出孔54は、上から順に、大径部54a、絞り部54b、及び小径部54cを有している。
【0030】
大径部54aは、スラスト軸受部52の上面において開口している。小径部54cは、大径部54aよりも小径に形成されている。小径部54cは、スラスト軸受部52の下面52bにおいて開口している。この小径部54cの開口は、加圧ガスを噴出する噴出口54dとされている。絞り部54bは、大径部54aの下端から小径部54cの上端にかけて、徐々に縮径するように形成されている。
【0031】
ラジアル軸受部51及びスラスト軸受部52にそれぞれ用いられる加圧ガスは、気体であれば特に限定されない。本実施形態では、加圧ガスとして圧縮空気が用いられる。
【0032】
第六フランジ26の中央部には、ロータリジョイント1の外部から複数の噴出孔54に加圧ガスを供給する供給路26bが形成されている。本実施形態の供給路26bは、第六フランジ26において、その上面から窪み部26aの底面まで、上下方向に貫通して形成された孔である。供給路26bは、複数の噴出孔54それぞれと連通している。
【0033】
以上のように構成された気体軸受5では、第五フランジ25の供給路25cから、ラジアル軸受部51の円周溝51aを介して複数の噴出孔53に加圧ガスが供給される。各噴出孔53に供給された加圧ガスは、噴出口53dからラジアル軸受部51の内周面51bと回転軸4の外周面4bとの間に噴出される。この噴出された加圧ガスにより、回転軸4の外周面4bは、ラジアル軸受部51の内周面51bに対して非接触で回転可能に支持される。
【0034】
また、第六フランジ26の供給路26bからスラスト軸受部52の複数の噴出孔54に加圧ガスが供給される。各噴出孔54に供給された加圧ガスは、噴出口54dからスラスト軸受部52の下面52bと回転軸4の端面4cとの間に噴出される。この噴出された加圧ガスにより、回転軸4の端面4cは、スラスト軸受部52の下面52bに対して非接触で回転可能に支持される。
【0035】
スラスト軸受部52の突出部52aよりも径方向外側には、突出部52aの上面と窪み部26aの底面との間にOリング55が設けられている。Oリング55は、供給路25cからラジアル軸受部51の各噴出孔53に供給される加圧ガス、及び供給路26bからスラスト軸受部52の各噴出孔54に供給される加圧ガスが、ケース体2の外部に漏れるのを抑制するようになっている。
【0036】
第五フランジ25には、気体軸受5の各噴出孔53,54から噴出された加圧ガスをロータリジョイント1の外部に排出する排出路25dが形成されている。排出路25dは、気体軸受5の円周溝51aよりも下方において第五フランジ25に形成されている。本実施形態の排出路25dは、第五フランジ25の周方向の所定箇所(供給路25cとは異なる箇所)において、径方向に貫通して形成された孔である。
【0037】
[メカニカルシール]
図1において、ロータリジョイント1は、メカニカルシール6をさらに備えている。本実施形態のメカニカルシール6は、静圧型の非接触式メカニカルシールである。メカニカルシール6は、第一静止密封環61、第二静止密封環62、回転密封環63、連通流路64、第一弾性部材65、及び第二弾性部材66を有している。第一静止密封環61及び第二静止密封環62は、ケース体2の内周側に設けられた静止密封環である。回転密封環63は、回転軸4の外周側において回転軸4と一体回転可能に設けられている。
【0038】
図3は、メカニカルシール6の拡大断面図である。
図3において、第一静止密封環61及び第二静止密封環62は、回転密封環63を挟んで上下一対配置されている。これにより、第一静止密封環61及び第二静止密封環62は、それぞれ回転密封環63と軸方向に対向して配置されている。第一静止密封環61及び第二静止密封環62は、それぞれ円環状に形成されている。
【0039】
第一静止密封環61は、ケース体2の第一フランジ21に取り付けられている。具体的には、第一フランジ21における第二フランジ22よりも径方向内側に、上方に開口する円環状の取付溝21aが形成されている。この取付溝21aに、第一静止密封環61が嵌め込まれている。第一静止密封環61の上面の端面には、全周にわたってシール面61aが形成されている。
【0040】
第二静止密封環62は、ケース体2の第五フランジ25に取り付けられている。具体的には、第五フランジ25における第四フランジ24よりも径方向内側に、下方に開口する円環状の取付溝25aが形成されている。この取付溝25aに、第二静止密封環62が嵌め込まれている。第二静止密封環62の下側の端面には、全周にわたってシール面62aが形成されている。
【0041】
第一静止密封環61の下側には、係合穴61bが形成されている。係合穴61bには、取付溝21aの底面に固定されたピン21bが係合されている。第二静止密封環62の上側には、係合穴62bが形成されている。係合穴62bには、取付溝25aの底面に固定されたピン25bが係合されている。これにより、第一静止密封環61及び第二静止密封環62は、それぞれケース体2に対して回転不能となり、回転密封環63と連れ回りすることはない。
【0042】
回転密封環63は、円環状に形成されている。回転密封環63は、回転軸4の内側流路4aの開口に対応する高さ位置において、回転軸4の外周面4bに嵌合して固定されている。これにより、回転密封環63は、回転軸4に一体回転可能に設けられている。回転密封環63の上側の端面には、全周にわたってシール面63aが形成されている。シール面63aは、第一静止密封環61のシール面61aと軸方向に対向して配置されている。回転密封環63の下側の端面には、全周にわたってシール面63bが形成されている。シール面63bは、第二静止密封環62のシール面62aと軸方向に対向して配置されている。本実施形態の各シール面63a,63bには、例えばセラミックコーティングが施されている。
【0043】
メカニカルシール6の連通流路64は、第三フランジ23の外側流路23aと回転軸4の内側流路4aとを繋ぐための流路である。本実施形態の連通流路64は、回転密封環63において周方向に間隔をあけて複数形成されている(
図1も参照)。各連通流路64は、回転密封環63の外周面及び内周面でそれぞれ開口するように径方向に貫通して形成されている。各連通流路64の径方向内側の開口は、回転軸4の外周面4bにおける内側流路4aの開口に対向して配置されている。各連通流路64の径方向外側の開口は、第三フランジ23の内周面における外側流路23aの開口に対向して配置されている。
【0044】
回転密封環63の外周面と第三フランジ23の内周面との間には、環状空間67が形成されている。回転密封環63の各連通流路64は、環状空間67を介して第三フランジ23の外側流路23aと連通している。これにより、第三フランジ23の外側流路23aと回転軸4の内側流路4aは、環状空間67及び連通流路64によって繋がっている。環状空間67は、その上下両側に配置されたOリング72,75(後述)によって密封されている。回転密封環63の内周面と回転軸4の外周面4bとの間は、連通流路64を挟んで配置された上下一対のOリング68によりシールされている。
【0045】
図1において、第一弾性部材65は、例えばコイルスプリングからなる。第一弾性部材65は、第一フランジ21の取付溝21aにおいて圧縮された状態で設けられている。第一弾性部材65は、図示を省略するが、取付溝21aの周方向に間隔をあけて複数設けられている。第一弾性部材65の一端部(上端部)は、第一静止密封環61に当接している。これにより、第一静止密封環61は、第一弾性部材65の弾性復元力によって、ケース体2に対して回転密封環63側へ向かって上側に押圧されている。なお、第一弾性部材65は、コイルスプリング以外の他の弾性部材であってもよい。
【0046】
第二弾性部材66は、例えばコイルスプリングからなる。第二弾性部材66は、第五フランジ25の取付溝25aにおいて圧縮された状態で設けられている。第二弾性部材66は、図示を省略するが、取付溝25aの周方向に間隔をあけて複数設けられている。第二弾性部材66の一端部(下端部)は、第二静止密封環62に当接している。これにより、第二静止密封環62は、第二弾性部材66の弾性復元力によって、ケース体2に対して回転密封環63側へ向かって下側に押圧されている。なお、第二弾性部材66は、コイルスプリング以外の他の弾性部材であってもよい。
【0047】
図3において、第一静止密封環61のシール面61aには、全周にわたって円環状の静圧発生溝61cが形成されている。静圧発生溝61cは、第一静止密封環61のシール面61aと回転密封環63のシール面63aとの間に静圧を発生させるための溝である。本実施形態の静圧発生溝61cは、例えば断面V字状に形成されている。
【0048】
第一静止密封環61の周方向の所定箇所には、給気孔61dが形成されている。給気孔61dは、静圧発生溝61cにシールガスを供給するための孔である。
図3では、給気孔61dを簡略化して二点鎖線で示している。給気孔61dは、第一静止密封環61の外周面及び静圧発生溝61cにおいてそれぞれ開口するように形成されている。
【0049】
第二静止密封環62のシール面62aには、全周にわたって円環状の静圧発生溝62cが形成されている。静圧発生溝62cは、第二静止密封環62のシール面62aと回転密封環63のシール面63bとの間に静圧を発生させるための溝である。本実施形態の静圧発生溝61cは、例えば断面V字状に形成されている。
【0050】
第二静止密封環62の周方向の所定箇所には、給気孔62dが形成されている。給気孔62dは、静圧発生溝62cにシールガスを供給するための孔である。
図3では、給気孔62dを簡略化して二点鎖線で示している。給気孔62dは、第二静止密封環62の外周面及び静圧発生溝62cにおいてそれぞれ開口するように形成されている。
【0051】
第一静止密封環61及び第二静止密封環62の各静圧発生溝61c,62cに供給されるシールガスは、気体であれば特に限定されない。本実施形態では、シールガスとして、気体軸受5の加圧ガスと同一種類のガスである圧縮空気が用いられる。
【0052】
第二フランジ22には、ロータリジョイント1の外部から第一静止密封環61の給気孔61dにシールガスを供給する供給路22aが形成されている。本実施形態の供給路22aは、第二フランジ22の周方向の所定箇所において径方向に貫通して形成された孔である。第一静止密封環61の外周面と第二フランジ22の内周面との間には、環状空間71が形成されている。これにより、第一静止密封環61の給気孔61dは、環状空間71を介して第二フランジ22の供給路22aと連通している。
【0053】
第一静止密封環61の外周面と第二フランジ22の内周面との間は、環状空間71を挟んで配置された上下一対のOリング72よりシールされている。これにより、環状空間71は、上下一対のOリング72により密封されている。第一静止密封環61の内周面と第一フランジ21の取付溝21aの内周面との間は、Oリング73よりシールされている。
【0054】
第四フランジ24には、ロータリジョイント1の外部から第二静止密封環62の給気孔62dにシールガスを供給する供給路24aが形成されている。本実施形態の供給路24aは、第四フランジ24の周方向の所定箇所において径方向に貫通して形成された孔である。第二静止密封環62の外周面と第四フランジ24の内周面との間には、環状空間74が形成されている。これにより、第二静止密封環62の給気孔62dは、環状空間74を介して第四フランジ24の供給路24aと連通している。
【0055】
第二静止密封環62の外周面と第四フランジ24の内周面との間は、環状空間74を挟んで配置された上下一対のOリング75よりシールされている。これにより、環状空間74は、上下一対のOリング75により密封されている。第二静止密封環62の内周面と第五フランジ25の取付溝25aの内周面との間は、Oリング76よりシールされている。
【0056】
以上のように構成されたメカニカルシール6では、回転軸4の回転を開始する前に、第二フランジ22の供給路22aから、環状空間71及び第一静止密封環61の給気孔61dを介して、静圧発生溝61cにシールガスが供給される。静圧発生溝61cに供給されたシールガスにより、第一静止密封環61のシール面61aと回転密封環63のシール面63aとの間に静圧が発生する。この静圧により、第一静止密封環61は、第一弾性部材65の弾性復元力に抗して、回転密封環63から下方に少し離れた状態で保持される。これにより、両シール面61a,63a間は、シールガスにより非接触状態に保持されながら、当該シールガスによってシールされる。
【0057】
また、回転軸4の回転を開始する前に、第四フランジ24の供給路24aから、環状空間74及び第二静止密封環62の給気孔62dを介して、静圧発生溝62cにシールガスが供給される。静圧発生溝62cに供給されたシールガスは、第二静止密封環62のシール面62aと回転密封環63のシール面63bとの間に静圧が発生する。この静圧により、第二静止密封環62は、第二弾性部材66の弾性復元力に抗して、回転密封環63から上方に少し離れた状態で保持される。これにより、両シール面62a,63b間は、シールガスにより非接触状態に保持されながら、当該シールガスによってシールされる。
【0058】
上記のように、第一静止密封環61及び回転密封環63の両シール面61a,63a間と、第二静止密封環62及び回転密封環63の両シール面62a,63b間とを、それぞれ非接触状態でシールした状態で、ケース体2に対して回転軸4を回転させる。これにより、回転軸4の回転開始時及び回転中において、両シール面61a,63a間、及び両シール面62a,63b間において摩耗紛が発生するのを抑制することができる。
【0059】
第一静止密封環61の静圧発生溝61cに供給されたシールガスは、両シール面61a,63a間を通過した後、回転軸4の外周面4bと第一静止密封環61の内周面との間、及び回転軸4の外周面4bと第一フランジ21の内周面との間を通過して、ケース体2の下方に排出される。
【0060】
第二静止密封環62の静圧発生溝62cに供給されたシールガスは、両シール面62a,63b間を通過した後、回転軸4の外周面4bと第二静止密封環62の内周面との間、及び回転軸4の外周面4bと第五フランジ25の内周面との間を通過して上方に流れる。このように上方に流れたシールガスは、
図1に示すように、気体軸受5の加圧ガスを排出する排出路25dからロータリジョイント1の外部に排出される。したがって、本実施形態の排出路25dは、気体軸受5の加圧ガス及びメカニカルシール6のシールガスの両方をロータリジョイント1の外部に排出する共用の排出路とされている。
【0061】
[実施形態の作用効果]
以上、本実施形態のロータリジョイント1によれば、ケース体2に設けられた気体軸受5により、回転軸4は非接触で回転可能に支持される。気体軸受5は、グリース等の潤滑剤が不要である。したがって、ケース体2の外側流路23a、メカニカルシール6の連通流路64、及び回転軸4の内側流路4aを流れる被密封流体に、異物(潤滑剤)が混入するのを抑制することができる。また、気体軸受5に対する回転軸4の摺動抵抗がほぼゼロになるので、固定側部材に対して回転側部材が高速で回転する高速回転機器に、本実施形態のロータリジョイント1を採用することができる。
【0062】
また、気体軸受5は、回転軸4の外周面4bを非接触で支持するラジアル軸受部51と、回転軸4の上側の端面4cを非接触で支持するスラスト軸受部52と、を有する。ラジアル軸受部51及びスラスト軸受部52は、いずれも潤滑剤が不要である。このため、被密封流体に異物(潤滑剤)が混入するのをさらに抑制することができる。
【0063】
また、メカニカルシール6は、非接触式メカニカルシールである。このため、各静止密封環61,62のシール面61a,62aと回転密封環63のシール面63a,63bとの間は、シールガスにより非接触状態に保持される。その結果、両シール面61a,63a間、及び両シール面62a,63b間で、それぞれ摩耗粉が発生するのを抑制することができる。これにより、被密封流体に異物(摩耗粉)が混入するのをさらに抑制することができる。
【0064】
また、メカニカルシール6は、シールガスにより静圧を発生させる静圧型の非接触式メカニカルシールである。このため、動圧型の非接触式メカニカルシールと比較すると、回転軸4の回転開始時に、両シール面61a,63a間、及び両シール面62a,63b間で、それぞれ摩耗粉が発生するのを抑制することができる。これにより、被密封流体に異物(摩耗粉)が混入するのをさらに抑制することができる。
【0065】
また、メカニカルシール6に用いられるシールガスは、気体軸受5に用いられる加圧ガスと同一種類のガスである。これにより、メカニカルシール6用のシールガスとして、気体軸受5用の加圧ガスを用いることができるので、ランニングコストを抑えることができる。
【0066】
また、ケース体2は、加圧ガス及びシールガスの両方を排出する共用の排出路25dを有する。これにより、ケース体2に、加圧ガスの排出路とシールガスの排出路を別々に設ける必要がないので、ケース体2の製造コストを抑えることができる。
【0067】
[その他]
本実施形態におけるロータリジョイント1は、軸方向において上下逆に配置されていてもよいし、軸方向が水平方向となるように配置されていてもよい。また、ロータリジョイント1は、CMP装置以外に、スパッタリング装置やエッチング装置等の他の装置にも適用することができる。また、ロータリジョイント1は、半導体分野での使用に限定されるものではない。また、ロータリジョイント1は、1組の流路(外側流路23a、連通流路64、内側流路4a)を複数組備えた多ポート式のロータリジョイントがであってもよい。
【0068】
メカニカルシール6は、両シール面61a,63a間及び両シール面62a,63b間の少なくとも一方を、動圧により非接触でシールする動圧型の接触式メカニカルシールであってもよい。また、メカニカルシール6は、両シール面61a,63a及び両シール面62a,63bの少なくとも一方を接触させてシールする接触式メカニカルシールであってもよい。
【0069】
メカニカルシール6の連通流路64は、本実施形態に限定されるものではない。例えば、回転密封環63を上下に二分割し、この分割された回転密封環63同士の間に形成した隙間を連通流路64としてもよい。ケース体2は、シールガスのみを外部に排出する専用の排出路を有していてもよい。また、シールガスは、気体軸受5の加圧ガスと異なる種類のガスを用いてもよい。
【0070】
本実施形態の気体軸受5は、回転軸4の上端部を支持しているが、これに加えて又はこれに替えて、回転軸4の上端部以外を支持してもよい。また、気体軸受5は、ラジアル軸受部51及びスラスト軸受部52の少なくとも一方を有していればよい。例えば、気体軸受5は、ラジアル軸受部51のみを有していてもよい。その場合、回転軸4の端面4cは、滑り軸受等により接触状態で回転可能に支持すればよい。
【0071】
本実施形態の気体軸受5は、静圧気体軸受として、多数孔型の自成絞り方式を採用しているが、
図4に示すように多数孔型のオリフィス絞り方式、又は
図5に示すように多孔質型を採用してもよい。
図4に示すオリフィス絞り方式の気体軸受5において、ラジアル軸受部51の各噴出孔53は、径方向(
図4の左右方向)の途中部に絞り部53eを有している。同様に、スラスト軸受部52の各噴出孔54は、上下方向の途中部に絞り部54eを有している。
図5に示す多孔質型の気体軸受5において、ラジアル軸受部51は、各噴出孔53に設けられた多孔質部材56を有している。同様に、スラスト軸受部52は、各噴出孔54に設けられた多孔質部材57を有している。各多孔質部材56,57には、加圧ガスを噴出する多数の微細な孔が形成されている。本実施形態の気体軸受5は、静圧気体軸受に限定されるものではなく、例えばスパイラル溝型の動圧気体軸受であってもよい。
【0072】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 ロータリジョイント
2 ケース体
4 回転軸
4a 内側流路
4b 外周面
4c 端面
5 気体軸受
6 メカニカルシール
23a 外側流路
25d 排出路
51 ラジアル軸受部
52 スラスト軸受部
61 第一静止密封環(静止密封環)
62 第二静止密封環(静止密封環)
63 回転密封環
64 連通流路