(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183946
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20231221BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20231221BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20231221BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q5/10
A61K8/02
A61K8/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097770
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 広美
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB222
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC432
4C083AC482
4C083AC532
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD352
4C083BB21
4C083BB49
4C083CC36
4C083DD08
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】白髪交じりの毛髪であっても、それを、簡便に、艶のある黒色から白色に近いグレイヘアにまで色を調整しながら着色することができ、容易に洗い流すこともでき、毛髪に傷みを与えない毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】(A)平均粒子径が20μm以下である白系又は黒系のパール剤を含み、且つ前記(A)白系又は黒系のパール剤以外の着色剤を含まない毛髪化粧料であって、前記白系又は黒系のパール剤の色差ΔE値が28以下であり、前記色差ΔE値が、黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜と、白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜との色差ΔE値である、毛髪化粧料。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒子径が20μm以下である白系又は黒系のパール剤を含み、且つ前記(A)白系又は黒系のパール剤以外の着色剤を含まない毛髪化粧料であって、
前記白系又は黒系のパール剤の色差ΔE値が28以下であり、
前記色差ΔE値が、黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜と、白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜との、下記の式で表される色差ΔE値である、毛髪化粧料。
【数1】
(式中、
L’は黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のL値、
L”は白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のL値、
a’は黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のa値、
a”は白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のa値、
b’は黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のb値、
b”は白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のb値である。)
【請求項2】
前記(A)白系又は黒系のパール剤の含有量が、3~10質量%である、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
(B)増粘剤を更に含む、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
前記(B)増粘剤が、少なくとも一種のアニオン性増粘剤を含む、請求項3に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
前記(B)アニオン性増粘剤が、カルボキシビニルポリマーである、請求項4に記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
前記(B)増粘剤の含有量が、0.1~0.4質量%である、請求項3に記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
(C)樹脂を更に含む、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
前記(C)樹脂が、少なくとも一種のアニオン性樹脂を含む、請求項7に記載の毛髪化粧料。
【請求項9】
前記(C)アニオン性樹脂が、アニオン性アクリル樹脂である、請求項8に記載の毛髪化粧料。
【請求項10】
前記(C)樹脂の含有量が、0.5~2質量%である、請求項7に記載の毛髪化粧料。
【請求項11】
温度30℃における粘度が、1000~3000mPa・sである、請求項1~10のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項12】
エアゾールフォームである、請求項1~10のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、毛髪化粧料、特に、白髪交じりの毛髪を美しく見せることができる毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な白髪染め用の毛髪化粧料(ヘアカラー剤、染毛料等)が開発され、販売されている。その毛髪化粧料のほとんどは白髪を黒色に着色・染色するものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、発色剤として雲母チタン、増粘剤としてカルボキシビニルポリマー、バインダーとしてアニオン性樹脂を含有する、頭髪用カラーフォームエアゾール組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、一時染毛及び整髪のための頭髪用組成物として、水を30~60質量%と、油剤と、パール粉体を3.5~30質量%と、着色剤(但し、前記パール粉体に含まれる着色剤は除く)を1質量%以上と、界面活性剤と、を含み、前記パール粉体と前記界面活性剤との質量比が3:1~1:1である、水中油型頭髪用組成物が開示されている。
以上の通り、特許文献1及び2の毛髪化粧料は、白髪を黒色に着色・染色するものに過ぎず、白髪交じりの毛髪を美しく見せることができる毛髪化粧料ではなかった。
【0005】
一旦、白髪染めを始めると1~2ヶ月の間隔で繰り返し染め続ければならず、髪の傷みが増すことになる。そこで、近年、ありのままの姿で生きたいとの考えの下、白髪を染めて無理に若作りするのではなく、染めずに白髪を活かしたグレイヘアでいることが自然体で良いとされて好まれ始め、グレイヘアを目指す人が増えている。そこで、白髪交じりの毛髪を美しく見せることができる毛髪化粧料が望まれている。
【0006】
更に、白髪染めを止めると、綺麗に整うまでに約2~3年とかなりの時間が掛かり、その間、白髪交じりの状態は、何も手入れされずに、だらしなく見えることになる。時に、冠婚葬祭、授業参観、同窓会等のTPOに合わせて黒っぽくして若々しく見せたいときもあり、完全にグレイヘアに移行するまでに途中であきらめてしまう人も多くいる。このように、グレイヘアまでの移行期はストレスを与えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62-255414号公報
【特許文献2】特開2017-149679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明の課題は、上記の問題を解決して、白髪交じりの毛髪を美しく見せることができる毛髪化粧料を提供することにある。具体的には、本願発明の課題は、白髪交じりの毛髪であっても、簡便に艶のある黒色から白色に近いグレイヘアにまで色を調整しながら着色することができ、容易に洗い流すこともでき、毛髪に傷みを与えない毛髪化粧料を提供することである。
更に、本願発明の課題は、上記のグレイヘアまでの移行期に一時的に黒っぽくも白っぽくにも着色することができ、上記の移行期をストレスなく過ごすことができる毛髪化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、以下の各項に関する。
[1] (A)平均粒子径が20μm以下である白系又は黒系のパール剤を含み、且つ前記(A)白系又は黒系のパール剤以外の着色剤を含まない毛髪化粧料であって、
前記白系又は黒系のパール剤の色差ΔE値が28以下であり、
前記色差ΔE値が、黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜と、白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜との、下記の式で表される色差ΔE値である、毛髪化粧料。
【数1】
(式中、
L’は黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のL値、
L”は白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のL値、
a’は黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のa値、
a”は白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のa値、
b’は黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のb値、
b”は白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のb値である。)
【0010】
[2] 前記(A)白系又は黒系のパール剤の含有量が、3~10質量%である、[1]に記載の毛髪化粧料。
【0011】
[3] (B)増粘剤を更に含む、[1]又は[2]に記載の毛髪化粧料。
[4] 前記(B)増粘剤が、少なくとも一種のアニオン性増粘剤を含む、[3]に記載の毛髪化粧料。
[5] 前記(B)アニオン性増粘剤が、カルボキシビニルポリマーである、[4]に記載の毛髪化粧料。
[6] 前記(B)増粘剤の含有量が、0.1~0.4質量%である、[3]~[5]のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【0012】
[7] (C)樹脂を更に含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
[8] 前記(C)樹脂が、少なくとも一種のアニオン性樹脂を含む、[7]に記載の毛髪化粧料。
[9] 前記(C)アニオン性樹脂が、アニオン性アクリル樹脂である、[8]に記載の毛髪化粧料。
[10] 前記(C)樹脂の含有量が、0.5~2質量%である、[7]~[9]のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【0013】
[11] 温度30℃における粘度が、1000~3000mPa・sである、[1]~[10]のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
[12] エアゾールフォームである、[1]~[11]のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によって、白髪交じりの毛髪を美しく見せることができる毛髪化粧料が提供される。また、本願発明によっては、白髪交じりの毛髪であっても、簡便に艶のある黒色から白色に近いグレイヘアにまで色を調整しながら着色することができ、容易に洗い流すこともでき、毛髪に傷みを与えない毛髪化粧料が提供される。更に、本願発明によって、上記のグレイヘアまでの移行期に一時的に黒っぽくも白っぽくにも着色することができ、上記の移行期をストレスなく過ごすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明の毛髪化粧料は、(A)平均粒子径が20μm以下である白系又は黒系のパール剤を含み、且つ前記(A)白系又は黒系のパール剤以外の着色剤を含まない毛髪化粧料であって、前記白系又は黒系のパール剤の色差ΔE値が28以下であり、前記色差ΔE値が、黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜と、白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜との、下記の式で表される色差ΔE値(以下、単に「色差ΔE値」とも言う。)である、毛髪化粧料である。
【数2】
(式中、
L’は黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のL値、
L”は白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のL値、
a’は黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のa値、
a”は白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のa値、
b’は黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のb値、
b”は白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のb値である。)
【0016】
<(A)成分>
本願発明の毛髪化粧料に含まれる着色剤である(A)平均粒子径が20μm以下であり、色差ΔE値が28以下である白系又は黒系のパール剤である。
【0017】
ここで、本願発明における「平均粒子径」は、体積平均粒子径であり、その測定方法の詳細については、後述の実施例で説明する。
本願発明において用いる白系又は黒系のパール剤の平均粒子径は20μm以下であり、18.5μm以下であることが好ましい。平均粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば1μm以上であり、5μm以上であることが好ましい。
【0018】
(A)平均粒子径が20μm以下であり、色差ΔE値が28以下である白系又は黒系のパール剤は、隠蔽力・着色力が高く、艶もある。(A)白系又は黒系のパール剤を用いることで、白髪交じりの毛髪を、艶のある黒色、あるいは白色に近いグレイヘアに着色することができる。
【0019】
(A)白系又は黒系のパール剤は、白系又は黒系であって、真珠のような光沢があり、干渉色がないものであればよく、特に限定されない。白系のパール剤としては、例えば、雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、合成金雲母、酸化チタン被覆合成金雲母、ガラス末、酸化チタン被覆ガラス末、ポリエチレンテレフタレート・ポリエステルフィルム積層末、雲母片、アクリル樹脂被覆アルミニウム末(色材を含有してもよい)、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、アルミニウムフレーク、ステンレスフレーク、酸化チタン被覆板状アルミナ、真珠殻、金箔、金蒸着樹脂フィルム、金属蒸着樹脂フィルム等が挙げられる。好ましくは、酸化チタン被覆マイカ、雲母チタン等が挙げられ、特に好ましくは、酸化チタン被覆マイカ等が挙げられる。
【0020】
黒系のパール剤としては、酸化鉄シリカ被覆アルミナ、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、黒酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄・黒酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・カルミン処理雲母チタン、コンジョウ処理雲母チタン、酸化鉄・コンジョウ処理雲母チタン、酸化クロム処理雲母チタン、黒酸化チタン処理雲母チタン等が挙げられる。好ましくは、酸化鉄シリカ被覆アルミナ、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、黒酸化鉄被覆雲母チタン等が挙げられ、特に好ましくは、酸化鉄シリカ被覆アルミナ等が挙げられる。
【0021】
(A)白系又は黒系のパール剤の色差ΔE値は、28以下であり、好ましくは27以下である。
本願発明における「色差ΔE値」は、国際照明委員会(CIE)が規定したものであり、その測定方法の詳細については、後述の実施例で説明する。色差ΔE値が0であることは、試験紙が黒の隠ぺい率試験紙であっても、白の隠ぺい率試験紙であっても、塗布した色に全く差がないこと、即ち隠蔽効果として最大であるということを意味する。本願発明において、色差ΔE値は28以下であり、27以下であることが好ましい。色差ΔE値が28以下であれば、隠蔽効果として満足できるものであり、27以下であれば、より好ましい。
【0022】
(A)白系又は黒系のパール剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、1種以上の白系のパール剤と1種以上の黒系のパール剤とを組み合わせて用いることは好ましくない。
【0023】
(A)白系又は黒系のパール剤の含有量は、特に限定されず、適宜選択されるが、例えば3~10質量%であることが好ましく、3~6質量%であることがより好ましい。
【0024】
<(B)成分>
本願発明の毛髪化粧料は、(B)増粘剤を更に含むことが好ましい。(B)増粘剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本願発明において用いることができる増粘剤は、特に限定されず、毛髪化粧料に用いることができる増粘剤のいずれも好適に用いることができるが、(A)白系又は黒系のパール剤が沈降せず、また沈降しても振盪することによって分散することが可能な粘度に調整できる点から、少なくとも一種のアニオン性増粘剤を含むことが好ましい。
【0026】
(B)増粘剤としては、例えば、水溶性高分子が挙げられる。水溶性高分子としては、例えば、アルギン酸、カラギーナン、寒天、ファーセレラン等の海藻抽出物;グアーガム、キサンタンガム、クインスシード、コンニャクマンナン、タマリンドガム、タラガム、デキストリン、デンプン、ローカストビーンガム等の種子粘質物;アラビアガム、ガッティガム、カラヤガム、トラガカントガム等の樹液粘質物;アラビノガラクタン、ペクチン、マルメロ等の果実粘質物;小麦タンパク質、大豆タンパク質等の植物系タンパク質;アルブミン、カゼイン、ゼラチン等の動物系タンパク質;キトサン、ヒアルロン酸等の動物系ムコ多糖;カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、シクロデキストリン、デキストラン、プルラン等の産生粘質物;ヒアルロン酸等の微生物系ムコ多糖;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース等のセルロース誘導体;デンプンリン酸エステル、デンプングリコール酸ナトリウム等のデンプン誘導体;カチオン化グアーガム、カルボキシメチル・ヒドロキシプロピル化グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム等のグアーガム誘導体;カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸/メタクリル酸アルキル)コポリマー、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、(アクリル酸ジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー等のポリアクリル酸系高分子;高重合ポリエチレングリコールが挙げられる。これらの中でも、ポリアクリル酸系高分子、セルロース誘導体が好ましく、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、及びヒドロキシエチルセルロースがより好ましい。増粘剤は1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本願発明の毛髪化粧料中の(B)増粘剤の含有量は、毛髪化粧料の粘度を所望の粘度にすることができる限り、特に限定されず、適宜選択される。好ましい毛髪化粧料の粘度は、パール剤が沈降せず、わずかに沈降しても振盪により分散できる粘度であり、例えば、毛髪化粧料の温度30℃における粘度は、1000~3000mPa・sである。具体的には、(B)増粘剤の含有量は、例えば0.1~0.4質量%が挙げられ、好ましくは0.2~0.3質量%が挙げられる。
【0028】
<(C)成分>
本願発明の毛髪化粧料は、(C)樹脂、好ましくは(A)白系又は黒系のパール剤のバインダーとして機能する樹脂を更に含むことが好ましい。(C)樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本願発明において用いることができる樹脂は、特に限定されず、毛髪化粧料に用いることができる樹脂のいずれも好適に用いることができるが、(A)白系又は黒系のパール剤の毛髪への接着性、及びカルボキシビニルポリマー等のアニオン性増粘剤との相溶性の点から、アニオン性樹脂が好ましい。
【0030】
アニオン性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アニオン性アクリル樹脂等が挙げられる。
【0031】
本願発明の毛髪化粧料中の(C)樹脂の含有量は、特に限定されず、適宜選択されるが、例えばパール剤が毛髪にしっかり接着し、ごわつかない感触をキープできる配合量とすることが好ましい。具体的には、例えば0.5~2質量%が挙げられ、好ましくは1~1.5質量%が挙げられる。
【0032】
<その他の成分>
本願発明の毛髪化粧料は、水を更に含むことが好ましい。なお、本願発明の毛髪化粧料中の水の含有量は、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0033】
本願発明の毛髪化粧料は、上記の成分(A)~(C)及び水以外に、本願発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を更に含むことができる。
【0034】
本願発明の毛髪化粧料が含むことができる、その他の成分は、特に限定されず、毛髪化粧料に配合される各種成分のいずれも添加することができる。
【0035】
本願発明の毛髪化粧料は、例えば、油分、特に、シリコーン油分を配合することができる。シリコーン油分としては、特に限定されないが、例えば、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、シリコン樹脂、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルポリシクロシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(POE)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(POE)シロキサンメチル(POP)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体、メチルポリシロキサンエマルション、環状シリコン樹脂、高重合メチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(POP)シロキサン共重合体、テトラデカメチルヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、アミノ変性シリコーン(アモジメチコン、アミノプロピルメチコンなど)、ポリエーテル変性シリコーン、PEGアモジメチコン、PCAジメチコン等が挙げられる。また、その他の油分としては、特に限定されないが、例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ひまし油等の液体油脂;固体油脂;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン等のロウ類;流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等の炭化水素油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。なお、POE、POP、PEGは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリエチレングリコールの略である。
【0036】
本願発明の毛髪化粧料に配合することができる、油分以外の成分としては、例えば、粉末成分(マイカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、等)、各種界面活性剤(カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等)、保湿剤(グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ソルビトール、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等)、水溶性高分子(カチオン化セルロース、カチオン化グアガム、カチオン化ローカストビーンガム等のカチオン性多糖類、ポリクオタニウム-7等の合成系カチオン性高分子、ポリクオタニウム-39等の両性高分子、カルボキシビニルポリマー等のアニオン性高分子等)、浸透促進剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、各種抽出液、防腐剤(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、1,2-オクタンジオール、メチルイソチアゾリノン等)、香料等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
<毛髪化粧料>
本願発明の毛髪化粧料は、含まれる着色剤が、(A)白系又は黒系のパール剤のみである。それ以外の着色剤を含むと、艶のある黒色、あるいは白色に近いグレイヘアに着色できなくなる。着色剤がパール剤のみであることから、容易に着色することができ、容易に洗い流すこともできる。本願発明の毛髪化粧料が手に付着しても、すぐに洗い落とすことができる。加えて、本願発明の毛髪化粧料は、一時着色料であり、髪を傷めることがない。
【0038】
(A)黒系のパール剤を含む本願発明の毛髪化粧料は、白髪部分を艶のある黒色に着色し、しかも真っ黒にはならず、自然な感じに仕上がり、印象を若々しくすることができる。(A)白系のパール剤を含む本願発明の毛髪化粧料は、黒髪部分を艶のある白色に着色し、落ち着いた上品なグレイヘアにすることができる。(A)黒系のパール剤を含む毛髪化粧料と(A)白系のパール剤を含む毛髪化粧料を併用することも可能である。黒と白を混色すると色味としては灰色になり、本品を使用する意味がなくなる為、併用は推奨しないが、混色せずわざと部分的に使い分け、ビジュアル的に楽しむこともできる。
【0039】
白髪染めを止めた後のグレイヘアへの移行期に、本願発明の毛髪化粧料を用いることにで、白髪交じりの状態で身だしなみを怠っていると思われずに、常に毛髪を美しく見せることができ、その時々で毛髪を黒色にも、白色に近い色にも変えることもできる。白髪を染めるのではなく、白髪と黒髪が美しく交ざったグレイヘアが好まれる現在において、本願発明の毛髪化粧料は、消費者のニーズに応えるものと考えられる。また、ありのままの姿で生きたいという考えからグレイヘアを目指す人にとって、移行期をストレスなく過ごすことを可能にする。
【0040】
本願発明の毛髪化粧料の剤型は、特に限定されないが、例えば、エアゾールフォーム、ジェル状、クリーム状、ワックス、スプレー、リキッド状、ローション等が挙げられる。本願発明の毛髪化粧料の剤型としては、中でも、使いやすさ等の点から、エアゾールフォームが好ましい。
【0041】
本願発明の毛髪化粧料は、特に限定はされないが、毛髪への塗布のしやすさや、使いやすさ等の点から、温度30℃における粘度が、1000~3000mPa・sであることが好ましい。本願発明の毛髪化粧料の剤型がエアゾールフォームである場合も、噴射剤を添加する前の原液の温度30℃における粘度が、1000~3000mPa・sであることが好ましい。
【0042】
本願発明の毛髪化粧料は、常法により製造することができる。特に限定されないが、本願発明の毛髪化粧料は、例えば、室温又は適温に加熱しながら、成分(A)~(C)、必要に応じて、水、その他の成分を撹拌・混合して製造することができる。エアゾールフォームである場合は、例えば、成分(A)~(C)、必要に応じて、水、その他の成分を撹拌・混合して原液を調製し、得られた原液と噴射剤とを耐圧容器内に充填し、容器を振盪するなどして、噴射剤を原液と乳化させることによって、製造することができる。
【0043】
エアゾールフォームの場合に用いられる噴射剤は、特に限定されず、エアゾールフォームで通常用いられているものいずれも用いることができる。噴射剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ジメチルエーテル等の液化ガス等が挙げられる。原液と噴射剤との配合比は、特に限定されず、適宜選択されるが、例えば、質量比で88:12~95:5であることが好ましい。
【実施例0044】
以下、本願発明を実施例により更に具体的に説明するが、本願発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、部又は%は、特記しない限り、質量部又は質量%を表す。
【0045】
<毛髪化粧料の評価>
調製した毛髪化粧料について、下記に示す方法により、毛髪化粧料の着色効果を評価した。また、下記に示す方法により、毛髪化粧料に用いた(A)白系又は黒系のパール剤の色差ΔE値及び平均粒子径を測定した。
【0046】
(着色効果)
調製した毛髪化粧料を毛束に塗布して、その着色を目視で観察し、下記の評価基準で評価した。
〇:隠蔽力があり着色効果がある
△:やや隠蔽力はあるが充分な着色効果はない
×:隠蔽力がなく着色効果がない
【0047】
(パール剤の色差ΔE値)
パール剤とニトロセルロースラッカー(玄々化学工業株式会社製「LC-21クリヤラッカー」)とを質量比で1:15になるように、ディスパーにて3000rpmで30秒間混合・分散させた。そして、ドクターブレードを用いて、乾燥膜厚が100μmになるように、得られた分散液を黒の隠ぺい率試験紙と白の隠ぺい率試験紙の上に塗布し、乾燥させて、パール剤の塗膜を形成した。
黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmのパール剤の塗膜と、白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmのパール剤の塗膜それぞれのL値、a値、b値を、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製「CM-2600d」)を用いて測定し、その測色結果から、以下の式を用いて色差ΔE値を求めた。
【数3】
(式中、
L’は黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のL値、
L”は白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のL値、
a’は黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のa値、
a”は白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のa値、
b’は黒の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のb値、
b”は白の隠ぺい率試験紙上に形成した乾燥膜厚が100μmの塗膜のb値である。)
【0048】
(パール剤の体積平均粒子径)
パール剤の体積平均粒子径は、レーザー回折・産卵式粒子径分布測定装置(MT3300EXII:マイクロトラック・ベル製)を用いて測定した。
【0049】
<(A)白系又は黒系のパール剤>
以下に示す(A)白系又は黒系のパール剤を、本実施例で用いた。
パール剤1:Sun Chemical Soft Luster White 6500,Colors & Effects USA LLC社
パール剤2:Timiron Supersilk MP-1005,メルク社
パール剤3:Sun Chemical Velvet,Colors & Effects USA LLC社
パール剤4:Sun Chemical Satina,Colors & Effects USA LLC社
パール剤5:Timiron Starluster MP-115,メルク社
パール剤6:Sun Chemical SuperPearl,Colors & Effects USA LLC社
パール剤7:Timiron Gleamer Flake MP-45SP,メルク社
パール剤8:Ronastar Diamond Black,メルク社
パール剤9:メタシャインMT1030PB,日本板硝子社
パール剤10:メタシャインMT1080PB,日本板硝子社
【0050】
パール剤1~10の色差ΔE値及び平均粒子径は以下の通りである。
【表1】
【0051】
実施例1~5及び比較例1~5
<毛髪化粧料の調製>
表2に示す処方で、エアゾールフォームの毛髪化粧料を常法により調製した。
具体的には、室温又は適温に加熱しながら、成分(A)~(C)、水、その他の成分を撹拌・混合して原液を調製した。得られた原液を耐圧容器内に充填し、噴射剤として脱臭精製LPG(0.43MPa,20℃,大洋液化ガス株式会社製)を用いた。
【0052】
【0053】
得られた実施例1~5及び比較例1~5の毛髪化粧料について、着色効果を評価した。
その結果を表3に記す。
【0054】
【0055】
表3から分かる通り、(A)平均粒子径が20μm以下であり、色差ΔE値が28以下である白系又は黒系のパール剤を用いる実施例1~5の毛髪化粧料は、着色効果の評価が○であった。色差ΔE値が28以下であり、且つ平均粒子径が20μm以下であるという2つの要件を満たした実施例1~5の毛髪化粧料は、隠蔽力があるため、髪色を変える効果が高く、白髪混じりのまだらな髪色状態の人が黒色パール剤配合のムースを使えば、白髪部分が黒色に着色し印象が若々しくなり、逆に白系のパール剤配合のムースを使えば、黒髪部分が白色に着色し落ち着いた品のいいグレイヘアを演出することができる。
【0056】
それに対して、(A)平均粒子径が20μm以下ではなく、又は色差ΔE値が28以下ではない白系又は黒系のパール剤を用いる比較例1~5の毛髪化粧料は、着色効果の評価が△又は×である。併せて比較例1~3ではパール剤の色差ΔE値が28を超えており、比較例4、5のように色差ΔE値が28以下であってもパール剤の平均粒子径が20μm以下でなければ、着色効果が感じられないという結果であった。また比較例4と5ではパール剤の平均粒子径が20μmを超えているために、着色効果が感じられなかった。こように色差ΔE値が28以下であり、且つ平均粒子径が20μm以下であるという2つの要件を満たすことが重要である。
【0057】
以上の通り、本願発明の毛髪化粧料は、白髪交じりの毛髪を美しく見せることができる。また、白髪交じりの毛髪であっても、簡便に艶のある黒色から白色に近いグレイヘアにまで色を調整しながら着色することができ、容易に洗い流すこともでき、毛髪に傷みを与えない。更に、グレイヘアまでの移行期に一時的に黒っぽくも白っぽくにも着色することができ、移行期をストレスなく過ごすことができる。