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特開2023-18395設置対象の設置構造、及び設置対象の設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018395
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】設置対象の設置構造、及び設置対象の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230201BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20230201BHJP
   F16J 15/02 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
E04G23/02 D
E04H9/02 331A
E04H9/02 331E
F16J15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122492
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】上田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 護
(72)【発明者】
【氏名】飯島 秀章
(72)【発明者】
【氏名】今野 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐
(72)【発明者】
【氏名】大畑 勝人
(72)【発明者】
【氏名】岡 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】牟田 恵美
【テーマコード(参考)】
2E139
2E176
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
2E139CC02
2E139CC15
2E176AA01
2E176BB28
2E176BB36
(57)【要約】
【課題】設置対象の設置性を高めることが可能となる、設置対象の設置構造、及び設置対象の設置方法を提供すること。
【解決手段】設置対象10aの設置構造は、第1躯体5と第2躯体6との間に設置対象10aを設けるための構造であって、第2躯体6と設置対象10aとの相互間の隙間Gを埋めるための隙間充填体20と、隙間充填体20に加わる所定量の圧力を維持しながら、隙間充填体20を外部に漏れないように支持する目止め部30と、目止め部30を移動しないように支持する支持部40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1躯体と第2躯体との間に設置対象を設けるための設置構造であって、
前記第1躯体又は前記第2躯体の少なくともいずれか一方と前記設置対象との相互間の隙間を埋めるための隙間充填体と、
前記隙間充填体に加わる所定量の圧力を維持しながら、前記隙間充填体を外部に漏れないように支持する目止め手段と、
前記目止め手段を移動しないように支持する支持手段と、
を備える設置対象の設置構造。
【請求項2】
前記目止め手段は、モルタル材で形成される目止め手段本体を備える、
請求項1に記載の設置対象の設置構造。
【請求項3】
前記目止め手段は、前記目止め手段本体を補強するための補強手段をさらに備える、
請求項2に記載の設置対象の設置構造。
【請求項4】
前記目止め手段を、前記第1躯体又は前記第2躯体からの支圧力を受けることが可能となるように構成した、
請求項1から3のいずれか一項に記載の設置対象の設置構造。
【請求項5】
前記支持手段は、
略平板状の支持手段本体と、
前記支持手段本体の外縁部に設けられる複数の突起部と、を備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の設置対象の設置構造。
【請求項6】
前記設置対象は、免震装置であり、
前記第1躯体よりも上方に位置する前記第2躯体と前記設置対象との相互間の隙間を埋めるための前記隙間充填体と、
前記隙間充填体の周縁全体に設けられる前記目止め手段と、
前記設置対象と前記隙間充填体との相互間に設けられる前記支持手段と、を備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載の設置対象の設置構造。
【請求項7】
第1躯体と第2躯体との間に設置対象を設けるための設置方法であって、
前記設置対象を前記第1躯体及び前記第2躯体に対して固定する固定工程と、
前記第1躯体又は前記第2躯体の少なくともいずれか一方と前記設置対象との相互間の隙間を埋めるための隙間充填体を外部に漏れないように支持する目止め手段と、前記目止め手段を移動しないように支持する支持手段と、前記隙間充填体を形成するための充填手段とを、前記第1躯体又は前記第2躯体の少なくともいずれか一方と前記設置対象との相互間に設置する設置工程と、
前記固定工程及び前記設置工程の後に、前記充填手段を介して充填材を前記隙間に充填することにより、前記隙間充填体を形成する形成工程と、
を含む設置対象の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置対象の設置構造、及び設置対象の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物に免震装置を設置するための技術の一つとして、2つの既存の躯体の間に免震装置を設けると共に、躯体と免震装置との相互間の隙間にグラウトパックを設ける技術が提案されている(特許文献1参照)。また、このグラウトパックは、ビニール製の袋状体の内部にセメントペーストを充填することで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-194077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、上述したように、グラウトパックが、ビニール製の袋状体の内部にセメントペーストを充填することで形成されているので、このような袋状体は躯体の荷重を支持する部材として一般的に適さず、当該袋状体が比較的損傷しやすいことから、例えば、セメントペーストを袋状体に充填している際(又は充填後)に、袋状体の損傷によって袋状体内のセメントペーストの圧力が低下することにより、グラウトパックの施工品質を確保することが難しくなるおそれがあった。したがって、免震装置の如き設置対象の設置性の観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、設置対象の設置性を高めることが可能となる、設置対象の設置構造、及び設置対象の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の設置対象の設置構造は、第1躯体と第2躯体との間に設置対象を設けるための設置構造であって、前記第1躯体又は前記第2躯体の少なくともいずれか一方と前記設置対象との相互間の隙間を埋めるための隙間充填体と、前記隙間充填体に加わる所定量の圧力を維持しながら、前記隙間充填体を外部に漏れないように支持する目止め手段と、前記目止め手段を移動しないように支持する支持手段と、を備える。
【0007】
請求項2に記載の設置対象の設置構造は、請求項1に記載の設置対象の設置構造において、前記目止め手段は、モルタル材で形成される目止め手段本体を備える。
【0008】
請求項3に記載の設置対象の設置構造は、請求項2に記載の設置対象の設置構造において、前記目止め手段は、前記目止め手段本体を補強するための補強手段をさらに備える。
【0009】
請求項4に記載の設置対象の設置構造は、請求項1から3のいずれか一項に記載の設置対象の設置構造において、前記目止め手段を、前記第1躯体又は前記第2躯体からの支圧力を受けることが可能となるように構成した。
【0010】
請求項5に記載の設置対象の設置構造は、請求項1から4のいずれか一項に記載の設置対象の設置構造において、前記支持手段は、略平板状の支持手段本体と、前記支持手段本体の外縁部に設けられる複数の突起部と、を備える。
【0011】
請求項6に記載の設置対象の設置構造は、請求項1から5のいずれか一項に記載の設置対象の設置構造において、前記設置対象は、免震装置であり、前記第1躯体よりも上方に位置する前記第2躯体と前記設置対象との相互間の隙間を埋めるための前記隙間充填体と、前記隙間充填体の周縁全体に設けられる前記目止め手段と、前記設置対象と前記隙間充填体との相互間に設けられる前記支持手段と、を備える。
【0012】
請求項7に記載の設置対象の設置方法は、第1躯体と第2躯体との間に設置対象を設けるための設置方法であって、前記設置対象を前記第1躯体及び前記第2躯体に対して固定する固定工程と、前記第1躯体又は前記第2躯体の少なくともいずれか一方と前記設置対象との相互間の隙間を埋めるための隙間充填体を外部に漏れないように支持する目止め手段と、前記目止め手段を移動しないように支持する支持手段と、前記隙間充填体を形成するための充填手段とを、前記第1躯体又は前記第2躯体の少なくともいずれか一方と前記設置対象との相互間に設置する設置工程と、前記固定工程及び前記設置工程の後に、前記充填手段を介して充填材を前記隙間に充填することにより、前記隙間充填体を形成する形成工程と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の設置対象の設置構造、及び請求項7に記載の設置対象の設置方法によれば、隙間充填体に加わる所定量の圧力を維持しながら、隙間充填体を外部に漏れないように支持する目止め手段と、目止め手段を移動しないように支持する支持手段と、を備えるので、支持手段に支持された目止め手段によって、隙間充填体に加わる所定量の圧力を維持しながら、隙間充填体を外部に漏れないように支持できる。よって、従来技術(躯体と免震装置との相互間の隙間に単にグラウトパックを設ける技術)に比べて、隙間充填体の施工品質を確保しやすくなると共に、第1躯体又は第2躯体の少なくともいずれか一方と設置対象との間(つまり、支圧力伝達経路)に躯体の荷重を支持する部材として適さない部材が設けられることを回避できることから、設置対象の設置性を高めることが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の設置対象の設置構造によれば、目止め手段が、モルタル材で形成される目止め手段本体を備えるので、目止め手段本体を安価に製造でき、目止め手段の製造コストを低減できる。
【0015】
請求項3に記載の設置対象の設置構造によれば、目止め手段が、目止め手段本体を補強するための補強手段をさらに備えるので、目止め手段本体を補強でき、目止め手段の強度を高めることができる。
【0016】
請求項4に記載の設置対象の設置構造によれば、目止め手段を、第1躯体又は第2躯体からの支圧力を受けることが可能となるように構成したので、目止め手段部が第2躯体の支圧力を受けることができ、目止め手段の使用性を高めることができる。
【0017】
請求項5に記載の設置対象の設置構造によれば、支持手段が、略平板状の支持手段本体と、支持手段本体の外縁部に設けられる複数の突起部と、を備えるので、支持手段を簡易な構造で製造でき、支持手段の製造性を高めることができる。
【0018】
請求項6に記載の設置対象の設置構造によれば、設置対象が、免震装置であり、第1躯体よりも上方に位置する第2躯体と設置対象との相互間の隙間を埋めるための隙間充填体と、隙間充填体の周縁全体に設けられる目止め手段と、設置対象と隙間充填体との相互間に設けられる支持手段と、を備えるので、設置対象が免震装置である場合に、第1躯体と設置対象との相互間に隙間充填体を設ける場合に比べて、免震装置を簡易に設置でき、免震装置の設置性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態に係る構造物及び設置構造を概念的に示す図であり(一部断面図で示す)、(a)は既設の免震装置の周辺を示す図、(b)は設置対象の周辺を示す図である。
図2図1(b)の設置対象の周辺領域の拡大図である。
図3図2のA-A矢視断面図である(一部図示省略)。
図4】設置対象の設置方法の取外し工程を示す図であり、(a)は既設の免震装置を取り外す前の状態を示す図、(b)は既設の免震装置を取り外した状態を示す図である。
図5】設置対象の設置方法の固定工程及び設置工程を示す図である。
図6】設置対象の設置方法の形成工程を示す図である。
図7】隙間充填体の形成状況を示す図であって、図3に対応する領域を示す図である。
図8】隙間充填体強度確認試験の試験結果を示す図である。
図9】目止め部強度確認試験の試験結果を示す図である。
図10】支持部性能確認試験の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る設置対象の設置構造、及び設置対象の設置方法の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、第1躯体と第2躯体との間に設置対象を設けるための設置構造、及び設置方法に関する。
【0022】
ここで、「躯体」とは、構造物の基本構造体であり、例えば、柱材、壁材、床材、梁材、天井材、又は基礎材等を含む概念である。
【0023】
また、「構造物」の具体的な構造や種類は任意であるが、例えば、オフィスビル、商業施設、公共施設、及びアパートやマンションの如き集合住宅等の建築構造物や、橋、トンネル等の土木構造物等を含む概念であるが、実施の形態では、複数階を有する施工中のオフィスビルとして説明する。
【0024】
また、「設置対象」とは、第1躯体と第2躯体との間に設置される対象を意味し、例えば、躯体や、躯体の周辺に設置される付属部材(一例として、免震装置(積層ゴム支承、すべり支承)、ダンパー)等を含む概念であるが、実施の形態では、免震装置(具体的には、積層ゴム支承)として説明する。
【0025】
以下、実施の形態では、設置構造及び設置方法が、既設の免震装置に代えて新たな免震装置を設置(交換)することに適用される場合について説明する。
【0026】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0027】
(構成)
最初に、実施の形態に係る設置構造が適用される構造物の構成について説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係る構造物及び設置構造を概念的に示す図であり(一部断面図で示す)、(a)は既設の免震装置の周辺を示す図、(b)は設置対象の周辺を示す図である。
【0029】
以下の説明では、図1のX方向を構造物の左右方向又は幅方向(-X方向を構造物の左方向、+X方向を構造物の右方向)、後述の図3のY方向を構造物の前後方向(+Y方向を構造物の前方向、-Y方向を構造物の後方向)、図1のZ方向を構造物の上下方向(+Z方向を構造物の上方向、-Z方向を構造物の下方向)と称する。
【0030】
構造物1は、例えば鉄骨造(又は鉄筋コンクリート造)の建築構造物(具体的には、建設中の複数の階層を有するオフィスビル)であり、図1に示すように、床材2、柱材(図示省略)、梁材4、壁材(図示省略)、及び免震装置10を備えている。
【0031】
(構成-床材)
床材2は、構造物1の階層を構成するものであり、相互に間隔を隔てて上下方向に向けて複数並設される。なお、以下では、複数の床材2のうち、後述の設置対象10aの直下に位置する図1の床材2aを「基礎床材2a」と称する。
【0032】
また、図1に示すように、基礎床材2aには、第1躯体5が設けられている。第1躯体5は、免震装置10を設置するための下部基礎材である。この第1躯体5は、例えば公知の基礎材(一例として、コンクリート製の基礎材)を用いて構成され、基礎床材2aと一体に形成されており、基礎床材2aにおける各免震装置10に対応する部分にそれぞれ設けられている(すなわち、基礎床材2aに複数設けられている)。
【0033】
(構成-柱材)
柱材は、床材2を支持するものであり、床材2同士の相互間(すなわち、構造物1の各階層の空間)に複数設けられる。
【0034】
(構成-梁材)
梁材4は、床材2を支持するものであり、各床材2の下面と当接可能な位置に複数設けられたり、又は同一階の床材2同士の相互間に設けられる。なお、以下では、必要に応じて、複数の梁材4のうち、後述の設置対象10aの直上に位置する図1の梁材4aを「上側基礎梁材4a」と称し、後述の設置対象10aの直下に位置する図1の梁材4bであって、基礎床材2aと連結されている梁材4bを「下側基礎梁材4b」と称する。
【0035】
また、図1に示すように、上側基礎梁材4aには、第2躯体6が設けられている。第2躯体6は、免震装置10を設置するための上部基礎材である。この第2躯体6は、例えば公知の基礎材(一例として、コンクリート製の基礎材)を用いて構成され、上側基礎梁材4a及び柱材と一体に形成されており、上側基礎梁材4aにおける各免震装置10に対応する部分にそれぞれ設けられている(すなわち、上側基礎梁材4aに複数設けられている)。
【0036】
(構成-壁材)
壁材は、床材2同士の相互間を仕切るためのものであり、床材2同士の相互間に複数設けられる。
【0037】
(構成-免震装置)
免震装置10は、地震の揺れが構造物1に直接伝わらないようにするための装置である。この免震装置10は、図1に示すように、各第1躯体5と各第2躯体6との間にそれぞれ設けられており(すなわち、複数設けられており)、免震装置本体11、上フランジプレート12a、下フランジプレート12b、上ベースプレート13a、下ベースプレート13b、及び下フィラープレート14を備えている。
【0038】
なお、以下では、必要に応じて、複数の免震装置10のうち、既設の免震装置10に代えて新たに設置される免震装置10a(具体的には、上下方向の長さが既設の免震装置10の上下方向の長さよりも短い免震装置10)を「設置対象10a」と称する。また、この設置対象10aの設置数については任意であるが、例えば、複数の免震装置10の全個数であってもよく、あるいは、複数の免震装置10の全個数よりも少ない個数(一例として、1つ又は2つ以上等)であってもよい。
【0039】
(構成-免震装置-免震装置本体)
免震装置本体11は、免震装置10の基本構造体であり、例えば公知の免震積層ゴム支承(一例として、直径が650mm程度である円柱状の免震積層支承)を用いて構成されている。
【0040】
(構成-免震装置-上フランジプレート、下フランジプレート)
上フランジプレート12a及び下フランジプレート12bは、免震装置本体11に取り付けられるプレートである。これら上フランジプレート12a及び下フランジプレート12bは、例えば平面寸法が免震装置本体11よりも大きい鋼製の矩形状の板状体(一例として、直径が1000mm程度である略円形状の板状体等)にて形成されている。また、図1に示すように、上フランジプレート12aは、免震装置本体11の上端部に対して図示しない固定具等によって取り付けられており、下フランジプレート12bは、免震装置本体11の下端部に対して図示しない固定具等によって取り付けられている。
【0041】
(構成-免震装置-上ベースプレート、下ベースプレート)
上ベースプレート13aは、上フランジプレート12aを第2躯体6に取り付けるためのプレートであり、例えば平面寸法が上フランジプレート12aの平面寸法と略同一である鋼製の矩形状の板状体(一例として、直径が1000mm程度である略円形状の板状体等)にて形成され、図1に示すように、第2躯体6の下端部に対して図示しない固定具等によって取り付けられている。
【0042】
また、下ベースプレート13bは、下フランジプレート12bを第1躯体5に取り付けるためのプレートであり、例えば平面寸法が下フランジプレート12bの平面寸法よりも大きい鋼製の矩形状の板状体(一例として、直径が1200mm程度である略円形状の板状体等)にて形成され、図1に示すように、第1躯体5の上端部に対して図示しない固定具等によって取り付けられている。
【0043】
(構成-免震装置-下フィラープレート)
下フィラープレート14は、下フランジプレート12bと下ベースプレート13bとの間の隙間を埋めるためのプレートであり、例えば平面寸法が下フランジプレート12bの平面寸法と略同一である鋼製の矩形状の板状体(一例として、直径が1000mm程度である略円形状の板状体等)にて形成され、図1に示すように、下フランジプレート12bと下ベースプレート13bとの相互間に設けられており、下ベースプレート13bに対して図示しない固定具等によって取り付けられている。
【0044】
(構成-免震装置-その他の構成)
また、免震装置10の固定方法(ただし、設置対象10aの固定方法は除く)については任意であるが、実施の形態では、図1(a)に示すように、上フランジプレート12a及び上ベースプレート13aに形成された挿通孔(図示省略)を介して第2躯体6に形成される取付穴(図示省略)に上側固定具17a(例えば、二重偏心リング付きのボルト等)によって固定していると共に、下フランジプレート12b、下ベースプレート13b、及び下フィラープレート14に形成された挿通孔(図示省略)を介して第1躯体5に形成される取付穴(図示省略)に下側固定具17b(例えば、ボルト等)によって固定している。
【0045】
(構成-設置構造)
次に、設置対象10aの設置構造について説明する。
【0046】
図2は、図1(b)の設置対象10aの周辺領域の拡大図である。図3は、図2のA-A矢視断面図である(一部図示省略)。
【0047】
構造物1は、第1躯体5と第2躯体6との間に設置対象10aを設けるための設置構造を備えており、この設置構造は、各設置対象10aの周辺にそれぞれ設けられ、図1(b)、図2に示すように、隙間充填体20、目止め部30、及び支持部40を備えている。
【0048】
(構成-設置構造-隙間充填体)
隙間充填体20は、第1躯体5又は第2躯体6の少なくともいずれか一方と設置対象10aとの相互間の隙間Gを埋めるためのものである。この隙間充填体20は、第2躯体6と設置対象10aとの相互間に設けられ、具体的には、図2に示すように、上ベースプレート13aと支持部40との相互間の隙間Gの略全体にわたって設けられている。
【0049】
また、隙間充填体20の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。
【0050】
すなわち、隙間充填体20の平面形状については、図3に示すように、上フランジプレート12a(又は上ベースプレート13a)の平面形状と略同一の形状(すなわち、略円形状)に設定している。ただし、これに限らず、例えば、上フランジプレート12aの平面形状と異なる形状(一例として、矩形状、楕円形状等)に設定してもよい。
【0051】
また、隙間充填体20の直径については、上フランジプレート12a(又は上ベースプレート13a)の直径と略同一の大きさに設定しており、一例として、直径1000mm程度に設定している。ただし、これに限らず、例えば、上フランジプレート12a(又は上ベースプレート13a)の直径よりも小さい大きさに設定してもよい。
【0052】
また、隙間充填体20の厚さ(上下方向の長さ)については、隙間Gの大きさ(具体的には、隙間Gの上下方向の長さ)に応じて設定しており、具体的には、後述の隙間充填体強度確認試験の試験結果に基づいて、20mmから30mm程度に設定している。
【0053】
また、隙間充填体20の材質については任意であるが、実施の形態では、公知の充填材で形成されており、具体的には、後述の隙間充填体強度確認試験の試験結果に基づいて、隙間充填体20の圧縮強度が軸力導入強度以上(又は設計基準強度以上)得られるグラウト材(一例として、デンカ社製のプレタスコン タイプ1等)で形成されている。
【0054】
このような隙間充填体20により、設置対象10aの上下方向の長さが既設の免震装置10の上下方向の長さよりも短いことにより、第2躯体6と設置対象10aとの相互間の隙間Gが生じる場合でも、当該隙間Gを埋めることができ、設置対象10aが第2躯体6からの支圧力を確実に受けることが可能となる。
【0055】
(構成-設置構造-目止め部)
図2に戻り、目止め部30は、隙間充填体20に加わる所定量の圧力を維持しながら、隙間充填体20を外部に漏れないように支持する目止め手段である。この目止め部30は、図2に示すように、第2躯体6と支持部40との相互間に設けられており、目止め部本体31を備えている。なお、この目止め部本体31は、特許請求の範囲における「目止め手段本体」に対応する。
【0056】
(構成-設置構造-目止め部-目止め部本体)
目止め部本体31は、目止め部30の基本構造体であり、略線状体に形成されており、図2に示すように、後述の支持部本体41の外縁部全体に設けられている。
【0057】
また、目止め部本体31の具体的な構成については、第2躯体6の支圧力を受けることができないものの、隙間充填体20に加わる所定量の圧力を維持しながら、隙間充填体20が外部に漏れることを防止できる限りにおいて任意に構成でき、実施の形態では以下の通りに構成されている。
【0058】
すなわち、目止め部本体31の平面形状については、図3に示すように、円環状に設定している。ただし、これに限らず、例えば、目止め部本体31の内縁形状が隙間充填体20の外縁形状と略同一となる環状に設定していればよく、一例として、矩形環状又は楕円環状に設定してもよい。
【0059】
また、目止め部本体31の幅(図2では、目止め部本体31の左右方向の長さ)については、隙間充填体20の大きさ(具体的には、隙間充填体20の直径及び厚さ)に応じて設定しており、具体的には、後述の目止め部強度確認試験の試験結果に基づいて、50mm程度に設定している。
【0060】
また、目止め部本体31の上下方向の長さについては、目止め部本体31と第2躯体6とが当接しない長さに設定していると共に、隙間充填体20の大きさ(具体的には、隙間充填体20の直径及び厚さ)に応じて設定しており、具体的には、後述の目止め部強度確認試験の試験結果に基づいて、20mmから30mm程度に設定している。
【0061】
また、目止め部本体31の材質については、目止め部30を安価に製造する観点から、公知の目止め材で形成されている。具体的には、後述の目止め部強度確認試験の試験結果に基づいて、隙間充填体20の圧縮強度が軸力導入強度以上(又は設計基準強度以上)得られるパット材(一例として、デンカ社製のパッドプレタスコン等)で形成されている。
【0062】
このような目止め部30により、隙間充填体20に加わる所定量の圧力を維持しながら、隙間充填体20が外部に漏れることを防止できる。
【0063】
(構成-設置構造-支持部)
支持部40は、目止め部30を移動しないように支持する支持手段である。この支持部40は、図2に示すように、隙間充填体20及び目止め部30の各々と上フランジプレート12aとの相互間及びその近傍に設けられており、支持部本体41及び突起部42を備えている。なお、この支持部本体41は、特許請求の範囲における「支持手段本体」に対応する。
【0064】
(構成-設置構造-支持部-支持部本体)
支持部本体41は、支持部40の基本構造体である。この支持部本体41は、鋼製の板状体にて形成されており、図2に示すように、隙間充填体20及び目止め部30の各々と上フランジプレート12aとの相互間に設けられている。
【0065】
また、支持部本体41の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。
【0066】
すなわち、支持部本体41の平面形状については、略円形状に設定している。ただし、これに限らず、例えば、略矩形状又は略楕円形状に設定してもよい。
【0067】
また、支持部本体41の直径については、円環状の目止め部30の外径と略同一に設定している。ただし、これに限らず、例えば、目止め部30の外径よりも大きく設定してもよい。
【0068】
また、支持部本体41の厚さ(上下方向の長さ)については、第2躯体6からの支圧力を受けることが可能な長さに設定しており、一例として、16mm程度に設定している。ただし、これに限らず、例えば、16mmを上回る長さに設定してもよい。
【0069】
(構成-設置構造-支持部-突起部)
突起部42は、目止め部30の移動を抑制すると共に、目止め部30に作用する引張応力(例えば、許容値を超過する引張応力等)を低減させることで目止め部30が損傷することを抑制するためのものである。この突起部42は、鋼製の板状体にて形成されており、図2図3に示すように、支持部本体41の外縁部に複数立設されている。
【0070】
また、突起部42の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では以下の通りに設定している。
【0071】
また、突起部42の平面形状については、図3に示すように、略円弧状に設定している。
【0072】
また、突起部42の幅(具体的には、突起部42の円弧の長さ)については、後述する分割部分の円弧の長さよりも短い長さに設定している。
【0073】
また、突起部42の上下方向の長さについては、図2に示すように、目止め部30の上下方向の長さよりも短く設定しており、一例として、目止め部30の上下方向の長さの半分よりも短く設定している。ただし、これに限らず、例えば、目止め部30の上下方向の長さと略同一に設定してもよい。
【0074】
また、突起部42の厚さ(図2では、突起部42の左右方向の長さ)については、目止め部30を支持可能な長さに設定しており、一例として、5mm程度に設定している。ただし、これに限らず、例えば、5mmを上回る長さ(又は下回る長さ)に設定してもよい。
【0075】
また、突起部42の設置方法については任意であるが、実施の形態では、支持部本体41の外縁部において、相互に間隔を隔てて複数設けている。具体的には、図3に示すように、後述の支持部性能確認試験の試験結果に基づいて、支持部本体41の外縁部を12分割した際の各分割部分(具体的には、30度の円弧部分)に、3つ以上の突起部42を設置している。
【0076】
(構成-設置構造-支持部-その他の構成)
また、支持部40の形成方法については任意であるが、実施の形態では、鋼材を用いて、支持部本体41と突起部42とを一体に形成している。ただし、これに限らず、例えば、支持部本体41と突起部42とをそれぞれ別体に形成した後に、溶接又は固定具等によって支持部本体41と突起部42とを接続することにより、形成してもよい。
【0077】
このような支持部40により、目止め部30が図2の左右方向の外側に向けて移動しないように支持できる。また、支持部40を簡易な構造で製造でき、支持部40の製造性を高めることができる。
【0078】
(構成-設置構造-その他の構成)
また、上記設置構造を用いて設置される設置対象10aの固定方法については任意であるが、実施の形態では、図2に示すように、上フランジプレート12a、支持部本体41、及び上ベースプレート13aに形成された上側挿通孔15aを介して第2躯体6に形成される上側取付穴16aに上側固定具17aによって固定していると共に、下フランジプレート12b、下ベースプレート13b、及び下フィラープレート14に形成された下側挿通孔15bを介して第1躯体5に形成される下側取付穴16bに下側固定具17bによって固定している。
【0079】
以上のような設置構造により、支持部40に支持された目止め部30によって、隙間充填体20に加わる所定量の圧力を維持しながら、隙間充填体20を外部に漏れないように支持できる。よって、従来技術(躯体と免震装置との相互間の隙間に単にグラウトパックを設ける技術)に比べて、隙間充填体20の施工品質を確保しやすくなると共に、第2躯体6と設置対象10aとの間(つまり、支圧力伝達経路)に躯体の荷重を支持する部材として適さない部材が設けられることを回避できることから、設置対象10aの設置性を高めることが可能となる。また、設置対象10aが免震装置10である場合に、第1躯体5と設置対象10aとの相互間に隙間充填体20を設ける場合に比べて、免震装置10を簡易に設置でき、免震装置10の設置性を高めることが可能となる。
【0080】
(設置対象の設置方法)
続いて、設置対象10aの設置方法について説明する。
【0081】
図4は、設置対象10aの設置方法の取外し工程を示す図であり、(a)は既設の免震装置10を取り外す前の状態を示す図、(b)は既設の免震装置10を取り外した状態を示す図である。図5は、設置対象10aの設置方法の固定工程及び設置工程を示す図である。図6は、設置対象10aの設置方法の形成工程を示す図である。図7は、隙間充填体20の形成状況を示す図であって、図3に対応する領域を示す図である。
【0082】
設置対象10aの設置方法は、第1躯体5と第2躯体6との間に設置対象10aを設けるための方法であり、図4から図6に示すように、取外し工程、固定工程、設置工程、形成工程、及び除荷工程を含んでいる。
【0083】
(設置対象の設置方法-取外し工程)
最初に、取外し工程について説明する。
【0084】
取外し工程は、既設の免震装置10を取り外す工程である。
【0085】
具体的には、まず、既設の免震装置10を固定する上側固定具17a及び下側固定具17bを取り外す。次に、図4(a)に示すように、既設の免震装置10の周辺に荷重受け部50(例えば、油圧ジャッキ等)を複数設置して、第2躯体6から免震装置10が受ける支圧力(すなわち、免震装置10の軸力)がゼロになるように、荷重受け部50をジャッキアップすることにより、上側基礎梁材4aの荷重(具体的には、上側基礎梁材4aの自重)を荷重受け部50で受ける。この場合には、上側基礎梁材4aの高さ位置が所定量(例えば、1mm程度)上がるので、上側基礎梁材4aに直接又は間接に連結されている部材(例えば、柱材や床材2等)の高さ位置も上記所定量だけ上がることになる。次いで、図示しない冷却部(例えば、液体窒素を射出可能な冷却器)を用いて、既設の免震装置10のゴム部を冷却することにより、既設の免震装置10の上下方向の長さを低くする。その後、図4(b)に示すように、図示しない移動部(例えば、チェーンブロック等)を用いて、既設の免震装置10(具体的には、免震装置本体11、上フランジプレート12a、及び下フランジプレート12b)を第1躯体5と第2躯体6との間から所定位置まで移動させることにより、当該既設の免震装置10を取り外す。
【0086】
(設置対象の設置方法-固定工程)
次に、固定工程について説明する。
【0087】
固定工程は、取外し工程の後に、設置対象10aを第1躯体5及び第2躯体6に対して固定する工程である。
【0088】
具体的には、まず、移動部を用いて、設置対象10a(具体的には、免震装置本体11、上フランジプレート12a、及び下フランジプレート12b)を第1躯体5と第2躯体6との間に配置する。そして、図5に示すように、設置工程が行われた後に、設置対象10aを第1躯体5及び第2躯体6に対して固定する。具体的には、上フランジプレート12a、支持部本体41、及び上ベースプレート13aに形成された挿通孔を介して第2躯体6に形成される上側取付穴16aに上側固定具17aによって固定すると共に、下フランジプレート12b、下ベースプレート13b、及び下フィラープレート14に形成された挿通孔を介して第1躯体5に形成される下側取付穴16bに下側固定具17bによって固定する。
【0089】
(設置対象の設置方法-設置工程)
次に、設置工程について説明する。
【0090】
設置工程は、取外し工程の後に、目止め部30、支持部40、及び充填装置60を第1躯体5又は第2躯体6の少なくともいずれか一方と設置対象10aとの相互間に設置する工程である。
【0091】
ここで、充填装置60は、隙間充填体20を形成するための充填手段であり、例えば公知の充填器具を用いて構成されており、具体的には、充填材を貯留するための貯留部(図示省略)と、貯留部からの充填材を所定位置に注入するための注入部61と、隙間Gの空気を抜くための空気抜き部62を備えている。
【0092】
具体的には、まず、固定工程の途中において、設置対象10aの上端部に支持部40を取り付けた後に、図5に示すように、設置対象10a及び支持部40を第1躯体5と第2躯体6との間に設置する。次に、所定方法で形成された目止め部30を支持部40に設置する。また、図7に示すように、目止め部30が固化する前に、充填装置60の注入部61及び空気抜き部62を目止め部30を介して支持部40と上ベースプレート13aとの間に設置する。その後、固定工程が終了することにより、支持部40を第2躯体6又は設置対象10aに対して固定する。
【0093】
また、目止め部30の形成方法については任意であるが、実施の形態では、作業員の手作業で、目止め材を支持部本体41の外縁部全体に設けた後に、後述の目止め部強度確認試験の試験結果に基づいて、当該目止め材を2日間以上養生させて固化させることにより、形成する。
【0094】
(設置対象の設置方法-形成工程)
次に、形成工程について説明する。
【0095】
形成工程は、固定工程及び設置工程の後に、充填装置60を介して充填材を隙間Gに充填することにより、隙間充填体20を形成する工程である。
【0096】
具体的には、まず、図6図7に示すように、充填装置60の空気抜き部62を用いて、隙間Gの余分な空気を排出しながら、充填装置60の注入部61を用いて、所定の充填速度(例えば、3.5L/minから6.8L/min程度等)で充填材を隙間G全体に充填する(具体的には、図7に示すように、片押しで充填材を充填する)。次いで、所定のタイミングで充填装置60を所定位置に撤去した後に、後述の隙間充填体強度確認試験の試験結果に基づいて、当該充填材を3日間以上養生させて固化させることにより、形成する。
【0097】
(設置対象の設置方法-除荷工程)
続いて、除荷工程について説明する。
【0098】
除荷工程は、形成工程の後に、荷重受け部50に作用する荷重を除荷する工程である。
【0099】
具体的には、まず、荷重受け部50の除荷を行うことで、図1(b)に示すように、免震装置10が第2躯体6から支圧力が受けられるようにする。この場合には、上側基礎梁材4aの高さ位置が所定量(例えば、1mm程度)下がるので、上側基礎梁材4aに直接又は間接に連結されている部材(例えば、柱材や床材2等)の高さ位置も上記所定量だけ下がることになる。よって、上側基礎梁材4a、及び上記連結されている部材の高さ位置を、取外し工程が行われる前の位置にほぼ戻すことができる。その後、荷重受け部50を所定位置に撤去する。
【0100】
以上のような設置方法により、支持部40に支持された目止め部30によって、隙間充填体20に加わる所定量の圧力を維持しながら、隙間充填体20を外部に漏れないように支持できる。よって、従来技術(躯体と免震装置との相互間の隙間に単にグラウトパックを設ける技術)に比べて、隙間充填体20の施工品質を確保しやすくなることから、設置対象10aの設置性を高めることが可能となる。
【0101】
(試験結果)
次に、本件出願人が行った各種の試験結果について説明する。ここでは、隙間充填体強度確認試験、目止め部強度確認試験、及び支持部性能確認試験の試験結果について説明する。
【0102】
(試験結果-隙間充填体強度確認試験-概要)
最初に、隙間充填体強度確認試験の概要について説明する。
【0103】
隙間充填体強度確認試験は、隙間充填体20の強度(圧縮強度)を確認する試験である。
【0104】
この隙間充填体強度確認試験の試験方法については任意であるが、以下の通りとなる。すなわち、まず、一対のせき板の間に隙間充填体20が充填される空間の外縁部分に目止め部30及び充填装置60を設置する。次に、充填装置60の注入部61から充填材を注入することにより、隙間充填体20を形成する。そして、隙間充填体20を養生すると共に、所定のタイミングで公知の圧縮装置を用いて一対のせき板を介して隙間充填体20に荷重を載荷することで、隙間充填体20の最大強度を測定する。これら一連の作業を3回行い、これら隙間充填体20の最大強度の平均値を測定すべき強度として特定する。
【0105】
また、隙間充填体強度確認試験に用いられる隙間充填体20の構成の詳細については、以下の通りとなる。すなわち、隙間充填体20の平面形状=円形状、隙間充填体20の直径=1000mm程度、隙間充填体20の厚さ=30mm、及び隙間充填体20の材質=デンカ社製のプレタスコン タイプ1に設定した。
【0106】
(試験結果-隙間充填体強度確認試験-試験結果の詳細)
次いで、隙間充填体強度確認試験の試験結果の詳細について説明する。図8は、隙間充填体強度確認試験の試験結果を示す図である。
【0107】
図8に示すように、隙間充填体強度確認試験の材齢が経過するにつれて、隙間充填体20の強度が増加することが確認された。特に、材齢期間=3日間では、隙間充填体20の強度が軸力導入強度(=35N/mm)を上回り、材齢期間=4日間では、隙間充填体20の強度が設計基準強度(=45N/mm)を上回ることが確認された。
【0108】
以上のことから、上記隙間充填体20において、隙間充填体20の養生期間を3日間以上にすることの有効性が確認できた。
【0109】
(試験結果-目止め部強度確認試験-概要)
次に、目止め部強度確認試験の概要について説明する。
【0110】
目止め部強度確認試験は、目止め部30の強度(圧縮強度)を確認する試験である。
【0111】
この目止め部強度確認試験の試験方法については任意であるが、以下の通りとなる。すなわち、規格寸法のモールド型枠に目止め部材料を充填して所定期間養生することにより、目止め部30を3つ形成する。そして、公知の一軸圧縮試験方法を用いて、各目止め部30に荷重を載荷することにより、各目止め部30の最大強度をそれぞれ測定し、これら目止め部30の最大強度の平均値を測定すべき強度として特定する。
【0112】
また、目止め部強度確認試験に用いられる目止め部30の材質については、デンカ社製のパッドプレタスコンに設定した。
【0113】
(試験結果-目止め部強度確認試験-試験結果の詳細)
次いで、目止め部強度確認試験の試験結果の詳細について説明する。図9は、目止め部強度確認試験の試験結果を示す図である。
【0114】
図9に示すように、目止め部強度確認試験の材齢が経過するにつれて、目止め部30の強度が増加することが確認された。特に、材齢期間=2日間では、目止め部30の強度が軸力導入強度(=35N/mm)を上回ると共に、設計基準強度(=45N/mm)も上回ることが確認された。
【0115】
以上のことから、上記目止め部30において、目止め部30の養生期間を2日間以上にすることの有効性が確認できた。
【0116】
(試験結果-支持部性能確認試験-概要)
次に、支持部性能確認試験の概要について説明する。
【0117】
支持部性能確認試験は、支持部40(具体的には、突起部42)の性能を確認する試験である。
【0118】
この支持部性能確認試験の試験方法については任意であるが、公知のマトリックス剛性法を用いた1次線形弾性解析ソフトを用いて、目付け部及び突起部42の解析モデルを作成し、目付け部の解析モデルに所定の注入圧(=1.0N/mmから2.0N/mm)を加えることで、目付け部の解析モデルの曲げ応力度を算出する。
【0119】
また、支持部性能確認試験に用いられる目付け部の解析モデルの構成の詳細については、以下の通りとなる。すなわち、目止め部30の解析モデルの幅=50mm、目止め部30の解析モデルの厚さ=30mm、円環状の目止め部30の解析モデルの内径=800mm、目止め部30の解析モデルのヤング係数=28.95kN/mm、及び目止め部30の解析モデルのポアソン比=0.2に設定した。
【0120】
また、上記目付け部の解析モデルのクライテリアについては、以下の通りとなる。すなわち、設計基準強度については、上記目止め部強度確認試験結果における材齢2日の強度に基づいて、設計基準強度Fc=50N/mmに設定した。また、許容圧縮応力度、許容引張応力度、及び許容せん断応力度については、建設省告示第千四百五十号に基づいて、許容圧縮応力度=Fc/3×2=33.33N/mmに設定し、許容圧縮応力度=0.49+Fc/100)×2=1.98N/mmに設定し、許容せん断応力度=0.49+Fc/100)×2=1.98N/mmに設定した。
【0121】
また、支持部性能確認試験に用いられる突起部42の解析モデルの構成の詳細については、以下の通りとなる。突起部42の解析モデルの長さ=目止め部30の解析モデルに対応する正120角形の1辺の長さ、突起部42の解析モデルの拘束条件=突起部42の解析モデルの両端で目止め部30の解析モデルを固定拘束することが可能な条件、突起部42の解析モデルの設置数=支持部本体41の外縁部を12分割した際の各分割部分あたり2個、3個、4個に設定した。
【0122】
(試験結果-支持部性能確認試験-試験結果の詳細)
次いで、支持部性能確認試験の試験結果の詳細について説明する。図10は、支持部性能確認試験の試験結果を示す図である。
【0123】
図10に示すように、突起部42の解析モデルの設置数が多くなるほど、高い注入圧でも目止め部30の解析モデルを支持できることが確認された。具体的には、注入圧の解析モデルの設置数=上記各分割部分あたり2個であり、注入圧=1.0N/mmである場合には、目止め部30の解析モデルが当該注入圧を支持できないことが確認された。一方で、注入圧の解析モデルの設置数=上記各分割部分あたり3個であり、注入圧=1.0N/mmから1.5N/mmである場合には、目止め部30の解析モデルが当該注入圧を支持できることが確認された。また、注入圧の解析モデルの設置数=上記各分割部分あたり4個であり、注入圧=2.0N/mmである場合には、目止め部30の解析モデルが当該注入圧を支持できることが確認された。
【0124】
以上のことから、突起部42を上記各分割部分あたり3個以上設けることの有効性が確認できた。
【0125】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、隙間充填体20に加わる所定量の圧力を維持しながら、隙間充填体20を外部に漏れないように支持する目止め部30と、目止め部30を移動しないように支持する支持部40と、を備えるので、支持部40に支持された目止め部30によって、隙間充填体20に加わる所定量の圧力を維持しながら、隙間充填体20を外部に漏れないように支持できる。よって、従来技術(躯体と免震装置との相互間の隙間に単にグラウトパックを設ける技術)に比べて、隙間充填体20の施工品質を確保しやすくなると共に、第2躯体6と設置対象10aとの間(つまり、支圧力伝達経路)に躯体の荷重を支持する部材として適さない部材が設けられることを回避できることから、設置対象の設置性を高めることが可能となる。
【0126】
また、目止め部30が、モルタル材で形成される目止め部本体31を備えるので、目止め部本体31を安価に製造でき、目止め部30の製造コストを低減できる。
【0127】
また、支持部40が、略平板状の支持部本体41と、支持部本体41の外縁部に設けられる複数の突起部42と、を備えるので、支持部40を簡易な構造で製造でき、支持部40の製造性を高めることができる。
【0128】
また、設置対象10aが、免震装置10であり、第1躯体5よりも上方に位置する第2躯体6と設置対象10aとの相互間の隙間Gを埋めるための隙間充填体20と、隙間充填体20の周縁全体に設けられる目止め部30と、設置対象10aと隙間充填体20との相互間に設けられる支持部40と、を備えるので、設置対象10aが免震装置10である場合に、第1躯体5と設置対象10aとの相互間に隙間充填体20を設ける場合に比べて、免震装置10を簡易に設置でき、免震装置10の設置性を高めることが可能となる。
【0129】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0130】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0131】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0132】
(免震装置について)
上記実施の形態では、免震装置10が、上フランジプレート12a、下フランジプレート12b、上ベースプレート13a、下ベースプレート13b、及び下フィラープレート14を備えていると説明したが、これに限らない。例えば、上フランジプレート12a又は上ベースプレート13aのいずれか一方を省略してもよい。あるいは、下フランジプレート12b、下ベースプレート13b、又は下フィラープレート14のいずれか1つ又は2つを省略してもよい。
【0133】
(設置対象について)
上記実施の形態では、設置対象10aが免震装置10であると説明したが、これに限らない。例えば、ダンパー(一例として、油圧ダンパー)、又は梁材4であってもよい。この場合には、第1躯体5及び第2躯体6を柱材(又は壁材)として、第1躯体5と第2躯体6との間に水平に設けられた設置対象10aを設置する際に、実施の形態に係る設置構造及び設置方法が適用されてもよい。
【0134】
(設置構造について)
上記実施の形態では、隙間充填体20、目止め部30、及び支持部40が、上フランジプレート12aと上ベースプレート13aとの間に設けられていると説明したが、これに限らない。例えば、下フランジプレート12bと下ベースプレート13bとの間に設けられてもよい。あるいは、上フランジプレート12aと上ベースプレート13aとの間、及び下フランジプレート12bと下ベースプレート13bとの間の両方に設けられてもよい。
【0135】
(目止め部について)
上記実施の形態では、目止め部30が、目止め部本体31を備えていると説明したが、これに限らない。例えば、目止め部本体31に加えて、補強部をさらに備えてもよい。
【0136】
この補強部は、目止め部本体31を補強するための補強手段であり、例えば公知の補強材(一例として、鉄筋部材、鋼製カバー材等)を用いて構成され、目止め部本体31の内部又は外部に設けられてもよい。これにより、目止め部本体31を補強でき、目止め部30の強度を高めることができる。
【0137】
また、上記実施の形態では、目止め部30が、第2躯体6の支圧力を受けることができないように構成されていると説明したが、これに限らない。例えば、第2躯体6の支圧力を受けることができるように構成されてもよい。
【0138】
一例として、目止め部本体31の上下方向の長さが、目止め部本体31と第2躯体6(又は上ベースプレート13a)とが当接可能な長さに設定すると共に、目止め部本体31の材質が高強度な材質で形成されたり、又は/及び、目止め部30が上記補強部を備えてもよい。これにより、目止め部が第2躯体6の支圧力を受けることができ、目止め部30の使用性を高めることができる。
【0139】
(設置対象の設置方法について)
上記実施の形態では、設置対象10aの設置方法が、取外し工程及び除荷工程を含むと説明したが、これに限らない。例えば、免震装置10が第1躯体5と第2躯体6との間に単に新設される際に設置方法が適用される場合には、荷重受け部50が不要になると共に、取外し工程及び除荷工程を省略してもよい。
【0140】
(付記)
付記1の設置対象の設置構造は、第1躯体と第2躯体との間に設置対象を設けるための設置構造であって、前記第1躯体又は前記第2躯体の少なくともいずれか一方と前記設置対象との相互間の隙間を埋めるための隙間充填体と、前記隙間充填体に加わる所定量の圧力を維持しながら、前記隙間充填体を外部に漏れないように支持する目止め手段と、前記目止め手段を移動しないように支持する支持手段と、を備える。
【0141】
付記2の設置対象の設置構造は、付記1に記載の設置対象の設置構造において、前記目止め手段は、モルタル材で形成される目止め手段本体を備える。
【0142】
付記3の設置対象の設置構造は、付記2に記載の設置対象の設置構造において、前記目止め手段は、前記目止め手段本体を補強するための補強手段をさらに備える。
【0143】
付記4の設置対象の設置構造は、付記1から3のいずれか一項に記載の設置対象の設置構造において、前記目止め手段を、前記第1躯体又は前記第2躯体からの支圧力を受けることが可能となるように構成した。
【0144】
付記5の設置対象の設置構造は、付記1から4のいずれか一項に記載の設置対象の設置構造において、前記支持手段は、略平板状の支持手段本体と、前記支持手段本体の外縁部に設けられる複数の突起部と、を備える。
【0145】
付記6の設置対象の設置構造は、付記1から5のいずれか一項に記載の設置対象の設置構造において、前記設置対象は、免震装置であり、前記第1躯体よりも上方に位置する前記第2躯体と前記設置対象との相互間の隙間を埋めるための前記隙間充填体と、前記隙間充填体の周縁全体に設けられる前記目止め手段と、前記設置対象と前記隙間充填体との相互間に設けられる前記支持手段と、を備える。
【0146】
付記7の設置対象の設置方法は、第1躯体と第2躯体との間に設置対象を設けるための設置方法であって、前記設置対象を前記第1躯体及び前記第2躯体に対して固定する固定工程と、前記第1躯体又は前記第2躯体の少なくともいずれか一方と前記設置対象との相互間の隙間を埋めるための隙間充填体を外部に漏れないように支持する目止め手段と、前記目止め手段を移動しないように支持する支持手段と、前記隙間充填体を形成するための充填手段とを、前記第1躯体又は前記第2躯体の少なくともいずれか一方と前記設置対象との相互間に設置する設置工程と、前記固定工程及び前記設置工程の後に、前記充填手段を介して充填材を前記隙間に充填することにより、前記隙間充填体を形成する形成工程と、を含む。
【0147】
(付記の効果)
付記1に記載の設置対象の設置構造、及び付記7に記載の設置対象の設置方法によれば、隙間充填体に加わる所定量の圧力を維持しながら、隙間充填体を外部に漏れないように支持する目止め手段と、目止め手段を移動しないように支持する支持手段と、を備えるので、支持手段に支持された目止め手段によって、隙間充填体に加わる所定量の圧力を維持しながら、隙間充填体を外部に漏れないように支持できる。よって、従来技術(躯体と免震装置との相互間の隙間に単にグラウトパックを設ける技術)に比べて、隙間充填体の施工品質を確保しやすくなると共に、第1躯体又は第2躯体の少なくともいずれか一方と設置対象との間(つまり、支圧力伝達経路)に躯体の荷重を支持する部材として適さない部材が設けられることを回避できることから、設置対象の設置性を高めることが可能となる。
【0148】
付記2に記載の設置対象の設置構造によれば、目止め手段が、モルタル材で形成される目止め手段本体を備えるので、目止め手段本体を安価に製造でき、目止め手段の製造コストを低減できる。
【0149】
付記3に記載の設置対象の設置構造によれば、目止め手段が、目止め手段本体を補強するための補強手段をさらに備えるので、目止め手段本体を補強でき、目止め手段の強度を高めることができる。
【0150】
付記4に記載の設置対象の設置構造によれば、目止め手段を、第1躯体又は第2躯体からの支圧力を受けることが可能となるように構成したので、目止め手段部が第2躯体の支圧力を受けることができ、目止め手段の使用性を高めることができる。
【0151】
付記5に記載の設置対象の設置構造によれば、支持手段が、略平板状の支持手段本体と、支持手段本体の外縁部に設けられる複数の突起部と、を備えるので、支持手段を簡易な構造で製造でき、支持手段の製造性を高めることができる。
【0152】
付記6に記載の設置対象の設置構造によれば、設置対象が、免震装置であり、第1躯体よりも上方に位置する第2躯体と設置対象との相互間の隙間を埋めるための隙間充填体と、隙間充填体の周縁全体に設けられる目止め手段と、設置対象と隙間充填体との相互間に設けられる支持手段と、を備えるので、設置対象が免震装置である場合に、第1躯体と設置対象との相互間に隙間充填体を設ける場合に比べて、免震装置を簡易に設置でき、免震装置の設置性を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0153】
1 構造物
2 床材
2a 基礎床材
4 梁材
4a 上側基礎梁材
4b 下側基礎梁材
5 第1躯体
6 第2躯体
10 免震装置
10a 設置対象
11 免震装置本体
12a 上フランジプレート
12b 下フランジプレート
13a 上ベースプレート
13b 下ベースプレート
14 下フィラープレート
15a 上側挿通孔
15b 下側挿通孔
16a 上側取付穴
16b 下側取付穴
17a 上側固定具
17b 下側固定具
20 隙間充填体
30 目止め部
31 目止め部本体
40 支持部
41 支持部本体
42 突起部
50 荷重受け部
60 充填装置
61 注入部
62 空気抜き部
G 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10