(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183950
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】吸収性物品の構成材料の分離回収方法及び分離回収装置並びに未使用吸収体のリサイクル品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20231221BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20231221BHJP
C08J 11/06 20060101ALI20231221BHJP
B03B 5/00 20060101ALI20231221BHJP
B03B 5/30 20060101ALI20231221BHJP
B03B 9/06 20060101ALI20231221BHJP
A61F 13/84 20060101ALI20231221BHJP
B09B 101/67 20220101ALN20231221BHJP
【FI】
B09B5/00 Z ZAB
B29B17/02
C08J11/06
B03B5/00 Z
B03B5/30
B03B9/06
A61F13/84
B09B101:67
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097774
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】508047738
【氏名又は名称】新和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】弁理士法人Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安野 民雄
【テーマコード(参考)】
3B200
4D004
4D071
4F401
【Fターム(参考)】
3B200DA27
3B200EA30
4D004AA07
4D004AA12
4D004AC05
4D004CA02
4D004CA41
4D004CA42
4D004CC15
4D004DA03
4D004DA20
4D071AA02
4D071AA03
4D071AA05
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4D071AA43
4D071AA53
4D071AB13
4D071AB23
4D071AB44
4D071CA01
4D071CA05
4D071DA15
4F401AC20
4F401AD07
4F401BA13
4F401CA03
4F401CA32
4F401CA48
4F401CA55
4F401EA52
4F401EA55
4F401FA04Z
(57)【要約】
【課題】未使用の吸収性物品の構成材料を高品位で分離回収できること。
【解決手段】未使用の吸水性物品の構成材料を分離回収する方法は、吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12を包んだシート20を接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解する溶解工程(ステップS1)と、接着剤が溶解除去された吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を分離回収する分離回収工程(ステップS2)と、分離回収された構成材料のシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を乾燥する乾燥工程(ステップS3)とを具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体を包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解する溶剤処理工程と、
前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を分離回収する分離回収工程と、
前記分離回収された構成材料を乾燥する乾燥工程と
を具備することを特徴とする吸収性物品の構成材料の分離回収方法。
【請求項2】
前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤であることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収方法。
【請求項3】
前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、その比重が0.7~1.5の範囲内のものであることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収方法。
【請求項4】
前記分離回収工程は、前記吸収性物品の構成材料を前記溶剤中で分離することを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収方法。
【請求項5】
前記分離回収工程は、前記吸収性物品の構成材料を前記溶剤中で前記シートと前記吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマとに分離するシート分離回収工程と、前記シートと分離された前記吸収体を前記高吸水性ポリマよりも比重の高い溶剤中で前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマとに分離する吸収体分離回収工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収方法。
【請求項6】
前記シートと分離された前記パルプ繊維及び前記高吸水性ポリマは、乾燥させてから、前記吸収体分離回収工程に供されることを特徴とする請求項5に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収方法。
【請求項7】
前記吸収体分離回収工程で使用される溶剤は、その比重が1.6~1.8の範囲内のものであることを特徴とする請求項5に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収方法。
【請求項8】
吸収体を包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解する溶剤処理工程と、
前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥された前記吸収性物品の構成材料を分離回収する分離回収工程と、
を具備することを特徴とする吸収性物品の構成材料の分離回収方法。
【請求項9】
更に、前記接着剤が溶解した前記溶剤を蒸留し、前記接着剤を分離回収する接着剤分離回収工程を具備することを特徴とする請求項1または請求項8に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収方法。
【請求項10】
前記接着剤分離回収工程で前記接着剤と分離された前記溶剤は、前記溶剤処理工程で前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤として再利用されることを特徴とする請求項9に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収方法。
【請求項11】
吸収体を包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させる溶剤処理部と、
前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を分離回収する分離回収手段と、
前記分離回収された構成材料を乾燥する乾燥手段と
を具備することを特徴とする吸収性物品の構成材料の分離回収装置。
【請求項12】
前記溶剤は、石油系溶剤及び/またはハロゲン化炭化水素系溶剤であることを特徴とする請求項11に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収装置。
【請求項13】
前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、その比重が1.6~1.8の範囲内のものであることを特徴とする請求項11に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収装置。
【請求項14】
前記分離回収手段は、前記吸収性物品の構成材料を前記溶剤中で分離することを特徴とする請求項11に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収装置。
【請求項15】
前記分離回収手段は、前記吸収性物品の構成材料を前記溶剤中で少なくとも前記シートと前記吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマとに分離するシート分離回収手段と、前記シートと分離された前記吸収体を前記浸漬処理した溶剤よりも比重の高い溶剤中でスクリーンにより前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマとに分離する吸収体分離回収手段とを含むことを特徴とする請求項11に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収装置。
【請求項16】
前記シート分離回収手段で前記シートと分離された前記吸収体は、前記乾燥手段で乾燥させてから、前記吸収体分離回収手段で前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマとに分離されることを特徴とする請求項15に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収装置。
【請求項17】
前記吸収体分離回収手段で使用される溶剤は、その比重が1.6~1.8の範囲内のものであることを特徴とする請求項15に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収装置。
【請求項18】
吸収体を包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させる溶剤処理部と、
前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を乾燥する乾燥手段と、
前記乾燥した前記吸収性物品の構成材料を分離回収する分離回収手段と、
を具備することを特徴とする吸収性物品の構成材料の分離回収装置。
【請求項19】
更に、前記接着剤が溶解した前記溶剤を蒸留し、前記溶剤から前記接着剤を分離回収する接着剤分離回収手段を具備することを特徴とする請求項11または請求項18に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収装置。
【請求項20】
更に、前記接着剤分離回手段によって前記接着剤と分離された前記溶剤を、前記溶剤処理部で前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤として再利用させる溶剤循環路を具備することを特徴とする請求項19に記載の吸収性物品の構成材料の分離回収装置。
【請求項21】
吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマを包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させる溶剤処理工程と、
前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の前記シートと前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマを分離して回収する分離回収工程と、
前記分離回収された前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマを乾燥する乾燥工程と
を具備することを特徴とする未使用吸収体のリサイクル品の製造方法。
【請求項22】
吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマを包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させる溶剤処理工程と、
前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥した前記吸収性物品の前記シートと前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマとを分離して回収する分離回収工程と、
を具備することを特徴とする未使用吸収体のリサイクル品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙オムツ、生理用ナプキン等の吸収性物品の製造工程で生じる規格外品(不良品)や切屑(切り端)等の未使用の吸収性物品をリサイクルするための、未使用の吸収性物品の構成材料の分離回収方法及び分離回収装置に関するものであり、特に、未使用の吸収性物品の構成材料を高品位に分離回収できる吸収性物品の構成材料の分離回収方法及び分離回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙オムツ、生理用ナプキン、失禁用(尿取り)パッド、パンティライナ、ペット用シート等の吸収性物品は、その製造工程において、破損、汚れ、接着不良、折れ、構成材の位置ずれや欠損が生じたり、シートやテープ等に設計上想定していない継目や折れ線や皺等が存在したり、パルプ繊維量や高吸水性ポリマ(Super Absorbent Polymer:SAP)量が所定の規格を満たしていなかったりと、規格外品(不良品)が発生することがある。特に、こうした吸収性物品はデリケートな部位に使用されるものであることから安心安全の確保のために厳しく検品され、規格外品(不良品)が市場に出回らないようにすることが広く行われていることにより、その製造過程において生じるロス品は無視できない量となっている。また、吸収性物品を大量生産する製造工程においては、パルプ繊維及び高吸水性ポリマを含んだ吸収体の外側を所定の大きさの複数層のシートで被覆し、それから製品サイズに小分けに熱シールされ、個々の製品にトリミングカットされることにより、切屑(切り端)が生じる。
そのような規格外品や切屑等については、破砕して廃棄(焼却または埋め立て処理)されることもあるが、近年では、省資源、省エネルギ、廃棄物の焼却処理に伴う二酸化炭素排出の観点等の環境面への配慮から、また、高齢化社会の進行に伴い紙おむつ等の吸収性物品の生産量の増大が予測されることから、吸収性物品の製造で生じる規格外品や切屑等についてその構成材料を回収してリサイクルすることが望まれている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1乃至特許文献4では、吸収性物品の製品製造で生じた規格外品等を破砕することにより構成材料を分離回収してリサイクルすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-336077号公報
【特許文献2】国際公開2017/104062号公報
【特許文献3】特開2007-175591号公報
【特許文献4】特開2022-15986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1乃至特許文献4等の従来技術においては、何れも、表裏のシート間に内包されているパルプ繊維や粒状の高吸水性ポリマ(SAP)を取り出すために、吸収性物品の規格外品や切屑を破砕、切断といった物理的な衝撃、機械的な裁断力を与えることによって解体するものであり、破砕や切断を行うと、吸収性物品の構成材料同士の接合に糊剤(ホットメルト接着剤)が使用されていることにより破砕された小片(切断物、細断物)が硬くなったり、シート等の切断片がパルプ繊維に絡み合ったりすることで、構成材料の分離が難しくなり、構成材料の分離回収に手間やエネルギを要し、構成材料の回収率も低いという問題があった。更に、構成材料を回収できても、糊剤(ホットメルト接着剤)が付着したままであるからマテリアルリサイクルとしての再資源化は困難であった。
特に、回収率を上げるべく材料同士が固着して固まった部分を解砕、解繊等して分離するとなると、大きなエネルギを投入する必要があるうえ、その大きなエネルギにより粒状の高吸水性ポリマが細粒化、微紛化されることで、高吸水性ポリマの元の性状が変化し、吸収性物品の吸収体としての再資源化に適さないものとなっていた。即ち、高吸水性ポリマは細粒化、微紛化されると吸水特性が低下し、また、粒径が小さくなり過ぎることで、吸収性物品の吸収材として再資源化する場合には製品外部に表出しやすくなり、製品の品質を低下させることになるから、吸収性物品の吸収体としての再資源化が困難であった。また、高吸水性ポリマの微細物が排水に流出する場合には、排水処理の負荷の問題も生じる。
【0006】
そこで、本発明は、未使用の吸収性物品の構成材料を高品位で分離回収できる吸収性物品の構成材料の分離回収方法及び分離回収装置並びに未使用吸収体のリサイクル品の製造方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収方法は、溶剤処理工程において、吸収体をシートで包囲し前記シートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させ、分離回収工程において、前記溶剤への前記接着剤の溶解により解離した前記吸収性物品の構成材料を分離回収し、乾燥工程において、前記分離回収された構成材料を乾燥するものである。
【0008】
上記溶剤処理工程は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマ等を含む吸収体をシートで包囲してそのシートを接着剤で接合してなる吸収性物品を溶剤に浸漬することで、溶剤によって吸収性物品の接着剤を溶解して除去する工程である。
【0009】
ここで、上記吸収性物品は、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナ、ペットシート等の人または動物から排出される液分の吸収に使用される物品であって、例えば、パルプ繊維及び高吸水性ポリマを含む吸収体をシートで包囲し対向する前記シート間をホットメルト接着剤で接合してなるものである。
そして、上記未使用の吸収性物品とは、紙おむつ等の吸収性物品の製造工程で生じた規格外品(不良品)等のロス品やトリミングカットされた切屑(切り端)を云うものである。
また、上記溶剤としては、吸収性物品に使用されているホットメルト接着剤を溶解できるものであればよく、好ましくは、パラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤や、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤等のハロゲン化炭化水素系溶剤が使用される。
【0010】
上記分離回収工程は、接着剤の溶解除去により解離した吸収性物品のシートや、パルプ繊維及び高吸水性ポリマ等を含む吸収体等の構成材料を分離回収する工程であり、例えば、構成材料の寸法差、比重差等を利用して構成材料を分別する。
上記乾燥工程は、分別された構成材料を乾燥することによって、構成材料に付着している溶剤を揮発させ、溶剤を除去する工程である。
【0011】
請求項2の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収方法の前記吸収性物品の接着剤を溶解させる溶剤は、好ましくは、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤である。
上記石油系溶剤としては、ドライクリーニング溶剤として使用されるパラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤が好ましい。
また、上記ハロゲン化炭化水素系溶剤としては、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤が好ましい。
【0012】
請求項3の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収方法の前記吸収性物品の接着剤を溶解させる溶剤は、好ましくは、その比重が0.7以上、1.5以下の範囲内のものであり、より好ましくは、0.7以上、0.8以下の範囲内のものである。
上記比重が0.7以上、1.5以下の溶剤としては、例えば、ドライクリーニング溶剤として使用されるパラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤が使用される。
【0013】
請求項4の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収方法の前記分離回収工程は、前記吸収性物品を前記溶剤に浸漬処理したその溶剤中で前記吸収性物品の構成材料を分離するものであり、接着剤が溶解された溶剤中で解体された前記吸収性物品の構成材料を重力、遠心力、比重差等と、スクリーン等を使用した濾過分離とを利用して、構成材料を分離するものである。
【0014】
請求項5の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収方法の前記分離回収工程は、シート分離回収工程にて、前記吸収性物品を前記溶剤に浸漬処理したその溶剤中で前記シートと前記吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマとに分離し、吸収体分離回収工程にて、前記シートと分離された前記吸収体を前記高吸水性ポリマよりも比重の高い溶剤中で前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマとに分離するものである。
上記シート分離回収工程は、接着剤が溶解された溶剤中で解体された前記吸収性物品の構成材料を重力、遠心力、比重差等と、スクリーン等を使用した濾過分離とを利用して、シートと、吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマとを分離する工程である。
また、上記吸収体分離回収工程は、高吸水性ポリマよりも比重の高い溶剤中における高吸水性ポリマの浮上とスクリーン等を使用した濾過分離を利用して、パルプ繊維と高吸水性ポリマとを分離する工程である。
【0015】
請求項6の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収方法の前記シートと分離された前記パルプ繊維及び前記高吸水性ポリマは、乾燥させてから、前記吸収体分離回収工程に供されるものであり、前記接着剤が溶解された溶剤を、前記吸収体分離回収工程で使用される溶剤に混入させないものである。
【0016】
請求項7の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収方法の前記吸収体分離回収工程で使用される溶剤は、その比重が1.6以上、1.8以下の範囲内のものである。
上記比重が1.6以上、1.8以下の溶剤としては、例えば、ドライクリーニング溶剤として使用されるテトラクロロエチレン等の塩素系のハロゲン化炭化水素系溶剤が使用される。
【0017】
請求項8の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収方法は、溶剤処理工程において、吸収体をシートで包囲し前記シートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させ、乾燥工程において、前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を乾燥し、分離回収工程で、前記乾燥された前記吸収性物品の構成材料を分離回収するものである。
【0018】
上記溶剤処理工程は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマ等を含む吸収体をシートで包囲してそのシートを接着剤で接合してなる吸収性物品を溶剤に浸漬することで、溶剤によって吸収性物品の接着剤を溶解して除去する工程である。
上記乾燥工程は、接着剤の溶解除去により解離した吸収性物品の構成材料を乾燥することによって、それに付着している溶剤を揮発させ、溶剤を除去する工程である。
上記分離回収工程は、接着剤の溶解除去により解離し、乾燥された吸収性物品のシートや、パルプ繊維及び高吸水性ポリマ等を含む吸収体等の構成材料を分離回収する工程であり、例えば、構成材料の寸法差、比重差等を利用して構成材料を分別する。
【0019】
請求項9の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収方法は、更に、接着剤分離回収工程において前記接着剤が溶解した前記溶剤を蒸留し、前記溶剤から前記接着剤を分離回収するものである。
上記接着剤分離回収工程は、吸収性物品の浸漬により接着剤が溶解された溶剤の蒸留によって接着剤を析出させることにより、溶剤から接着剤を分離して回収する工程である。
【0020】
請求項10の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収方法は、前記接着剤が分離された前記溶剤を回収し、前記溶剤処理工程で前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤として再利用するものであり、蒸留された溶剤ガスは冷却、液化されてから、好ましくは、フィルタ濾過により清浄化されて再利用される。
【0021】
請求項11の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収装置は、溶剤処理部で吸収体をシートで包囲し前記シートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させ、分離回収手段によって前記溶剤への前記接着剤の溶解により解離した前記吸収性物品の構成材料を分離回収し、乾燥手段によって、前記分離回収された構成材料を乾燥するものである。
【0022】
上記溶剤処理部は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマ等を含む吸収体をシートで包囲してそのシートを接着剤で接合してなる吸収性物品を溶剤に浸漬することで、溶剤によって吸収性物品の接着剤を溶解して除去するものである。
【0023】
ここで、上記吸収性物品は、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナ、ペットシート等の人または動物から排出される液分の吸収に使用される物品であって、例えば、パルプ繊維及び高吸水性ポリマを含む吸収体をシートで包囲し対向する前記シート間をホットメルト接着剤で接合してなるものである。
そして、上記未使用の吸収性物品とは、紙おむつ等の吸収性物品の製造工程で生じた規格外品(不良品)等のロス品やトリミングカットされた切屑(切り端)を云うものである。
また、上記溶剤としては、吸収性物品に使用されているホットメルト接着剤を溶解できるものであればよく、好ましくは、パラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤や、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤等のハロゲン化炭化水素系溶剤が使用される。
【0024】
上記分離回収手段は、接着剤の溶解除去により解離した吸収性物品のシートや、パルプ繊維及び高吸水性ポリマ等を含む吸収体等の構成材料を分離回収するものであり、例えば、構成材料の寸法差、比重差等を利用して構成材料を分別する。
上記乾燥手段は、分別された構成材料を減圧乾燥、熱風乾燥等することによって、構成材料に付着している溶剤を揮発させ、溶剤を除去する。
【0025】
請求項12の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収装置の前記吸収性物品の接着剤を溶解させる溶剤は、好ましくは、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤である。
上記石油系溶剤としては、ドライクリーニング溶剤として使用されるパラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤が好ましい。
また、上記ハロゲン化炭化水素系溶剤としては、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤が好ましい。
【0026】
請求項13の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収装置の前記吸収性物品の接着剤を溶解させる溶剤は、好ましくは、その比重が0.7以上、1.5以下の範囲内のものであり、より好ましくは、0.7以上、0.8以下の範囲内のものである。
上記比重が0.7以上、1.5以下の溶剤としては、例えば、ドライクリーニング溶剤として使用されるパラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤が使用される。
【0027】
請求項14の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収装置の前記分離回収手段は前記吸収性物品を前記溶剤に浸漬処理したその溶剤中で前記吸収性物品の構成材料を分離するものであり、接着剤が溶解された溶剤中で解体された前記吸収性物品の構成材料を重力、遠心力、比重差等と、スクリーン等を使用した濾過分離とを利用して、構成材料を分離するものである。
【0028】
請求項15の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収装置の前記分離回収手段は、シート分離回収手段によって前記吸収性物品を前記溶剤に浸漬処理したその溶剤中で前記シートと前記吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマとに分離し、吸収体分離回収手段によって、前記シートと分離された前記吸収体を前記高吸水性ポリマよりも比重の高い溶剤中で前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマとに分離するものである。
上記シート分離回収手段は、接着剤が溶解された溶剤中で解体された前記吸収性物品の構成材料を重力、遠心力、比重差等と、スクリーン等を使用した濾過分離とを利用して、シートと、吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマとを分離するものである。
また、上記吸収体分離回収手段は、高吸水性ポリマよりも比重の高い溶剤中における高吸水性ポリマの浮上とスクリーン等を使用した濾過分離を利用して、パルプ繊維と高吸水性ポリマとを分離するものである。
【0029】
請求項16の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収装置の前記シートと分離された前記パルプ繊維及び前記高吸水性ポリマは、乾燥させてから、前記吸収体分離回収手段で分離されるものであり、前記接着剤が溶解された溶剤を、前記吸収体分離回収手段で使用される溶剤に混入させないものである。
【0030】
請求項17の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収装置の前記吸収体分離回収手段で使用される溶剤は、その比重が1.6以上、1.8以下の範囲内のものである。
上記比重が1.6以上、1.8以下の溶剤としては、例えば、ドライクリーニング溶剤として使用されるテトラクロロエチレン等の塩素系のハロゲン化炭化水素系溶剤が使用される。
【0031】
請求項18の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収装置は、溶剤処理部で吸収体をシートで包囲し前記シートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させ、乾燥手段によって、前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を乾燥し、分離回収手段によって、前記乾燥された前記吸収性物品の構成材料を分離回収するものである。
【0032】
上記溶剤処理部は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマ等を含む吸収体をシートで包囲してそのシートを接着剤で接合してなる吸収性物品を溶剤に浸漬することで、溶剤によって吸収性物品の接着剤を溶解して除去するものである。
上記乾燥手段は、接着剤の溶解除去により解離した吸収性物品の構成材料を減圧乾燥、熱風乾燥等によって、それに付着している溶剤を揮発させ、溶剤を除去するものである。
上記分離回収手段は、接着剤の溶解除去により解離し、乾燥された吸収性物品のシートや、パルプ繊維及び高吸水性ポリマ等を含む吸収体等の構成材料を分離回収するものであり、例えば、構成材料の寸法差、比重差等を利用して構成材料を分別する。
【0033】
請求項19の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収装置は、更に、接着剤分離回収手段によって、前記接着剤が溶解した前記溶剤を蒸留し、前記溶剤から前記接着剤を分離回収する。
上記接着剤分離回収手段は、吸収性物品の浸漬により接着剤が溶解された溶剤の蒸留によって接着剤を析出させることにより、溶剤から接着剤を分離して回収するものである。
【0034】
請求項20の発明の吸収性物品の構成材料の分離回収装置は、溶剤循環路によって前記接着剤が分離された前記溶剤を前記溶剤処理部に戻して前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤として再利用するものであり、蒸留された溶剤ガスは冷却、液化されてから、好ましくは、フィルタ濾過により清浄化されて再利用される。
【0035】
請求項21の発明の未使用吸収体のリサイクル品の製造方法は、溶剤処理工程において、吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマを包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させ、分離回収工程において、前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の前記シートと前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマを分離回収し、乾燥工程において、前記分離回収された前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマを乾燥するものである。
【0036】
上記溶剤処理工程は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマの吸収体をシートで包囲してそのシートを接着剤で接合してなる吸収性物品を溶剤に浸漬することで、溶剤によって吸収性物品の接着剤を溶解して除去する工程である。
【0037】
ここで、上記吸収性物品は、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナ、ペットシート等の人または動物から排出される液分の吸収に使用される物品であって、例えば、パルプ繊維及び高吸水性ポリマを含む吸収体をシートで包囲し対向する前記シート間をホットメルト接着剤で接合してなるものである。
そして、上記未使用の吸収性物品とは、紙おむつ等の吸収性物品の製造工程で生じた規格外品(不良品)等のロス品やトリミングカットされた切屑(切り端)を云うものである。
また、上記溶剤としては、吸収性物品に使用されているホットメルト接着剤を溶解できるものであればよく、好ましくは、パラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤や、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤等のハロゲン化炭化水素系溶剤が使用される。
【0038】
上記分離回収工程は、接着剤の溶解除去により解離した吸収性物品のシートとパルプ繊維と高吸水性ポリマを分離回収する工程であり、例えば、それらシートとパルプ繊維と高吸水性ポリマの寸法差、比重差等を利用してシートとパルプ繊維と高吸水性ポリマとを分別する。
上記乾燥工程は、分別された少なくともパルプ繊維及び高吸水性ポリマを乾燥することによって、パルプ繊維及び高吸水性ポリマに付着している溶剤を揮発させ、溶剤を除去する工程である。
【0039】
請求項22の発明の未使用吸収体のリサイクル品の製造方法は、溶剤処理工程において吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマを包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させ、乾燥工程において、前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を乾燥し、分離回収工程において、前記乾燥した前記吸収性物品の前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマとを分離して回収するものである。
【0040】
上記溶剤処理工程は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマの吸収体をシートで包囲してそのシートを接着剤で接合してなる吸収性物品を溶剤に浸漬することで、溶剤によって吸収性物品の接着剤を溶解して除去する工程である。
上記乾燥工程は、接着剤の溶解除去により解離した吸収性物品の構成材料を乾燥することによって、それに付着している溶剤を揮発させ、溶剤を除去する工程である。
上記分離回収工程は、接着剤の溶解除去により解離し、乾燥された吸収性物品のシートとパルプ繊維と高吸水性ポリマとを分離回収する工程であり、例えば、それらシートとパルプ繊維と高吸水性ポリマの寸法差、比重差等を利用して構成材料を分別する。
【発明の効果】
【0041】
請求項1の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、溶剤処理工程にて、吸収体を包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させたのち、分離回収工程にて、前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を分離回収し、乾燥工程にて、前記分離回収された構成材料を乾燥する。
【0042】
このように、未使用の吸収性物品の構成部材を接合している接着剤を溶剤に溶解させて吸収性物品から除去することによって吸収性物品を解体しその構成材料を分離回収するものであるから、吸収性物品の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品が容易に分解されその構成材料の解離、分離が容易となる。よって、未使用の吸収性物品の構成材料の回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品の接着剤を除去することにより、高吸水性ポリマ等の構成材料が細分化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収性物品の構成材料を精度よく分離回収できる。即ち、吸収性物品の高吸水性ポリマ等の構成材料を細分化させることなく分離回収できる。よって、吸収性物品の構成材料を高品位で分離回収できる。特に、吸収体の高吸水性ポリマやパルプ繊維は細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の吸水体としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適であり、吸収性物品の吸収体としての再資源化にも好適なものとなる。
【0043】
請求項2の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、前記溶剤は、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤であるから、酸化劣化し難く繰り返しの再利用に好適であり、また、分離回収された構成材料に溶剤の臭いが残存し難いものである。したがって、請求項1に記載の効果に加えて、低コスト化でき、また、分離回収された構成材料は幅広い使途に再資源化できる。
【0044】
請求項3の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、その比重が0.7~1.5の範囲内のものであることから、吸収性物品の構成材料を溶剤に浸漬処理したその溶剤中では吸収体が沈降する。よって、その溶剤中において、スクリーン等を利用した濾過分離によって構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシートと吸収体とを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシートと吸収体とを精度よく分離できることで、請求項1に記載の効果に加えて、低コスト及び省エネルギで吸収体を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0045】
請求項4の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、前記分離回収工程は、前記吸収性物品を前記溶剤に浸漬処理したその溶剤中で前記吸収性物品の構成材料を分離することから、接着剤が溶解された溶剤中で解体された前記吸収性物品の構成材料を重力、遠心力、比重差等とスクリーン等を使用した濾過分離を利用して、構成材料を分離することになる。よって、湿式での分離であるから、構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシートと吸収体とを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシートと吸収体とを精度よく分離できることで、請求項1に記載の効果に加えて、低コスト及び省エネルギで吸収体を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0046】
請求項5の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、前記分離回収工程は、前記吸収性物品を前記溶剤に浸漬処理したその溶剤中で前記シートと前記吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマとに分離するシート分離回収工程と、前記シートと分離された前記吸収体を前記浸漬処理した溶剤よりも比重の高い溶剤中で前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマとに分離する吸収体分離回収工程とを含むことから、まず、シート分離回収工程で、接着剤が溶解された溶剤中で解体された吸収性物品の構成材料を重力、遠心力、比重差等とスクリーン等を使用した濾過分離を利用して、シートと吸収体としてのパルプ繊維と高吸水性ポリマを分離することになる。また、続く吸収体分離回収工程で、高吸水性ポリマよりも比重の高い溶剤中における高吸水性ポリマの浮上とスクリーン等を使用した濾過分離を利用して、パルプ繊維と高吸水性ポリマとを分離することになる。よって、湿式での分離であり、特に、高吸水性ポリマに対し低負荷な条件、省エネルギでシートとパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシートとパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できることで、請求項1に記載の効果に加えて、低コスト及び省エネルギでパルプ繊維と高吸水性ポリマを高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0047】
請求項6の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、前記シートと分離された前記パルプ繊維及び前記高吸水性ポリマは、乾燥させてから、前記吸収体分離回収工程に供されるものであるから、前記パルプ繊維及び前記高吸水性ポリマに付着した前記接着剤が溶解された溶剤が、前記吸収体分離回収工程でパルプ繊維と高吸水性ポリマとの分離に使用される溶剤に混入することがない。よって、前記吸収体分離回収工程でパルプ繊維と高吸水性ポリマとの分離に使用された溶剤を回収して再利用する際でも、接着剤が溶解された溶剤と分離する精製を必要としないから、請求項5に記載の効果に加えて、低コスト化できる。
【0048】
請求項7の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、前記吸収体分離回収工程で使用される溶剤は、その比重が1.6~1.8の範囲内のものであることから、その溶剤中では高吸水性ポリマがすばやく浮上することにより、分離精度を良くでき、分離回収処理も短時間で済む。よって、請求項5に記載の効果に加えて、分離効率を向上できる。
【0049】
請求項8の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、溶剤処理工程にて、吸収体を包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解し、乾燥工程にて、前記溶剤への溶解により前記接着剤が除去された前記吸収性物品を乾燥し、分離回収工程にて、前記乾燥された前記吸収性物品の構成材料を分離回収する。
【0050】
このように、未使用の吸収性物品の構成部材を接合している接着剤を溶剤に溶解させて吸収性物品から除去することによって吸収性物品を解体しその構成材料を分離回収するものであるから、吸収性物品の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品が容易に分解されその構成材料の解離、分離が容易となる。よって、未使用の吸収性物品の構成材料の回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品の接着剤を除去することにより、高吸水性ポリマ等の構成材料が細分化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収性物品の構成材料を精度よく分離回収できる。即ち、吸収性物品の高吸水性ポリマ等の構成材料を細分化させることなく分離回収できる。よって、高品位で分離回収できる。特に、吸収体の高吸水性ポリマやパルプ繊維は細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の吸水体としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適なであり、吸収性物品の吸収体としての再資源化にも好適なものとなる。
【0051】
請求項9の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、更に、前記接着剤が溶解した前記溶剤を蒸発させ前記接着剤を分離回収する接着剤分離回収工程を具備することから、請求項1に記載の効果に加えて、吸収性物品の接着剤を再資源化でき、更に資源を有効に利用できる。
【0052】
請求項10の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、前記接着剤分離回収工程で前記接着剤と分離された前記溶剤は、前記溶剤処理工程で前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤として再利用されるから、請求項9に記載の効果に加えて、環境負荷を低減でき、また、低コスト化できる。
【0053】
請求項11の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、溶剤処理部にて、吸収体を包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させ、分離手段によって前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を分離回収し、乾燥手段によって前記分離回収された構成材料を乾燥する。
【0054】
このように、未使用の吸収性物品の構成部材を接合している接着剤を溶剤に溶解させて吸収性物品から除去することによって吸収性物品を解体しその構成材料を分離回収するものであるから、吸収性物品の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品が容易に分解されその構成材料の解離、分離が容易となる。よって、未使用の吸収性物品の構成材料の回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品の接着剤を除去することにより、高吸水性ポリマ等の構成材料が細分化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収性物品の構成材料を精度よく分離回収できる。即ち、吸収性物品の高吸水性ポリマ等の構成材料を細分化させることなく分離回収できる。よって、高品位で分離回収できる。特に、吸収体の高吸水性ポリマやパルプ繊維は細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の吸水体としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適であり、吸収性物品の吸収体としての再資源化にも好適なものとなる。
【0055】
請求項12の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、前記溶剤は、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤であるから、酸化劣化し難く繰り返しの再利用に好適であり、また、分離回収された構成材料に溶剤の臭いが残存し難いものである。したがって、請求項11に記載の効果に加えて、低コスト化でき、また、分離回収された構成材料は幅広い使途に再資源化できる。
【0056】
請求項13の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、その比重が0.7~1.5の範囲内のものであることから、吸収性物品の構成材料を溶剤に浸漬処理したその溶剤中では吸収体が沈降する。よって、その溶剤中において、スクリーン等を利用した濾過分離といった構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシートと吸収体とを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシートと吸収体とを精度よく分離できることで、請求項11に記載の効果に加えて、低コスト及び省エネルギで吸収体を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0057】
請求項14の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、前記分離回収手段は、前記吸収性物品を前記溶剤に浸漬処理したその溶剤中で前記吸収性物品の構成材料を分離することから、接着剤が溶解された溶剤中で解体された前記吸収性物品の構成材料を重力、遠心力、比重差等とスクリーン等を使用した濾過分離を利用して、構成材料を分離することになる。よって、湿式での分離であるから、構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシートと吸収体とを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシートと吸収体とを精度よく分離できることで、請求項11に記載の効果に加えて、低コスト及び省エネルギで吸収体を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0058】
請求項15の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、前記分離回収手段は、前記吸収性物品を前記溶剤に浸漬処理したその溶剤中で前記シートと前記吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマとに分離するシート分離回収手段と、前記シートと分離された前記吸収体を前記浸漬処理した溶剤よりも比重の高い溶剤中で前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマとに分離する吸収体分離回収手段とを含むことから、まず、シート分離回収手段で、接着剤が溶解された溶剤中で解体された吸収性物品の構成材料を重力、遠心力、比重差等とスクリーン等を使用した濾過分離を利用して、シートと吸収体としてのパルプ繊維と高吸水性ポリマを分離することになる。また、続く吸収体分離回収手段で、高吸水性ポリマよりも比重の高い溶剤中における高吸水性ポリマの浮上とスクリーン等を使用した濾過分離を利用して、パルプ繊維と高吸水性ポリマとを分離することになる。よって、湿式での分離であり、特に、高吸水性ポリマに対し低負荷な条件、省エネルギでシートとパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシートとパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できることで、請求項11に記載の効果に加えて、低コスト及び省エネルギでパルプ繊維と高吸水性ポリマを高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0059】
請求項16の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、前記シートと分離された前記パルプ繊維及び前記高吸水性ポリマは、乾燥させてから、前記吸収体分離回収手段に供されるものであるから、前記パルプ繊維及び前記高吸水性ポリマに付着した前記接着剤が溶解された溶剤が、前記吸収体分離回収工程でパルプ繊維と高吸水性ポリマとの分離に使用される溶剤に混入することがない。よって、前記吸収体分離回収手段でパルプ繊維と高吸水性ポリマとの分離に使用された溶剤を回収して再利用する際でも、接着剤が溶解された溶剤と分離する精製を必要としないから、請求項15に記載の効果に加えて、低コスト化できる。
【0060】
請求項17の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、前記吸収体分離回収工程で使用される溶剤は、その比重が1.6~1.8の範囲内のものであることから、その溶剤中では高吸水性ポリマがすばやく浮上することにより、分離精度を良くでき、分離回収処理も短時間で済む。よって、請求項15に記載の効果に加えて、分離効率を向上できる。
【0061】
請求項18の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、溶剤処理部で、吸収体を包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解し、乾燥手段によって前記溶剤への溶解により前記接着剤が除去された前記吸収性物品を乾燥し、分離回収手段によって前記乾燥された前記吸収性物品の構成材料を分離回収する。
【0062】
このように、未使用の吸収性物品の構成部材を接合している接着剤を溶剤に溶解させて吸収性物品から除去することによって吸収性物品を解体しその構成材料を分離回収するものであるから、吸収性物品の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品が容易に分解されその構成材料の解離、分離が容易となる。よって、未使用の吸収性物品の構成材料の回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品の接着剤を除去することにより、高吸水性ポリマ等の構成材料が細分化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収性物品の構成材料を精度よく分離回収できる。即ち、吸収性物品の高吸水性ポリマ等の構成材料を細分化させることなく分離回収できる。よって、吸収性物品の構成材料を高品位で分離回収できる。特に、吸収体の高吸水性ポリマやパルプ繊維は細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の吸水体としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適であり、吸収性物品の吸収体としての再資源化にも好適なものとなる。
【0063】
請求項19の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、更に、前記接着剤が溶解した前記溶剤を蒸発させ前記接着剤を分離回収する接着剤分離回収手段を具備することから、請求項11に記載の効果に加えて、吸収性物品の接着剤を再資源化でき、更に資源を有効利用できる。
【0064】
請求項20の発明に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、前記接着剤分離回収手段で前記接着剤と分離された前記溶剤を前記溶剤処理部で前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤として再利用させる溶剤循環路を具備するから、請求項19に記載の効果に加えて、環境負荷を低減でき、また、低コスト化できる。
【0065】
請求項21の発明に係る未使用吸収体のリサイクル品の製造方法は、溶剤処理工程にて、吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマを包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させ、分離回収工程にて、前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の前記シートと前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマを分離して回収し、乾燥工程にて、前記分離回収された前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマを乾燥する。
【0066】
このように、未使用の吸収性物品の構成部材を接合している接着剤を溶剤に溶解させて吸収性物品から除去することによって吸収性物品を解体しその構成材料を分離回収するものであるから、吸収性物品の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品が容易に分解されそのパルプ繊維及び高吸水性ポリマの解離、分離が容易となる。よって、未使用の吸収体であるパルプ繊維及び高吸水性ポリマの回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品の接着剤を除去することにより、パルプ繊維及び高吸水性ポリマが細分化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収体のパルプ繊維及び高吸水性ポリマを精度よく分離回収できる。即ち、吸収体のパルプ繊維及び高吸水性ポリマを細分化させることなく分離回収できる。よって、吸収体のパルプ繊維及び高吸水性ポリマを高品位で分離回収できる。特に、吸収体の高吸水性ポリマやパルプ繊維は細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の吸水体としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適であり、吸収性物品の吸収体としての再資源化にも好適なものとなる。
【0067】
請求項22の発明に係る未使用吸収体のリサイクル品の製造方法は、溶剤処理工程にて、吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマを包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させ、乾燥工程にて、前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品を乾燥し、分離回収工程にて、前記乾燥した前記吸収性物品の前記パルプ繊維と前記高吸水性ポリマとを分離して回収する。
【0068】
このように、未使用の吸収性物品の構成部材を接合している接着剤を溶剤に溶解させて吸収性物品から除去することによって吸収性物品を解体しその構成材料を分離回収するものであるから、吸収性物品の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品が容易に分解されそのパルプ繊維及び高吸水性ポリマの解離、分離が容易となる。よって、未使用の吸収体であるパルプ繊維及び高吸水性ポリマの回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品の接着剤を除去することにより、パルプ繊維及び高吸水性ポリマが細分化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収体のパルプ繊維及び高吸水性ポリマを精度よく分離回収できる。即ち、吸収体のパルプ繊維及び高吸水性ポリマを細分化させることなく分離回収できる。よって、吸収体のパルプ繊維及び高吸水性ポリマを高品位で分離回収できる。特に、吸収体の高吸水性ポリマやパルプ繊維は細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の吸水体としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適であり、吸収性物品の吸収体としての再資源化にも好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】
図1は吸収性物品の一例であるオムツの構成材料を説明する説明図である。
【
図2】
図2は本実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は本実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法及び分離回収装置の実施例1を説明する概念図である。
【
図4】
図4は本実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法及び分離回収装置の実施例1のシート分離回収工程及びシート分離回収手段を説明する模式図である。
【
図5】
図5は本実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法及び分離回収装置の実施例1の吸収体分離回収工程及び吸収体分離回収手段を説明する模式図である。
【
図6】
図6は本実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法及び分離回収装置の実施例2を説明する概念図である。
【
図7】
図7は本実施の形態の変形例に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施の形態及びその変形例において、同一の記号及び同一の符号は同一または相当する機能部分を意味し、実施の形態及び変形例において相互の同一の記号及び同一の符号は、それら実施の形態及び変形例に共通する機能部分であるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
【0071】
[実施の形態]
まず、本実施の形態における構成材料を分離回収する処理対象の吸収性物品について、
図1を参照して、説明する。
紙オムツ、生理用ナプキン、失禁用(尿取り)パッド、パンティライナ、ペット用シート等の吸収性物品は、主に、パルプ繊維11と高吸水性ポリマ12(Super Absorbent Polymer:SAP)からなる吸収体10が不織布や熱可塑性樹脂フィルム等からなる表面シート21及び裏面シート22等のシート20で包まれ、対向する表面シート21及び裏面シート22等のシート20がホットメルト接着剤により接合されてなるものである。
【0072】
表面シート21及び裏面シート22の間に配置される吸収体10は、パルプ繊維11及び高吸水性ポリマ(SAP)12の吸収材により構成されている。
パルプ繊維11(繊維性パルプ)としては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)、架橋パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、半合成セルロース、セルロースナノファイバ(CNF)、酢酸セルロース、レーヨン、コットン等のセルロース系繊維が主に使用されるが合成繊維を含む場合もあり、化学パルプであるフラッフパルプ(綿状パルプ)の形態で吸収体10に用いられている。その繊維長は、平均で、数mm程度で、一例として、1mm~5mm程度であり、その繊維径は、平均で、数十μm程度で、一例として、10~50μm程度である。
【0073】
また、高吸水性ポリマ(以下、「SAP」と称す)12は、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリルアミド系、ポリオキシエチレン系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、無水マレイン酸塩系等の合成ポリマー系、澱粉系、セルロース系、アミノ酸系等の架橋構造を持つ親水性のポリマ(水溶性高分子ポリマ)であり、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、澱粉-アクリルニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA/ポリアクリル酸ナトリウム等が使用されるが、典型的には、アクリル酸またはアクリル酸アルカリ金属塩の重合物または共重合物が使用されている。通常、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤として粒子状のものが使用されるが、繊維状である場合もある。粒子状SAPの乾燥状態における粒径は、例えば、150~600μm程度である。
【0074】
表面シート(トップシート)21は、表面材であり、例えば、不織布やフィルムが使用され、具体的には、液透過性のある不織布や合成樹脂フィルム或いはそれらのラミネート(複合シート)等が使用される。
また、裏面シート(バックシート)22は、防水材であり、例えば、フィラ(炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、タルク、シリカ、カオリン、マイカ、クレー、酸化チタン、酸化亜鉛、顔料等の無機充填材)を含有し微細な孔を有する多孔質のポリオレフィン樹脂等の合成樹脂フィルム、即ち、液を透過せず通気性及び透湿性のある合成樹脂フィルムや、通気性のない合成樹脂フィルムが使用される。
【0075】
不織布としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系不織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系不織布、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系不織布、レーヨン不織布等が使用され、一例としては、複合繊維を熱風で接着してなるエアスル不織布が使用されている。
フィルムとしては、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムが使用される。
【0076】
更に、吸収性物品の種類によっては、表面シート(トップシート)21と、パルプ繊維11及び高吸水性ポリマ12からなる吸収体10との間に、シート状の吸水紙23が配設される場合もある。係る吸水紙23としては、例えば、ポリオレフィン系不織布等が使用される。
また、裏面シート22の吸収体10の配設側とは反対側には、通気性のある不織布等からなる外装シートが配設する場合もある。
加えて、吸収性物品の幅方向両側には、漏れ防止のサイドシート24が配設される場合があり、係る部位には、例えば、撥水処理された不織布(例えば、ポリオレフィン系不織布、ポリウレタン不織布等)、通気性のある合成樹脂フィルム(ポリオレフィン系フィルム、スチレン系エラストマーフィルム等)、伸縮性素材の糸ゴム25(スパンデックス、ウレタンゴム、天然ゴム、合成ゴム等)が使用される。
その他、止着材としてのポリプロピレン等のポリオレフィンや合成ゴム等からなる粘着テープ(面ファスナ)や、パルプ繊維11としてのセルロースナノファイバ(CNF)に消臭効果及び抗菌効果のある銀イオンや香料が担持されたものが使用される場合もある。
【0077】
こうして、構成材料の分離回収の対象である吸収性物品は、パルプ繊維11及びSAP12からなる吸収体10と、フィルムや不織布等からなる表面シート21、裏面シート22、吸水紙23、サイドシート24等のシート20等から構成され、それら構成材がホットメルト接着剤により接合されているものである。
ホットメルト接着剤は、通常、ベースポリマ、粘着付与剤及び可塑剤等を含有し、ベースポリマとしては、例えば、スチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンーエチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレンーブタジエン共重合体(SBR)等のスチレン系やポリイソプレンや天然ゴム等のゴム系、エチレン酢酸ビニル共重合体等のアクリル系、ポリジメチルシロキサンポリマー等のシリコーン系、ポリエチレン等のオレフィン系の熱可塑性樹脂が使用されている。粘着付与樹脂(タッキファイヤ)としては、例えば、ロジン、テルペン樹脂、石油樹脂等が使用され、可塑剤としては、プロセスオイル、ポリブテン等が使用される。その他にも、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレン等のワックスや、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等のフィラや、フェノール、トルエン等の安定剤等を含有している場合もある。
【0078】
吸収性物品としてのオムツを例に挙げて説明すると、
図1に示したように、吸収性物品としてのオムツDは、不織布からなる表面シート(表面材)21の下に、吸水紙23が配設され、更にその下にパルプ繊維(フラップパルプ)11とそれに包まれた粒状のSAP12とからなる吸収体10が配設され、表面シート21側とは反対側の吸収体10の外側には熱可塑性樹脂フィルムからなる裏面シート(防水材)22が配設され、更にその外側にも図示しない不織布からなる外装材(表面材)が配設された多層構造となっている。また、幅方向の両側には、サイドシート24により漏れ防止の伸縮性ギャザが形成され、そこには糸ゴム25が配設されている。加えて、裏面シート22側には、図示しない止着材が貼着されている。こうした構成のオムツDにおいては、パルプ繊維11及びSAP12の吸収体10が、不織布や熱可塑性樹脂フィルムからなる表面シート21及び裏面シート22等で包囲され、ホットメルト接着剤を介して表面シート21及び裏面シート22等が接合されていると共に、ギャザーを形成するサイドシート24や外装シートにおいてもホットメルト接着剤を介して表面シート21や裏面シート22に接合されている。
【0079】
次に、このような吸収性物品の製造工程で生じる規格外品や切屑等の構成材料を分離回収する方法及びその装置について、
図2乃至
図6を参照して、説明する。
本実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法及び分離回収装置は、吸収性物品の製品の製造時に生じる規格外品(不良品)や切屑(切り端)等から、その構成材料を分離して回収するもの、即ち、未使用の吸収性物品の構成材料を分離回収するものである。
【0080】
図2に示すように、本実施の形態の未使用の吸収性物品の構成材料を分離回収する分離回収方法は、吸収性物品の製品の製造工程において摘出され、回収、収集された吸収性物品の規格外品や切屑等(以下、単に「被処理物110」とする)を溶剤120に浸漬してホットメルト接着剤(以下、単に「接着剤」と略す)を溶剤120に溶解させる溶剤処理工程(ステップS1)と、接着剤の溶剤120への溶解により接着剤が除去された被処理物110の構成材料を分離回収する分離回収工程(ステップS2)と、分離回収された構成材料を乾燥する乾燥工程(ステップS3)とを有する。
【0081】
また、
図3や
図6に示すように、本実施の形態の未使用の吸収性物品の構成材料を分離回収する分離回収装置は、被処理物110を溶剤120に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解させる溶剤処理部510と、接着剤の溶剤120への溶解により接着剤が除去された被処理物110の構成材料を分離回収するスクリーンF1,F2、溶剤120,220等で構成される分離回収手段と、分離回収された構成材料を乾燥する乾燥手段とを有する。
【0082】
まず、溶剤処理工程(ステップS1)では、吸収性物品の製品の製造工程において生じた規格外品や切屑等の被処理物110を溶剤処理部510において溶剤120に浸漬する。
なお、吸収性物品の製品の製造工程において生じた規格外品や切屑等の回収物は、袋詰めされ或いは圧縮梱包され、その状態で運ばれてきた場合には、それを破袋し或いは梱包を解いて被処理物110を取り出し、それを溶剤処理部510に投入する。溶剤処理部510の投入口の詰まりを防止する観点からすれば、被処理物110は、折り畳んで投入したり、投入口に入る大きさに予め裁断されたりすることもあるが、細かく解繊、解砕、粉砕等されることはなく、例えば、長さ3~120cm、幅3~120cm程度である。
【0083】
吸収性物品の製品の製造工程において生じた規格外品や切屑といった未使用の吸収性物品である被処理物110が溶剤120に浸漬される溶剤処理部510においては、例えば、被処理物110及び溶剤120を収容する処理槽が使用され、その処理槽に被処理物110が投入され、また、所定量の溶剤120が所定の深さまで入り、被処理物110が溶剤120に浸漬される。好ましくは、被処理物110を溶剤120に浸漬する処理槽内では、被処理物110の全体に溶剤120がムラなく均一に浸透するように、また、被処理物110の構成部材の解離、特に、接着剤の溶剤120への溶解により接合が解されたシート20と吸収体10との解離を促進し、分離しやすくするために、通常、振動、攪拌、遠心(回転)等の物理的衝撃、外力が加えられる。
【0084】
ここで、溶剤120としては、例えば、パラフィン、ナフテン等を含有する石油系溶剤、テトラクロロエチレン等の塩素系溶剤やHCFCー225、HFCー365等のフッ素系溶剤等のハロゲン化炭化水素系溶剤、環状または直鎖状シリコーン等のシリコーン系溶剤が使用できるが、中でも、石油系またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤が好適である。
【0085】
石油系溶剤としては、灯油(C9~15の炭化水素が主成分)や、ドライクリーニングに使用される5号工業ガソリン(クリーニングソルベルト)が好適に使用できる。ドライクリーニング溶剤に使用されている石油系溶剤は、比重が0.73~0.80程度であり、炭化水素混合物である。
ハロゲン化炭化水素系溶剤としては、ドライクリーニング溶剤に使用されている1ーブロモプロパン等の臭素系溶剤や、テトラクロロエチレン(パークロロエチレン)、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤、1,1,1,3,3ペンタフルオロブタン等のフッ素系溶剤が使用できる。
シリコーン系溶剤としては、ドライクリーニング溶剤に使用されているデカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等が使用できる。
【0086】
溶剤処理工程(ステップS1)において、被処理物110をこうした溶剤120中に浸漬させると、被処理物110の構成材を接合していた接着剤が溶剤120に溶解して被処理物110中の接着剤が除去されることにより、被処理物110の構成材の接合部分が剥がれ被処理物110の構成材料の解離、分離が生じる。即ち、被処理物110である吸収性物品を構成しているフィルムや不織布等のシート20等の接合が解かれることで被処理物110が分解され、SAP12、パルプ繊維11、シート20等に分離される。特に、被処理物110を溶剤120で化学処理することで、不織布やフィルムのシート20が細片化されることなく投入時の形状を概ね維持したまま剥がれる。そして、表面シート21及び裏面シート22に内包されていた吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12は、溶剤120中において不織布やフィルムのシート20の接合が剥がれることで、溶剤120中に散らけてくる。
【0087】
こうして、溶剤処理工程(ステップS1)では、被処理物110を溶剤120中に浸漬することにより接着剤を溶剤120に溶解して被処理物110から接着剤を除去する。
特に、このように溶剤120によって接着剤を溶解除去する化学的処理により被処理物110を構成材料に分解するものでは、常温での処理でシート20間の接合力を低下させて被処理物110の構成材料を解離できるものであり、被処理物110の解体に加温や破砕を要さないものであるから、少ないエネルギ及びエネルギコストで済む。
【0088】
次に、分離回収工程(ステップS2)では、溶剤120への浸漬で接着剤が溶解除去された被処理物110の構成材料を分離して回収する。
溶剤120中に被処理物110を浸漬すると、接着剤が溶剤120に溶解して除去されることにより被処理物110のフィルムや不織布等のシート20等の接合が解かれて被処理物110が分解、解離することで、被処理物110の構成材料を分離回収できる。
【0089】
本実施の形態では、被処理物110を細かく破砕等することなく溶剤120に接着剤を溶解させることで被処理物110を解体するものであることから、不織布やフィルムのシート20が細片化されることなく剥離、解離され、それら不織布やフィルム等からなる表面シート21や裏面シート22間に内包されていた吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12が溶剤120中に散らけることでシート20と容易に分離できる。
【0090】
特に、被処理物110から接着剤が除去されることで、不織布やフィルム等からなるシート20に吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12が付着して残存し難く、不織布やフィルム等のシート20にパルプ繊維11及びSAP12の残存を少なくしてきれいにまた容易に、不織布やフィルムのシート20から吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12が分離し、溶剤120中に散ける。また、不織布やフィルム等のシート20が細片化することなく大きな寸法のまま解離されることで、シート20のパルプ繊維11等への混入も生じ難い。
そして、不織布やフィルムのシート20と、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12とではそれらの大きさが大きく異なることにより分別も容易である。
【0091】
ここで、被処理物110を構成する吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12と、不織布やフィルム等からなるシート20との分離回収は、それらの寸法差、比重差(密度差)、沈降・浮上差、抵抗等を利用して分離回収できる。
吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12と、不織布やフィルム等からなるシート20とを分離回収する分離回収手段としては、例えば、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12を通過させるも、不織布やフィルム等からなるシート20は通過させない複数の孔を有するスクリーン、篩、フィルタ等(以下、それらをまとめて「スクリーンF1」と称す)が使用できる。例えば、目開き3~50mm、好ましくは、5~40mm、より好ましくは、5~25mmのものが使用できる。このとき、スクリーンF1を振動等させることにより分離を促進させても良く、ローラスクリーンを使用してもよい。また、スクリーンF1は多段に配置したりカスケード処理したりするようにしてもよい。
こうした、スクリーンF1による濾過分離では、不織布やフィルムのシート20を破断させることなく元の形状を概ね維持したまま、また、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12を微細化させることもなく、即ち、構成材料に対して負荷を掛けることなく、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12といった寸法小の微細片Pと、不織布やフィルム等からなるシート20といった寸法大の粗大片Lとを分離できる。
【0092】
例えば、被処理物110を溶剤120で浸漬処理した処理液(固液混合物)を上述のスクリーンF1に通すことで、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片P及び処理液(溶剤120)はスクリーンF1を通過する一方、不織布やフィルムのシート20等の粗大片LはスクリーンF1上で捕捉、回収される。これより、シート20等の粗大片Lを細かく破断させることなく、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pと分離して、別々に回収できる。
【0093】
或いは、
図6に示すように、溶剤処理部510として、処理槽内に外周にスクリーンF1を設けた内胴としての回転自在なドラムR(ドラムスクリーン)を設置し、そのドラムR内で被処理物110を溶剤120に浸漬させる溶剤処理を行う。このときにドラムRを回転させることで、その攪拌、遠心力等の物理的な衝撃、外力により、被処理物110への溶剤120の浸透、接着剤の溶剤120への溶解が促進され、また、接着剤の溶剤120への溶解により構成材料が解離、分離しやすくなる。そして、回転の遠心力により、ドラムR周囲のスクリーンF1の孔から吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pが回転ドラムRの外の外胴に排出され、その内部に不織布やフィルムのシート20等の粗大片Lが残ることによって、シート20を細かく破断させることなく、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pと分離して、別々に回収できる。
【0094】
或いは、
図3に示すように、被処理物110を溶剤120に浸漬処理した処理槽内にスクリーンF1を設置して、溶剤120への接着剤の溶解により被処理物110の分解された構成材料が溶剤120中で沈降または浮上するその重力を利用し、シート20等の粗大片Lと、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pとを分離して、別々に回収することが可能である。
【0095】
例えば、吸収体10のSAP12の比重よりも小さい比重の溶剤120、好ましくは、その比重が0.7以上、1.5以下の石油系またはハロゲン化炭化水素系或いはそれら混合のドライクリーニング溶剤を使用した場合には、溶剤120への被処理物110の浸漬で被処理物110中の接着剤の接合が解かれると、SAP12はその比重が溶剤120よりも大きく溶剤120を吸収しないため、処理槽の溶剤120中で沈降(落下)する。また、パルプ繊維11は、繊維が互いに絡み合い、その比重が溶剤120よりも大きいことで溶剤120に分散または沈降する。
【0096】
そこで、
図3及び
図4に示すように、被処理物110を溶剤120に浸漬させた溶剤処理部510の処理槽内の溶剤120の液面より下位であって、底位置よりも上位の所定位置で上述のスクリーンF1を設置し、スクリーンF1より上位の位置で被処理物110を投入すると、被処理物110に溶剤120が浸透し接着剤の接合が解かれることで、溶剤120中で被処理物110のシート20、パルプ繊維11、SAP12等が散らけ、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pは、スクリーンF1を通過して沈降するも、不織布やフィルムのシート20等の粗大片LはスクリーンF1を通過しないことで、スクリーンF1の上下で吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pとシート20等の粗大片Lとに分離される。これより、シート20を細かく破断させることなく、シート20等の粗大片Lと吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pとを分離して、別々に回収できる。このとき、好ましくは、少なくともスクリーンF1より上位を攪拌状態にしたり、スクリーンF1に振動を与えたりすることにより、被処理物110の構成材料が解離、分離しやくなり、また、シート20のスクリーンF1への蓄積による目詰まりを防止でき、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pと、シート20等の粗大片Lとを効率的に分離できる。
【0097】
即ち、スクリーンF1を設けた溶剤処理部510の処理槽内に、スクリーンF1の上位から被処理物110を投入し、また、溶剤処理部510に接続している溶剤タンクT1から吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12の比重よりも低比重の溶剤120を液位がスクリーンF1より上位にくるように注入し、被処理物110を溶剤120に浸漬する。このとき、好ましくは、溶剤120に浸漬させる攪拌手段等で溶剤120を攪拌、振動したり、処理槽の揺動等によって溶剤120を攪拌、振動したりする。
被処理物110が溶剤120に浸漬されると、被処理物110中の接着剤が溶剤120に溶解し、被処理物110から接着剤が溶解除去されることで、溶剤中120で被処理物110が分解され、その構成材料が散らけてくる。
そして、被処理物110の構成材料のうち、溶剤120よりも比重が大きく、シート20の寸法よりも小さい吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pは、スクリーンF1を通過して沈降していく一方で、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12よりも寸法の大きなシート20等の粗大片Lは、スクリーンF1よりも上位に滞留する。これより、大きなシート20等の粗大片Lと、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pとを別途に回収できる。
【0098】
こうした、溶剤処理部510で被処理物110を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中でのスクリーンF1及び被処理物110の構成材料の沈降或いは浮上の分離回収手段により吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pと、シート20等の粗大片Lとを分離回収するものでは、被処理物110を溶剤120に浸漬処理した処理液をスクリーンF1に通す(流す)場合よりも、シート20等の粗大片LがスクリーンF1上に蓄積することによる目詰まりを防止できて効率よく分離でき、また、構成材料への物理的衝撃を少なくできることで、即ち、ソフトな条件で分離できるから、パルプ繊維11及びSAP12の吸収体10を劣化させることなく、より品位を維持して分離できる。更に、装置も簡単な構成で済むから低コスト化できる。
【0099】
そして、スクリーンF1よりも上位で滞留するシート20等の粗大片Lは、例えば、溶剤120中からシート回収手段で掻き取ったり掬い上げたり巻き取ったりすることにより溶剤処理部510の外部に排出して回収することもできるし、スクリーンF1上で捕捉して回収することもできるし、溶剤120と共に溶剤処理部510から排出して別のスクリーン等を使用して溶剤120から分離して回収することもできる。
【0100】
溶剤処理部510の処理槽内でスクリーンF1を通過して沈降した吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12の微細片Pは、更に、SAP12を通過させるもパルプ繊維11を通過させないスクリーンF2をスクリーンF1の下位に配置することにより、溶剤処理部510の溶剤120中でスクリーンF2によってパルプ繊維11とSAP12とに分離してもよいし、或いは、溶剤120と共に溶剤処理部510から排出し、溶剤処理部510とは別途の場所(後述する吸収体分離部520等)にスクリーンF2を設けてそこでパルプ繊維11とSAP12とに分離することもできる。
【0101】
即ち、シート20等の粗大片Lと分離された吸収体10のパルプ繊維11及びSAP11等の微細片Pも、寸法差、比重差(密度差)、沈降・浮上差、抵抗等を利用してパルプ繊維11とSAP12とに分離できる。
吸収体10のパルプ繊維11とSAP12とを分離回収する吸収体分離回収手段としては、例えば、SAP12を通過させるも、パルプ繊維11は通過させない複数の丸穴等の孔やスリット等の開口を有するスクリーン、篩、フィルタ等(以下、それらをまとめて「スクリーンF2」と称す)が使用できる。例えば、目開き0.1~5mm、好ましくは、目開き0.15~3mmのものが使用できる。このとき、スクリーンF2を振動等させることにより分離を促進させても良く、ローラスクリーンを使用してもよい。また、スクリーンF2は多段に配置したりカスケード処理したりするようにしてもよい。
【0102】
例えば、上述した、シート20等の粗大片Lを通過させない粗目のスクリーンF1を通過し、シート20等の粗大片Lと分離された吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pと溶剤120を含んだ処理液について、または、回転ドラムの外周の粗目スクリーンF1から外に出された吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pと溶剤120を含んだ処理液について、更に、パルプ繊維11を通過させない細目のスクリーンF2に通すことで、その細目のスクリーンF2でパルプ繊維11を捕捉する一方、SAP12と処理液の溶剤120は細目のスクリーンF2を通過するから、細目スクリーンF2によってパルプ繊維11をSAP12と別に分離して回収することができる。
【0103】
細目のスクリーンF2を通過したSAP12及び溶剤120を含んだ処理液を、処理液の溶剤120を通過させるもSAP12を通過させない微細目のスクリーンに通すことで、その微細目のスクリーンでSAP12を捕捉する一方、処理液の溶剤120は微細目のスクリーンを通過するから、微細目スクリーンによって処理液の溶剤120からSAP12を分離して別々回収することができる。
【0104】
または、被処理物110を溶剤120に浸漬させた溶剤処理部510の処理槽内の底位置よりも上位の所定位置で設置したシート20等を通過させない粗目のスクリーンF1に対し、更に、その下位にSAP12を通過させるもパルプ繊維11を通過させない細目スクリーンF2を設置し、更にそれよりも下位置にSAP12を捕捉する微細目スクリーンを設置して、処理液中での沈降分離を利用して分離回収することもできる。即ち、被処理物110を溶剤120に浸漬する処理槽内に設置した粗目スクリーンF1を通過して沈んでいった吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12のうち、粗目スクリーンF1より下位置で、細目スクリーンF2よりも上位位置でパルプ繊維11が滞留する一方、SAP12は細目スクリーンF2を通過して沈んでいき、更にそれより下位置の微細目スクリーンで捕捉されることにより、パルプ繊維11とSAP12とを別途に分離回収することができる。または、処理槽の底にSAP12を堆積させ、それをまとめて回収してもよい。
【0105】
或いは、
図3及び
図5に示すように、被処理物110を溶剤120に浸漬させた溶剤処理部510の処理槽内の底位置よりも上位の所定位置で設置したシート20等を通過させない粗目のスクリーンF1を通過した吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pを回収して、乾燥させたのち、SAP12を通過させるもパルプ繊維11を通過させない細目スクリーンF2を備えた吸収体分離部520において、その処理槽内に溶剤処理部510で被処理物110を浸漬処理した溶剤120とは異なる吸収体分離溶剤220を入れ、その中に吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pを投入し、その吸収体分離溶剤220中で、パルプ繊維11とSAP12とを分離して別途に回収してもよい。吸収体分離溶剤220としては、上述した溶剤120で列挙したものと同様のものが使用できる。
【0106】
特に、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12の比重よりも大きい比重の溶剤220、好ましくは、比重が1.6以上、1.8以下の範囲内のハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤或いはそれと石油系のドライクリーニング溶剤との混合溶剤等中に吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12を浸漬すると、SAP12はその比重が溶剤220及びパルプ繊維11よりも小さく溶剤220を吸収しないため、処理槽の溶剤220中で浮いてくる。
【0107】
そこで、
図3及び
図5に示すように、吸収体分離溶剤220を収容した吸収体分離部520の処理槽内の所定位置で上述のスクリーンF2を設置し、スクリーンF2よりも下位の位置にシート20等の粗大片Lとは別途に分離回収され乾燥された吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pを送給することにより、SAP12等の粒状物P2は、浮上して、スクリーンF2を通過してスクリーンF2より上位に移動し、パルプ繊維11等の繊維状物P1はスクリーンF2を通過しないことで、スクリーンF2より下位で滞留することにより、スクリーンF2の上下でSAP12等の粒状物P2と、パルプ繊維11等の繊維状物P1とに分離される。これより、SAP12等の粒状物P2と、パルプ繊維11等の繊維状物P1とを別々に回収できる。
【0108】
即ち、吸収体分離部520に接続し吸収体分離溶剤220を収容した溶剤タンクT2からパルプ繊維11及びSAP12よりも高比重の吸収体分離溶剤220を吸収体分離部520の処理槽に注入し、スクリーンF2を設けた吸収体分離部520の処理槽内でスクリーンF2よりも下位にシート20等の粗大片Lとは別途に分離回収され乾燥された吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pを送給する。このとき、好ましくは、吸収体分離溶剤220に浸漬させる攪拌手段で吸収体分離溶剤220を攪拌、振動したり、処理槽の揺動等によって吸収体分離溶剤220を攪拌、振動したりする。
吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pが吸収体分離溶剤220に投入され、攪拌されると、吸収体分離溶剤220及びパルプ繊維11よりも比重が軽く粒状で寸法も小さいSAP12は、吸収体分離溶剤220中を上昇(浮上)し、スクリーンF2を通過してスクリーンF2より上側に移動する一方で、単繊維の絡み合いによりSAP12よりも寸法の大きなパルプ繊維11は、スクリーンF2よりも下位に滞留する。よって、SAP12等の粒状物P2と、パルプ繊維11等の繊維状物P1とを別途に回収できる。
【0109】
スクリーンF2よりも上位に浮上したSAP12等の粒状物P2は、溶剤220と共に吸収体分離部520の外部に排出して別のスクリーン等を使用し溶剤220から分離回収することもできるし、スクリーンF2上で捕捉して回収してもよい。
スクリーンF2よりも下位で滞留するパルプ繊維11等の繊維状物P1は、溶剤220と共に吸収体分離部520の外部に排出して回収され、別のスクリーン等を使用し溶剤220から分離回収することもできるし、SAP12及び溶剤220の排出により処理槽の底に堆積させて回収してもよい。
【0110】
こうした、吸収体分離部520で吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pを吸収体分離溶剤220中でスクリーンF2及びSAP12の浮上の分離回収手段により、SAP12等の粒状物P2と、パルプ繊維11等の繊維状物P1とを分離回収するものでは、SAP12等の粒状物P2とパルプ繊維11等の繊維状物P1が含まれた溶剤120の処理液をスクリーンF2に通す(流す)場合よりも、パルプ繊維11等の繊維状物P1がスクリーンF2上に蓄積することによる目詰まりを防止できて効率よく分離でき、また、構成材料への物理的衝撃を少なくできることで、即ち、ソフトな条件で分離できるから、パルプ繊維11及びSAP12の吸収体10を劣化させることなく、より品位を維持して分離できる。更に、装置も簡単な構成で済むから低コスト化できる。
【0111】
即ち、スクリーンF2とSAP12よりも高比重の吸収体分離溶剤220中での重力とを利用したパルプ繊維11とSAP12の分離によれば、パルプ繊維11とSAP12に対し少ない負荷の低エネルギで、混率が極めて低く純度の高いSAP12とパルプ繊維11との分別回収を可能とする。分離精度よくパルプ繊維11とSAP12を分離でき、高純度のパルプ繊維11とSAP12が生産性良く得られる。
よって、パルプ繊維11とSAP12に対し細粒化、微粉化させることのない少ないエネルギ負荷で、高精度にパルプ繊維11とSAP12を分離できるものであり、分離回収されたパルプ繊維11及びSAP12は、劣化の少ない高品位なものとなる。よって、マテリアルリサイクルに好適である。特に、被処理物110を溶剤120に浸漬しても、SAP12は吸油しないため、また、上述したように細粒化、微粉化されることなく分離回収できることで、粒度分布が大きく変わることなく、元の吸水性等の特性を維持したまま高回収率で回収できるため、回収されたSAP12は吸収性物品の構成材料としてのマテリアルリサイクルに適する高品位なものとなる。また、パルプ繊維11においても、被処理物110を細かく破砕していないので、シート20、糸ゴム25、テープ等の混入が少なく、また、素材を劣化させない低負荷で分離回収できることで、元の吸水性等の特性を維持したまま高回収率で回収でき、回収されたパルプ繊維11も吸収性物品の構成材料としてのマテリアルリサイクルに適する高品位なものとなる。
【0112】
本発明を実施する場合には、その他にも、パルプ繊維11とSAP12を分離回収する分離手回収段として、例えば、シート20等の粗大片L回収後の溶剤120を含んだ処理液中において、パルプ繊維11及びSAP12に液流を当て、相対的に比重の小さなSAP12を相対的に比重の大きなパルプ繊維11とは別の場所へ液流によって移動させることで、分離することも可能であるし、または、遠心力を利用した液体サイクロンHC等の湿式分級機を使用して分離回収することも可能である。
【0113】
液体サイクロンHCは、
図6に示すように、円錐(逆三角錐)状の筒状に形成され、円錐体(筒状容器)の上部側面に処理液が横方向から圧送される流入口が設けられ、円錐体の下端に下部排出口を有し、また、円錐体の上端に上部排出口を有するものである。液体サイクロンの円錐体の流入口に吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12と溶剤120を含んだ処理液を圧送することにより、回転運動の渦流による遠心力によって、円周方向に高速で処理液が筒内の内側壁に沿って旋回し、パルプ繊維11が処理液の溶剤120と共に上部排出口から排出され、SAP12が内側壁にそって旋回しながら降下し下部排出口から排出される。これによっても、SAP12を、パルプ繊維11及び溶剤120を含む処理液と別に分離して回収することができる。更に、パルプ繊維11と溶剤120とは、スクリーンや沈降分離して別途に分離回収することができる。被処理物110を浸漬処理した溶剤120中に含まれるパルプ繊維11とSAP12を遠心力の利用で分離するものでは、媒体を溶剤120の処理液とするものであることから、少ない工程数で生産効率よく、より高精度にパルプ繊維11とSAP12を分離できるものである。
【0114】
なお、分別回収されたシート20等を含む粗大片Lは、更に、糸ゴム25、テープ等のその他構成材料と分別してから、乾燥工程(ステップS3)に供してもよいし、乾燥工程(ステップS3)後に分別してもよい。また、不織布やフィルムからなるシート20は、更に、比重差等を利用して複数種に分別することも可能である。なお、シート20の比重は、樹脂とフィラ(添加剤)の種類、含有量等により相違するものである。
また、SAP12等を含む粒状物P2及びパルプ繊維11等を含む繊維状物P1についても、糸ゴム25、テープ等のその他構成材料が分離除去された後、後述の乾燥工程(ステップS3)に供してもよいし、乾燥工程(ステップS3)後に分離除去してもよい。分別された糸ゴム25、テープ等のその他の構成材料についても、マテリアルリサイクルとして再資源化することが可能である。
【0115】
特に、本実施の形態においては、被処理物110を細かく粉砕していないので、回収されたSAP12やパルプ繊維11には細かなシート20、糸ゴム25、テープ等の混入が少ないものであり、異物分離が容易で、SAP12やパルプ繊維11を高純度に分離回収できる。また、溶剤120に被処理物110の接着剤を溶解させることで被処理物110を分解、解体して構成材料を分離回収するものであることから、不織布やフィルムのシート20が細片化されることなく投入時の形状を概ね維持したまま解離されることで、更に、被処理物110から接着剤が除去されていることで、不織布やフィルムのシート20にパルプ繊維11及びSAP12の吸収体10が付着して残存し難いから、異物除去も容易である。さらに、接着剤が除去されていることで、異物が少なく高品位にシート20を回収できるから、回収されたシート20は広範囲な用途のリサイクルに好適である。SAP12等が細粒化、微粉化して流出しないので排水の負荷もない。
【0116】
このように、本実施の形態では、細かく解繊、解砕、粉砕等することなく、被処理物110から接着剤を除去することにより被処理物110を解体するものであるから、不織布やフィルムからなる表面シート21や裏面シート22等のシート20と、表面シート21及び裏面シート22間に内包されていたパルプ繊維11及びSAP12からなる吸収体10との分離が容易である。よって、SAP12の細粒化、微粉化を生じさせるような過大なエネルギを投入しなくとも少ないエネルギで、即ち、低負荷の条件で、それらを精度よく分離できる。そして、細粒化、微粉化による劣化や吸水性等の特性変化を生じさせることなくSAP12及びパルプ繊維11を分離回収できるから、吸収性物品の構成材料としての再資源化に適するものとなる。即ち、被処理物110を溶剤120に浸漬して接着剤を溶解させることにより被処理物110を解体するものでは、被処理物110の接着剤が除去されることにより、シート20が細片化することなく大きな寸法のまま解離し、細かく解繊、解砕、粉砕等することで生じる被処理物110の構成材料同士の絡み合いや固着がなく、被処理物110の構成材料が容易に散らけることで、少ないエネルギで構成材料を分離回収でき、構成材料の回収率も高いものとなる。
【0117】
こうして、分離回収工程(ステップS2)では、スクリーンF1,F2等の分離回収手段で、接着剤が除去された被処理物110の構成材料のうち、少なくとも、パルプ繊維11と、SAP12と、不織布やフィルム等のシート20とが別々に分離回収される。
【0118】
続いて、乾燥工程(ステップS3)では、乾燥手段を備えた乾燥部550において、これら分離回収された各構成材料が乾燥手段よって乾燥されることにより、分離回収された各構成材料に残存する溶剤120,220が除去、脱溶剤化される。
乾燥手段としては、例えば、室温での自然乾燥、室温よりも高い温度下での乾燥、常温空気による風乾、熱風の吹き付けによる乾燥、減圧乾燥等により溶剤120,220を揮発させることができ、ヒータ、減圧ポンプ、ファン等を用いることができる。
但し、石油系溶剤120,220の場合は、引火点が低いことから、減圧下、窒素置換、ガス及び酸素の濃度管理のうえで、溶剤120,220を揮発させる。なお、溶剤率が1質量%以下となるまで乾燥を行うのが好ましい。
このときの乾燥は、回収された各構成材料を個別に乾燥してもよいし、まとめて乾燥させてもよい。溶剤120,220の乾燥であるから、低負荷、省エネルギで乾燥できる。
乾燥部550では、その処理槽を回転させる機構、例えば、槽自体を回転させる機構または槽内に回転体を設けその回転体を回転させる機構によって、或いは、風流によって、乾燥ムラを防止して脱溶剤化を促進させ、乾燥時間の短縮化を行うこともできる。
【0119】
なお、分別回収され、乾燥されたシート20等を含む粗大片Lは、更に、不織布やフィルム等のシート20と、糸ゴム25、テープ等のその他構成材料とに分別回収してもよい。
不織布やフィルムからなるシート20は、更に、比重差等を利用して複数種に分別することも可能である。なお、シート20の比重は、樹脂とフィラ(添加剤)の種類、含有量等により相違するものである。
また、SAP12は、分別回収され、乾燥されたSAP12等を含む粒状物P2から糸ゴム25、テープ等のその他構成材料が分離除去されたのち、回収される。即ち、分別回収され、乾燥されたSAP12等を含む粒状物P2から糸ゴム25、テープ等のその他構成材料が分離除去されることにより、SAP12が回収される。
パルプ繊維11は、分別回収され、乾燥されたパルプ繊維11等を含む繊維状物P1から糸ゴム25、テープ等のその他構成材料が分離除去されたのち、回収される。即ち、分別回収され、乾燥されたパルプ繊維11等を含む繊維状物P1から糸ゴム25、テープ等のその他構成材料とが分離除去されることにより、パルプ繊維11が回収される。
分別された糸ゴム25、テープ等のその他の構成材料についても、マテリアルリサイクルとして再資源化することが可能である。
【0120】
こうして、本実施の形態では、溶剤処理部510にて、パルプ繊維11及びSAP12を含む吸収体10をフィルムや不織布等のシート20で包囲し対向するシート20間を接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品である被処理物110を溶剤120に浸漬して被処理物110の接着剤を溶剤120に溶解させる溶剤処理工程(ステップS1)を実施し、分離回収手段によって、接着剤が溶解除去された被処理物110の構成材料を分離回収する分離回収工程(ステップS2)を実施し、乾燥手段によって、分離回収された構成材料を乾燥する乾燥工程(ステップS3)を実施することにより、未使用の吸収性物品である被処理物110から、少なくとも、パルプ繊維11と、SAP12と、不織布やフィルム等のシート20とを分離回収するものである。
【0121】
このように、本実施の形態では、被処理物110を細かく粉砕等することなく溶剤120に接着剤を溶解させることで被処理物110を分解、解体して構成材料を分離回収するものであることから、不織布やフィルムのシート20が細片化(分解)されることなく元の形状を概ね維持したまま解離されることで、また、被処理物110から接着剤が除去されることで、不織布やフィルムのシート20にパルプ繊維11及びSAP12の吸収体10が付着して残存し難く、それら不織布やフィルムのシート20と、表面シート21及び裏面シート22間に内包されていたパルプ繊維11及びSAP12の吸収体10との分離が容易である。このため、少ないエネルギ及びエネルギコストで、効率的に、精度よく構成材料を分離でき、回収率も高いものとなる。そして、過大なエネルギを与えなくても構成材料の分離が容易であるから、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12に対して少ない負荷で分離でき、パルプ繊維11及びSAP12の微細化、劣化が抑制される。更に、分別されたパルプ繊維11及びSAP12は、接着剤が除去されている。よって、回収されたパルプ繊維11及びSAP12は高品位なものとなり、マテリアルリサイクルに好適であり、バージン原料と比較しても特性の劣らないものとなる。故に、吸収性物品の構成材料としても再利用でき、広範囲な用途へのマテリアルリサイクルを可能とする。
特に、本実施の形態では、被処理物110を溶剤120で浸漬処理し、湿潤状態で構成材料を分離回収するから、低負荷エネルギで精度良く分離でき、SAP12やパルプ繊維11も微粉化、微粒化し難いので、高品位なものが得られる。
【0122】
よって、回収されたSAP12は吸収性物品への再利用が可能であることは勿論、農業・園芸用(土壌保水剤、農薬の崩壊助剤等)、食品用(鮮度保持剤、凍結防止剤、保冷剤)、土木・建築用(固剤、結露防止剤、止水材)、化粧・医薬用(芳香剤、化粧液、シップ)、衛生用品、災害用簡易トイレ、電気・電子材料(光ケーブル用止水材)、塗料等の幅広い用途に利用することが可能である。
パルプ繊維11についても、吸収性物品への再利用が可能であることは勿論、紙、段ボール、衛生用品等の繊維素材として幅広い用途にマテリアルリサイクルに利用できる。糖化処理等を行うことでケミカルリサイクルすることも可能である。
【0123】
また、本実施の形態では、被処理物110を構成していたシート20についても、被処理物110を粉砕等することなく溶剤120に浸漬して接着剤を溶解させる溶剤処理により、表面シート21及び裏面シート22等のシート20を概ね投入時のシート形状のまま、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等と容易に分離され、高い回収率で回収できる。
【0124】
被処理物110から分離回収されたシート20等の粗大片Lは、圧縮等により固形化し、固形化燃料(Refuse derived paper and plastics densified fuel: RPF)としてサーマルリサイクルすることもできる。特に、未使用の吸収性物品である被処理物110から分離回収されたシート20等の粗大片Lは、接着剤が除去されており、水分、灰分、塩素分といった不純物の含有も少ないため、着火性がよく、発熱量を高くでき、安定して高品位な固形化燃料となる。即ち、石炭やコークスに匹敵する高い発熱量が得られ、塩素ガスによるボイラ腐食やダイオキシンの発生を生じさせ難い良質な固形化燃料となる。
即ち、未使用の吸収性物品である被処理物110を溶剤120に浸漬して接着剤を溶解させることで被処理物110を解体し、スクリーンFによる濾過分離等でSAP12及びパルプ繊維11と分離したシート20においては、SAP12やパルプ繊維11等が細粒化、微粉化されていないことによりSAP12やパルプ繊維11の混入が極めて少なく、更に、接着剤の付着もなく、高品位なものとなる。よって、それらを成形機で成形圧縮し、また、それを冷却機で冷却する固形燃料化手段によって固形燃料化することによって得られた固形化燃料は、SAP12やパルプ繊維11の混率が極めて少ないことにより、水分率が低いものとなる。また、SAP12を塩化カルシウム等の不活化剤で不活化させるものでもなく、更に、接着剤が除去されていることにより、灰分、塩素分といった不純物の含有も少ないものである。よって、発熱量が高く高品位なものである。そして、SAP12及びパルプ繊維11と分離されたシート20等を固形燃料化してなる固形化燃料においては、SAP12の吸水による膨張が生じないことにより、軽量で保管や運搬も省スペース及び省エネルギで済み、運搬の作業員の負荷も少なく安全に作業できる。更に、SAP12の混率が極めて少ないことによりSAP12の蓄熱による異臭の発生や、発火の恐れもない。
【0125】
または、溶融して固化(ペレット化)してプラスチック原料化し、プラスチック製品にマテリアルリサイクルすることができる。特に、未使用の吸収性物品である被処理物110から分離回収されたシート20等の粗大片Lは、接着剤が除去されていることで、不純物が少なくプラスチック加工に使用しやすいものである。即ち、本実施の形態で、分別されたフィルムや不織布等のシート20は、接着剤が除去されているため、プラスチック原料として溶解し、フィルム状に延伸したり、押出成形、ブロー成形等による樹脂成形したりする場合でも、バージン原料と比較して特性の劣らないものとなり、良質で高純度なマテリアルリサイクル品となる。
なお、この場合には、不織布やフィルムの複数種からなるシート20等の粗大片Lを、比重差等を利用して更に成分ごとに分離選別することになるが、不織布やフィルムのシート20の分別手段としては、乾燥前に溶剤120中において或いは乾燥後に空気中で遠心分離させるサイクロン等が使用でき、遠心力を用いたサイクロン等によってフィルムシートと不織布シートを分別することも可能である。
こうして分別された比重差の違う各種プラスチック原料は、例えば、吸収性物品、包装材(袋、フィルム、容器、チューブ、ラップ等)、プラスチックフィルム、プラスチックバック等の樹脂製品にマテリアルリサイクルすることができる。
【0126】
或いは、油化し、ナフサ、軽油、重油等の生成油として、または、高炉還元剤やコークス代替剤としてケミカルリサイクルやサーマルリサイクルすることも可能である。生成油は、燃料、プラスチック等の化学原料の用途に使用できる。
【0127】
ところで、本実施の形態は、更に、被処理物110の構成材料が回収された後の接着剤が溶解されている溶剤120を蒸留し、蒸留によって析出する接着剤を分離回収する接着剤分離回収工程(ステップS4)を具備する。
接着剤分離回収工程(ステップS4)では、接着剤分離回収手段としての蒸留によって、被処理物110の構成材料が回収された後の接着剤が溶解されている溶剤120から、接着剤を析出させて分離回収する。また、本実施の形態の分離回収装置においては、溶剤タンクT1と蒸留部530とを接続する溶剤循環路540が形成されていることにより、蒸留部530にて溶剤ガスを冷却してなる接着剤が除去された溶剤120は、溶剤循環路540で溶剤タンクT1に送給されるから、被処理物110を浸漬処理する溶剤120として再利用される。なお、溶剤循環路540には、フィルタを備えた濾過部が配設しており、接着剤が除去された溶剤120は濾過部のフィルタで異物除去された後、再び、被処理物110を浸漬させる溶剤120として再利用される。
【0128】
即ち、接着剤が溶解されている溶剤120を蒸留して接着剤を析出させることで固体状の接着剤を溶剤120から分離回収できる。そして、蒸発した溶剤ガスは冷却されることにより凝縮し接着剤が除去された液状の溶剤120となるから、濾過部のフィルタ濾過して、被処理物110を浸漬させる溶剤120として再利用される。
特に、石油系やハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤120であれば、溶出した接着剤の回収率も高いものである。
【0129】
こうして、本実施の形態では、接着剤が溶解された溶剤120は、外部に廃棄することなく、蒸留によって接着剤を回収して、繰り返し、被処理物110を浸漬処理する溶剤120として使用される。よって、溶剤120の廃液処理を必要とすることなく、低コスト化できる。更に、接着剤が溶解された溶剤120の蒸留によって接着剤を分離回収できることで、接着剤もマテリアルリサイクルとして再資源化でき、吸収性物品の構成材料の資源を更に有効利用できることになる。
即ち、本実施の形態では、被処理物110中の接着剤を溶剤120に溶解させることで被処理物110を分解、解体するものであり、溶剤120に接着剤を溶解させていることにより、蒸留でその溶剤120から接着剤を析出できるから、未使用の吸収性物品である被処理物110から接着剤を分離回収して、マテリアルリサイクルすることも可能である。よって、未使用の吸収性物品の構成材料の再利用性、リサイクル率を高めることが可能であり、環境保全により貢献できる。
【0130】
なお、一連の分離回収装置においては、外気を吸気する吸気部と、内部の空気を排出する排気部を有し、ファンの駆動等によって吸気部で吸気された外気が供給され、また、排気部から内部空気が適宜排気処理され外部に排出されるようになっている。
【0131】
このように本実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法は、パルプ繊維12及び高吸水性ポリマ(SAP)12の吸収体10をシート20で包囲し対向するシート20間をホットメルト接着剤で接合してなる規格外品や切れ端である未使用の吸収性物品からその構成材料を分離回収する分離回収方法であって、溶剤処理工程(ステップS1)において規格外品や切れ端の未使用の吸収性物品である被処理物110を溶剤120に浸漬して、シート20間を接合している接着剤を溶解し、分離回収工程(ステップS2)において接着剤の溶剤120への溶解により解離した吸収性物品の構成材料を分離回収し、乾燥工程(ステップS3)において、分離回収された構成材料を乾燥して溶剤120を揮発させるものである。
【0132】
また、本実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収装置は、パルプ繊維12及び高吸水性ポリマ(SAP)12の吸収体10をシート20で包囲し対向するシート20間をホットメルト接着剤で接合してなる規格外品や切れ端である未使用の吸収性物品からその構成材料を分離回収する分離回収装置であって、規格外品や切れ端の未使用の吸収性物品である被処理物110を溶剤120に浸漬し、シート20間を接合している接着剤を溶解させる溶剤処理部510と、接着剤の溶剤120への溶解により解離した吸収性物品の構成材料を分離回収するスクリーンF1等の分離回収手段と、分離回収された構成材料を乾燥して溶剤120を揮発させるヒータ、減圧ポンプ、ファン等の乾燥手段を具備するものである。
【0133】
こうした本実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法及び分離回収装置によれば、未使用の吸収性物品の構成部材を接合しているホットメルト接着剤を溶剤120に溶解させることで構成部材を解離し、その構成材料を分離回収するものであることから、接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品(被処理物110)の解離、分解が容易となり構成材料の回収率を向上できる。特に、接着剤を除去することにより、接着剤による絡み合いがないことで、吸収体10のパルプ繊維11とSAP12を細粒化、微粉化させることのない少ないエネルギで、シート20とそれに内包されていたパルプ繊維11とSAP12とをそれらの大きさや比重等の相違により容易に分離できる。そして、吸収体10のパルプ繊維11とSAP12を細粒化、微粉化させない少ないエネルギで精度よく分離でき、また、接着剤も除去されていることで、高品位にシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料を分離回収でき、マテリアルリサイクルにも好適なものとなる。
【0134】
特に、本実施の形態では、接着剤が除去された吸収性物品の構成材料を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中で吸収性物品の構成材料を分離回収してから、乾燥するものであり、湿潤状態で構成材料を溶剤120との比重差、重力を利用して分離するものでは、構成材料に対して低負荷な条件で分離できる。故に、構成材料を劣化、微細化させないソフトな条件で分離できることで、高品位に構成材料を分離回収できる。
【0135】
また、シート分離回収工程として、溶剤処理部510において接着剤が除去された吸収性物品の構成材料を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中でシート20と吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12とに分離してから、吸収体分離回収工程として、吸収体分離部520において、シート20と分離されたパルプ繊維11及びSAP12をSAP12よりも比重の高い溶剤220中でパルプ繊維11とSAP12とに分離するものでは、パルプ繊維11とSAP12を細粒化、微粉化させない少ない負荷、ソフトな条件で、また、簡単な装置の構成で、精度よくシート20とパルプ繊維11とSAP12を高品位に分離回収でき、低コストでもある。
【0136】
更に、本実施の形態では、接着剤分離回収工程(ステップS4)として、蒸留部530において接着剤が溶解した溶剤120を蒸留することで接着剤を析出させて分離回収することで、接着剤についてもマテリアルリサイクルを可能とし、更に資源を有効利用できる。加えて、溶剤循環路540によって蒸留した溶剤120を、溶剤処理部510で吸収性物品である被処理物110に浸漬させる溶剤120として再利用するから、溶剤120の排液処理を不要とし、環境負荷の低減化、低コスト化が可能である。
【0137】
ここで、本実施の形態における未使用の吸収性物品の構成材料を分離回収する分離回収方法及び分離回収装置の実施例1について、
図3乃至
図5を参照して、説明する。
本実施例1に係る分離回収装置は、被処理物110を溶剤120に浸漬させる溶剤処理部510の処理槽内に分離手段としてのスクリーンF1を備える。スクリーンF1は、吸収体10のSAP12及びパルプ繊維11を通過させるも、シート20は通過させない径の複数の丸穴等の孔やスリット等の開口を有するもので、目開きが5~25mm程度のものである。
【0138】
なお、溶剤処理部510には、溶剤120を収容する溶剤タンクT1がポンプ及びバルブ等を介して接続されており、バルブの開状態ではポンプの駆動により溶剤タンクT1内の溶剤120が溶剤処理部510の処理槽内に供給され、ポンプの停止状態やバルブの閉状態では、溶剤タンクT1内の溶剤120が処理槽内に供給されるのが停止されるようになっている。これより、被処理物110が浸漬される溶剤120は、溶剤タンクT1からポンプで送液され溶剤処理部510の処理槽内に所定の液位まで入れられる。
【0139】
そこで、まず、溶剤処理部510の処理槽内に被処理物110を収容し、溶剤処理部510と溶剤タンクT1との接続間に配設したバルブを開とし、また、ポンプを作動させることにより、溶剤タンクT1内の溶剤120を溶剤処理部510の処理槽内にスクリーンF1より上位の所定の液位まで入れ、溶剤処理部510の処理槽内で被処理物110を溶剤120に浸漬させる。
図4に示したように、溶剤処理部510の処理槽において被処理物110を溶剤120に浸漬させると、溶剤120に浸漬した被処理物110中の接着剤が溶剤120に溶解することにより被処理物110が分解、解離、解体され、被処理物110の構成材料が溶剤120中に散けてくる。このとき、好ましくは、被処理物110が浸漬された溶剤120を撹拌機等の攪拌手段で攪拌する。或いは、処理槽自体を揺動し溶剤120に振動を与える。これより、被処理物110の分解、構成材料の分離が促進され、処理効率が向上する。
【0140】
ここで、本実施例1では、溶剤120として、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12よりも小さい比重である、比重が0.6以上、0.8以下の石油系のドライクリーニング溶剤120を使用した。そして、溶剤処理部510の処理槽内において、被処理物110は、溶剤処理部510の処理槽内に設置したスクリーンF1の上位に投入した。
これより、
図4に示すように、溶剤処理部510の処理槽において、被処理物110中の接着剤が溶剤120に溶解することにより被処理物110が分解、解離、解体されると、被処理物110の構成材料のうち、吸収体10の綿状のパルプ繊維11及び粒状のSAP12等の微細片Pは下降しスクリーンF1を通過してスクリーンF1より下位に沈降する一方、シート20等の粗大片Lは、スクリーンF1を通過することなくスクリーンF1より上位に滞留する。
【0141】
こうして、本実施例1では、溶剤処理部510においてスクリーンF1を設置し、そのスクリーンF1の位置よりも上位まで溶剤120を充填し、また、スクリーンF1の位置よりも上位で被処理物110を投入して、被処理物110を比重が0.6以上、0.8以下の石油系のドライクリーニング溶剤120に浸漬させたことにより、その溶剤120との比重差による重力によって、また、スクリーンF1の孔より小寸法であることで、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片PがスクリーンF1より下位に沈降する一方、シート20等の粗大片LがスクリーンF1より上位で滞留するから、スクリーンF1より下位に沈降した吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pと、スクリーンF1より上位で滞留するシート20等の粗大片Lとに分離される。よって、それらパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pと、シート20等の粗大片Lとを別途に回収できる。
【0142】
スクリーンF1より上位に滞留したシート20等の粗大片Lは、例えば、溶剤120中から掻き取ったり、掬い上げたり、巻き取ったりすることにより、或いは、風流や液流を利用することにより、溶剤処理部510の外部に排出して回収する。溶剤処理物510から排出されたシート20等の粗大片Lは、ヒータ、減圧ポンプ、ファン等の乾燥手段を備えた乾燥部550に搬送され、そこで、熱風等により乾燥される。そして、回収され乾燥されたシート20を含む粗大片Lは、固形燃料、プラスチック原料、生成油として、サーマルリサイクル、マテリアルリサイクル、またはケミカルリサイクルされる。
なお、乾燥されたシート20等の粗大片Lは、糸ゴム25、ラベル等のその他の構成材料を含む場合があることから、更に、不織布やフィルムのシート20と、それら糸ゴム25等のその他の構成材料とを分別し、別個に分離回収して、別途にリサイクルしてもよい。
【0143】
溶剤処理部510の処理槽内において、スクリーンF1より下位に沈降したパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pは、それぞれ、シート20等の粗大片Lが外部に排出されたのち、溶剤120と共に、溶剤処理部510の処理槽外に排出し、濾過部560で濾過されて溶剤120が除かれたのち、ヒータ、減圧ポンプ、ファン等を用いた乾燥手段を備えた乾燥部550に送給される。
溶剤処理部510から排出されたパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pを含んだ溶剤120は、濾過部560で濾過によって溶剤120とパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pとに分離される。そして、濾過部560で溶剤120と分離したパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pは、乾燥部550に送給され、そこで熱風乾燥、減圧乾燥等により乾燥され脱溶剤化される。
なお、
図3においては、説明を分かりやすくするために、乾燥部550を複数記載しているが、分離装置において複数の乾燥部550を備えていることを意味するものではなく、乾燥部550は1つ以上であればよい。また、本発明を実施する場合には、溶剤処理部510に濾過部560を設けてもよい。濾過部560での濾過手段は、例えば、フィルタ濾過や沈降分離である。
【0144】
また、本実施例1では、濾過部560は、蒸留部530と接続しており、濾過部560から排出される溶剤120は蒸留部530に送給され、そこで蒸留される。
濾過部560から排出される溶剤120は、濾過部560と蒸留部530の間に配設される溶剤回収タンクで一度回収され、そこから、蒸留部530に送給されるようにしてもよい。
乾燥部550でパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pを乾燥させたときの排気の溶剤ガスについても、それを冷却して溶剤回収タンク、蒸留部530に送給してもよい。
被処理物110を浸漬処理した溶剤120には被処理物110に含まれていた接着剤が溶解されていることにより、蒸留部530において、被処理物110が浸漬処理された後の溶剤120を蒸留することで、接着剤が析出するから、そこで接着剤が分離回収される。
【0145】
更に、本実施例1では、蒸留部530は溶剤循環路540によって溶剤タンクT1に接続しており、その溶剤循環路540の途中には異物除去の微細目のフィルタを備えた濾過部が配設されいる。
これより、蒸留部530で蒸発した溶剤ガスが冷却され凝縮されることにより蒸留された液体の溶剤120は、濾過部のフィルタで細かな異物が濾過された後、溶剤タンクT1に送液されることで、再度、被処理物110を浸漬処理する溶剤120として再利用される。
【0146】
そして、本実施例1において、乾燥部550で乾燥された吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片Pは、更に、吸収体分離部520に搬送され、吸収体分離部520の処理槽内に投入される。
図5に示すように、吸収体分離部520の処理槽は、吸収体分離回収手段としてのスクリーンF2を備える。スクリーンF2は、SAP12を通過させるも、パルプ繊維11は通過させない径の複数の丸穴等の孔やスリット等の開口を有するもので、目開きが1mm程度のものである。
【0147】
本実施例1において、吸収体分離部520は、スクリーンF2が設置されている分離部520aと、微細片Pが投入される上方に開口した開口部Aが形成され、分離部520aに配設したスクリーンF2より下位で分離部520aに連続して繋がり、スクリーンF2より下位に微細片Pを送給する投入部520bとから構成されている。
スクリーンF2が設置された分離部520aには、スクリーンF2よりも上位に、溶剤220に浮上したSAP12をオーバーフローで外部に排出するための上部排出部Bが設けられ、また、スクリーンF2よりも下位の下部には、パルプ繊維11を排出するための開閉自在な下部排出部Cが設けられている。更に、スクリーンF2よりも上位であって、上部排出部Bよりも下位には、パルプ繊維11を下部排出部Cから排出するために溶剤220が注入される、上方に開口した注入口部Dが設けられている。
【0148】
なお、吸収体分離部520には、
図3に示したように、溶剤220を収容する溶剤タンクT2がポンプ及びバルブ等を介して接続されており、バルブの開状態ではポンプの駆動により溶剤タンクT2内の溶剤220が吸収体分離部520の処理槽内に供給され、ポンプの停止状態やバルブの閉状態では、溶剤タンクT2内の溶剤220が処理槽内に供給されるのが停止されるようになっている。これより、溶剤220は、溶剤タンクT2からポンプで送液され吸収体分離部520の開口部Aや注入口部Dから処理槽内に入れられる。なお、開口部Aへの注入時は少なくとも下部排出部Cは閉じられた状態にある。
【0149】
図5に示すように、本実施例1では、まず、吸収体分離部520の処理槽の開口部Aに微細片Pを投入し、続いて、吸収体分離部520と溶剤タンクT2との接続間に配設したバルブを開とし、また、ポンプを作動させることにより、溶剤タンクT2内の溶剤220を吸収体分離部520の開口Aから入れて、吸収体分離部520の処理槽内のスクリーンF2より下位の所定位置まで充填し、吸収体分離部520の処理槽内で微細片Pを溶剤220に浸漬させる。即ち、本実施例1では、上述した吸収体分離部520の分離部520a及び投入部520bの構成により、吸収体分離部520の開口Aから投入された微細片Pは、分離部520aに設置したスクリーンF2より下位に送り込まれて、スクリーンF2の下位で溶剤220に浸漬する。
このとき、好ましくは、微細片Pが浸漬された溶剤220を撹拌機等の攪拌手段で攪拌する。或いは、処理槽自体を揺動し溶剤220に振動を与える。これより、微細片Pが分散されてSAP12とパルプ繊維11の分離が促進され、処理効率が向上する。なお、このときの攪拌、振動で溶剤220の液面、液跳ねがスクリーンF2に達しないように、処理槽内に注入される溶剤220の液位は、スクリーンF2と十分な間隔がとられる。
【0150】
ここで、本実施例1では、溶剤220として、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12よりも比重の高い、比重が1.5以上、1.8以下のハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤220が使用される。好ましくは、テトラクロロエチレンである。
【0151】
これより、吸収体分離部520の処理槽において、投入された微細片Pが溶剤220に浸漬され、溶剤220が攪拌されると、溶剤220中で微細片Pが分散され、懸濁状となる。そして、微細片Pが溶剤220中に分散されたところで攪拌を止めると、SAP12の比重が溶剤220より小さく、また、SAP12はパルプ繊維11の比重及び寸法よりも小さく、溶剤220を吸液しないこともあって、微細片Pのうち粒状のSAP12が液面に浮上してくる。
【0152】
次に、パルプ繊維11よりも上位にSAP12が浮上してきたところで、吸収体分離部520の投入部520bの開口Aから溶剤220を追加して、分離部520a内で溶剤220の液面を上昇させると、粒状のSAP12はスクリーンF2を通過する一方で、綿状のパルプ繊維11はスクリーンF2を通過することなく、スクリーンF2より下位に滞留する。更に、溶剤220の注入で分離部520a内の溶剤220の液面を上部排出部Bの位置まで上昇させると、スクリーンF2を通過したSAP12が浮いた溶剤220は上部排出部Bからオーバーフローし外部に排出される。
即ち、溶剤220の注入によりスクリーンF2を通過したSAP12を溶剤220と共に上部排出部Bからオーバーフローさせることで、SAP12等の粒子状物P2を溶剤220と共に外部排出部Bから排出させる。
続いて、SAP12等の粒子状物P2を溶剤220と共に上部排出部Bから排出したところで、下部排出部C及び注入口部Dを開口し、吸収体分離部520の注入口部Dの開口から溶剤220を注入することによりスクリーンF2の上から溶剤220を入れて、開口した下部排出部Cからパルプ繊維11等の繊維状物P1を溶剤220と共に排出させる。
【0153】
こうして、本実施例1では、吸収体分離部520においてスクリーンF2を設置し、その処理槽内に溶剤220を入れ、また、スクリーンF2の位置よりも下位で微細片Pを投入して、微細片Pを比重が1.5以上、1.8以下のテトラクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤220に浸漬させたことにより、その溶剤220との比重差による重力によって、また、スクリーンF2の孔より小寸法であることで、微細片PのうちSAP12がスクリーンF2より上位に浮上する一方、微細片Pのうちパルプ繊維11がスクリーンF2より下位で滞留するから、スクリーンF2より上位に浮上したSAP12等の粒状物P2と、スクリーンF2より下位で滞留するパルプ繊維11等の繊維状物P1とに分離される。よって、それらSAP12等の粒状物P2と、パルプ繊維11等の繊維状物P1とを別途に回収できる。
即ち、スクリーンF2を通過してスクリーンF2より上位で液面に浮上したSAP12等の粒子状物P2と、スクリーンF2より下位で滞留するパルプ繊維11等の繊維状物P1とに分離されることで、SAP12等の粒子状物P2は上部排出部Bから排出し、また、パルプ繊維11等の繊維状物P1は下部排出部Cから排出することで、SAP12等の粒子状物P2と、パルプ繊維11等の繊維状物P1とを別途に回収できる。
【0154】
オーバーフローによって分離部520aの上部排出部Bから排出されたSAP12等の粒子状物P2を含んだ溶剤220は、濾過部562に送液され、そこで、溶剤220とSAP12等の粒子状物P2とに分離される。そして、溶剤220と分離したSAP12等の粒子状物P2は、乾燥部550に送給され、そこで、熱風乾燥、減圧乾燥等により乾燥され、脱溶剤化される。更に、乾燥されたSAP12等の粒子状物P2は、糸ゴム25等のその他の構成材料を含む場合があることから、スクリーン等でその他の構成材料を除去する。これより、高品位なSAP12が回収される。
【0155】
分離部520aの下部排出部Cから排出されたパルプ繊維11等の繊維状物P1を含んだ溶剤220についても、SAP12等の粒子状物P2とは別途、濾過部561に送液され、そこで、溶剤220とパルプ繊維11等の繊維状物P1とに分離される。そして、溶剤220と分離したパルプ繊維11等の繊維状物P1は、乾燥部550に送給され、そこで、熱風等により乾燥され、脱溶剤化される。更に、乾燥された微小繊維のパルプ繊維11等の繊維状物P1は、糸ゴム25、レーヨン・合成繊維等の短繊維等のその他の構成材料を含む場合があることから、スクリーン等でその他の構成材料を除去する。これより、高品位なパルプ繊維11が回収される。
濾過部561,562での濾過手段は、例えば、フィルタ濾過や沈降分離である。
【0156】
なお、それらSAP12やパルプ繊維11と分別した糸ゴム25、レーヨン、合成繊維等の短繊維等のその他の構成材料については、別途分別回収されたシート20等の粗大片Lと共に、固形燃料、プラスチック原料、生成油として、サーマルリサイクル、マテリアルリサイクル、またはケミカルリサイクルすることが可能である。
【0157】
そして、本実施例1では、濾過部561,562は、溶剤循環路540によって溶剤タンクT2と接続しており、また、その溶剤循環路540の途中には図示しない微細目のフィルタが配設し、濾過部561,562から排出された溶剤220は微細目のフィルタで細かい異物が濾過されたのち、溶剤タンクT2に送給されることで、パルプ繊維11及びSAP12を湿潤状態で分離させる溶剤220として再利用される。なお、乾燥部550でパルプ繊維11等の繊維状物P1やSAP12等の粒子状物P2を乾燥させたときの排気の溶剤ガスについても、それを冷却して溶剤タンクT2に送給して、パルプ繊維11及びSAP12を分離処理するための溶剤220として再利用してもよい。
【0158】
特に、シート20と分離されたパルプ繊維11及びSAP12は、乾燥部550において乾燥させ溶剤120を揮発させてから、吸収体分離部520に供されることにより、パルプ繊維11及びSAP12に付着した接着剤が溶解された溶剤120が、吸収体分離部520パルプ繊維11とSAP12との分離に使用される溶剤220に混入することがない。よって、吸収体分離部520にてパルプ繊維11とSAP12との分離に使用された溶剤220を回収して再利用する際でも、接着剤が溶解された溶剤120と分離する精製を必要としないから、装置を簡易化でき、低コスト化できる。
【0159】
こうして、本実施例1では、SAP12よりも比重の高い溶剤220中でのSAP12の浮上及びスクリーンF2を利用し、パルプ繊維11とSAP12とを分離するものであり、パルプ繊維11及びSAP12に対し極めて低負荷なソフトな条件で、シート20、パルプ繊維11、SAP12等を劣化させるエネルギを投じることなくSAP12とパルプ繊維11を高精度で効率的に分離できる。よって、極めて高品位にパルプ繊維11及びSAP12を回収できる。
【0160】
次に、本実施の形態における未使用の吸収性物品の構成材料を分離回収する分離回収方法及び分離回収装置の別の実施例について、
図6を参照して、説明する。
本実施例2では、スクリーンF1等の分離回収手段を備える溶剤処理部510としての処理槽は、その槽内に、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12と溶剤120を通過させるもシート20を通過させない径の孔を有するスクリーンF1を周面に配設した円筒状の回転ドラムRが軸支されたものである。溶剤処理部510の処理槽には、溶剤120を収容する溶剤タンクT1がポンプ及びバルブ等を介して接続されており、バルブの開状態ではポンプの駆動により溶剤タンクT1内の溶剤120が溶剤処理部510の回転ドラムR内に供給され、ポンプの停止状態やバルブの閉状態では、溶剤タンクT1内の溶剤120が回転ドラムRに供給されるのが停止されるようになっている。これより、回転ドラムRにおいて被処理物110が浸漬される溶剤120は、溶剤タンクT1からポンプで汲み上げられて回転ドラムR内に所定の液位まで入れられる。本実施例2でも、溶剤120として、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12よりも小さい比重である、比重が0.6以上、0.8以下の石油系のドライクリーニング溶剤120を使用した。
【0161】
この回転ドラムR内に被処理物110を収容し、溶剤処理部510と溶剤タンクT1との接続間に配設したバルブを開とし、また、ポンプを作動させることにより、溶剤タンクT1内の溶剤120を回転ドラムR内に所定の液位まで入れ回転ドラムRを回転させることで被処理物110を含んだ溶剤120が攪拌される。これより、回転ドラムR内で被処理物110が溶剤120に浸漬してその溶剤120に被処理物110中の接着剤が溶解することにより被処理物110が分解、解離、解体され、被処理物110の構成材料が溶剤120中に散ける。そして、回転ドラムRの遠心力により、被処理物110の構成材料のうち、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12並びに溶剤120は回転ドラムRの周面に設けたスクリーンF1を通過して回転ドラムRの外に排出される一方、シート20は回転ドラムR内に残留することにより、シート20等の粗大片Lが、吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12等の微細片P並びに溶剤120とから分離される。
【0162】
溶剤処理部510において回転ドラムR内に残留したシート20等の粗大片Lは、例えば、風流、液流等を利用し、溶剤処理部510の外部に排出して回収する。溶剤処理物510から排出されたシート20等の粗大片Lは、乾燥手段を備えた乾燥部550に搬送され、そこで、熱風等より乾燥される。そして、固形燃料、プラスチック原料、または生成油として、サーマルリサイクル、マテリアルリサイクル、またはケミカルリサイクルされる。
なお、乾燥されたシート20等の粗大片Lは、糸ゴム25、ラベル等のその他の構成材料を含む場合があることから、更に、不織布やフィルムのシート20と、それら糸ゴム25等のその他の構成材料とを分別し、別個に分離回収して、別途にリサイクルしてもよい。
【0163】
溶剤処理部510において回転ドラムR外の外胴に排出されたパルプ繊維11及びSAP12を含んだ溶剤120は、溶剤処理部510から排出されて更に液体サイクロンHCに送られ、そこで、パルプ繊維11及び溶剤120と、SAP12とに分離される。
液体サイクロンHCは、円錐体の上部側面に流入口を設け、また、円錐体の下端に下部排出口を設け、更に、円錐体の上面中心部に上部排出口を設けているものである。液体サイクロンHCの流入口にパルプ繊維11及びSAP12を含んだ溶剤120が圧送されると、流体中の粒状のSAP12が渦流の遠心力で円錐体の内面に沿って旋回しながら降下して下部排出口から排出され、パルプ繊維11が溶剤120と共に下部付近で反転上昇して上部排出口から排出されることにより、パルプ繊維11及び溶剤120と、SAP12とに分離される。
【0164】
液体サイクロンHCの下部排出部から排出されたSAP12等の粒子状物P2は、乾燥部550に送給され、そこで、熱風等により乾燥され、脱溶剤化される。更に、乾燥されたSAP12等の粒子状物P2は、糸ゴム25等のその他の構成材料を含む場合があることから、スクリーン等でその他の構成材料を除去する。これより、高品位なSAP12が回収される。
【0165】
液体サイクロンHCの上部排出部から排出されたパルプ繊維11等の繊維状物P1を含んだ溶剤120は、濾過部561に送液され、そこで、溶剤120とパルプ繊維11等の繊維状物P1とに分離される。そして、溶剤120と分離したパルプ繊維11等の繊維状物P1は、乾燥部550に送給され、そこで、熱風等により乾燥され、脱溶剤化される。更に、乾燥された微小繊維のパルプ繊維11等の繊維状物P1は、糸ゴム25、レーヨン・合成繊維等の短繊維等のその他の構成材料を含む場合があることから、スクリーン等でその他の構成材料を除去する。これより、高品位なパルプ繊維11が回収される。
【0166】
本実施例2では、濾過部561は、蒸留部530と接続しており、濾過部561から排出された溶剤120は蒸留部530に送給され、そこで蒸留される。
濾過部561から排出された溶剤120は、濾過部561と蒸留部530の間に配設される溶剤回収タンクで一度回収され、そこから、蒸留部530に送給されるようにしてもよい。
乾燥部550でシート120、パルプ繊維11、SAP12等を乾燥させたときの排気の溶剤ガスについても、それを冷却して溶剤回収タンク、蒸留部530に送給してもよい。
被処理物110を浸漬処理した溶剤120には被処理物110に含まれていた接着剤が溶解されていることにより、蒸留部530において、被処理物110の浸漬処理後の溶剤120を蒸留することで、接着剤が析出するから、そこで接着剤が分離回収される。
【0167】
更に、本実施例2でも、蒸留部530は溶剤循環路540によって溶剤タンクT1に接続しており、その溶剤循環路540の途中には異物除去の微細目のフィルタを備えた濾過部が配設されいる。
これより、蒸留部530で蒸発した溶剤ガスが冷却され凝縮されることにより蒸留された液体の溶剤120は、濾過部のフィルタで細かな異物が濾過された後、溶剤タンクT1に送液されることで、再度、被処理物110を浸漬処理する溶剤120として再利用される。
【0168】
こうして、本実施例2では、溶剤処理部510における回転ドラムRの遠心力、スクリーンF1及び液体サイクロンHCを利用し、シート20と、パルプ繊維11と、SAP12とに分離するものであり、より高精度で分離できる。
【0169】
ところで、本発明者らは、被処理物110の接着剤を溶解させる溶剤120について、表1に示す種々の溶剤120を使用して検討を行っている。
ここでは、吸収性物品の被処理物110としてオムツを使用し、それを表1に示す各種溶剤(溶剤120の使用量は統一)に浸漬した。なお、被処理物110の溶剤120への浸漬は、被処理物110であるオムツを平坦に展開した状態で容器に収容し、そこにオムツ全体が浸る十分な液位となる量の溶剤を入れて、攪拌した。
【0170】
【0171】
表1に示す何れの溶剤120でも、被処理物110を投入し、溶剤120を攪拌すると、被処理物110中の接着剤が溶剤120に溶解することで、被処理物110が分解、解体され、その構成材料が散らけた。
ここで、各溶剤120について、被処理物110を溶剤120に浸漬させた際の被処理物110への溶剤120の浸透性を目視で確認し、良好(A)、可(B)、不可(C)の3段階で評価した。
また、溶剤120への浸漬後の被処理物110から散らけて分離したシート20(PP/PE)、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料を取り出して目視で接着剤の残存を確認し、接着剤の溶解性について、接着剤の残存がない:良好(A)、部分的に接着剤の残存がある:可(B)、接着剤の残存が多い:不可(C)の3段階で評価した。
更に、取り出したシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料を自然乾燥させ、速乾性に優れる:良好(A)、速乾性がある:可(B)、速乾性に劣る:不可(C)の3段階で評価した。
【0172】
また、溶剤120の臭いについて、臭いが全く気にならないもの:良好(A)、臭いを感知できるが弱い臭いのもの:可(B)、強い臭いのもの:不可(C)の3段階で評価した。更に、取り出して乾燥されたシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料について溶剤120の臭い残りを確認し、臭いが全く気にならないもの:良好(A)、臭いを感知できるか弱い臭いのもの:可(B)、強い臭いが残存しているもの:不可(C)の3段階で評価した。
【0173】
加えて、取り出して乾燥されたシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料についての溶剤120の色残りを目視で確認し、変色がないもの:良好(A)、弱い変色があるが殆ど気にならいもの:可(B)、変色が気になるもの:不可(C)の3段階で評価した。
また、溶剤120の酸化劣化による変化を確認し、変色及び硬化がなく酸化劣化し難いもの:良好(A)、変色または硬化が僅かにあるもの:可(B)、変色または硬化があり酸化劣化しやすいもの:不可(C)の3段階で評価した。
更に、取り出して乾燥されたシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料についての性状変化について、何れの構成材料も性状変化がないもの:良好(A)、僅かな性状があるが殆ど気にならい程度のもの:可(B)、性状変化が生じ再利用に適さないもの:不可(C)の3段階で評価した。
【0174】
表1に示したように、ドライクリーニング溶剤に使用されているドライソルベント・ハイソフトやクリーニング溶剤NW-Sといったパラフィン含有の石油系溶剤や、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレンといったハロゲン化炭化水素系溶剤については、何れも被処理物110への浸透性が良く、被処理物110中の接着剤を十分に溶解できて接着剤を残存させることがなく、また、速乾性も良いものであった。特に、分離回収した構成材料に、溶剤120の臭いや色が残らないものであり、更に、溶剤120の酸化劣化が生じ難いことで再利用性にも適し、また、被処理物110の構成材料を変化させないものであった。
【0175】
これに対し、灯油については、被処理物110への浸透性、接着剤の溶解性は良いものの、接着剤の速乾性、臭い残り、色残り、溶剤120の酸化劣化において、何れも、ドライクリーニング溶剤に使用されている石油系溶剤やテトラクロロエチレン、トリクロロエチレンといったハロゲン化炭化水素系溶剤と比較すると劣るものであった。
したがって、溶剤120にはドライクリーニング溶剤に使用されている石油系溶剤やテトラクロロエチレン、トリクロロエチレンといったハロゲン化炭化水素系溶媒の使用が好適である。
【0176】
即ち、灯油等では、特有の強烈な臭気があり、乾燥後でもシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料に溶剤120の特有な臭いが残存し、また、空気で酸化して硬化しやすく、酸化劣化しやすいことで繰り返しの使用に不適であるのに対し、ドライクリーニング溶剤に使用されているパラフィン等の含有の石油系溶剤や、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒であれば、溶剤120の臭気がなく、取扱い性、作業環境性が良いうえ、シート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料に溶剤120の臭いが残存しないことから、広範囲の用途への再利用に好適であり、回収されたシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料は高品位なものとなる。また、それら溶剤自体も酸化劣化し難いから繰り返しの使用に好適であり、排液処分のコストを低減でき、溶剤120の使用が低コストで済む。
【0177】
そして、本発明者らの実験研究によれば、特に、ハロゲン化炭化水素系のテトラクロロエチレンは、パルプ繊維11及びSAP12を分離する吸収体分離溶剤220としても好適である。即ち、ハロゲン化炭化水素系のテトラクロロエチレンの溶剤220中では、粒子状のSAP12が浮上することで、SAP12の浮上及びスクリーンF2を利用し、パルプ繊維11及びSAP12に対し低負荷で、SAP12とパルプ繊維11を短時間で効率よく高精度に分離できる。よって、高品位なパルプ繊維11及びSAP12を回収できる。
【0178】
以上説明してきたように、上記実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法(再資源化方法)は、吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12を包んだシート20を接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解する溶剤処理工程(ステップS1)と、接着剤が溶解除去された吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を分離回収する分離回収工程(ステップS2)と、分離回収された構成材料のシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を乾燥する乾燥工程(ステップS3)とを具備するものである。
【0179】
上記実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、未使用の吸収性物品(被処理物110)の構成部材を接合している接着剤を溶剤120に溶解させて吸収性物品(被処理物110)から除去することによって吸収性物品(被処理物110)を解体しその構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を分離回収するものであるから、吸収性物品(被処理物110)の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品(被処理物110)が容易に分解されその構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等の解離、分離が容易となる。よって、未使用の吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等の回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品(被処理物110)の接着剤を除去することにより、SAP12等の構成材料が細粒化、微粉化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を手間をかけることなく精度よく分離回収できる。即ち、吸収性物品(被処理物110)のSAP12等の構成材料を細粒化、微粉化させることなく分離回収できる。よって、吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を高品位で分離回収できる。特に、吸収体10のSAP12やパルプ繊維11は細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の構成材料としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適であり、吸収性物品の吸収体10としての再資源化にも好適である。
【0180】
また、乾燥工程(ステップS3)の前に、吸収性物品(被処理物110)の構成材料を分離回収するものであり、湿式で吸収性物品(被処理物110)の構成材料を分離回収することから、乾式の場合と比較し、構成材料に対し低負荷、省エネルギな条件で分離精度よく構成材料を分離回収することが可能である。
【0181】
即ち、上記実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、分離回収工程(ステップS2)は、吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中で吸収性物品(被処理物110)の構成材料を分離するから、接着剤が溶解された溶剤120中で解体された吸収性物品(被処理物110)の構成材料を重力、遠心力、比重差等とスクリーンF1,F2等を使用した濾過分離を利用して、構成材料を分離することになる。よって、湿式での分離であるから、構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシート20と吸収体10とを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート20と吸収体10とを精度よく分離できることで、低コスト及び省エネルギで吸収体を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0182】
また、上記実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、分離回収工程(ステップS2)は、吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中でシート20と吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12とに分離するシート分離回収工程と、シート20と分離されたパルプ繊維11及びSAP12をSAP12よりも比重の高い溶剤220中でパルプ繊維11とSAP12とに分離する吸収体分離回収工程とを含むことから、まず、シート分離回収工程で、接着剤が溶解された溶剤120中で解体された吸収性物品(被処理物110)の構成材料を重力、遠心力、比重差等とスクリーンF1等を使用した濾過分離を利用して、シート20と吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12を分離することになる。また、続く吸収体分離回収工程で、SAP12よりも比重の高い溶剤220中におけるSAP12の浮上とスクリーンF2等を使用した濾過分離を利用して、パルプ繊維11とSAP12とを分離することになる。よって、湿式での分離であり、特に、SAP12に対し低負荷な条件、省エネルギでシート20とパルプ繊維11とSAP12とを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート20とパルプ繊維11とSAP12とを精度よく分離できることで、低コスト及び省エネルギでパルプ繊維11とSAP12を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。即ち、低負荷な条件でパルプ繊維11と高吸水性ポリマ12を回収効率良く分離できる。
特に、吸収体分離回収工程で使用される溶剤220は、その比重が1.6~1.8の範囲内のものであれば、その溶剤220中ではSAP12がすばやく浮上することにより、分離精度を良くでき、分離回収処理も短時間で済む。よって、分離効率を向上できる。
【0183】
吸収性物品(被処理物110)の接着剤を溶解させる溶剤120は、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤であれば、酸化劣化し難く繰り返しの再利用に好適であり、かつ、分離回収された構成材料のパルプ繊維11、及びSAP12等に溶剤120の臭いが残存し難いものとなる。したがって、低コスト化でき、また、分離回収された構成材料のパルプ繊維11、及びSAP12等は、その使途が限定されず、幅広い使途に再資源化できるものとなる。
【0184】
特に、吸収性物品(被処理物110)を浸漬処理する溶剤120、即ち、溶剤吸収性物品(被処理物110)の接着剤を溶解させる溶剤120は、その比重が0.7~1.5の範囲内のものであれば、吸収性物品(被処理物110)の構成材料を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中では吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12が沈降する。よって、その溶剤120中において、重力による沈降及びスクリーンF1等を利用した濾過分離によって構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシート20と吸収体10を精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート20と吸収体10とを精度よく分離できることで、低コスト及び省エネルギで吸収体10を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0185】
そして、シート20と分離されたパルプ繊維11及びSAP12は、乾燥させてから、吸収体分離回収工程に供されると、パルプ繊維11及びSAP12に付着した接着剤が溶解された溶剤120が、吸収体分離回収工程でパルプ繊維11とSAP12との分離に使用される溶剤220に混入することがない。よって、吸収体分離回収工程でパルプ繊維11とSAP12との分離に使用された溶剤220を回収して再利用する際でも、接着剤が溶解された溶剤120と分離する精製を必要としないから、低コスト化できる。
【0186】
上記実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収方法によれば、更に、接着剤が溶解した溶剤120を蒸留し、接着剤を分離回収する接着剤分離回収工程(ステップS4)を具備することで、吸収性物品の接着剤を再資源化できるから、更に資源を有効に利用できる。
加えて、接着剤分離回収工程(ステップS4)で接着剤と分離された溶剤120は、溶剤処理工程(ステップS1)で吸収性物品(被処理物110)を浸漬処理する溶剤120として再利用されることで、省資源で済み、低コスト化できる。
【0187】
また、上記実施の形態は、吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12を包んだシート20を接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解する溶剤処理部510と、接着剤が溶解除去された吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を分離回収するスクリーンF1,F2等を用いた分離回収手段と、分離回収された構成材料のシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を乾燥するヒータ、減圧ポンプ、ファン等を用いた乾燥手段とを具備する吸収性物品の構成材料の分離回収装置(再資源化装置)の発明と捉えることもできる。
【0188】
上記実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、未使用の吸収性物品(被処理物110)の構成部材を接合している接着剤を溶剤120に溶解させて吸収性物品(被処理物110)から除去することによって吸収性物品(被処理物110)を解体しその構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を分離回収するものであるから、吸収性物品(被処理物110)の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品(被処理物110)が容易に分解されその構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等の解離、分離が容易となる。よって、未使用の吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等の回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品(被処理物110)の接着剤を除去することにより、SAP12等の構成材料が細粒化、微粉化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を精度よく分離回収できる。即ち、吸収性物品(被処理物110)のSAP12等の構成材料を細粒化、微粉化させることなく分離回収できる。よって、吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を高品位で分離回収できる。特に、吸収体10のSAP12やパルプ繊維11は細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の構成材料としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適であり、吸収性物品の吸収体10としての再資源化にも好適である。
【0189】
また、乾燥手段による乾燥の前に、吸収性物品(被処理物110)の構成材料を分離回収するものであり、湿式で吸収性物品(被処理物110)の構成材料を分離回収することから、乾式の場合と比較し、構成材料に対し低負荷、省エネルギな条件で分離精度よく構成材料を分離回収することが可能である。
【0190】
即ち、上記実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、分離回収手段では、吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中で吸収性物品(被処理物110)の構成材料を分離するから、接着剤が溶解された溶剤120中で解体された吸収性物品(被処理物110)の構成材料を重力、遠心力、比重差等とスクリーンF1,F2等を使用した濾過分離を利用して、構成材料を分離することになる。よって、湿式での分離であるから、構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシート20と吸収体10とを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート20と吸収体10とを精度よく分離できることで、低コスト及び省エネルギで吸収体を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0191】
また、上記実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、分離回収手段は、吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中でシート20と吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12とに分離するスクリーンF1等を用いたシート分離回収手段と、シート20と分離されたパルプ繊維11及びSAP12をSAP12よりも比重の高い溶剤220中でパルプ繊維11とSAP12とに分離するスクリーンF2等を用いた吸収体分離回収手段とを含むことから、まず、シート分離回収手段で、接着剤が溶解された溶剤120中で解体された吸収性物品(被処理物110)の構成材料を重力、遠心力、比重差等とスクリーンF1等を使用した濾過分離を利用して、シート20と吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12を分離することになる。また、吸収体分離回収手段で、SAP12よりも比重の高い溶剤220中におけるSAP12の浮上とスクリーンF2等を使用した濾過分離を利用して、パルプ繊維11とSAP12とを分離することになる。よって、湿式での分離であり、特に、SAP12に対し低負荷な条件、省エネルギでシート20とパルプ繊維11とSAP12とを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート20とパルプ繊維11とSAP12とを精度よく分離できることで、低コスト及び省エネルギでパルプ繊維11とSAP12を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。即ち、低負荷な条件でパルプ繊維11と高吸水性ポリマ12を回収効率良く分離できる。
特に、吸収体分離回収手段で使用される溶剤220は、その比重が1.6~1.8の範囲内のものであれば、その溶剤220中ではSAP12がすばやく浮上することにより、分離精度を良くでき、分離回収処理も短時間で済む。よって、分離効率を向上できる。
【0192】
そして、シート20と分離されたパルプ繊維11及びSAP12は、乾燥させてから、吸収体分離回収手段に供されると、パルプ繊維11及びSAP12に付着した接着剤が溶解された溶剤120が、吸収体分離回手段でパルプ繊維11とSAP12との分離に使用される溶剤220に混入することがない。よって、吸収体分離回収手段でパルプ繊維11とSAP12との分離に使用された溶剤220を回収して再利用する際でも、接着剤が溶解された溶剤120と分離する精製を必要としないから、低コスト化できる。
【0193】
また、上記実施の形態の吸収性物品の構成材料の分離回収装置によれば、更に、接着剤が溶解した溶剤120を蒸留し、接着剤を分離回収する接着剤分離回収手段としての蒸留部530を具備することで、吸収性物品の接着剤を再資源化できるから、更に資源を有効に利用できる。
加えて、接着剤分離回手段によって接着剤と分離された溶剤120を、溶剤処理部510で吸収性物品(被処理物110)を浸漬処理する溶剤120として再利用させる溶剤循環路540を具備することで、接着剤分離回収手段で接着剤と分離された溶剤120は、吸収性物品(被処理物110)を浸漬処理する溶剤120として再利用されることで、省資源で済み、低コスト化できる。
【0194】
更に、上記実施の形態は、吸収体10としてのパルプ繊維11及び高吸水性ポリマ(SAP)12を包んだシート10を接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解させる溶剤処理工程(ステップS1)と、接着剤が溶解除去された吸収性物品(被処理物110)のシート10とパルプ繊維11とSAP12を分離して回収する分離回収工程(ステップS2)と、分離回収されたパルプ繊維11とSAP12を乾燥する乾燥工程(ステップS3)とを具備する未使用吸収体10のリサイクル品の製造方法の発明と捉えることもできる。
【0195】
上記実施の形態の未使用吸収体10のリサイクル品の製造方法によれば、未使用の吸収性物品(被処理物110)の構成部材を接合している接着剤を溶剤120に溶解させて吸収性物品(被処理物110)から除去することによって吸収性物品(被処理物110)を解体しその構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を分離回収するものであるから、吸収性物品(被処理物110)の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品(被処理物110)が容易に分解されその構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等の解離、分離が容易となる。よって、未使用の吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるパルプ繊維11及びSAP12の回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品(被処理物110)の接着剤を除去することにより、SAP12等の構成材料が細粒化、微粉化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるパルプ繊維11及びSAP12等を精度よく分離回収できる。即ち、吸収性物品(被処理物110)のSAP12等の構成材料を細粒化、微粉化させることなく分離回収できる。よって、吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるパルプ繊維11及びSAP12を高品位で分離回収できる。特に、吸収体10のSAP12やパルプ繊維11は細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の構成材料としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、分離回収されたリサイクル品は高品位でマテリアルリサイクルとして、吸収性物品の吸収体10としての再資源化にも好適なものとなる。
【0196】
ところで、上記実施の形態では、被処理物110を溶剤120に浸漬することにより、被処理物110の構成部材を接合していた接着剤を溶剤120に溶かす溶剤処理工程(ステップS1)を行い、シート20、綿状のパルプ繊維11、粒状のSAP12といった構成材料を個別に分離回収する分離回収工程(ステップS2)を行ってから、分離回収した構成材料を各々或いはまとめて乾燥する乾燥工程(ステップS3)を行うものである。
【0197】
しかし、本発明を実施する場合には、被処理物110の溶剤120への浸漬により接着剤が除去された被処理物110の構成材料を乾燥させてから、シート20、綿状のパルプ繊維11、粒状のSAP12といった構成材料を個別に分離回収してもよい。
即ち、
図6に示すように、実施の形態の変形例に係る分離回収方法は、被処理物110の構成部材を接合している接着剤を溶剤120に溶かす溶剤処理工程(ステップS1)と、接着剤が除去された被処理物110の構成材料を乾燥する乾燥工程(ステップS21)と、乾燥された被処理物の構成材料を個別に分離回収する分離回収工程(ステップS22)とを有し、溶剤処理工程(ステップS1)後に被処理物110の構成材料を乾燥する乾燥工程(ステップS21)を行ってから、被処理物110の構成材料を分離回収する分離回収工程(ステップS3)を行うものである。
【0198】
また、実施の形態の変形例に係る分離回収装置は、被処理物110を溶剤に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解させる溶剤処理部510と、接着剤の溶剤120への溶解により接着剤が除去された被処理物110の構成材料を乾燥する乾燥手段と、乾燥した構成材料を分離回収する分離回収手段とを有する。
【0199】
この変形例では、溶剤処理部510で被処理物110を溶剤120に浸漬し、接着剤を溶剤120に溶出させた後は、被処理物110の構成材料をまとめて回収し、乾燥される。
被処理物110の構成材料の乾燥は、溶剤処理部510から被処理物110の構成材料をまとめて排出して回収し、別の場所で乾燥させてもよいし、溶剤処理部510の処理槽内から接着剤が溶解された溶剤120を排出し、その処理槽内で残存した被処理物110の構成材料をまとめて乾燥させてもよい。
なお、このとき排出、回収された溶剤120も、蒸留部530で蒸留することで接着剤を固体として析出させ、溶剤120と接着剤が個別に分離回収される。接着剤と分離された溶剤120は、再び、溶剤処理部510で接着剤を溶出させる溶剤120として再利用される。
【0200】
こうして接着剤が除去された被処理物110を乾燥、脱溶剤化した後、各構成材料を分離回収する。
各構成材料を分離回収する手段としては、構成材料の寸法差、比重差(嵩密度)、抵抗差、落下差等を利用して分離でき、例えば、上記実施の形態と同様、スクリーンF1,F2等を使用できる。
または、気流を利用して分離することも可能であり、乾燥された被処理物110の構成材料に空気流を当て、構成材料の比重差、抵抗差を利用し、構成材料を移動分離することも可能である。或いは、例えば、サイクロン等の風力分級機を使用することも可能である。
特に、変形例では、乾式状態で、吸収性物品の構成材料を分離するから、分離精度の向上を可能とする。
【0201】
こうした変形例に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法は、吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12を包んだシート20を接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解する溶解工程(ステップS1)と、接着剤が溶解除去された吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等をまとめて乾燥する乾燥工程(ステップS21)と、乾燥された吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を分離回収する分離回収工程(ステップS22)とを具備するものである。
【0202】
また、変形例に係る吸収性物品の構成材料の分離回収装置は、吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12を包んだシート20を接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解する溶剤処理部510と、接着剤が溶解除去された吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等をまとめて乾燥するヒータ、減圧ポンプ、ファン等を用いた乾燥手段と、乾燥された吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を分離回収するスクリーンF1,F2等を用いた分離回収手段とを具備するものである。
【0203】
こうした変形例に係る吸収性物品の構成材料の分離回収方法及び分離回収装置においても、未使用の吸収性物品(被処理物110)の構成部材を接合している接着剤を溶剤120に溶解させて吸収性物品(被処理物110)から除去することによって吸収性物品(被処理物110)を解体しその構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を分離回収するものであるから、吸収性物品(被処理物110)の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品(被処理物110)が容易に分解されその構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等の解離、分離が容易となる。よって、未使用の吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等の回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品(被処理物110)の接着剤を除去することにより、SAP12等の構成材料が細粒化、微粉化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を精度よく分離回収できる。即ち、吸収性物品(被処理物110)のSAP12等の構成材料を細粒化、微粉化させることなく分離回収できる。よって、吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を高品位で分離回収できる。特に、吸収体10のSAP12やパルプ繊維11は細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の構成材料としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適であり、吸収性物品の吸収体10としての再資源化にも好適である。
【0204】
また、上記変形例は、吸収体10としてのパルプ繊維11及び高吸水性ポリマ(SAP)12を包んだシート10を接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解させる溶剤処理工程(ステップS1)と、接着剤が溶解除去された吸収性物品(被処理物110)のパルプ繊維11とSAP12とシート20をまとめて乾燥する乾燥工程(ステップS21)と、乾燥された吸収性物品(被処理物110)のパルプ繊維11とSAP12を分離して回収する分離回収工程(ステップS22)とを具備する未使用吸収体10のリサイクル品の製造方法の発明と捉えることもできる。
【0205】
上記実施の形態の未使用吸収体10のリサイクル品の製造方法によれば、未使用の吸収性物品(被処理物110)の構成部材を接合している接着剤を溶剤120に溶解させて吸収性物品(被処理物110)から除去することによって吸収性物品(被処理物110)を解体しその構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等を分離回収するものであるから、吸収性物品(被処理物110)の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品(被処理物110)が容易に分解されその構成材料であるシート20、パルプ繊維11、及びSAP12等の解離、分離が容易となる。よって、未使用の吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるパルプ繊維11及びSAP12の回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品(被処理物110)の接着剤を除去することにより、SAP12等の構成材料が細粒化、微粉化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるパルプ繊維11及びSAP12等を精度よく分離回収できる。即ち、吸収性物品(被処理物110)のSAP12等の構成材料を細粒化、微粉化させることなく分離回収できる。よって、吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるパルプ繊維11及びSAP12を高品位で分離回収できる。特に、吸収体10のSAP12やパルプ繊維11は細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の構成材料としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、分離回収されたリサイクル品は高品位でマテリアルリサイクルとして、吸収性物品の吸収体10としての再資源化にも好適なものとなる。
【0206】
ところで、上記説明してきた吸収性物品は、ホットメルト接着剤を使用したヒートシールによりシート20を接合することを前提とするものであるが、超音波振動及び圧力によりシート20を溶融して接合する超音波シールによって、吸収体10を内包したシート20を接合することで、吸収性物品の構成材料を分離回収する手間、工程数を簡素化でき、吸収性物品の構成材料の吸収体10のSAP12やパルプ繊維11の回収率を向上させることができる。
【0207】
なお、本発明を実施するに際しては、吸収性物品の分離回収方法、分離回収装置及び吸収体10のリサイクル品の製造方法のその他の部分の構成、組成、配合、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等について、本実施の形態及びその変形例並びに実施例に限定されるものではない。また、本実施の形態及びその変形例並びに実施例で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0208】
10 吸収体
11 パルプ繊維
12 高吸水性ポリマ(SAP)
20 シート
110 被処理物(吸収性物品)