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特開2023-183952吸収性物品のリサイクル方法及びリサイクル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183952
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】吸収性物品のリサイクル方法及びリサイクル装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20231221BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20231221BHJP
   B09B 101/67 20220101ALN20231221BHJP
【FI】
B09B5/00 Z ZAB
B29B17/02
B09B101:67
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097776
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】508047738
【氏名又は名称】新和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】弁理士法人Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安野 民雄
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
【Fターム(参考)】
4D004AA07
4D004AA12
4D004AC04
4D004BA03
4D004BA07
4D004BA09
4D004CA02
4D004CA41
4D004CC15
4D004DA20
4F401AC20
4F401AD07
4F401BA04
4F401BA13
4F401CA13
4F401CA46
4F401CA55
4F401EA52
4F401EA55
4F401FA04Z
(57)【要約】
【課題】未使用の吸収性物品から高品位なリサイクル品を得ること。
【解決手段】吸収性物品のリサイクル方法は、吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12を包んだシート20を接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解する溶剤処理工程(ステップS1)と、接着剤が溶解除去された吸収性物品(被処理物110)をシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離して回収する分離回収工程(ステップS2)と、分離回収された構成材料のシート20及びパルプ繊維11と、SAP12等を乾燥する乾燥工程(ステップS3)とを具備する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体としての高吸水性ポリマ及びパルプ繊維を包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解する溶剤処理工程と、
前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品を前記高吸水性ポリマと、前記シート及び前記パルプ繊維とに分離して回収する分離回収工程と、
前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を乾燥する乾燥工程と
を具備することを特徴とする吸収性物品のリサイクル方法。
【請求項2】
前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤であることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品のリサイクル方法。
【請求項3】
前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、その比重が0.7~1.5の範囲内のものであることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品のリサイクル方法。
【請求項4】
前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、その比重が1.6~1.8の範囲内のものであることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品のリサイクル方法。
【請求項5】
前記分離回収工程は、前記吸収性物品を浸漬処理した前記溶剤中で前記高吸水性ポリマと前記シート及び前記パルプ繊維とに分離することを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品のリサイクル方法。
【請求項6】
更に、前記接着剤が溶解した前記溶剤を蒸留し、前記接着剤を分離回収する接着剤分離回収工程を具備することを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品のリサイクル方法。
【請求項7】
前記接着剤分離回収工程で前記接着剤と分離された前記溶剤は、前記溶剤処理工程で前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤として再利用されることを特徴とする請求項6に記載の吸収性物品のリサイクル方法。
【請求項8】
更に、前記高吸水性ポリマと分離された前記シート及び前記パルプ繊維を固形燃料化する固形燃料化工程を具備することを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品のリサイクル方法。
【請求項9】
吸収体としての高吸水性ポリマ及びパルプ繊維を包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解する溶剤処理部と、
前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品を前記高吸水性ポリマと、前記シート及び前記パルプ繊維とに分離して回収する分離回収手段と、
前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を乾燥する乾燥手段と
を具備することを特徴とする吸収性物品のリサイクル装置。
【請求項10】
前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤であることを特徴とする請求項9に記載の吸収性物品のリサイクル装置。
【請求項11】
前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、その比重が0.7~1.5の範囲内のものであることを特徴とする請求項9に記載の吸収性物品のリサイクル装置。
【請求項12】
前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、その比重が1.6~1.8の範囲内のものであることを特徴とする請求項9に記載の吸収性物品のリサイクル装置。
【請求項13】
前記分離回収手段は、前記吸収性物品を浸漬処理した前記溶剤中で前記高吸水性ポリマと前記シート及び前記パルプ繊維とに分離することを特徴とする請求項9に記載の吸収性物品のリサイクル装置。
【請求項14】
更に、前記接着剤が溶解した前記溶剤を蒸留し、前記接着剤を分離回収する接着剤分離回収手段を具備することを特徴とする請求項9に記載の吸収性物品のリサイクル装置。
【請求項15】
更に、前記接着剤分離回手段によって前記接着剤と分離された前記溶剤を、前記溶剤処理部で前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤として再利用させる溶剤循環路を具備することを特徴とする請求項14に記載の吸収性物品のリサイクル装置。
【請求項16】
更に、前記高吸水性ポリマと分離した前記シート及び前記パルプ繊維を固形燃料化する固形燃料化手段を具備することを特徴とする請求項9に記載の吸収性物品のリサイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙オムツ、生理用ナプキン等の吸収性物品の製造工程で生じる規格外品(不良品)や切屑(切り端)等の未使用の吸収性物品をリサイクルする方法及び装置に関するものであり、特に、高品位なリサイクル品が得られる未使用の吸収性物品のリサイクル方法及びリサイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙オムツ、生理用ナプキン、失禁用(尿取り)パッド、パンティライナ、ペット用シート等の吸収性物品は、その製造工程において、破損、汚れ、接着不良、折れ、構成材の位置ずれや欠損が生じたり、シートやテープ等に設計上想定していない継目や折れ線や皺等が存在したり、パルプ繊維量や高吸水性ポリマ(Super Absorbent Polymer:SAP)量が所定の規格を満たしていなかったりと、規格外品(不良品)が発生することがある。特に、こうした吸収性物品はデリケートな部位に使用されるものであることから安心安全の確保のために厳しく検品され、規格外品(不良品)が市場に出回らないようにすることが広く行われていることにより、その製造過程において生じるロス品は無視できない量となっている。また、吸収性物品を大量生産する製造工程においては、パルプ繊維及び高吸水性ポリマを含んだ吸収体の外側を所定の大きさの複数層のシートで被覆し、それから製品サイズに小分けに熱シールされ、個々の製品にトリミングカットされることにより、切屑(切り端)が生じる。
【0003】
そのような規格外品や切屑等については、破砕して固形化燃料(Refuse derived paper and plastics densified Fuel:RPF)にサーマルリサイクルすることが知られているが、吸水性物品には高吸水性ポリマが多く含まれていることから、その高吸水性ポリマが吸湿・吸水することで、吸水性物品由来のRPFにおいては、水分率が高く、発熱量が低いものとなっていた。また、高吸水性ポリマが吸水して膨潤することで吸水性物品由来のRPFは大容量化し、場合によっては分解崩壊してしまうこともあった。
更に、RPF化工程で冷却が不十分であったり、膨潤、ゲル化した高吸水性ポリマが周囲の有機物と反応したりすると、それが蓄熱し、悪臭を放ったり発火したりする恐れもあった。
加えて、高吸水性ポリマの吸水による膨潤によってRPFが大容量化し重量増となると、運搬や保管のスペースも要し、保管場所の確保や運搬作業の負担も大きいものとなる。また、高吸水性ポリマは微小であることで、RPF化しても脱落しやすく、運搬時や保管時に、高吸水性ポリマが脱落して、それが作業者のスリップ、転倒を引き起こす危険性も指摘されている。
このため、規格外品や切屑等の未使用の吸収性物品について破砕してRPF化しても、運搬時や焼却時のエネルギ消費も多く、必ずしも、燃料としての利用価値が十分にある品質の高いものではなかった。
【0004】
ここで、使用済みの吸収性物品においては、例えば、特許文献1等で示すように、高吸水性ポリマを塩化カルシウム等の不活化剤を含む水溶液に浸漬することにより、カルシウム塩等の2価金属イオンを高吸水性ポリマのナトリウム塩と置換して、膨潤した高吸水性ポリマのゲルを収縮、脱水させ不活化させることにより吸水による膨潤を抑制できることが知られている。しかしながら、RPF化する際に、このような高吸水性ポリマの不活化処理を行った場合には、塩素分や灰分といった燃焼の妨げとなる異物が増大することにより、燃料としての品位は低下させることになる。
【0005】
一方、特許文献2乃至特許文献5では、吸収性物品の製品製造で生じた規格外品等を破砕することにより構成材料を分離回収してリサイクルすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-124711号公報
【特許文献2】特開2001-336077号公報
【特許文献3】国際公開2017/104062号公報
【特許文献4】特開2007-175591号公報
【特許文献5】特開2022-15986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2乃至特許文献4の従来技術においては、何れも、表裏のシート間に内包されているパルプ繊維や粒状の高吸水性ポリマを取り出すために、吸収性物品の規格外品や切屑を破砕、切断といった物理的な衝撃、機械的な裁断力を与えることによって解体している。しかしながら、破砕や切断を行うと、吸収性物品の構成材料同士の接合に糊剤(ホットメルト接着剤)が使用されていることにより破砕された小片(切断物、細断物)が硬くなることで、構成材料の分離が難しくなり、構成材料の分離回収に大きな手間やエネルギを要する。特に、材料同士が固着して固まった部分を解砕、解繊等して分離するとなると、大きなエネルギを投入する必要があるうえ、その大きなエネルギにより粒状の高吸水性ポリマが細粒化、微紛化されるから、高吸水性ポリマを回収しても、その回収率が低く、また、元の性状が変化して吸収性物品の吸収体としての再資源化に適さないものとなっていた。即ち、高吸水性ポリマは細粒化、微紛化されると吸水特性が低下し、また、粒径が小さくなり過ぎることで、吸収性物品の吸収材として再資源化する場合には製品外部に表出しやすくなり、吸水性物品の製品の品質を低下させることになるから、吸収性物品の吸収体としての再資源化が困難であった。また、高吸水性ポリマの微細物が排水に流出する場合には、排水処理の負荷の問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、未使用の吸収性物品から高品位なリサイクル品を得る吸収性物品のリサイクル方法及びリサイクル装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の吸収性物品のリサイクル方法は、溶剤処理工程において、吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマをシートで包囲し前記シートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させ、分離回収工程において、前記溶剤への前記接着剤の溶解により解離した前記吸収性物品を前記高吸水性ポリマと、前記パルプ繊維及び前記シートとに分離して回収し、また、乾燥工程において、前記接着剤が溶解除去された吸水性物品の構成材料を乾燥するものである。
【0010】
上記溶剤処理工程は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマ等を含む吸収体をシートで包囲してそのシートを接着剤で接合してなる吸収性物品を溶剤に浸漬することで、溶剤によって吸収性物品の接着剤を溶解して除去する工程である。
上記分離回収工程は、接着剤の溶解除去により解離した吸収性物品を少なくともシート及びパルプ繊維と、高吸水性ポリマとに分離して回収する工程であり、例えば、それら構成材料の寸法差、比重差等を利用して構成材料を分別する。
上記乾燥工程は、接着剤の溶解除去により解離した吸収性物品の構成材料を乾燥することによって、付着している溶剤を揮発させ、溶剤を除去する工程である。
上記分離回収工程及び乾燥工程は、溶剤処理工程後に分離回収工程を設け、更にその分離回収工程後に乾燥工程を設けてもよいし、溶剤処理工程後に乾燥工程を設け、更にその乾燥後に分離回収工程を設けてもよい。
【0011】
ここで、上記吸収性物品は、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナ、ペットシート等の人または動物から排出される液分の吸収に使用される物品であって、例えば、パルプ繊維及び高吸水性ポリマを含む吸収体をシートで包囲し対向する前記シート間をホットメルト接着剤で接合してなるものである。
そして、上記未使用の吸収性物品とは、紙おむつ等の吸収性物品の製造工程で生じた規格外品(不良品)等のロス品やトリミングカットされた切屑(切り端)を云うものである。
また、上記溶剤としては、吸収性物品に使用されているホットメルト接着剤を溶解できるものであればよく、好ましくは、パラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤や、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤等のハロゲン化炭化水素系溶剤が使用される。
【0012】
請求項2の発明の吸収性物品のリサイクル方法の前記吸収性物品の接着剤を溶解させる溶剤は、好ましくは、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤である。
上記石油系溶剤としては、ドライクリーニング溶剤として使用されるパラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤が好ましい。
また、上記ハロゲン化炭化水素系溶剤としては、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤が好ましい。
【0013】
請求項3の発明の吸収性物品のリサイクル方法の前記吸収性物品の接着剤を溶解させる溶剤は、好ましくは、その比重が0.7以上、1.5以下の範囲内のものであり、より好ましくは、0.7以上、0.8以下の範囲内のものである。
上記比重が0.7以上、1.5以下の溶剤としては、例えば、ドライクリーニング溶剤として使用されるパラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤が使用される。
【0014】
請求項4の発明の吸収性物品のリサイクル方法の前記吸収性物品の接着剤を溶解させる溶剤は、その比重が1.6以上、1.8以下の範囲内のものである。
上記比重が1.6以上、1.8以下の溶剤としては、例えば、ドライクリーニング溶剤として使用されるテトラクロロエチレン等の塩素系のハロゲン化炭化水素系溶剤が使用される。
【0015】
請求項5の発明の吸収性物品のリサイクル方法の前記分離回収工程は、前記吸収性物品を浸漬処理した前記溶剤中で前記高吸水性ポリマと前記シート及び前記パルプ繊維とに分離するものであり、接着剤が溶解された溶剤中で解体された吸収性物品の構成材料を重力、遠心力、比重差等と、スクリーン等を使用した濾過分離とを利用して、構成材料を分離するものである。
【0016】
請求項6の発明の吸収性物品のリサイクル方法は、更に、接着剤分離回収工程において前記接着剤が溶解した前記溶剤を蒸留し、前記溶剤から前記接着剤を分離回収するものである。
上記接着剤分離回収工程は、吸収性物品の浸漬により接着剤が溶解された溶剤の蒸留によって接着剤を析出させることにより、溶剤から接着剤を分離して回収する工程である。
【0017】
請求項7の発明の吸収性物品のリサイクル方法は、前記接着剤が分離された前記溶剤を回収し、前記溶剤処理工程で前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤として再利用するものであり、蒸留された溶剤ガスは冷却、液化されてから、好ましくは、フィルタ濾過により清浄化されて再利用される。
【0018】
請求項8の発明の吸収性物品のリサイクル方法は、更に、前記高吸水性ポリマが分離した残りの前記シート及び前記パルプ繊維を固形燃料化(RPF化)する固形燃料化工程を具備するものである。
上記固形燃料化工程は、前記高吸水性ポリマが分離した残りの前記シート及び前記パルプ繊維を含む構成材料を乾燥工程後に圧縮成形、冷却することで固形化して固形化燃料とする工程である。
【0019】
請求項9の発明の吸収性物品のリサイクル装置は、溶剤処理部において吸収体としてのパルプ繊維及び高吸水性ポリマをシートで包囲し前記シートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させ、分離回収手段によって、前記溶剤への前記接着剤の溶解により解離した前記吸収性物品を前記高吸水性ポリマと、前記パルプ繊維及び前記シートとに分離して回収し、乾燥手段によって、前記接着剤が溶解除去された前記吸水性物品の構成材料を乾燥するものである。
【0020】
上記溶剤処理部は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマ等を含む吸収体をシートで包囲してそのシートを接着剤で接合してなる吸収性物品を溶剤に浸漬することで、溶剤によって吸収性物品の接着剤を溶解して除去するものである。
上記分離回収手段は、接着剤の溶解除去により解離した吸収性物品を少なくともシート及びパルプ繊維と、高吸水性ポリマとに分離して回収するものであり、例えば、構成材料の寸法差、比重差等を利用して構成材料を分別する。
上記乾燥手段は、接着剤の溶解除去により解離した吸収性物品の構成材料を減圧乾燥、熱風乾燥等することによって、構成材料に付着している溶剤を揮発させ、溶剤を除去する。
上記分離回収手段及び乾燥手段は、接着剤の溶解除去により解離した吸収性物品の構成材料を分離回収手段によって分離回収してから乾燥手段によって乾燥してもよいし、接着剤の溶解除去により解離した吸収性物品の構成材料を乾燥手段で乾燥してから、分離回収手段によって分離回収してもよい。
【0021】
ここで、上記吸収性物品は、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナ、ペットシート等の人または動物から排出される液分の吸収に使用される物品であって、例えば、パルプ繊維及び高吸水性ポリマを含む吸収体をシートで包囲し対向する前記シート間をホットメルト接着剤で接合してなるものである。
そして、上記未使用の吸収性物品とは、紙おむつ等の吸収性物品の製造工程で生じた規格外品(不良品)等のロス品やトリミングカットされた切屑(切り端)を云うものである。
また、上記溶剤としては、吸収性物品に使用されているホットメルト接着剤を溶解できるものであればよく、好ましくは、パラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤や、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤等のハロゲン化炭化水素系溶剤が使用される。
【0022】
請求項10の発明の吸収性物品のリサイクル装置の前記吸収性物品の接着剤を溶解させる溶剤は、好ましくは、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤である。
上記石油系溶剤としては、ドライクリーニング溶剤として使用されるパラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤が好ましい。
また、上記ハロゲン化炭化水素系溶剤としては、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤が好ましい。
【0023】
請求項11の発明の吸収性物品のリサイクル装置の前記吸収性物品の接着剤を溶解させる溶剤は、好ましくは、その比重が0.7以上、1.5以下の範囲内のものであり、より好ましくは、0.7以上、0.8以下の範囲内のものである。
上記比重が0.7以上、1.5以下の溶剤としては、例えば、ドライクリーニング溶剤として使用されるパラフィン、ナフテン等を含む石油系溶剤が使用される。
【0024】
請求項12の発明の吸収性物品のリサイクル装置の前記吸収性物品の接着剤を溶解させる溶剤は、その比重が1.6以上、1.8以下の範囲内のものである。
上記比重が1.6以上、1.8以下の溶剤としては、例えば、ドライクリーニング溶剤として使用されるテトラクロロエチレン等の塩素系のハロゲン化炭化水素系溶剤が使用される。
【0025】
請求項13の発明の吸収性物品のリサイクル装置の前記分離回収手段は、前記吸収性物品を浸漬処理した前記溶剤中で前記シート及び前記パルプ繊維と、前記高吸水性ポリマとに分離するものであり、接着剤が溶解された溶剤中で解体された前記吸収性物品の構成材料を重力、遠心力、比重差等と、スクリーン等を使用した濾過分離とを利用して、構成材料を分離するものである。
【0026】
請求項14の発明の吸収性物品のリサイクル装置は、更に、接着剤分離回収手段によって、前記接着剤が溶解した前記溶剤を蒸留し、前記溶剤から前記接着剤を分離回収するものである。
上記接着剤分離回収手段は、吸収性物品の浸漬により接着剤が溶解された溶剤の蒸留によって接着剤を析出させることにより、溶剤から接着剤を分離して回収するものである。
【0027】
請求項15の発明の吸収性物品のリサイクル装置は、溶剤循環路によって前記接着剤が分離された前記溶剤を前記溶剤処理部に戻して前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤として再利用するものであり、蒸留された溶剤ガスは冷却、液化されてから、好ましくは、フィルタ濾過により清浄化されて再利用される。
【0028】
請求項16の発明の吸収性物品のリサイクル装置は、更に、前記高吸水性ポリマが分離した残りの前記シート及び前記パルプ繊維を固形燃料化する固形燃料化手段を具備するものである。
上記固形燃料化手段は、前記高吸水性ポリマが分離した残りの前記シート及び前記パルプ繊維を含む構成材料を乾燥後に圧縮成形する成形機及び成形後に冷却する冷却機等を具備し、前記シート及び前記パルプ繊維を固形化して固形燃料化するものである。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明に係る吸収性物品のリサイクル方法によれば、溶剤処理工程にて、吸収体を包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させたのち、分離回収工程にて、前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の前記高吸水性ポリマと、前記パルプ繊維及び前記シートとを分離回収し、また、乾燥工程にて、前記接着剤が溶解除去された前記吸水性物品の構成材料を乾燥する。
【0030】
このように、未使用の吸収性物品の構成部材を接合している接着剤を溶剤に溶解させて吸収性物品から除去することによって吸収性物品を解体して高吸水性ポリマと、パルプ繊維及びシートとに分離回収するものであるから、吸収性物品の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品が容易に分解され高吸水性ポリマと、パルプ繊維及びシートとの分離が容易となる。よって、高吸水性ポリマの回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品の接着剤を除去することにより、高吸水性ポリマが細粒化、微粉化するような大きなエネルギを加えなくとも高吸水性ポリマと、パルプ繊維及びシートとを精度よく分離回収できる。分離回収されたパルプ繊維及びシートは、高吸水性ポリマと分離され、また、接着剤が除去されていることにより、パルプ繊維及びシートを固形燃料化する場合でも、水分、塩分、灰分等の不純物が少なくて発熱量を高くできる高品位なものとなる。そして、パルプ繊維及びシートと分離された高吸水性ポリマも、細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の吸水体としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適であり、吸収性物品の吸収体としての再資源化にも好適なものとなる。
こうして、未使用の吸収性物品から高品位なリサイクル品を得ることができる。
【0031】
請求項2の発明に係る吸収性物品のリサイクル方法によれば、前記溶剤は、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤であるから、酸化劣化し難く繰り返しの再利用に好適であり、また、分離回収された高吸水性ポリマに溶剤の臭いが残存し難いものである。したがって、請求項1に記載の効果に加えて、低コスト化でき、また、分離回収された高吸水性ポリマは幅広い使途に再資源化できる。
【0032】
請求項3の発明に係る吸収性物品のリサイクル方法によれば、前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、その比重が0.7~1.5の範囲内のものであることから、吸収性物品を溶剤に浸漬処理したその溶剤中で高吸水性ポリマが沈降する。よって、その溶剤中において、スクリーン等を利用した濾過分離によって低負荷な条件、省エネルギでシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できることで、請求項1に記載の効果に加えて、低コスト及び省エネルギで高吸水性ポリマを高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0033】
請求項4の発明に係る吸収性物品のリサイクル方法によれば、前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、その比重が1.6~1.8の範囲内のものであることから、吸収性物品を溶剤に浸漬処理したその溶剤中で高吸水性ポリマが浮上する。よって、その溶剤中において、スクリーン等を利用した濾過分離によって低負荷な条件、省エネルギでシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できることで、請求項1に記載の効果に加えて、低コスト及び省エネルギで高吸水性ポリマを高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0034】
請求項5の発明に係る吸収性物品のリサイクル方法によれば、前記分離回収工程は、前記吸収性物品を浸漬処理した前記溶剤中でシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとに分離することから、接着剤が溶解された溶剤中で解体された吸収性物品の構成材料を重力、遠心力、比重差等とスクリーン等を使用した濾過分離を利用して、シート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとに分離することになる。よって、湿式での分離であるから、構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できることで、請求項1に記載の効果に加えて、低コスト及び省エネルギで高吸水性ポリマを高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0035】
請求項6の発明に係る吸収性物品のリサイクル方法によれば、更に、前記接着剤が溶解した前記溶剤を蒸発させ前記接着剤を分離回収する接着剤分離回収工程を具備することから、請求項1に記載の効果に加えて、吸収性物品の接着剤を再資源化でき、更に資源を有効に利用できる。
【0036】
請求項7の発明に係る吸収性物品のリサイクル方法によれば、前記接着剤分離回収工程で前記接着剤と分離された前記溶剤は、前記溶剤処理工程で前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤として再利用されるから、請求項6に記載の効果に加えて、環境負荷を低減でき、また、低コスト化できる。
【0037】
請求項8の発明に係る吸収性物品のリサイクル方法によれば、固形燃料化工程にて前記高吸水性ポリマが分離した残りの前記シート及び前記パルプ繊維を固形燃料化するから、得られた固形化燃料は、高吸水性ポリマが分離されていることで、吸水膨張することなく、更に、接着剤も除去されていることで、水分、塩分、灰分等の不純物が少なくて発熱量が高いものとなる。よって、請求項1に記載の効果に加えて、高品位な固形化燃料が得られる。
【0038】
請求項9の発明に係る吸収性物品のリサイクル装置によれば、溶剤処理部にて、吸収体を包んだシートを接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品を溶剤に浸漬して前記接着剤を前記溶剤に溶解させ、分離手段によって、前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品を前記シート及び前記パルプ繊維と、前記高吸水性ポリマとに分離回収し、乾燥手段によって、前記接着剤が溶解除去された前記吸収性物品の構成材料を乾燥する。
【0039】
このように、未使用の吸収性物品の構成部材を接合している接着剤を溶剤に溶解させて吸収性物品から除去することによって吸収性物品を解体して高吸水性ポリマと、パルプ繊維及びシートとに分離回収するものであるから、吸収性物品の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品が容易に分解され高吸水性ポリマと、パルプ繊維及びシートとの分離が容易となる。よって、高吸水性ポリマの回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品の接着剤を除去することにより、高吸水性ポリマが細粒化、微粉化するような大きなエネルギを加えなくとも高吸水性ポリマと、パルプ繊維及びシートとを精度よく分離回収できる。分離回収されたパルプ繊維及びシートは、高吸水性ポリマと分離され、また、接着剤が除去されていることにより、パルプ繊維及びシートを固形燃料化する場合でも、水分、塩分、灰分等の不純物が少なくて発熱量を高くできる高品位なものとなる。そして、パルプ繊維及びシートと分離された高吸水性ポリマも、細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の吸水体としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適であり、吸収性物品の吸収体としての再資源化にも好適なものとなる。
こうして、未使用の吸収性物品から高品位なリサイクル品を得ることができる。
【0040】
請求項10の発明に係る吸収性物品のリサイクル装置によれば、前記溶剤は、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤であるから、酸化劣化し難く繰り返しの再利用に好適であり、また、分離回収された構成材料に溶剤の臭いが残存し難いものである。したがって、請求項9に記載の効果に加えて、低コスト化でき、また、分離回収された高吸水性ポリマは幅広い使途に再資源化できる。
【0041】
請求項11の発明に係る吸収性物品のリサイクル装置によれば、前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、その比重が0.7~1.5の範囲内のものであることから、吸収性物品を溶剤に浸漬処理したその溶剤中で高吸水性ポリマが沈降する。よって、その溶剤中において、スクリーン等を利用した濾過分離によって低負荷な条件、省エネルギでシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できることで、請求項9に記載の効果に加えて、低コスト及び省エネルギで高吸水性ポリマを高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0042】
請求項12の発明に係る吸収性物品のリサイクル装置によれば、前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤は、その比重が1.6~1.8の範囲内のものであることから、吸収性物品を溶剤に浸漬処理したその溶剤中で高吸水性ポリマが浮上する。よって、その溶剤中において、スクリーン等を利用した濾過分離によって低負荷な条件、省エネルギでシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できることで、請求項9に記載の効果に加えて、低コスト及び省エネルギで高吸水性ポリマを高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0043】
請求項13の発明に係る吸収性物品のリサイクル装置によれば、前記分離回収手段は、前記吸収性物品を浸漬処理した前記溶剤中で前記吸収性物品のシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを分離することから、接着剤が溶解された溶剤中で解体された前記吸収性物品の構成材料を重力、遠心力、比重差等とスクリーン等を使用した濾過分離を利用して、シート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとに分離することになる。よって、湿式での分離であるから、構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート及びパルプ繊維と高吸水性ポリマとを精度よく分離できることで、請求項9に記載の効果に加えて、低コスト及び省エネルギで高吸水性ポリマを高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0044】
請求項14の発明に係る吸収性物品のリサイクル装置によれば、更に、前記接着剤が溶解した前記溶剤を蒸発させ前記接着剤を分離回収する接着剤分離回収手段を具備することから、請求項9に記載の効果に加えて、吸収性物品の接着剤を再資源化でき、更に資源を有効利用できる。
【0045】
請求項15の発明に係る吸収性物品のリサイクル装置によれば、前記接着剤分離回収手段で前記接着剤と分離された前記溶剤を前記溶剤処理部で前記吸収性物品を浸漬処理する溶剤として再利用させる溶剤循環路を具備するから、請求項14に記載の効果に加えて、環境負荷を低減でき、また、低コスト化できる。
【0046】
請求項16の発明に係る吸収性物品のリサイクル装置によれば、固形燃料化工程にて前記高吸水性ポリマが分離した残りの前記シート及び前記パルプ繊維を固形燃料化するから、得られた固形化燃料は、高吸水性ポリマが分離されていることで、吸水膨張することなく、更に、接着剤も除去されていることで、水分、塩分、灰分等の不純物が少なくて発熱量が高いものとなる。よって、請求項9に記載の効果に加えて、高品位な固形化燃料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は吸収性物品の一例であるオムツの構成材料を説明する説明図である。
図2図2は本実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法を示すフローチャートである。
図3図3は本実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法及びリサイクル装置の実施例1を説明する概念図である。
図4図4は本実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法及びリサイクル装置の実施例1の分離回収工程及び分離回収手段を説明する模式図である。
図5図5は本実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法及びリサイクル装置の実施例2を説明する概念図である。
図6図6は本実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法及びリサイクル装置の実施例2の分離回収工程及び分離回収手段を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施の形態及びその変形例において、同一の記号及び同一の符号は同一または相当する機能部分を意味し、実施の形態及び変形例において相互の同一の記号及び同一の符号は、それら実施の形態及び変形例に共通する機能部分であるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
【0049】
[実施の形態]
まず、本実施の形態におけるリサイクル対象の吸収性物品について、図1を参照して、説明する。
紙オムツ、生理用ナプキン、失禁用(尿取り)パッド、パンティライナ、ペット用シート等の吸収性物品は、主に、パルプ繊維11と高吸水性ポリマ12(Super Absorbent Polymer:SAP)からなる吸収体10が不織布や熱可塑性樹脂フィルム等からなる表面シート21及び裏面シート22等のシート20で包まれ、対向する表面シート21及び裏面シート22等のシート20がホットメルト接着剤により接合されてなるものである。
【0050】
表面シート21及び裏面シート22の間に配置される吸収体10は、パルプ繊維11及び高吸水性ポリマ(SAP)12の吸収材により構成されている。
パルプ繊維11(繊維性パルプ)としては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)、架橋パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、半合成セルロース、セルロースナノファイバ(CNF)、酢酸セルロース、レーヨン、コットン等のセルロース系繊維が主に使用されるが合成繊維を含む場合もあり、化学パルプであるフラッフパルプ(綿状パルプ)の形態で吸収体10に用いられている。その繊維長は、平均で、数mm程度で、一例として、1mm~5mm程度であり、その繊維径は、平均で、数十μm程度で、一例として、10~50μm程度である。
【0051】
また、高吸水性ポリマ(以下、「SAP」と称す)12は、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、ポリビニルアルコール系、ポリアクリルアミド系、ポリオキシエチレン系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、無水マレイン酸塩系等の合成ポリマ系、澱粉系、セルロース系、アミノ酸系等の架橋構造を持つ親水性のポリマ(水溶性高分子ポリマ)であり、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、澱粉-アクリルニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA/ポリアクリル酸ナトリウム等が使用されるが、典型的には、アクリル酸またはアクリル酸アルカリ金属塩の重合物または共重合物が使用されている。通常、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤として粒子状のものが使用されるが、繊維状である場合もある。粒子状SAPの乾燥状態における粒径は、例えば、150~600μm程度である。
【0052】
表面シート(トップシート)21は、表面材であり、例えば、不織布やフィルムが使用され、具体的には、液透過性のある不織布や合成樹脂フィルム或いはそれらのラミネート(複合シート)等が使用される。
また、裏面シート(バックシート)22は、防水材であり、例えば、フィラ(炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、タルク、シリカ、カオリン、マイカ、クレー、酸化チタン、酸化亜鉛、顔料等の無機充填材)を含有し微細な孔を有する多孔質のポリオレフィン樹脂等の合成樹脂フィルム、即ち、液を透過せず通気性及び透湿性のある合成樹脂フィルムや、通気性のない合成樹脂フィルムが使用される。
【0053】
不織布としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系不織布、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系不織布、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系不織布、レーヨン不織布等が使用され、一例としては、複合繊維を熱風で接着してなるエアスル不織布が使用されている。
フィルムとしては、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムが使用される。
【0054】
更に、吸収性物品の種類によっては、表面シート(トップシート)21と、パルプ繊維11及び高吸水性ポリマ12からなる吸収体10との間に、シート状の吸水紙23が配設される場合もある。係る吸水紙23としては、例えば、ポリオレフィン系不織布等が使用される。
また、裏面シート22の吸収体10の配設側とは反対側には、通気性のある不織布等からなる外装シートが配設する場合もある。
加えて、吸収性物品の幅方向両側には、漏れ防止のサイドシート24が配設される場合があり、係る部位には、例えば、撥水処理された不織布(例えば、ポリオレフィン系不織布、ポリウレタン不織布等)、通気性のある合成樹脂フィルム(ポリオレフィン系フィルム、スチレン系エラストマーフィルム等)、伸縮性素材の糸ゴム25(スパンデックス、ウレタンゴム、天然ゴム、合成ゴム等)が使用される。
その他、止着材としてのポリプロピレン等のポリオレフィンや合成ゴム等からなる粘着テープ(面ファスナ)や、パルプ繊維11としてのセルロースナノファイバ(CNF)に消臭効果及び抗菌効果のある銀イオンや香料が担持されたものが使用される場合もある。
【0055】
こうして、リサイクル対象である吸収性物品は、パルプ繊維11及びSAP12からなる吸収体10と、フィルムや不織布等からなる表面シート21、裏面シート22、吸水紙23、サイドシート24等のシート20等から構成され、それら構成材がホットメルト接着剤により接合されているものである。
ホットメルト接着剤は、通常、ベースポリマ、粘着付与剤及び可塑剤を含有し、ベースポリマとしては、例えば、スチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンーエチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレンーブタジエン共重合体(SBR)等のスチレン系やポリイソプレンや天然ゴム等のゴム系、エチレン酢酸ビニル共重合体等のアクリル系、ポリジメチルシロキサンポリマー等のシリコーン系、ポリエチレン等のオレフィン系の熱可塑性樹脂が使用されている。粘着付与樹脂(タッキファイヤ)としては、例えば、ロジン、テルペン樹脂、石油樹脂等が使用され、可塑剤としては、プロセスオイル、ポリブテン等が使用される。その他にも、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレン等のワックスや、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等のフィラや、フェノール、トルエン等の安定剤等を含有している場合もある。
【0056】
吸収性物品としてのオムツを例に挙げて説明すると、図1に示したように、吸収性物品としてのオムツDは、不織布からなる表面シート(表面材)21の下に、吸水紙23が配設され、更にその下にパルプ繊維(フラップパルプ)11とそれに包まれた粒状のSAP12とからなる吸収体10が配設され、表面シート21側とは反対側の吸収体10の外側には熱可塑性樹脂フィルムからなる裏面シート(防水材)22が配設され、更にその外側にも図示しない不織布からなる外装材(表面材)が配設された多層構造となっている。また、幅方向の両側には、サイドシート24により漏れ防止の伸縮性ギャザが形成され、そこには糸ゴム25が配設されている。加えて、裏面シート22側には、図示しない止着材が貼着されている。こうした構成のオムツDにおいては、パルプ繊維11及びSAP12の吸収体10が、不織布や熱可塑性樹脂フィルムからなる表面シート21及び裏面シート22等で包囲され、ホットメルト接着剤を介して表面シート21及び裏面シート22等が接合されていると共に、ギャザを形成するサイドシート24や外装シートにおいてもホットメルト接着剤を介して表面シート21や裏面シート22に接合されている。
【0057】
次に、このような吸収性物品の製造工程で生じる規格外品や切屑等をリサイクルする方法及びその装置について、図2乃至図6を参照して、説明する。
本実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法及びリサイクル装置は、吸収性物品の製品の製造時に生じる規格外品(不良品)や切屑(切り端)等から、その構成材料を分離して回収するもの、即ち、未使用の吸収性物品の構成材料を分離回収してリサイクルするものである。
【0058】
図2に示すように、本実施の形態の未使用の吸収性物品の構成材料をリサイクルする方法は、吸収性物品の製品の製造工程において摘出され、回収、収集された吸収性物品の規格外品や切屑等(以下、単に「被処理物110」とする)を溶剤120に浸漬してホットメルト接着剤(以下、単に「接着剤」と略す)を溶剤120に溶解させる溶剤処理工程(ステップS1)と、接着剤の溶剤120への溶解により接着剤が除去された被処理物110の構成材料をSAP12と、シート10及びパルプ繊維11とに分離回収する分離回収工程(ステップS2)と、分離回収された構成材料を乾燥する乾燥工程(ステップS3)とを有する。
【0059】
また、図3乃至図6に示すように、本実施の形態の未使用の吸収性物品の構成材料をリサイクルする装置は、被処理物110を溶剤120に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解させる溶剤処理部510と、接着剤の溶剤120への溶解により接着剤が除去された被処理物110の構成材料をSAP12と、シート10及びパルプ繊維11とに分離回収するスクリーンF、溶剤120等で構成される分離回収手段と、分離回収された構成材料を乾燥する乾燥手段とを有する。
【0060】
まず、溶剤処理工程(ステップS1)では、吸収性物品の製品の製造工程において生じた規格外品や切屑等の被処理物110を溶剤処理部510において溶剤120に浸漬する。
なお、吸収性物品の製品の製造工程において生じた規格外品や切屑等の回収物は、袋詰めされ或いは圧縮梱包され、その状態で運ばれてきた場合には、それを破袋し或いは梱包を解いて被処理物110を取り出し、それを溶剤処理部510に投入する。溶剤処理部510の投入口の詰まりを防止する観点からすれば、被処理物110は、折り畳んで投入したり、投入口に入る大きさに予め裁断されたりすることもあるが、細かく解繊、解砕、粉砕等されることはなく、例えば、長さ3~120cm、幅3~120cm程度である。
【0061】
吸収性物品の製品の製造工程において生じた規格外品や切屑といった未使用の吸収性物品である被処理物110が溶剤120に浸漬される溶剤処理部510においては、例えば、被処理物110及び溶剤120を収容する処理槽が使用され、その処理槽に被処理物110が投入され、また、所定量の溶剤120が所定の深さまで入り、被処理物110が溶剤120に浸漬される。好ましくは、被処理物110を溶剤120に浸漬する処理槽内では、被処理物110の全体に溶剤120がムラなく均一に浸透するように、また、被処理物110の構成部材の解離、特に、接着剤の溶剤120への溶解により接合が解されたシート20と吸収体10との解離を促進し、分離しやすくするために、通常、振動、攪拌、遠心(回転)等の物理的衝撃、外力が加えられる。
【0062】
ここで、溶剤120としては、例えば、パラフィン、ナフテン等を含有する石油系溶剤、テトラクロロエチレン等の塩素系溶剤やHCFCー225、HFCー365等のフッ素系溶剤等のハロゲン化炭化水素系溶剤、環状または直鎖状シリコーン等のシリコーン系溶剤が使用できるが、中でも、石油系またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤が好適である。
【0063】
石油系溶剤としては、灯油(C9~15の炭化水素が主成分)や、ドライクリーニングに使用される5号工業ガソリン(クリーニングソルベルト)が好適に使用できる。ドライクリーニング溶剤に使用されている石油系溶剤は、比重が0.73~0.80程度であり、炭化水素混合物である。
ハロゲン化炭化水素系溶剤としては、ドライクリーニング溶剤に使用されている1ーブロモプロパン等の臭素系溶剤や、テトラクロロエチレン(パークロロエチレン)、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤、1,1,1,3,3ペンタフルオロブタン等のフッ素系溶剤が使用できる。
シリコーン系溶剤としては、ドライクリーニング溶剤に使用されているデカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等が使用できる。
【0064】
溶剤処理工程(ステップS1)において、被処理物110をこうした溶剤120中に浸漬させると、被処理物110の構成材を接合していた接着剤が溶剤120に溶解して被処理物110中の接着剤が除去されることにより、被処理物110の構成材の接合部分が剥がれ被処理物110の構成材料の解離、分離が生じる。即ち、被処理物110である吸収性物品を構成しているフィルムや不織布等のシート20等の接合が解かれることで被処理物110が分解され、SAP12、パルプ繊維11、シート20等に分離される。特に、被処理物110を溶剤120で化学処理することで、不織布やフィルムのシート20が細片化されることなく投入時の形状を概ね維持したまま剥がれる。そして、表面シート21及び裏面シート22に内包されていた吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12は、溶剤120中において不織布やフィルムのシート20の接合が剥がれることで、溶剤120中に散らけてくる。
【0065】
こうして、溶剤処理工程(ステップS1)では、被処理物110を溶剤120中に浸漬することにより接着剤を溶剤120に溶解して被処理物110から接着剤を除去する。
特に、このように溶剤120によって接着剤を溶解除去する化学的処理により被処理物110を構成材料に分解するものでは、常温での処理でシート20間の接合力を低下させて被処理物110の構成材料を解離できるものであり、被処理物110の解体に加温や破砕を要さないものであるから、少ないエネルギ及びエネルギコストで済む。
【0066】
次に、分離回収工程(ステップS2)では、溶剤120への浸漬で接着剤が溶解除去された被処理物110の構成材料を分離して回収する。
溶剤120中に被処理物110を浸漬すると、接着剤が溶剤120に溶解して除去されることにより被処理物110のフィルムや不織布等のシート20等の接合が解かれて被処理物110が分解、解離することで、被処理物110の構成材料を分離回収できる。
【0067】
本実施の形態では、被処理物110を細かく破砕等することなく溶剤120に接着剤を溶解させることで被処理物110を解体するものであることから、不織布やフィルムのシート20が細片化されることなく剥離、解離され、それら不織布やフィルム等からなる表面シート21や裏面シート22間に内包されていた吸収体10のパルプ繊維11及びSAP12が溶剤120中に散らけることでSAP12をシート20等と容易に分離できる。
【0068】
特に、被処理物110から接着剤が除去されることで、不織布やフィルム等からなるシート20及びパルプ繊維11等にSAP12が付着して残存し難く、不織布やフィルム等のシート20及びパルプ繊維11にSAP12の残存を少なくしてきれいにまた容易に、不織布やフィルムのシート20及びパルプ繊維11からSAP12が分離し、溶剤120中に散ける。また、不織布やフィルム等のシート20やパルプ繊維11が細片化することなく大きな寸法のまま解離されることで、不織布やフィルムのシート20及びパルプ繊維11等と、SAP12とではそれらの大きさが大きく異なることにより分別も容易である。
そこで、本実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法及びその装置では、SAP12と、それ以外のシート20及びパルプ繊維11を含む残りの構成材料とで分離して回収する。
【0069】
ここで、被処理物110を構成するSAP12と、それ以外のシート20及びパルプ繊維11等との分離回収は、それらの寸法差、比重差(密度差)、沈降・浮上差、抵抗等を利用して分離回収できる。
SAP12と、シート20及びパルプ繊維11等とを分離回収する分離回収手段としては、例えば、SAP12を通過させるも、不織布やフィルム等からなるシート20及びパルプ繊維11は通過させない複数の孔を有するスクリーン、篩、フィルタ等(以下、それらをまとめて「スクリーンF」と称す)が使用できる。好ましくは、目開き0.1~5mmの範囲内、より好ましくは、目開き0.1~3mmの範囲内のものが使用できる。このとき、スクリーンFを振動等させることにより分離を促進させても良く、ローラスクリーンを使用してもよい。また、スクリーンFは多段に配置したりカスケード処理したりするようにしてもよい。
こうした、スクリーンFによる濾過分離では、不織布やフィルムのシート20を破断させることなく元の形状を概ね維持したまま、また、SAP12を微細化させることもなく、即ち、構成材料に対して負荷を掛けることなく、SAP12といった寸法小の粒状物Pとパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFとに分離できる。
【0070】
例えば、被処理物110を溶剤120で浸漬処理した処理液(固液混合物)を上述のスクリーンFに通すことで、SAP12等の粒状物P及び処理液(溶剤120)はスクリーンFを通過する一方、不織布やフィルムのシート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFはスクリーンF上で捕捉、回収される。これより、それら構成材料を細かく破断させることなく、パルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFと、SAP12等の粒状物Pとに分離して、別々に回収できる。
【0071】
或いは、図3乃至図6に示すように、被処理物110を溶剤120に浸漬処理した処理槽内にスクリーンFを設置して、溶剤120への接着剤の溶解により被処理物110の分解された構成材料が溶剤120中で沈降または浮上するその重力を利用し、パルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFと、SAP12等の粒状物Pとに分離して、別々に回収することが可能である。
【0072】
例えば、図3及び図4に示すように、吸収体10のSAP12の比重よりも大きい比重の溶剤120、好ましくは、その比重が1.6以上、1.8以下のハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤或いはそれと石油系との混合のドライクリーニング溶剤を使用した場合には、溶剤120への被処理物110の浸漬で被処理物110中の接着剤の接合が解かれると、SAP12はその比重が溶剤120よりも小さく溶剤120を吸収しないため、処理槽の溶剤120中で浮いてくる。
【0073】
そこで、図3及び図4に示すように、被処理物110を溶剤120に浸漬させた溶剤処理部510の処理槽内の所定位置で上述のスクリーンFを設置し、スクリーンFよりも下位の位置に被処理物110を送給することにより、SAP12等の粒状物Pは浮上して、スクリーンFを通過してスクリーンFより上位に移動し、パルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFはスクリーンFを通過せずにスクリーンFより下位で滞留することにより、スクリーンFの上下でSAP12等の粒状物Pと、パルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFとに分離される。これより、SAP12等の粒状物Pと、パルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFとを別々に分離回収できる。
【0074】
即ち、溶剤処理部510に接続し溶剤120を収容した溶剤タンクTからSAP12よりも高比重の溶剤120を溶剤処理部510の処理槽に注入し、スクリーンFを設けた溶剤処理部510の処理槽内でスクリーンFよりも下位に被処理物110を送給する。このとき、好ましくは、溶剤120に浸漬させる攪拌手段で溶剤120を攪拌、振動したり、処理槽の揺動等によって溶剤120を攪拌、振動したりする。
被処理物110が溶剤120に浸漬され、攪拌されると、溶剤120よりも比重が軽く粒状で寸法も小さいSAP12は、溶剤120中を上昇(浮上)し、スクリーンFを通過してスクリーンFより上側に移動する一方で、単繊維の絡み合いによりSAP12よりも寸法の大きなパルプ繊維11及びシート20等は、スクリーンFよりも下位に滞留する。よって、SAP12等の粒状物Pと、それ以外の残りのパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFとを別途に回収できる。
【0075】
スクリーンFよりも上位に浮上したSAP12等の粒状物Pは、溶剤120と共に溶剤処理部510の外部に排出して別のスクリーン等を使用し溶剤120から分離回収することもできるし、スクリーンF上で捕捉して回収してもよい。
スクリーンFよりも下位で滞留するパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFも、溶剤120と共に溶剤処理部510の外部に排出し、別のスクリーン等を使用し溶剤120から分離回収することもできるし、溶剤120の排出により処理槽の底に堆積させて回収してもよい。
【0076】
こうした、溶剤処理部510において、被処理物110を溶剤120に浸漬することで被処理物110の接着剤を溶剤120に溶解させて被処理物110を解体し、その溶剤120中でスクリーンFによる濾過分離及びSAP12の浮上の分離回収手段により、SAP12等の粒状物Pと、それ以外の残りのパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFとを分離回収するものでは、溶剤120中で被処理物110が解体されたその処理液をスクリーンFに通す(流す)場合よりも、パルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFがスクリーンF上に蓄積することによる目詰まりを防止できて効率よく分離でき、また、構成材料への物理的衝撃を少なくできることで、即ち、ソフトな条件で分離できるから、SAP12を劣化させることなく、より品位を維持して分離できる。更に、装置も簡単な構成で済むから低コスト化できる。
【0077】
即ち、SAP12よりも高比重の溶剤120中での比重差(重力)とスクリーンFによる濾過分離とを利用したSAP12と、その他の残りのパルプ繊維11及びシート20等の構成材料の分離によれば、SAP12に対し少ない負荷の低エネルギで、純度の高いSAP12と、SAP12の混率が極めて低いパルプ繊維11及びシート20等との分別回収を可能とする。分離精度よく、SAP12と、その他の残りのパルプ繊維11及びシート20等の構成材料とに分離でき、高純度のSAP12と、SAP12の混率が極めて低いパルプ繊維11及びシート20等が生産性良く得られる。
【0078】
また、例えば、図5及び図6に示すように、吸収体10のSAP12の比重よりも小さい比重の溶剤120、好ましくは、その比重が0.7以上、1.5以下の石油系またはハロゲン化炭化水素系或いはそれら混合のドライクリーニング溶剤を使用した場合には、溶剤120への被処理物110の浸漬で被処理物110中の接着剤の接合が解かれると、SAP12はその比重が溶剤120よりも大きく溶剤120を吸収しないため、処理槽の溶剤120中で沈降(落下)する。
【0079】
そこで、図5及び図6に示すように、被処理物110を溶剤120に浸漬させた溶剤処理部510の処理槽内の溶剤120の液面より下位であって、底位置よりも上位の所定位置で上述のスクリーンFを設置し、スクリーンFより上位の位置で被処理物110を投入すると、被処理物110に溶剤120が浸透し接着剤の接合が解かれることで、溶剤120中で被処理物110のシート20、パルプ繊維11、SAP12等が散らけ、SAP12等の粒状物Pは、スクリーンFを通過して沈降するも、不織布やフィルムのシート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFはスクリーンFを通過しないことで、スクリーンFの上下でSAP12等の粒状物Pとシート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFとに分離される。これより、構成材料を細かく破断させることなく、SAP12等の粒状物Pとシート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFとに分離して、別々に回収できる。このとき、好ましくは、少なくともスクリーンFより上位を攪拌状態にしたり、スクリーンFに振動を与えたりすることにより、被処理物110の構成材料が解離、分離しやくなり、また、シート20のスクリーンFへの蓄積による目詰まりを防止でき、SAP12等の粒状物Pとシート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFとを効率的に分離できる。
【0080】
即ち、スクリーンFを設けた溶剤処理部510の処理槽内に、スクリーンFの上位から被処理物110を投入し、また、溶剤処理部510に接続している溶剤タンクTから吸収体10のSAP12の比重よりも低比重の溶剤120を液位がスクリーンFより上位にくるように注入し、被処理物110を溶剤120に浸漬する。このとき、好ましくは、溶剤120に浸漬させる攪拌手段等で溶剤120を攪拌、振動したり、処理槽の揺動等によって溶剤120を攪拌、振動したりする。
被処理物110が溶剤120に浸漬されると、被処理物110中の接着剤が溶剤120に溶解し、被処理物110から接着剤が溶解除去されることで、溶剤中120で被処理物110が分解され、その構成材料が散らけてくる。
そして、被処理物110の構成材料のうち、溶剤120よりも比重が大きく、シート20やパルプ繊維11の寸法よりも小さいSAP12等の粒状物Pは、スクリーンFを通過して沈降していく一方で、SAP12よりも寸法の大きなシート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFは、スクリーンFよりも上位に滞留する。
これより、シート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFと、SAP12等の粒状物Pとを別途に回収できる。
【0081】
そして、スクリーンFよりも上位で滞留するシート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFは、例えば、溶剤120中からシート回収手段で掻き取ったり掬い上げたり巻き取ったりすることにより溶剤処理部510の外部に排出して回収することもできるし、スクリーンF上で捕捉して回収することもできるし、溶剤120と共に溶剤処理部510から排出して別のスクリーン等を使用して溶剤120から分離して回収することもできる。
また、スクリーンFよりも下位に沈降したSAP12等の粒状物Pも、溶剤120と共に溶剤処理部510の外部に排出し、別のスクリーン等を使用し溶剤120から分離回収することもできるし、溶剤120の排出により処理槽の底に堆積させて回収してもよい。
【0082】
こうした、溶剤処理部510で被処理物110を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中での被処理物110の構成材料の沈降とスクリーンFの分離回収手段によりシート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFと、SAP12等の粒状物Pとを分離回収するものでは、被処理物110を溶剤120に浸漬処理した処理液をスクリーンFに通す(流す)場合よりも、シート20等がスクリーンF上に蓄積することによる目詰まりを防止できて効率よく分離でき、また、構成材料への物理的衝撃を少なくできることで、即ち、ソフトな条件で分離できるから、SAP12を劣化させることなく、より品位を維持して分離できる。更に、装置も簡単な構成で済むから低コスト化できる。
【0083】
このように、溶剤処理部510で被処理物110を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中での被処理物110の構成材料の沈降または浮上の重力(比重差)とスクリーンFによる濾過分離とによって、シート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFと、SAP12等の粒状物Pとを分離回収するものでは、SAP12に対し細粒化、微粉化させることのない少ないエネルギ負荷で、高精度にSAP12と、その他の残りのパルプ繊維11及びシート20等を分離できるものであり、分離回収されたSAP12は、接着剤の付着もなく、劣化の少ない高品位なものとなる。故に、マテリアルリサイクルに好適である。特に、被処理物110を溶剤120に浸漬しても、SAP12は吸油せず、上述したように細粒化、微粉化されることなく分離回収できることで、粒度分布が大きく変わることなく、元の吸水性等の特性を維持したまま高回収率で回収できる。よって、回収されたSAP12は吸収性物品の吸収体10としてのマテリアルリサイクルに適する高品位なものとなる。また、SAP12が細粒化、微粉化されていないことにより、SAP12が分離された残りのパルプ繊維11及びシート20等も、SAP12の混入が極めて少なく、更に、接着剤の付着もなく、高品位なものとなる。よって、それらを固形燃料化した固形化燃料30においても、SAP12や接着剤が混入していないことにより、水分、塩分、灰分が少なくて発熱量が高く、高品位なものとなる。また、SAP12と分離したパルプ繊維11及びシート20等を固形燃料化してなる固形化燃料30は、SAP12の吸湿・吸水による膨張が生じないことにより、軽量で、保管や運搬も省スペース及び省エネルギで済み、運搬等の作業員の負荷も少ないものとなる。
【0084】
本発明を実施する場合には、その他にも、溶剤処理部510として、処理槽内に外周にスクリーンFを設けた内胴としての回転自在なドラム(ドラムスクリーン)を設置し、そのドラム内で被処理物110を溶剤120に浸漬させる溶剤処理を行うこともできる。このときにドラムを回転させることで、その攪拌、遠心力等の物理的な衝撃、外力により、被処理物110への溶剤120の浸透、接着剤の溶剤120への溶解が促進され、また、接着剤の溶剤120への溶解により構成材料が解離、分離しやすくなる。そして、回転の遠心力により、ドラム周囲のスクリーンFの孔からSAP12等の粒状物Pが回転ドラムの外の外胴に排出され、その内部に不織布やフィルムのシート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFが残ることによって、構成材料を細かく破断させることなくシート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFと、SAP12等の粒状物Pとを分離して、別々に回収できる。
また、例えば、被処理物110を浸漬させた溶剤120中において、液流を当て、SAP12をパルプ繊維11やシート20等とは別の場所へ液流によって移動させることで、分離することも可能であるし、または、遠心力を利用した液体サイクロンHC等の湿式分級機を使用して分離回収することも可能である。
【0085】
なお、SAP12等を含む粒状物Pは、糸ゴム25、テープ等のその他構成材料等の異分を分離除去した後、後述の乾燥工程(ステップS3)に供してもよいし、乾燥工程(ステップS3)後にそれら異物を分離除去してもよい。分別された糸ゴム25、テープ等のその他の構成材料についても、シート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFと混合して固形燃料化することができるが、マテリアルリサイクルとして再資源化することも可能である。
【0086】
特に、本実施の形態においては、被処理物110を細かく粉砕していないので、回収されたSAP12には細かなシート20、糸ゴム25、テープ等の混入が少ないものであり、異物分離が容易で、SAP12を高純度に分離回収できる。SAP12等が細粒化、微粉化して流出しないので排水の負荷もない。
また、溶剤120に被処理物110の接着剤を溶解させることで被処理物110を分解、解体して構成材料を分離回収するものであることから、不織布やフィルムのシート20が細片化されることなく投入時の形状を概ね維持したまま解離されることで、更に、被処理物110から接着剤が除去されていることで、不織布やフィルムのシート20及びパルプ繊維11にSAP12が付着して残存し難いから、不織布やフィルムのシート20及びパルプ繊維11等もSAP12の混率が極めて少ない高品位なものとなる。
【0087】
このように、本実施の形態では、細かく解繊、解砕、粉砕等することなく、被処理物110から接着剤を除去することにより被処理物110を解体するものであるから、不織布やフィルムからなる表面シート21や裏面シート22等のシート20やパルプ繊維11等から、SAP12を分離するのが容易である。よって、SAP12の細粒化、微粉化を生じさせるような過大なエネルギを投入しなくとも少ないエネルギで、即ち、低負荷の条件で、それらを精度よく分離できる。そして、細粒化、微粉化による劣化や吸水性等の特性変化を生じさせることなくSAP12を分離できるから、吸収性物品の吸収体10としての再資源化に適するものとなる。即ち、被処理物110を溶剤120に浸漬して接着剤を溶解させることにより被処理物110を解体するものでは、被処理物110の接着剤が除去されることにより、シート20が細片化することなく大きな寸法のまま解離し、細かく解繊、解砕、粉砕等することで生じる被処理物110の構成材料同士の絡み合いや固着がなく、被処理物110の構成材料が容易に散らけることで、少ないエネルギでSAP12を分離回収でき、SAP12の回収率も高いものとなる。
【0088】
こうして、分離回収工程(ステップS2)では、スクリーンF等の分離回収手段で、接着剤が除去された被処理物110の構成材料のうち、少なくとも、SAP12と、不織布やフィルム等のシート20及びパルプ繊維11とが別々に分離回収される。
【0089】
続いて、乾燥工程(ステップS3)では、乾燥手段を備えた乾燥部550において、これら分離回収された各構成材料が乾燥手段よって乾燥されることにより、分離回収された各構成材料に残存する溶剤120が除去、脱溶剤化される。
乾燥手段としては、例えば、室温での自然乾燥、室温よりも高い温度下での乾燥、常温空気による風乾、熱風の吹き付けによる乾燥、減圧乾燥等により溶剤120を揮発させることができ、ヒータ、減圧ポンプ、ファン等を用いることができる。
但し、石油系溶剤120の場合は、引火点が低いことから、減圧下、窒素置換、ガス及び酸素の濃度管理のうえで、溶剤120を揮発させる。なお、溶剤率が1質量%以下となるまで乾燥を行うのが好ましい。
このときの乾燥は、分離回収されたSAP12と、不織布やフィルム等のシート20及びパルプ繊維11とを個別に乾燥してもよいし、まとめて乾燥させてもよい。溶剤120の乾燥であるから、低負荷、省エネルギで乾燥できる。
乾燥部550では、その処理槽を回転させる機構、例えば、槽自体を回転させる機構または槽内に回転体を設けその回転体を回転させる機構によって、或いは、風流によって、乾燥ムラを防止して脱溶剤化を促進させ、乾燥時間の短縮化を行うこともできる。
【0090】
SAP12は、分別回収され、乾燥されたSAP12等を含む粒状物Pから糸ゴム25、テープ等のその他構成材料が分離除去されたのち、リサイクル品として回収される。即ち、分別回収され、乾燥されたSAP12等を含む粒状物Pから糸ゴム25、テープ等のその他構成材料が分離除去されることにより、リサイクル品となるSAP12が回収される。
分別された糸ゴム25、テープ等のその他の構成材料については、シート20及びパルプ繊維11等の粗大片・繊維状物LFと混合して固形燃料化することができるが、マテリアルリサイクルとして再資源化することも可能である。
【0091】
回収されたSAP12は吸収性物品への再利用が可能であることは勿論、農業・園芸用(土壌保水剤、農薬の崩壊助剤等)、食品用(鮮度保持剤、凍結防止剤、保冷剤)、土木・建築用(固剤、結露防止剤、止水材)、化粧・医薬用(芳香剤、化粧液、シップ)、衛生用品、災害用簡易トイレ、電気・電子材料(光ケーブル用止水材)、塗料等の幅広い用途に利用することが可能である。
【0092】
更に、本実施の形態において、被処理物110からSAP12が分離されて回収された残りのシート20及びパルプ繊維等の粗大片・繊維状物LPは、固形燃料化工程(ステップS5)において、成形、冷却等により固形化され、固形化燃料30(Refuse derived paper and plastics densified fuel:RPF)としてサーマルリサイクルされる。
特に、未使用の吸収性物品である被処理物110からSAP12が分離された残りのシート20及びパルプ繊維等の粗大片・繊維状物LPは、接着剤が除去されており、水分、灰分、塩素分といった不純物の含有も少ないため、着火性がよく、発熱量を高くでき、安定して高品位な固形化燃料30となる。即ち、石炭やコークスに匹敵する高い発熱量が得られ、塩素ガスによるボイラ腐食やダイオキシンの発生を生じさせ難い良質な固形化燃料30となる。
【0093】
即ち、未使用の吸収性物品である被処理物110を溶剤120に浸漬して接着剤を溶解させることで被処理物110を解体し、スクリーンFによる濾過分離等でSAP12と分離したシート20及びパルプ繊維等の粗大片・繊維状物LPにおいては、SAP12が細粒化、微粉化されていないことによりSAP12の混入が極めて少なく、更に、接着剤の付着もなく、高品位なものとなる。よって、それらを成形機で成形し、また、それを冷却機で冷却する固形燃料化手段によって固形燃料化することによって得られた固形化燃料30は、SAP12の混率が極めて少ないことにより、水分率が低いものとなる。また、SAP12を塩化カルシウム等の不活化剤で不活化させるものでもなく、更に、接着剤が除去されていることにより、灰分、塩素分といった不純物の含有も少ないものである。よって、発熱量が高く高品位なものとなる。そして、SAP12が分離されたパルプ繊維11及びシート20等を固形燃料化してなる固形化燃料30においては、SAP12の吸水による膨張が生じないことにより、コンパクトで軽量なものとなり、保管や運搬も省スペース及び省エネルギで済み、運搬等の作業員の負荷も少なく安全に作業できる。更に、SAP12の混率が極めて少ないことによりSAP12の蓄熱による異臭の発生や、発火の恐れもない。
【0094】
こうして、本実施の形態では、溶剤処理部510にて、パルプ繊維11及びSAP12を含む吸収体10をフィルムや不織布等のシート20で包囲し対向するシート20間を接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品である被処理物110を溶剤120に浸漬して被処理物110の接着剤を溶剤120に溶解させる溶剤処理工程(ステップS1)を実施し、分離回収手段によって、接着剤が溶解除去された被処理物110の構成材料を少なくともシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離して回収する分離回収工程(ステップS2)を実施し、乾燥手段によって、分離回収されたシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とを乾燥する乾燥工程(ステップS3)を実施することにより、未使用の吸収性物品である被処理物110から、少なくとも、SAP12と、不織布やフィルム等のシート20及びパルプ繊維11とを分離回収するものである。
【0095】
このように、本実施の形態では、被処理物110を細かく粉砕等することなく溶剤120に接着剤を溶解させることで被処理物110を分解、解体して構成材料を分離回収するものであることから、不織布やフィルムのシート20が細片化(分解)されることなく元の形状を概ね維持したまま解離されることで、また、被処理物110から接着剤が除去されることで、不織布やフィルムのシート20及びパルプ繊維11にSAP12の吸収体10が付着して残存し難く、それら不織布やフィルムのシート20及びパルプ繊維11と、SAP12との分離が容易である。このため、少ないエネルギ及びエネルギコストで、効率的に、精度よくSAP12をシート20及びパルプ繊維11から分離でき、回収率も高いものとなる。そして、過大なエネルギを与えなくてもシート20及びパルプ繊維11と、SAP12との分離が容易であるから少ない負荷で分離でき、SAP12の微細化、劣化も抑制される。更に、分別されたSAP12は、接着剤が除去されている。よって、回収されたSAP12は高品位なものとなり、マテリアルリサイクルに好適であり、バージン原料と比較しても特性の劣らないものとなる。故に、吸収性物品の吸収体10としても再利用でき、広範囲な用途へのマテリアルリサイクルを可能とする。
【0096】
更に、残りのシート20及びパルプ繊維11についても、SAP12が分離されていることにより、それらを固形燃料化した固形化燃料30においては、水分率が低く、また、接着剤も除去されているから、灰分、塩素分といった不純物の含有も少ないものである。よって、発熱量が高く高品位な固形化燃料30となる。特に、本実施の形態では、被処理物110を溶剤120で浸漬処理して接着剤を除去し、また、湿潤状態でシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離回収するから、低負荷エネルギで精度良く分離でき、SAP12が微粉化、微粒化し難いので、SAP12や接着剤の混率が極めて少ない高品質な固形化燃料30が得られ、燃料として利用価値が十分に高いものとなる。
また、吸収性物品からSAP12を分離した残りのシート20及びパルプ繊維1等を固形燃料化してなる固形化燃料30によれば、SAP12の吸湿、吸水による膨張が生じないことにより、コンパクトかつ軽量で、保管や運搬も省スペース及び省エネルギで済み、運搬の作業員の負荷も少なく安全に作業できる。更に、SAP12の蓄熱による異臭の発生や、発火の恐れもない。
【0097】
ところで、本実施の形態は、更に、被処理物110の構成材料が回収された後の接着剤が溶解されている溶剤120を蒸留し、蒸留によって析出する接着剤を分離回収する接着剤分離回収工程(ステップS4)を具備する。
接着剤分離回収工程(ステップS4)では、接着剤分離回収手段としての蒸留によって、被処理物110の構成材料が回収された後の接着剤が溶解されている溶剤120から、接着剤を析出させて分離回収する。また、本実施の形態の分離回収装置においては、溶剤タンクTと蒸留部530とを接続する溶剤循環路540が形成されていることにより、蒸留部530にて溶剤ガスを冷却してなる接着剤が除去された溶剤120は、溶剤循環路540で溶剤タンクTに送給されるから、被処理物110を浸漬処理する溶剤120として再利用される。なお、溶剤循環路540には、フィルタを備えた濾過部が配設しており、接着剤が除去された溶剤120は濾過部のフィルタで異物除去された後、再び、被処理物110を浸漬させる溶剤120として再利用される。
【0098】
即ち、接着剤が溶解されている溶剤120を蒸留して接着剤を析出させることで固体状の接着剤を溶剤120から分離回収できる。そして、蒸発した溶剤ガスは冷却されることにより凝縮し接着剤が除去された液状の溶剤120となるから、濾過部のフィルタ濾過して、被処理物110を浸漬させる溶剤120として再利用される。
特に、石油系やハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤120であれば、溶出した接着剤の回収率も高いものである。
【0099】
こうして、本実施の形態では、接着剤が溶解された溶剤120は、外部に廃棄することなく、蒸留によって接着剤を回収して、繰り返し、被処理物110を浸漬処理する溶剤120として使用される。よって、溶剤120の廃液処理を必要とすることなく、低コスト化できる。更に、接着剤が溶解された溶剤120の蒸留によって接着剤を分離回収できることで、接着剤もマテリアルリサイクルとして再資源化でき、吸収性物品の構成材料の資源を更に有効利用できることになる。
即ち、本実施の形態では、被処理物110中の接着剤を溶剤120に溶解させることで被処理物110を分解、解体するものであり、溶剤120に接着剤を溶解させていることにより、蒸留でその溶剤120から接着剤を析出できるから、未使用の吸収性物品である被処理物110から接着剤を分離回収して、マテリアルリサイクルすることも可能である。よって、未使用の吸収性物品の構成材料の再利用性、リサイクル率を高めることが可能であり、環境保全により貢献できる。
【0100】
なお、一連のリサイクル装置においては、外気を吸気する吸気部と、内部の空気を排出する排気部を有し、ファンの駆動等によって吸気部で吸気された外気が供給され、また、排気部から内部空気が適宜排気処理され外部に排出されるようになっている。
【0101】
このように本実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法は、パルプ繊維12及び高吸水性ポリマ(SAP)12の吸収体10をシート20で包囲し対向するシート20間をホットメルト接着剤で接合してなる規格外品や切れ端である未使用の吸収性物品の構成材料をリサイクルする方法であって、溶剤処理工程(ステップS1)において規格外品や切れ端の未使用の吸収性物品である被処理物110を溶剤120に浸漬して、シート20間を接合している接着剤を溶解し、分離回収工程(ステップS2)において接着剤の溶剤120への溶解により解離した吸収性物品をシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離して回収し、乾燥工程(ステップS3)において、分離回収されたシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とを乾燥して溶剤120を揮発させるものである。
【0102】
また、本実施の形態の吸収性物品のリサイクル装置は、パルプ繊維12及び高吸水性ポリマ(SAP)12の吸収体10をシート20で包囲し対向するシート20間をホットメルト接着剤で接合してなる規格外品や切れ端である未使用の吸収性物品の構成材料をリサイクルする装置であって、規格外品や切れ端の未使用の吸収性物品である被処理物110を溶剤120に浸漬し、シート20間を接合している接着剤を溶解させる溶剤処理部510と、接着剤の溶剤120への溶解により解離した吸収性物品をシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離回収するスクリーンF等の分離回収手段と、分離回収された構成材料を乾燥して溶剤120を揮発させるヒータ、減圧ポンプ、ファン等の乾燥手段を具備するものである。
【0103】
こうした本実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法及びリサイクル装置によれば、未使用の吸収性物品の構成部材を接合しているホットメルト接着剤を溶剤120に溶解させることで構成部材を解離し、その構成材料をシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離回収するものであることから、接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品(被処理物110)の解離、分解が容易となりSAP12の回収率を向上できる。特に、接着剤を除去することにより、接着剤による絡み合いがないことで、吸収体10のパルプ繊維11やSAP12を細粒化、微粉化させることのない少ないエネルギで、シート20及びパルプ繊維11と、SAP12とをそれらの大きさや比重等の相違により容易に分離できる。そして、吸収体10のパルプ繊維11やSAP12を細粒化、微粉化させない少ないエネルギで精度よく分離でき、また、接着剤も除去されていることで、高品位にSAP12を分離回収でき、マテリアルリサイクルにも好適なものとなる。また、SAP12を細粒化、微粉化されないことにより、更に、接着剤が除去されていることにより、シート20及びパルプ繊維11も、SAP12及び接着剤の混率が極めて少なく高品位に分離回収できる。
【0104】
特に、本実施の形態では、接着剤が除去された吸収性物品を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中でシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離し回収してから、乾燥するものであり、湿潤状態で構成材料を溶剤120との比重差、重力を利用して分離するものでは、構成材料に対して低負荷な条件で分離できる。故に、構成材料を劣化、微細化させないソフトな条件で分離できることで、高品位に構成材料を分離回収できる。
【0105】
更に、本実施の形態では、接着剤分離回収工程(ステップS4)として、蒸留部530において接着剤が溶解した溶剤120を蒸留することで接着剤を析出させて分離回収することで、接着剤についてもマテリアルリサイクルを可能とし、資源をより有効利用できる。加えて、溶剤循環路540によって蒸留した溶剤120を、溶剤処理部510で吸収性物品である被処理物110に浸漬させる溶剤120として再利用するから、溶剤120の排液処理を不要とし、環境負荷の低減化、低コスト化が可能である。
【0106】
ここで、本実施の形態における未使用の吸収性物品のリサイクル方法及びリサイクル装置の実施例1について、図3及び図4を参照して、説明する。
本実施例1に係るリサイクル装置は、被処理物110を溶剤120に浸漬させる溶剤処理部510の処理槽内に分離回収手段としてのスクリーンFを備える。スクリーンFは、SAP12を通過させるも、シート20及びパルプ繊維11は通過させない径の複数の丸穴等の孔やスリット等の開口を有するもので、目開きが1mm程度のものである。
【0107】
本実施例1において、溶剤処理部510は、スクリーンFが設置されている分離部520aと、被処理物110が投入される上方に開口した開口部Aが形成され、分離部520aに配設したスクリーンFより下位で分離部520aに連続して繋がり、スクリーンFより下位に被処理物110を送給する投入部520bとから構成されている。
スクリーンFが設置された分離部520aには、スクリーンFよりも上位に、溶剤120に浮上したSAP12をオーバーフローで外部に排出するための上部排出部Bが設けられ、また、スクリーンFよりも下位の下部には、パルプ繊維11及びシート20を排出するための開閉自在な下部排出部Cが設けられている。更に、スクリーンFよりも上位であって、上部排出部Bよりも下位には、残りのパルプ繊維11及びシート20等を下部排出部Cから排出するために溶剤120が注入される、上方に開口した注入口部Dが設けられている。
【0108】
なお、溶剤処理部510には、図3に示したように、溶剤120を収容する溶剤タンクTがポンプ及びバルブ等を介して接続されており、バルブの開状態ではポンプの駆動により溶剤タンクT内の溶剤120が溶剤処理部510の処理槽内に供給され、ポンプの停止状態やバルブの閉状態では、溶剤タンクT内の溶剤120が処理槽内に供給されるのが停止されるようになっている。これより、溶剤120は、溶剤タンクTからポンプで送液され溶剤処理部510の開口部Aや注入口部Dから処理槽内に入れられる。なお、開口部Aへの注入時は少なくとも下部排出部Cは閉じられた状態にある。
【0109】
図4に示すように、本実施例1では、まず、溶剤処理部510の処理槽の開口部Aに被処理物110を投入し、続いて、溶剤処理部510と溶剤タンクTとの接続間に配設したバルブを開とし、また、ポンプを作動させることにより、溶剤タンクT内の溶剤120を溶剤処理部510の開口Aから入れて、溶剤処理部510の処理槽内のスクリーンFより下位の所定位置まで充填し、溶剤処理部510の処理槽内で被処理物110を溶剤120に浸漬させる。即ち、本実施例1では、上述した溶剤処理部510の分離部520a及び投入部520bの構成により、溶剤処理部510の開口Aから投入された被処理物110は、分離部520aに設置したスクリーンFより下位に送り込まれて、スクリーンFの下位で溶剤120に浸漬する。
このとき、好ましくは、被処理物110が浸漬された溶剤120を撹拌機等の攪拌手段で攪拌する。或いは、処理槽自体を揺動し溶剤120に振動を与える。これより、被処理物110が分散されて構成材料の分離が促進され、処理効率が向上する。なお、このときの攪拌、振動で溶剤120の液面、液跳ねがスクリーンFに達しないように、処理槽内に注入される溶剤120の液位は、スクリーンFと十分な間隔がとられる。
【0110】
ここで、本実施例1では、溶剤120として、吸収体10のSAP12よりも比重の高い、比重が1.5以上、1.8以下のハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤120が使用される。好ましくは、テトラクロロエチレンである。
【0111】
これより、溶剤処理部510の処理槽において、投入された被処理物110が溶剤120に浸漬され、溶剤120が攪拌されると、溶剤120中で被処理物110が分散され、懸濁状となる。そして、被処理物110が溶剤120中に分散されたところで攪拌を止めると、SAP12の比重が溶剤120より小さく、また、SAP12はパルプ繊維11及びシート20の寸法よりも小さく、溶剤120を吸液しないこともあって、粒状のSAP12が液面に浮上してくる。
【0112】
次に、液面にSAP12が浮上してきたところで、溶剤処理部510の投入部520bの開口Aから溶剤120を追加して、分離部520a内で溶剤120の液面を上昇させると、粒状のSAP12はスクリーンFを通過する一方で、シート20及び綿状のパルプ繊維11はスクリーンFを通過することなく、スクリーンFより下位に滞留する。更に、溶剤120の注入で分離部520a内の溶剤120の液面を上部排出部Bの位置まで上昇させると、スクリーンFを通過したSAP12が浮いた溶剤120は上部排出部Bからオーバーフローし外部に排出される。
即ち、溶剤120の注入によりスクリーンFを通過したSAP12を溶剤120と共に上部排出部Bからオーバーフローさせることで、SAP12等の粒子状物Pを溶剤120と共に外部排出部Bから排出させる。
続いて、SAP12等の粒子状物Pを溶剤120と共に上部排出部Bから排出したところで、下部排出部C及び注入口部Dを開口し、溶剤処理部510の注入口部Dの開口から溶剤120を注入することによりスクリーンFの上から溶剤120を入れて、開口した下部排出部Cから残りのパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFを溶剤120と共に排出させる。
【0113】
こうして、本実施例1では、溶剤処理部510においてスクリーンFを設置し、その処理槽内に溶剤120を入れ、また、スクリーンFの位置よりも下位で被処理物110を投入して、被処理物110を比重が1.5以上、1.8以下のテトラクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤120に浸漬させたことにより、その溶剤120との比重差による重力によって、また、スクリーンFの孔より小寸法であることで、SAP12がスクリーンFより上位に浮上する一方、パルプ繊維11及びシート20がスクリーンFより下位で滞留するから、スクリーンFより上位に浮上したSAP12等の粒状物Pと、スクリーンFより下位で滞留するパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFとに分離される。よって、それらSAP12等の粒状物Pと、パルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFとを別途に回収できる。
即ち、スクリーンFを通過してスクリーンFより上位で液面に浮上したSAP12等の粒子状物Pと、スクリーンFより下位で滞留するパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFとに分離されることで、SAP12等の粒子状物Pは上部排出部Bから排出し、また、パルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFは下部排出部Cから排出することで、SAP12等の粒子状物Pと、パルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFとを別途に回収できる。
【0114】
オーバーフローによって分離部520aの上部排出部Bから排出されたSAP12等の粒子状物Pを含んだ溶剤120は、濾過部562に送液され、そこで、溶剤120とSAP12等の粒子状物Pとに分離される。そして、溶剤120と分離したSAP12等の粒子状物Pは、乾燥部550に送給され、そこで、減圧乾燥、熱風乾燥等され、脱溶剤化される。更に、乾燥されたSAP12等の粒子状物Pは、糸ゴム25等のその他の構成材料を含む場合があることから、好ましくは、スクリーン等でその他の構成材料を除去する。これより、高品位なSAP12が回収される。
【0115】
分離部520aの下部排出部Cから排出されたパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFを含んだ溶剤120については、SAP12等の粒子状物Pとは別途、濾過部561に送液され、そこで、溶剤120とパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFとに分離される。そして、溶剤120と分離したパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFは、乾燥部550に送給され、そこで、減圧乾燥、熱風乾燥等され、脱溶剤化される。
【0116】
なお、図3及び図5においては、説明を分かりやすくするために、乾燥部550を複数記載しているが、リサイクル装置において複数の乾燥部550を備えていることを意味するものではなく、乾燥部550は1つ以上であればよい。また、本発明を実施する場合には、溶剤処理部510に濾過部561,562を設けてもよい。濾過部561,562での濾過手段は、例えば、フィルタ濾過や沈降分離である。
【0117】
更に、本実施例1では、乾燥されたパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFは、固形燃料化部580で、成形機等の成形手段で圧縮成形されたのち、水冷等の冷却手段で冷却されることにより、固形燃料化される。これより、未使用の吸水性物品からSAP12及び接着剤が除かれたシート20及びパルプ繊維11等からなる固形化燃料30が得られる。この固形化燃料30は、吸水性物品の構成材料からSAP12及び接着剤が除かれていることにより、水分、塩分、灰分等が少なく発熱量が高い高品位なものである。
なお、SAP12と分別した糸ゴム25、レーヨン、合成繊維等の短繊維等のその他の構成材料についても、固形燃料化部580において、別途分別回収されたパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFと混合し、固形燃料化してもよい。
【0118】
また、本実施例1では、濾過部561,562は、蒸留部530と接続しており、濾過部561,562から排出される溶剤120は蒸留部530に送給され、そこで蒸留される。
濾過部561,562から排出される溶剤120は、濾過部561,562と蒸留部530の間に配設される溶剤回収タンクで一度回収され、そこから、蒸留部530に送給されるようにしてもよい。
乾燥部550で減圧乾燥、熱風乾燥等の乾燥させたときの排気の溶剤ガスについても、それを冷却して溶剤回収タンク、蒸留部530に送給してもよい。
被処理物110を浸漬処理した溶剤120には被処理物110に含まれていた接着剤が溶解されていることにより、蒸留部530において、被処理物110が浸漬処理された後の溶剤120を蒸留することで、接着剤が析出するから、そこで接着剤が分離回収される。
【0119】
更に、本実施例1では、蒸留部530は溶剤循環路540によって溶剤タンクTに接続しており、その溶剤循環路540の途中には異物除去の微細目のフィルタを備えた濾過部が配設されいる。
これより、蒸留部530で蒸発した溶剤ガスが冷却され凝縮されることにより蒸留された液体の溶剤120は、濾過部のフィルタで細かな異物が濾過された後、溶剤タンクTに送液されることで、再度、被処理物110を浸漬処理する溶剤120として再利用される。
【0120】
こうして、本実施例1では、SAP12よりも比重の高い溶剤120中でのSAP12の浮上及びスクリーンFを利用し、SAP12とそれ以外のシート20及びパルプ繊維11等の構成材料とを分離するものであり、SAP12に対し極めて低負荷なソフトな条件でSAP12等を細粒化・微細化させたり劣化させたりするエネルギを投じることなくSAP12とそれ以外のシート20及びパルプ繊維11とを高精度で効率的に分離できる。よって、極めて高品位にSAP12を回収できる。
【0121】
また、SAP12が分離された残りのシート20及びパルプ繊維11を固形燃料化した固形化燃料30は、SAP12及び接着剤が除去されていることにより、水分率が低く、灰分、塩素分といった不純物の含有も少ないものであるから、発熱量が高く高品位なものとなる。
そして、実施例1では、SAP12よりも比重の高い溶剤120中でのSAP12の浮上及びスクリーンFを利用することにより、省エネルギで、SAP12や、シート20及びパルプ繊維11を溶剤処理部510から排出でき、分離精度、分離効率よく分離回収できる。
【0122】
次に、本実施の形態における未使用の吸収性物品のリサイクル収方法及びリサイクル装置の別の実施例について、図5及び図6を参照して、説明する。
【0123】
本実施例2では、被処理物110を浸漬し、接着剤を溶解させる溶剤120として、SAP12よりも比重の小さい溶剤120を用いた点で、実施例1と相違するが、その他の基本的構成は、実施例1と同様であるから実施例1と共通する部分は重複する説明を省略し実施例1と相違する点のみを説明する。
実施例2に係るリサイクル装置も、被処理物110を溶剤120に浸漬させる溶剤処理部510の処理槽内に分離手段としてのスクリーンFを備える。実施例2においても、スクリーンFは、SAP12を通過させるも、シート20及びパルプ繊維11は通過させない径の複数の丸穴等の孔やスリット等の開口を有するもので、目開きが1mm程度のものである。
【0124】
実施例2では、まず、溶剤処理部510の処理槽内に被処理物110を収容し、溶剤処理部510と溶剤タンクTとの接続間に配設したバルブを開とし、また、ポンプを作動させることにより、溶剤タンクT内の溶剤120を溶剤処理部510の処理槽内にスクリーンFより上位の所定の液位まで入れ、溶剤処理部510の処理槽内で被処理物110を溶剤120に浸漬させる。
図6に示したように、溶剤処理部510の処理槽において被処理物110を溶剤120に浸漬させると、溶剤120に浸漬した被処理物110中の接着剤が溶剤120に溶解することにより被処理物110が分解、解離、解体され、被処理物110の構成材料が溶剤120中に散けてくる。このとき、好ましくは、被処理物110が浸漬された溶剤120を撹拌機等の攪拌手段で攪拌する。或いは、処理槽自体を揺動し溶剤120に振動を与える。これより、被処理物110の分解、構成材料の分離が促進され、処理効率が向上する。
【0125】
ここで、本実施例2では、溶剤120として、SAP12よりも小さい比重である、比重が0.6以上、0.8以下の石油系のドライクリーニング溶剤120を使用した。そして、溶剤処理部510の処理槽内において、被処理物110は、溶剤処理部510の処理槽内に設置したスクリーンFの上位に投入した。
これより、図6に示すように、溶剤処理部510の処理槽において、被処理物110中の接着剤が溶剤120に溶解することにより被処理物110が分解、解離、解体されると、被処理物110の構成材料のうち、粒状のSAP12等の粒状物Pは下降しスクリーンFを通過してスクリーンFより下位に沈降する一方、パルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFは、スクリーンFを通過することなくスクリーンFより上位に滞留する。
【0126】
こうして、本実施例2では、溶剤処理部510においてスクリーンFを設置し、そのスクリーンFの位置よりも上位まで溶剤120を充填し、また、スクリーンFの位置よりも上位で被処理物110を投入して、被処理物110を比重が0.6以上、0.8以下の石油系のドライクリーニング溶剤120に浸漬させたことにより、その溶剤120との比重差による重力によって、また、スクリーンFの孔より小寸法であることで、吸収体10のSAP12等の粒状物PがスクリーンFより下位に沈降する一方、パルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFがスクリーンFより上位で滞留するから、スクリーンFより下位に沈降したSAP12等の粒状物Pと、スクリーンFより上位で滞留するパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFとに分離される。よって、それらSAP12等の粒状物Pと、パルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFとを別途に回収できる。
【0127】
溶剤処理部510の処理槽内において、スクリーンFより下位に沈降したSAP12等の粒状物Pは、溶剤120と共に溶剤処理部510の外部に排出して回収され、濾過部562で濾過されて溶剤120が除かれたのち、ヒータ、減圧ポンプ、ファン等を用いた乾燥手段を備えた乾燥部550に送給される。
【0128】
スクリーンFより上位に滞留したパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFは、例えば、溶剤120中から掻き取ったり、掬い上げたり、巻き取ったりすることにより、溶剤処理部510の外部に排出して回収する。溶剤処理物510から排出されたパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFは、ヒータ、減圧ポンプ、ファン等の乾燥手段を備えた乾燥部550に搬送され、そこで、熱風乾燥、減圧乾燥等により乾燥される。そして、回収され乾燥されたパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFは、実施例1と同様、固形燃料化される。
なお、本発明を実施する場合には、スクリーンFより上位に滞留したパルプ繊維11及びシート20等の粗大片・繊維状物LFは、風流や液流を利用して溶剤120と共に外部に排出し、濾過部で濾過して溶剤120を除いたのち、乾燥部550に送給するようにしてもよい。
【0129】
ところで、本発明者らは、被処理物110の接着剤を溶解させる溶剤120について、表1に示す種々の溶剤120を使用して検討を行っている。
ここでは、吸収性物品の被処理物110としてオムツを使用し、それを表1に示す各種溶剤(溶剤120の使用量は統一)に浸漬した。なお、被処理物110の溶剤120への浸漬は、被処理物110であるオムツを平坦に展開した状態で容器に収容し、そこにオムツ全体が浸る十分な液位となる量の溶剤を入れて、攪拌した。
【0130】
【表1】
【0131】
表1に示す何れの溶剤120でも、被処理物110を投入し、溶剤120を攪拌すると、被処理物110中の接着剤が溶剤120に溶解することで、被処理物110が分解、解体され、その構成材料が散らけた。
ここで、各溶剤120について、被処理物110を溶剤120に浸漬させた際の被処理物110への溶剤120の浸透性を目視で確認し、良好(A)、可(B)、不可(C)の3段階で評価した。
また、溶剤120への浸漬後の被処理物110から散らけて分離したシート20(PP/PE)、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料を取り出して目視で接着剤の残存を確認し、接着剤の溶解性について、接着剤の残存がない:良好(A)、部分的に接着剤の残存がある:可(B)、接着剤の残存が多い:不可(C)の3段階で評価した。
更に、取り出したシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料を自然乾燥させ、速乾性に優れる:良好(A)、速乾性がある:可(B)、速乾性に劣る:不可(C)の3段階で評価した。
【0132】
また、溶剤120の臭いについて、臭いが全く気にならないもの:良好(A)、臭いを感知できるが弱い臭いのもの:可(B)、強い臭いのもの:不可(C)の3段階で評価した。更に、取り出して乾燥されたシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料について溶剤120の臭い残りを確認し、臭いが全く気にならないもの:良好(A)、臭いを感知できるか弱い臭いのもの:可(B)、強い臭いが残存しているもの:不可(C)の3段階で評価した。
【0133】
加えて、取り出して乾燥されたシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料についての溶剤120の色残りを目視で確認し、変色がないもの:良好(A)、弱い変色があるが殆ど気にならいもの:可(B)、変色が気になるもの:不可(C)の3段階で評価した。
また、溶剤120の酸化劣化による変化を確認し、変色及び硬化がなく酸化劣化し難いもの:良好(A)、変色または硬化が僅かにあるもの:可(B)、変色または硬化があり酸化劣化しやすいもの:不可(C)の3段階で評価した。
更に、取り出して乾燥されたシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料についての性状変化について、何れの構成材料も性状変化がないもの:良好(A)、僅かな性状があるが殆ど気にならい程度のもの:可(B)、性状変化が生じ再利用に適さないもの:不可(C)の3段階で評価した。
【0134】
表1に示したように、ドライクリーニング溶剤に使用されているドライソルベント・ハイソフトやクリーニング溶剤NW-Sといったパラフィン含有の石油系溶剤や、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレンといったハロゲン化炭化水素系溶剤については、何れも被処理物110への浸透性が良く、被処理物110中の接着剤を十分に溶解できて接着剤を残存させることがなく、また、速乾性も良いものであった。特に、分離回収した構成材料に、溶剤120の臭いや色が残らないものであり、更に、溶剤120の酸化劣化が生じ難いことで再利用性にも適し、また、被処理物110の構成材料を変化させないものであった。
【0135】
これに対し、灯油については、被処理物110への浸透性、接着剤の溶解性は良いものの、接着剤の速乾性、臭い残り、色残り、溶剤120の酸化劣化において、何れも、ドライクリーニング溶剤に使用されている石油系溶剤やテトラクロロエチレン、トリクロロエチレンといったハロゲン化炭化水素系溶剤と比較すると劣るものであった。
したがって、溶剤120にはドライクリーニング溶剤に使用されている石油系溶剤やテトラクロロエチレン、トリクロロエチレンといったハロゲン化炭化水素系溶媒の使用が好適である。
【0136】
即ち、灯油等では、特有の強烈な臭気があり、乾燥後でもシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料に溶剤120の特有な臭いが残存し、また、空気で酸化して硬化しやすく、酸化劣化しやすいことで繰り返しの使用に不適であるのに対し、ドライクリーニング溶剤に使用されているパラフィン等の含有の石油系溶剤や、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒であれば、溶剤120の臭気がなく、取扱い性、作業環境性が良いうえ、シート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料に溶剤120の臭いが残存しないことから、広範囲の用途への再利用に好適であり、回収されたシート20、パルプ繊維11、SAP12等の構成材料は高品位なものとなる。また、それら溶剤自体も酸化劣化し難いから繰り返しの使用に好適であり、排液処分のコストを低減でき、溶剤120の使用が低コストで済む。
【0137】
そして、本発明者らの実験研究によれば、特に、ハロゲン化炭化水素系のテトラクロロエチレンは、パルプ繊維11及びシート20と、SAP12とを分離する溶剤120として好適である。即ち、ハロゲン化炭化水素系のテトラクロロエチレンの溶剤120中では、粒状のSAP12が浮上することで、SAP12の浮上及びスクリーンFを利用し、SAP12に対し低負荷及び省エネルギでパルプ繊維11及びシート20と、SAP12とを短時間で効率よく高精度に分離できる。よって、高品位なSAP12を回収でき、また、SAP12が分離されたシート20及びパルプ繊維11等を固形燃料化してなる固形化燃料30も高品位なものとなる。
【0138】
以上説明してきたように、上記実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法は、吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12を包んだシート20を接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解する溶剤処理工程(ステップS1)と、接着剤が溶解除去された吸収性物品(被処理物110)をシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離して回収する分離回収工程(ステップS2)と、分離回収された構成材料のシート20及びパルプ繊維11と、SAP12等を乾燥する乾燥工程(ステップS3)とを具備するものである。
【0139】
上記実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法によれば、未使用の吸収性物品(被処理物110)の構成部材を接合している接着剤を溶剤120に溶解させて吸収性物品(被処理物110)から除去することによって吸収性物品(被処理物110)を解体しシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離回収するものであるから、吸収性物品(被処理物110)の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品(被処理物110)が容易に分解されその構成材料であるシート20及びパルプ繊維11と、SAP12との解離、分離が容易となる。よって、SAP12等の回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品(被処理物110)の接着剤を除去することにより、SAP12等を細粒化、微粉化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とを手間をかけることなく精度よく分離回収でき、パルプ繊維11及びシート20を固形燃料化する場合でもSAP12の混率が少ないものとなり、また、SAP12を不活化させるものでもないから、水分、塩分、灰分等の不純物が少なくて発熱量が高い高品位な固形化燃料30となる。そして、パルプ繊維11及びシート20等と分離されたSAP12は、細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の吸収体10としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適であり、吸収性物品の吸収体10としての再資源化にも好適なものとなる。
こうして、上記実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法によれば、未使用の吸収性物品から高品位なリサイクル品を得ることができる。
【0140】
また、乾燥工程(ステップS3)の前に、吸水性物品の構成材料をシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離回収するものであり、湿式で吸収性物品(被処理物110)の構成材料を分離回収することから、乾式の場合と比較し、構成材料に対し低負荷、省エネルギな条件で分離精度よく構成材料を分離回収することが可能である。
【0141】
即ち、上記実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法によれば、分離回収工程(ステップS2)は、吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中でシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離するから、接着剤が溶解された溶剤120中で解体された吸収性物品(被処理物110)の構成材料を重力、遠心力、比重差等とスクリーンF等を使用した濾過分離を利用して、構成材料を分離することになる。よって、湿式での分離であるから、構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とを精度よく分離できることで、低コスト及び省エネルギで吸収体を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0142】
吸収性物品(被処理物110)の接着剤を溶解させる溶剤120は、石油系及び/またはハロゲン化炭化水素系のドライクリーニング溶剤であれば、酸化劣化し難く繰り返しの再利用に好適であり、かつ、分離回収された構成材料のSAP12等に溶剤120の臭いが残存し難いものとなる。したがって、低コスト化でき、また、分離回収されたSAP12等は、その使途が限定されず、幅広い使途に再資源化できるものとなる。
【0143】
吸収性物品(被処理物110)を浸漬処理する溶剤120、即ち、溶剤吸収性物品(被処理物110)の接着剤を溶解させる溶剤120は、その比重が0.7~1.5の範囲内のもの、好ましくは、その比重が0.7~0.8の範囲内のものであれば、吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中ではSAP12が沈降する。よって、その溶剤120中において、比重差(重力)による沈降及びスクリーンF等を利用した濾過分離によって構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とを精度よく分離できることで、低コスト及び省エネルギでSAP12を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0144】
吸収性物品(被処理物110)を浸漬処理する溶剤120、即ち、溶剤吸収性物品(被処理物110)の接着剤を溶解させる溶剤120は、その比重が1.6~1.8の範囲内のものであれば、吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中ではSAP12が浮上する。よって、その溶剤120中において、比重差(重力)及びスクリーンF等を利用した濾過分離によって構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とを精度よく分離できることで、低コスト及び省エネルギでSAP12を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0145】
上記実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法によれば、更に、接着剤が溶解した溶剤120を蒸留し、接着剤を分離回収する接着剤分離回収工程(ステップS4)を具備することで、吸収性物品の接着剤を再資源化できるから、更に資源を有効に利用できる。
加えて、接着剤分離回収工程(ステップS4)で接着剤と分離された溶剤120は、溶剤処理工程(ステップS1)で吸収性物品(被処理物110)を浸漬処理する溶剤120として再利用されることで、省資源で済み、低コスト化できる。
【0146】
加えて、上記実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法によれば、SAP12が分離した残りのシート20及びパルプ繊維11を固形燃料化する固形燃料化工程(ステップS5)を具備することで、得られた固形化燃料30は、SAP12が分離され接着剤が除去されていることで、吸水膨張することなく、水分、塩分、灰分等の不純物が少なくて発熱量が高いものとなる。よって、高品位な固形化燃料30が得られる。
【0147】
また、上記実施の形態は、吸収体10としてのパルプ繊維11及びSAP12を包んだシート20を接着剤で接合してなる未使用の吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解する溶剤処理部510と、接着剤が溶解除去された吸収性物品(被処理物110)をシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離回収するスクリーンF等を用いた分離回収手段と、分離回収された構成材料のシート20及びパルプ繊維11と、SAP12等を乾燥するヒータ、減圧ポンプ、ファン等を用いた乾燥手段とを具備する吸収性物品のリサイクル装置の発明と捉えることもできる。
【0148】
上記実施の形態の吸収性物品のリサイクル装置によれば、未使用の吸収性物品(被処理物110)の構成部材を接合している接着剤を溶剤120に溶解させて吸収性物品(被処理物110)から除去することによって吸収性物品(被処理物110)を解体しシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離回収するものであるから、吸収性物品(被処理物110)の接着剤が溶解除去されることにより吸収性物品(被処理物110)が容易に分解されその構成材料であるシート20及びパルプ繊維11と、SAP12との解離、分離が容易となる。よって、SAP12等の回収率の向上が可能となる。特に、吸収性物品(被処理物110)の接着剤を除去することにより、SAP12等を細粒化、微粉化するような大きなエネルギを加えなくとも吸収性物品(被処理物110)の構成材料であるシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とを手間をかけることなく精度よく分離回収でき、パルプ繊維11及びシート20を固形燃料化する場合でもSAP12の混率が少ないものとなり、また、SAP12を不活化させるものでもないから、水分、塩分、灰分等の不純物が少なくて発熱量が高い高品位な固形化燃料30となる。そして、パルプ繊維11及びシート20等と分離されたSAP12は、細粒化、微粉化されることなく吸収性物品の吸収体10としての元の性状を維持したまま分離回収でき、また、接着剤も除去されていることで、マテリアルリサイクルに好適であり、吸収性物品の吸収体10としての再資源化にも好適なものとなる。
こうして、上記実施の形態の吸収性物品のリサイクル方法によれば、未使用の吸収性物品から高品位なリサイクル品を得ることができる。
【0149】
また、乾燥手段による乾燥の前に、吸水性物品の構成材料をシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離回収するものであり、湿式で吸収性物品(被処理物110)の構成材料を分離回収することから、乾式の場合と比較し、構成材料に対し低負荷、省エネルギな条件で分離精度よく構成材料を分離回収することが可能である。
【0150】
即ち、上記実施の形態の吸収性物品のリサイクル装置によれば、分離回収手段では、吸収性物品(被処理物110)を溶剤120に浸漬処理したその溶剤120中でシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離するから、接着剤が溶解された溶剤120中で解体された吸収性物品(被処理物110)の構成材料を重力、遠心力等とスクリーンF等を使用した濾過分離を利用して、構成材料を分離することになる。よって、湿式での分離であるから、構成材料に対し低負荷な条件、省エネルギでシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とを精度よく分離できる。したがって、低コスト、省エネルギ及び低負荷な条件でシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とを精度よく分離できることで、低コスト及び省エネルギでSAP12を高品位に回収でき、また、その回収率を向上できる。
【0151】
また、上記実施の形態の吸収性物品のリサイクル装置によれば、更に、接着剤が溶解した溶剤120を蒸留し、接着剤を分離回収する接着剤分離回収手段としての蒸留部530を具備することで、吸収性物品の接着剤を再資源化できるから、更に資源を有効に利用できる。
加えて、接着剤分離回手段によって接着剤と分離された溶剤120を、溶剤処理部510で吸収性物品(被処理物110)を浸漬処理する溶剤120として再利用させる溶剤循環路540を具備することで、接着剤分離回収手段で接着剤と分離された溶剤120は、吸収性物品(被処理物110)を浸漬処理する溶剤120として再利用されることで、省資源で済み、低コスト化できる。
【0152】
更に、上記実施の形態の吸収性物品のリサイクル装置によれば、成形機及び冷却機等を用いた固形燃料化手段によって、SAP12が分離した残りのシート20及びパルプ繊維11を固形燃料化するから、得られた固形燃料30は、SAP12が分離され接着剤が除去されていることで、吸水膨張することなく、水分、塩分、灰分等の不純物が少なくて発熱量が高いものとなる。よって、高品位な固形化燃料30が得られる。
【0153】
ところで、上記実施の形態では、被処理物110を溶剤120に浸漬することにより、被処理物110の構成部材を接合していた接着剤を溶剤120に溶かす溶剤処理工程(ステップS1)を行い、シート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに個別に分離回収する分離回収工程(ステップS2)を行ってから、分離回収した構成材料を各々或いはまとめて乾燥する乾燥工程(ステップS3)を行うものである。
【0154】
しかし、本発明を実施する場合には、被処理物110の溶剤120への浸漬により接着剤が除去された被処理物110の構成材料を乾燥させてから、シート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに個別に分離回収してもよい。
即ち、変形例に係るリサイクル方法では、被処理物110の構成部材を接合している接着剤を溶剤120に溶かす溶剤処理工程(ステップS1)と、接着剤が除去された被処理物110の構成材料を乾燥する乾燥工程と、乾燥された被処理物110の構成材料をシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離回収する分離回収工程とを有し、溶剤処理工程(ステップS1)後に被処理物110の構成材料を乾燥する乾燥工程を行ってから、被処理物110の構成材料をシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離回収する分離回収工程を行う。
【0155】
また、変形例に係るリサイクル装置では、被処理物110を溶剤に浸漬して接着剤を溶剤120に溶解させる溶剤処理部510と、接着剤の溶剤120への溶解により接着剤が除去された被処理物110の構成材料を乾燥する乾燥手段と、乾燥した構成材料をシート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離回収する分離回収手段とを有する。
【0156】
この変形例では、溶剤処理部510で被処理物110を溶剤120に浸漬し、接着剤を溶剤120に溶出させた後は、被処理物110の構成材料をまとめて回収し、乾燥される。
被処理物110の構成材料の乾燥は、溶剤処理部510から被処理物110の構成材料をまとめて排出して回収し、別の場所で乾燥させてもよいし、溶剤処理部510の処理槽内から接着剤が溶解された溶剤120を排出し、その処理槽内で残存した被処理物110の構成材料をまとめて乾燥させてもよい。
なお、このとき排出、回収された溶剤120も、蒸留部530で蒸留することで接着剤を固体として析出させ、溶剤120と接着剤が個別に分離回収される。接着剤と分離された溶剤120は、再び、溶剤処理部510で接着剤を溶出させる溶剤120として再利用される。
【0157】
こうして接着剤が除去された被処理物110を乾燥、脱溶剤化した後、シート20及びパルプ繊維11と、SAP12とに分離回収する。
各構成材料を分離回収する手段としては、構成材料の寸法差、比重差(嵩密度)、抵抗差、落下差等を利用して分離でき、例えば、上記実施の形態と同様、スクリーンF等を使用できる。
または、気流を利用して分離することも可能であり、乾燥された被処理物110の構成材料に空気流を当て、構成材料の比重差、抵抗差を利用し、構成材料を移動分離することも可能である。或いは、例えば、サイクロン等の風力分級機を使用することも可能である。
特に、変形例では、乾式状態で、吸収性物品の構成材料を分離するから、分離精度の向上を可能とする。
【0158】
ところで、上記説明してきた吸収性物品は、ホットメルト接着剤を使用したヒートシールによりシート20を接合することを前提とするものであるが、超音波振動及び圧力によりシート20を溶融して接合する超音波シールによって、吸収体10を内包したシート20を接合することで、吸収性物品をリサイクルする手間、工程数を簡素化でき、吸収性物品の構成材料のSAP12の回収率を向上させることができる。
【0159】
なお、本発明を実施するに際しては、吸収性物品のリサイクル方法及びリサイクル装置のその他の部分の構成、組成、配合、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等について、本実施の形態及びその変形例並びに実施例に限定されるものではない。また、本実施の形態及びその変形例並びに実施例で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0160】
10 吸収体
11 パルプ繊維
12 高吸水性ポリマ(SAP)
20 シート
110 被処理物(吸収性物品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6